説明

ドアロック構造

【課題】簡便な構成で側面衝突時のドア開放・ロックを防止するドアロック構造を提供する。
【解決手段】ドアロック構造100は、回動する把持部110Aを含むドアハンドル110と、把持部の回動に連動して下方に移動することによりドアを開放するオープンロッド120と、キーシリンダ115に連結され上方に移動することによりドアをロックするキーロッド140と、オープンロッドおよびキーロッドに、それぞれの移動方向に交差する方向に突出して取り付けられる第1係合部材150および第2係合部材160と、第1係合部材および第2係合部材より車両内側に位置し車体に固定される変位規制部材170と、を備え、変位規制部材は、オープンロッド120およびキーロッド140が車両内側に移動しそれぞれ下方および上方に移動すると第1係合部材150および第2係合部材160の両方と干渉する形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドアハンドルによってドアが開放され、キーシリンダによってドアがロックされるドアロック構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両が側方からの衝突(側面衝突または側突とも呼ばれる)を受けたときに、その衝撃でドアが開放したり、ロックされたりすることは回避すべきである。
【0003】
側面衝突時のドア開放防止を目的とした従来技術として、例えば特許文献1ではドア外板の内側に突起部材を設けている。本文献によれば、側面衝突時にドア外板が車室方向に変形すると外板に設けた突起部材も移動し、ドアロック装置のロック解除レバー(リフトレバー)の延在部に係合して開錠を阻止するとしている。
【0004】
一方、側面衝突時のドアロック防止を目的とした従来技術として、例えば特許文献2では、キーシリンダに連結されたキーロッドと接続するドアラッチの直近にブラケットを設けている。このブラケットはラッチカバーやドアアウタパネルへ取り付けられる。本文献によれば、衝突によってブラケットを変形させてキーロッドと干渉させ、キーロッドのロック状態への移動を規制するとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭60−55672号公報
【特許文献2】特許第4099745号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし上述のような従来技術によれば、側面衝突時のドア開放防止と、側面衝突時のドアロック防止は、それぞれ別々に手段を講ずる必要があり、両者を共存させるために製造工数・部品点数の増大を招くものであった。
【0007】
本発明は、このような課題に鑑み、簡便な構成で側面衝突時のドア開放・ロックを防止するドアロック構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明にかかるドアロック構造の代表的な構成は、回動する把持部を含むドアハンドルと、把持部の回動に連動して第1の方向に移動することによりドアを開放するオープンロッドと、キーシリンダに連結され第2の方向に移動することによりドアをロックするキーロッドと、オープンロッドに、その移動方向に交差する方向に突出して取り付けられる第1係合部材と、キーロッドに、その移動方向に交差する方向に突出して取り付けられる第2係合部材と、第1係合部材および第2係合部材より車両内側に位置し車体に固定される変位規制部材と、を備え、変位規制部材は、オープンロッドおよびキーロッドが車両内側に移動しそれぞれ第1の方向および第2の方向に移動すると第1係合部材および第2係合部材の両方と干渉する形状を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ドアに側方から衝撃荷重が作用する側面衝突が生じると、オープンロッドおよびキーロッドが車両内側に移動しそれぞれ第1の方向および第2の方向に移動しようとしても、1つの共通の変位規制部材が第1係合部材および第2係合部材の両方と干渉する。これによりオープンロッドおよびキーロッドの両方が動きを規制され、側面衝突時にドアは開放されることもないし、ロックされることもない。
【0010】
本発明によれば、各ロッドの変位を別々に規制する手段をそれぞれに設ける必要がなく、1つの共通の変位規制部材によって両ロッドの変位を規制可能である。したがって部品点数や製造工数を徒に増大させることなく、側面衝突時のドア開放・ロックを防止可能である。
【0011】
上記変位規制部材は車両のドアサッシュに取り付けられているとよい。ドアサッシュはドアの窓ガラスを支持する窓枠部材であり、オープンロッドおよびキーロッドの両方に近接した位置にあるため、共通の変位規制部材を取り付けるのに好都合だからである。また従来のように、変位を規制するためのごく小さい部材を、ドアアウタパネルといった大型の部材に取り付ける必要がない。したがって変位規制部材は、第1係合部材および第2係合部材との相対的な位置関係のみに留意して取り付ければよく、高精度の位置決めを要する作業が不要となる。
【0012】
上記の第2係合部材は、車両の側方から見て、ドアサッシュと重なっているとよい。本構成により、側面衝突時に第2係合部材がドアサッシュに衝突することで、キーロッドの過剰な横方向(車両内側)への変位が規制される。キーロッドは過剰に横方向へ動くと、上端がキーシリンダに固定されているため、キーロッドが屈曲し、屈曲が生じたポイントから下の部分が上方へ引っ張られた状態となり、ロックがかかってしまうからである。
【0013】
上記課題を解決するために、本発明にかかるドアロック構造の他の代表的な構成は、回動する把持部を含むドアハンドルと、把持部の回動に連動して第1の方向に移動することによりドアを開放するオープンロッドと、キーシリンダに連結され第2の方向に移動することによりドアをロックするキーロッドと、を備え、オープンロッドは第1クランク部を有し、キーロッドは第2クランク部を有し、第1クランク部および第2クランク部より車両内側に位置し車体に固定される変位規制部材をさらに備え、変位規制部材は、オープンロッドおよびキーロッドが車両内側に移動しそれぞれ第1の方向および第2の方向に移動すると第1クランク部および第2クランク部の両方と干渉する形状を有することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、側面衝突が生じると、オープンロッドおよびキーロッドが車両内側に移動しそれぞれ第1の方向および第2の方向に移動しようとしても、1つの共通の変位規制部材が第1クランク部および第2クランク部の両方と干渉する。これによりオープンロッドおよびキーロッドの両方が動きを規制され、側面衝突時にドアは開放されることもないし、ロックされることもない。
【0015】
上記構成によっても、1つの共通の変位規制部材によって両ロッドの変位を規制可能であるため、部品点数や製造工数を徒に増大させることなく、側面衝突時のドア開放・ロックを防止可能である。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、簡便な構成で側面衝突時のドア開放・ロックを防止するドアロック構造を提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明によるドアロック構造の第1の実施形態を示す図である。
【図2】図1の部分拡大図である。
【図3】図1のドアロック構造をやや上方から見た斜視図である。
【図4】図1のドアロック構造を車両後方から見た背面図である。
【図5】図1のドアロック構造を車両前方から見た正面拡大図である。
【図6】図5の各断面図である。
【図7】本発明によるドアロック構造の第2の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0019】
(第1の実施形態)
図1は、本発明によるドアロック構造の第1の実施形態を示す図である。図1(a)は車両の進行方向(前方。図の右方向)に向かって右側のドアアウタパネル105を、車両外側から見た透視図である。ドアロック構造100は、ドアハンドル110を備え、これは回動する把持部110Aを含んでいる。キーシリンダ115はドアハンドル110に組み込まれている。ただし、キーシリンダ115をドアハンドル110とは別体とし、ドアアウタパネル105に取り付ける構成としてもよい。図1(a)のように車両外側から観察すると、実際には、ドアハンドル110以外の要素はドアアウタパネル105に隠れて見えない。
【0020】
ドアロック構造100は棒状のオープンロッド120を備えていて、これは、把持部110Aの回動に連動して第1の方向(本実施形態では下方)に移動することによりドア10を開放する。すなわち、オープンロッド120は、後述するドアサッシュ180とドアアウタパネル105との間を通過するように略上下方向に配置され、その上端部がドアサッシュ180よりも車両の前方に位置してドアアウタパネル105に取り付けられたドアハンドル110の把持部110Aに連結され、その下端部がドアサッシュ180よりも車両の後方に位置してドアラッチ130のオープンレバー132に連結されている。そして、オープンロッド120が下方に移動することによって、ドアラッチ130が所定の機構でドア10を開放する。
【0021】
ドアロック構造100は棒状のキーロッド140を備えていて、これは、キーシリンダ115にキー(図示省略)を差し込んで行う回動に連動して、第1の方向(下方)と対向する(略逆方向となる)第2の方向(上方)に移動することによりドア10をロックする。すなわち、キーロッド140は後述するドアサッシュ180とドアアウタパネル105との間を通過するように略上下方向に配置され、その上端部がドアサッシュ180よりも車両の前方に位置してキーシリンダ115に連結され、その下端部がドアサッシュ180よりも車両の後方に位置しているドアラッチ130のロックレバー142に連結されている。そして、キーロッド140が上方に移動することによって、ロックレバー142が揺動してドアラッチ130が所定の機構でドア10をロックする。
【0022】
なお本実施形態では、第1の方向と第2の方向とが対向しているが、同方向でもよい。また移動方向は上下方向に限定されず、オープンロッド120・キーロッド140は左右方向その他の方向に動く構成としてもよい。
【0023】
オープンロッド120およびキーロッド140には、それらの移動方向に交差する方向に突出して、それぞれ第1係合部材150および第2係合部材160が取り付けられている。これらはいずれもプレート状の部材である。ここで「交差する方向」とは、移動方向に対して角度をなすあらゆる方向を含む。
【0024】
(変位規制部材)
図2は図1の部分拡大図であり、図3は図1のドアロック構造100をやや上方から見た斜視図であり、図4は図1のドアロック構造100を車両後方から見た背面図である。ドアロック構造100は、さらに、変位規制部材170を備える。変位規制部材170もプレート状の部材であり、とりわけ図4から分かるように、上下方向で第1係合部材150および第2係合部材160の間であってそれらより車両内側に位置し、車体(ドアサッシュ180)に固定されている。
【0025】
変位規制部材170は略L字状をした板金部材であり、断面が略コ字状となっているドアサッシュ180の車両後方側の面に一端が溶接固定され、ドアアウタパネル105に向かって突出しドアサッシュ180のドアアウタパネル105側の面に略平行に屈曲している他端を有している。この他端は、車両の上下方向でオープンロッド120がドアを開放しない状態位置での第1係合部材150の位置とキーロッド140がドアをロックしない状態位置での第2係合部材160の位置との間の高さに位置し、ドアサッシュ180のドアアウタパネル105側の面に対して第1係合部材150および第2係合部材160の板厚よりも大きな距離を保って略平行にドアサッシュ180の側方に配置されている。また、変位規制部材170は、通常は第1係合部材150および第2係合部材160と車両の上方から見て間を空けた位置に配置されていて、変位規制部材170のドアアウタパネル105側を第1係合部材150および第2係合部材160が通過するのでそれらが当接せずオープンロッド120およびキーロッド140の動きを妨げない。
【0026】
図5は図1のドアロック構造100を車両前方から見た正面拡大図であり、図5(a)は、ドアアウタパネル105が側面衝突を受ける前の状態を示し、図5(b)はドアアウタパネル105が側面衝突を受けた後の状態を示す。図6は図5の各断面図であり、図6(a)(b)はそれぞれ、図5(a)(b)のB−B断面図およびC−C断面図である。車両のドアが側面衝突を受けると、第1係合部材150と第2係合部材160が、変形したドアアウタパネル105に押される。これによって図5(a)・図6(a)の状態から図5(b)・図6(b)に示すようにオープンロッド120およびキーロッド140は車両内側に移動する。
【0027】
そうすると、第1係合部材150と第2係合部材160のそれぞれの車両内側の端部が変位規制部材170の上方位置および下方位置に移動することになる。この状態でさらに、オープンロッド120およびキーロッド140のそれぞれが下方および上方に移動することがある。つまり、側面衝突の衝撃でドアハンドル110の把持部110Aが揺動し、連結されたオープンロッド120は下方(ドアラッチ解除方向)に変位しようとすることがある。また、側面衝突を受けてドアアウタパネル105が変形することにより、キーシリンダ115とドアラッチ130のロックレバー142との連結距離が大きくなり、キーロッド140は引っ張られて上方(ドアラッチがロック状態となる方向)に変位しようとすることがある。この時、図6(b)に示すように、変位規制部材170は、第1係合部材150および第2係合部材160の両方と干渉する位置にあり、上下方向に移動する第1係合部材150および第2係合部材160と干渉する形状を有している。
【0028】
図5および図6に示すように、オープンロッド120およびキーロッド140には、それぞれ、ドアサッシュ180と略平行となる部分が形成され、そこに第1係合部材150および第2係合部材160がそれぞれ溶接固定されている。第1係合部材150、第2係合部材160は略L字状をした板金部材であり、両方とも、一端がオープンロッド120からドアアウタパネル105に向かって突出している。第1係合部材150、第2係合部材160の両方の一端は、ドアアウタパネル105から等しい間隔をおいて、ドアアウタパネル105に近接配置されている。図6(b)に示すように、この突出形状が側面衝突時にドアアウタパネル105に当接し、ドアアウタパネル105の変形の動きを早期に利用して第1係合部材150、第2係合部材160を車両の内側に移動させることができる。
【0029】
第1係合部材150、第2係合部材160の他端は、それぞれ、オープンロッド120からドアサッシュ180に向かって突出し、ドアサッシュ180と略平行に屈曲している。この屈曲した他端は、ドアサッシュ180の側方に近接配置されているが、変位規制部材170に比較すると、ドアサッシュ180からは大きな等しい距離を保っている。この第1係合部材150、第2係合部材160の他端は、図6(b)に示すように、第1係合部材150、第2係合部材160の車両の内側への移動によって、車両の上方から見て変位規制部材170と干渉する(重なる)位置に移動し、その後の上下方向の動きによって変位規制部材170と当接する部位となる。
【0030】
図6に示すように、変位規制部材170も略L字状をした板金部材である。変位規制部材170の一端は、断面略コ字状のドアサッシュ180の車両後方側の面に溶接固定されている。変位規制部材170は、この溶接固定された一端からドアアウタパネル105に向かって延び、ドアサッシュ180のドアアウタパネル105側の面に略平行に屈曲してさらに長く延びている。この長く延びた変位規制部材170の他端は、車両の上下方向において、オープンロッド120がドアを開放しない状態での第1係合部材150の位置と、キーロッド140がドアをロックしない状態での第2係合部材160の位置との間の高さに位置する。変位規制部材170の他端は、ドアサッシュ180のドアアウタパネル105側の面に対して第1係合部材150および第2係合部材160の板厚よりも大きな距離を保って略平行にドアサッシュ180の側方に配置されている。
【0031】
図6(a)に示すように、変位規制部材170は、通常は第1係合部材150および第2係合部材160に対して、車両の上方から見て間隔をおいた位置に配置されている。したがって、変位規制部材170のドアアウタパネル105側を第1係合部材150および第2係合部材160が通過するのでそれらが当接せずオープンロッド120およびキーロッド140の動きを妨げない。
【0032】
変位規制部材170、第1係合部材150および第2係合部材160は、上記の干渉する条件を満たしていれば、それぞれ、本実施形態と異なるいかなる形状を有していてもよい。
【0033】
上記構成によれば、側面衝突が生じると、オープンロッド120およびキーロッド140が車両内側に移動し、その後それぞれ下方および上方に移動しようとしても、図6(b)に示すように、1つの共通の変位規制部材170が第1係合部材150および第2係合部材160の両方と干渉する。これによりオープンロッド120およびキーロッド140の両方が動きを規制され、側面衝突時にドア10は開放されることもないし、ロックされることもない。
【0034】
本実施形態によれば、1つの共通の変位規制部材170によって両ロッドの変位を規制可能であるため、各ロッド120、140の変位を別々に規制する手段をそれぞれに設ける必要がない。したがって部品点数や製造工数を徒に増大させることなく、側面衝突時のドア開放・ロックを防止可能である。
【0035】
なお、第1係合部材150および第2係合部材160の各ロッド120、140への取り付け位置は、車両の側方から見て、各ロッド120、140の連結点(ドアハンドルの把持部110A側とドアラッチのオープンレバー132側、キーシリンダ115側とドアラッチのロックレバー142側)を結んだ直線上にあることが望ましい。その理由は、側面衝突の衝撃でそれぞれのロッドにおいてそれぞれの連結点を結んだ直線まわりの回転モーメントが発生することを防止してそれぞれのロッドの回転変位によって第1係合部材150および第2係合部材160の変位規制部材170およびドアサッシュ180に対する位置関係がずれてしまうことを防止するためである。
【0036】
(ドアサッシュ)
本実施形態では、変位規制部材170は車両のドアサッシュ180に取り付けられている。ドアサッシュ180はドア10の窓ガラスを支持する窓枠部材であり、断面略コ字状に形成されて、その内部にガラスランがはめ込まれ、窓ガラスが昇降するガイド溝を構成している。このドアサッシュ180はオープンロッド120およびキーロッド140の両方に近接した位置にあるため、共通の変位規制部材170を取り付けるのに好都合だからである。
【0037】
また従来のように、変位を規制するためのごく小さい部材を、ドアアウタパネルといった大型の部材に取り付ける必要がない。したがって変位規制部材170は、第1係合部材150および第2係合部材160との相対的な位置関係のみに留意して取り付ければよく、高精度の位置決めを要する作業が不要となる。
【0038】
さらに、第1係合部材150および第2係合部材160の両方と干渉する限り、変位規制部材170は、ドアサッシュ180のどこに設けてもよく、レイアウト上の自由度が向上する。オープンロッド120およびキーロッド140の形状、第1係合部材150および第2係合部材160の形状と各ロッドへの取り付け位置、変位規制部材170の形状とドアサッシュ180への取り付け位置のそれぞれを調整することにより、レイアウトの最適化をはかることができる。
【0039】
ところで、ドア10は、ドアアウタパネル105とドアインナパネル(図示省略)との外周縁部を接合し内部に空間を形成した最中状の構造となっている。そして、ドア10の窓12の下辺部はドアアウタパネル105とドアインナパネルとの間が開口していて、窓ガラスがドア内部に昇降するようになっている。
【0040】
ドアサッシュ180の上側は、ドア10の窓枠11を構成する補強部材に設けられた係合部(図示省略)に下方から上端部を差し込むことにより固定されている。ドアサッシュ180の下側は、サポート部180Aをドアインナパネルに車両内側からボルトにて締め付けることによって固定されている。
【0041】
なお、変位規制部材を取り付けるのに最も好都合と考えられるのは、現状ではドアサッシュ180であるが、それ以外の車体部分に変位規制部材170を取り付けることを排除するものではない。
【0042】
(キーロッド・第2係合部材)
本実施形態では、第2係合部材160は、車両の側方から見て、すなわち図6の左(車両外側)から見て、ドアサッシュ180と重なっている。本構成により、側面衝突時に第2係合部材160がドアサッシュ180に衝突することで、キーロッド140の過剰な横方向(車両内側)への変位が規制される。すなわちキーロッド140は側面衝突時に図6(b)の位置よりさらに右(車両内側)へは動かない。キーロッド140は過剰に横方向へ動くと、上端がキーシリンダ(図示省略)に固定されているため、キーロッド140が屈曲し、屈曲が生じたポイントから下の部分が上方へ引っ張られた状態となり、ロックがかかってしまうからである。なお、オープンロッド120は下方がラッチ解除方向であり、上へ引っ張られても支障がないため、このようなレイアウトは必要ない。
【0043】
(第2実施形態)
図7は、本発明によるドアロック構造の第2の実施形態を示す図である。本実施形態にかかるドアロック構造200について、第1の実施形態と異なる点のみ、以下、説明する。本実施形態におけるオープンロッド220は第1クランク部220Aを有し、キーロッド240は第2クランク部240Aを有する。
【0044】
図7(a)(b)はそれぞれ、ドアアウタパネル105が側面衝突を受ける前の状態と受けた後の状態とを示す。本実施形態では、変位規制部材170は、車両の上下方向で第1クランク部220Aおよび第2クランク部240Aの間であって車両の上方から見てそれらより車両内側に位置し、車体(ドアサッシュ180)に固定されている。オープンロッド220およびキーロッド240が側面衝突を受けると、それらは、変形したドアアウタパネル105に押されて図7(a)の状態から図7(b)に示すように車両内側に移動する。そうすると、第1クランク部220Aおよび第2クランク部240Aが変位規制部材170の上方位置および下方位置に移動することになる。この状態でオープンロッド220およびキーロッド240がそれぞれ第1の方向(下方)および第2の方向(上方)に移動すると、第1クランク部220Aおよび第2クランク部240Aの両方が干渉する位置に変位規制部材170は配置されていて、干渉する形状を有している。
【0045】
上記構成によれば、側面衝突が生じると、オープンロッド220およびキーロッド240が車両内側に移動し、その後、それぞれ下方および上方に移動しようとしても、図7(b)に示すように、1つの共通の変位規制部材170が第1クランク部220Aおよび第2クランク部240Aの両方と干渉する。これにより、第1の実施形態と同様に、オープンロッド220およびキーロッド240の両方が動きを規制され、側面衝突時にドア10は開放されることもないし、ロックされることもない。
【0046】
上記構成によっても、1つの共通の変位規制部材170によって両ロッド220、240の変位を規制可能であるため、部品点数や製造工数を徒に増大させることなく、側面衝突時のドア開放・ロックを防止可能である。
【0047】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、ドアハンドルによってドアが開放され、キーシリンダによってドアがロックされるドアロック構造に利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10 …ドア
11 …窓枠
12 …窓
100、200 …ドアロック構造
105 …ドアアウタパネル
110 …ドアハンドル
110A …把持部
115 …キーシリンダ
120、220 …オープンロッド
130 …ドアラッチ
132 …オープンレバー
140、240 …キーロッド
150 …第1係合部材
160 …第2係合部材
170 …変位規制部材
180 …ドアサッシュ
180A …サポート部
220A …第1クランク部
240A …第2クランク部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回動する把持部を含むドアハンドルと、
前記把持部の回動に連動して第1の方向に移動することによりドアを開放するオープンロッドと、
キーシリンダに連結され第2の方向に移動することによりドアをロックするキーロッドと、
前記オープンロッドに、その移動方向に交差する方向に突出して取り付けられる第1係合部材と、
前記キーロッドに、その移動方向に交差する方向に突出して取り付けられる第2係合部材と、
第1係合部材および第2係合部材より車両内側に位置し車体に固定される変位規制部材と、
を備え、
前記変位規制部材は、前記オープンロッドおよびキーロッドが車両内側に移動しそれぞれ第1の方向および第2の方向に移動すると第1係合部材および第2係合部材の両方と干渉する形状を有することを特徴とするドアロック構造。
【請求項2】
前記変位規制部材は車両のドアサッシュに取り付けられていることを特徴とする請求項1に記載のドアロック構造。
【請求項3】
第2係合部材は、車両の側方から見て、前記ドアサッシュと重なっていることを特徴とする請求項2に記載のドアロック構造。
【請求項4】
回動する把持部を含むドアハンドルと、
前記把持部の回動に連動して第1の方向に移動することによりドアを開放するオープンロッドと、
キーシリンダに連結され第2の方向に移動することによりドアをロックするキーロッドと、を備え、
前記オープンロッドは第1クランク部を有し、
前記キーロッドは第2クランク部を有し、
第1クランク部および第2クランク部より車両内側に位置し車体に固定される変位規制部材をさらに備え、
前記変位規制部材は、前記オープンロッドおよびキーロッドが車両内側に移動しそれぞれ第1の方向および第2の方向に移動すると第1クランク部および第2クランク部の両方と干渉する形状を有することを特徴とするドアロック構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−102485(P2011−102485A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257610(P2009−257610)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】