説明

ドア装置

【課題】機構を単純化し製造コストを低減できるとともに、何らかの不具合であっても、確実にラッチ機構を解除し、扉部材を開閉させることができる。
【解決手段】車体Pに設けられた開口部Qを開閉可能に形成されたスライドドア11と、スライドドア11が全開時と全閉時にスライドドア11の動作を規制し、この規制を解除するラッチ機構20〜50と、ラッチ機構20〜50を駆動するECU13と、スライドドア11内に収容され、ECU13を駆動する蓄電池14とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に設けられたドアのドア装置に関し、特に機構を単純化でき、製造コストを低減できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
車体の前後方向に沿ってスライドドア(扉部材)がスライド開閉するスライドドア装置(ドア装置)には、ラッチ機構が設けられている。ラッチ機構は、スライドドアを全開にしたときや全閉にしたときに、その位置で固定する機能を有している。このようなラッチ機構としては様々な技術が知られている。
【0003】
例えば、ラッチ機構は、スライドドアに複数箇所設けられており、これらのラッチ機構が連動して動作するように、リンク機構やワイヤで接続するものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−129812号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したドア装置では、次のような問題があった。すなわち、ラッチ機構をリンク機構やワイヤで連動させる場合は、機構が複雑となり、製造コストが上昇するという問題があった。
【0005】
一方、全てのラッチ機構を電動として集中制御する方法も考えられるが、バッテリー上がりや事故時等でラッチ機構を解除できず、スライドドアが開けられなくなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、機構を単純化し製造コストを低減できるとともに、何らかの不具合であっても、確実にラッチ機構を解除し、扉部材を開閉させることができるドア装置及びこのドア装置を有する車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決し目的を達成するために、本発明のドア装置は次のように構成されている。
【0008】
上記の課題を解決する第1の発明に係るドア装置は、車体に設けられた開口部を開閉可能に形成された扉部材と、上記扉部材が全開時と全閉時に上記扉部材の動作を規制するラッチ部と、このラッチ部の規制を解除するラッチ解除部と、上記ラッチ部と上記ラッチ解除機構を駆動する制御部と、上記扉部材内に収容され、上記制御部を駆動する蓄電池とを備えていることを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決する第2の発明(請求項2に対応)に係るドア装置において、上記扉部材は、上記車体の前後方向に沿ってスライド移動するものであり、上記ラッチ部は、4つの第1〜第4のラッチ機構を備え、上記第1〜第4のラッチ機構のうち、第1及び第2のラッチ機構は、上記扉部材の車体前後方向に離間して配置されるとともに、上記制御部により制御されるパワーラッチであり、第3及び第4のラッチ機構は、それぞれ第1及び第2のラッチ機構にワイヤで接続されて動作するマニュアルラッチであることを特徴とする。
【0010】
上記の課題を解決する第3の発明(請求項3に対応)に係るドア装置において、上記第1のラッチ機構と上記第3のラッチ機構との距離は、上記第1のラッチ機構と上記第4のラッチ機構との距離より大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載された発明によれば、機構を単純化し製造コストを低減できるとともに、何らかの不具合であっても、確実にラッチ機構を解除し、扉部材を開閉させることができる。
【0012】
請求項2に記載された発明によれば、スライドドアにおいて、複数のラッチ機構を同時に作動させることができる。
【0013】
請求項3に記載された発明によれば、ワイヤの曲率半径を大きくさせ、動作を確実に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は本発明の一実施の形態に係るスライドドア装置(ドア装置)10を車体外側から示す模式図、図2は同スライドドア装置10を内側から示す模式図である。
【0015】
スライドドア装置10は、車体Pに設けられた開口部Qを開閉可能に形成されたスライドドア11と、スライドドア11が全開時と全閉時にスライドドア11の動作を解除自在に規制するドアラッチ機構12と、このラッチ部12を駆動する制御するECU13と、スライドドア11内に収容され、制御部13を駆動する蓄電池14とを備えている。なお、制御部13と各部はハーネス15により接続されている。
【0016】
スライドドア11は、車両外側に設けられたドアレバー11aと、車両内側に設けられたドアレバー11bとを備えている。
【0017】
ドアラッチ機構12は、4つのラッチ機構20〜50を備えている。ラッチ機構(第1のラッチ機構)20は、スライドドア11の前側上部に設けられておおり、電動で係合・開放の動作を行うパワーラッチ21と、このパワーラッチ21の動作を後述するワイヤ60に伝達するリンク機構22とを備えている。パワーラッチ21は、ECU13によってその動作が制御されている。ラッチ機構(第2のラッチ機構)30は、ラッチ機構20に対し、スライドドア11の前後方向に離間した位置、すなわちスライドドア11の後側上部に設けられており、電動で係合・開放の動作を行うパワーラッチ31と、このパワーラッチ31の動作を後述するワイヤ61に伝達するリンク機構32とを備えている。パワーラッチ31は、ECU13によってその動作が制御されている。
【0018】
ラッチ機構(第3のラッチ機構)40は、スライドドア11の前側下部に設けられており、ワイヤ60の動作により開放の動作を行うマニュアルラッチ41を備えている。ラッチ機構(第4のラッチ機構)50は、スライドドア11の前側中部に設けられており、ワイヤ61の動作により開放の動作を行うマニュアルラッチ51を備えている。なお、ラッチ機構20とラッチ機構40との距離は、ラッチ機構20とのラッチ機構50との距離より大きい関係にある。
【0019】
ラッチ機構20とラッチ機構40とは、ワイヤ60で接続されており、ラッチ機構20におけるパワーラッチ21の開放動作に伴ってラッチ機構40のマニュアルラッチ41が解除される。また、ラッチ機構30とラッチ機構50とは、ワイヤ61で接続されており、ラッチ機構30のパワーラッチ31の開放動作に伴ってラッチ機構50のマニュアルラッチ51が解除される。
【0020】
ECU13は、車両全体の制御を行うメインECU(不図示)とハーネス15を介して接続されており、制御信号がやりとりされている。また、蓄電池14はECU13を介してメインECUと接続され、充電が行われている。
【0021】
このように構成されたスライドドア装置10は、次のように動作する。なお、スライドドア全閉時は、ラッチ機構20,30,40が係合した状態となり、ラッチ機構50は開放した状態となっている。また、ドア全開時は、ラッチ機構20,30,40が開放した状態となり、ラッチ機構50は係合した状態となっている。
【0022】
スライドドア11を開放するときは、ドアレバー11a,11bが操作されると、ECU13に開放信号が送られ、ECU13からラッチ機構20及びラッチ機構30に駆動信号が送られ、パワーラッチ21及びパワーラッチ31が動作し、係合が解除される。また、パワーラッチ21の動作に伴ってワイヤ60を介してマニュアルラッチ41による係合が解除される。そして、スライドドア11が電動であれば、開放方向へのモータが駆動されるように、ECU13からメインECUに信号が送られる。なお、運転席からの操作やキーからの電波によりECUに開放信号を送るようにしてもよい。
【0023】
一方、スライドドア11を閉じるときは、ドアレバー11a,11bを操作すると、ECU13に閉塞信号が送られ、ECU13からラッチ機構30に駆動信号が送られ、パワーラッチ31が動作し、この動作に伴ってワイヤ61を介してマニュアルラッチ51による係合が解除される。スライドドア11が電動であれば、閉塞方向へのモータが駆動されるように、ECU13からメインECUに信号が送られる。なお、開放方向へのモータと閉塞方向へのモータとを1個のモータで兼用してもよい。
【0024】
なお、バッテリー上がりや事故等でメインECUから電力が供給されない場合であっても、蓄電池14はECU13に電力を供給することができるため、パワーラッチ21,31を動作させることができ、これに伴いマニュアルラッチ41,51も動作させることができる。
【0025】
上述したように本実施の形態に係るスライドドア装置1によれば、各ラッチ機構20〜50は、ECU13及びワイヤ60,61を介して連動して動作するように構成されているため、各ラッチ機構相互間にはリンク機構が不要となり、機構が複雑にならず、製造コストが低減する。
【0026】
また、ECU13は蓄電池14によって駆動されているため、バッテリー上がりや事故時においてもスライドドア11を開放させることができ、安全を確保することができる。
【0027】
さらに、ワイヤ60,61は、パワーラッチ21,31はより距離が大きい側のマニュアルラッチ41,51を動作させるように構成されているため、ワイヤ60,61の曲率半径を大きくすることができ、確実な動作を実現できる。
【0028】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなくい。例えば、上述した例では、スライドドアに適用したものについて説明したが、通常のドアに適用してもよい。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施の形態に係るスライドドア装置を外側から示す模式図。
【図2】同スライドドア装置を内側から示す模式図。
【符号の説明】
【0030】
10…スライドドア装置、11…スライドドア、12…ドアラッチ機構、13…ECU、14…蓄電池、20〜50…ラッチ機構、21,31…パワーラッチ、41,51…マニュアルラッチ、60,61…ワイヤ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に設けられた開口部を開閉可能に形成された扉部材と、
上記扉部材が全開時と全閉時に上記扉部材の動作を規制するラッチ部と、
このラッチ部の規制を解除するラッチ解除部と、
上記ラッチ部と上記ラッチ解除機構を駆動する制御部と、
上記扉部材内に収容され、上記制御部を駆動する蓄電池とを備えていることを特徴とするドア装置。
【請求項2】
上記扉部材は、上記車体の前後方向に沿ってスライド移動するものであり、
上記ラッチ部は、4つの第1〜第4のラッチ機構を備え、
上記第1〜第4のラッチ機構のうち、第1及び第2のラッチ機構は、上記扉部材の車体前後方向に離間して配置されるとともに、上記制御部により制御されるパワーラッチであり、第3及び第4のラッチ機構は、それぞれ第1及び第2のラッチ機構にワイヤで接続されて動作するマニュアルラッチであることを特徴とする請求項1に記載のドア装置。
【請求項3】
上記第1のラッチ機構と上記第3のラッチ機構との距離は、上記第1のラッチ機構と上記第4のラッチ機構との距離より大きいことを特徴とする請求項2に記載のドア装置。

【図1】
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【図2】
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