説明

ドクターブレード、コータブレード及びクレーピングブレード用のスチールバンド、並びにこれらを製造するための粉末冶金方法

本発明は、ドクターブレード、コータブレード又はクレーピングブレードを製造するためのスチールバンド(1)であって、重量パーセントで1〜3%のC、4〜10%のCr、1〜8%のMo、2.5〜10%のV、並びに通常の量の残りの必須の鉄及びコンタミナントを含むようなスチール組成物を有し、粉末冶金処理を用いて製造されるスチールバンド(1)に関するものである。更に、本発明は、このスチールバンド製のドクターブレード、コータブレード又はクレーピングブレード、及びその製造方法にも関するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コータブレード(coater blade)、ドクターブレード(doctor blade)及びクレーピングブレード(creping blade)の製造のための材料として使用される0.05〜1.2mmの厚さを持つ冷間圧延バンドに関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工業においては、紙ウェブ(紙匹)をコーティングスリップで被覆するために薄く長いブレードの形状のコータブレード又はドクターブレードが使用される。これらのブレードは移動する紙ウェブに押圧され、両面被覆が行われる場合は、通常、該紙ウェブの反対側においてカウンタ(相手側)ローラ又はブレードにより後圧が掛けられる。均一且つ最高品質の被覆を得るために、斯かるコータブレードは真っ直ぐでなければならない。通常の仕様は、コータブレードの加工されたエッジが、完全な直線性から3000mmのコータブレード長当たり0.3mmより多くずれてはならないというものである。
【0003】
この要件を満たすためには、細条が硬化処理及び焼き戻し処理(tempering)の間に(当該スチール細条が、これらの処理を受けなければならない場合)変形するのを回避するようなスチール合金を選択する必要がある。この点に関して合金スチールの方が非合金スチールよりも多くの問題を生じることは既知の事実であり、このことは、幾つかの異なる相互作用し合う合金元素を含むようなスチール合金の場合は特にそうである。コータブレードにおける最も普通の材料は、伝統的に、炭素鋼である。このようなスチールの典型的な組成は、例えば、(重量%で)1.00%のC、0.30%のSi、0.40%のMn、0.15%のCr、並びに通常の割合の残部の鉄及びコンタミナントである。例えば(重量%で)0.38%のC、0.5%のSi、0.55%のMn、13.5%のCr、1.0%のMoなる主組成、並びに通常の割合の残部の鉄及びコンタミナントを有するスチール等の、マルテンサイト・ステンレススチールもコータブレードを作製するために使用される。
【0004】
製紙工業においては、紙上に一定量のクレーピングを得るために、クレーピングブレードも上述したものと同様の条件下で使用される。上述したものに対するのと同様に、これらのクレーピングブレードに対しても、加工エッジの直線性に対し高い要求が設定される。
【0005】
印刷工業においても、スクレーパ(scraper)として知られている帯状の展延工具(spreading tool)が使用される。これらは、製紙工業において使用されるコータブレードと類似している。これらスクレーパも直線性の点で高い要件を満たさねばならない。スクレーパ及びコータブレードの両方において、同様の材料が使用されている。
【0006】
コータブレードは、表面塗布材料に研磨性染料を使用することにより、及び基体の紙によりエッジが大きく摩滅される。ドクターブレードも、斯かるドクターブレードにより塗布される塗布インク内の色染料により大きく歪まされる。このように、コータブレード及びドクターブレードの両者とも、高い耐摩耗性及び結果としての長寿命を有することが望ましい。
【0007】
しかしながら、炭素鋼の及びマルテンサイト・ステンレススチールの何れのドクターブレードも、この条件を満たしていない。従って、紙マシンの数時間の運転の後にはブレードを交換するというのが標準的な作業である。勿論、これは、ブレードを交換する際の生産のロスにより欠点となる。
【0008】
ヨーロッパ特許第EP0672761B1号には、(重量%で)0.46%〜0.70%のC、0.2%〜1.5%のSi、0.1%〜2.0%のMn、1.0%〜6.0%のCr、0.5%〜5%のMo、0.5%〜1.5%のV、最大で0.01%のB、最大で1.0%のNi、最大で0.2%のNb、並びに通常の割合の残部の鉄及びコンタミナントを含む組成のスチールが記載されている。該スチールは、薄い冷間圧延バンドを製造するのに適しており、硬化され且つ焼き戻しされた条件で、ドクターブレード及び/又はコータブレードを製造するために使用することができる。当該冷間圧延処理は、1000℃におけるオーステナイト化による硬化処理工程、及びこれに続く240℃から270℃の間の温度における鉛浴内での焼き戻し処理工程を含む。この材料のドクター及び/又はコータブレードは良好な耐摩耗性及び直線性を有し、寿命は12ないし16時間である。
【0009】
合金スチールの耐摩耗性が非合金スチールのものより高くなり得ることも知られている。これは、特定の工具スチール及び構造スチールにおいて有利である。幾つかの例は、プラスチック金型における案内ピン、並びに例えば高温でのアルミニウム押し出し用のノズル及びタービンブレード、鍛造工具、切断工具又は同様の製品であってブロック又は棒状材料から形成される熱間加工スチールに関して特許出願公開第61-41749号に並びに米国特許第4,743,426号及び同第2,565,264号に記載された合金スチールである。しかしながら、この種のスチール合金はコータ及びドクターブレード並びにクレーピングブレード用の薄い、冷間圧延され、硬化され且つ焼き戻しされるようなバンドの製造には使用されない。これは、恐らくは、当該バンドの冷間圧延及び熱処理の間に亀裂の発生、直線性からのズレ及び同様の欠陥につながるような大きな問題が生じ得、かくして該材料はコータ及び/又はドクターブレード又はクレーピングブレードには不適であるからであろう。
【0010】
ドクターブレードの寿命を増加させる既知の方法は、エッジをセラミック層で被覆することである。これは、有効寿命を大幅に増加させる。しかしながら、これらのドクターブレードは非常に高価であり、従って普及していない。
【0011】
国際特許出願公開第WO02/35002号に記載された他の異なる方法では、バイメタルドクターブレードが提案されている。この場合、コータブレードの基体バンドは強靱な弾性スチールを有し、当該ドクターブレードの寿命を増加させるために、該基体バンド上にHSSの耐摩耗性条片が被着される。これらのバイメタルドクターブレードは、それらの材料差により、基体バンドからエッジへの遷移部における剛性に関して問題を有する。更に、このようなバイメタルコータブレードは製造に費用がかかり、それに応じて高価となる。
【0012】
このようなドクター及びコータブレードの寿命を増加させるために、例えばモリブデン(Mo)、バナジウム(Va)、クロム(Cr)又はタングステン(W)等の炭化物形成成分の含有量を増加させることが考えられる。しかしながら、これらの成分は、従来の製造工程における溶解物の固化の間においてスチール内に大きな炭化物を形成する傾向がある。
【0013】
このような大きな炭化物はドクター及びコータブレードにおいては望ましくない。何故なら、斯かるブレードの使用の間において、硬い炭化物結晶の周囲の材料が該炭化物結晶自体に比較して高い摩耗度を有するからである。従って、或る使用時間の後に、エッジにおいて上記の大きな炭化物結晶がブレードの周囲のスチールから突出する。これは、紙の表面に掻き傷を生じさせ、又は紙の被覆に縞を生じさせ得る。更に、前記炭化物結晶により、通常はプラスチックにより被覆された相手側ローラが損傷されかねない。
【0014】
コータブレード及びドクターブレードは、最初はブロックから高温バンドへと熱間圧延され、該高温バンドは0.05mmないし1.2mmの厚さ及び10mmないし250mmの幅を持つスチールバンドへ冷間圧延される。しかしながら、従来製造された高炭化物含有量のスチールバンドは、冷間成形に対して限られた可能性しか有していない。これらスチールバンドは脆くなる傾向があり、上述した寸法に冷間成形される場合、斯かるスチールバンドは成形後に、しばしば、亀裂を示す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って、本発明の課題は、ドクター、コータ及びクレーピングブレード用のスチールバンドであって、増加された寿命を有し、費用効率的に製造することができるようなスチールバンドを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上述した課題は、請求項1に記載のスチールバンド、請求項22ないし24の何れか一項に記載のコータブレード、ドクターブレード若しくはクレーピングブレード、又は請求項25に記載の斯かるブレードを製造する方法により解決される。
【0017】
特に、上記課題は、ドクターブレード、コータブレード又はクレーピングブレードを製造するためのスチールバンドであって、重量パーセントで、
1〜3%のC、
4〜10%のCr、
1〜8%のMo、
2.5〜10%のV、
並びに通常の量及び割合で残りの実質的な鉄及びコンタミナントを含むスチール組成を有し、上記スチールバンドが粉末冶金方法を用いることにより製造されるようなスチールバンドにより解決される。
【0018】
上記粉末冶金製造方法によれば、上記組成のスチールであって、高炭化物含有量を有しながら、脆弱にならず又は亀裂を発生させることなくドクターブレード、コータブレード又はクレーピングブレード用のスチールバンドに変形することが可能なスチールバンドを形成することができる。以下においては、ドクターブレード、コータブレード及びクレーピングブレードは“ブレード”なる用語で要約される。更に、本発明によるスチールバンドは、非常に多数の小さな炭化物結晶を有し、かくして、斯かるスチールバンドから形成されるブレードはエッジで均一に摩耗し、紙における傷の形成又は紙の被覆における縞の形成が現れることがない。加えて、本発明によるスチールバンドのブレードは、費用のかかる高価な製造方法を使用することなしで高耐摩耗性を有する。バイメタルドクターブレードでは現れるような強度の問題も、本発明によるスチールバンドの一体的材料では現れ得ない。
【0019】
好ましくは、当該スチールバンドは0.025ないし1.2mmの厚さ及び/又は10ないし250mmの幅を有する。
【0020】
好ましい実施例においては、当該スチールバンドは冷間圧延方法を用いることにより製造される。マイクロ構造の微細粒状度により、上記寸法への冷間圧延が可能になる。
【0021】
当該スチール組成の他の成分は従属請求項に記載されている。好ましい実施例においては、当該スチール組成は、下記の成分を下記の重量割合で累算的に又は代替的に有する、
1.5〜3%のC、
微量ないし最大で1.1%のSi、好ましくは0.8〜1.1%のSi、より好ましくは1.0%のSi、
微量ないし最大で1%のMn、好ましくは0.4〜0.5%のMn、
コンタミナント以下のW、
Moの代わりの2〜16%のW、
微量以下のCo、
微量ないし最大で12%のCo、
6〜10%のCr、好ましくは6.5〜8.5%のCr、
1〜2%のMo、好ましくは1.5%のMo、
4〜10%のV、
1.0〜2.5%のC、好ましくは1.2〜2.3%のC、
1%のSi、好ましくは0.5%のSi、
微量ないし最大で1%のMn、好ましくは0.3%のMn、
4〜5%のCr、好ましくは4.2%のCr、
4〜8%のMo、好ましくは6〜7%のMo、
6〜7%のW、好ましくは6.4〜6.5%のW、
2〜7%のV、好ましくは3.0〜6.5%のV、及び/又は
7〜12%のCo、好ましくは8〜11%のCo。
【0022】
好ましくは、上記スチールバンドは、500ないし600HV、好ましくは575ないし585HVの硬度、及び/又は0.3mm/3000mmバンド長の直線度を持つ作用エッジを有するようにする。
【0023】
他の実施例では、上記作用エッジは硬化(好ましくは、レーザビームにより硬化)される。これは、真空環境を使用しないで、材料への熱エネルギの非常に集中された導入が可能となるという利点を有している。
【0024】
本発明によるスチールバンドから製造されるコータブレードは、好ましくは、0.25ないし0.64mmの厚さを有する。本発明によるスチールバンドから製造されるドクターブレードは、好ましくは、0.15ないし1.0mmの厚さを有する。本発明によるスチールバンドから製造されるクレーピングブレードは、好ましくは、0.25ないし1.2mmの厚さを有する。
【0025】
前記課題は、更に、コータブレード、ドクターブレード又はクレーピングブレードを製造する方法であって、
a)本発明によるスチール組成を持つスチールブロックを粉末冶金製造するステップ、
b)前記スチールブロックをスチールバンドに熱間圧延するステップ、及び
c)前記スチールバンドを最大で1.2mmの厚さを持つバンドに冷間圧延するステップ、
をこの順に有するような方法により解決される。
【0026】
好ましくは、前記冷間圧延するステップは、エッジ支持体により実施される。
【0027】
他の好ましい実施例においては、前記冷間圧延するステップの後に、硬化ステップが950℃ないし1050℃の温度で実施され、550℃ないし650℃の温度における焼き戻しステップが後続する。
【0028】
好ましくは、上記冷間圧延するステップ、硬化ステップ及び焼き戻しステップは連続した処理において実施される。
【0029】
更に好ましい硬化ステップは冷却ステップを有し、該ステップにおいて前記バンドは冷却板の間において150ないし250℃の温度まで冷却される。
【0030】
好ましくは、前記バンドの作用エッジは、硬化される、好ましくはレーザビームにより硬化される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の好ましい実施例を、図面を参照して説明する。
【0032】
前述したように、本発明は、冷間圧延され、硬化され且つ焼き戻しされたバンドの形態でブレード(コータブレード及びドクターブレード、スクレーパ、クレーピングブレード、ブレード、ドクターナイフ、ワイパ)を製造するための特別な組成を持つ特別なスチール合金に関するものである。
【0033】
図1は、出荷に供されるような、コイル巻き状態における本発明によるスチールバンド1の三次元図を示す。図3は、寸法を明らかにしている。典型的には、幅Bは10mmと250mmとの間にあり、コータブレードの厚さは0.05mmと1.2mmとの間にあり、典型的な場合においては0.25mmと0.64mmとの間にある。ドクターブレードの場合、上記厚さは典型的な場合においては0.15mmと1.0mmとの間にあり、クレーピングブレードは0.25ないし1.2mmなる典型的な厚さを有する。
【0034】
図3に示されるように、ブレードの加工されたエッジ20は直線的(即ち、90°なる角度を有する)とすることができる。しかしながら、エッジ10は図2に示されるようにテーパ状とすることもできる。これは、コータブレード用に及びドクターブレード用にも同様に使用されるエッジの形状である。
【0035】
異なる合金成分の含有量及び斯かる成分の該特定の使用分野のためのスチールに関する意味を以下に詳細に説明する。
【実施例1】
【0036】
本発明の第1実施例によれば、当該スチールには、永久的な変形を受けることなく紙ウェブ又はインク塗布ローラに押圧されるのに耐えるほど充分な基本硬度を該スチールに付与するため、及び焼き戻しの間においてMC炭化物を形成するために、炭素が充分な量で存在しなければならない。MC炭化物は析出硬化を、従って改善された耐摩耗性をもたらす。従って、炭素含有量は少なくとも1.0%、好ましくは1.5%とすべきである。最大炭素含有量は3%である。
【0037】
当該スチールには、焼き戻しの間において析出により非常に小さなMC炭化物を形成するためにバナジウムが存在すべきである。これらのMC炭化物は、本発明によるドクターブレードの驚くほど良好な耐摩耗性の主たる原因であると考えられる。これら炭化物はサブマイクロスコピック尺度のものであり、これは1〜3μmの間の大きさのオーダの最大寸法を意味する。MC炭化物の充分に高い体積割合を提供するために、バナジウム含有量は少なくとも4%Vとすべきである。該バナジウム含有量は10%Vを超えてはならない。
【0038】
クロム含有量は、当該スチールに充分な硬化性を付与するために、即ち空気焼き入れの間又はオーステナイト化後にマルテンサイトに転換させるために、少なくとも6%Cr、好ましくは少なくとも6.5%Crとすべきである。しかしながら、クロムも炭化物を形成するものであり、これが、スチール母材内の炭素に対してバナジウムと競合させる。クロム含有量が多いほど、バナジウム炭化物は安定でなくなる。しかしながら、クロム炭化物は、望ましく且つ上述した量のバナジウムにより形成することが可能な析出硬化をもたらすことはない。また、多い量のクロムは保持されたオーステナイトに関する大きな危険性も生じる。このように、当該スチールにおけるクロム含有量は10%に、好ましくは多くても8.5%に制限される。
【0039】
モリブデンの含有量は少なくとも1%とし、かくしてモリブデンがバナジウムと一緒にMC炭化物の一部となり得、これら炭化物の形成に肯定的に貢献するようにする。MC炭化物内にモリブデンが存在するので、これらは硬化処理が行われる場合のオーステナイト化の間に一層容易に溶解し、次いで焼き戻しの間に形成されるMC炭化物の一部となる。しかしながら、モリブデン含有量は、クロム炭化物のように不安定であり且つ高い温度で成長するような有害な量のモリブデン炭化物を形成するほど多くする必要はない。従って、モリブデン含有量は、2%に、好ましくは約1.5%に制限されるべきである。
【0040】
モリブデンは、通常の方法で、2倍の量のタングステンにより完全に又は部分的に置換することができる。従って、好ましい実施例においては、当該合金組成はコンタミナントレベルより多いタングステンは含むべきでない。
【0041】
当該スチールにおけるマンガン含有量は、1%に制限され、クロムのように該スチールに所望の硬化性を付与するのに寄与する。好ましくは、マンガンの含有量は0.4〜0.5%である。
【0042】
スチール内の炭素活性度を増加させると共に、焼き戻しの間において小さなバナジウム炭化物の析出を迅速化するために、シリコン含有量は少なくとも0.8%とすべきである。しかしながら、増加された炭素活性度は、炭化物の一層速い結晶粒粗大化につながり得、結果として当該スチールの軟化が一層速くなる。言い換えると、シリコン含有量が多い場合、焼き戻し曲線は左に移動され、硬度最大点は上側に移動される。しかしながら、当該スチールは、多くても1.1%のシリコン、好ましくは多くても1.0%のシリコンより多くは含んではならない。
【0043】
ニッケルは、意図する応用領域においては当該スチールに対して如何なる肯定的な貢献ももたらさない。恐らく、ニッケルは当該スチールの熱処理を複雑化し得る。従って、当該スチールはコンタミナントレベルより多くのニッケルを含まないことが最良である。
【0044】
それ以外では、当該スチールは、実質的に鉄以外は何も含まない。例えばアルミニウム、窒素、銅、コバルト、チタン、ニオブ、硫黄及び燐を含む他の元素は、当該スチール内にはコンタミナントレベルで又は不可避的微量元素としてのみ存在する。
【0045】
本発明の該第1実施例では、3つの異なるスチール合金が粉末冶金製造され、冷間圧延され、良好な結果で検査された。これらの3つの合金は、0.05〜1.2mmの厚さ及び10〜250mmの間の幅の薄い細条を形成するように冷間圧延されたもので、コータブレード、ドクターブレード及びクレーピングブレードを製造するために使用することができる。これらスチール合金の公称組成は以下の通りである。
【0046】
1.5%のC、1%のSi、0.4%のMn、8%のCr、1.5%のMo、4%のV並びに残りの鉄及び不可避的コンタミナント。
【0047】
2.1%のC、1%のSi、0.4%のMn、6.8%のCr、1.5%のMo、5.4%のV並びに残りの鉄及び不可避的コンタミナント。
【0048】
2.9%のC、1%のSi、0.5%のMn、8%のCr、1.5%のMo、9.8%のV並びに残りの鉄及び不可避的コンタミナント。
【実施例2】
【0049】
本発明の第2実施例によれば、当該スチールには、永久的な変形を受けることなく紙ウェブ又はインク塗布ローラに押圧されるのに耐えるほど充分な基本硬度を該スチールに付与するため、及び焼き戻しの間においてMC炭化物を形成するために、炭素が充分な量で存在しなければならない。MC炭化物は析出硬化を、従って改善された耐摩耗性をもたらす。従って、炭素含有量は少なくとも1.0%のC、好ましくは1.2%のCとすべきである。最大炭素含有量は2.5%のC、好ましくは多くて2.3%のCである。
【0050】
当該スチールには、焼き戻しの間において析出により非常に小さなMC炭化物を形成するためにバナジウムが存在すべきである。これらのMC炭化物は、当該ドクターブレードの驚くほど良好な耐摩耗性の主たる原因であると考えられる。これら炭化物はサブマイクロスコピック尺度のものであり、これは1〜3μmの大きさのオーダの最大寸法を意味する。MC炭化物の充分に高い体積割合を提供するために、バナジウム含有量は少なくとも2.5%V、好ましくは少なくとも3.0%Vとすべきである。該バナジウム含有量は7%Vを超えてはならず、好ましくは、当該スチールは最大で6.5%のバナジウムを含むものとする。
【0051】
この実施例においては、クロムの量は制限される。当該スチールに充分な硬化性を付与するために、即ち空気焼き入れの間又はオーステナイト化後にマルテンサイトに転換させるために、クロム含有量は少なくとも4%Crとすべきである。しかしながら、クロムも炭化物を形成するものであり、これが、スチール母材内の炭素に対してバナジウムと競合させる。クロム含有量が多いほど、バナジウム炭化物は安定でなくなる。当該スチールにおけるクロム含有量は、5%に達することができる。公称含有量は、約4.2%である。
【0052】
モリブデンの含有量は少なくとも4%とし、かくしてモリブデンがバナジウムと一緒にMC炭化物を形成し、これら炭化物の形成に肯定的に貢献するようにする。MC炭化物内にモリブデンが存在するので、これらは硬化処理が行われる場合のオーステナイト化の間に一層容易に溶解し、次いで焼き戻しの間に形成されるMC炭化物の一部となる。しかしながら、モリブデン含有量は、クロム炭化物のように不安定であり且つ高い温度で成長するような有害な量のモリブデン炭化物を形成するほど多くする必要はない。本発明の該第2実施例によれば、モリブデン含有量は、8%Moに、好ましくは5〜7%の間のMoに制限されるべきである。
【0053】
モリブデンは、通常の方法で、2倍の量のタングステンにより完全に又は部分的に置換することができる。タングステンは耐摩耗性を改善し、硬化温度を上昇させ、耐熱性を改善する。本発明の該第2実施例によれば、当該スチールは6〜7%のW、適切には約6.4〜6.5%のタングステンを含む。
【0054】
当該スチールにおけるマンガン含有量は、1%に制限され、クロムのように該スチールに所望の硬化性を付与するのに寄与する。好ましくは、マンガンの含有量は0.3%Mnである。
【0055】
スチール内の炭素活性度を増加させると共に、焼き戻しの間において小さなバナジウム炭化物の析出を迅速化するために、シリコン含有量は少なくとも0.8%とすべきである。しかしながら、増加された炭素活性度は、炭化物の一層速い結晶粒粗大化につながり得、結果として当該スチールの軟化が一層速くなる。言い換えると、シリコン含有量が多い場合、焼き戻し曲線は左に移動され、硬度最大点は上側に移動される。しかしながら、当該スチールは、多くても0.8%のシリコン、好ましくは多くても0.5%のシリコンより多くは含んではならない。
【0056】
ニッケルは、意図する応用領域においては当該スチールに対して如何なる肯定的な貢献ももたらさない。恐らく、ニッケルは当該スチールの熱処理を複雑化し得る。従って、本発明の該第2実施例によれば、当該スチールがコンタミナントレベルより多くのニッケルを含まないことが最良である。
【0057】
本発明の第2実施例によれば、当該スチールは少なくとも8%の量のコバルトを含有する。コバルトは、当該スチールの熱間加工性を改善する。しかしながら、コバルトは当該スチールを一層脆弱にさせると共に、冷間加工処理における変形硬化(deformation hardening)を上昇させる。このように、当該スチールは12%より多いコバルトを、好ましくは11%より多いコバルトを含んではならない。改善された熱間加工性は当該スチールの重要な特性ではないので、この第2実施例によるスチールは実質的に如何なるコバルトも含有しない。
【0058】
それ以外では、当該スチールは、実質的に鉄以外は何も含まない。例えばアルミニウム、窒素、銅、コバルト、チタン、ニオブ、硫黄及び燐を含む他の元素は、当該スチール内にはコンタミナントレベルで又は不可避的微量元素としてのみ存在する。
【0059】
本発明の該第2実施例では、3つの異なるスチール合金が粉末冶金方法で形成され、冷間圧延され、良好な結果で検査された。これらの3つの合金は、0.05〜1.2mmの厚さ及び10〜250mmの間の幅の薄い細条を形成するように冷間圧延されたもので、ブレードを製造するために使用することができる。これらスチール合金の公称組成は以下の通りである。
【0060】
1.28%のC、0.5%のSi、0.3%のMn、4.2%のCr、5%のMo、6.4%のW、3.1%のV並びに残りの鉄及び不可避的コンタミナント。
【0061】
1.28%のC、0.5%のSi、0.3%のMn、4.2%のCr、5%のMo、6.4%のW、5.4%のV、8.5%のCo並びに残りの鉄及び不可避的コンタミナント。
【0062】
2.3%のC、0.5%のSi、0.3%のMn、4.2%のCr、7%のMo、6.5%のW、6.5%のV、10.5%のCo並びに残りの鉄及び不可避的コンタミナント。
【0063】
本発明によるコータブレード、ドクターブレード又はクレーピングブレードの製造は以下のように実施される。上に及び請求項に記載したような所望の組成を含む合金が、粉末冶金処理を用いて製造される。これによれば、粉末が所望の組成に混合され、熱間静水圧圧縮成型(isostatic pressing)により固体ブランク又はブロックに圧縮される。上記ブランク(又はブロック)は、3〜3.5mmの概略厚の細条に熱間圧延される。次いで、これら細条は、再加熱処理と交互に、1.2mm未満の所望の厚さまで冷間圧延される。細条1におけるエッジの亀裂を回避するために、該冷間圧延処理は、約3.5mmから1mmまでの厚さ減少で、エッジ支持体を用いて行われる。次いで、冷間圧延された細条1は、該細条が上記冷間圧延において最終的厚さTに到達した場合に、連続処理で硬化及び焼き戻しされる。
【0064】
第1実施例の冷間圧延された細条1は、950℃〜1050℃の間の温度におけるオーステナイト化処理、続く150℃〜250℃の間の温度まで低下させる冷却板の間での焼き入れ処理、及び550℃〜650℃での焼き戻し処理を用いて硬化される。
【0065】
第2実施例の冷間圧延された細条1は、1000℃〜1050℃の間の温度におけるオーステナイト化処理、続く150℃〜250℃の間の温度まで低下させる冷却板の間での焼き入れ処理、及び550℃〜650℃での焼き戻し処理を用いて硬化される。
【0066】
これには、細条1の表面のブラシ仕上げが後続する。所望ならば、細条1は酸化雰囲気中で焼き戻しすることにより着色することができる。細条1は正しい長さ及び幅Bに切断され、エッジ10、20は所望のエッジ断面を得るために平削り(planing)及び/又は研削(grinding)により加工される。
【0067】
本発明による方法によれば、250mmまでの幅の冷間圧延細条を、本質的に作用エッジの充分な直線性をあきらめること無しに製造することができる。しかし、斯かる細条の平たさも非常に重要である。作用エッジは、0.3mm/バンドの3000mm長の直線性を有するべきである。標準Pilhojdによれば、平らさは公称細条幅の少なくとも0.3%でなければならない。
【0068】
更に、上記細条は、作用エッジ10、20が、今日これらの用途に利用可能な他の細条と比較して改善された特性、特に改善された耐摩耗性を示すことを特徴としている。
【0069】
他の実施例によれば、作用エッジ10、20は、例えば誘導加熱によるエッジ部の局部的加熱を用いて硬化することができる。好ましくは、例えばレーザ、プラズマ又は電子ビーム硬化処理等の高エネルギビーム硬化処理が用いられ、斯かる硬化処理は作用エッジ10、20に当該細条の直線性を悪化させないような明確な硬化区域を付与する。この目的のために、好ましくは、レーザビームが使用される。このようにして硬化された作用エッジ10、20は630HV、好ましくは620HVまでの改善された硬度を得ることができる。
【0070】
更に、本発明によるスチールバンドの作用エッジ10、20は粉末冶金製造処理故に特に微細なマイクロ構造を有する。図4及び5には、作用エッジ10、20におけるマイクロ構造の顕微鏡的断面拡大図が示されている。図4及び5における左側の図は、通常の溶解処理により作製される、従来技術によるマイクロ構造30を示す。大きな硬質炭化物34、36が概念的に示され、これらが周囲の合金に埋め込まれたようになっている。或る使用時間後に、作用エッジ10、20は摩耗するが、その場合において、炭化物34、36は周囲の材料32よりひどくは摩耗しない。これにより、表面における炭化物は、符号36を持つ炭化物で示すように、残部のマイクロ構造から突出する。このような突出する炭化物は、紙の表面上又は相手側ローラ上に掻き傷を、又は紙の被覆に縞を生じさせ、かくして当該ブレードは交換されねばならない。
【0071】
図4及び5の右側には、本発明による作用エッジ10、20のマイクロ構造40が示されている。該マイクロ構造40は上記マイクロ構造30と同じスチール組成を有しているが、粉末冶金処理により製造されている。これにより、微細な良好に分散された炭化物44が生成され、これらが周囲のマイクロ構造42内に埋め込まれたようになる。このようなマイクロ構造40を持つ作用エッジ10、20は均一に且つ突出する炭化物36なしで摩耗し、従って掻き傷又は縞の発生につながることはない。
【0072】
250mmまでの幅を持つ冷間圧延バンドを成功裏に製造するのを可能にする本発明による方法は、複数の小さな細条が同時に作製されるのを可能にする。この場合、幅広の細条1はエッジ10、20の加工に先立ち、小さな細条に切断される。このようにして、例えば2つの幅の狭いバンドを、1つの幅広なバンドから単一の冷間圧延処理により得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】図1は、本発明によるスチールバンドのコイル巻きされた状態での三次元図である。
【図2】図2は、本発明によるスチールバンドの、第1エッジ形状を明確にするための部分断面の三次元図である。
【図3】図3は、本発明によるスチールバンドの、寸法及び第2エッジ形状を明確にするための三次元部分断面図である。
【図4】図4は、スチールバンドのエッジ材料の2つの概略三次元顕微鏡的拡大部分断面図であり、従来技術によるスチールバンドが左側に示され、本発明によるスチールバンドが右側に示されている。
【図5】図5は、スチールバンドのエッジ材料の2つの微視的拡大顕微鏡写真断面図であり、従来技術によるスチールバンドが左側に示され、本発明によるスチールバンドが右側に示されている。
【符号の説明】
【0074】
1 スチールバンド
10 エッジ
20 エッジ
30 マイクロ構造
32 周囲の材料
34 炭化物
36 炭化物
40 マイクロ構造
42 周囲のマイクロ構造
44 炭化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドクターブレード、コータブレード又はクレーピングブレードを製造するためのスチールバンド(1)において、
a)重量パーセントで、
1〜3%のC、
4〜10%のCr、
1〜8%のMo、及び
2.5〜10%のV、
並びに、任意選択的に、微量から最大で1.1%のSi及び/又は微量から最大で1%のMn及び/又はMoの代わりの2%〜16%のW及び/又は微量から最大で12%のCoを含むと共に、通常の量で残りの鉄及びコンタミナントを含むようなスチール組成を有し、
b)前記スチールバンドは粉末冶金処理を用いて形成され、
c)前記スチールバンドは0.05〜1.2mmの厚さを有し、且つ、
d)冷間圧延処理を用いて形成される、
スチールバンド。
【請求項2】
10〜250mmの幅を有する請求項1に記載のスチールバンド。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が1.5〜3%のCを含むようなスチールバンド。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が0.8〜1.1%のSi、好ましくは1.0%のSiを含むようなスチールバンド。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が0.4〜0.5%のMnを含むようなスチールバンド。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成にコンタミナント超えるWが含まれないようなスチールバンド。
【請求項7】
請求項1ないし6の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成がコンタミナント超えるCoを含まないようなスチールバンド。
【請求項8】
請求項1ないし7の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が6〜10%のCr、好ましくは6.5〜8.5%のCrを含むようなスチールバンド。
【請求項9】
請求項1ないし8の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が1〜2%のMo、好ましくは1.5%のMoを含むようなスチールバンド。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が4〜10%のVを含むようなスチールバンド。
【請求項11】
請求項1に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が1.0〜2.5%のC、好ましくは1.2〜2.3%のCを含むようなスチールバンド。
【請求項12】
請求項11に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が微量から最大で1%のSi、好ましくは0.5%のSiを更に含むようなスチールバンド。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が微量から最大で1%のMn、好ましくは0.3%のMnを更に含むようなスチールバンド。
【請求項14】
請求項11ないし13の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が4〜5%のCr、好ましくは4.2%のCrを含むようなスチールバンド。
【請求項15】
請求項11ないし14の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が4〜8%のMo、好ましくは6〜7%のMoを含むようなスチールバンド。
【請求項16】
請求項11ないし15の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が6〜7%のW、好ましくは6.4〜6.5%のWを含むようなスチールバンド。
【請求項17】
請求項11ないし16の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が2〜7%のV、好ましくは3.0〜6.5%のVを含むようなスチールバンド。
【請求項18】
請求項11ないし17の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成がコンタミナント超えるCoを含まないようなスチールバンド。
【請求項19】
請求項11ないし17の何れか一項に記載のスチールバンドにおいて、前記スチール組成が7〜12%のCo、好ましくは8〜11%のCoを更に含むようなスチールバンド。
【請求項20】
重量パーセントで、
1〜3%のC、
4〜10%のCr、
1〜8%のMo、及び
2.5〜10%のV、
並びに、任意選択的に、微量から最大で1.1%のSi及び/又は微量から最大で1%のMn及び/又はMoの代わりの2%〜16%のW及び/又は微量から最大で12%のCoを含むと共に、通常の量で残りの鉄及びコンタミナントを含むようなスチール組成を有するスチールバンドであって、
前記スチールバンドは粉末冶金処理を用いて形成され、
前記スチールバンドが、500〜600HV、好ましくは575〜585HVの硬度及び/又は0.3mm/前記バンドの3000mm長の直線性を持つような作用エッジ(10、20)を更に有する、
スチールバンド。
【請求項21】
重量パーセントで、
1〜3%のC、
4〜10%のCr、
1〜8%のMo、及び
2.5〜10%のV、
並びに、任意選択的に、微量から最大で1.1%のSi及び/又は微量から最大で1%のMn及び/又はMoの代わりの2%〜16%のW及び/又は微量から最大で12%のCoを含むと共に、通常の量で残りの鉄及びコンタミナントを含むようなスチール組成を有するスチールバンドであって、
前記スチールバンドは粉末冶金処理を用いて形成され、
作用エッジ(10、20)が硬化される、好ましくはレーザビームにより硬化される、
スチールバンド。
【請求項22】
重量パーセントで、
1〜3%のC、
4〜10%のCr、
1〜8%のMo、及び
2.5〜10%のV、
並びに、任意選択的に、微量から最大で1.1%のSi及び/又は微量から最大で1%のMn及び/又はMoの代わりの2%〜16%のW及び/又は微量から最大で12%のCoを含むと共に、通常の量で残りの鉄及びコンタミナントを含むようなスチール組成を有するスチールバンド(1)から製造されるコータブレードであって、
前記スチールバンドは粉末冶金処理を用いて形成され、
前記コータブレードが、0.25〜0.64mmの厚さを有する、
コータブレード。
【請求項23】
重量パーセントで、
1〜3%のC、
4〜10%のCr、
1〜8%のMo、及び
2.5〜10%のV、
並びに、任意選択的に、微量から最大で1.1%のSi及び/又は微量から最大で1%のMn及び/又はMoの代わりの2%〜16%のW及び/又は微量から最大で12%のCoを含むと共に、通常の量で残りの鉄及びコンタミナントを含むようなスチール組成を有するスチールバンド(1)から製造されるドクターブレードであって、
前記スチールバンドは粉末冶金処理を用いて形成され、
前記ドクターブレードが、0.15〜1.0mmの厚さを有する、
ドクターブレード。
【請求項24】
重量パーセントで、
1〜3%のC、
4〜10%のCr、
1〜8%のMo、及び
2.5〜10%のV、
並びに、任意選択的に、微量から最大で1.1%のSi及び/又は微量から最大で1%のMn及び/又はMoの代わりの2%〜16%のW及び/又は微量から最大で12%のCoを含むと共に、通常の量で残りの鉄及びコンタミナントを含むようなスチール組成を有するスチールバンド(1)から製造されるクレーピングブレードであって、
前記スチールバンドは粉末冶金処理を用いて形成され、
前記クレーピングブレードが、0.25〜1.2mmの厚さを有する、
クレーピングブレード。
【請求項25】
コータブレード、ドクターブレード又はクレーピングブレードを製造する方法において、該方法が、
a)請求項1ないし21の何れか一項に記載のスチール組成を持つスチールブロックを粉末冶金製造するステップ、
b)前記スチールブロックをスチールバンドに熱間圧延するステップ、及び
c)前記スチールバンドを最大で1.2の厚さのバンド(1)に冷間圧延するステップ、
を、この順に有する方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法において、前記冷間圧延するステップがエッジ支持体を用いてなされるような方法。
【請求項27】
請求項25又は請求項26に記載の方法において、前記冷間圧延するステップの後に、硬化ステップが950℃〜1050℃の温度で実行され、これに550℃〜650℃の温度における焼き戻しステップが後続するような方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法において、前記冷間圧延するステップ、前記硬化ステップ及び前記焼き戻しステップが、連続的処理で実行されるような方法。
【請求項29】
請求項27又は請求項28に記載の方法において、前記硬化ステップが冷却ステップを有し、該冷却ステップにおいて前記バンド(1)が冷却板の間で150℃〜250℃の温度まで冷却されるような方法。
【請求項30】
請求項25ないし29の何れか一項に記載の方法において、前記バンド(1)の作用エッジ(10、20)が硬化される、好ましくはレーザビームにより硬化されるような方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−506844(P2008−506844A)
【公表日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−521837(P2007−521837)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007356
【国際公開番号】WO2006/007984
【国際公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(506425631)ベーラー・ウッデホルム・プレシジョン・ストリップ・ゲーエムベーハー・ウント・ツェーオー・カーゲー (3)
【Fターム(参考)】