ドクターブレード用シート成形装置
【課題】スラリーからシート厚が均一なグリーンシートを、容易且つ確実に成形することを可能にする。
【解決手段】シート成形装置10は、スラリー14が供給される供給口30と、グリーンシート21が排出される排出口56aと、前記供給口30と前記排出口56aとの間に設けられる第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cと、これらを互いに連通させる連通口46a、46b及び連通口48a〜48dとを備える。連通口46a、46bは、シート幅方向に沿って供給口30を挟んで設けられる。
【解決手段】シート成形装置10は、スラリー14が供給される供給口30と、グリーンシート21が排出される排出口56aと、前記供給口30と前記排出口56aとの間に設けられる第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cと、これらを互いに連通させる連通口46a、46b及び連通口48a〜48dとを備える。連通口46a、46bは、シート幅方向に沿って供給口30を挟んで設けられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーをシート状に吐出してグリーンシートを成形するためのドクターブレード用シート成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、押し出し成形用の粉流体に比べて粘度の低い粉流体であるスラリーを用い、シート厚さが薄く且つシート幅が広いグリーンシートを成形するために、ドクターブレード法が採用されている。
【0003】
ところが、上記のドクターブレード法では、比較的粘度の高いスラリーが使用される場合、シート幅方向、特にシート幅方向中央部とシート幅方向両端部とで、シート厚さにばらつきが発生し易いという問題がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されているグリーンシートの製造方法及び製造装置が知られている。この特許文献1では、スラリーの粘度が変化したとしても、塗布ヘッド等のシート成形材料吐出部材を交換することがなく、しかもノズル口を手動で調整することがなく、シートの幅方向に厚みムラが生ぜず、均一な厚みの幅広なグリーンシートを製造することを目的としている。
【0005】
このため、特許文献1では、図11に示すように、塗布ヘッド1のノズル口1aから吐出されたシート成形体2の厚みを、前記シート成形体2の幅方向Yに沿って複数の厚み測定センサ3で測定している。そして、幅方向Yに沿って複数の検出位置で測定されたシート成形体2の厚みデータに基づき、塗布ヘッド1のノズル口1aの上流側に形成してあるスラリー溜まり1bへ向かう複数の個別流路1cに供給されるスラリーの流量が、制御手段4により制御されている。
【0006】
例えば、何れかの厚み測定センサ3により測定された厚みが、基準値よりも薄い場合には、その検出位置に対応する特定の制御バルブ5の開度を制御して、特定の個別流路1cを通るスラリーの流量を大きくしている。一方、特定の厚み測定センサ3により測定された厚みが、基準値よりも厚い場合には、その検出位置に対応する制御バルブ5の開度のみを制御して、特定の個別流路1cを通るスラリーの流量を小さくしている。
【0007】
この結果、特定の幅方向Y位置に対応する部分のシート成形体2の厚みは、基準値に近づく方向に制御され、結果として、幅方向Yに沿って均一な厚みのシート成形体2を成形することができる、としている。
【0008】
また、特許文献2に開示されているグリーンシート成形金型は、ドクターブレード法とは異なり、押し出し成形法に関するものである。この特許文献2では、金型内部を流れる粉流体の中央部と側端部との流速の差を小さくし、成形シートの肉厚分布のバラツキと密度バラツキを小さくすることを目的としている。
【0009】
このため、特許文献2では、図12に示すように、粉流体のグリーンシートを押し出し成形する金型6において、粉流体が通過する厚みの一定な成形部7を形成し、この成形部7の両側壁に、先方に向かって内側に傾斜または湾曲した幅方向の絞り部8を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−190828
【特許文献2】特開平10−329118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の特許文献1では、複数の厚み測定センサ3及び複数の制御バルブ5が用いられている。従って、製造装置が複雑化するとともに、部品点数が増加し、製造コストが高騰するという問題がある。
【0012】
また、上記の特許文献2では、押し出し成形法であるため、キャピラリーを用いて、シート厚さが厚く且つシート幅が狭いグリーンシートを成形している。しかしながら、キャピラリーよりも粘度の低いスラリーを用いて、シート厚が薄く且つシート幅が広いグリーンシートを成形するドクターブレード法には、良好に適用することができないという問題がある。
【0013】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、スラリーを用いてシート厚さが均一なグリーンシートを、容易且つ確実に成形することが可能なドクターブレード用シート成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、スラリーをシート状に排出してグリーンシートを成形するためのドクターブレード用シート成形装置に関するものである。
【0015】
このドクターブレード用シート成形装置は、スラリーが供給される供給口と、グリーンシートが排出される排出口と、前記供給口と前記排出口との間に設けられ、前記スラリーの流れ方向上流から下流に沿って配列されるとともに、前記スラリーを前記グリーンシートの送り出し方向に交差するシート幅方向に拡散させる2以上のスラリー拡散室と、互いに隣接する前記スラリー拡散室同士を連通させる連通口とを備えている。そして、連通口は、シート幅方向に沿って供給口を挟んで2以上設けられている。
【0016】
また、下流側に設けられる連通口は、上流側に設けられる前記連通口よりも多数に且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられることが好ましい。このため、スラリーは、上流側のスラリー拡散室から下流側の前記スラリー拡散室に向かって移動しながら、グリーンシートのシート幅方向への拡散が促進される。従って、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値(排出口)等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシートを確実に成形することができる。これにより、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの低減が図られる。
【0017】
さらに、連通口の通路断面積の総和は、下流側に向かって、順次、減少することが好ましい。このため、上流側のスラリー拡散室に供給されているスラリーが、グリーンシートのシート幅方向に拡散される前に下流側のスラリー拡散室に流動することを、確実に抑制することが可能になる。従って、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシートを確実に成形することができ、歩留まりが向上して前記グリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0018】
さらにまた、連通口の数は、下流側に向かって、順次、n倍(nは2以上の整数)に増加することが好ましい。これにより、スラリーは、下流側に向かってグリーンシートのシート幅方向に拡散されるため、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、前記グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0019】
また、供給口の開口断面積の総和は、排出口の開口断面積の総和よりも大きいことが好ましい。従って、上流側のスラリー拡散室に供給されているスラリーは、グリーンシートのシート幅方向に均一に拡散される前に下流側のスラリー拡散室に流れることを、良好に抑制される。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることが可能になる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0020】
さらに、最下流の連通口の通路断面積の総和は、排出口の開口断面積の総和よりも大きいことが好ましい。従って、最下流のスラリー拡散室に供給されているスラリーは、グリーンシートのシート幅方向に均一に拡散される前に排出口から排出されることを、良好に抑制される。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0021】
さらにまた、供給口の通路断面積の総和は、最上流の連通口の通路断面積の総和よりも大きいことが好ましい。従って、最上流のスラリー拡散室に供給されているスラリーは、グリーンシートのシート幅方向に均一に拡散される前に供給口からの供給不足が発生することを、良好に抑制される。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることが可能になる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0022】
また、供給口は、排出口よりも上方に配置されることが好ましい。従って、スラリーは、重力を有効利用してグリーンシートのシート幅方向に円滑且つ良好に拡散することが可能になる。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0023】
さらに、同一のスラリー拡散室にシート幅方向に沿って設けられる3以上の連通口は、前記シート幅方向に互いに同一の距離ずつ離間することが好ましい。従って、スラリーは、下流側に向かってグリーンシートのシート幅方向に均一に分散されるため、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、前記グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0024】
さらにまた、連通口は、単一の仕切り板に設けられるとともに、前記単一の仕切り板により、複数のスラリー拡散室を形成することが好ましい。従って、簡単且つ経済的な構成で、スラリーがスラリーシートのシート幅方向に拡散することを促進させることが可能になる。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上流側のスラリー拡散室に供給されたスラリーは、シート幅方向に沿って供給口を挟んで2以上設けられている連通口から下流側のスラリー拡散室に分散して供給される。このため、スラリーは、グリーンシートのシート幅方向への拡散が促進され、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシートを確実に成形することができる。
【0026】
しかも、複数のスラリー拡散室は、スラリー供給装置の脈動を吸収してスラリーをシート長さ方向に安定して供給することが可能になる。これにより、グリーンシートの長さ方向に沿ってシート厚さを均一化することができ、歩留まりが向上して前記グリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るドクターブレード用シート成形装置が組み込まれるシート製造システムの概略構成図である。
【図2】前記シート成形装置の要部断面説明図である。
【図3】前記シート成形装置の分解斜視説明図である。
【図4】前記シート成形装置の要部斜視説明図である。
【図5】前記シート成形装置を構成する仕切り板の概略模式図である。
【図6】本発明と従来例とのシート幅方向のシート厚さの説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るシート成形装置の要部断面説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板の概略模式図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板の概略模式図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板の概略模式図である。
【図11】特許文献1に開示されているグリーンシートの製造装置の説明図である。
【図12】特許文献2に開示されているグリーンシート成形金型の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係るドクターブレード用シート成形装置10は、シート製造システム12に組み込まれる。
【0029】
シート製造システム12は、シート成形装置10にスラリー14を供給するスラリー供給部16と、前記スラリー14が塗布されるウェブ18を供給するウェブ供給部20と、前記ウェブ18に前記スラリー14が塗布されたグリーンシート21を乾燥させる乾燥部22とを備えている。
【0030】
スラリー供給部16は、スラリータンク24を設けるとともに、このスラリータンク24内には、原料粉末にバインダーが添加されたスラリー14が充填されている。原料粉末としては、例えば、YSZ+NiO+C、YSZ+NiO、YSZ、SSZ、NiO、SDC、GDC、LC又はLSC等が用いられる。
【0031】
スラリータンク24には、スラリー供給管26の一端が接続される。このスラリー供給管26の他端は、ポンプ28を介してシート成形装置10の供給口30に接続される。
【0032】
図2及び図3に示すように、シート成形装置10は、供給口30が設けられる供給ボックス遮蔽板32を備え、前記供給口30には、ノズル34が取り付けられる。供給ボックス遮蔽板32には、供給ボックス38が取り付けられる。供給ボックス遮蔽板32と供給ボックス38との間には、仕切り板40が配置される(図2及び図4参照)。
【0033】
図2に示すように、供給ボックス遮蔽板32と供給ボックス38との間には、仕切り板40を介して、供給口30が開放される第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cが分割形成される。仕切り板40は、単一の板材を屈曲成形して構成される。
【0034】
仕切り板40には、第1スラリー拡散室44aと第2スラリー拡散室44bとを連通する複数、例えば、2つの連通口46a、46bと、前記第2スラリー拡散室44bと第3スラリー拡散室44cとを連通する複数、例えば、4つの連通口48a、48b、48c及び48dとが形成される。
【0035】
図4には、仕切り板40の構成が概略模式図として示されている。スラリー流れ方向(矢印F方向)上流の連通口46a、46bは、グリーンシート21のシート幅方向(矢印H方向)に沿って、供給口30を挟んで設けられる。スラリー流れ方向下流の連通口48a〜48dは、上流の連通口46a、46bよりも多数に且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられる。
【0036】
連通口48a〜48dの通路断面積の総和は、連通口46a、46bの通路断面積の総和よりも小さく(減少して)設定される。連通口48a〜48dは、連通口46a、46bの2倍(n倍)の数に増加するとともに、下流側の前記連通口48a〜48dは、それぞれシート幅方向に互いに同一の距離lずつ離間する(図5参照)。
【0037】
供給ボックス38には、開口部50が形成される。開口部50は、第3スラリー拡散室44cに開放される(図2参照)。開口部50の出口側には、スラリー貯留ケース52によりスラリー貯留部54が形成される。スラリー貯留ケース52には、ブレード56が取り付けられる。
【0038】
スラリー貯留部54の上方には、スラリー14の乾燥を防止するために、板59が配設される。ブレード56とスラリー貯留ケース52との間には、ウェブ18との間に所定の隙間Sを形成するための排出口56aが形成される。
【0039】
供給口30の開口断面積の総和は、排出口56aの開口断面積の総和よりも大きい。最下流の連通口48a〜48dの通路断面積の総和は、排出口56aの開口断面積の総和よりも大きい。供給口30の通路断面積の総和は、最上流の連通口46a、46bの通路断面積の総和よりも大きい。供給口30は、排出口56aよりも上方に配置される。
【0040】
図1に示すように、乾燥部22は、乾燥ブース60を備え、この乾燥ブース60内には、複数のヒータ62が配設される。乾燥部22により乾燥されたグリーンシート21は、ウェブ供給部20を構成する巻取り軸66に巻き取られる。
【0041】
このように構成されるシート製造システム12の動作について、シート成形装置10との関連で以下に説明する。
【0042】
先ず、図1に示すように、スラリー供給部16を構成するポンプ28が駆動され、スラリータンク24内に貯留されているスラリー14が、スラリー供給管26からシート成形装置10を構成する供給口30に供給される。シート成形装置10では、図2に示すように、スラリー14が、供給口30から第1スラリー拡散室44aに供給される。
【0043】
第1スラリー拡散室44aには、図4及び図5に示すように、供給口30のシート幅方向両側に離間して2つの連通口46a、46bが形成されている。このため、第1スラリー拡散室44aに供給されたスラリー14は、連通口46a、46bを通って第2スラリー拡散室44bに供給される。第2スラリー拡散室44bには、4つの連通口48a〜48dが形成されている。従って、第2スラリー拡散室44bに供給されたスラリー14は、各連通口48a〜48dを通って第3スラリー拡散室44cに供給される。
【0044】
さらに、第3スラリー拡散室44cに供給されたスラリー14は、開口部50からスラリー貯留部54に一旦充填されて、ウェブ18上に載置される。その際、ウェブ供給部20が駆動されて、ウェブ18は、図1中、矢印A方向に移動する。
【0045】
これにより、スラリー貯留部54に貯留されているスラリー14は、ブレード56の排出口56aを介してシート厚さ方向の高さが規制された状態で、矢印A方向に走行する前記ウェブ18上に塗布される。スラリー14が塗布されたウェブ18、すなわち、グリーンシート21は、乾燥部22に搬入される。このグリーンシート21は、乾燥ブース60内のヒータ62を介して乾燥された後、巻取り軸66に巻き取られる。
【0046】
この場合、第1の実施形態では、第1スラリー拡散室44aに供給されたスラリー14は、シート幅方向に沿って供給口30を挟んで設けられる連通口46a、46bから、第2スラリー拡散室44bに分散して供給されている。さらに、第2スラリー拡散室44bに供給されたスラリー14は、連通口46a、46bよりも多数で且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられている連通口48a〜48dを介して、シート幅方向に拡散されながら、第3スラリー拡散室44cに供給されている。
【0047】
このため、第1の実施形態では、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値(排出口56a)等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシート21を確実に成形することができるという効果が得られる。
【0048】
しかも、2以上、例えば、3つの第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cが設けられている。従って、スラリー供給部16の脈動(ポンプ28の脈動)を吸収することができ、スラリー14をシート長さ方向(矢印A方向)に安定して供給することが可能になる。これにより、グリーンシート21の長さ方向に沿ってシート厚さを均一化することができ、歩留まりが向上して前記グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0049】
さらに、下流側に設けられる連通口48a〜48dの通路断面積の総和は、上流側に設けられる連通口46a、46bの通路断面積の総和よりも減少している。このため、第1スラリー拡散室44aに供給されているスラリー14は、シート幅方向に拡散される前に第2スラリー拡散室44bに流動することを確実に抑制されるという利点がある。
【0050】
従って、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシート21を確実に成形することができる。その上、歩留まりが向上して、グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0051】
さらにまた、下流側の連通口48a〜48dは、上流側の連通口46a、46bの2倍の数に増加している。これにより、スラリー14は、下流側に向かってシート幅方向に拡散されるため、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上して、グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0052】
また、供給口30の開口断面積の総和は、排出口56aの開口断面積の総和よりも大きく設定されている。従って、上流側、例えば、第2スラリー拡散室44bに供給されているスラリー14は、シート幅方向に均一に拡散される前に下流側である第3スラリー拡散室44cに流れることを良好に抑制される。
【0053】
これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることが可能になる。このため、歩留まりが向上して、グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0054】
さらに、最下流の連通口48a〜48dの通路断面積の総和は、排出口56aの開口断面積の総和よりも大きく設定されている。従って、最下流である第3スラリー拡散室44cに供給されているスラリー14は、シート幅方向に均一に拡散される前に排出口56aから排出されることを良好に抑制される。
【0055】
これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0056】
さらにまた、供給口30の通路断面積の総和は、最上流の連通口46a、46bの通路断面積の総和よりも大きく設定されている。従って、最上流の第1スラリー拡散室44aに供給されているスラリー14は、グリーンシート21のシート幅方向に均一に拡散される前に供給口30からの供給不足が発生することを、良好に抑制される。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることが可能になる。このため、歩留まりが向上してグリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0057】
また、供給口30は、排出口56aよりも上方に配置されている。従って、スラリー14は、重力を有効利用してシート幅方向に円滑且つ良好に拡散することが可能になる。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上して、グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0058】
さらに、第2スラリー拡散室44b(又は第3スラリー拡散室44c)にシート幅方向に沿って設けられる連通口48a〜48dは、前記シート幅方向に互いに同一の距離lずつ離間している。従って、スラリー14は、下流側に向かってグリーンシート21のシート幅方向に均一に分散されるため、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、前記グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0059】
さらにまた、連通口46a、46b及び連通口48a〜48dは、単一の仕切り板40に設けられるとともに、この単一の仕切り板40により第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cが形成されている。
【0060】
従って、簡単且つ経済的な構成で、スラリー14がシート幅方向に拡散することを促進させることが可能になる。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0061】
図6には、第1の実施形態によるグリーンシート21のシート幅方向の厚さと、従来例による前記グリーンシート21のシート幅方向の厚さとが示されている。なお、従来例とは、連通口を設けずに供給口30から排出口56aに、直接、スラリー14を供給する装置である。これにより、従来例では、特にシート幅中心に比べて両端部の厚さが相当に肉薄となっているのに対し、本発明では、シート幅全域にわたって略同一のシート厚さを得ることができた。
【0062】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るシート成形装置70の要部断面説明図である。
【0063】
なお、第1の実施形態に係るシート成形装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3〜第5の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0064】
シート成形装置70は、ボックス状のケーシング72を備えるとともに、前記ケーシング72内には、仕切り板74が配置される。ケーシング72内には、仕切り板74を介して、供給口30が開放される第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cが分割形成される。仕切り板74は、単一の板材を屈曲成形して構成される。
【0065】
仕切り板74には、第1スラリー拡散室44aと第2スラリー拡散室44bとを連通する連通口46a、46bと、前記第2スラリー拡散室44bと第3スラリー拡散室44cとを連通する連通口48a〜48dとが形成される。
【0066】
ケーシング72には、第3スラリー拡散室44cに開放される開口部50が形成されるとともに、前記ケーシング72に隣接してブレード56が取り付けられる。ケーシング72には、排出口56aが形成される。
【0067】
このように構成される第2の実施形態では、第3スラリー拡散室44cが、第1の実施形態のスラリー貯留部54としての機能を有する一方、その他の構成は、前記第1の実施形態と同様である。従って、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板80の構成を示す概略模式図である。
【0069】
第3の実施形態では、供給口30と排出口56aとの間に、仕切り板80を介して第1スラリー拡散室82a、第2スラリー拡散室82b、第3スラリー拡散室82c及び第4スラリー拡散室82dが形成される。仕切り板80には、第1スラリー拡散室82aと第2スラリー拡散室82bとを連通する2つの連通口84a、84bと、前記第2スラリー拡散室82bと第3スラリー拡散室82cとを連通する4つ(2倍)の連通口86a〜86dと、前記第3スラリー拡散室82cと第4スラリー拡散室82dとを連通する8つの連通口88a〜88hとが設けられる。
【0070】
連通口84a、84bと連通口86a〜86dとの関係は、上記の第1の実施形態の連通口の46a、46bと連通口48a〜48dとの関係と同一である。連通口88a〜88hは、連通口86a〜86dよりも多数(2倍)に、且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられる。
【0071】
連通口88a〜88hの通路断面積の総和は、連通口86a〜86dの通路断面積の総和よりも減少して設定される。連通口86a〜86dは、シート幅方向(矢印H方向)に互いに同一の距離ずつ離間するとともに、連通口88a〜88hは、前記シート幅方向に互いに同一の距離だけ離間する。
【0072】
このように構成される第3の実施形態では、実質的に第1及び第2の実施形態の3つのスラリー拡散室である第1スラリー拡散室44a〜第3スラリー拡散室44cに対して、4つのスラリー拡散室である第1スラリー拡散室82a〜第4スラリー拡散室82dに変更するとともに、第3スラリー拡散室82cに8つの連通口88a〜88hが設けられている。
【0073】
すなわち、連通口は、上流側から下流側に向かって2倍ずつ3段階に増加している。従って、この第3の実施形態は、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
図9は、本発明の第4の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板90の概略模式図である。
【0075】
仕切り板90は、上流側から下流側に向かって、第1スラリー拡散室92a、第2スラリー拡散室92b及び第3スラリー拡散室92cを設ける。第1スラリー拡散室92aと第2スラリー拡散室92bとは、2つの連通口94a、94bにより連通する一方、前記第2スラリー拡散室92bと第3スラリー拡散室92cとは、3つの連通口96a、96b及び96cにより連通する。連通口96bは、連通口96a、96cよりも幅広に構成される。連通口96bには、上流側の連通口94a、94bからスラリー14の供給が行われるからである。
【0076】
このように構成される第4の実施形態では、連通口94a、94bが供給口30を挟んでシート幅方向に設けられるとともに、下流側の連通口96a〜96cは、前記連通口94a、94bの数+1に設定され、且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられている。従って、第4の実施形態は、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
図10は、本発明の第5の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板100の概略構成説明図である。
【0078】
仕切り板100には、上流側から第1スラリー拡散室102aと第2スラリー拡散室102bとが設けられる。第1スラリー拡散室102aと第2スラリー拡散室102bとは、2つの連通口104a、104bを介して連通する。連通口104a、104bは、シート幅方向に沿って供給口30を挟んで設けられている。
【0079】
このように構成される第5の実施形態では、供給口30からスラリー拡散室102aに供給されたスラリー14は、2つの連通口104a、104bから下流側の第2スラリー拡散室102bに分散して供給されている。このため、スラリー14は、シート幅方向への拡散が促進され、シート厚さが均一なグリーンシートを確実に成形することができる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0080】
10、70…シート成形装置 12…シート製造システム
14…スラリー 16…スラリー供給部
18…ウェブ 20…ウェブ供給部
21…グリーンシート 22…乾燥部
24…スラリータンク 28…ポンプ
30…供給口 32…供給ボックス遮蔽板
38…供給ボックス
40、74、80、90、100…仕切り板
44a〜44c、82a〜82d、92a〜92c、102a、102b…スラリー拡散室
46a、46b、48a〜48d、84a、84b、86a〜86d、88a〜88h、94a、94b、96a〜96c、104a、104b…連通口
50…開口部 52…スラリー貯留ケース
54…スラリー貯留部 56…ブレード
56a…排出口 59…板
72…ケーシング
【技術分野】
【0001】
本発明は、スラリーをシート状に吐出してグリーンシートを成形するためのドクターブレード用シート成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、押し出し成形用の粉流体に比べて粘度の低い粉流体であるスラリーを用い、シート厚さが薄く且つシート幅が広いグリーンシートを成形するために、ドクターブレード法が採用されている。
【0003】
ところが、上記のドクターブレード法では、比較的粘度の高いスラリーが使用される場合、シート幅方向、特にシート幅方向中央部とシート幅方向両端部とで、シート厚さにばらつきが発生し易いという問題がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されているグリーンシートの製造方法及び製造装置が知られている。この特許文献1では、スラリーの粘度が変化したとしても、塗布ヘッド等のシート成形材料吐出部材を交換することがなく、しかもノズル口を手動で調整することがなく、シートの幅方向に厚みムラが生ぜず、均一な厚みの幅広なグリーンシートを製造することを目的としている。
【0005】
このため、特許文献1では、図11に示すように、塗布ヘッド1のノズル口1aから吐出されたシート成形体2の厚みを、前記シート成形体2の幅方向Yに沿って複数の厚み測定センサ3で測定している。そして、幅方向Yに沿って複数の検出位置で測定されたシート成形体2の厚みデータに基づき、塗布ヘッド1のノズル口1aの上流側に形成してあるスラリー溜まり1bへ向かう複数の個別流路1cに供給されるスラリーの流量が、制御手段4により制御されている。
【0006】
例えば、何れかの厚み測定センサ3により測定された厚みが、基準値よりも薄い場合には、その検出位置に対応する特定の制御バルブ5の開度を制御して、特定の個別流路1cを通るスラリーの流量を大きくしている。一方、特定の厚み測定センサ3により測定された厚みが、基準値よりも厚い場合には、その検出位置に対応する制御バルブ5の開度のみを制御して、特定の個別流路1cを通るスラリーの流量を小さくしている。
【0007】
この結果、特定の幅方向Y位置に対応する部分のシート成形体2の厚みは、基準値に近づく方向に制御され、結果として、幅方向Yに沿って均一な厚みのシート成形体2を成形することができる、としている。
【0008】
また、特許文献2に開示されているグリーンシート成形金型は、ドクターブレード法とは異なり、押し出し成形法に関するものである。この特許文献2では、金型内部を流れる粉流体の中央部と側端部との流速の差を小さくし、成形シートの肉厚分布のバラツキと密度バラツキを小さくすることを目的としている。
【0009】
このため、特許文献2では、図12に示すように、粉流体のグリーンシートを押し出し成形する金型6において、粉流体が通過する厚みの一定な成形部7を形成し、この成形部7の両側壁に、先方に向かって内側に傾斜または湾曲した幅方向の絞り部8を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−190828
【特許文献2】特開平10−329118
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記の特許文献1では、複数の厚み測定センサ3及び複数の制御バルブ5が用いられている。従って、製造装置が複雑化するとともに、部品点数が増加し、製造コストが高騰するという問題がある。
【0012】
また、上記の特許文献2では、押し出し成形法であるため、キャピラリーを用いて、シート厚さが厚く且つシート幅が狭いグリーンシートを成形している。しかしながら、キャピラリーよりも粘度の低いスラリーを用いて、シート厚が薄く且つシート幅が広いグリーンシートを成形するドクターブレード法には、良好に適用することができないという問題がある。
【0013】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、スラリーを用いてシート厚さが均一なグリーンシートを、容易且つ確実に成形することが可能なドクターブレード用シート成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、スラリーをシート状に排出してグリーンシートを成形するためのドクターブレード用シート成形装置に関するものである。
【0015】
このドクターブレード用シート成形装置は、スラリーが供給される供給口と、グリーンシートが排出される排出口と、前記供給口と前記排出口との間に設けられ、前記スラリーの流れ方向上流から下流に沿って配列されるとともに、前記スラリーを前記グリーンシートの送り出し方向に交差するシート幅方向に拡散させる2以上のスラリー拡散室と、互いに隣接する前記スラリー拡散室同士を連通させる連通口とを備えている。そして、連通口は、シート幅方向に沿って供給口を挟んで2以上設けられている。
【0016】
また、下流側に設けられる連通口は、上流側に設けられる前記連通口よりも多数に且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられることが好ましい。このため、スラリーは、上流側のスラリー拡散室から下流側の前記スラリー拡散室に向かって移動しながら、グリーンシートのシート幅方向への拡散が促進される。従って、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値(排出口)等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシートを確実に成形することができる。これにより、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの低減が図られる。
【0017】
さらに、連通口の通路断面積の総和は、下流側に向かって、順次、減少することが好ましい。このため、上流側のスラリー拡散室に供給されているスラリーが、グリーンシートのシート幅方向に拡散される前に下流側のスラリー拡散室に流動することを、確実に抑制することが可能になる。従って、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシートを確実に成形することができ、歩留まりが向上して前記グリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0018】
さらにまた、連通口の数は、下流側に向かって、順次、n倍(nは2以上の整数)に増加することが好ましい。これにより、スラリーは、下流側に向かってグリーンシートのシート幅方向に拡散されるため、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、前記グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0019】
また、供給口の開口断面積の総和は、排出口の開口断面積の総和よりも大きいことが好ましい。従って、上流側のスラリー拡散室に供給されているスラリーは、グリーンシートのシート幅方向に均一に拡散される前に下流側のスラリー拡散室に流れることを、良好に抑制される。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることが可能になる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0020】
さらに、最下流の連通口の通路断面積の総和は、排出口の開口断面積の総和よりも大きいことが好ましい。従って、最下流のスラリー拡散室に供給されているスラリーは、グリーンシートのシート幅方向に均一に拡散される前に排出口から排出されることを、良好に抑制される。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0021】
さらにまた、供給口の通路断面積の総和は、最上流の連通口の通路断面積の総和よりも大きいことが好ましい。従って、最上流のスラリー拡散室に供給されているスラリーは、グリーンシートのシート幅方向に均一に拡散される前に供給口からの供給不足が発生することを、良好に抑制される。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることが可能になる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0022】
また、供給口は、排出口よりも上方に配置されることが好ましい。従って、スラリーは、重力を有効利用してグリーンシートのシート幅方向に円滑且つ良好に拡散することが可能になる。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0023】
さらに、同一のスラリー拡散室にシート幅方向に沿って設けられる3以上の連通口は、前記シート幅方向に互いに同一の距離ずつ離間することが好ましい。従って、スラリーは、下流側に向かってグリーンシートのシート幅方向に均一に分散されるため、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、前記グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【0024】
さらにまた、連通口は、単一の仕切り板に設けられるとともに、前記単一の仕切り板により、複数のスラリー拡散室を形成することが好ましい。従って、簡単且つ経済的な構成で、スラリーがスラリーシートのシート幅方向に拡散することを促進させることが可能になる。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシートのシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、上流側のスラリー拡散室に供給されたスラリーは、シート幅方向に沿って供給口を挟んで2以上設けられている連通口から下流側のスラリー拡散室に分散して供給される。このため、スラリーは、グリーンシートのシート幅方向への拡散が促進され、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレードのクリアランス設定値等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシートを確実に成形することができる。
【0026】
しかも、複数のスラリー拡散室は、スラリー供給装置の脈動を吸収してスラリーをシート長さ方向に安定して供給することが可能になる。これにより、グリーンシートの長さ方向に沿ってシート厚さを均一化することができ、歩留まりが向上して前記グリーンシートの製造コストの削減が容易に図られる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るドクターブレード用シート成形装置が組み込まれるシート製造システムの概略構成図である。
【図2】前記シート成形装置の要部断面説明図である。
【図3】前記シート成形装置の分解斜視説明図である。
【図4】前記シート成形装置の要部斜視説明図である。
【図5】前記シート成形装置を構成する仕切り板の概略模式図である。
【図6】本発明と従来例とのシート幅方向のシート厚さの説明図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係るシート成形装置の要部断面説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板の概略模式図である。
【図9】本発明の第4の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板の概略模式図である。
【図10】本発明の第5の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板の概略模式図である。
【図11】特許文献1に開示されているグリーンシートの製造装置の説明図である。
【図12】特許文献2に開示されているグリーンシート成形金型の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係るドクターブレード用シート成形装置10は、シート製造システム12に組み込まれる。
【0029】
シート製造システム12は、シート成形装置10にスラリー14を供給するスラリー供給部16と、前記スラリー14が塗布されるウェブ18を供給するウェブ供給部20と、前記ウェブ18に前記スラリー14が塗布されたグリーンシート21を乾燥させる乾燥部22とを備えている。
【0030】
スラリー供給部16は、スラリータンク24を設けるとともに、このスラリータンク24内には、原料粉末にバインダーが添加されたスラリー14が充填されている。原料粉末としては、例えば、YSZ+NiO+C、YSZ+NiO、YSZ、SSZ、NiO、SDC、GDC、LC又はLSC等が用いられる。
【0031】
スラリータンク24には、スラリー供給管26の一端が接続される。このスラリー供給管26の他端は、ポンプ28を介してシート成形装置10の供給口30に接続される。
【0032】
図2及び図3に示すように、シート成形装置10は、供給口30が設けられる供給ボックス遮蔽板32を備え、前記供給口30には、ノズル34が取り付けられる。供給ボックス遮蔽板32には、供給ボックス38が取り付けられる。供給ボックス遮蔽板32と供給ボックス38との間には、仕切り板40が配置される(図2及び図4参照)。
【0033】
図2に示すように、供給ボックス遮蔽板32と供給ボックス38との間には、仕切り板40を介して、供給口30が開放される第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cが分割形成される。仕切り板40は、単一の板材を屈曲成形して構成される。
【0034】
仕切り板40には、第1スラリー拡散室44aと第2スラリー拡散室44bとを連通する複数、例えば、2つの連通口46a、46bと、前記第2スラリー拡散室44bと第3スラリー拡散室44cとを連通する複数、例えば、4つの連通口48a、48b、48c及び48dとが形成される。
【0035】
図4には、仕切り板40の構成が概略模式図として示されている。スラリー流れ方向(矢印F方向)上流の連通口46a、46bは、グリーンシート21のシート幅方向(矢印H方向)に沿って、供給口30を挟んで設けられる。スラリー流れ方向下流の連通口48a〜48dは、上流の連通口46a、46bよりも多数に且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられる。
【0036】
連通口48a〜48dの通路断面積の総和は、連通口46a、46bの通路断面積の総和よりも小さく(減少して)設定される。連通口48a〜48dは、連通口46a、46bの2倍(n倍)の数に増加するとともに、下流側の前記連通口48a〜48dは、それぞれシート幅方向に互いに同一の距離lずつ離間する(図5参照)。
【0037】
供給ボックス38には、開口部50が形成される。開口部50は、第3スラリー拡散室44cに開放される(図2参照)。開口部50の出口側には、スラリー貯留ケース52によりスラリー貯留部54が形成される。スラリー貯留ケース52には、ブレード56が取り付けられる。
【0038】
スラリー貯留部54の上方には、スラリー14の乾燥を防止するために、板59が配設される。ブレード56とスラリー貯留ケース52との間には、ウェブ18との間に所定の隙間Sを形成するための排出口56aが形成される。
【0039】
供給口30の開口断面積の総和は、排出口56aの開口断面積の総和よりも大きい。最下流の連通口48a〜48dの通路断面積の総和は、排出口56aの開口断面積の総和よりも大きい。供給口30の通路断面積の総和は、最上流の連通口46a、46bの通路断面積の総和よりも大きい。供給口30は、排出口56aよりも上方に配置される。
【0040】
図1に示すように、乾燥部22は、乾燥ブース60を備え、この乾燥ブース60内には、複数のヒータ62が配設される。乾燥部22により乾燥されたグリーンシート21は、ウェブ供給部20を構成する巻取り軸66に巻き取られる。
【0041】
このように構成されるシート製造システム12の動作について、シート成形装置10との関連で以下に説明する。
【0042】
先ず、図1に示すように、スラリー供給部16を構成するポンプ28が駆動され、スラリータンク24内に貯留されているスラリー14が、スラリー供給管26からシート成形装置10を構成する供給口30に供給される。シート成形装置10では、図2に示すように、スラリー14が、供給口30から第1スラリー拡散室44aに供給される。
【0043】
第1スラリー拡散室44aには、図4及び図5に示すように、供給口30のシート幅方向両側に離間して2つの連通口46a、46bが形成されている。このため、第1スラリー拡散室44aに供給されたスラリー14は、連通口46a、46bを通って第2スラリー拡散室44bに供給される。第2スラリー拡散室44bには、4つの連通口48a〜48dが形成されている。従って、第2スラリー拡散室44bに供給されたスラリー14は、各連通口48a〜48dを通って第3スラリー拡散室44cに供給される。
【0044】
さらに、第3スラリー拡散室44cに供給されたスラリー14は、開口部50からスラリー貯留部54に一旦充填されて、ウェブ18上に載置される。その際、ウェブ供給部20が駆動されて、ウェブ18は、図1中、矢印A方向に移動する。
【0045】
これにより、スラリー貯留部54に貯留されているスラリー14は、ブレード56の排出口56aを介してシート厚さ方向の高さが規制された状態で、矢印A方向に走行する前記ウェブ18上に塗布される。スラリー14が塗布されたウェブ18、すなわち、グリーンシート21は、乾燥部22に搬入される。このグリーンシート21は、乾燥ブース60内のヒータ62を介して乾燥された後、巻取り軸66に巻き取られる。
【0046】
この場合、第1の実施形態では、第1スラリー拡散室44aに供給されたスラリー14は、シート幅方向に沿って供給口30を挟んで設けられる連通口46a、46bから、第2スラリー拡散室44bに分散して供給されている。さらに、第2スラリー拡散室44bに供給されたスラリー14は、連通口46a、46bよりも多数で且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられている連通口48a〜48dを介して、シート幅方向に拡散されながら、第3スラリー拡散室44cに供給されている。
【0047】
このため、第1の実施形態では、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値(排出口56a)等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシート21を確実に成形することができるという効果が得られる。
【0048】
しかも、2以上、例えば、3つの第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cが設けられている。従って、スラリー供給部16の脈動(ポンプ28の脈動)を吸収することができ、スラリー14をシート長さ方向(矢印A方向)に安定して供給することが可能になる。これにより、グリーンシート21の長さ方向に沿ってシート厚さを均一化することができ、歩留まりが向上して前記グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0049】
さらに、下流側に設けられる連通口48a〜48dの通路断面積の総和は、上流側に設けられる連通口46a、46bの通路断面積の総和よりも減少している。このため、第1スラリー拡散室44aに供給されているスラリー14は、シート幅方向に拡散される前に第2スラリー拡散室44bに流動することを確実に抑制されるという利点がある。
【0050】
従って、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、シート厚さが均一なグリーンシート21を確実に成形することができる。その上、歩留まりが向上して、グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0051】
さらにまた、下流側の連通口48a〜48dは、上流側の連通口46a、46bの2倍の数に増加している。これにより、スラリー14は、下流側に向かってシート幅方向に拡散されるため、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上して、グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0052】
また、供給口30の開口断面積の総和は、排出口56aの開口断面積の総和よりも大きく設定されている。従って、上流側、例えば、第2スラリー拡散室44bに供給されているスラリー14は、シート幅方向に均一に拡散される前に下流側である第3スラリー拡散室44cに流れることを良好に抑制される。
【0053】
これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることが可能になる。このため、歩留まりが向上して、グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0054】
さらに、最下流の連通口48a〜48dの通路断面積の総和は、排出口56aの開口断面積の総和よりも大きく設定されている。従って、最下流である第3スラリー拡散室44cに供給されているスラリー14は、シート幅方向に均一に拡散される前に排出口56aから排出されることを良好に抑制される。
【0055】
これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0056】
さらにまた、供給口30の通路断面積の総和は、最上流の連通口46a、46bの通路断面積の総和よりも大きく設定されている。従って、最上流の第1スラリー拡散室44aに供給されているスラリー14は、グリーンシート21のシート幅方向に均一に拡散される前に供給口30からの供給不足が発生することを、良好に抑制される。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることが可能になる。このため、歩留まりが向上してグリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0057】
また、供給口30は、排出口56aよりも上方に配置されている。従って、スラリー14は、重力を有効利用してシート幅方向に円滑且つ良好に拡散することが可能になる。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上して、グリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0058】
さらに、第2スラリー拡散室44b(又は第3スラリー拡散室44c)にシート幅方向に沿って設けられる連通口48a〜48dは、前記シート幅方向に互いに同一の距離lずつ離間している。従って、スラリー14は、下流側に向かってグリーンシート21のシート幅方向に均一に分散されるため、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、前記グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0059】
さらにまた、連通口46a、46b及び連通口48a〜48dは、単一の仕切り板40に設けられるとともに、この単一の仕切り板40により第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cが形成されている。
【0060】
従って、簡単且つ経済的な構成で、スラリー14がシート幅方向に拡散することを促進させることが可能になる。これにより、材料、スラリー粘度、シート幅及びブレード56のクリアランス設定値等に影響されることがなく、グリーンシート21のシート厚さを均一にすることができる。このため、歩留まりが向上してグリーンシート21の製造コストの削減が容易に図られる。
【0061】
図6には、第1の実施形態によるグリーンシート21のシート幅方向の厚さと、従来例による前記グリーンシート21のシート幅方向の厚さとが示されている。なお、従来例とは、連通口を設けずに供給口30から排出口56aに、直接、スラリー14を供給する装置である。これにより、従来例では、特にシート幅中心に比べて両端部の厚さが相当に肉薄となっているのに対し、本発明では、シート幅全域にわたって略同一のシート厚さを得ることができた。
【0062】
図7は、本発明の第2の実施形態に係るシート成形装置70の要部断面説明図である。
【0063】
なお、第1の実施形態に係るシート成形装置10と同一の構成要素には、同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、以下に説明する第3〜第5の実施形態においても同様に、その詳細な説明は省略する。
【0064】
シート成形装置70は、ボックス状のケーシング72を備えるとともに、前記ケーシング72内には、仕切り板74が配置される。ケーシング72内には、仕切り板74を介して、供給口30が開放される第1スラリー拡散室44a、第2スラリー拡散室44b及び第3スラリー拡散室44cが分割形成される。仕切り板74は、単一の板材を屈曲成形して構成される。
【0065】
仕切り板74には、第1スラリー拡散室44aと第2スラリー拡散室44bとを連通する連通口46a、46bと、前記第2スラリー拡散室44bと第3スラリー拡散室44cとを連通する連通口48a〜48dとが形成される。
【0066】
ケーシング72には、第3スラリー拡散室44cに開放される開口部50が形成されるとともに、前記ケーシング72に隣接してブレード56が取り付けられる。ケーシング72には、排出口56aが形成される。
【0067】
このように構成される第2の実施形態では、第3スラリー拡散室44cが、第1の実施形態のスラリー貯留部54としての機能を有する一方、その他の構成は、前記第1の実施形態と同様である。従って、第2の実施形態は、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0068】
図8は、本発明の第3の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板80の構成を示す概略模式図である。
【0069】
第3の実施形態では、供給口30と排出口56aとの間に、仕切り板80を介して第1スラリー拡散室82a、第2スラリー拡散室82b、第3スラリー拡散室82c及び第4スラリー拡散室82dが形成される。仕切り板80には、第1スラリー拡散室82aと第2スラリー拡散室82bとを連通する2つの連通口84a、84bと、前記第2スラリー拡散室82bと第3スラリー拡散室82cとを連通する4つ(2倍)の連通口86a〜86dと、前記第3スラリー拡散室82cと第4スラリー拡散室82dとを連通する8つの連通口88a〜88hとが設けられる。
【0070】
連通口84a、84bと連通口86a〜86dとの関係は、上記の第1の実施形態の連通口の46a、46bと連通口48a〜48dとの関係と同一である。連通口88a〜88hは、連通口86a〜86dよりも多数(2倍)に、且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられる。
【0071】
連通口88a〜88hの通路断面積の総和は、連通口86a〜86dの通路断面積の総和よりも減少して設定される。連通口86a〜86dは、シート幅方向(矢印H方向)に互いに同一の距離ずつ離間するとともに、連通口88a〜88hは、前記シート幅方向に互いに同一の距離だけ離間する。
【0072】
このように構成される第3の実施形態では、実質的に第1及び第2の実施形態の3つのスラリー拡散室である第1スラリー拡散室44a〜第3スラリー拡散室44cに対して、4つのスラリー拡散室である第1スラリー拡散室82a〜第4スラリー拡散室82dに変更するとともに、第3スラリー拡散室82cに8つの連通口88a〜88hが設けられている。
【0073】
すなわち、連通口は、上流側から下流側に向かって2倍ずつ3段階に増加している。従って、この第3の実施形態は、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0074】
図9は、本発明の第4の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板90の概略模式図である。
【0075】
仕切り板90は、上流側から下流側に向かって、第1スラリー拡散室92a、第2スラリー拡散室92b及び第3スラリー拡散室92cを設ける。第1スラリー拡散室92aと第2スラリー拡散室92bとは、2つの連通口94a、94bにより連通する一方、前記第2スラリー拡散室92bと第3スラリー拡散室92cとは、3つの連通口96a、96b及び96cにより連通する。連通口96bは、連通口96a、96cよりも幅広に構成される。連通口96bには、上流側の連通口94a、94bからスラリー14の供給が行われるからである。
【0076】
このように構成される第4の実施形態では、連通口94a、94bが供給口30を挟んでシート幅方向に設けられるとともに、下流側の連通口96a〜96cは、前記連通口94a、94bの数+1に設定され、且つシート幅方向に広範囲にわたって設けられている。従って、第4の実施形態は、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0077】
図10は、本発明の第5の実施形態に係るシート成形装置を構成する仕切り板100の概略構成説明図である。
【0078】
仕切り板100には、上流側から第1スラリー拡散室102aと第2スラリー拡散室102bとが設けられる。第1スラリー拡散室102aと第2スラリー拡散室102bとは、2つの連通口104a、104bを介して連通する。連通口104a、104bは、シート幅方向に沿って供給口30を挟んで設けられている。
【0079】
このように構成される第5の実施形態では、供給口30からスラリー拡散室102aに供給されたスラリー14は、2つの連通口104a、104bから下流側の第2スラリー拡散室102bに分散して供給されている。このため、スラリー14は、シート幅方向への拡散が促進され、シート厚さが均一なグリーンシートを確実に成形することができる等、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【符号の説明】
【0080】
10、70…シート成形装置 12…シート製造システム
14…スラリー 16…スラリー供給部
18…ウェブ 20…ウェブ供給部
21…グリーンシート 22…乾燥部
24…スラリータンク 28…ポンプ
30…供給口 32…供給ボックス遮蔽板
38…供給ボックス
40、74、80、90、100…仕切り板
44a〜44c、82a〜82d、92a〜92c、102a、102b…スラリー拡散室
46a、46b、48a〜48d、84a、84b、86a〜86d、88a〜88h、94a、94b、96a〜96c、104a、104b…連通口
50…開口部 52…スラリー貯留ケース
54…スラリー貯留部 56…ブレード
56a…排出口 59…板
72…ケーシング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラリーをシート状に排出してグリーンシートを成形するためのドクターブレード用シート成形装置であって、
前記スラリーが供給される供給口と、
前記グリーンシートが排出される排出口と、
前記供給口と前記排出口との間に設けられ、前記スラリーの流れ方向上流から下流に沿って配列されるとともに、前記スラリーを前記グリーンシートの送り出し方向に交差するシート幅方向に拡散させる2以上のスラリー拡散室と、
互いに隣接する前記スラリー拡散室同士を連通させる連通口と、
を備え、
前記連通口は、前記シート幅方向に沿って前記供給口を挟んで2以上設けられることを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項2】
請求項1記載のドクターブレード用シート成形装置において、下流側に設けられる前記連通口は、上流側に設けられる前記連通口よりも多数に且つ前記シート幅方向に広範囲にわたって設けられることを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記連通口の通路断面積の総和は、下流側に向かって、順次、減少することを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記連通口の数は、下流側に向かって、順次、n倍(nは2以上の整数)に増加することを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記供給口の開口断面積の総和は、前記排出口の開口断面積の総和よりも大きいことを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、最下流の前記連通口の通路断面積の総和は、前記排出口の開口断面積の総和よりも大きいことを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記供給口の通路断面積の総和は、最上流の前記連通口の通路断面積の総和よりも大きいことを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記供給口は、前記排出口よりも上方に配置されることを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、同一の前記スラリー拡散室に前記シート幅方向に沿って設けられる3以上の前記連通口は、該シート幅方向に互いに同一の距離ずつ離間することを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記連通口は、単一の仕切り板に設けられるとともに、
前記単一の仕切り板により、複数の前記スラリー拡散室を形成することを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項1】
スラリーをシート状に排出してグリーンシートを成形するためのドクターブレード用シート成形装置であって、
前記スラリーが供給される供給口と、
前記グリーンシートが排出される排出口と、
前記供給口と前記排出口との間に設けられ、前記スラリーの流れ方向上流から下流に沿って配列されるとともに、前記スラリーを前記グリーンシートの送り出し方向に交差するシート幅方向に拡散させる2以上のスラリー拡散室と、
互いに隣接する前記スラリー拡散室同士を連通させる連通口と、
を備え、
前記連通口は、前記シート幅方向に沿って前記供給口を挟んで2以上設けられることを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項2】
請求項1記載のドクターブレード用シート成形装置において、下流側に設けられる前記連通口は、上流側に設けられる前記連通口よりも多数に且つ前記シート幅方向に広範囲にわたって設けられることを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項3】
請求項1又は2記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記連通口の通路断面積の総和は、下流側に向かって、順次、減少することを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記連通口の数は、下流側に向かって、順次、n倍(nは2以上の整数)に増加することを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記供給口の開口断面積の総和は、前記排出口の開口断面積の総和よりも大きいことを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、最下流の前記連通口の通路断面積の総和は、前記排出口の開口断面積の総和よりも大きいことを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記供給口の通路断面積の総和は、最上流の前記連通口の通路断面積の総和よりも大きいことを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記供給口は、前記排出口よりも上方に配置されることを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、同一の前記スラリー拡散室に前記シート幅方向に沿って設けられる3以上の前記連通口は、該シート幅方向に互いに同一の距離ずつ離間することを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載のドクターブレード用シート成形装置において、前記連通口は、単一の仕切り板に設けられるとともに、
前記単一の仕切り板により、複数の前記スラリー拡散室を形成することを特徴とするドクターブレード用シート成形装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−201070(P2011−201070A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−68570(P2010−68570)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(303003225)UHT株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(303003225)UHT株式会社 (9)
【Fターム(参考)】
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