説明

ドライブピニオン支持装置

【課題】終減速機12の構成部品を大きくすることなくドライブピニオン38の支持剛性が向上されたドライブピニオン支持装置を提供する。
【解決手段】ピニオンシャフト36と、そのピニオンシャフト36の一端においてそのピニオンシャフト36よりも大径に設けられたピニオンギヤ28とを有するドライブピニオン38を、ピニオンシャフト36の軸心C1方向に所定の支持点間距離Xだけ離隔する一対のテーパードローラベアリング40、42を介して回転可能に支持するドライブピニオン支持装置10であって、ピニオンギヤ28側のテーパードローラベアリング40の内輪50は、そのピニオンギヤ28に向かって突き出す環状突起58を有するものであり、ピニオンギヤ28は、ピニオンシャフト36側の背面に形成されるとともにその環状突起58が挿入された凹部62を有するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両において、ドライブピニオンを一対の軸受を介して回転可能に支持するドライブピニオン支持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両において、例えば終減速機やトランスファ等に備えられるものであり、ピニオンシャフトと、そのピニオンシャフトの一端においてそのピニオンシャフトよりも大径に設けられたピニオンギヤとを有するドライブピニオンを、そのピニオンシャフトの軸心方向に離隔する一対の軸受を介して回転可能に支持するドライブピニオン支持装置が知られている。たとえば、特許文献1に記載されたものがそれである。
【特許文献1】特開2005−308176号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記のようなドライブピニオン支持装置では、ドライブピニオンの支持剛性を向上させるための設計変更として、一般的に、従来のものに比較して前記一対の軸受の支持点間距離(軸受スパン)を長くするためにドライブピニオンの全長を長くするか、あるいは上記軸受を大径化することが行われる。しかしながら、上記設計変更に伴い、ドライブピニオン支持装置を含む前記終減速機やトランスファ等が大きくなるとともに重量が増すという点、その終減速機やトランスファ等の大型化に起因して車両搭載時における配置性が低下するという点で、不都合が生じる。
【0004】
本発明は以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、ドライブピニオン支持装置を含む終減速機やトランスファ等の構成部品を大きくすることなく、ドライブピニオンの支持剛性が向上されたドライブピニオン支持装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するための請求項1にかかる発明の要旨とするところは、ピニオンシャフトと、そのピニオンシャフトの一端においてそのピニオンシャフトよりも大径に設けられたピニオンギヤとを有するドライブピニオンを、そのピニオンシャフトの軸心方向に離隔する一対の軸受を介して回転可能に支持するドライブピニオン支持装置であって、前記一対の軸受のうちの前記ピニオンギヤ側の軸受の内輪は、そのピニオンギヤに向かって突き出す凸部を有するものであり、前記ピニオンギヤは、前記ピニオンシャフト側の背面に形成されるとともに前記凸部が挿入された凹部を有するものであることにある。
【0006】
また、請求項2にかかる発明の要旨とするところは、請求項1にかかる発明において、前記ピニオンギヤ側の軸受は、斜接型軸受であり、前記凸部は、その斜接型軸受の内輪の前記ピニオンギヤ側の一端が上記ピニオンギヤに向かって軸心方向に延出させられたものであることにある。
【0007】
また、請求項3にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記凸部は、前記凹部に圧入されていることにある。
【0008】
また、請求項4にかかる発明の要旨とするところは、請求項1または2にかかる発明において、前記凹部は、前記ピニオンギヤの軸心まわりに連続する環状溝により形成されたものであり、前記凸部は、前記内輪から軸心方向に突設された環状突起であり、その環状突起がその環状溝内に圧入されていることにある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1にかかる発明のドライブピニオン支持装置によれば、ピニオンシャフトと、そのピニオンシャフトの一端においてそのピニオンシャフトよりも大径に設けられたピニオンギヤとを有するドライブピニオンを、そのピニオンシャフトの軸心方向に離隔する一対の軸受を介して回転可能に支持するドライブピニオン支持装置であって、前記一対の軸受のうちの前記ピニオンギヤ側の軸受の内輪は、そのピニオンギヤに向かって突き出す凸部を有するものであり、前記ピニオンギヤは、前記ピニオンシャフト側の背面に形成されるとともに前記凸部が挿入された凹部を有するものであることから、ドライブピニオンに対する一対の軸受による支持点間距離すなわち軸心方向距離が長くなるので、ドライブピニオン支持装置を含む終減速機やトランスファ等の構成部品を大きくすることなくドライブピニオンの支持剛性を向上させることができる。すなわち、例えばドライブピニオンを長くしたり上記一対の軸受を大径化することなしに、ドライブピニオンの支持剛性を向上させることができる。
【0010】
また、請求項2にかかる発明のドライブピニオン支持装置によれば、前記ピニオンギヤ側の軸受は、たとえばテーパードローラベアリングと称される斜接型軸受であり、前記凸部は、その斜接型軸受の内輪の前記ピニオンギヤ側の一端が上記ピニオンギヤに向かって軸心方向に延出させられたものであり、その凸部が、ピニオンギヤの背面に形成された凹部に挿入されることにより、その一対の軸受の支持点間距離が長くさせられているので、ドライブピニオン支持装置を含む終減速機やトランスファ等の構成部品を大きくすることなくドライブピニオンの支持剛性を向上させることができる。
【0011】
また、請求項3にかかる発明のドライブピニオン支持装置によれば、前記凸部は、前記凹部に圧入されていることから、上記圧入が為されていない場合にはピニオンギヤ側の軸受の内輪の内周面だけで受けていたピニオンギヤのかみあい反力を、上記軸受の内輪の内周面に加えてその内輪の外周面でも受けられるので、ドライブピニオン支持装置を含む終減速機やトランスファ等の構成部品を大きくすることなくドライブピニオンの首下強度を向上させることができる。すなわち、例えばドライブシャフトの軸径および軸受を大きくすることなしに、ドライブピニオンの首下強度を向上させることができる。
【0012】
また、請求項4にかかる発明のドライブピニオン支持装置によれば、前記凹部は、前記ピニオンギヤの軸心まわりに連続する環状溝により形成されたものであり、前記凸部は、前記内輪から軸心方向に突設された環状突起であり、その環状突起がその環状溝内に圧入されていることから、上記圧入が為されていない場合にはピニオンギヤ側の軸受の内輪から軸心方向に突設された環状突起の内周面だけで受けていたピニオンギヤのかみあい反力を、上記環状突起の内周面に加えてその環状突起の外周面でも受けられるので、ドライブピニオン支持装置を含む終減速機やトランスファ等の構成部品を大きくすることなくドライブピニオンの首下強度を向上させることができる。すなわち、例えばドライブシャフトの軸径および軸受を大きくすることなしに、ドライブピニオンの首下強度を向上させることができる。
【0013】
ここで、好適には、本発明のドライブピニオン支持装置は、従来の製品に比較して入力トルクが大きくなる場合においてそのドライブピニオン支持装置を含む終減速機やトランスファ等の構成部品を大きくすることなくドライブピニオンの支持剛性を向上させるために用いられる。しかし、これに限らず、例えば、従来の製品に比較して小型化する場合において従来と同等またはそれ以上のドライブピニオンの支持剛性を確保しつつそのドライブピニオンを支持する一対の軸受を小型化するために用いられてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例】
【0015】
図1は、本発明の一実施例のドライブピニオン支持装置10を含む終減速機12を示す断面図である。図1において、終減速機12は、よく知られた所謂ハイポイドギヤ式の減速歯車装置14と、よく知られた所謂傘歯車式の差動歯車装置16とを備えており、例えば、図示しないエンジンや電動機等の動力源から左右の駆動輪に至るまでの動力伝達経路に設けられ、図示しないプロペラシャフト等のドライブシャフトを介して伝達された回転の速度を減速しつつ駆動力を増大するとともに、その回転を上記左右の駆動輪に相互の回転速度差を許容しつつ伝達するものである。本実施例における終減速機12は、FR(フロントエンジン・リアドライブ)車両に好適に用いられるものであって、上記プロペラシャフトの出力端に連結され、後輪の車軸上に配置されている。減速歯車装置14および差動歯車装置16は、マウントブラケット18および図示しないマウントを介して車体に弾性支持される共通のハウジングとしてのデファレンシャルキャリア20内にそれぞれ配設されており、そのデファレンシャルキャリア20内に所定量だけ貯留された潤滑油により潤滑させられるようになっている。なお、減速歯車装置14は、上述のようにハイポイドギヤ式であり、相互に平行でなく且つ交わらない2軸心、すなわち後述のピニオンギヤ28の軸心C1とデファレンシャルリングギヤ30の軸心C2との間で回転を伝えるものであるが、図1では、便宜上、上記軸心C1と軸心C2とを共通の平面内に示している。
【0016】
差動歯車装置16は、デファレンシャルキャリア20内において一対のサイドベアリング22、24を介して前記後輪の車軸の入力軸に略同心である軸心C2まわりの回転可能に支持されたデファレンシャルケース26と、そのデファレンシャルケース26内に配設された所謂傘歯車式の差動機構27とを含んで構成されている。差動歯車装置16は、前記終減速機12の機能のうち、減速歯車装置14から伝達された回転を前記左右の駆動輪すなわち後輪に相互の回転速度差を許容しつつ分配する機能を受け持っている。なお、後述の減速歯車装置14の減速大歯車としてのデファレンシャルリングギヤ(ハイポイド大歯車)30は、差動歯車装置16の入力部材として機能している。
【0017】
減速歯車装置14は、所謂ハイポイドギヤ式の減速機構として機能する減速歯車対として、減速小歯車としてのピニオンギヤ(ハイポイド小歯車)28と、そのピニオンギヤ28に対して動力伝達経路の下流側に配置させられ、ピニオンギヤ28よりも大径に設けられるとともにそのピニオンギヤ28と噛み合わされた減速大歯車としてのデファレンシャルリングギヤ(ハイポイド大歯車)30とから成るハイポイドギヤ対32を備えている。減速歯車装置14は、前記終減速機12の機能のうち、伝達された回転の速度を減速しつつ駆動力を増大する機能を受け持っており、その減速された回転が、上述のように差動歯車装置16の入力部材としても機能するデファレンシャルリングギヤ30を介して、差動歯車装置16に伝達されるようになっている。
【0018】
デファレンシャルリングギヤ30は、デファレンシャルケース26に複数のボルト34により締着され、そのデファレンシャルケース26と共に軸心C2まわりに回転させられるようになっている。
【0019】
ピニオンギヤ28は、ピニオンシャフト36の一端すなわち車両における後方側においてそのピニオンシャフト36よりも大径に且つそのピニオンシャフト36と一体的に設けられたものであり、ピニオンシャフト36と共にドライブピニオン38を構成している。
【0020】
ドライブピニオン38は、デファレンシャルキャリア20内において、それぞれの支持点aおよびbが所定の軸心方向距離である支持点間距離Xだけ離隔させられて背面合わせで配置された一対のテーパードローラベアリング(円すいころ軸受、斜接型軸受)40、42により、軸心C1まわりの回転可能に支持されている。上記背面あわせとは、テーパードローラベアリング40の円すいころの軸心と、テーパードローラベアリング42の円すいころの軸心とが、それら円すいころに対して半径方向外側で交差する円すいころ軸受の組み合わせをいう。また、ドライブピニオン38は、その他端すなわち車両における前方側にフランジ部材44を介して図示しないプロペラシャフトの出力端が連結されており、そのプロペラシャフトにより回転駆動されるようになっている。
【0021】
一対のテーパードローラベアリング40、42は、デファレンシャルキャリア20内においてそれぞれ車両における後方側および前方側が大径となる段付状に形成された一対の円筒状嵌着面46、48に対してそれぞれ嵌め着けられた外輪50、52と、ドライブピニオン38のピニオンシャフト36に対して互いに軸心C1方向に離隔してそれぞれ嵌め着けられた内輪54、56とを備えている。ピニオンギヤ36側のテーパードローラベアリング40の内輪54は、その内輪54からそのピニオンギヤ36に向かって軸心C1方向に突設させられた環状突起58を有しており、この環状突起58は、ピニオンギヤ28のピニオンシャフト36側の背面において軸心C1まわりに連続する環状溝60により形成された凹部62に圧入されている。これにより、環状突起58の外周面64および内周面66は、環状溝60の外周側に位置する円筒状内壁面および内周側に位置する円筒状内壁面に圧接されている。なお、上記環状突起58は、本発明において、ピニオンギヤ36側の軸受に相当するテーパードローラベアリング40の内輪54が有する、ピニオンギヤ36に向かって突き出す凸部に相当し、また、内輪54のピニオンギヤ36側の一端がそのピニオンギヤ36に向かって軸心C1方向に延出させられた部分に相当する。また、一対のテーパードローラベアリング40、42には、遊隙をなくすとともに負荷時におけるハイポイドギヤ対32間の相対変位を可及的に小さく保つために、所定の締付トルクでナット68を締め付けることにより適正な予圧(プレロード)が与えられており、これにより、一対のテーパードローラベアリング40、42は軸受剛性が高められている。
【0022】
本実施例では、ドライブピニオン支持装置10は、ピニオンシャフト36とそのピニオンシャフト36の一端においてピニオンシャフト36よりも大径に設けられたピニオンギヤ28とを有するドライブピニオン38を、ピニオンシャフト36の軸心C1方向に所定の支持点間距離Xだけ離隔する一対のテーパードローラベアリング40、42を介して回転可能に支持するものである。
【0023】
因みに、図2は、テーパードローラベアリング40の内輪54の環状突起58がピニオンギヤ28の凹部62に圧入されていない従来のドライブピニオン支持装置100を含む終減速機101を示すものである。図2において、ドライブピニオン38に比較して環状溝60により形成された凹部62を有していないドライブピニオン102は、デファレンシャルキャリア20内において、背面合わせでそれぞれの支持点a’およびbが所定の支持点間距離Yだけ離隔して配置させられた一対のテーパードローラベアリング40、42により軸心Cまわりの回転可能に支持されている。ドライブピニオン支持装置10およびドライブピニオン支持装置100を比較すると、共通の部材として一対のテーパードローラベアリング40、42が用いられ、また、軸心C1方向の長さおよび主要部分の径寸法が等しいドライブピニオン38および102がそれぞれ用いられているにもかかわらず、ドライブピニオン支持装置100の支持点間距離Yは、ドライブピニオン支持装置10の支持点間距離Xよりも、そのドライブピニオン支持装置10において環状突起58が環状溝60内に圧入された距離の分だけ短くなっている。
【0024】
以上のように構成される本実施例の終減速機12は、車両の駆動に際して、前記プロペラシャフトを介してドライブピニオン38に伝達された回転(駆動力)を、デファレンシャルリングギヤ30、デファレンシャルケース26、および差動機構27を介して前記左右の駆動輪に伝達する。図3は、その際に、ピニオンギヤ28とデファレンシャルリングギヤ30とのかみあい点cに作用するかみあい反力Rを示すものである。図3に示すように、かみあい反力Rは、軸心C1方向の成分のスラスト荷重Rsと、軸心C1に直交する方向の成分のラジアル荷重Rrとに分けられる。本実施例のドライブピニオン支持装置10では、上記ラジアル荷重Rrを、テーパードローラベアリング40の内輪54の環状突起58における外周面64および内周面66で受ける構造になっている。
【0025】
因みに、図4は、従来のドライブピニオン支持装置100を含む終減速機において、車両の駆動の際にピニオンギヤ28とデファレンシャルリングギヤ30とのかみあい点c’に作用するかみあい反力Rを示すものである。図4に示すように、従来のドライブピニオン支持装置100では、上記かみあい反力Rの軸心C1に直交する方向の成分のラジアル荷重Rrを、テーパードローラベアリング40の内輪54の環状突起58における内周面66だけで受ける構造となっている。ドライブピニオン支持装置10およびドライブピニオン支持装置100を比較すると、ドライブシャフト36の直径がそれぞれ等しいドライブピニオン38および102がそれぞれ用いられているにもかかわらず、ピニオンギヤ28のピニオンシャフト36側の背面におけるそのピニオンシャフト36との境界部分の強度すなわちドライブピニオン38の首下強度が、ドライブピニオン102の首下強度よりも、ラジアル荷重Rrを環状突起58の外周面66でも受けられる分だけ高くなっている。また、ドライブピニオン支持装置10の支持点aの方が、ドライブピニオン支持装置100の支持点a’よりも、環状突起58を環状溝60内に圧入させた距離だけかみあい点cに近くなっている。
【0026】
上述のように、本実施例のドライブピニオン支持装置10によれば、ピニオンシャフト36と、そのピニオンシャフト36の一端においてそのピニオンシャフト36よりも大径に設けられたピニオンギヤ28とを有するドライブピニオン38を、そのピニオンシャフト36の軸心C1方向に所定の支持点間距離Xだけ離隔する一対のテーパードローラベアリング40、42を介して回転可能に支持するドライブピニオン支持装置10であって、上記一対のテーパードローラベアリング40、42のうちのピニオンギヤ28側のテーパードローラベアリング40の内輪50は、そのピニオンギヤ28に向かって突き出す環状突起58を有するものであり、ピニオンギヤ28は、ピニオンシャフト36側の背面に形成されるとともにその環状突起58が挿入された凹部62を有するものであることから、一対のテーパードローラベアリング40、42による支持点間距離Xが長くされているので、ドライブピニオン支持装置10を含む終減速機12の構成部品を大きくすることなくドライブピニオン38の支持剛性を向上させることができる。すなわち、例えばドライブピニオン38を長くしたり一対のテーパードローラベアリング40、42を大径化することなしに、ドライブピニオン38の支持剛性を向上させることができる。上記支持剛性には、ラジアル荷重Rrによってドライブピニオン38に作用する曲げモーメントに対する剛性が含まれ、本実施例では、一対のテーパードローラベアリング40、42による作用点距離が長くされていることで上記曲げモーメントに対する剛性が向上されている。また、ピニオンギヤ28側のテーパードローラベアリング40の支持点aがピニオンギヤ28のかみあい点cに近づけられるので、ドライブピニオン38の頭部すなわちドライブピニオン38のピニオンギヤ28側の一端の撓み量を低減させることができる。
【0027】
また、本実施例のドライブピニオン支持装置10によれば、ピニオンギヤ28側のテーパードローラベアリング40は、斜接型軸受であり、環状突起58は、そのテーパードローラベアリング40の内輪50のピニオンギヤ28側の一端がそのピニオンギヤ28に向かって軸心C1方向に延出させられたものであり、その環状突起58が、ピニオンギヤ28の背面に形成された凹部62に挿入されることにより、その一対のテーパードローラベアリング40、42の支持点間距離Xが長くさせられているので、ドライブピニオン支持装置10を含む終減速機12の構成部品を大きくすることなくドライブピニオン38の支持剛性を向上させることができる。
【0028】
また、本実施例のドライブピニオン支持装置10によれば、環状突起58は、凹部62に圧入されていることから、上記圧入が為されていない場合にはピニオンギヤ28側のテーパードローラベアリング40の内輪50の内周面66だけで受けていた、ピニオンギヤ28のかみあい反力Rの軸心C1に直行する方向成分であるラジアル荷重Rrを、上記テーパードローラベアリング40の内輪50の内周面66に加えてその内輪50の外周面64でも受けられるので、ドライブピニオン支持装置10を含む終減速機12の構成部品を大きくすることなくドライブピニオン38の首下強度を向上させることができる。すなわち、例えばドライブシャフト36の軸径およびテーパードローラベアリング40を大きくすることなしに、ドライブピニオン38の首下強度を向上させることができる。また、ドライブシャフト36を大径化することがないためにそのドライブシャフト36を支持するテーパードローラベアリング40を大きくする必要がないので、そのテーパードローラベアリング40の摩擦損失の増大等により効率が低下することがないという利点がある。
【0029】
また、本実施例のドライブピニオン支持装置10によれば、凹部62は、ピニオンギヤ28の軸心C1まわりに連続する環状溝60により形成されたものであり、環状突起58は、内輪50から軸心C1方向に突設されたものであり、その環状突起58がその環状溝60内に圧入されていることから、上記圧入が為されていない場合にはピニオンギヤ28側のテーパードローラベアリング40の内輪50から軸心C1方向に突設された環状突起58の内周面66だけで受けていた、ピニオンギヤ28のかみあい反力Rの軸心C1に直行する方向成分であるラジアル荷重Rrを、上記環状突起58の内周面66に加えてその環状突起58の外周面64でも受けられるので、ドライブピニオン支持装置10を含む終減速機12の構成部品を大きくすることなくドライブピニオン38の首下強度を向上させることができる。すなわち、例えばドライブシャフト36の軸径を大きくすることなしに、ドライブピニオン38の首下強度を向上させることができる。
【0030】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではなく、別の態様でも実施され得る。
【0031】
たとえば、前述の実施例において、ドライブピニオン支持装置10は、FR車両の後輪の車軸上に配置された終減速機12に設けられたハイポイドギヤ対32のうちのドライブピニオン38を支持するものであったが、これに限らず、例えば、4WD車両におけるトランスファや前輪の車軸上に配置された差動装置、または、FF車両やRR車両などにおける縦置き型のトランスアクスル等に設けられたドライブピニオンを支持するものであってもよい。また、上記ハイポイドギヤ対32に限らず、すぐば傘歯車対、斜歯傘歯車対、またはまがりば傘歯車対などにより構成された減速歯車対のうちのドライブピニオンを支持するものであってもよい。
【0032】
また、前述の実施例において、ドライブピニオン38を軸心Cまわりの回転可能に支持する一対のテーパードローラベアリング(円すいころ軸受)40、42が用いられていたが、これに限らず、深みぞ玉軸受やアンギュラ玉軸受等の玉軸受などの他の型式の軸受が用いられ得る。
【0033】
また、前述の実施例において、終減速機12に設けられた差動歯車装置16は、所謂傘歯車式の差動機構27を有して構成されていたが、これに加えて差動制限装置やデファレンシャルロック装置等を有するものであってもよい。
【0034】
また、前述の実施例において、テーパードローラベアリング40の内輪54のピニオンギヤ28側に突設された環状突起58は、内輪54のピニオンギヤ28側に元々形成されている端部から構成されてもよいし、積極的に突設されたものであってもよい。また、上記環状突起58は、必ずしも周方向に連続して形成されたものでなくてもよく、例えば、潤滑用の油溝やスリットが形成されたものでもよい。
【0035】
なお、上述したのはあくまでも一実施形態であり、その他一々例示はしないが、本発明は、その主旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づいて種々変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施例のドライブピニオン支持装置を含む終減速機を示す断面図である。
【図2】テーパードローラベアリングの内輪の環状突起がピニオンギヤの凹部に圧入されていない従来のドライブピニオン支持装置を示すものである。
【図3】図1に示す終減速機が、車両の駆動に際して、ピニオンギヤとデファレンシャルリングギヤとのかみあい点に作用するかみあい反力を示すものである。
【図4】図2に示す従来のドライブピニオン支持装置を含む終減速機が、車両の駆動に際して、ピニオンギヤとデファレンシャルリングギヤとのかみあい点に作用するかみあい反力を示すものである。
【符号の説明】
【0037】
10、100:ドライブピニオン支持装置
28:ピニオンギヤ
36:ピニオンシャフト
38、102:ドライブピニオン
40:テーパードローラベアリング(軸受、斜接型軸受)
42:テーパードローラベアリング(軸受、斜接型軸受)
54:内輪
58:環状突起
60:環状溝
62:凹部
C1:軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピニオンシャフトと、該ピニオンシャフトの一端において該ピニオンシャフトよりも大径に設けられたピニオンギヤとを有するドライブピニオンを、該ピニオンシャフトの軸心方向に離隔する一対の軸受を介して回転可能に支持するドライブピニオン支持装置であって、
前記一対の軸受のうちの前記ピニオンギヤ側の軸受の内輪は、該ピニオンギヤに向かって突き出す凸部を有するものであり、
前記ピニオンギヤは、前記ピニオンシャフト側の背面に形成されるとともに前記凸部が挿入された凹部を有するものであることを特徴とするドライブピニオン支持装置。
【請求項2】
前記ピニオンギヤ側の軸受は、斜接型軸受であり、
前記凸部は、該斜接型軸受の内輪の前記ピニオンギヤ側の一端が該ピニオンギヤに向かって軸心方向に延出させられたものであることを特徴とする請求項1のドライブピニオン支持装置。
【請求項3】
前記凸部は、前記凹部に圧入されていることを特徴とする請求項1または2のドライブピニオン支持装置。
【請求項4】
前記凹部は、前記ピニオンギヤの軸心まわりに連続する環状溝により形成されたものであり、
前記凸部は、前記内輪から軸心方向に突設された環状突起であり、該環状突起が該環状溝内に圧入されていることを特徴とする請求項1または2のドライブピニオン支持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−38305(P2010−38305A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−203535(P2008−203535)
【出願日】平成20年8月6日(2008.8.6)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】