説明

ドラフト装置、紡績ユニット及び紡績機

【課題】クレードルの開閉により吸引搬送管が外れずに、確実に繊維屑の吸引が行われ、運転中の吸引エアの漏れにより、不必要なエア流量を消費しない、ドラフト装置、紡績ユニット及び紡績機を提供する。
【解決手段】ローラ対Rと、切替部31と、吸引部41を備える。吸引部41は、繊維屑をトップローラの近傍で吸引する吸引口42と、吸引口42で吸引された繊維屑を搬送する第1吸引搬送管43と、第1吸引搬送管43とは独立して設けられ、ドラフト位置では第1吸引搬送管43と当接して接続状態となり、非ドラフト位置では第1吸引搬送管43から離間して非接続状態となる第2吸引搬送管44と、を備える。第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44とは、繊維束Fのドラフト方向において、最下流に位置するローラ対Rの下流側で接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラフト装置、ドラフト装置を備えた紡績ユニット及び紡績機の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ドラフト装置で繊維束を牽伸(ドラフト)するとともに、牽伸された繊維束を撚ることで紡績糸を製造する紡績ユニットや紡績機が知られている。
【0003】
ドラフト装置は、繊維束のドラフト方向の上流側から下流側に向かって、バックローラ対、ミドルローラ対、フロントローラ対等の複数のローラ対を備えている。各ローラ対は、駆動ローラであるボトムローラと、ボトムローラに接触して従動回転するトップローラとで構成される。各トップローラはドラフトクレードル(以下、単にクレードルという)に一体的に保持されている。クレードルは一端に設けられた回動軸を中心として回動自在である。クレードルが回動軸を中心として回動することで、各トップローラが各ボトムローラと接離する。クレードルを閉じて各トップローラが各ボトムローラと接触している位置をドラフト位置とし、メンテナンス等のためクレードルを開放して各トップローラが各ボトムローラと離間している位置を非ドラフト位置とする。
【0004】
ところで、ドラフト装置の作動中は、最も下流側のフロントローラ対が最も高速で回転している。フロントトップローラからは繊維束から出た繊維屑が巻き上げられている。この繊維屑がフロントトップローラに巻き付くと、最悪の場合、ドラフトが継続できない状態となる。このため、フロントトップローラ付近には繊維屑を吸引する吸引部が設けられている。
【0005】
吸引部は、フロントトップローラの上部(ボトムローラが設けられている側とは反対側)に吸引口がある。吸引搬送管は吸引口からクレードルの上部(ボトムローラが設けられている側とは反対側)を経て回動軸の後方(ドラフト方向の上流側)の接続口まで配設されている。一方、吸引源は各紡績ユニット共通の吸引搬送管である主配管に接続されている。主配管からクレードルの後方に枝配管が設けられている。この枝配管とクレードル後部の接続口とが蛇腹ホースで接続されている。
【0006】
しかしながら、上記従来の吸引部では、蛇腹ホースがクレードルの回動軸後方の接続口に接続されているため、クレードルを開放して非ドラフト位置にしたときに蛇腹ホースが接続口から簡単に外れてしまう場合があった。そのためクレードルをメンテナンスするときに蛇腹ホースの再装着を行う必要がある場合があり、オペレータの負担となっていた。蛇腹ホースが大きく変形するため、ホースが破損する場合もあった。吸引エアの配管を蛇腹ホースで大きく迂回させるため、吸引部が大型化していた。
【0007】
また、蛇腹ホースが接続口から外れていることにオペレータが気づかない場合もある。このままの状態で運転すると当該紡績ユニットでは繊維屑の吸引が行われず、フロントトップローラに繊維束が巻き付いてしまう。また、吸引エアが漏れることで紡績機が不必要なエア流量を消費してしまうため、他の正常な紡績ユニットにもエア流量の低下を引き起こす。このように蛇腹ホースが接続口から外れることで、当該紡績ユニットのみならず、他の紡績ユニットについても糸品質が低下する場合がある。
【0008】
一方、蛇腹ホースを用いずに、クレードルの回動軸付近で吸引搬送管の連通と遮断を行うこととしたドラフト装置も公知である(特許文献1、2参照。)。しかしながら、特許文献1では、ボス部材とボス部材に対して摺動回転するスライダーの内部に吸引搬送管を設けているため、吸引搬送管自体が可動部を構成することとなり、確実な連通と遮断を行うことが難しい。また、特許文献1、2ともに、吸引口からクレードルの上部を経て回動軸まで吸引搬送管が配設されている点は従来と同様である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−218104号公報
【特許文献2】実開昭54−139726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものである。本発明の目的は、クレードルの開閉により吸引搬送管が外れることがなく、確実に繊維屑の吸引が行われるとともに、運転中の吸引エアの漏れにより、不必要なエア流量を消費することのない、ドラフト装置、紡績ユニット及び紡績機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0012】
即ち、第1の発明のドラフト装置は、ローラ対と、切替部と、吸引部と、を備える。ローラ対は、複数あり、繊維束をドラフトするトップローラとボトムローラとからなる。切替部は、トップローラとボトムローラとをドラフト位置と非ドラフト位置に切り替える。吸引部は、トップローラが巻き上げる繊維屑を吸引する。
切替部は、更に、クレードルと、回動軸と、を備える。クレードルは、複数のトップローラを回転可能に支持する。回動軸は、繊維束のドラフト方向の上流側に配置され、クレードルをドラフト位置と非ドラフト位置とに回動自在とする。
吸引部は、更に吸引口と、第1吸引搬送管と、第2吸引搬送管と、を備える。吸引口は、繊維屑をトップローラの近傍で吸引する。第1吸引搬送管は、クレードルに支持され、吸引口で吸引された繊維屑を搬送する。第2吸引搬送管は、第1吸引搬送管とは独立して設けられ、ドラフト位置では第1吸引搬送管と当接して接続状態となり、非ドラフト位置では第1吸引搬送管から離間して非接続状態となる。
第1吸引搬送管と第1吸引搬送管とは、繊維束のドラフト方向において、最下流に位置するローラ対の下流側で接続される。
【0013】
第2の発明のドラフト装置は、第1の発明のドラフト装置であって、漏れ防止部材を更に備える。漏れ防止部材は、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管とが接続状態にある場合に、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管との間からの吸引エアの漏れを防止する。
【0014】
第3の発明のドラフト装置は、第2の発明のドラフト装置であって、漏れ防止部材は、合成ゴム素材で形成されている。
【0015】
第4の発明のドラフト装置は、第2又は第3の発明のドラフト装置であって、漏れ防止部材は、第1吸引搬送管又は第2吸引搬送管のいずれか一方に設けられる。第1吸引搬送管又は第2吸引搬送管のいずれか他方には、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管とが接続状態にある場合に、漏れ防止部材に接触する接続部材が設けられる。漏れ防止部材は、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管とが接続状態にある場合であって、第1吸引搬送管及び第2吸引搬送管の内部が負圧になることにより、接続部材に吸着する。
【0016】
第5の発明のドラフト装置は、第4の発明のドラフト装置であって、漏れ防止部材は、接続部材と接続された状態で空気室を構成する吸着部を備える。空気室は、第1吸引搬送管及び第2吸引搬送管と連通する。吸着部は、第1吸引搬送管及び第2吸引搬送管の内部が負圧になることにより、接続部材に吸着する。
【0017】
第6の発明のドラフト装置は、第1から第5の発明のいずれかのドラフト装置であって、装置フレームを更に備える。装置フレームは、ボトムローラ及び回動軸を支持する。第2吸引搬送管は、装置フレームに配置される。
【0018】
第7の発明の紡績ユニットは、第1から第6のいずれかの発明のドラフト装置と、紡績装置と、巻取装置と、を備える。紡績装置は、ドラフト装置によりドラフトされた繊維束を旋回空気流にて紡績する。巻取装置は、紡績装置で紡績された紡績糸をパッケージヘと巻き取る。
【0019】
第8の発明の紡績ユニットは、第7の発明の紡績ユニットであって、紡績ユニットは、吹付部を更に備える。吹付部は、紡績装置に堆積する繊維屑を圧縮エアで取り除く。吹付部は、更に吹付口と、第1吹付管と、第2吹付管と、を備える。吹付口は、紡績装置に対して圧縮エアを吹き付ける。第1吹付管は、吹付口に圧縮エアを送る。第2吹付管は、第1吹付管とは独立して設けられ、ドラフト位置では第1吹付管と接続状態となり、非ドラフト位置では第1吹付管とは離間して非接続状態となる。
【0020】
第9の発明の紡績機は、第7又は第8のいずれかの紡績ユニットを、複数備える。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0022】
第1の発明のドラフト装置によれば、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管の当接と離間により接続状態と非接続状態が切り替るため、ドラフト位置にすると第1吸引搬送管と第2吸引搬送管とが自動的に接続状態となる。従って、ドラフト位置と非ドラフト位置の切り替えにより、蛇腹ホースを用いた従来技術のように吸引搬送管が外れることがなく、吸引部により確実に繊維屑の吸引が行われる。また、ドラフト装置の運転中の吸引エアの漏れにより、不必要なエア流量を消費することもない。
また、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管の接続部から吸引口までの距離を短くすることができる。更に、従来のように吸引口からクレードルを経て回動軸まで配管が配設される構成と比較して、クレードルに配管を迂回させる必要がなくなり、クレードルを小型化することができる。
【0023】
第2の発明のドラフト装置によれば、吸引エアが漏れることなく、吸引部は、確実にトップローラから巻き上がる繊維屑を吸引することができる。
【0024】
第3の発明のドラフト装置によれば、ドラフト位置において、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管の接続部からの吸引エアの漏れを確実に防止することができる。
【0025】
第4の発明のドラフト装置によれば、ドラフト位置において吸引部が作動している状態では、漏れ防止部材は、接続部材に吸着する。このため、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管の接続部からの吸引エアの漏れを確実に防止することができる。
【0026】
第5の発明のドラフト装置によれば、ドラフト位置において吸引部が作動している状態では、漏れ防止部材に設けられた吸着部が接続部材に吸着する。このため、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管の接続部からの吸引エアの漏れを確実に防止することができる。
【0027】
第6の発明のドラフト装置によれば、クレードルと装置フレームは接近して配置されるため、第1吸引搬送管と第2吸引搬送管の接続部から吸引口からまでの距離をより短くすることができる。また、吸引搬送管の距離が短くなるため、クレードルを小型化することができる。
【0028】
第7の発明の紡績ユニットによれば、吸引部により繊維屑を確実に吸引することができ、紡績装置に案内される繊維束に繊維屑が混入しない。従って、巻取装置が巻き取るパッケージの品質が向上する。
【0029】
第8の発明の紡績ユニットによれば、第1吹付管と第2吹付管の当接と離間により接続状態と非接続状態が切り替るため、ドラフト位置にすると第1吹付管と第2吹付管とが自動的に接続状態となる。従って、ドラフト位置では、紡績装置に堆積する繊維屑を圧縮エアで確実に取り除くことができる。
【0030】
第9の発明の紡績ユニットによれば、吸引部により繊維屑を確実に吸引することができ、紡績装置に案内される繊維束に繊維屑が混入しない。従って、各巻取装置が巻き取るパッケージの品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施例1に係る紡績機Mの正面図。
【図2】本発明の実施例1に係る紡績ユニットUの側面簡略図。
【図3】本発明の実施例1に係るドラフト装置Dであって、ドラフト装置Dがドラフト位置にある状態の側面図。
【図4】本発明の実施例1に係るドラフト装置Dであって、ドラフト装置Dが非ドラフト位置にある状態の側面図。
【図5】(A)図3の矢印A方向から見た吸引部41を示す図(B)図4の矢印B方向から見た吸引部41を示す図。
【図6】(A)第1漏れ防止部材53の平面図(B)第2漏れ防止部材54の平面図。
【図7】本発明の実施例2に係るドラフト装置Dであって、(A)ドラフト装置Dがドラフト位置にある状態の吸引部41を示す図(B)ドラフト装置Dが非ドラフト位置にある状態の吸引部41を示す図。
【図8】(A)第11漏れ防止部材153の平面図(B)第11漏れ防止部材153の斜視図。
【図9】(A)接続部材170の平面図(B)接続部材170の斜視図。
【図10】(A)接続した状態の第11漏れ防止部材153と接続部材170の拡大図(B)(A)のA―A線における断面図。
【図11】(A)他の例の接続部材170の平面図(B)他の例の接続部材170の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、発明の実施の形態について図を用いて説明する。
【実施例1】
【0033】
本発明の実施例1に係るドラフト装置D、及びこれを備えた紡績ユニットU、紡績機Mについて、図1から図6を用いて説明する。
【0034】
まず紡績機Mの概略について説明する。尚、本明細書において「上流」及び「下流」とは、紡績ユニットUにおける繊維束F、紡績糸Yの走行方向における上流及び下流を意味するものとする。
【0035】
図1、図2に示すように、紡績機Mは、複数並設された紡績ユニットU、糸継台車3、ブロアボックス4、原動機ボックス5を備えている。各紡績ユニットUは主として、ドラフト装置D、紡績装置11、ヤーンクリアラ12、糸弛み取り装置13、巻取装置21を備えている。
【0036】
図2に示すように、ドラフト装置Dは、紡績ユニットUの後部に配置されるケンス(図示せず)からトランペットTを介して供給される繊維束(スライバ)Fを牽伸するものである。本実施形態のドラフト装置Dは、繊維束Fの上流から下流に向けて段々送り速度が速くなる複数のローラ対Rを備えている。ローラ対Rは、それぞれトップローラRB1、RT1、RM1、RF1とボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2(図3参照。)とからなる。ドラフト装置Dについては後に詳細に説明する。
【0037】
紡績装置11は、旋回気流を利用して繊維束Fに撚りを与え、紡績糸Yを生成する。紡績装置11は、詳細な説明や図示は省略するが、繊維案内部と、旋回流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を備えている。繊維案内部は、ドラフト装置Dから送られた繊維束Fを紡績装置11の内部に形成される紡績室に案内する。旋回流発生ノズルは、繊維束Fの経路の周囲に配置され、紡績室内に旋回流を発生させる。この旋回流によって、紡績室内の繊維束Fの繊維端が反転され旋回する。中空ガイド軸体は、紡績された紡績糸Yを紡績室から紡績装置11の外部へと案内する。この紡績装置11の駆動及び停止は不図示のユニットコントローラによって制御されている。紡績装置11は、針状部材を備えずに繊維案内部の下流側端部によって針状部材の機能を実現している空気紡績装置や、互いに反対方向に撚りを掛ける一対のエアジェットノズル方式の空気紡績装置でもよい。
【0038】
ヤーンクリアラ12は、紡績装置11から送り出される紡績糸Yの太さを監視している。ヤーンクリアラ12は、紡績糸Yの糸欠点を検出した場合には、糸欠点検出信号を図示しないユニットコントローラへ送信する。
【0039】
糸弛み取り装置13は、紡績糸Yに所定の張力を与えることで紡績装置11から紡績糸Yを引き出している。また、巻取装置21側の張力の変動が紡績装置11側に伝わらないように張力を調節する。糸継台車3による作業時には、糸弛み取り装置13は、紡績装置11から送出される紡績糸Yを滞留させて紡績糸Yの弛みを防止する。
【0040】
巻取装置21は、紡績装置11から送り出される紡績糸Yを巻き取り、パッケージPを形成する。巻取装置21は、クレードルアーム22、巻取ドラム23と、トラバース装置24を備えている。クレードルアーム22は、パッケージP(ボビン)を回転可能に支持する。巻取ドラム23は、パッケージP(ボビン)の外周面に接触してパッケージP(ボビン)を回転させる。トラバース装置24は、紡績糸Yを綾振りする。巻取装置21は、トラバース装置24で紡績糸Yを綾振りさせながら巻取ドラム23を回転することで、パッケージP(ボビン)を回転させ、紡績糸Yを巻き取る。
【0041】
ユニットコントローラは、ヤーンクリアラ12から糸欠点検出信号を受信すると、直ちにカッタ14で紡績糸Yを切断し、更にドラフト装置Dや紡績装置11等を停止させる。ユニットコントローラは、糸継台車3には制御信号を送り、当該紡績ユニットUの前まで走行させる。その後、ユニットコントローラは、紡績装置11等を再び駆動し、糸継台車3に糸継ぎを行わせて巻取りを再開させる。尚、紡績ユニットUは、カッタ14を備えずに、紡績装置11への空気の供給を停止することにより、紡績糸Yの生成を停止して、紡績糸Yを切断してもよい。
【0042】
糸継台車3は、図1及び図2に示すように、台車部25と、台車部25に積載されるスプライサ26と、サクションパイプ27と、サクションマウス28を備えている。糸継台車3は、ある紡績ユニットUで糸切れや糸切断が発生すると、当該紡績ユニットUまで走行する。サクションパイプ27は、紡績装置11から送り出される糸端を吸い込みつつ捕捉してスプライサ26へ案内する。サクションマウス28は、パッケージPから糸端を吸引しつつ捕捉してスプライサ26へ案内する。スプライサ26は、案内された糸端同士の糸継ぎを行う。
【0043】
ブロアボックス4は、内部にブロア(吸引源)が配置される。ブロアボックス4には、各紡績ユニットUに共通の吸引搬送管である主配管71(図4参照。)が接続される。主配管71は各紡績ユニットUの後部(ドラフト方向の上流側)に配置される。ブロアボックス4は、主配管71を通じて各紡績ユニットUで発生する繊維屑等を吸引、搬送して回収する。
【0044】
原動機ボックス5には、紡績機Mの原動機であるモータや、紡績機Mの各部に動力を伝達するための減速機等が内部に配置される。
【0045】
次に、ドラフト装置Dについて詳細に説明する。図3から図6に示すように、ドラフト装置Dは、複数のローラ対R、切替部としてのクレードル31、装置フレーム32、吸引部41を備えている。
【0046】
図3に示すように、複数のローラ対Rとして、本実施形態では、バックローラ対RB、サードローラ対RT、ミドルローラ対RM、フロントローラ対RFを備えている。ミドルローラ対RMはエプロンベルトEを備えている。これらのローラ対RB、RT、RM、RFは、繊維束Fの上流から下流に向けて所定の間隔をおいて配置される。各ローラ対RB、RT、RM、RFは上側のトップローラRB1、RT1、RM1、RF1と下側のボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2で構成されている。ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2は駆動ローラであり、トップローラRB1、RT1、RM1、RF1はボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2に接触して従動回転する従動ローラである。各ローラ対RB、RT、RM、RFの回転速度は、上流側から下流側に向かって段々増加する。フロントローラ対RFの下流側には、紡績装置11が配置される。
【0047】
バックトップローラRB1、サードトップローラRT1、ミドルトップローラRM1、フロントトップローラRF1は、クレードル31に一体的、かつ回動自在に装着されている。クレードル31には、隣接する紡績ユニットUの2機分の各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1が装着されている(図1参照。)。バックボトムローラRB2、サードボトムローラRT2、ミドルボトムローラRM2、フロントボトムローラRF2は、それぞれクレードル31の各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1に対応して、装置フレーム32に装着されている。
【0048】
図3及び図4に示すように、クレードル31は上流側に設けられた回動軸33を中心として装置フレーム32に対して回動自在である。このため、クレードル31を回動させることで、各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1は、各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2に対して接離する。クレードル31を閉じて各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1が各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2と接触している位置をドラフト位置とし、メンテナンス等のためクレードル31を開放して各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1が各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2と離間している位置を非ドラフト位置とする。従って、クレードル31は各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1と各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2をドラフト位置と非ドラフト位置とに切り替えることができる。
【0049】
クレードル31の回動操作は、オペレータがハンドル34を操作することにより行う。クレードル31を閉じてドラフト位置とした場合には、ハンドル34の下部先端のフック部35が装置フレーム32側の固定ローラ36に係合され、各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1と各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2の圧接状態が保持される。
【0050】
各ローラ対RB、RT、RM、RF間の距離は、ドラフトする繊維束(スライバ)Fの繊維長によって決定されるため、原料である繊維束(スライバ)Fの種類を替える毎に見直される。そのために、各ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2のうち、ミドルボトムローラRM2とフロントボトムローラRF2は装置フレーム32に固定しているが、バックボトムローラRB2とサードボトムローラRT2は、それぞれ装置フレーム32に対して上流側、下流側に位置を変更できるよう構成されている。
【0051】
吸引部41は、トップローラが巻き上げる繊維屑を吸引するものである。本実施形態では、吸引部41は、フロントトップローラRF1が巻き上げる繊維屑を吸引するように構成されている。図3から図6に示すように、吸引部41は、吸引口42、第1吸引搬送管43、第2吸引搬送管44を備えている。
【0052】
吸引口42は、繊維屑をフロントトップローラRF1の下流側で吸引する部分である。吸引口42は、吸引マウス部材45の開口部である。前述のように、クレードル31には、隣接する紡績ユニットUの2機分の各トップローラRB1、RT1、RM1、RF1が装着されているため、図5に示すように、各フロントトップローラRF1に対応して吸引マウス部材45が配設されている。吸引マウス部材45が配設される位置は、図3、図5に示すように、フロントトップローラRF1より下流側で、かつ、フロントトップローラRF1とフロントボトムローラRF2の接触(ニップ)位置よりやや上方である。この位置は、フロントトップローラRF1の回転による随伴流で、繊維屑が巻き上げられる位置であり、繊維屑を効率よく吸引することができる。尚、フロントトップローラRF1の位置は、繊維束(スライバ)Fの種類を替えた場合も一定であるため、吸引マウス部材45(吸引口42)が配設される位置も一定でよい。
【0053】
第1吸引搬送管43は、吸引口42に連通して吸引口42に吸引力を及ぼすとともに、吸引口42で吸引された繊維屑を搬送するものである。第1吸引搬送管43は、クレードル31側に支持されている。図5に示すように、第1吸引搬送管43は途中で分岐している。分岐した部分は、両側のフロントトップローラRF1側に湾曲している。分岐した部分の各端部は吸引マウス部材45に接続される。第1吸引搬送管43の他方の端部には、第1接続部51が設けられている。第1接続部51が配置される位置は、図3、図5に示すように、フロントローラ対RFの下流側の近傍であり、かつ隣接する紡績ユニットUの紡績装置11の略中間位置である。尚、第1接続部51は、第1漏れ防止部材53を備えている。第1漏れ防止部材53については後述する。
【0054】
第2吸引搬送管44は、第1吸引搬送管43に連通して第1吸引搬送管43及び吸引口42に吸引力を及ぼすとともに、吸引口42で吸引された繊維屑を搬送するものである。第2吸引搬送管44は、第1吸引搬送管43とは独立して設けられている。第2吸引搬送管44は、装置フレーム32側に配置されている。
【0055】
第2吸引搬送管44の一方の端部には、第1吸引搬送管43の第1接続部51に対して接続状態、非接続状態とするための第2接続部52が設けられている。第2接続部52が配置される位置は、クレードル31を閉じたドラフト位置において第1接続部51と当接するよう、フロントローラ対RFの下流側の近傍であり、かつ隣接する紡績ユニットUの紡績装置11の略中間位置である。このため、図3、図5Aに示すように、クレードル31を閉じたドラフト位置では、第1接続部51と第2接続部52が当接することで、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44は接続状態となる。また、図4、図5Bに示すように、クレードル31を開放した非ドラフト位置では、第1接続部51と第2接続部52が離間することで、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44は非接続状態となる。尚、第2接続部52は、第2漏れ防止部材54を備えている。第2漏れ防止部材54については後述する。
【0056】
図3に示すように、第2吸引搬送管44の他方の端部は、主配管71に接続される。主配管71は、紡績ユニットUの後方に配管され、各紡績ユニットUに共通の吸引搬送管である。主配管71はブロアボックス4のブロア(吸引源)に接続されている。
【0057】
前述の第1漏れ防止部材53と第2漏れ防止部材54は、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44とが接続状態にある場合に、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44との間からの吸引エアの漏れを防止するものである。第1漏れ防止部材53と第2漏れ防止部材54は略同形状であり、図6Aに示すように、第1漏れ防止部材53には、第1吸引搬送管43に連通して吸引エアと繊維屑等を通過させる開口部55が形成されている。図6Bに示すように、第2漏れ防止部材54には、第2吸引搬送管44に連通して吸引エアと繊維屑等を通過させる開口部56が形成されている。クレードル31を閉じたドラフト位置では、第1接続部51の第1漏れ防止部材53と、第2接続部52の第2漏れ防止部材54が当接し、開口部55と開口部56が連通することで、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44は吸引エアが漏れない状態に接続される。
【0058】
第1漏れ防止部材53と第2漏れ防止部材54は、当接した際に若干圧縮されるよう、圧縮性を有することが好ましい。圧縮性を有することで、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の若干の寸法誤差を吸収して確実に接続できる。第1漏れ防止部材53と第2漏れ防止部材54として、例えば、独立気泡性の弾性体を用いることができる。独立気泡性の弾性体以外の素材を用いることもでき、例えば、合成ゴム素材等を用いてもよい。
【0059】
本実施例のドラフト装置Dは、紡績装置11に堆積する繊維屑を圧縮エアで取り除く吹付部61を備えている。紡績ユニットUでは、糸切れや糸切断が発生した場合に、紡績装置11の中空ガイド軸体が繊維案内部から離れる(開く)ように構成されている。吹付部61は、その際に、紡績装置11(具体的には繊維案内部の入口)に対して圧縮エアを吹付けて繊維屑を取り除くものである。図3から図6に示すように、吹付部61は、吹付口62、第1吹付管63、第2吹付管64を備えている。
【0060】
吹付口62は、紡績装置11(具体的には繊維案内部の入口)に対して圧縮エアを吹き付ける部分である。吹付口62は、吸引マウス部材45の吸引口42に隣接して設けられた開口部である。吹付口62は、クレードル31を閉じたドラフト位置において、フロントローラ対RFに対して離れた(開いた)状態の紡績装置11に向けて形成されている。隣接する紡績ユニットUの2機分の紡績装置11に対応するよう、吹付口62は、両側の吸引マウス部材45に設けられている。
【0061】
第1吹付管63は、吹付口62に圧縮エアを送るものである。第1吹付管63は、各吹付口62に対応して個別に設けられている。各第1吹付管63の一方の端部は、吸引マウス部材45に装着される。第1吹付管63は、クレードル31側に支持されている。第1吹付管63の他方の端部は、吸引部41と共通の第1接続部51に接続される。図6(A)に示すように、第1漏れ防止部材53には、開口部55の両側に圧縮エアを通すための開口部57が形成されている。
【0062】
第2吹付管64は、第1吹付管63に連通して第1吹付管63及び吹付口62に圧縮エアを送るものである。第2吹付管64は、第1吹付管63とは独立して設けられている。第2吹付管64は、装置フレーム32側に配置されている。第2吹付管64の一方の端部は、吸引部41と共通の第2接続部52に接続される。図6(B)に示すように、第2漏れ防止部材54には、開口部56の両側に圧縮エアを通すための開口部58が形成されている。
【0063】
第2吹付管64の他方の端部は、それぞれバルブ(図示せず)を介して、圧縮エアの供給源(図示せず)に接続される。
【0064】
以上の構成により、図3、図5Aに示すように、クレードル31を閉じたドラフト位置では、第1接続部51と第2接続部52が当接することで、第1吹付管63と第2吹付管64は接続状態となる。この状態でバルブ(図示せず)を開くことで、バルブを開いた第2吹付管64に対応する紡績ユニットUの紡績装置11に対して吹付口62から圧縮エアを吹き付けることができる。また、図4、図5Bに示すように、クレードル31を開放した非ドラフト位置では、第1接続部51と第2接続部52が離間することで、第1吹付管63と第2吹付管64は非接続状態となる。
【0065】
以上説明した本実施例に係るドラフト装置D、及びこれを備えた紡績ユニットU、紡績機Mによれば、次のような効果を有する。
【0066】
ドラフト装置Dによれば、吸引部41は、吸引口42で吸引された繊維屑を搬送する第1吸引搬送管43と、第1吸引搬送管43とは独立して設けられ、ドラフト位置では第1吸引搬送管43と当接して接続状態となり、非ドラフト位置では第1吸引搬送管43から離間して非接続状態となる第2吸引搬送管44と、を備えている。第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の当接と離間により接続状態と非接続状態が切り替るため、ドラフト位置にすると第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44とが自動的に接続状態となる。従って、ドラフト位置と非ドラフト位置の切り替えにより、蛇腹ホースを用いた従来技術のように吸引搬送管が外れることがなく、確実に繊維屑の吸引が行われる。また、ドラフト装置Dの運転中の吸引エアの漏れにより、不必要なエア流量を消費することもない。
【0067】
吸引部41の吸引口42は、繊維束Fのドラフト方向において、複数のフロントトップローラRF1の下流側に配置されている。第1吸引搬送管43は、クレードル31に支持されている。前記切替部は、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の当接による接続状態と、離間による非接続状態との切り替えを、繊維束Fのドラフト方向の下流側で行う。このため、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の接続部(第1接続部51、第2接続部52)から吸引口42までの距離を短くすることができる。また、従来のように吸引口からクレードルを経て回動軸まで配管が配設される構成と比較して、クレードル31に配管(第1吸引搬送管43)を迂回させる必要がなくなり、クレードル31を小型化することができる。
【0068】
第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44とが接続状態にある場合に、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44との間からの吸引エアの漏れを防止する第1漏れ防止部材53及び第2漏れ防止部材54がドラフト装置Dに設けられる。このため、吸引エアが漏れることなく、吸引部41は、確実にフロントトップローラRF1から巻き上がる繊維屑を吸引することができる。
【0069】
第1漏れ防止部材53及び第2漏れ防止部材54は、独立気泡性の弾性体である。このため、ドラフト位置において、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の接続部(第1接続部51、第2接続部52)からの吸引エアの漏れを確実に防止することができる。
【0070】
ドラフト装置Dは、ボトムローラRB2、RT2、RM2、RF2及び回動軸33を支持する装置フレーム32を備える。第2吸引搬送管44は、装置フレーム32に配置される。クレードル31と装置フレーム32は接近して配置されるため、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の接続部(第1接続部51、第2接続部52)から吸引口42からまでの距離をより短くすることができる。また、第1吸引搬送管43の距離が短くなるため、クレードル31を小型化することができる。
【0071】
紡績ユニットU、紡績機Mによれば、吸引部41により繊維屑を確実に吸引することができ、紡績装置11に案内される繊維束Fに繊維屑が混入しない。従って、巻取装置21が巻き取るパッケージPの品質が向上する。
【0072】
吹付部61は、吹付口62に圧縮エアを送る第1吹付管63と、第1吹付管63とは独立して設けられ、ドラフト位置では第1吹付管63と当接して接続状態となり、非ドラフト位置では第1吹付管63とは離間して非接続状態となる第2吹付管64と、を備えている。第1吹付管63と第2吹付管64の当接と離間により接続状態と非接続状態が切り替るため、ドラフト位置にすると第1吹付管63と第2吹付管64とが自動的に接続状態となる。従って、ドラフト位置では、紡績装置11に堆積する繊維屑を吹付部61が吹き付ける圧縮エアで確実に取り除くことができる。
【実施例2】
【0073】
次に、本発明の実施例2に係るドラフト装置D、及びこれを備えた紡績ユニットU、紡績機Mについて、図7から図10を用いて説明する。本実施例では、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の接続部(第11接続部151、第12接続部152)に第11漏れ防止部材153と接続部材170が設けられている点が実施例1とは大きく異なっている。第11漏れ防止部材153と接続部材170は、吸引部41の作動中に吸着した状態となることで、吸引エアの漏れを防止する。実施例1と共通する構成については、詳しい説明は省略する。
【0074】
図7A、及び図7Bに示すように、第1吸引搬送管43には第11接続部151が設けられている。第11接続部151には第11漏れ防止部材153が設けられている。第2吸引搬送管44には、第1吸引搬送管43の第11接続部151に対して接続状態、非接続状態とするための第12接続部152が設けられている。第12接続部152には接続部材170が設けられている。
【0075】
第11漏れ防止部材153と接続部材170は、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44との間からの吸引エアの漏れを防止するものである。具体的には、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44とが接続状態にある場合であって、吸引部41が作動し、第1吸引搬送管43及び第2吸引搬送管44の内部が負圧になることにより、第11漏れ防止部材153が接続部材170に吸着して密着状態となり、吸引エアの漏れを防止する。また、第11漏れ防止部材153と接続部材170は、第1吹付管63と第2吹付管64との間から圧縮エアの漏れも防止する。
【0076】
図8に示すように、第11漏れ防止部材153は、主として基部160、吸着部161、第1支持部162、及び第2支持部163を備える。第11漏れ防止部材153は、合成ゴム素材で形成される。基部160は、第1吸引搬送管43と第1吹付管63に接続される部分である。吸着部161は、接続部材170に接触し、吸着する部分である。第1支持部162と第2支持部163は、基部160と吸着部161とを接続する部分である。
【0077】
第11漏れ防止部材153の中心軸上には、基部160、吸着部161、及び第1支持部162を貫通する開口部155が形成される。開口部155は、第1吸引搬送管43に連通して吸引エアと繊維屑等を通過させるための孔である。開口部155の両側には、基部160、吸着部161、及び第2支持部163を貫通する開口部157が形成される。開口部157は、第1吹付管63に連通して圧縮エアを送るための孔である。吸着部161の具体的な構成については、後に説明する。
【0078】
図9に示すように、接続部材170は、主として基部171、及び吸着面172を備える。基部171は、第2吸引搬送管44と第2吹付管64に接続される部分である。吸着面172は、第11漏れ防止部材153の吸着部161が吸着する平坦な部分である。接続部材170の中心軸上には、基部171、及び吸着面172を貫通する開口部156が形成される。開口部156は、第2吸引搬送管44に連通して吸引エアと繊維屑等を通過させるための孔である。開口部156の両側には、基部171、及び吸着面172を貫通する開口部158が形成される。開口部158は、第2吹付管64に連通して圧縮エアを送るための孔である。接続部材170は合成樹脂素材や金属素材で形成される。
【0079】
次に、第11漏れ防止部材153の吸着部161の具体的な構成について説明する。図8、及び図9に示すように、吸着部161の輪郭形状は、接続部材170の吸着面172の輪郭形状と略同一である。吸着部161には、外側の周縁に沿って第1周壁164が形成されている。第1周壁164は、第11漏れ防止部材153が接続部材170に接続された状態で、接続部材170の吸着面172に接触し、気密性を確保する部分である。第1周壁164は、接続部材170の吸着面172に均一に接触するように形成されている。開口部157の周囲には、それぞれ第2周壁165が形成されている。第2周壁165は、第11漏れ防止部材153が接続部材170に接続された状態で、接続部材170の吸着面172に形成されている開口部158の周囲に接触し、圧縮エアの漏れを防止する。吸着部161を構成する各部分は、接続部材170との間の多少の寸法誤差を吸収して気密性を確保できるよう、柔軟性を持たせるように形成することが好ましい。
【0080】
以上の構成により、図7A、及び図10Aに示すように、クレードル31を閉じたドラフト位置では、第11接続部151の第11漏れ防止部材153が第12接続部152の接続部材170に接触することで、図10Bに示すように、吸着部161と吸着面172との間に空気室166が形成される。空気室166は第1吸引搬送管43及び第2吸引搬送管44と連通した状態となる。吸引部41が作動し、第1吸引搬送管43及び第2吸引搬送管44の内部が負圧になると空気室166も負圧となる。これにより、第11漏れ防止部材153は接続部材170に吸着し、密着状態となって接続される。また、図7Bに示すように、クレードル31を開放した非ドラフト位置では、第11接続部151の第11漏れ防止部材153が第12接続部152の接続部材170から離間することで、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44は非接続状態となる。
【0081】
以上説明した本実施例に係るドラフト装置D、及びこれを備えた紡績ユニットU、紡績機Mによれば、次のような効果を有する。
【0082】
第11漏れ防止部材153は、接続部材170と接続された状態で空気室166を構成する吸着部161を備える。空気室166は、第1吸引搬送管43及び第2吸引搬送管44と連通する。ドラフト位置において吸引部41が作動している状態では、第1吸引搬送管43及び第2吸引搬送管44の内部が負圧になり、空気室166も負圧になって吸着部161が接続部材170に吸着する。このため、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の接続部からの吸引エアの漏れを確実に防止することができる。
【0083】
また、第11漏れ防止部材153は、合成ゴム素材で形成されている。このため、第11漏れ防止部材153は長期に渡って変形、変質しにくく、第1吸引搬送管43と第2吸引搬送管44の接続部からの吸引エアの漏れを確実に防止することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。例えば、本実施形態では紡績機として説明したが、紡績機に限らず、ドラフト装置Dを備えるものであれば、リング紡績機、粗紡機、練条機等であってもよい。
【0085】
また、紡績ユニットUは、紡績装置11から糸弛み取り装置13により紡績糸Yを引き出す構成としたが、この構成に限定されない。紡績装置11と糸弛み取り装置13の間にデリベリローラとニップローラを設けて、これらのローラで紡績糸Yを引き出す構成としてもよい。
【0086】
実施例2において、クレードル31側の第11接続部151に第11漏れ防止部材153を設け、装置フレーム32側の第12接続部152に接続部材170を設けたが、これに限定されない。クレードル31側の第11接続部151に接続部材170を設け、装置フレーム32側の第12接続部152に第11漏れ防止部材153を設けてもよい。
【0087】
実施例2において、接続部材170の吸着面172は、接続部材170の吸着部161が吸着する平坦な部分としたが、吸着面172の全面が平坦でなくてもよい。例えば、図11に示すように、吸着部161の第1周壁164及び第2周壁165が接触する部分にそれぞれ第3周壁174、及び第4周壁175を形成し、その他の部分を凹部としてもよい。第3周壁174、及び第4周壁175の幅は、第1周壁164及び第2周壁165の幅よりもやや広くすることが好ましい。この場合、第1周壁164と第3周壁174、及び第2周壁165と第4周壁175がそれぞれ確実に接触する。
【符号の説明】
【0088】
M 紡績機
U 紡績ユニット
3 糸継台車
4 ブロアボックス
5 原動機ボックス
T トランペット
D ドラフト装置
11 紡績装置
12 ヤーンクリアラ
13 糸弛み取り装置
14 カッタ
21 巻取装置
22 クレードルアーム
23 巻取ドラム
24 トラバース装置
25 台車部
26 スプライサ
27 サクションパイプ
28 サクションマウス
31 クレードル
32 装置フレーム
33 回動軸
34 ハンドル
35 フック部
36 固定ローラ
41 吸引部
42 吸引口
43 第1吸引搬送管
44 第2吸引搬送管
45 吸引マウス部材
51 第1接続部
52 第2接続部
53 第1漏れ防止部材
54 第2漏れ防止部材
55 開口部
56 開口部
57 開口部
58 開口部
61 吹付部
62 吹付口
63 第1吹付管
64 第2吹付管
71 主配管
153 第11漏れ防止部材
160 基部
161 吸着部
162 第1支持部
163 第2支持部
164 第1周壁
165 第2周壁
166 空気室
170 接続部材
171 基部
172 吸着面
F 繊維束
Y 紡績糸
P パッケージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維束をドラフトするトップローラとボトムローラとからなる複数のローラ対と、
前記トップローラと前記ボトムローラとをドラフト位置と非ドラフト位置に切り替える切替部と、
前記トップローラが巻き上げる繊維屑を吸引する吸引部と、を備え、
前記切替部は、
複数の前記トップローラを回転可能に支持するクレードルと、
前記繊維束のドラフト方向の上流側に配置され、前記クレードルを前記ドラフト位置と前記非ドラフト位置とに回動自在とする回動軸と、を備え、
前記吸引部は、
前記繊維屑を前記トップローラの近傍で吸引する吸引口と、
前記クレードルに支持され、前記吸引口で吸引された前記繊維屑を搬送する第1吸引搬送管と、
前記第1吸引搬送管とは独立して設けられ、前記ドラフト位置では前記第1吸引搬送管と当接して接続状態となり、前記非ドラフト位置では前記第1吸引搬送管から離間して非接続状態となる第2吸引搬送管と、を備え、
前記第1吸引搬送管と前記第1吸引搬送管とは、前記繊維束のドラフト方向において、最下流に位置するローラ対の下流側で接続されることを特徴とするドラフト装置。
【請求項2】
請求項1に記載のドラフト装置であって、
前記第1吸引搬送管と前記第2吸引搬送管とが接続状態にある場合に、前記第1吸引搬送管と前記第2吸引搬送管との間からの吸引エアの漏れを防止する漏れ防止部材を更に備えたことを特徴とするドラフト装置。
【請求項3】
請求項2に記載のドラフト装置であって、前記漏れ防止部材は、合成ゴム素材で形成されていることを特徴とするドラフト装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の前記ドラフト装置であって、
前記漏れ防止部材は、前記第1吸引搬送管又は前記第2吸引搬送管のいずれか一方に設けられ、
前記第1吸引搬送管又は前記第2吸引搬送管のいずれか他方には、前記第1吸引搬送管と前記第2吸引搬送管とが接続状態にある場合に、前記漏れ防止部材に接触する接続部材が設けられ、
前記漏れ防止部材は、前記第1吸引搬送管と前記第2吸引搬送管とが接続状態にある場合であって、前記第1吸引搬送管及び前記第2吸引搬送管の内部が負圧になることにより、前記接続部材に吸着することを特徴とするドラフト装置。
【請求項5】
請求項4に記載のドラフト装置であって、
前記漏れ防止部材は、前記接続部材と接続された状態で空気室を構成する吸着部を備え、前記空気室は、前記第1吸引搬送管及び前記第2吸引搬送管と連通し、前記吸着部は、前記第1吸引搬送管及び前記第2吸引搬送管の内部が負圧になることにより、前記接続部材に吸着することを特徴とするドラフト装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の前記ドラフト装置であって、
前記ボトムローラ及び前記回動軸を支持する装置フレームを更に備え、
前記第2吸引搬送管は、前記装置フレームに配置されたことを特徴とするドラフト装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の前記ドラフト装置と、
前記ドラフト装置によりドラフトされた前記繊維束を旋回空気流にて紡績する紡績装置と、
前記紡績装置で紡績された紡績糸をパッケージヘと巻き取る巻取装置と、を備えたことを特徴とする紡績ユニット。
【請求項8】
請求項7に記載の紡績ユニットであって、
前記紡績装置に堆積する繊維屑を圧縮エアで取り除く吹付部を更に備え、
前記吹付部は、
前記紡績装置に対して圧縮エアを吹き付ける吹付口と、
前記吹付口に圧縮エアを送る第1吹付管と、
前記第1吹付管とは独立して設けられ、前記ドラフト位置では前記第1吹付管と接続状態となり、前記非ドラフト位置では前記第1吹付管とは離間して非接続状態となる第2吹付管と、を備えていることを特徴とする紡績ユニット。
【請求項9】
請求項7又は8のいずれか1項に記載の前記紡績ユニットを複数備えたことを特徴とする紡績機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−79478(P2013−79478A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−53453(P2012−53453)
【出願日】平成24年3月9日(2012.3.9)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】