説明

ドラムブレーキ

【課題】ドラムブレーキの部品点数を増加させることなくブレーキシューの浮き上がりが阻止されるドラムブレーキを提供する。
【解決手段】ケーブル案内部材60は、そのケーブル案内部材60から一対のブレーキシュー22,24の他端部側へ突き出して一対のブレーキシュー22,24のバッキングプレート18からの浮き上がりを阻止する浮上り阻止突部60cを一体に備えているため、ケーブル案内部材60に一対のブレーキシュー22,24の浮き上がりを阻止する機能を浮上り阻止突部60cを一体に設けるのみで追加できるので、ドラムブレーキ10の部品点数を増加させることなくブレーキシュー22,24の浮き上がりが阻止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドラムブレーキに関し、特にそのドラムブレーキの部品点数を従来に比較して増加させないでブレーキシューの浮上りを防止する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラムブレーキには、例えば特許文献1、2に示すように、(a) バッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、(b) その一対のブレーキシューの一方の一端部において所定の取付軸まわりに回動可能に配設されたブレーキレバーと、(c) そのブレーキレバーの先端部に一端部が連結されるブレーキケーブルと、(d) そのブレーキケーブルを前記バッキングプレートの内外へ挿通するようにそのバッキングプレートに貫通した貫通穴と、(e) その貫通穴と前記ブレーキレバーの先端部との間の前記バッキングプレート上に固定され、前記ブレーキケーブルに引張力が加えられる際のそのブレーキケーブルを支持することによりそのブレーキケーブルを前記バッキングプレートに平行な方向に案内するケーブル案内部材とを備えるものがある。上記のようなドラムブレーキは、前記ブレーキケーブルに引かれることによって前記ブレーキレバーが所定角度回動することにより前記一対のブレーキシューの一端部の間が離間し、そのブレーキシューが有底円筒形状のブレーキドラムの内周面に押圧されてドラムブレーキに制動力が発生するようになっている。
【0003】
上記のようなドラムブレーキにおいて、そのドラムブレーキの制動時に前記ブレーキドラムから前記ブレーキシューに比較的高い連れ回り力が加えられると、そのブレーキシューの他端部が前記バッキングプレートから浮き上がることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平06−6300号公報
【特許文献2】特開2008−223890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなドラムブレーキにおいて、前記ブレーキシューの他端部が前記バッキングプレートからの浮き上がることを阻止するために、例えば特許文献2の図3のドラムブレーキのようにリテーナプレート14ような部品をブレーキシューの他端部側に設けるとドラムブレーキの部品点数が増加してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ドラムブレーキの部品点数を増加させることなくブレーキシューの浮き上がりが阻止されるドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる目的を達成するための請求項1に係る発明の要旨とするところは、(a) バッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、(b) その一対のブレーキシューの一方の一端部において所定の取付軸まわりに回動可能に配設されたブレーキレバーと、(c) そのブレーキレバーの先端部に一端部が連結されたブレーキケーブルと、(d) そのブレーキケーブルを前記バッキングプレートの内外へ挿通するようにそのバッキングプレートに貫通した貫通穴と、(e) その貫通穴と前記ブレーキレバーの先端部との間の前記バッキングプレート上に固定され、前記ブレーキケーブルに引張力が加えられる際のそのブレーキケーブルを支持することによりそのブレーキケーブルを前記バッキングプレートに平行な方向に案内するケーブル案内部材とを備えるドラムブレーキであって、(f) 前記ケーブル案内部材は、そのケーブル案内部材から前記一対のブレーキシューの他端部側へ突き出して前記一対のブレーキシューの前記バッキングプレートからの浮き上がりを阻止する浮上り阻止突部を一体に備えていることにある。
【0008】
また、請求項2に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、前記ケーブル案内部材の浮上り阻止突部は、その浮上り阻止突部の先端部が前記一対のブレーキシューの他端部の前記バッキングプレートと反対側においてそのブレーキシューの厚み方向に所定の間隔を隔てて位置するように突設されていることにある。
【0009】
また、請求項3に係る発明の要旨とするところは、請求項1に係る発明において、(a) 前記一対のブレーキシューの他端部の間には、調節ねじの回転に伴ってシュー間隙を調節する間隙調節装置が配設され、(b) 前記一対のブレーキシューの他端部は、その一対のブレーキシューの他端部間に張設されたスプリングの付勢力によって前記間隙調節装置を介して連結されており、(c) 前記ケーブル案内部材の浮上り阻止突部は、その浮上り阻止突部の先端部が前記間隙調節装置の前記バッキングプレートの反対側に位置するように突設されていることにある。
【0010】
また、請求項4に係る発明の要旨とするところは、請求項1乃至3のいずれか1に係る発明において、前記ケーブル案内部材は、一枚の板状部材からプレス加工によって成形されたものであり、前記バッキングプレートに固定される長手板状の固定部と、その長手板状の固定部から前記バッキングプレートから離間する方向に曲げられた板状壁部と、その板状壁部の先端部が前記一対のブレーキシューの他端部側に曲げられる前記浮上り阻止突部と、前記板状壁部の一部が切り曲げられることによってその浮上り阻止突部と反対側へ突き出して前記ブレーキケーブルを支持するケーブル支持部とが一体に備えられていることにある。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に係る発明のドラムブレーキによれば、前記ケーブル案内部材は、そのケーブル案内部材から前記一対のブレーキシューの他端部側へ突き出して前記一対のブレーキシューの前記バッキングプレートからの浮き上がりを阻止する浮上り阻止突部を一体に備えているため、前記ケーブル案内部材に前記一対のブレーキシューの浮き上がりを阻止する機能を前記浮上り阻止突部を一体に設けるのみで追加できるので、ドラムブレーキの部品点数を増加させることなくブレーキシューの浮き上がりが阻止される。また、前記ブレーキシューの浮上りを防止することにより、前記ブレーキシューと前記バッキングプレートとの干渉音を防ぎ、前記ブレーキシューが浮上りながらブレーキドラムに押圧された時の前記ブレーキシューの強度低下を防止することができる。
【0012】
請求項2に係る発明のドラムブレーキによれば、前記ケーブル案内部材の浮上り阻止突部は、その浮上り阻止突部の先端部が前記一対のブレーキシューの他端部の前記バッキングプレートと反対側においてそのブレーキシューの厚み方向に所定の間隔を隔てて位置するように突設されているため、前記一対のブレーキシューが前記バッキングプレートから浮き上がろうとするとそのブレーキシューの前記バッキングプレートと反対側の他端部が前記浮上り阻止突部の先端部に当接して前記一対のブレーキシューの浮き上がりが阻止される。
【0013】
請求項3に係る発明のドラムブレーキによれば、前記一対のブレーキシューの他端部の間には、調節ねじの回転に伴ってシュー間隙を調節する間隙調節装置が配設され、前記一対のブレーキシューの他端部は、その一対のブレーキシューの他端部間に張設されたスプリングの付勢力によって前記間隙調節装置を介して連結されており、前記ケーブル案内部材の浮上り阻止突部は、その浮上り阻止突部の先端部が前記間隙調節装置の前記バッキングプレートの反対側に位置するように突設されているため、前記一対のブレーキシューが前記バッキングプレートから浮き上がろうとすると前記間隙調節装置が前記浮上り阻止突部の先端部に当接して前記一対のブレーキシューの浮き上がりが阻止される。
【0014】
請求項4に係る発明のドラムブレーキによれば、前記ケーブル案内部材は、一枚の板状部材からプレス加工によって成形されたものであり、前記バッキングプレートに固定される長手板状の固定部と、その長手板状の固定部から前記バッキングプレートから離間する方向に曲げられた板状壁部と、その板状壁部の先端部が前記一対のブレーキシューの他端部側に曲げられる前記浮上り阻止突部と、前記板状壁部の一部が切り曲げられることによってその浮上り阻止突部と反対側へ突き出して前記ブレーキケーブルを支持するケーブル支持部とが一体に備えられているので、一枚の板状部材から前記ケーブル案内部材が成形されてドラムブレーキの部品点数を好適に減らすことができる。
【0015】
ここで、好適には、従来一対のブレーキシューのアンカー部材側の端部は例えばスプリングにより浮上りが押さえられているが、本発明のドラムブレーキは前記一対のブレーキシューのシュー間隙調節装置側レッジ面近傍の端部の浮上りを押さえる構成とすることができる。これにより、確実に前記一対のブレーキシューの浮上りを防止することができ、そのブレーキシューがブレーキドラムに安定して押圧され安定した制動力を発生する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明が適用された一実施例のディオサーボ型ドラムブレーキを示す正面図である。
【図2】図1のケーブル案内部材を説明する拡大図である。
【図3】図2のIII-III視断面図である。
【図4】他の実施例のケーブル案内部材を示す図であり、前述の実施例の図2に対応する図である。
【図5】他の実施例のケーブル案内部材を示す図であり、前述の実施例の図3に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明の一実施例のドラムブレーキ10が中央部に備えられたデュオサーボ型のドラムインディスクブレーキ12のハット型ディスクおよびキャリパ等を取り外した正面図である。上記ハット型ディスクは、図に示されていない円板状外周部と有底円筒状中央部とによって構成され、その円板状外周部はディスクブレーキの摩擦板として機能し、有底円筒状中央部はブレーキドラム14として機能している。また、ブレーキドラム14は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちのドラムブレーキ10の中心側の円はブレーキドラム14の内周面16を示している。
【0019】
ドラムブレーキ10には、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート18が備えられている。このバッキングプレート18の外周部には、前記ハット型ディスクの円板状外周部を保護するためのディスクカバー20が固定されている。
【0020】
また、ドラムブレーキ10には、バッキングプレート18の左右の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー22,24と、その一対のブレーキシュー22,24の一端部すなわち図1の上端部の間において位置固定に設けられた略円柱形状のアンカー部材26と、そのアンカー部材26と一対のブレーキシュー22,24の一端部との間に張設され一対のブレーキシュー22,24の一端部を互いに接近する方向に常時付勢する一対のリターンスプリング28,28と、一対のブレーキシュー22、24の上端部間に架け渡された長手板状のストラット30と、一対のブレーキシュー22,24の他端部すなわち図1の下端部の間に介在させられて調節ねじ32aの回転に伴って全長が変化させられることによりシュー間隙を調節する間隙調節装置32と、一対のブレーキシュー22,24の他端部間に張設されてそれら下端部を互いに接近する方向に常時付勢して間隙調節装置32を長手方向に挟圧するための中間部分がコイル状のスプリング34とが備えられている。
【0021】
アンカー部材26の先端部には、一対のブレーキシュー22,24の一端部が一対のリターンスプリング28,28の付勢力により当接するアンカー部材26の円柱形状の当接部26aの径Rよりも大径の浮上り阻止部26bが備えられ、一対のブレーキシュー22,24の一端部のバッキングプレート18と反対側においてそのブレーキシュー22,24の厚み方向に所定の間隔を隔てて位置させられている。
【0022】
一対のブレーキシュー22,24は、何れも、バッキングプレート18の内周部に位置する平坦な平板部18aと略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲したシューウェブ38,40と、それらの円弧形状を成すシューウェブ38,40の外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すようにそのシューウェブ38,40に一体的に固設された帯板状のシューリム42,44と、それらシューリム42,44のバッキングプレート16側の円弧状側縁のうちそれらシューリム42,44の両端部および中央部においてバッキングプレート16と摺接するレッジ面42a,44aを有しバッキングプレート16の内周側に突き出るように曲成されたレッジ部42b,44bと、シューリム42,44の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング46,48とを備えてそれぞれ構成されている。また、図1に示すように、シューリム42,44のレッジ部42b,44bは、シューリム42,44のバッキングプレート16側とは反対側の円弧状側縁においてもそれらシューリム42,44の両端部および中央部に設けられている。
【0023】
また、一対のブレーキシュー22,24は、シューウェブ38およびシューウェブ40にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置50,52によってバッキングプレート18側へ押圧されることによりそのバッキングプレート18に対して面方向の拡開方向の移動可能に保持されている。
【0024】
図1に示すように、一方のブレーキシュー22には、平板状のブレーキレバー56が重ねられた状態で配設されており、ブレーキシュー22の一端部とブレーキレバー56の基端部56aとは、取付軸54によって、その取付軸54まわりに相対回動可能に連結されている。そして、ブレーキレバー56の基端部56aであって取付軸54に近い部分は、ストラット30のブレーキシュー22側の端部に切り欠かれた切欠面30aにシューウェブ38と共に係合させられている。また、ブレーキレバー56の先端部56bには、パーキングブレーキペダル、パーキングブレーキ操作レバー等の図示されていないブレーキ操作装置が操作されることによって発生する引張力をそのブレーキレバー56の先端部56bに伝達するブレーキケーブル58が連結されている。
【0025】
図1、図2に示すように、バッキングプレート18には、ブレーキケーブル58をバッキングプレート18の内外へ挿通するようにそのバッキングプレート18の外周側に貫通された貫通穴18bと、そのバッキングプレート18の貫通穴18bとブレーキレバー56の先端部56bとの間のバッキングプレート18上に固定され、ブレーキケーブル58に前記ブレーキ操作装置から引張力が加えられる際のブレーキケーブル58を支持することによりそのブレーキケーブル58をバッキングプレート18の平板部18aに略平行な方向に案内するケーブル案内部材60とが備えられている。
【0026】
バッキングプレート18の貫通穴18bには、その貫通穴18b内に嵌め着けられブレーキケーブル58をバッキングプレート18の内外へ挿通する状態でバッキングプレート18に取り付ける図示されていない例えば弾性変形可能な合成ゴム等で構成されるケーブル取付部材が備えられており、そのケーブル取付部材とブレーキレバー56の先端部56bとの間のブレーキケーブル58の周囲には、長手方向に圧縮されたコイルスプリング62が配設されている。このため、コイルスプリング62の付勢力によって、ブレーキレバー56の先端部56bは、ドラムブレーキ10の制動時にブレーキケーブル58が引っ張られる引張方向と逆方向に常時付勢されている。
【0027】
ケーブル案内部材60には、図2、図3に示すように、バッキングプレート18の貫通穴18bとブレーキレバー56の先端部56bとの間のバッキングプレート18の平板部18a上に例えば溶接により固定される長手板状の固定部60aと、その長手板状の固定部60aから略垂直にバッキングプレート18から離間する方向に曲げられる板状の板状壁部60bと、その板状壁部60bの先端部が一対のブレーキシュー22,24の他端部側にその板状壁部60bに対して略垂直に曲げられる板状の浮上り阻止突部60cと、板状壁部60bの一部がブレーキケーブル58を支持するために浮上り阻止突部60cと反対側すなわちブレーキケーブル58側へ突き出すように切り曲げられるケーブル支持部60dとが備えられており、その固定部60a、板状壁部60b、浮上り阻止突部60c、ケーブル支持部60dを備えるケーブル案内部材60は一枚の金属板からプレス加工によって一体に成形されたものである。
【0028】
図3に示すように、ケーブル案内部材60の浮上り阻止突部60cは、その浮上り阻止突部60cの先端部が一対のブレーキシュー22,24のシューウェブ38,40の他端部のバッキングプレート18と反対側においてそのブレーキシュー22,24のシューウェブ38,40の厚み方向に所定の間隔を隔てて位置するように突設されるものである。また、浮上り阻止突部60cの先端部には、切欠60eが備えられており、その切欠60eによって例えばドラムブレーキ10の制動時においてブレーキドラム14の内周面16との接触によりそのブレーキドラム14と共に一対のブレーキシュー22,24の他端部が周方向に連れ動いたとき、その一対のブレーキシュー22,24の他端部に連結された間隙調節装置32の調節ねじ32aと浮上り阻止突部60cとの干渉が防止される。
【0029】
また、図3に示すように、ケーブル案内部材60のケーブル支持部60dには、円弧状の支持面60fが形成されており、その支持面60fにブレーキケーブル58がそのブレーキケーブル58に前記ブレーキ操作装置から引張力が加えられて支持されると、ケーブル支持部60dの支持面60fからブレーキレバー56の先端部56bまでのブレーキケーブル58がバッキングプレート18の平行部18aに対して略平行になるようにケーブル支持部60dの支持面60fのバッキングプレート18からの高さHが設定されているものである。
【0030】
以上のよう構成されたドラムブレーキ10は、前記ブレーキ操作装置が操作されることによってブレーキケーブル58に引張力が加えられてブレーキレバー56が回動すると、ブレーキシュー24がストラット30に押されると共にブレーキシュー22が取付軸54に押されて一対のブレーキシュー22,24のライニング46,48がブレーキドラム14の内周面16に押圧されてドラムブレーキ10に制動力が発生する。また、例えばドラムブレーキ10の制動時にブレーキドラム14から一対のブレーキシュー22,24に比較的高い連れ回り力が加えられて一対のブレーキシュー22,24の他端部がバッキングプレート18から浮き上がろうとするとケーブル案内部材60に一体に備えられた浮上り阻止突部60cによってその一対のブレーキシュー22,24の他端部の浮き上がりが阻止される。
【0031】
本実施例のドラムブレーキ10によれば、ケーブル案内部材60は、そのケーブル案内部材60から一対のブレーキシュー22,24の他端部側へ突き出して一対のブレーキシュー22,24のバッキングプレート18からの浮き上がりを阻止する浮上り阻止突部60cを一体に備えているため、ケーブル案内部材60に一対のブレーキシュー22,24の他端部の浮き上がりを阻止する機能を浮上り阻止突部60cを一体に設けるのみで追加できるので、ドラムブレーキ10の部品点数を増加させることなくブレーキシュー22,24の浮き上がりが阻止される。また、ブレーキシュー22,24の浮上りを防止することにより、ブレーキシュー22,24とバッキングプレート16との干渉音を防ぎ、ブレーキシュー22,24が浮上りながらブレーキドラム14に押圧された時のブレーキシュー22,24の強度低下を防止することができる。
【0032】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、ケーブル案内部材60の浮上り阻止突部60cは、その浮上り阻止突部60cの先端部が一対のブレーキシュー22,24のシューウェブ38,40の他端部のバッキングプレート18と反対側においてそのブレーキシュー22,24のシューウェブ38,40の厚み方向に所定の間隔を隔てて位置するように突設されているため、一対のブレーキシュー22,24がバッキングプレート18から浮き上がろうとするとそのブレーキシュー22,24のシューウェブ38,40に対してバッキングプレート18とは反対側の他端部が浮上り阻止突部60cの先端部に当接して一対のブレーキシュー22,24の浮き上がりが阻止される。
【0033】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、ケーブル案内部材60は、一枚の金属板からプレス加工によって成形されたものであり、バッキングプレート18に固定される長手板状の固定部60aと、その長手板状の固定部60aからバッキングプレート18から離間する方向に曲げられた板状壁部60bと、その板状壁部60bの先端部が一対のブレーキシュー22,24の他端部側に曲げられる浮上り阻止突部60cと、板状壁部60bの一部が切り曲げられることによってその浮上り阻止突部60cと反対側へ突き出してブレーキケーブル58を支持するケーブル支持部60dとが一体に備えられているので、一枚の金属板からケーブル案内部材60が成形されてドラムブレーキ10の部品点数を好適に減らすことができる。
【0034】
また、本実施例のドラムブレーキ10によれば、従来一対のブレーキシューのアンカー部材側の端部は例えばスプリングにより浮上りが押さえられているが、本実施例のドラムブレーキ10は一対のブレーキシュー22,24の間隙調節装置32側レッジ面42a,44a近傍の端部の浮上りを押さえる構成とすることができる。これにより、より確実に一対のブレーキシュー22,24の浮上りを防止することができ、そのブレーキシュー22,24がブレーキドラム14に安定して押圧され安定した制動力を発生する。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の実施例の説明において前述した実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0036】
本実施例のドラムブレーキは、実施例1のケーブル案内部材60とは異なるケーブル案内部材64を備える以外は実施例1のドラムブレーキ10と略同様であり、図4、5は、そのケーブル案内部材64を説明する図であり、実施例1の図2、図3に対応するものである。
【0037】
ケーブル案内部材64には、図4、図5に示すように、実施例1の長手板状の固定部60aと同様の長手板状の固定部64aと、実施例1の板状壁部60bと同様の板状壁部64bと、その板状壁部64bの先端部が一対のブレーキシュー22,24の他端部側にその板状壁部64bに対して略垂直に曲げられる板状の浮上り阻止突部64cと、実施例1のケーブル支持部60dと同様のケーブル支持部64dとが備えられており、その固定部64a、板状壁部64b、浮上り阻止突部64c、ケーブル支持部64dを備えるケーブル案内部材64は一枚の金属板からプレス加工によって一体に成形されたものである。
【0038】
図4に示すように、ケーブル案内部材64の浮上り阻止突部64cは、その浮上り阻止突部64cの先端部が間隙調節装置32のバッキングプレート18と反対側に位置するように突設されるものである。また、浮上り阻止突部64cの先端部には、切欠64eが備えられており、その切欠64eによって例えばドラムブレーキ10の制動時においてブレーキドラム14の内周面16との接触によりそのブレーキドラム14と共に一対のブレーキシュー22,24の他端部が周方向に連れ動いたとき、その一対のブレーキシュー22,24の他端部に連結された間隙調節装置32の調節ねじ32aと浮上り阻止突部64cとの干渉が防止される。
【0039】
ケーブル案内部材64のケーブル支持部64dには、図5に示すように、円弧状の支持面64fが形成されており、そのケーブル支持部64dの支持面64fのバッキングプレート18からの高さHが実施例1のケーブル支持部60dの支持面60fの高さHと同じに設定されている。
【0040】
本実施例のドラムブレーキ10によれば、一対のブレーキシュー22,24の他端部の間には、アジャストホイール32aの回転に伴ってシュー間隙を調節する間隙調節装置32が配設され、一対のブレーキシュー22、24の他端部は、その一対のブレーキシュー22,24の他端部間に張設されたスプリング34の付勢力によって間隙調節装置32を介して連結されており、ケーブル案内部材64の浮上り阻止突部64cは、その浮上り阻止突部64cの先端部が間隙調節装置32のバッキングプレート18の反対側に位置するように突設されているため、一対のブレーキシュー22,24の他端部がバッキングプレート18から浮き上がろうとすると間隙調節装置32が浮上り阻止突部64cの先端部に当接して一対のブレーキシュー22,24の浮き上がりが阻止される。
【0041】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適応される。
【0042】
たとえば、本実施例において、ドラムブレーキ10にはデュオサーボ型のドラムブレーキが適用されたが、本発明のドラムブレーキに例えばリーディングトレーリング型のドラムブレーキ等が適用されても良い。尚、前述のデュオサーボ型のドラムブレーキのように一対のブレーキシュー22,24の他端部が他の部材から何ら支持されておらず一対のブレーキシュー22,24の他端部がバッキングプレート18から浮き上がり易いものに適用されるときその効果が大きくなる。すなわち、リーディングトレーリング型のドラムブレーキは、その一対のブレーキシューの他端部がその他端部の間にバッキングプレートに固設されたアンカー部材にその一対のブレーキシューの他端部間に張設されたスプリングの付勢力によって当接されているのでその一対のブレーキシューの他端部が比較的に浮き上がり難い。また、本発明をリーディングトレーリング型のドラムブレーキに適用させた場合には、一対のブレーキシューの他端部の間に固設されたアンカー部材の先端部に一対のブレーキシューの他端部の浮き上がりを阻止する平板状の浮上り阻止板を設ける必要がないためドラムブレーキの部品点数を減らせることができる。
【0043】
また、本実施例において、一対のブレーキシューの他端部には間隙調節装置が配設されたが必ずしも間隙調節装置が設けられる必要はなくシュー間隙を調節する機能を有さない一対のブレーキシューの他端部を連結する連結部材が配設されても良い。
【0044】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
10:ドラムブレーキ
18:バッキングプレート
18b:貫通穴
22,24:一対のブレーキシュー
32:間隙調節装置
32a:調節ねじ
34:スプリング
54:取付軸
56:ブレーキレバー
56b:先端部
58:ブレーキケーブル
60、64:ケーブル案内部材
60a、64a:固定部
60b、64b:板状壁部
60c、64c:浮上り阻止突部
60d、64d:ケーブル支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッキングプレートに拡開可能に配設された一対のブレーキシューと、該一対のブレーキシューの一方の一端部において所定の取付軸まわりに回動可能に配設されたブレーキレバーと、該ブレーキレバーの先端部に一端部が連結されたブレーキケーブルと、該ブレーキケーブルを前記バッキングプレートの内外へ挿通するように該バッキングプレートに貫通した貫通穴と、該貫通穴と前記ブレーキレバーの先端部との間の前記バッキングプレート上に固定され、前記ブレーキケーブルに引張力が加えられる際の該ブレーキケーブルを支持することにより該ブレーキケーブルを前記バッキングプレートに平行な方向に案内するケーブル案内部材とを備えるドラムブレーキであって、
前記ケーブル案内部材は、該ケーブル案内部材から前記一対のブレーキシューの他端部側へ突き出して前記一対のブレーキシューの前記バッキングプレートからの浮き上がりを阻止する浮上り阻止突部を一体に備えていることを特徴とするドラムブレーキ。
【請求項2】
前記ケーブル案内部材の浮上り阻止突部は、該浮上り阻止突部の先端部が前記一対のブレーキシューの他端部の前記バッキングプレートと反対側において該ブレーキシューの厚み方向に所定の間隔を隔てて位置するように突設されている請求項1のドラムブレーキ。
【請求項3】
前記一対のブレーキシューの他端部の間には、調節ねじの回転に伴ってシュー間隙を調節する間隙調節装置が配設され、
前記一対のブレーキシューの他端部は、該一対のブレーキシューの他端部間に張設されたスプリングの付勢力によって前記間隙調節装置を介して連結されており、
前記ケーブル案内部材の浮上り阻止突部は、該浮上り阻止突部の先端部が前記間隙調節装置の前記バッキングプレートの反対側に位置するように突設されている請求項1のドラムブレーキ。
【請求項4】
前記ケーブル案内部材は、一枚の板状部材からプレス加工によって成形されたものであり、前記バッキングプレートに固定される長手板状の固定部と、該長手板状の固定部から前記バッキングプレートから離間する方向に曲げられた板状壁部と、該板状壁部の先端部が前記一対のブレーキシューの他端部側に曲げられる前記浮上り阻止突部と、前記板状壁部の一部が切り曲げられることによって該浮上り阻止突部と反対側へ突き出して前記ブレーキケーブルを支持するケーブル支持部とが一体に備えられている請求項1乃至3のいずれか1のドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−137128(P2012−137128A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288708(P2010−288708)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】