説明

ドラム缶のハンドリング装置

【課題】倉庫などに収納するドラム缶の数を多くすることができ、衝撃なくドラム缶を壁面に近接して設置できると共に、壁面に近接して設置されたドラム缶を容易に取り出すことができるようにする。
【解決手段】ドラム缶10を挟持及び解放する一対のクランプ部2と、各クランプ部2を互いに近接及び離反するスライド部とを備え、クランプ部2は、ドラム缶10の長手方向の両端面部10cを挟持し、ドラム缶の両端面部10cに当接する自由回転可能な複数のフリーベアリング3を備え、クランプ部2の周囲が、ドラム缶の両端面部10cから突出した鍔部10aに係止して、ドラム缶10を持ち上げ可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒状のドラム缶を挟持して、所定箇所に持ち運ぶためのハンドリング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンドリング装置は、ドラム缶運搬車両に搭載されて、円筒状のドラム缶を挟持して所定箇所に持ち運ぶ。従来のハンドリング装置は、ドラム缶を挟持する一対のクランプ部を備え、各クランプ部が、ドラム缶の円弧状の周壁部を挟むように構成されている(例えば特許文献1参照)。各クランプ部は、ドラム缶の周壁部を挟むのに適した円弧状に形成されている。
【0003】
このように、従来のハンドリング装置は、一対のクランプ部がドラム缶の周壁部を両側から挟むように構成されているので、ドラム缶の周壁部の両側に各クランプ部のための空間が必要になる。従って、従来のハンドリング装置を用いて複数のドラム缶を倉庫などに収納する際には、ドラム缶の周壁部の両側に空間を設けるので、詰めることができず、ドラム缶の収納数を多くすることができない。
【0004】
さらに、図5のように、従来のハンドリング装置20では、倉庫などの壁面Wにドラム缶10を設置する際、ドラム缶10の周壁部10dを壁面Wから離した状態でクランプ部21をドラム缶10から解放する。そのため、ドラム缶10は、その自重で壁面Wに衝突して設置されるので、大きな衝撃が加わる。また、従来のハンドリング装置20は、ドラム缶10の周壁部10dの両側にクランプ部21のための空間を要するので、壁面Wに近接して設置されたドラム缶10を取り出すことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−128456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記した問題点に鑑みて、倉庫などに収納するドラム缶の数を多くすることができ、衝撃なくドラム缶を壁面に近接して設置できると共に、壁面に近接して設置されたドラム缶を容易に取り出すことができるドラム缶のハンドリング装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るドラム缶のハンドリング装置は、
ドラム缶を挟持して持ち運ぶためのハンドリング装置であって、
ドラム缶を挟持及び解放する一対のクランプ部と、各クランプ部を互いに近接及び離反するスライド部とを備え、
クランプ部は、ドラム缶の長手方向の両端面部を挟持し、ドラム缶の両端面部に当接する自由回転可能な複数のフリーベアリングを備え、クランプ部の周囲が、ドラム缶の両端面部から突出した鍔部に係止して、ドラム缶を持ち上げ可能とする。
【0008】
好ましくは、クランプ部は、円形プレートからなる。
【発明の効果】
【0009】
上記の通り、本発明のハンドリング装置では、各クランプ部が、ドラム缶の長手方向の両端面部を挟持する。そのため、ドラム缶の周壁部の両側に各クランプ部のための空間は必要ない。その結果、複数のドラム缶を倉庫などに収納する際に、ドラム缶の周壁部の両側を空間を設けることなく詰めることができるので、ドラム缶の収納数を多くすることができる。
【0010】
さらに、本発明のハンドリング装置では、クランプ部が、ドラム缶の両端面部に当接する部分に自由回転可能な複数のフリーベアリングを備え、クランプ部の周囲が、ドラム缶の両端面部から突出した鍔部に係止することで、ドラム缶を持ち上げ可能とする。これにより、クランプ部は、ドラム缶を挟持した状態で自由に移動できるので、ドラム缶を壁面に沿って降ろすことができる。その結果、ドラム缶に大きな衝撃が加わることはない。また、クランプ部は、ドラム缶の両端面部を挟持して持上げることができるので、壁面に近接して設置されたドラム缶を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】複数のハンドリング装置を搭載した運搬車両を示す正面図。
【図2】ハンドリング装置を説明するための図。
【図3】ドラム缶を挟持したハンドリング装置を示す拡大図。
【図4】ドラム缶を設置するハンドリング装置を示す図。
【図5】従来のハンドリング装置を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面に基づいて本発明に係るハンドリング装置を説明する。
【0013】
図1の通り、ハンドリング装置1は、ドラム缶を倉庫などの所定箇所に運搬して設置するための運搬車両15に設けられる。運搬車両15は、複数のドラム缶10を運搬するために、複数のハンドリング装置1を備える。運搬車両15は、複数のハンドリング装置1を支持するためのリフトブラケット部17を備える。複数のハンドリング装置1は、リフトブラケット部17に運搬車両15の左右方向15bに整列される。運搬車両15は、リフトブラケット部17を運搬車両15の上下方向15cに昇降するためのマスト部16を備える。運搬車両15は、マスト部16を運搬車両15の前後方向にも移動可能に構成される。運搬車両15は、各ハンドリング装置1でドラム缶10を挟持して、ドラム缶10を所定箇所へ持ち運び設置する。
【0014】
図2(a)の通り、ハンドリング装置1は、リフトブラケット部17に設けられ、運搬車両15の前後方向15aに延設されたサポート部6を備える。ハンドリング装置1は、一対のクランプ部2と、各クランプ部2を支持するための一対のアーム部4を備える。各アーム部4は、一対のスライド部5を介してサポート部6に連結される。
スライド部5は、サポート部6に設けられたガイド軸50と、アーム部4に設けられたスライダー51とを備える。図2(b)の通り、一対のガイド軸50及びスライダー51は、各アーム部4の両側にそれぞれ設けられる。ガイド軸50及びスライダー51によって、アーム部4は、運搬車両15の前後方向15aにガイドされる。図2(b)の通り、スライド部5は、サポート部6に設けられ車両の前後方向15aに延設されたネジ軸52と、ネジ軸52を支持するネジ軸支持部53と、アーム部4に設けられたネジ部54とを備える。ネジ部54はネジ軸52に螺合されている。ネジ軸52、ネジ軸支持部53及びネジ部54は、一対のガイド軸50及びスライダー51の間に設けられる。駆動装置(図示略)によってネジ軸52が回転することで、各アーム部4は、ガイド軸50及びスライダー51にガイドされながら、運搬車両15の前後方向15aにスライド移動する。
【0015】
ハンドリング装置1は、各アーム部4を移動して、各クランプ部2を互いに近接することでドラム缶10を挟持し、そして、各クランプ部2を互いに離反することでドラム缶10を解放する。ドラム缶10は、周囲に設けられた円筒の周壁部10dと、周壁部10dの両端に設けられた円形の両端面部10cとを備える。ドラム缶10を挟持する際、ハンドリング装置1は、ドラム缶10の長手方向10eの両端面部10cに向けて各クランプ部2を互いに近接する。これにより、各クランプ部2は、ドラム缶10の両端面部10cを挟持する。
【0016】
図2(b)の通り、各クランプ部2は、所定の厚みを有する円形プレートで構成される。クランプ部2の表面2aは、ドラム缶10の両端面部10cに向いている。クランプ部2は、プレートの表面2aに複数のフリーベアリング3を備える。フリーベアリング3は、自由に回転可能な球部材を保持し、クランプ部2の表面2aから突出して設けられる。これにより、ドラム缶10を挟持する際に、フリーベアリング3が、ドラム缶10の両端面部10cに当接される。
【0017】
図3(a)の通り、ドラム缶10は、両端面部10cから突出する鍔部10aを備える。図3(b)の通り、鍔部10aは、ドラム缶10の周方向に環状に延設されている。ドラム缶10を挟持して持上げる際、フリーベアリング3がドラム缶10の端面部10cに当接して、クランプ部2の周面が鍔部10aに係止する。即ち、クランプ部2の表面2aから突出するフリーベアリング3の厚さが、ドラム缶10の端面部10cから突出する鍔部10aの厚さよりも短くなっており(図3(a))、その結果、クランプ部2の外周面が鍔部10aの内周面に係止する。
【0018】
図4の通り、ハンドリング装置1は、クランプ部2で挟持されたドラム缶10を、壁面W及び他のドラム缶10に近接して設置できる。即ち、ハンドリング装置1は、フリーベアリング3の自由回転を利用することで、ドラム缶10を持上げる際には、クランプ部2の外周面の頂面部で鍔部10aの内周面の頂面部に係止して、ドラム缶10を降ろす際には、クランプ部2で鍔部10aを係止しながら、ドラム缶10を両端面10cに沿って自由に移動して、壁面W及び他のドラム缶10に沿わせながら、ゆっくりと所定箇所に設置できる。さらに、従来のハンドリング装置と異なり、本発明のハンドリング装置1は、ドラム缶10の周壁部10dに空間を必要としないので、周壁部10dを壁面Wに近接して設置したドラム缶10でも取り出すことができる。
【0019】
ドラム缶10の環状の鍔部10aに沿って滑らかに移動できるように、上記実施形態では、クランプ部2は、円形プレートからなるが、多角形プレートで構成してもよい。また、ドラム缶10を挟持する際に、バランスがいいように、4つのフリーベアリング3がクランプ部2に等間隔に配置されているが、3つ又は5つ以上でもよい。
【符号の説明】
【0020】
1 ハンドリング装置
2 クランプ部
3 フリーベアリング
4 アーム部
5 スライド部
10 ドラム缶
10a ドラム缶の鍔部
10c ドラム缶の両端面部
10e ドラム缶の長手方向
W 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドラム缶を挟持して持ち運ぶためのハンドリング装置であって、
前記ドラム缶を挟持及び解放する一対のクランプ部と、前記各クランプ部を互いに近接及び離反するスライド部とを備え、
前記クランプ部は、前記ドラム缶の長手方向の両端面部を挟持し、前記ドラム缶の両端面部に当接する自由回転可能な複数のフリーベアリングを備え、前記クランプ部の周囲が、前記ドラム缶の両端面部から突出した鍔部に係止して、前記ドラム缶を持ち上げ可能とすることを特徴とするハンドリング装置。
【請求項2】
前記クランプ部は、円形プレートからなることを特徴とする請求項1に記載のハンドリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−224444(P2012−224444A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93777(P2011−93777)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】