ドリルビット
【課題】
コア排出孔付きのドリルビットにおいて、ねじれ破損に対する強度を高め、電動ドリル等の汎用の駆動用工具に装着して使用できるようにした。
【解決手段】
円筒状のボディ部2を有し、ボディ部2の開口部2aに硬質切れ刃3が設けられ、側面にコア排出孔5を有するドリルビット1において、ボディ部2の外周面であって、コア排出孔5とオーバーラップする領域にらせん状の突起4を設けて、コア排出孔5近傍をらせん状突起で補強した。コア排出孔5は、長方形の短辺の両側に半円を接続したような長円形状であり、長方形と半円の接続点となる変曲点5a、5b付近が、突起4内に位置するように配置する。
コア排出孔付きのドリルビットにおいて、ねじれ破損に対する強度を高め、電動ドリル等の汎用の駆動用工具に装着して使用できるようにした。
【解決手段】
円筒状のボディ部2を有し、ボディ部2の開口部2aに硬質切れ刃3が設けられ、側面にコア排出孔5を有するドリルビット1において、ボディ部2の外周面であって、コア排出孔5とオーバーラップする領域にらせん状の突起4を設けて、コア排出孔5近傍をらせん状突起で補強した。コア排出孔5は、長方形の短辺の両側に半円を接続したような長円形状であり、長方形と半円の接続点となる変曲点5a、5b付近が、突起4内に位置するように配置する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、モルタル、硬質タイル等の被削材の穴あけに使用されるドリルビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
穿孔用のビットとしてドリルビット(コアビット)が知られている。図11は、従来技術のドリルビット101を示す正面図である。ドリルビット101は、コンクリート、モルタル、タイル、レンガ、石材等の穿孔作業に用いられ、例えば電動ドリル等の駆動用工具に取り付けて使用される。ドリルビット101は、円柱形のボディ部(本体部分)102の先端側内部に内部空間(空洞)が形成され、下端側の開口部102aは所定の径を有する円形の開口である。開口部102aの周囲には、穿孔を行うための硬質切れ刃(チップ)103が、開口部102aの内周側から外周側にかけて覆うようにして取り付けられる。このように硬質切れ刃(チップ)103が開口部の円周部分にだけ設けられ、円状の底面部全体にチップが設けられる構成ではないので、切削体積がいわゆるノンコア型のビットより少なくてすむという利点がある。穿孔作業においては、被削材の円柱状コアが形成される。
【0003】
上述した従来のドリルビット101を用いた作業においては、作業時に発生したコア(円筒状の芯)がボディ部102の開口部102aから内部空間に入ってきて、穿孔作業を繰り返すと内部空間はコアでいっぱいになってしまう。そこで、作業者は定期的にコアを取り除く必要がある。そのため特許文献1においては、円筒形のボディ部に窓穴を設けて、内部に残留するコアを窓穴を介して外部に排出するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−27813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような円筒形のボディ部に窓穴を設けたコアビットは、内部に残留するコアを排出できるという利点がある。しかしながら、コンクリート等の高硬材に穴を開けるには、振動ドリル、ハンマドリル、あるいは約10000rpmの高速回転ドリルなどの特殊な高出力駆動用工具に取り付けて使用する必要があり、この結果、ドリルビットには衝撃、ねじれ応力が大きく加わることになる。ドリルビットを衝撃、ねじれ応力に耐えうるようするには、例えば円筒状基板を厚くする必要があり、抵抗が大きくなってしまい切削速度が低下する。
【0006】
また、特許文献1のように円筒状基板の側面にコア排出孔を設ければコアの排出を容易にできるものの、コア排出孔を有することにより小径のものは円筒状基板の強度が低下し、コンクリート等の穴あけには被削材との摩擦によるトルクに耐えられず、ドリルビットがねじれ破損する恐れがあった。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、穿孔作業中に発生したコアを外部へ排出することができるドリルビットを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、コア排出孔付きのドリルビットにおいて、ねじれ破損に対する強度を高めることにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、高出力の専用の駆動用工具を必要とせず、電動ドリル等の汎用の回転工具に装着して使用することができるコア排出孔付きのドリルビットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
【0011】
本発明の一つの特徴によれば、円筒状のボディ部を有し、ボディ部の先端開口部に硬質切れ刃が設けられ、ボディ部の側面にコア排出孔を有するドリルビットにおいて、ボディ部の外周面であって、コア排出孔とオーバーラップする領域にらせん状の突起を設けた。この突起は、開口部近傍からコア排出孔とオーバーラップする領域まで、或いは、開口部近傍からコア排出孔よりも上側の領域まで、円周方向に連続するようにらせん状に形成される。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、コア排出孔は、軸方向に延びる長円形状に形成される。このコア排出孔は、長方形の短辺の両側に半円を接続したような長円形状であり、長方形と半円の接続点となる変曲点付近が、突起内に位置するようにコア排出孔が形成されると好ましい。また、コア排出孔の開口面が、平坦になるよう縁取りすると好ましい。コア排出孔を設ける位置は任意であるが、円筒状のボディ部内の空間のうち、軸方向の上側領域内に形成すると好ましい。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、ボディ部の、らせん状の突起の下端と硬質切れ刃は非接続であり、らせん状の突起よりも下側には円周方向に等間隔に複数の切れ欠き部が形成される。ボディ部の後端閉口部には、駆動用工具に取り付けるための六角軸が接続する。さらに、ボディ部の後端閉口部と六角軸の間に、ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成する。ツバ部はボディ部に一体に形成されると共に、ツバ部とボディ部とはアール形状によって接続されるように構成すると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、側面にコア排出孔を有するドリルビットにおいて、ボディ部の外周面であって、コア排出孔とオーバーラップする領域にらせん状の突起を設けて補強したので、コア排出孔部分の強度を高めてねじれ破損の無いドリルビットを提供できる。また、らせん状の突起で補強することにより円筒状の基板部材(ボディ部)の肉厚を薄くでき、抵抗の小さいドリルビットの製造が可能となる。また、穴あけによって発生する切り屑等の排出効果が向上し、コア排出孔付近が被削材に埋没しても穴あけ作業を継続することができ、更に、より後端閉口部側まで切り屑等を移動させることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、らせん状の突起は開口部近傍からコア排出孔とオーバーラップする領域まで円周方向に設けられるので、穴あけによって発生する切り屑等の排出効果が得られ、コア排出孔付近が被削材に埋没しても穴あけ作業を継続することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、らせん状の突起は開口部近傍からコア排出孔よりも上側の領域まで設けられるので、穴あけによって発生する切り屑等の排出効果が得られ、コア排出孔付近が被削材に埋没しても穴あけ作業を継続することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、コア排出孔は、軸方向に延びる長円形状に形成されるので、加工が容易であり、しかも内部空間に貯まったコアを容易に排出することができるドリルビットを実現できる。
【0018】
請求項5の発明によれば、コア排出孔の変曲点付近が突起内に位置するようにコア排出孔が形成されるので、コア排出孔の特定部分に集中する応力に耐えることができるドリルビットを実現できる。
【0019】
請求項6の発明によれば、コア排出孔の開口面が、平坦になるよう縁取りされ、コア排出孔近傍が概ね平坦になっているので、らせん突起の付根角に集中する応力を緩和し更に強度を高めることができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、コア排出孔が、円筒状のボディ部の内部空間のうち、軸方向の上側領域内に形成されるので、内部空間内にコアを十分収容することができ、さらに、その収容能力を超えた部分についてはコア排出孔から効果的に外部に排出することができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、らせん状の突起の下端と硬質切れ刃は非接続であり、らせん状の突起よりも下側には円周方向に等間隔に複数の切れ欠き部が形成されるので、硬質切れ刃を複数のピースに分断して構成でき、切削効率を高め切削粉の排出効果も大幅に向上させることができる。
【0022】
請求項9の発明によれば、ボディ部の後端閉口部に、駆動用工具に取り付けるための六角軸を接続したので、インパクトドリル、ドライバードリルなどの六角取付口をもつ低速回転形の電動工具等の駆動用工具にドリルビットを取り付けることができる。
【0023】
請求項10の発明によれば、ボディ部の後端閉口部と六角軸の間に、ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成したので、穴あけ時に発生する切粉の粉塵が駆動用工具本体へ直接飛散するのを防止できる。
【0024】
請求項11の発明によれば、ツバ部はボディ部に一体に形成されると共に、ツバ部とボディ部とはアール形状によって接続されるので、ツバ部に飛散した切粉の粉塵の向きを変えて径方向外側に効果的に拡散でき、粉塵が駆動用工具本体へ直接飛散するのを防止できる。
【0025】
請求項12の発明によれば、ボディ部の後端閉口部に、駆動用工具に取り付けるための六角軸を一体に形成すると共に、前記ボディ部の後端閉口部と前記六角軸の間に、前記ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成したので、穴あけ時に発生する切粉の粉塵が駆動用工具本体へ直接飛散するのを防止できる。
【0026】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係るドリルビット1の側面図である。
【図2】本発明の実施例に係るドリルビット1の底面図である。
【図3】図1のコア排出孔5の形状を説明するための模式図である。
【図4】コア排出孔5を形成する前のドリルビット1の断面図である。
【図5】図1に示すドリルビット1の断面図である。
【図6】図1のA−A部の断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るドリルビット31を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例に係るドリルビット41を示す断面図である。
【図9】本発明の第4の実施例に係るドリルビット51を示す断面図である。
【図10】本発明の実施例に係るドリルビット1の使用状態を説明するための参考図である。
【図11】従来技術によるドリルビット101を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
本発明の実施例に係るドリルビットについて図面を用いて説明する。なお、以下の図においてドリルビットの上下方向、先端側と後端側は、図1に示す方向であるとして説明する。図1は本発明の実施例に係るドリルビット1の側面図であり、図2は底面図である。
【0029】
図1において、ドリルビット1を構成する部材は、円筒状の基板部分を構成するボディ部2と、ボディ部2の閉口する後端側に接続される取付部8と、ボディ部2と取付部8の間に形成されるボディ部2の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部9と、ボディ部2の開口先端部に設けられる硬質切れ刃3によって構成される。取付部8は、駆動源となる動力工具に取り付けるための断面が六角形の、いわゆる六角軸であり、例えば図10に示すように、ドリルビット1を電動ドリル、インパクトドライバ、ハンマドリルなどの駆動用工具71の六角取付口72に装着することができる。六角形状の中心軸に対称な対辺間の間隔は例えば6.35mmであって、軸方向の長さ(上下方向長さ)は30mmとしている。また、取付部8の軸方向(上下方向)の中央付近に、円周方向に連続した窪み部8aを形成して、インパクトドライバ等のいわゆるワンタッチ取り付け機構のボールが嵌合できるように構成した。窪み部8aの最細部の直径は、例えば5mmである。このように、取付部8の大きさは、駆動用工具71の装着部の大きさによって決定されるが、本実施例のように電動ドリルやインパクトドライバなどで広く用いられている径と同じにすれば、様々な回転式の動力工具に取り付けが可能となるので使い勝手が良い。
【0030】
ボディ部2は、取付部8に対してその径が大きくなっており、ボディ部2の内部には空洞が形成され、略円筒状に形成される。取付部8とボディ部2の接続部分には、ボディ部2の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部9が形成される。図1の例では、ボディ部2に固着される硬質切れ刃3の直径dが18mmであり、ツバ部9の直径は22mmである。ツバ部9は、穿孔作業中に発生する粉塵がインパクト工具などの動力工具や作業者側に直接飛散するのを低減させる役目を果たすものである。硬質切れ刃3で発生する粉塵は、ボディ部2の外縁に沿って後端側に移動することが多いが、それらがツバ部9に当たることにより径方向に曲げられて、飛散される。これは、切削により排出された粉塵をらせんによりドリルビット1の外縁に沿って後端側に誘導するタイプの乾式のドリルビットにおいて特に有効である。また、ツバ部9は、図10に示すようインパクトドライバ等のビット挿入孔を有するビット保持部を備えた動力工具に取り付けた場合に、ビット保持部73の外径74よりも大径であって、さらにボディ部2よりも大径に形成されているので、ビット挿入孔への粉塵の侵入を抑制することができる。本発明のドリルビット1によれば、駆動用工具71に取付可能な六角軸と、粉塵の飛散を抑える構造とを備えていることで、作業性良く穿孔作業を行うことが可能となる。
【0031】
ボディ部2からツバ部9への接続部分9bは、所定の曲率半径R1を有するように滑らかにアール形状を有するように形成される。同様に、取付部8からツバ部9への接続部分にも、所定の曲率半径R2を有するように滑らかにアール形状が形成される。このように曲率半径R1、R2を形成することにより接続部分の強度を向上させることができるが、さらに接続部分9bの曲率半径R1によって、硬質切れ刃3で発生した粉塵が効果的に径方向に曲げられる。取付部8、ツバ部9及びボディ部2は、例えば合金等の一体成形により製造すると強度的にも好ましく、これら曲率半径R1、R2は、例えば一体成型品の削り出し加工によって製造される。尚、本発明は一体構成だけに限られずに、製造上の理由から別体式で形成しても良い。
【0032】
ボディ部2の直径は、被削材にあける穴の大きさによって決定される。本実施例では、コンクリート、モルタル、タイル等の穿孔用に好適な直径20mmのドリルビットの例で示したが、ドリルビット1の径はこれだけに限られずに、直径10mm程度から直径100mm以上の大径のものまで、様々な直径のボディ部2を有するドリルビット1が提供される。穿孔作業においてドリルビット1は低速回転で回転されると好ましく、例えば毎分1,000〜3、000回転程度で回転されると良い。
【0033】
ボディ部2の下端の開口部2aには、被削材に対する穿孔を行うための硬質切れ刃3が設けられる。硬質切れ刃3は、例えば砥粒をボディ部2の開口部2aに単層に並べて溶着させた単層構造からなるものである。この砥材は、単層溶着を繰り返して多層構造に形成しても良いし、ダイヤモンド砥粒やCBN砥粒等の砥粒をメタルボンドあるいはレジンボンドのようなバインダーによって固めたものでも良い。ダイヤモンド砥粒を多層で溶着して硬質切れ刃3を構成すれば、長寿命化を図ることができる。尚、硬質切れ刃3の製造方法あるいは固定方法は、砥粒をバインダーによって固着させる方法だけに限られずに、その他の方法で実現しても良い。本実施例では、ドリルビット1による穿孔作業において、水や加工液等の冷却剤を用いない、いわゆる乾式タイプの例を示しているが、本実施例のドリルビット1を湿式タイプとして用いても良い。
【0034】
本実施例ではボディ部2の側面に、らせん状の突起4が形成される。らせん状の突起4は、ボディ部2と一体で構成されると好ましい。らせんの向きは、通常のドリル刃と同じように回転方向に対して切削粉を後端側に引き出すような回転方向とすれば良い。突起4の製造方法は、規定の厚さよりも肉厚の円筒形のボディ部2から、らせん状に溝7の部分を削り出すことによって突起4を構成するようにすれば強度的に好ましい。尚、突起4の外径は、開口部2aの外径より外側に位置し、開口部2aに設けられる硬質切れ刃3の外径(切削径)より内側に位置する。また、開口部2aは、切削粉のはけやドリルビット1の抜けを良くするため、径方向外側に突出させて段差を形成してもよく、その場合、段差の外径はボディ部2より外側に位置し、突起4より内側に位置する。
【0035】
ボディ部2の側方にはコア排出孔5が形成される。コア排出孔5はボディ部2の内部に貯まったコアを外部に排出するために形成されたもので、内部空間と外部を貫通させる横穴である。コア排出孔5は、ボディ部2の内部空間の内後端側(上側)に配置すると良い。コア排出孔5の形状は比較的任意であり、内部空間にたまったコアを効果的に外部に排出できるように、ある程度の大きさを有することが好ましい。本実施例では、側面から見たとき(図1にように見た際)に、コア排出孔5が長方形の上下辺に、半円を接続したような長円形状とすることが好ましい。また、コア排出孔の幅については、切削時に内部空間に溜まるコアが切れ刃3の内径より若干小さい径を有して溜まることから、切れ刃3の内径と同程度かもしくは若干大きい程度確保されていることが好ましい。このコア排出孔5の形状を説明した図が図3である。図3は、コア排出孔5を側面から見た形状を示す図であり、本図ではコア排出孔5の内側のエッジ部分の形状を示している。コア排出孔5は、領域bにて示される長方形の短辺となる上下辺に、領域aとcからなる半円を組み合わせたような長円形状とする。
【0036】
このようなコア排出孔5の形状とすると、コア排出孔5の内側のエッジは、直線部d2、d3と、円弧部d1、d4により構成されることになる。また、長方形の上下辺と半円の接続点、つまり直線部と曲線部の接続点(以下、「変曲点」と呼ぶ)を5a、5bで示す。発明者らの実験によれば、長円状のコア排出孔5を形成したドリルビット1では、穿孔作業の際に変曲点5aと5bに最も大きいねじり応力を受けることになり、過荷重試験を行うと変曲点5aと5b付近から亀裂等が入って破損することが多かった。そこで本実施例では、強度的に弱くなりやすい変曲点5aと5b付近が、肉厚が厚くなる突起4の領域内に位置するように配置することによって、ドリルビット1の曲げ強度を向上させるようにした。本実施例では、コア排出孔5の弱い部分が突起4内に位置するようにしたが、変曲点5a、5bだけでなくコア排出孔5の最前端(最下位点)と最後端(最上位点)の両方、または、片方が突起4内に位置するように配置しても良い。
【0037】
図2は本発明の実施例に係るドリルビット1の先端部付近の底面図である。硬質切れ刃3は、円形の開口部2a(図1参照)に沿って内周側から外周側に連続して配置され、下から見た形状が略扇状となるものである。円周方向には4箇所の空隙を設けるために、90度間隔で切り欠き2bが形成される。このように、硬質切れ刃3を下から見た際に略1/4周の扇状の形状で4分割して形成し、円周方向に1箇所以上の間隙を有するように構成したので、穿孔された被削材から発生する細かい粉塵が切り欠き2bによって効果的に排出され、穿孔効率の向上を図ることができる。また、突起4の下端4aは切り欠き2bの近傍に位置し、排出された粉塵が突起4に沿って移動し易くなっている。
【0038】
図4はコア排出孔5を形成する前のドリルビット1の断面図である。ボディ部2は円筒状の形状をしており、ボディ部2と突起4は一体に構成される。突起4は、図1に示したようにボディ部2の外周に沿って下端4aから上端4bまでらせん状に連続して延びる。その製造方法は、均一肉厚の円筒状のボディ部2を準備し、最初に切削加工によってらせん状に連続した溝7を形成する。らせん状の突起4の軸方向幅w1と溝7の軸方向幅w2の比は、本実施例では7:2位である。しかしながらこれらの幅w1、w2の大きさは任意であり、特に溝7の軸方向幅w2は、切削対象から生ずる切削粉の粒子の量や大きさ等を考慮してその幅の大きさ、溝7の半径方向の深さを決めれば良い。次に、円筒形エンドミル28を回転させながら矢印23の方向にボディ部2を移動させて穴を開ける。この穴あけ加工中の状態で、開けている最中に、円筒形エンドミル28を横方向、即ち図3に示したような長円形状の輪郭に沿って移動させることによって、ボディ部2の側面を切削してコア排出孔5を穿孔する。
【0039】
次に、図5に示すように異なる径の円筒形エンドミルを準備してコア排出孔5の面取り加工をする。これは、円筒形エンドミルの長手方向と垂直な断面がボディ部2の軸方向と直交するように配置させ、円筒形エンドミルを回転させながら矢印23の方向に移動させてコア排出孔5部分を切削することにより行う。円筒形エンドミルの断面が21aの位置から矢印24の方向に21bの位置まで移動させることによって、コア排出孔5の開口部には概ね平坦な面が形成される。この結果、コア排出孔5のエッジ面は移動する円筒形エンドミルの輪郭で決定され、図5の断面位置から見た場合に、上端及び下端近傍は曲線状の輪郭25a、25cとなり、中央部付近は直線状の輪郭25bになる。
【0040】
図6は、図1のA−A部の断面を示す図である。図4から理解できるように溝7を形成したことによってボディ部2の一部分の肉厚TH2は、突起4の部分の肉厚TH1よりも薄くなる。従来のコア排出孔5を形成しないボディ部2の肉厚は、全周に渡りTH2程度であった。しかしながら、本実施例においては、らせん状の突起4を形成して突起4の部分の肉厚を厚くすることによってボディ部2の強度を向上させることができた。さらに、コア排出孔5とらせん状の突起4との配置関係を調整することにより、コア排出孔5を開けたことによる強度低下が少なくなるように構成した。
【0041】
本実施例では、先述のように円筒形エンドミルによる加工の前に、円筒形エンドミル28を矢印29の方向に挿入して、コア排出孔5を形成している。円筒形エンドミル28による加工により切削面26が形成される。その後、図5にて説明した円筒形エンドミルによる加工により、切削面25のような概ね平坦な面が形成される。このように円筒形エンドミルによる加工によってコア排出孔5の開口部は、切削面25と切削面26によって開口縁が90度に形成される。このように、コア排出孔5の開口後の追加工によって開口縁が断面鋭角とならないようにしたことで、開口縁への応力集中を緩和するという効果を有する。
【0042】
以上説明したように本実施例によれば、円筒状の基板(ボディ部2)の開口先端部に設けられた硬質切れ刃3がダイヤモンド砥粒を溶着により固着したので、ダイヤモンド砥粒の突き出しが良好で切れ味が良く、ダイヤモンド砥粒の保持力に優れ、寿命の長いドリルビット1を実現できる。また、ボディ部2の側面にコア排出孔5を設けたので、内部に滞留するコアを効果的に外部に排出することができる。さらに、ボディ部2の外周面の、コア排出孔5とオーバーラップする領域に、らせん状の突起4を設けて補強したので、コア排出孔部分の強度を高め、ねじれ破損の恐れがほとんど無いドリルビットを提供できる。
【実施例2】
【0043】
次に図7を用いて本願発明の第2の実施例を説明する。第1の実施例と同じ機能の部分は同じ参照符号を付しており、繰り返しの説明は省略する。第2の実施例において第1の実施例と異なる点は、らせん状の突起34の幅と溝37の幅である。本実施例では溝37の幅が大きくなるように構成して、大きめの切削粉も効果的に排出されるようにした。例えば、突起34の幅は3.6mmであり、溝37の幅は5.4mmであり、溝37の深さは0.3mm程度である。
【0044】
突起34の下端部34aは第1の実施例と同様であり、ドリルビット31の最上端と下端部34aの間には所定の幅w3を有し、この幅(距離)w3の部分は円周方向に連続した径の細い部分(=溝部分)となっている。一方、溝34の上端部34bはコア排出孔35の開口に接するように配置した。またボディ部32の上端付近であってツバ部9と接する部分には、円周方向に連続した肉厚部36が形成される。肉厚部36と突起34の外径は同じである。この肉厚部36を形成するのは、溝37の削りだし加工上の便宜から形成されるものであるが、コア排出孔35の変曲点35aだけでなく、コア排出孔35の上端付近まで肉厚部36内に配置されるので、コア排出孔35を形成したことによる強度低下を抑える役割を果たす。尚、コア排出孔35の変曲点35bを突起34内に配置するのは第1の実施例と同様である。
【0045】
以上、第2の実施例によれば、突起34の幅に対して溝37の幅を大きくしたので、らせん状の突起34によって切削粉の排出効果が高くなる。また、第1の実施例に比べて突起34の表面積が減少するので、穿孔対象との摩擦を低下させることができ、少ない駆動力で穿孔作業を行うことができる。
【実施例3】
【0046】
次に図8を用いて本発明の第3の実施例を説明する。第1及び2の実施例と同じ機能の部分は同じ参照符号を付しており繰り返しの説明は省略する。第3の実施例において第1の実施例と異なる点は、ボディ部42の外径である。本実施例では取付部8よりもやや太い程度、即ちボディ部42の外径が10mm程度の小さい径の例を示している。本実施例においても、長円状のコア排出孔45が形成され、長円の幅(円周方向の間隔)を切れ刃3の内径と同じか大きく形成すると共に、軸方向(上下方向)の長さを幅に比べて大きめに確保して更に良好なコアの排出効果を得ている。本実施例においてもコア排出孔45の変曲点45a、45bが、らせん状の突起44内に位置するように構成され、そのために突起44と溝47の幅が決定される。本実施例では突起44と溝47の幅がほぼ等しいように構成される。
【0047】
以上、第3の実施例によればボディ部42の外径が10mm程度の小さい径であっても本発明が適用でき、インパクトドライバ等の駆動用の電動工具で容易に用いることができるドリルビットを実現できる。
【実施例4】
【0048】
次に図9を用いて本発明の第4の実施例を説明する。図9は第4の実施例のドリルビット51を示す断面図である。第1の実施例と同じ機能の部分は同じ参照符号を付しており、繰り返しの説明は省略する。第4の実施例において、第1の実施例と異なる点は、硬質切れ刃53が、円筒状のボディ部52の軸方向に伸びる概ね円筒状の補強材56に溶着される点である。補強材56を設けることによって補強材に沿ったダイヤモンド砥粒の積層を容易に行うことができ、また、刃部の強度を高めることができる。
【0049】
軸方向に伸びる補強材56の厚さは、硬質切れ刃53内のダイヤモンド砥粒の平均粒径の概ね1倍以下とすることが好ましい。また、補強材56は、ボディ部52に溶着固定されると好ましい。補強材56の材質は金属製であり、ある程度の強度を有すると共に被穿孔材と接した際には摩擦により容易に摩耗するように、例えば主材質として銅(Cu)又は銅系合金により構成する。この結果、補強材56が穴あけ時に切削抵抗を増加させずに磨耗して減り、下からのダイヤモンド砥粒の自生発刃を可能とする。このように硬質切れ刃53は、軸方向に伸びる概ね円筒状の補強材56に溶着されることにより、補強材に沿ったダイヤモンド砥粒の積層が容易に行うことができ、刃部の強度を高めることができる。尚、ダイヤモンド砥粒の積層は単層だけでなく多層で形成すれば、砥石部分の寿命を更に長くすることができる。
【0050】
第4の実施例によれば硬質切れ刃53の突き出し部分が良好で切れ味が良く、ダイヤモンド砥粒の保持力に優れ、寿命の長いドリルビット51を提供できる。また、円筒状基板軸方向に伸びる補強材が、円筒状基板に溶着固定されるため薄板等を補強材として利用でき、加工の手間が減り安価なドリルビットを提供できる。さらに、補強剤の厚さが薄いことにより、開口先端部の刃部の半径方向厚さを薄くでき、切削体積が少なく切削抵抗が小さくすることにより、回転のみで駆動する回転数が概ね3000rpm以下の電動工具に使用できるドリルビットを実現できる。
【0051】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、ボディ部に設けられる突起は、開口部近傍からコア排出孔とオーバーラップする領域まで円周方向に連続して設けられるが、粉塵の排出効果を考えて必ずしも連続的でなくても断続的にでも良い。
【符号の説明】
【0052】
1 ドリルビット 2 ボディ部 2a 開口部 2b 切り欠き
3 硬質切れ刃 4 突起 4a (突起の)下端
4b (突起の)上端 5 コア排出孔 5a、5b 変曲点
7 溝 8 取付部 8a 窪み部 9 ツバ部
9a、9b (ツバ部の)接続部分 24 突起 25 切削面
25a、25b、25c 輪郭 26 切削面 28 円筒形エンドミル
31 ドリルビット 32 ボディ部 34 突起
34a 下端部 34b 上端部 35 コア排出孔
35a、35b 変曲点 36 肉厚部 37 溝
41 ドリルビット 44 突起 45 コア排出孔
45a、45b 変曲点 47 溝
51 ドリルビット 52 ボディ部 53 硬質切れ刃
56 補強材
71 駆動用工具 72 六角取付口 73 ビット保持部
101 ドリルビット 102 ボディ部 102a 開口部
103 硬質切れ刃
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート、モルタル、硬質タイル等の被削材の穴あけに使用されるドリルビットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
穿孔用のビットとしてドリルビット(コアビット)が知られている。図11は、従来技術のドリルビット101を示す正面図である。ドリルビット101は、コンクリート、モルタル、タイル、レンガ、石材等の穿孔作業に用いられ、例えば電動ドリル等の駆動用工具に取り付けて使用される。ドリルビット101は、円柱形のボディ部(本体部分)102の先端側内部に内部空間(空洞)が形成され、下端側の開口部102aは所定の径を有する円形の開口である。開口部102aの周囲には、穿孔を行うための硬質切れ刃(チップ)103が、開口部102aの内周側から外周側にかけて覆うようにして取り付けられる。このように硬質切れ刃(チップ)103が開口部の円周部分にだけ設けられ、円状の底面部全体にチップが設けられる構成ではないので、切削体積がいわゆるノンコア型のビットより少なくてすむという利点がある。穿孔作業においては、被削材の円柱状コアが形成される。
【0003】
上述した従来のドリルビット101を用いた作業においては、作業時に発生したコア(円筒状の芯)がボディ部102の開口部102aから内部空間に入ってきて、穿孔作業を繰り返すと内部空間はコアでいっぱいになってしまう。そこで、作業者は定期的にコアを取り除く必要がある。そのため特許文献1においては、円筒形のボディ部に窓穴を設けて、内部に残留するコアを窓穴を介して外部に排出するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平2−27813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のような円筒形のボディ部に窓穴を設けたコアビットは、内部に残留するコアを排出できるという利点がある。しかしながら、コンクリート等の高硬材に穴を開けるには、振動ドリル、ハンマドリル、あるいは約10000rpmの高速回転ドリルなどの特殊な高出力駆動用工具に取り付けて使用する必要があり、この結果、ドリルビットには衝撃、ねじれ応力が大きく加わることになる。ドリルビットを衝撃、ねじれ応力に耐えうるようするには、例えば円筒状基板を厚くする必要があり、抵抗が大きくなってしまい切削速度が低下する。
【0006】
また、特許文献1のように円筒状基板の側面にコア排出孔を設ければコアの排出を容易にできるものの、コア排出孔を有することにより小径のものは円筒状基板の強度が低下し、コンクリート等の穴あけには被削材との摩擦によるトルクに耐えられず、ドリルビットがねじれ破損する恐れがあった。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、穿孔作業中に発生したコアを外部へ排出することができるドリルビットを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、コア排出孔付きのドリルビットにおいて、ねじれ破損に対する強度を高めることにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、高出力の専用の駆動用工具を必要とせず、電動ドリル等の汎用の回転工具に装着して使用することができるコア排出孔付きのドリルビットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの特徴を説明すれば、次の通りである。
【0011】
本発明の一つの特徴によれば、円筒状のボディ部を有し、ボディ部の先端開口部に硬質切れ刃が設けられ、ボディ部の側面にコア排出孔を有するドリルビットにおいて、ボディ部の外周面であって、コア排出孔とオーバーラップする領域にらせん状の突起を設けた。この突起は、開口部近傍からコア排出孔とオーバーラップする領域まで、或いは、開口部近傍からコア排出孔よりも上側の領域まで、円周方向に連続するようにらせん状に形成される。
【0012】
本発明の他の特徴によれば、コア排出孔は、軸方向に延びる長円形状に形成される。このコア排出孔は、長方形の短辺の両側に半円を接続したような長円形状であり、長方形と半円の接続点となる変曲点付近が、突起内に位置するようにコア排出孔が形成されると好ましい。また、コア排出孔の開口面が、平坦になるよう縁取りすると好ましい。コア排出孔を設ける位置は任意であるが、円筒状のボディ部内の空間のうち、軸方向の上側領域内に形成すると好ましい。
【0013】
本発明のさらに他の特徴によれば、ボディ部の、らせん状の突起の下端と硬質切れ刃は非接続であり、らせん状の突起よりも下側には円周方向に等間隔に複数の切れ欠き部が形成される。ボディ部の後端閉口部には、駆動用工具に取り付けるための六角軸が接続する。さらに、ボディ部の後端閉口部と六角軸の間に、ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成する。ツバ部はボディ部に一体に形成されると共に、ツバ部とボディ部とはアール形状によって接続されるように構成すると好ましい。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、側面にコア排出孔を有するドリルビットにおいて、ボディ部の外周面であって、コア排出孔とオーバーラップする領域にらせん状の突起を設けて補強したので、コア排出孔部分の強度を高めてねじれ破損の無いドリルビットを提供できる。また、らせん状の突起で補強することにより円筒状の基板部材(ボディ部)の肉厚を薄くでき、抵抗の小さいドリルビットの製造が可能となる。また、穴あけによって発生する切り屑等の排出効果が向上し、コア排出孔付近が被削材に埋没しても穴あけ作業を継続することができ、更に、より後端閉口部側まで切り屑等を移動させることが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、らせん状の突起は開口部近傍からコア排出孔とオーバーラップする領域まで円周方向に設けられるので、穴あけによって発生する切り屑等の排出効果が得られ、コア排出孔付近が被削材に埋没しても穴あけ作業を継続することができる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、らせん状の突起は開口部近傍からコア排出孔よりも上側の領域まで設けられるので、穴あけによって発生する切り屑等の排出効果が得られ、コア排出孔付近が被削材に埋没しても穴あけ作業を継続することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、コア排出孔は、軸方向に延びる長円形状に形成されるので、加工が容易であり、しかも内部空間に貯まったコアを容易に排出することができるドリルビットを実現できる。
【0018】
請求項5の発明によれば、コア排出孔の変曲点付近が突起内に位置するようにコア排出孔が形成されるので、コア排出孔の特定部分に集中する応力に耐えることができるドリルビットを実現できる。
【0019】
請求項6の発明によれば、コア排出孔の開口面が、平坦になるよう縁取りされ、コア排出孔近傍が概ね平坦になっているので、らせん突起の付根角に集中する応力を緩和し更に強度を高めることができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、コア排出孔が、円筒状のボディ部の内部空間のうち、軸方向の上側領域内に形成されるので、内部空間内にコアを十分収容することができ、さらに、その収容能力を超えた部分についてはコア排出孔から効果的に外部に排出することができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、らせん状の突起の下端と硬質切れ刃は非接続であり、らせん状の突起よりも下側には円周方向に等間隔に複数の切れ欠き部が形成されるので、硬質切れ刃を複数のピースに分断して構成でき、切削効率を高め切削粉の排出効果も大幅に向上させることができる。
【0022】
請求項9の発明によれば、ボディ部の後端閉口部に、駆動用工具に取り付けるための六角軸を接続したので、インパクトドリル、ドライバードリルなどの六角取付口をもつ低速回転形の電動工具等の駆動用工具にドリルビットを取り付けることができる。
【0023】
請求項10の発明によれば、ボディ部の後端閉口部と六角軸の間に、ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成したので、穴あけ時に発生する切粉の粉塵が駆動用工具本体へ直接飛散するのを防止できる。
【0024】
請求項11の発明によれば、ツバ部はボディ部に一体に形成されると共に、ツバ部とボディ部とはアール形状によって接続されるので、ツバ部に飛散した切粉の粉塵の向きを変えて径方向外側に効果的に拡散でき、粉塵が駆動用工具本体へ直接飛散するのを防止できる。
【0025】
請求項12の発明によれば、ボディ部の後端閉口部に、駆動用工具に取り付けるための六角軸を一体に形成すると共に、前記ボディ部の後端閉口部と前記六角軸の間に、前記ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成したので、穴あけ時に発生する切粉の粉塵が駆動用工具本体へ直接飛散するのを防止できる。
【0026】
本発明の上記及び他の目的ならびに新規な特徴は、以下の明細書の記載及び図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係るドリルビット1の側面図である。
【図2】本発明の実施例に係るドリルビット1の底面図である。
【図3】図1のコア排出孔5の形状を説明するための模式図である。
【図4】コア排出孔5を形成する前のドリルビット1の断面図である。
【図5】図1に示すドリルビット1の断面図である。
【図6】図1のA−A部の断面図である。
【図7】本発明の第2の実施例に係るドリルビット31を示す断面図である。
【図8】本発明の第3の実施例に係るドリルビット41を示す断面図である。
【図9】本発明の第4の実施例に係るドリルビット51を示す断面図である。
【図10】本発明の実施例に係るドリルビット1の使用状態を説明するための参考図である。
【図11】従来技術によるドリルビット101を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0028】
本発明の実施例に係るドリルビットについて図面を用いて説明する。なお、以下の図においてドリルビットの上下方向、先端側と後端側は、図1に示す方向であるとして説明する。図1は本発明の実施例に係るドリルビット1の側面図であり、図2は底面図である。
【0029】
図1において、ドリルビット1を構成する部材は、円筒状の基板部分を構成するボディ部2と、ボディ部2の閉口する後端側に接続される取付部8と、ボディ部2と取付部8の間に形成されるボディ部2の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部9と、ボディ部2の開口先端部に設けられる硬質切れ刃3によって構成される。取付部8は、駆動源となる動力工具に取り付けるための断面が六角形の、いわゆる六角軸であり、例えば図10に示すように、ドリルビット1を電動ドリル、インパクトドライバ、ハンマドリルなどの駆動用工具71の六角取付口72に装着することができる。六角形状の中心軸に対称な対辺間の間隔は例えば6.35mmであって、軸方向の長さ(上下方向長さ)は30mmとしている。また、取付部8の軸方向(上下方向)の中央付近に、円周方向に連続した窪み部8aを形成して、インパクトドライバ等のいわゆるワンタッチ取り付け機構のボールが嵌合できるように構成した。窪み部8aの最細部の直径は、例えば5mmである。このように、取付部8の大きさは、駆動用工具71の装着部の大きさによって決定されるが、本実施例のように電動ドリルやインパクトドライバなどで広く用いられている径と同じにすれば、様々な回転式の動力工具に取り付けが可能となるので使い勝手が良い。
【0030】
ボディ部2は、取付部8に対してその径が大きくなっており、ボディ部2の内部には空洞が形成され、略円筒状に形成される。取付部8とボディ部2の接続部分には、ボディ部2の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部9が形成される。図1の例では、ボディ部2に固着される硬質切れ刃3の直径dが18mmであり、ツバ部9の直径は22mmである。ツバ部9は、穿孔作業中に発生する粉塵がインパクト工具などの動力工具や作業者側に直接飛散するのを低減させる役目を果たすものである。硬質切れ刃3で発生する粉塵は、ボディ部2の外縁に沿って後端側に移動することが多いが、それらがツバ部9に当たることにより径方向に曲げられて、飛散される。これは、切削により排出された粉塵をらせんによりドリルビット1の外縁に沿って後端側に誘導するタイプの乾式のドリルビットにおいて特に有効である。また、ツバ部9は、図10に示すようインパクトドライバ等のビット挿入孔を有するビット保持部を備えた動力工具に取り付けた場合に、ビット保持部73の外径74よりも大径であって、さらにボディ部2よりも大径に形成されているので、ビット挿入孔への粉塵の侵入を抑制することができる。本発明のドリルビット1によれば、駆動用工具71に取付可能な六角軸と、粉塵の飛散を抑える構造とを備えていることで、作業性良く穿孔作業を行うことが可能となる。
【0031】
ボディ部2からツバ部9への接続部分9bは、所定の曲率半径R1を有するように滑らかにアール形状を有するように形成される。同様に、取付部8からツバ部9への接続部分にも、所定の曲率半径R2を有するように滑らかにアール形状が形成される。このように曲率半径R1、R2を形成することにより接続部分の強度を向上させることができるが、さらに接続部分9bの曲率半径R1によって、硬質切れ刃3で発生した粉塵が効果的に径方向に曲げられる。取付部8、ツバ部9及びボディ部2は、例えば合金等の一体成形により製造すると強度的にも好ましく、これら曲率半径R1、R2は、例えば一体成型品の削り出し加工によって製造される。尚、本発明は一体構成だけに限られずに、製造上の理由から別体式で形成しても良い。
【0032】
ボディ部2の直径は、被削材にあける穴の大きさによって決定される。本実施例では、コンクリート、モルタル、タイル等の穿孔用に好適な直径20mmのドリルビットの例で示したが、ドリルビット1の径はこれだけに限られずに、直径10mm程度から直径100mm以上の大径のものまで、様々な直径のボディ部2を有するドリルビット1が提供される。穿孔作業においてドリルビット1は低速回転で回転されると好ましく、例えば毎分1,000〜3、000回転程度で回転されると良い。
【0033】
ボディ部2の下端の開口部2aには、被削材に対する穿孔を行うための硬質切れ刃3が設けられる。硬質切れ刃3は、例えば砥粒をボディ部2の開口部2aに単層に並べて溶着させた単層構造からなるものである。この砥材は、単層溶着を繰り返して多層構造に形成しても良いし、ダイヤモンド砥粒やCBN砥粒等の砥粒をメタルボンドあるいはレジンボンドのようなバインダーによって固めたものでも良い。ダイヤモンド砥粒を多層で溶着して硬質切れ刃3を構成すれば、長寿命化を図ることができる。尚、硬質切れ刃3の製造方法あるいは固定方法は、砥粒をバインダーによって固着させる方法だけに限られずに、その他の方法で実現しても良い。本実施例では、ドリルビット1による穿孔作業において、水や加工液等の冷却剤を用いない、いわゆる乾式タイプの例を示しているが、本実施例のドリルビット1を湿式タイプとして用いても良い。
【0034】
本実施例ではボディ部2の側面に、らせん状の突起4が形成される。らせん状の突起4は、ボディ部2と一体で構成されると好ましい。らせんの向きは、通常のドリル刃と同じように回転方向に対して切削粉を後端側に引き出すような回転方向とすれば良い。突起4の製造方法は、規定の厚さよりも肉厚の円筒形のボディ部2から、らせん状に溝7の部分を削り出すことによって突起4を構成するようにすれば強度的に好ましい。尚、突起4の外径は、開口部2aの外径より外側に位置し、開口部2aに設けられる硬質切れ刃3の外径(切削径)より内側に位置する。また、開口部2aは、切削粉のはけやドリルビット1の抜けを良くするため、径方向外側に突出させて段差を形成してもよく、その場合、段差の外径はボディ部2より外側に位置し、突起4より内側に位置する。
【0035】
ボディ部2の側方にはコア排出孔5が形成される。コア排出孔5はボディ部2の内部に貯まったコアを外部に排出するために形成されたもので、内部空間と外部を貫通させる横穴である。コア排出孔5は、ボディ部2の内部空間の内後端側(上側)に配置すると良い。コア排出孔5の形状は比較的任意であり、内部空間にたまったコアを効果的に外部に排出できるように、ある程度の大きさを有することが好ましい。本実施例では、側面から見たとき(図1にように見た際)に、コア排出孔5が長方形の上下辺に、半円を接続したような長円形状とすることが好ましい。また、コア排出孔の幅については、切削時に内部空間に溜まるコアが切れ刃3の内径より若干小さい径を有して溜まることから、切れ刃3の内径と同程度かもしくは若干大きい程度確保されていることが好ましい。このコア排出孔5の形状を説明した図が図3である。図3は、コア排出孔5を側面から見た形状を示す図であり、本図ではコア排出孔5の内側のエッジ部分の形状を示している。コア排出孔5は、領域bにて示される長方形の短辺となる上下辺に、領域aとcからなる半円を組み合わせたような長円形状とする。
【0036】
このようなコア排出孔5の形状とすると、コア排出孔5の内側のエッジは、直線部d2、d3と、円弧部d1、d4により構成されることになる。また、長方形の上下辺と半円の接続点、つまり直線部と曲線部の接続点(以下、「変曲点」と呼ぶ)を5a、5bで示す。発明者らの実験によれば、長円状のコア排出孔5を形成したドリルビット1では、穿孔作業の際に変曲点5aと5bに最も大きいねじり応力を受けることになり、過荷重試験を行うと変曲点5aと5b付近から亀裂等が入って破損することが多かった。そこで本実施例では、強度的に弱くなりやすい変曲点5aと5b付近が、肉厚が厚くなる突起4の領域内に位置するように配置することによって、ドリルビット1の曲げ強度を向上させるようにした。本実施例では、コア排出孔5の弱い部分が突起4内に位置するようにしたが、変曲点5a、5bだけでなくコア排出孔5の最前端(最下位点)と最後端(最上位点)の両方、または、片方が突起4内に位置するように配置しても良い。
【0037】
図2は本発明の実施例に係るドリルビット1の先端部付近の底面図である。硬質切れ刃3は、円形の開口部2a(図1参照)に沿って内周側から外周側に連続して配置され、下から見た形状が略扇状となるものである。円周方向には4箇所の空隙を設けるために、90度間隔で切り欠き2bが形成される。このように、硬質切れ刃3を下から見た際に略1/4周の扇状の形状で4分割して形成し、円周方向に1箇所以上の間隙を有するように構成したので、穿孔された被削材から発生する細かい粉塵が切り欠き2bによって効果的に排出され、穿孔効率の向上を図ることができる。また、突起4の下端4aは切り欠き2bの近傍に位置し、排出された粉塵が突起4に沿って移動し易くなっている。
【0038】
図4はコア排出孔5を形成する前のドリルビット1の断面図である。ボディ部2は円筒状の形状をしており、ボディ部2と突起4は一体に構成される。突起4は、図1に示したようにボディ部2の外周に沿って下端4aから上端4bまでらせん状に連続して延びる。その製造方法は、均一肉厚の円筒状のボディ部2を準備し、最初に切削加工によってらせん状に連続した溝7を形成する。らせん状の突起4の軸方向幅w1と溝7の軸方向幅w2の比は、本実施例では7:2位である。しかしながらこれらの幅w1、w2の大きさは任意であり、特に溝7の軸方向幅w2は、切削対象から生ずる切削粉の粒子の量や大きさ等を考慮してその幅の大きさ、溝7の半径方向の深さを決めれば良い。次に、円筒形エンドミル28を回転させながら矢印23の方向にボディ部2を移動させて穴を開ける。この穴あけ加工中の状態で、開けている最中に、円筒形エンドミル28を横方向、即ち図3に示したような長円形状の輪郭に沿って移動させることによって、ボディ部2の側面を切削してコア排出孔5を穿孔する。
【0039】
次に、図5に示すように異なる径の円筒形エンドミルを準備してコア排出孔5の面取り加工をする。これは、円筒形エンドミルの長手方向と垂直な断面がボディ部2の軸方向と直交するように配置させ、円筒形エンドミルを回転させながら矢印23の方向に移動させてコア排出孔5部分を切削することにより行う。円筒形エンドミルの断面が21aの位置から矢印24の方向に21bの位置まで移動させることによって、コア排出孔5の開口部には概ね平坦な面が形成される。この結果、コア排出孔5のエッジ面は移動する円筒形エンドミルの輪郭で決定され、図5の断面位置から見た場合に、上端及び下端近傍は曲線状の輪郭25a、25cとなり、中央部付近は直線状の輪郭25bになる。
【0040】
図6は、図1のA−A部の断面を示す図である。図4から理解できるように溝7を形成したことによってボディ部2の一部分の肉厚TH2は、突起4の部分の肉厚TH1よりも薄くなる。従来のコア排出孔5を形成しないボディ部2の肉厚は、全周に渡りTH2程度であった。しかしながら、本実施例においては、らせん状の突起4を形成して突起4の部分の肉厚を厚くすることによってボディ部2の強度を向上させることができた。さらに、コア排出孔5とらせん状の突起4との配置関係を調整することにより、コア排出孔5を開けたことによる強度低下が少なくなるように構成した。
【0041】
本実施例では、先述のように円筒形エンドミルによる加工の前に、円筒形エンドミル28を矢印29の方向に挿入して、コア排出孔5を形成している。円筒形エンドミル28による加工により切削面26が形成される。その後、図5にて説明した円筒形エンドミルによる加工により、切削面25のような概ね平坦な面が形成される。このように円筒形エンドミルによる加工によってコア排出孔5の開口部は、切削面25と切削面26によって開口縁が90度に形成される。このように、コア排出孔5の開口後の追加工によって開口縁が断面鋭角とならないようにしたことで、開口縁への応力集中を緩和するという効果を有する。
【0042】
以上説明したように本実施例によれば、円筒状の基板(ボディ部2)の開口先端部に設けられた硬質切れ刃3がダイヤモンド砥粒を溶着により固着したので、ダイヤモンド砥粒の突き出しが良好で切れ味が良く、ダイヤモンド砥粒の保持力に優れ、寿命の長いドリルビット1を実現できる。また、ボディ部2の側面にコア排出孔5を設けたので、内部に滞留するコアを効果的に外部に排出することができる。さらに、ボディ部2の外周面の、コア排出孔5とオーバーラップする領域に、らせん状の突起4を設けて補強したので、コア排出孔部分の強度を高め、ねじれ破損の恐れがほとんど無いドリルビットを提供できる。
【実施例2】
【0043】
次に図7を用いて本願発明の第2の実施例を説明する。第1の実施例と同じ機能の部分は同じ参照符号を付しており、繰り返しの説明は省略する。第2の実施例において第1の実施例と異なる点は、らせん状の突起34の幅と溝37の幅である。本実施例では溝37の幅が大きくなるように構成して、大きめの切削粉も効果的に排出されるようにした。例えば、突起34の幅は3.6mmであり、溝37の幅は5.4mmであり、溝37の深さは0.3mm程度である。
【0044】
突起34の下端部34aは第1の実施例と同様であり、ドリルビット31の最上端と下端部34aの間には所定の幅w3を有し、この幅(距離)w3の部分は円周方向に連続した径の細い部分(=溝部分)となっている。一方、溝34の上端部34bはコア排出孔35の開口に接するように配置した。またボディ部32の上端付近であってツバ部9と接する部分には、円周方向に連続した肉厚部36が形成される。肉厚部36と突起34の外径は同じである。この肉厚部36を形成するのは、溝37の削りだし加工上の便宜から形成されるものであるが、コア排出孔35の変曲点35aだけでなく、コア排出孔35の上端付近まで肉厚部36内に配置されるので、コア排出孔35を形成したことによる強度低下を抑える役割を果たす。尚、コア排出孔35の変曲点35bを突起34内に配置するのは第1の実施例と同様である。
【0045】
以上、第2の実施例によれば、突起34の幅に対して溝37の幅を大きくしたので、らせん状の突起34によって切削粉の排出効果が高くなる。また、第1の実施例に比べて突起34の表面積が減少するので、穿孔対象との摩擦を低下させることができ、少ない駆動力で穿孔作業を行うことができる。
【実施例3】
【0046】
次に図8を用いて本発明の第3の実施例を説明する。第1及び2の実施例と同じ機能の部分は同じ参照符号を付しており繰り返しの説明は省略する。第3の実施例において第1の実施例と異なる点は、ボディ部42の外径である。本実施例では取付部8よりもやや太い程度、即ちボディ部42の外径が10mm程度の小さい径の例を示している。本実施例においても、長円状のコア排出孔45が形成され、長円の幅(円周方向の間隔)を切れ刃3の内径と同じか大きく形成すると共に、軸方向(上下方向)の長さを幅に比べて大きめに確保して更に良好なコアの排出効果を得ている。本実施例においてもコア排出孔45の変曲点45a、45bが、らせん状の突起44内に位置するように構成され、そのために突起44と溝47の幅が決定される。本実施例では突起44と溝47の幅がほぼ等しいように構成される。
【0047】
以上、第3の実施例によればボディ部42の外径が10mm程度の小さい径であっても本発明が適用でき、インパクトドライバ等の駆動用の電動工具で容易に用いることができるドリルビットを実現できる。
【実施例4】
【0048】
次に図9を用いて本発明の第4の実施例を説明する。図9は第4の実施例のドリルビット51を示す断面図である。第1の実施例と同じ機能の部分は同じ参照符号を付しており、繰り返しの説明は省略する。第4の実施例において、第1の実施例と異なる点は、硬質切れ刃53が、円筒状のボディ部52の軸方向に伸びる概ね円筒状の補強材56に溶着される点である。補強材56を設けることによって補強材に沿ったダイヤモンド砥粒の積層を容易に行うことができ、また、刃部の強度を高めることができる。
【0049】
軸方向に伸びる補強材56の厚さは、硬質切れ刃53内のダイヤモンド砥粒の平均粒径の概ね1倍以下とすることが好ましい。また、補強材56は、ボディ部52に溶着固定されると好ましい。補強材56の材質は金属製であり、ある程度の強度を有すると共に被穿孔材と接した際には摩擦により容易に摩耗するように、例えば主材質として銅(Cu)又は銅系合金により構成する。この結果、補強材56が穴あけ時に切削抵抗を増加させずに磨耗して減り、下からのダイヤモンド砥粒の自生発刃を可能とする。このように硬質切れ刃53は、軸方向に伸びる概ね円筒状の補強材56に溶着されることにより、補強材に沿ったダイヤモンド砥粒の積層が容易に行うことができ、刃部の強度を高めることができる。尚、ダイヤモンド砥粒の積層は単層だけでなく多層で形成すれば、砥石部分の寿命を更に長くすることができる。
【0050】
第4の実施例によれば硬質切れ刃53の突き出し部分が良好で切れ味が良く、ダイヤモンド砥粒の保持力に優れ、寿命の長いドリルビット51を提供できる。また、円筒状基板軸方向に伸びる補強材が、円筒状基板に溶着固定されるため薄板等を補強材として利用でき、加工の手間が減り安価なドリルビットを提供できる。さらに、補強剤の厚さが薄いことにより、開口先端部の刃部の半径方向厚さを薄くでき、切削体積が少なく切削抵抗が小さくすることにより、回転のみで駆動する回転数が概ね3000rpm以下の電動工具に使用できるドリルビットを実現できる。
【0051】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、ボディ部に設けられる突起は、開口部近傍からコア排出孔とオーバーラップする領域まで円周方向に連続して設けられるが、粉塵の排出効果を考えて必ずしも連続的でなくても断続的にでも良い。
【符号の説明】
【0052】
1 ドリルビット 2 ボディ部 2a 開口部 2b 切り欠き
3 硬質切れ刃 4 突起 4a (突起の)下端
4b (突起の)上端 5 コア排出孔 5a、5b 変曲点
7 溝 8 取付部 8a 窪み部 9 ツバ部
9a、9b (ツバ部の)接続部分 24 突起 25 切削面
25a、25b、25c 輪郭 26 切削面 28 円筒形エンドミル
31 ドリルビット 32 ボディ部 34 突起
34a 下端部 34b 上端部 35 コア排出孔
35a、35b 変曲点 36 肉厚部 37 溝
41 ドリルビット 44 突起 45 コア排出孔
45a、45b 変曲点 47 溝
51 ドリルビット 52 ボディ部 53 硬質切れ刃
56 補強材
71 駆動用工具 72 六角取付口 73 ビット保持部
101 ドリルビット 102 ボディ部 102a 開口部
103 硬質切れ刃
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状のボディ部を有し、該ボディ部の先端開口部に硬質切れ刃が設けられ、側面にコア排出孔を有するドリルビットにおいて、
前記ボディ部の外周面であって、前記コア排出孔と軸方向にオーバーラップする領域にらせん状の突起を設けたことを特徴とするドリルビット。
【請求項2】
前記突起は、前記開口部近傍から前記コア排出孔と軸方向にオーバーラップする領域まで円周方向に設けられることを特徴とする請求項1に記載のドリルビット。
【請求項3】
前記突起は、前記開口部近傍から前記コア排出孔よりも後端側の領域まで設けられることを特徴とする請求項2に記載のドリルビット。
【請求項4】
前記コア排出孔は、軸方向に延びる長円形状に形成されることを特徴とする請求項3に記載のドリルビット。
【請求項5】
前記コア排出孔は、長方形の短辺の両側に半円を接続したような長円形状であり、
前記長方形と前記半円の接続点となる変曲点付近が、前記突起内に位置するように前記コア排出孔が形成されることを特徴とする請求項4に記載のドリルビット。
【請求項6】
前記コア排出孔の開口面が、平坦になるよう縁取りされたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項7】
前記コア排出孔が、円筒状のボディ部の内部空間のうち、軸方向の後端側領域内に形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項8】
前記ボディ部の、前記らせん状の突起の下端と前記硬質切れ刃は非接続であり、前記らせん状の突起よりも下側には円周方向に等間隔に複数の切れ欠き部が形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項9】
前記ボディ部の後端閉口部に、駆動用工具に取り付けるための六角軸を一体に形成したことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項10】
前記ボディ部の後端閉口部と前記六角軸の間に、前記ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成したことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項11】
前記ツバ部は前記ボディ部に一体に形成されると共に、前記ツバ部と前記ボディ部とはアール形状によって接続されることを特徴とする請求項10に記載のドリルビット。
【請求項12】
円筒状のボディ部を有し、該ボディ部の先端開口部に硬質切れ刃が設けられ、側面にコア排出孔を有するドリルビットにおいて、
前記ボディ部の後端閉口部に、駆動用工具に取り付けるための六角軸を一体に形成すると共に、前記ボディ部の後端閉口部と前記六角軸の間に、前記ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成したことを特徴とするドリルビット。
【請求項1】
円筒状のボディ部を有し、該ボディ部の先端開口部に硬質切れ刃が設けられ、側面にコア排出孔を有するドリルビットにおいて、
前記ボディ部の外周面であって、前記コア排出孔と軸方向にオーバーラップする領域にらせん状の突起を設けたことを特徴とするドリルビット。
【請求項2】
前記突起は、前記開口部近傍から前記コア排出孔と軸方向にオーバーラップする領域まで円周方向に設けられることを特徴とする請求項1に記載のドリルビット。
【請求項3】
前記突起は、前記開口部近傍から前記コア排出孔よりも後端側の領域まで設けられることを特徴とする請求項2に記載のドリルビット。
【請求項4】
前記コア排出孔は、軸方向に延びる長円形状に形成されることを特徴とする請求項3に記載のドリルビット。
【請求項5】
前記コア排出孔は、長方形の短辺の両側に半円を接続したような長円形状であり、
前記長方形と前記半円の接続点となる変曲点付近が、前記突起内に位置するように前記コア排出孔が形成されることを特徴とする請求項4に記載のドリルビット。
【請求項6】
前記コア排出孔の開口面が、平坦になるよう縁取りされたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項7】
前記コア排出孔が、円筒状のボディ部の内部空間のうち、軸方向の後端側領域内に形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項8】
前記ボディ部の、前記らせん状の突起の下端と前記硬質切れ刃は非接続であり、前記らせん状の突起よりも下側には円周方向に等間隔に複数の切れ欠き部が形成されることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項9】
前記ボディ部の後端閉口部に、駆動用工具に取り付けるための六角軸を一体に形成したことを特徴とする請求項1から8のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項10】
前記ボディ部の後端閉口部と前記六角軸の間に、前記ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成したことを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載のドリルビット。
【請求項11】
前記ツバ部は前記ボディ部に一体に形成されると共に、前記ツバ部と前記ボディ部とはアール形状によって接続されることを特徴とする請求項10に記載のドリルビット。
【請求項12】
円筒状のボディ部を有し、該ボディ部の先端開口部に硬質切れ刃が設けられ、側面にコア排出孔を有するドリルビットにおいて、
前記ボディ部の後端閉口部に、駆動用工具に取り付けるための六角軸を一体に形成すると共に、前記ボディ部の後端閉口部と前記六角軸の間に、前記ボディ部の外径よりも大きい径を有する円盤状のツバ部を形成したことを特徴とするドリルビット。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−136530(P2011−136530A)
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−299248(P2009−299248)
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月29日(2009.12.29)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】
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