説明

ドープされたフォージャサイトシードを用いる、ドープされたペンタシル型ゼオライトの製造方法。

ドープされたペンタシル型ゼオライトの製造方法において、以下の工程:a)ケイ素源、アルミニウム源、ドープされたフォージャサイトシード及び他のタイプのシーディング用物質を含む水性前駆体混合物を製造すること、及び
b)該前駆体混合物を熱的に処理して、ドープされたペンタシル型ゼオライトを形成することを含む方法。この方法は、先行技術に比較してより短い結晶化時間でドープされたペンタシル型ゼオライトをもたらす。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はドープされたフォージャサイトシードを用いる、ドープされたペンタシル型ゼオライトの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第5,232,675号は、希土類金属(RE)ドープされたフォージャサイトシードを用いるREドープされたペンタシル型ゼオライトの製造方法を開示する。本方法は、水ガラス、アルミニウム塩、無機酸、及び水を含むゲル系中に、REドープされたフォージャサイトシードを分散させる工程、及び得られた混合物を30〜200℃の温度において12〜60時間、結晶化させることを含む。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、先行技術の方法より短い結晶化時間を要するところの、希土類金属ドープされたペンタシル型ゼオライトの製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に従う方法は、以下の工程:
a)ケイ素源、アルミニウム源、及びドープされたフォージャサイトシード、及び他のタイプのシーディング用物質を含む水性前駆体混合物を製造すること、及び
b)該前駆体混合物を熱的に処理して、ドープされたペンタシル型ゼオライトを形成すること
を含む。
【0005】
本発明は、ドープされたフォージャサイトシードの使用を要求する。フォージャサイトシードの例はゼオライトX及び(超安定化された)ゼオライトYである。
【0006】
用語「ドープされたフォージャサイトシード」とは、添加剤(ドーパントともまた呼ばれる)を含むフォージャサイトシードを指す。適するドーパントは、希土類金属、例えばCe又はLa、アルカリ土類金属、例えばMg,Ca,及びBa,遷移金属、例えばZr,Mn,Fe,Ti、Cu,Ni,Zn,Mo,W,V,及びSn,アクチニド、貴金属例えばPt及びPd,ガリウム、ホウ素、及び/又はリンを含む化合物を含む。適する化合物は、上の元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、ヒドロキシ炭酸塩、塩化物、硝酸塩、硫酸塩、及びリン酸塩である。
【0007】
ドーパントは、酸化物として計算して、かつドープされたフォージャサイトシードの乾燥重量に基づいて、1〜50重量%、好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜20重量%、最も好ましくは10〜20重量%の量においてフォージャサイトシード中に存在する。ドープされたフォージャサイトシードは、例えばフォージャサイトシードのドーパントとのイオン交換、浸漬、及び固体状態交換により製造され得る。これらの手順は当業者に公知である。
【0008】
さらに、少なくとも1の他のタイプのシーディング用物質が本方法において使用される。用語「他のタイプのシーディング用物質」は、ドープされたフォージャサイトシード以外のテンプレート又はシードを指す。適する他のタイプのシーディング用物質は、ペンタシル型シード(例えばZSM−5シード、ZSM−11シード、ゼオライトベータシード等)、ZSM−5合成において一般的に使用される任意の他のタイプのシード又はテンプレート、例えば有機性の誘導するテンプレート、例えばテトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAOH),又はテトラプロピルアンモニウムブロマイド(TPABr)を含む。そのようなテンプレート含有ゾルの例は、0.1〜10重量%のテトラプロピルアンモニウムブロマイドを含むSi−Alゾルである。
【0009】
所望されるならば、他のタイプのシーディング用物質はドープされていてもよい。適するドーパントは、希土類金属、例えばCe又はLa、アルカリ土類金属、例えばMg,Ca,及びBa,遷移金属、例えばMn,Fe,Ti、Zr,Cu,Ni,Zn,Mo,W,V,及びSn,アクチニド、貴金属例えばPt及びPd,ガリウム、ホウ素、及び/又はリンを含む化合物を含む。
【0010】
他のタイプのシーディング用物質中に存在する任意的なドーパントは、ドープされたフォージャサイトシード中に存在するドーパントと同じであるか又は異なっていることができる。
【0011】
本発明に従う方法から得られるペンタシル型ゼオライトは好ましくは25〜90のSiO/Al比(SAR)を有する。ペンタシル型ゼオライトの典型的な例はZSM型ゼオライト、例えばZSM−5,ZSM−11,ZSM−12,ZSM−22,ZSM−23,ZSM−35、ゼオライトベータ、及びゼオライトホウ素ベータである。ドープされたペンタシル型ゼオライトは、酸化物として計算して、かつドープされたゼオライトの乾燥重量に基づいて、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.1〜3重量%、最も好ましくは0.5〜2.5重量%のドーパントを含む。
【0012】
本発明に従う方法の第1段階は、ケイ素源、アルミニウム源、ドープされたフォージャサイトシード、及び少なくとも1の他のタイプのシーディング用物質を含む水性前駆体混合物の製造を含む。
【0013】
適するアルミニウム源は、アルミニウム塩、例えばAl(SO、AlCl、AlPO、Al(HPO、及びAl(HPO、及び水に不溶のアルミニウム化合物、例えばアルミニウムトリハイドレート(Al(OH))、例えばギブサイト及びボーキサイト鉱石濃縮物(BOC)(Bauxite Ore Concentrate)、熱的に処理されたアルミニウムトリハイドレート、例えば瞬間焼成されたアルミニウムトリハイドレート、(擬似)ベーマイト、アルミニウムクロロヒドロール、アルミニウムニトロヒドロールを含む。これらのアルミニウム源の1以上の混合物もまた使用され得る。
【0014】
あるいは、ドープされたアルミニウム源が使用され得る。そのようなドープされたアルミウム源の例はドープされた(擬似)ベーマイト、及びドープされたアルミニウムトリハイドレートである。
【0015】
ドープされたアルミニウム源は、ドーパントの存在下でのアルミニウム源の製造、アルミニウム源のドーパントによる浸漬、又はアルミニウム源のドーパントによるイオン交換により製造され得る。
【0016】
ドープされた(擬似)ベーマイトは、例えば、ドーパントの存在下でのアルミニウムアルコキシドの加水分解、ドーパントの存在下でのアルミニウム塩の加水分解及び沈殿、又はドーパントの存在下での(熱的に処理された)アルミニウムトリハイドレート、アモルファスゲルアルミナ、又はより結晶性の低い(擬似)ベーマイトのスラリーのエージングにより製造され得る。ドープされた(擬似)ベーマイトの製造に関するさらなる情報については、国際特許出願国際公開第01/12551号、第01/12552号、及び第01/12554号を参照されたい。
【0017】
適するケイ素源は、ケイ酸ナトリウム、メタ−ケイ酸ナトリウム、安定化されたシリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸、テトラエチルオルトシリケート、フュームドシリカ、沈殿法シリカ及びそれらの混合物を含む。
【0018】
ドープされたケイ素源もまた使用され得る。ドープされたケイ素源は、ドーパントの存在下でケイ素源を製造すること、ケイ素源をドーパントで浸漬すること、又はケイ素源をドーパントでイオン交換することにより得られ得る。ドープされたシリカゾルは、例えば水ガラス及び酸(例えば硫酸)からシリカゾルを製造し、ナトリウムイオンを所望されるドーパントと交換することにより得られることができる。あるいは水ガラス、酸(例えば硫酸)及びドーパントが共沈殿されて、金属ドープされたシリカゾルを形成する。
【0019】
アルミニウム源及び/又はケイ素源に適するドーパントは、希土類金属例えばCe及びLa,アルカリ土類金属例えばMg、Ca,及びBa、遷移金属例えばZr,Mn,Fe,Ti,Zr,Cu,Ni,Zn,Mo,W,V,及びSn、アクチニド、貴金属例えばPt及びPd,ガリウム、ホウ素、及び/又はリンを含む化合物を含む。
【0020】
シリコン及び/又はアルミニウム源中に存在する任意的なドーパント及びドープされたフォージャサイト系シード中のドーパントは同じであるか又は異なっていることができる。
【0021】
前駆体混合物は、前駆体混合物の乾燥重量に基づいて、好ましくは0.1〜10重量%、より好ましくは0.5〜10重量%のドープされたフォージャサイトシード、及び1〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%の他のタイプのシーディング用物質を含む。
【0022】
前駆体混合物中に存在するケイ素源及びアルミニウム源の量は、得られるドープされたペンタシル型ゼオライトの所望されるSARに依存する。
【0023】
所望されるならば、いくつかの他の化合物、例えば、金属(水)酸化物、ゾル、ゲル、孔制御剤(糖、界面活性剤)、粘土、金属塩、酸、塩基等が前駆体混合物に添加され得る。
【0024】
さらに、前駆体混合物を粉砕することが可能である。
【0025】
本方法の第2の工程は、130〜200℃、好ましくは150〜180℃の範囲の温度における3〜60時間、好ましくは1〜11時間、最も好ましくは3〜8時間の前駆体混合物の熱処理を含む。この工程の間にドープされたペンタシル型ゼオライトが、結晶化により形成される。
【0026】
熱処理は1以上の反応容器において行われ得る。もし1より多いそのような容器が使用されるならば、該工程は好ましくは連続式において行われる。1より多い反応容器を使用することは、すべての成分を最初の容器に添加すること、あるいは成分の(合計量の一部の)添加を反応容器対して分割することのいずれかにより、水性前駆体混合物を製造することを可能にする。
【0027】
工程a)の前駆体混合物、又は工程b)から得られるドープされたペンタシル型ゼオライトは、成形されて成形体を形成し得る。適切な成形方法は、噴霧乾燥、ペレット化、押出(任意的に混練と併用される)、ビーズ化、又は触媒及び吸着剤の分野において使用される任意の他の慣用の成形方法又はそれらの組合せを含む。
【0028】
工程a)の前駆体混合物を成形するとき、前駆体混合物中に存在する液体の量は、行われるべき特定の成形工程に合わされるべきである。前駆体混合物中において使用される液体を部分的に除去すること及び/又は追加のあるいは他の液体を添加すること、及び/又は前駆体混合物のpHを変化させて、懸濁物をゲル化可能にし、そうして成形に適するようにすることは勧められる。種々の成形方法において一般的に使用される添加剤、例えば押出添加剤が、成形の為に使用される前駆体混合物に添加され得る。
【0029】
所望されるならば、得られるドープされたペンタシル型ゼオライトは焼成され得、任意的にイオン交換されてもよい。
【0030】
ドープされたペンタシル型ゼオライトは、例えば水素化、脱水素化、接触分解(FCC)、アルキル化反応のための触媒組成物あるいは触媒添加剤組成物において、あるいは、水素化、脱水素化、接触分解(FCC)、アルキル化反応のための触媒組成物あるいは触媒添加剤組成物として使用され得る。
【実施例】
【0031】
比較例1
2,007gの水ガラス、208gの硫酸アルミニウム、141gの98%HSO,2,466gの水、及び(酸化物として計算して)45gの、12重量%のREでドープされたY型ゼオライトシードを混合することにより、前駆体混合物が製造された。
前駆体混合物は、170℃、自己圧力(autogeneous pressure)において12時間、処理された。得られたペンタシル型ゼオライトの特徴は下の表1に示される。
この例は、Y型ゼオライトがそのままでペンタシル型ゼオライトの成核のためのシードとして作用できることを示す。
【0032】
比較例2
前駆体混合物が170℃において6時間処理されたことを除いて、比較例1が、繰り返された。結果は下の表1に示される。
この例は、これらの反応条件下で、6時間の結晶化時間は、かなりの量のペンタシル型ゼオライトの形成にとって不十分であることを示す。
【0033】
実施例3
その他の化合物に加えて、6.5gのZSM−5シードが前駆体混合物に添加されたことを除いて、比較例2が繰り返された。得られたペンタシル型ゼオライトの特徴もまた表1に示される。この例は、他のタイプのシードの添加が結晶化を加速することを明らかに示す。従って、このシードの存在下で、6時間の結晶化時間は十分である。
【表1】

%ZSM−5は、銅Kアルファ線を用いるX線回折により測定された、試料の相対結晶度を指す。試料の、20〜25°の2θ範囲内の反射の合計正味の積算された強度が測定され、単斜晶系のZSM−5のものと比較された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドープされたペンタシル型ゼオライトの製造方法において、以下の工程:
a)ケイ素源、アルミニウム源、ドープされたフォージャサイトシード及び他のタイプのシーディング用物質を含む水性前駆体混合物を製造すること、及び
b)該前駆体混合物を熱的に処理して、ドープされたペンタシル型ゼオライトを形成すること
を含む方法。
【請求項2】
ドープされたペンタシル型ゼオライトがドープされたZSM−5であるところの、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
他のタイプのシーディング用物質がペンタシル型シードを含むところの、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
他のタイプのシーディング用物質が有機性の誘導するテンプレートを含むゾル又はゲルであるところの、請求項1又は2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
フォージャサイトシードが、Ce,La,Mn,Fe,Ti,Zr,Cu,Ni,Zn,Mo,W,V,Sn,Pt,Pd、Ga,B,及びPからなる群から選択されたドーパントでドープされているところの、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
ケイ素源が、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、安定化されたシリカゾル、シリカゲル、ポリケイ酸、テトラエチルオルトシリケート、フュームドシリカ、沈殿法シリカ、及びそれらの混合物からなる群から選択されるところの、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
アルミニウム源が、Al(SO、AlCl、AlPO、Al(HPO、Al(HPO、アルミニウムトリハイドレート(Al(OH))、熱的に処理されたアルミニウムトリハイドレート、(擬似)ベーマイト、アルミニウムクロロヒドロール、アルミニウムニトロヒドロール、及びそれらの混合物からなる群から選択されるところの、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)が、150〜180℃の範囲の温度において行われるところの、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)が、3〜8時間行われるところの、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
成形工程が、工程a)及び工程b)の間に行われるところの、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−516017(P2006−516017A)
【公表日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−532095(P2004−532095)
【出願日】平成15年8月19日(2003.8.19)
【国際出願番号】PCT/EP2003/009184
【国際公開番号】WO2004/020336
【国際公開日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(505002495)アルベマーレ ネザーランズ ビー.ブイ. (19)
【Fターム(参考)】