説明

ナット並べ装置

【課題】多軸仮締め工具の各ソケットに対応した位置に、効率よくナットを配置することができるナット並べ装置を提供する。
【解決手段】ナット並べ装置30は、ナット22を配置するための部位であって、略リング状の形状を有するナット配置部31と、ナット配置部31に対してナット22を供給するための部位であって、ナット配置部31の内側に配置するナット供給部32と、を備え、ナット供給部32は、ナット22を一時的に留め置くための部位である留置部37aを備え、留置部37aの底面部たる底板部41を、水平方向に対して傾斜させた面により構成するとともに、該底板部41の傾斜方向を任意の方向に変更可能に構成して、底板部41の傾斜方向を任意の方向に変更しつつ、留置部37aに留め置かれたナット22を底板部41の傾斜方向に沿って滑落させることによって、ナット配置部31の任意の位置にナット22を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多軸仮締め工具にナットを配置するための装置であるナット並べ装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのホイールを、ハブに対して複数のナットを用いて締結する場合のように、組み付け対象たるワークを被組み付け対象たる部位に対して複数の螺合部材(ボルト・ナット等)を用いて固定する場合がある。
例えば、ハブに対してナットを用いてホイールを固定する作業において、ナットを締め付けるときには、まず作業者がナットを一つずつ手作業でハブに植設されたスタッドボルトに数山だけ螺合させておき、その後、トルクレンチ等の工具を用いて、所定のトルクでナットを本締めするのが一般的である。
尚、以後本説明では、ナット・ボルト等の螺合部材を、本締めの前に数山だけスタッドボルト・ナット等の被螺合部材に螺合させておくことを「仮締め」と呼ぶものとする。
【0003】
しかしながら、作業者がナットを一つずつ手作業で仮締めしていると、時間と手間が掛かるため、仮締め作業を効率的に行うべく、複数のナットを同時に仮締めすることができる工具(所謂、多軸仮締め工具)が開発されるに至っており、例えば、以下に示す特許文献1にその技術が開示され公知となっている。
尚、ここで言う「多軸仮締め工具」は、複数の螺合部材(ボルト・ナット等)を同時に「仮締め」する用途に適した工具であるが、その用途は螺合部材の仮締めに限定されるものではなく、例えば、トルク管理を行う必要性が低いような場合には、複数の螺合部材を同時に本締めする用途に用いることも可能であるし、あるいは、締結してある複数の螺合部材を同時に緩めるための用途に用いること等も可能である。
【0004】
特許文献1に示された従来技術に係る多軸仮締め工具は、駆動手段によって回転する駆動歯車と、複数の従動歯車と、駆動歯車および複数の従動歯車に巻き掛けられて、駆動歯車の回転を複数の従動歯車に伝達するための歯付ベルトと、複数の従動歯車に連結されるとともに、ボルトまたはナットに係合する複数のソケットと、を有する構成としている。前記駆動歯車は多軸仮締め工具の本体部の中央に配置され、前記複数の従動歯車およびソケットは前記本体部における前記駆動歯車の周囲に配置されている。
このような構成により、駆動歯車に回転力を入力することによって、複数のソケットを同時に回転駆動することができ、複数のボルトまたはナット等を同時に仮締めすることが可能になる。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された従来技術に係る多軸仮締め工具を用いてナットの仮締めを行う場合には、複数の各ソケットにナットを予め配置しておかなければならないが、従来は、各ソケットに対するナットの配置作業を作業者が手作業で行っていたため、仮締め作業に時間と手間が掛かっていた。
【0006】
また従来、ナット等の姿勢を揃えて、所望する位置に供給するための装置が開発されるに至っており、例えば、以下に示す特許文献2にその技術が開示され公知となっている。
特許文献2に開示された従来技術に係るナット等の供給装置(薄板状ワーク分離搬出装置)では、ホッパに傾斜する底面を設け、その最下部に隣接して昇降可能に分離シュートを設けて、該分離シュートを昇降させることにより、一個の薄板状ワークを係止して分離シュートおよび固定シュートを経て、自重によりホッパから順次移送する構成としている。
このようなナット等の供給装置は、簡単な構成で、薄板状ワークを一個ずつ分離して搬出することができ、しかも、ホッパを振動させたり、薄板状ワークをスクレーパにより掻いたりすることがないので、振動等の騒音が抑制されて、作業環境の改善が図れるとともに、薄板状ワークの損傷を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−205274号公報
【特許文献2】特開2007−55787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に開示された供給装置のように、従来技術に係るナット等の供給装置では、多軸仮締め工具が備える各ソケットに対応した位置にナットを配置する用途に用いることが困難であった。
そして、各ソケットに対応した位置にナットを効率よく配置することができる装置が存在していなかったため、従来多軸仮締め工具を使用する場合には、各ソケットに対するナットの配置作業を作業者が手作業で行っており、仮締め作業に時間と手間が掛かっていた。
【0009】
本発明は、斯かる現状の課題を鑑みてなされたものであり、多軸仮締め工具の各ソケットに対応した位置に、効率よくナットを配置することができるナット並べ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、ナットを配置するための部位であって、略リング状の形状を有するナット配置部と、前記ナット配置部に対して前記ナットを供給するための部位であって、前記ナット配置部の内側に配置するナット供給部と、を備え、前記ナット供給部は、前記ナットを一時的に留め置くための部位である留置部を備え、前記留置部の底面部を、水平方向に対して傾斜させた面により構成するとともに、該底面部の傾斜方向を任意の半径方向に変更可能に構成して、前記底面部の傾斜方向を任意の半径方向に変更しつつ、前記留置部に留め置かれた前記ナットを前記底面部の傾斜方向に沿って滑落させることによって、前記ナット配置部の任意の位置に前記ナットを供給するものである。
【0012】
請求項2においては、前記留置部は、鉛直方向に対して傾斜した略円筒状の部位であって、下側の端部を前記底面部によって塞ぐ筒状部と、前記筒状部における前記下側の端部において形成した、前記留置部から前記ナットを排出するための開口部たるナット出口と、前記筒状部の外側から前記ナット配置部の間際まで連続する、水平方向に対して傾斜させた面である略リング状の傾斜部と、を備え、前記底面部の傾斜方向を任意の半径方向に変更しつつ、前記留置部に留め置かれた前記ナットを前記底面部の傾斜方向に沿って滑落させることによって、前記ナット出口から前記傾斜部に向けて、前記留置部に留め置かれた前記ナットを、任意の半径方向に排出するとともに、さらに、前記ナットを前記傾斜部において滑落させて、前記ナット配置部の任意の位置に前記ナットを供給するものである。
【0013】
請求項3においては、前記ナット配置部は、前記ナットを所定の位置に配置するために、該所定の位置に対応する配置で形成された前記ナットを収容可能な複数の凹部を有するものである。
【0014】
請求項4においては、前記ナット供給部は、前記筒状部が鉛直方向に設定した軸回りに回転可能に構成され、前記筒状部の回転に伴って、前記底面部の傾斜方向を任意の方向に変更するものである。
【0015】
請求項5においては、前記底面部は、ユニバーサルジョイントを介して支持されることによって、傾斜方向を任意の方向に変更可能に構成されるものである。
【0016】
請求項6においては、前記底面部には、前記留置部に留め置かれた前記ナットを係止する突起部と、前記留置部に留め置かれた前記ナットを落ち込ませる凹部と、を備えるものである。
【0017】
請求項7においては、前記留置部は、前記ナット出口において規制部を備え、前記規制部は、所定の姿勢の前記ナットのみを通過させるものである。
【0018】
請求項8においては、前記ナット供給部は、前記傾斜部の外周縁部において、前記ナットを押圧するための第一のピンを備えるものである。
【0019】
請求項9においては、前記ナット供給部は、前記傾斜部の外周縁部に比して半径方向内側の位置において、前記ナットを押圧するための第二のピンを備えるものである。
【0020】
請求項10においては、前記傾斜部には、前記ナット配置部から支持される、該傾斜部の回転に伴い回転しない部位であって、前記傾斜部に存在する前記ナットと当接して、前記ナットの姿勢を修正するための部位である姿勢修正部を備えるものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0022】
請求項1においては、多軸仮締め工具のソケット部に対応させてナットを配置することができるナット並べ装置を簡易な構成で実現することができる。
【0023】
請求項2においては、多軸仮締め工具のソケット部に対応させてナットを配置することができるナット並べ装置を簡易な構成で実現することができる。
【0024】
請求項3においては、ナットを多軸仮締め工具のソケット部に対応させた位置に確実に配置することができる。
【0025】
請求項4においては、駆動源の個数が少ない簡易な構成としつつ、ナットを拡散させることができる。
【0026】
請求項5においては、駆動源の個数が少ない簡易な構成としつつ、ナットを拡散させることができる。
【0027】
請求項6においては、ナットを、各配置位置に配置するのに適した姿勢に確実に修正することができる。
【0028】
請求項7においては、各配置位置に対して、ナットを確実に配置することができる。
【0029】
請求項8においては、ナットを、各配置位置に確実に配置することができる。
【0030】
請求項9においては、各配置位置に対して、ナットを確実に送り込むことができる。
【0031】
請求項10においては、各配置位置に対して、ナットを確実に送り込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施形態に係る多軸仮締め工具の適用対象となるアッシーおよびワークを示す模式図、(a)アッシーおよびワークの組み付け状態を示す斜視模式図、(b)ワークの周囲における螺合部材たるナットと被螺合部材たるスタッドボルトの配置を示す部分斜視模式図。
【図2】本発明の一実施形態に係る多軸仮締め工具の全体構成を示す平面模式図。
【図3】本発明の一実施形態に係る多軸仮締め工具を示す側面断面模式図。
【図4】多軸仮締め工具を構成する本体部を示す分解斜視模式図。
【図5】多軸仮締め工具を構成するソケット部を示す側面断面模式図。
【図6】ソケット部に対するナットの装填状況を示す側面部分断面模式図。
【図7】ソケット部を構成する回転ローラを示す部分側面模式図。
【図8】本発明の一実施形態に係るナット並べ装置の全体構成を示す斜視模式図。
【図9】本発明の一実施形態に係るナット並べ装置の全体構成を示す側面断面模式図。
【図10】本発明の一実施形態に係るナット並べ装置における並べ位置の設定状況を示す斜視模式図。
【図11】ナット配置部を示す模式図、(a)ナット配置部を示す部分断面模式図、(b)ナット配置部を示す部分平面図。
【図12】本発明の一実施形態に係るナット並べ装置を示す平面模式図。
【図13】ナット供給部を示す側面断面模式図。
【図14】底板部を示す側面模式図。
【図15】別実施形態に係るナット配置部を示す模式図。
【図16】別実施形態に係るナット並べ装置を示す模式図。
【図17】底板部の掻き部によるナットの転動状況を示す模式図。
【図18】底板部の溝部によるナットの転動状況を示す模式図、(a)転動状況を示す側面断面模式図、(b)溝部の形成幅を説明する図。
【図19】留置部を示す模式図、(a)留置部に備えられる規制部を示す模式図、(b)留置部に備えられる段差部を示す模式図。
【図20】掻き上げピンによるナットの変位状況を示す模式図、(a)掻き上げ前の状況を示す模式図、(b)掻き上げ後の状況を示す模式図。
【図21】傾斜面によるナットの変位状況を示す模式図、(a)傾斜面に当接する前の状況を示す模式図、(b)傾斜面に当接した後の状況を示す模式図。
【図22】姿勢修正部を示す模式図、(a)ナットが姿勢修正部に当接する前の状況を示す模式図、(b)ナットが傾斜面に当接した後の状況を示す模式図。
【図23】姿勢修正部を示す模式図、(a)ナットが姿勢修正部に当接する前の状況を示す模式図、(b)ナットが傾斜面に当接した後の状況を示す模式図。
【図24】ナット供給部を用いたパーツフィーダーを示す模式図。
【図25】ナット並べ装置を用いた多軸仮締め装置に対するナットの装填状況(多軸仮締め装置を配置した状態)を示す模式図。
【図26】ナット並べ装置を用いた多軸仮締め装置に対するナットの装填状況(ナット装填中の状態)を示す模式図。
【図27】ナット並べ装置を用いた多軸仮締め装置に対するナットの装填状況(ナット装填後の状態)を示す模式図。
【図28】別実施形態に係るナット配置部を有するナット並べ装置を用いた多軸仮締め装置に対するナットの装填状況(ナット装填中の状態)を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
次に、発明の実施の形態を説明する。
まず始めに、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置を使用してナットの配置を行う対象物たる多軸仮締め工具の全体構成について、図1〜図7を用いて説明をする。
本実施形態において例示する多軸仮締め工具は、図1(a)に示すような、リアアクスルのアッシー21を組み立てる作業において、デフキャリア(以下、ワーク20と呼ぶ)を組み付ける際に、アッシー21に備えられた複数の被螺合部材たるスタッドボルト21a・21a・・・(図1(a)(b)参照)に対して、複数の螺合部材(本実施形態では複数のナット22・22・・・)を「仮締め」するために用いられる工具である。
【0034】
図2および図3に示す如く、多軸仮締め工具1は、複数のスタッドボルト21a・21a・・・に対して、それぞれにナット22・22・・・およびワッシャ23・23・・・(図1(b)参照)を配置するとともに、各スタッドボルト21a・21a・・・に対して、各ナット22・22・・・を同時に仮締めすることができる工具であり、本体部2、複数のソケット部3・3・・・等を備えている。
尚、本説明では、図3中に示す矢印Aの方向が鉛直上方であり、各スタッドボルト21a・21a・・・が、鉛直上向きに突設するようにアッシー21を配置する状態において、多軸仮締め工具1の各ソケット部3・3・・・の軸心方向を鉛直方向に向けつつ、各スタッドボルト21a・21a・・・と各ソケット部3・3・・・の各軸心を略一致させて、多軸仮締め工具1を使用する場合を例示して説明をする。
【0035】
本体部2は、多軸仮締め工具1により各ナット22・22・・・に付与するための回転力を入力するための部位であるとともに、各ナット22・22・・・に付与する回転力の出力部たる各ソケット部3・3・・・を支持するための部位である。
そして本体部2は、多軸仮締め工具1の使用状態において、本体部2の上側に配置される略リング状の部材である支持リング4(以下、上側支持リング4と呼ぶ)と、本体部2の下側に配置される略リング状の部材である支持リング5(以下、下側支持リング5と呼ぶ)を備えており、また、各支持リング4・5の間に介装されるリング状の部材である回転リング6を備えている。
【0036】
また、図4に示す如く、各支持リング4・5は、連結プレート7・7によって、所定の距離だけ離間した状態で、互いに平行な状態を保持しつつ連結されている。
そして、各支持リング4・5は、多軸仮締め工具1の使用状態において、それぞれ略水平に保持されており、その連結された各支持リング4・5の間に回転リング6を配置する構成としている。
【0037】
このように、多軸仮締め工具1では、本体部2をリング状の各部材4・5・6を用いて構成しているため、該本体部2の中心部分に空洞を確保することができ、この本体部2の空洞にワーク20の凸部20a(図1(a)(b)参照)を挿通する(入り込ませる)ことができる。
【0038】
図3および図5に示す如く、回転リング6は、下面6aの外径寸法が上面6bの外径寸法と同一であり、下面6aの内径寸法が上面6bの内径寸法に比して小さい構成とした略リング状の部材であり、該回転リング6の内側において、上面6b側から下面6a側に向けて該回転リング6の内径が拡大するように形成された傾斜面6cを備えている。
【0039】
また、傾斜面6cには、ゴムリング8を嵌め込むための溝状の凹部たる溝部6dが形成されており、溝部6dに嵌め込まれたゴムリング8を傾斜面6cから膨出させる構成としている。
尚、本実施形態において、各支持リング4・5および回転リング6は樹脂製としており、多軸仮締め工具1の剛性を確保しつつ、多軸仮締め工具1の軽量化を図っている。
【0040】
そして回転リング6は、図4に示す如く、各支持リング4・5に介設されており、各支持リング4・5の間において保持される構成としている。
また、本発明の一実施形態に係る多軸仮締め工具1では、下側支持リング5の上面に複数のボールローラー19・19・・・を配設しており、作業者が回転リング6を回転させる際に生じる下向きの応力を、各ボールローラー19・19で確実に受けることができるため、滑らかに回転リング6を回転させることができる構成としている。
【0041】
図2および図4に示す如く、回転リング6には、作業者が該回転リング6を回転操作する際の操作部となる一対のハンドル9・9を設けている。
作業者は、ハンドル9・9を把持して、所望する回転方向にハンドル9・9を回動することによって、回転リング6を水平面内で回転させることができる。
【0042】
また、ハンドル9は、図2に示す如く、回転リング6の回転位置を固定するためのストッパー9aを備えている。ストッパー9aは、下側支持リング5を係止する図示しない係止部を備えており、ストッパー9aを把持しない状態において、前記係止部が下側支持リング5を係止することにより、回転リング6が下側支持リング5に対して相対回転不能に係止される構成としている。また、作業者がハンドル9を把持してストッパー9aを握りしめたときに前記係止部による下側支持リング5の係止状態が解除されて、回転リング6が回転可能になる構成としている。
【0043】
また、図3に示す如く、本体部2の下方には、複数の位置決めストッパー10・10・・・が突設されている。
各位置決めストッパー10・10・・・は、多軸仮締め工具1におけるアッシー21に対する当接部となる部位であり、図1(a)(b)に示すようなアッシー21に設定する基準面21bと当接可能な位置に配置されている。
そして、位置決めストッパー10は、該位置決めストッパー10の本体部2からの突設高さに応じて、本体部2とアッシー21との離間距離を一定に保持する役割を果たしている。
【0044】
また、位置決めストッパー10の先端部には、樹脂製(例えば、ウレタン等)の当接部10aを設けており、位置決めストッパー10がワーク20(例えば、フランジ部20b)と接触するときに傷等が生じないようにしている。
【0045】
ソケット部3は、本実施形態における螺合部材たるナット22と係合し、当該ナット22に回転力を付与するための部位であり、図5に示す如く、ケース11、回転軸12、回転ローラ13、係合部14、磁石15、スプリング16等を備える構成としている。
【0046】
ケース11は、回転軸12を回転可能に支持するとともに、係合部14、磁石15、スプリング16等を収容するための部材であり、上側のケース11a(以後、上側ケース11aと呼ぶ)と下側のケース11b(以後、下側ケース11bと呼ぶ)に分割される構成としている。
【0047】
ケース11は、該ケース11を下側支持リング5に対して固定するための部位であるステー11cを備えており、該ステー11cに形成される孔11dにボルト(図示せず)を挿通し、該ボルトを下側支持リング5に形成したナット孔5aに螺合させることによって、該ケース11を下側支持リング5に固定する構成としている。
また、ケース11の内径寸法は、係合部14の外径寸法に略一致する(但し、係合部14がケース11内で回転可能かつ摺動可能な程度に、若干大きい)寸法としており、該ケース11の内周面で、係合部14の外周面を包囲して、係合部14を回転可能に支持するための軸受としての機能を果たしている。
【0048】
回転軸12は、上側の部材たる上側回転軸12aと、下側の部材たる下側回転軸12bの二つの部材からなる軸部材であり、上側回転軸12aに形成された孔12cに下側回転軸12bを相対回転不能な状態で、かつ、軸方向に相対変位可能な状態で挿通することにより、軸方向に伸縮可能な軸部材を構成している。
【0049】
そして回転軸12は、図2、図3および図5に示す如く、その上端部12dを、上側支持リング4からリング形状の内側に向けて突出させて設けたステー部材4aによって、軸受部材24を介して回転可能に支持されている。また、回転軸12は、図3および図5に示す如く、その下端部12eに配置された係合部14および磁石15がケース11により回転可能に支持されることによって、該回転軸12が係合部14および磁石15を介して、ケース11により回転可能に支持されている。
これにより、回転軸12は、ケース11を介して、上側支持リング4および下側支持リング5(即ち、本体部2)によって、回転可能に支持される構成としている。
【0050】
また、下側回転軸12bは、例えばアルミ等の磁性を有さない素材(非磁性体)により構成しており、図5に示すように、該下側回転軸12bの下端部12eにおいて、凸状部たる位置決め部18を形成している。
位置決め部18には、図6に示すような傾斜面18aが形成されており、位置決め部18の頂部における直径を、ナット22に形成されたナット孔22aに比して小さくし、かつ、位置決め部18の基底部における直径を、ナット22に形成されたナット孔22aと略同一としている。このように、位置決め部18は、下方へ行くに従って縮径するテーパ面となる傾斜面18aを有した円錐台形状に形成されている。
【0051】
回転ローラ13は、回転軸12に対して回転力を入力するための部位であり、軸心方向に対して傾斜した面であるローラ面13aを有する略円錐台状のゴム製部材により構成されている。
回転ローラ13は、図7に示すように、該回転ローラ13の上下において、各ナット25・25・・・で位置決めされた略円盤状のプレート17・17で挟圧されることによって、回転軸12の上端部12dにおける所定位置に配置される構成としている。
【0052】
図5に示す回転ローラ13のローラ面13aの傾斜角度θ2は、回転リング6の傾斜面6cの傾斜角度θ1と略同一としており、ローラ面13aと傾斜面6cが略平行となる構成としている。
そして、多軸仮締め工具1では、ローラ面13aの傾斜角度θ2と、傾斜面6cの傾斜角度θ1を略一致させることによって、回転リング6に入力した回転力が、伝達ロスなく確実に回転ローラ13に伝達されるようにしている。
【0053】
図5に示す如く、係合部14は、例えば鉄等の磁性を有する素材(磁性体)からなる略円筒状の部材であり、螺合部材たるナット22と係合し、該ナット22に対して回転力を伝達する役割を果たす部材である。
そして、係合部14の使用状態において下端に位置する面には、溝部14aが形成されており、該溝部14aにおいて、ナット22を係合する構成としている。
【0054】
溝部14aの幅は、ナット22の二面幅に比して若干大きめで、かつ、ナット22の対角距離に比して小さい寸法としており、ナット22の角部二点を溝部14aで係止するようにしている。
そして、ナット22が当該溝部14aに嵌りこみやすく、かつ、一旦嵌り込んだ後には係合状態を確実に保持できる寸法を選択するようにしている。
即ち、係合部14は、溝部14aにナット22が嵌り込んだ状態で、回転軸12を中心に該係合部14が回転することによって、ナット22に対して回転力を付与することができる。
【0055】
そして、溝部14aにおいては、位置決め部18を下方に突設させており、溝部14aに嵌り込んだナット22の外周部を該溝部14aで規制するとともに、ナット22の内周部(ナット孔22a)に位置決め部18を嵌り込ませることによって、係合部14により係合したナット22を精度よく位置決めすることができる。
【0056】
また、傾斜面18aの傾斜角度θ3は、ナット22のナット孔22aに形成されているテーパ部22bの傾斜角度θ4に略一致させる構成としており、ナット孔22aに嵌り込んだ位置決め部18の傾斜面18aを、テーパ部22bに沿わせることによって、より精度良くナット22の位置決めをできる構成としている。
【0057】
また、係合部14の上部には、該係合部14に隣接させて、磁石15を配置する構成としている。
そして、磁石15によって、係合部14を磁着することによって、磁性体たる係合部14を磁化させることができ、これにより、係合部14に接触するナット22を、該係合部14によって磁着することができる。尚、係合部14による磁着力は、該係合部14の厚みを変更することによって調整することが可能である。
【0058】
また、ナット22が係合部14から離間して、位置決め部18のみと接触している状態となれば、非磁性体たる位置決め部18は、磁石15により磁化されることがないため、ナット22には磁石15の磁着力が及ばないような構成としている。
【0059】
また、ケース11の内部における磁石15の上部の空間には、弾性部材たるスプリング16を配置する構成としている。
スプリング16は、定常長さに比して短縮された状態で、ケース11と磁石15によって区切られた空間に挿入されており、磁石15および係合部14に対して、常に多軸仮締め工具1の使用状態における下向きの弾性力を付勢することができる構成としている。
これにより、多軸仮締め工具1の使用状態において、係合部14の溝部14aに嵌り込んだナット22を、該係合部14によって常に下向きに押圧することができる。
【0060】
次に、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置の全体構成について、図8〜図14を用いて説明をする。
図8および図9に示す如く、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30は、多軸仮締め工具1における各ソケット部3・3・・・(図2参照)の配置に対応した位置(以下、並べ位置と呼ぶ)に、ナット22(図1(b)参照)を並べるための装置であり、ナット配置部31、ナット供給部32、駆動部33等を備えている。
尚、ナット並べ装置30は、図9中に示す矢印Bの方向(鉛直上方)を使用状態における上方としており、また、矢印Bの方向は、多軸仮締め工具1の使用状態における上方(図3に示す矢印Aの方向)と一致している。
【0061】
ナット配置部31は、図8に示すように、ナット並べ装置30における下方に配置される該ナット並べ装置30を支持するための部位となる略円盤状の基台部30aに対して、その上方に図示しないフレーム等を介して固定されている。そして、基台部30aとナット配置部31の間に形成される略円柱状の空間において、駆動部33を収容する構成としている。
また、ナット供給部32は、基台部30aの略中央において鉛直上向きに立設されている軸部材である支持軸39に対して支持されている。
【0062】
ここで、ナットの並べ位置についてより詳しく説明をする。
図10に示す如く、ナット並べ装置30においては、多軸仮締め工具1の各ソケット部3・3・・・が鉛直下向となる姿勢とした状態で、各ソケット3・3・・・の直下にあたる位置に、並べ位置α(α1〜α10)を設定するようにしている。
【0063】
尚、本実施形態に示すナット並べ装置30では、多軸仮締め工具1が備える各ソケット部3・3・・・の個数(本実施形態では、10個)に対応させて、ナット配置部31において、10箇所の並べ位置α(α1〜α10)を設定する場合を例示しているが、ナット配置部において設定する並べ位置の箇所数によって、本発明に係るナット並べ装置を限定するものではない。
また、本実施形態では、各ソケット部3・3・・・の長さが一定であるため、各並べ位置α1〜α10を同一平面上に設定する場合を例示しているが、各ソケット部3・3・・・の長さが異なっているような場合には、各並べ位置を異なる平面上に設定することもできる。
【0064】
ナット配置部31は、所定の並べ位置α1〜α10に対応する位置に、ナットを配置するための部位を形成するためのものであって、図8、図9および図11に示す如く、ベース部材34、ガイド部材35、案内板36等を備えている。
【0065】
ベース部材34は、ナット配置部31におけるナットを載置するため部位(底面部)を構成する略リング状の部材であり、図11に示すように、並べ位置αに対応する位置に、ナットを位置決めするための略円柱状の凹部である凹部34aが形成されている。
尚、平面視における凹部34aの直径は、ナット22の外接円の直径に比して若干大きくしており、該凹部34aにナット22を落ち込ませることができる大きさとしている。
そして、凹部34aにナット22を落ち込ませることによって、ナット22を並べ位置αに位置決めする構成としている。
【0066】
即ち、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、ナット配置部31は、ナット22を所定の位置(並べ位置α1〜α10)に配置するために、該所定の位置(並べ位置α1〜α10)に対応する配置で形成されたナット22を収容可能な複数の凹部34a・34a・・・を有するものである。
このような構成により、ナット22・22・・・を多軸仮締め工具1のソケット部3・3・・・に対応させた位置に確実に配置することができる。
【0067】
ガイド部材35は、ナット配置部31に供給されるナット22を、確実に凹部34aに落ち込ませるように導くための部位を構成する略リング状の部材であり、図11に示すように、凹部34aを囲む位置に、平面視において略U字状の凹部であるガイド部35aが形成されている。
本実施形態において示すガイド部材35には、図12に示すように10箇所の各ガイド部35a・35a・・・が形成されており、各ガイド部35a・35a・・・は、略U字状の形状における開放部側をガイド部材35の軸心に向けるようにして放射状に形成されている。
【0068】
そして、ベース部材34の上にガイド部材35を位置決めしつつ重ね合わせるとともに、両部材34・35を一体化することによって、ナット並べ装置30における各並べ位置α1〜α10を形成する構成としている。
【0069】
案内板36は、ナット配置部31に供給されるナット22の流れを整えるための略リング状の部材であり、該案内板36の内周部において、各並べ位置α1〜α10に対応させた複数の傾斜部36a・36a・・・が形成されている。
【0070】
案内板36の内周部において形成する各傾斜部36a・36a・・・は、その最も軸心に近い部位を、ベース部材34およびガイド部材35の内周面よりも半径方向内側に配置している。また、傾斜部36aは、最も半径方向外側に位置する部位を、ベース部材34およびガイド部材35の内周面と略同一の位置に配置している。
即ち、傾斜部36aは、平面視においてベース部材34およびガイド部材35の内周面と略一致する位置から、ベース部材34およびガイド部材35の内周面より半径方向内側の位置に至る範囲で、ナット22を沿わせるための平面部を形成している。
【0071】
ここで、別実施形態に係るナット配置部を備えるナット並べ装置について、図15を用いて説明をする。
例えば、図15に示す如く、別実施形態に係るナット配置部61を備えるナット並べ装置60では、ベース部材34とガイド部材35を貫通する略円筒状の位置決め部材62と、該位置決め部材62の内部に挿通され、該位置決め部材62の底部を構成する底面部材63と、を用いて、並べ位置αを形成する構成とすることができる。
底面部材63は、ベース部材34に対して固定されており、該底面部材63によって、ナット22を下方から支持する構成としている。
【0072】
また、位置決め部材62は、底面部材63の外径寸法と略一致する内径寸法を有しており、底面部材63を挿通した状態で、略円筒状である位置決め部材62の軸心方向に変位することができる構成としている。
また位置決め部材62は、下方において、スプリング64と当接させる構成としている。このため、位置決め部材62を下方に向けて押圧することによって下方に変位させたり、あるいは、その下方に向けた押圧を解除することによって、スプリング64の復元力により、上方に変位させて、押圧する前の元の位置に復元させたりすることができる。
【0073】
さらに、本実施形態では、内部に空間を有する底面部材63にセンサ65を内蔵する構成としている。
センサ65は、非接触式のセンサであり、並べ位置αにナット22が存在しているか否かを検出することができるものである。
そして、各並べ位置α1〜α10にセンサ65・65・・・を配置することによって、各並べ位置α1〜α10にナット22が配置されたか否かを検出することが可能な構成としており、全ての並べ位置α1〜α10にナット22が配置されたことを検出したときに、自動的にナット並べ装置60を停止させる構成としている。
【0074】
ナット供給部32は、ナット配置部31に設定された各並べ位置α1〜α10のそれぞれに対して、ナットを一つずつ供給するための部位であり、図9および図13に示す如く、転動部37、回転斜板38、支持軸39等を備えている。
【0075】
転動部37は、該転動部37においてナットを転動させることにより、ナットの姿勢をナット配置部31に配置するのに適した姿勢に修正するための部位であり、筒部40、底板部41等を備えている。
【0076】
略円筒状の部位である筒部40は、底板部41の外径寸法に比して大きい外径寸法を有しており、底板部41の外径寸法に略一致する(但し、若干大きい)内径寸法である略円柱状の空隙部たる収容部40aと、該収容部40aの内径寸法に比して内径寸法が小さい略円柱状の空隙部たる縮径部40bが形成されている。
そして、収容部40aと縮径部40bの境界部には、筒部40の軸心に対して直交する面であって、各部40a・40bの寸法差の幅を有する略リング状の平面部である支持部40cが形成されている。
【0077】
また、筒部40の使用状態において下側に配置される端部は、該筒部40の軸心に対して所定の角度θaだけ傾斜した平面によって切り取られた態様の形状を有している。そして、筒部40は、その傾斜した平面で切り取られた態様の下端面たる底部40fが水平となる状態を保持して、即ち、筒部40の軸心を鉛直方向に対して所定の角度θaだけ傾斜させた状態で使用される。
これにより、筒部40の軸心に対して直交する面として形成される支持部40cは、常に水平方向から所定の角度θaだけ傾斜した状態に保持される。
【0078】
筒部40は、その底部40fを、従動プーリー45の支持部45aに対して固定することによって、支持軸39によって支持されている。
また、従動プーリー45は、支持軸39に対してベアリング44を介して回転可能に支持されており、筒部40も支持軸39に対して回転可能に支持される構成としている。
【0079】
また、支持部40cには、底板部41を支持するための複数のボールローラー40e・40e・・・が付設されており、底板部41を支持部40cの傾斜角度に沿わせた状態で、各ボールローラー40e・40e・・・を底板部41の下面に点接触させて支持する構成としている。
【0080】
そして、筒部40には、支持部40cの傾斜方向における下方に位置する側面であり、かつ、底板部41が配置される位置よりも筒部40の軸心方向に対して上側に位置する部位を切欠いて、筒部40からナットを排出するための開口部たるナット出口40dを形成する構成としている。
また、ナット出口40dの筒部40の軸心方向に対する開口高さは、図9に示すように、ナット22の高さに比して大きい寸法としている。さらに、ナット出口40dの開口幅は、ナット22の対角部における最大幅に比して十分に大きい寸法としている。
【0081】
さらに、筒部40の上部には、該筒部40の内径寸法を縮小するためのテーパ管状に形成されたカバー40gを備えている。カバー40gの上側の端部には、収容部40aの内径寸法に比して縮小した内径寸法を有する略円形の開口部たる投入口40hが形成されている。
そして、投入口40hから筒部40内にナットを投入するとともに、該カバー40gによって、筒部40に投入されたナットが該筒部40から容易に飛び出すことがないようにしている。
【0082】
底板部41は、ナット22を転動させる(即ち、転がしたり、滑落させたりする)ための略円形の斜面を形成するための部位であり、図9および図14に示す如く、表面に複数の掻き部41a・41a・・・が付設されるとともに、表面に凹状である複数の溝部41b・41b・・・が形成されている。
底板部41は、該底板部41の傾斜角度を変更したり、あるいはそれに伴って掻き部41aや溝部41bを変位させることによって、底板部41上にあるナットを転動させて、ナットの姿勢を修正する役割を果たしている。
【0083】
また、底板部41は、支持軸39に対して、ユニバーサルジョイント39aを介して支持されている。
ここで、ユニバーサルジョイント39aは支持軸39に対して相対回転不能な状態で固定されている。
これにより、底板部41は、支持軸39回りに回転不能であって、底板部41の傾斜角度を支持軸39の軸心方向に対して任意の角度に変更することが可能であり、さらに、傾斜方向を支持軸39回りの任意の半径方向に変更することができる構成としている。
【0084】
また底板部41は、図9に示すように、筒部40の収容部40aに収容した状態で使用される。そして、筒部40と底板部41を所定の配置に組み合わせることによって、転動部37におけるナットを留め置くための囲まれる空間である留置部37aが形成される。
留置部37aは、転動部37に供給されたナットが、ナット配置部31に供給するのに適した姿勢となるまで、ナット配置部31に供給するのに適さない姿勢である各ナットを留め置くための部位である。
【0085】
底板部41を支持部40c上に配置すると、底板部41の下面には、支持部40cに設けられたボールローラー40e・40e・・・が当接する。これにより、底板部41は、支持部40cの傾斜角度に沿って、水平面に対して所定の角度θaだけ傾斜した状態に保持される。
【0086】
また、筒部40が支持軸39回りに回転するとき、支持部40cの傾斜方向が変化するのに伴い、底板部41は、支持部40c(より詳しくは、各ボールローラー40e・40e・・・)に沿うように傾動するため、水平面に対して所定の角度θaだけ傾斜した状態を保持しつつ、支持部40cの傾斜方向と同じ方向に、底板部41の傾斜方向が変更される構成としている。
【0087】
つまり、筒部40が支持軸39回りに回転するのに伴って、底板部41の傾斜方向が変更されたとしても、常に底板部41の傾斜方向の下方に、ナット出口40dが位置する構成としている。
換言すれば、筒部40が支持軸39回りに回転するとき、ナット出口40dの開口方向は変化するが、それに伴って、底板部41の傾斜方向は、常にナット出口40dの開口方向に向くように構成されている。
【0088】
即ち、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、ナット供給部32は、筒部40が鉛直方向に設定した軸たる支持軸39回りに回転可能に構成され、筒部40の回転に伴って、底板部41の傾斜方向を任意の方向に変更するものである。
このような構成により、駆動源の個数が少ない簡易な構成としつつ、ナット22・22・・・を拡散させることができる。
【0089】
また、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、底板部41は、ユニバーサルジョイント39aを介して支持されることによって、傾斜方向を任意の方向に変更可能に構成されるものである。
このような構成により、駆動源の個数が少ない簡易な構成としつつ、ナット22・22・・・を拡散させることができる。
【0090】
回転斜板38は、軸心回りに回転される略リング状の部材であって、該回転斜板38上に配置されたナットを、回転方向に向けて搬送するための部位である。
また、図13に示す如く、回転斜板38の上面には、所定の傾斜角度θbで内周側から外周側に向けて先下がりとなるように形成された傾斜面である傾斜面38aが形成されており、傾斜面38a上に配置されたナットを、該ナットに作用する重力の傾斜方向への分力によって、半径方向外側に向けて滑落させるための部位でもある。
即ち、回転斜板38上に配置されたナットは、該回転斜板38の半径方向外側に向けて滑落しながら、該回転斜板38の回転方向に搬送される。
【0091】
また、リング状である回転斜板38の内側には、該回転斜板38の軸心方向に対して所定の傾斜角度θaだけ傾斜している孔部38bが形成されており、該孔部38bにおいて、所定の傾斜角度θaで傾斜した筒部40を外嵌している。またこのとき、回転斜板38は、傾斜面38aの上端が、ナット出口40dの下端以下となるように配置して、筒部40に対して固定されている。
【0092】
このような構成により、筒部40が支持軸39回りに回転されるのに伴って、該回転斜板38も支持軸39回りに回転され、また、底板部41の傾斜方向に向けて滑落してきたナットがナット出口40dを通って留置部37aから排出され、傾斜面38a上に受け渡される構成としている。
【0093】
また、回転斜板38の外周縁部には、ナット22を押圧するための鉛直方向に立設された第一のピンである複数の掻き上げピン47・47・・・が付設されており、さらに、回転斜板38の外周縁部によりも内側の部位には、ナット22を押圧するための鉛直方向に立設された第二のピンである複数の押し込みピン48・48・・・が付設されている。
【0094】
またさらに、回転斜板38における各押し込みピン48・48の上方には、該回転斜板38の傾斜面38aに供給されたナット22が、転動することを防止するための部材である押さえ板51を設けている。
【0095】
駆動部33は、ナット供給部32の筒部40および回転斜板38を回転駆動するための駆動源となる部位であり、図9に示す如く、モータ42、駆動プーリー43等を備えている。
モータ42のモータ軸42aには駆動プーリー43を設けている。また、ナット供給部32のうち筒部40および回転斜板38は、支持軸39に対してベアリング44を介して回転可能に支持される従動プーリー45によって支持されている。
【0096】
また、駆動プーリー43と従動プーリー45にはベルト46が巻回されており、モータ42によって、駆動プーリー43を回転させることにより、従動プーリー45を支持軸39回りに回転させることができる構成としている。
【0097】
そして、ナット供給部32においては、従動プーリー45の上部に備えられる略リング状の部位である支持部45aに対して、ナット供給部32のうち筒部40と回転斜板38が固定されており、従動プーリー45が支持軸39回りに回転されるのに伴って、筒部40および回転斜板38を支持軸39回りに回転させることができる構成としている。
【0098】
尚、本実施形態では、筒部40を駆動部33により回転させるとともに、ユニバーサルジョイント39aにより揺動可能に支持される底板部41を、前記筒部40の回転に応じて傾斜方向を変更することにより、ナット22を供給する構成としているが、例えば、図16に示すように、筒部40をナット配置部31等に固定しておき、回転斜板38および底板部41を駆動部33によって回転駆動する構成とすることも可能である。このような構成であっても、ナット配置部31に対してナット22を供給することが可能である。
【0099】
ここで、ナット供給部32を構成する各部におけるナットの状況について、図17〜図24を用いて説明をする。
尚、以下では、ナット22の側面部22cが底板部41に接するようなナット22の姿勢を、「立っている姿勢」と呼び、ナット22を正面部22dが底板部41に接するようなナット22の姿勢を、「寝ている姿勢」と呼ぶものとする(図18(a)参照)。
【0100】
図17に示す如く、傾斜した底板部41における下方に位置する掻き部41aに引っかかっているナット22は、底板部41の傾斜方向が変更されるのに伴って、やがて、当該掻き部41aが傾斜した底板部41における上方に位置するようになる。このとき、掻き部41aに引っかかっていたナット22は上方に持ち上げられる。
すると、そのナット22は、自重によって上方から下方に転落するように移動し、これに伴って姿勢が変更される。
底板部41の傾斜方向は継続的に変更されるため、掻き部41a・41a・・・に引っかかるナット22がある限り、「立っている姿勢」から「寝ている姿勢」となるように、何度も繰り返してナット22の姿勢が修正される。
【0101】
また、図18(a)に示す如く、底板部41には、溝部41b・41b・・・が形成されており、「立っている姿勢」にあるナット22における一方の正面部22dと側面部22cとの稜線部を、溝部41bに落ち込ませることによって、該ナット22の姿勢を「寝ている姿勢」に修正することができる。
【0102】
また、図18(b)に示すように、各溝部41b・41b・・・の幅寸法W(底板部41の傾斜方向における各溝部41b・41b・・・の寸法)は、ナット22の側面部22cの高さ寸法H(ナット22の厚み寸法)よりも小さく形成されており、ナット22が「立っている姿勢」のままで各溝部41b・41b・・・に嵌まり込んでしまい(ナット22の側面部22cが各溝部41b・41b・・・の底面と接する状態となって)、倒れなくなることを防止している。
【0103】
即ち、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、底板部41には、留置部37aに留め置かれたナット22・22・・・を係止する突起部たる掻き部41a・41a・・・と、留置部37aに留め置かれたナット22・22・・・を落ち込ませる凹部たる溝部41b・41b・・・と、を備えるものである。
このような構成により、ナット22・22・・・を、各配置位置(並べ位置α1〜α10)に配置するのに適した姿勢(所謂、「寝ている姿勢」)に確実に修正することができる。
【0104】
また、図19(a)に示す如く、筒部40には、規制部37bが設けられている。
規制部37bの下方における底板部41との間の隙間の寸法は、ナット22の二面幅の寸法に比して小さく、かつ、ナット22の高さに比して大きい寸法としている。
これにより、「寝ている姿勢」のナット22のみが、規制部37bの下部を通過できる構成としている。
【0105】
即ち、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、留置部37aには、該留置部37aに留め置かれたナット22・22・・・のうち、ナット配置部31に供給するのに適していない姿勢(所謂、「立っている姿勢」)のナット22を係止するための規制部37b、を備えるものである。
このような構成により、各配置位置(並べ位置α1〜α10)に対して、ナット22・22・・・を確実に配置することができる。
【0106】
また、図19(b)に示す如く、底板部41は、その外縁部41cを掻き部41aや溝部41b等が形成されている部位に比して低くする(即ち、段差部41dを形成する)構成とすることができる。
段差部41dを設けた場合、規制部37bの下部を通過したナット22は、必ず段差部41dの下側(即ち、外縁部41c)に落ち、そして、一旦段差部41dの下側(外縁部41c)に落ちたナット22は、規制部37bを逆向きに通過することができなくなる。
これにより、転動部37では、規制部37bによって姿勢が整えられたナット22が、留置部37aから排出される一方となり(即ち、逆戻りすることが防止され)、より確実に、ナット22を「寝ている姿勢」に修正することが可能になる。
【0107】
即ち、転動部37では、投入口40hから留置部37aに投入された複数のナット22・22・・・の姿勢を、底板部41およびその掻き部41a、溝部41bや、規制部37b等の働きによって、転動部37から排出されるまでの間に、確実にナット配置部31に供給するのに適した姿勢(即ち、「寝ている姿勢」)に修正することができる。
【0108】
図20に示す如く、回転斜板38には、該回転斜板38の外縁よりも外側の位置で、ナット配置部31のベース部材34およびガイド部材35の内径よりも内側で、かつ、ナット配置部31の案内板36の内接円の径よりも外側の位置に、第一のピン部材たる複数の掻き上げピン47・47・・・が付設されている。
【0109】
図21に示す如く、そして、各傾斜部36a・36a・・・に沿ってナット22を移動させることによって、ある並べ位置αに既にナット22が存在する場合において、さらに後から当該並べ位置αに入り込もうとして、その並べ位置αの入口付近で停滞しているナット22を当該並べ位置αから離間させる方向に導くようにしている。
【0110】
即ち、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、ナット供給部32は、筒部40とナット配置部31の間を塞ぐ略リング状の傾斜面たる傾斜面38aを備え、該傾斜面38aの外周縁部において、ナット22・22・・・を押圧するための第一のピンたる掻き上げピン47・47・・・を備えるものである。
このような構成により、ナット22・22・・・をソケット部3・3・・・の配置に対応した各配置位置(並べ位置α1〜α10)に確実に配置することができる。
【0111】
さらに、図22に示す如く、回転斜板38には、該回転斜板38の外縁よりも内側の位置に、第二のピン部材たる複数の押し込みピン48・48・・・が付設されており、また、ナット配置部31の案内板36には、回転斜板38の外縁よりも内側まで膨出する部位である複数の姿勢制御板49・49・・・を備える構成としている。
【0112】
回転斜板38に載置されたナット22は、自重による傾斜方向への重力が作用しつつ、回転斜板38の回転に伴って周方向に搬送される。
そして、ナット22は、姿勢制御板49に当接すると、側面部22cが姿勢制御板49の辺部49aに沿う姿勢に修正される。
この姿勢では、回転斜板38の回転に伴って周方向に変位する押し込みピン48によって、確実にナット22の側面部22cを押圧することができる姿勢となるように姿勢制御板49の形状を調整している。
【0113】
そして、押し込みピン48によって、回転斜板38の回転周方向における姿勢制御板49の前側に押し出されたナット22は、自重による傾斜方向への重力成分によって、回転斜板38上を半径方向外側に向けて滑落して、回転斜板38の回転周方向における姿勢制御板49の前方に位置する並べ位置αに滑り落ちていく。
尚、押し込みピン48の軸回りに、樹脂製のチューブ等を被装しておき、押し込みピン48による接触を弾性的に行うようにし、かつ、押し込みピン48の軸径および押し込みピン48とナット22との間の摩擦係数を増大させて、押し込みピン48による押し込み動作をより確実にすることも可能である。
【0114】
即ち、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、ナット供給部32は、傾斜面38aの外周縁部に比して内側の位置において、ナット22を押圧する第二のピンたる押し込みピン48・48・・・を備えるものである。
このような構成により、各配置位置(並べ位置α1〜α10)に対して、ナット22・22・・・を確実に送り込むことができる。
【0115】
また、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、傾斜面38aには、ナット配置部31から支持される、該傾斜面38aの回転に伴い回転しない部位であって、傾斜面38aに存在するナット22と当接して、ナット22の姿勢を修正するための部位である姿勢制御板49・49・・・を備えるものである。
このような構成により、各配置位置(並べ位置α1〜α10)に対して、ナット22・22・・・を確実に送り込むことができる。
【0116】
またさらに、図23に示す如く、回転斜板38の外縁よりも内側の位置に、案内部材50・50・・・を付設することも可能である。
案内部材50は、押し込みピン48によって、並べ位置αに向かって押し出されたナット22を、より確実に並べ位置αに向かって滑落するように誘導するための部材であり、案内部50a、支持部50b・50b、腕部50c・50c等により構成されている。
【0117】
案内部材50は、非回転部たるナット配置部31から支持されており、ナット配置部31に固定した支持部50b・50bにより、回転斜板38の外縁よりも内側の位置に向かって腕部50c・50cを延設し、該腕部50c・50cの先において、案内部50aを片持ち支持する構成としている。
案内部50aには、並べ位置αに向けてナット22を誘導するのに適した角度の傾斜面50dが形成されている。
このような構成により、押し込みピン48によって、並べ位置αに向かって略回転周方向に押し出されたナット22を、案内部50aの傾斜面50dにより並べ位置αの方向に誘導して、ナット22をより確実に並べ位置αに入れ込むことができる。
【0118】
これにより、回転斜板38の傾斜面38aにおいてナット22に作用する、当該傾斜面38aの傾斜方向に向けたナット22に作用する重力の傾斜方向への分力に抗して、支持軸39の回りで周方向に搬送されるナット22が、案内板36の傾斜部36aに当接することによって、傾斜面38aにおいてナット22の作用する傾斜方向への成分による半径方向外側に作用する重力に抗して、当該ナット22をナット配置部31の半径方向内側に導くようにしている。
【0119】
即ち、姿勢が整えられた状態で転動部37から排出された複数のナット22・22・・・は、掻き上げピン47、傾斜部36a、姿勢制御板49、押し込みピン48等の働きによって、ナット22・22・・・を拡散させて、全ての並べ位置α1〜α10に対して、確実にそれぞれ一つずつのナット22を配置することができる。
【0120】
尚、本実施形態に示すナット並べ装置30に用いられているナット供給部32を用いて、図24に示すようなパーツフィーダー80を構成することも可能である。
例えば、図24に示すように、並べ位置αに相当する位置にレール部材81を接続することによって、確実に各ナット22・22・・・の姿勢を整えつつ、ナット22を供給可能である、簡易な構成のパーツフィーダー80を提供できる。
【0121】
次に、ナット並べ装置30を用いたナットの並べ状況について、説明をする。
まず始めに、複数のナット22・22・・・を、投入口40hから転動部37に投入する(図9参照)。
尚、本実施形態では、ナット配置部31に並べ位置αが10箇所(α1〜α10)設定されているため(図12参照)、10個のナット22・22・・・を投入する。
その後、モータ42を起動させて、転動部37および回転斜板38を支持軸39回りに回転させる(図9参照)。
【0122】
すると、転動部37(より詳しくは、筒部40)の回転に伴って、底板部41の傾斜方向が任意の半径方向に変更される。このとき、留置部37a内に留め置かれたナット22・22・・・は、掻き部41a・41a・・・や溝部41b・41b・・・等の作用により転動され、「寝ている姿勢」に修正される(図13、図17および図18参照)。
【0123】
「寝ている姿勢」に修正されたナット22・22・・・は、底板部41の傾斜方向に沿って滑落しつつ、規制部37bと外縁部41cの隙間を通過して、ナット出口40dから回転斜板38の傾斜面38aに向けて排出される(図9および図19参照)。
【0124】
傾斜面38aに送られたナット22・22・・・は、回転斜板38の回転に伴って、回転周方向に搬送されつつ、傾斜面38aの傾斜方向に滑落する。このときナット22・22・・・は、姿勢制御板49や押し込みピン48等の作用により、確実に各並べ位置α1〜α10に向けて押し出される(図22参照)。
【0125】
そして、未だナット22が配置されていない並べ位置αの位置に向けて滑落してきたナット22は、凹部34aに滑り込むようにして、当該並べ位置αに配置される。このとき、ガイド部35a等により、確実にナット22が凹部34aに落ち込むように案内される。
【0126】
一方、既にナット22が配置されている並べ位置αの位置に向けて滑落してきたナット22は、凹部34aに入り込むことができず、凹部34aの手前(回転斜板38の外縁部付近)で停滞するが、この停滞しているナット22を掻き上げピン47で掻き上げるとともに、傾斜部36aに沿って傾斜面38aのより半径方向内側に案内して、再び、次の並べ位置αを目指して、回転斜板38により回転周方向に搬送されるようになる(図20および図21参照)。
【0127】
これらの動作を繰り返すことによって、供給された10個のナット22・22・・・は、いずれかの並べ位置α1〜α10にやがて配置される。
そして、各並べ位置α1〜α10に全てのナット22・22・・・が配置されたことを確認して、モータ42を停止させて、一連のナット並べ装置30によるナット22・22・・・の並べ動作を終了する(図9参照)。
【0128】
即ち、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30は、ナット22を配置するための部位であって、略リング状の形状を有するナット配置部31と、ナット配置部31に対してナット22を供給するための部位であって、ナット配置部31の内側に配置するナット供給部32と、を備え、ナット供給部32は、ナット22を一時的に留め置くための部位である留置部37aを備え、留置部37aの底面部たる底板部41を、水平方向に対して傾斜させた面により構成するとともに、該底板部41の傾斜方向を任意の半径方向に変更可能に構成して、底板部41の傾斜方向を任意の半径方向に変更しつつ、留置部37aに留め置かれたナット22を底板部41の傾斜方向に沿って滑落させることによって、ナット配置部31の任意の位置にナット22を供給するものである。
このような構成により、多軸仮締め工具1のソケット部3・3・・・に対応させてナット22・22・・・を配置することができるナット並べ装置30を簡易な構成で実現することができる。
【0129】
また、本発明の一実施形態に係るナット並べ装置30において、留置部37aは、鉛直方向に対して傾斜した略円筒状の部位であって、下側の端部を底板部41によって塞ぐ筒状部である筒部40と、筒部40における下側の端部において形成した、留置部37aからナット22を排出するための開口部たるナット出口40dと、筒部40の外側からナット配置部31の間際まで連続する、水平方向に対して傾斜させた面である略リング状の傾斜部たる傾斜面38aと、を備え、底板部41の傾斜方向を任意の方向に変更しつつ、留置部37aに留め置かれたナット22を底板部41の傾斜方向に沿って滑落させることによって、底板部41の傾斜方向における下側に位置するナット出口40dから、留置部37aに留め置かれたナット22を、傾斜面38aに向けて排出するとともに、さらに、ナット22を傾斜面38aにおいて滑落させて、ナット配置部31の任意の位置にナット22を供給するものである。
このような構成により、多軸仮締め工具1のソケット部3・3・・・に対応させてナット22・22・・・を配置することができるナット並べ装置を簡易な構成で実現することができる。
【0130】
次に、ナット並べ装置30を用いた多軸仮締め工具1に対するナットの装填状況について、図25〜図28を用いて説明をする。
ナット並べ装置30を用いて、多軸仮締め工具1の各ソケット部3・3・・・にナット22を装填するときには、まず、ナット並べ装置30を作動させて、各並べ位置α1〜α10にナット22・22・・・を並べておき(図10参照)、そして、図25に示す如く、並べ位置αの直上にソケット部3が位置するように、多軸仮締め工具1を配置する。
【0131】
次に、図26に示す如く、多軸仮締め工具1を降下させるとともに、ナット配置部31のガイド部材35によって、ソケット部3を位置決めする。
このとき、並べ位置αに配置されているナット22は、ソケット部3内の縮径部11e付近に収容されており、また、ナット22には、係合部14による磁力が作用している。
【0132】
そして、ナット22は、係合部14に作用している磁力によって、図27に示す如く、係合部14の底部14bにナット22の正面部22dが接するように磁着される。
このようにして、ナット22は、ソケット部3内の所定の位置に装填される。
即ち、ナット並べ装置30を用いることによって、各並べ位置α1〜α10にナット22が配置された状態のナット並べ装置30の上に、多軸仮締め工具1を位置決めして載置するだけで、各ソケット部3・3・・・に対して、同時に複数のナット22・22・・・を装填することができる。
【0133】
また、例えば、図15に示すようなナット配置部61を備えるナット並べ装置60では、図28に示すように、ナット並べ装置60に向けて多軸仮締工具1を降下させる動作において、ソケット部3により、位置決め部材62を下方に押圧させることができ、これにより、位置決め部材62を下方に変位させることができる。
【0134】
このように位置決め部材62を下方に変位させることにより、係合部14の底部14bを、底面部材63上のナット22とより接近させることが可能になり、かつ、位置決め部材62の内周面に沿わせつつ、ナット22を平行に保持した状態で係合部14に磁着させることができる。これにより、係合部14でナット22を磁着する際に、ナット22の向き(軸心方向)が変化してしまうことが防止でき、より確実に、係合部14に対して所定の姿勢でナット22を装填することが可能になる。
【符号の説明】
【0135】
1 多軸仮締め工具
3 ソケット部
30 ナット並べ装置
31 ナット配置部
32 ナット供給部
33 駆動部
34a 凹部
36a 傾斜部
37 転動部
37a 留置部
37b 規制部
38a 傾斜面
39 支持軸
39a ユニバーサルジョイント
40 筒部
40d ナット出口
41 底板部
41a 掻き部
41b 溝部
47 掻き上げピン
48 押し込みピン
49 姿勢制御板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナットを配置するための部位であって、略リング状の形状を有するナット配置部と、
前記ナット配置部に対して前記ナットを供給するための部位であって、前記ナット配置部の内側に配置するナット供給部と、
を備え、
前記ナット供給部は、
前記ナットを一時的に留め置くための部位である留置部を備え、
前記留置部の底面部を、水平方向に対して傾斜させた面により構成するとともに、該底面部の傾斜方向を任意の半径方向に変更可能に構成して、
前記底面部の傾斜方向を任意の半径方向に変更しつつ、前記留置部に留め置かれた前記ナットを前記底面部の傾斜方向に沿って滑落させることによって、
前記ナット配置部の任意の位置に前記ナットを供給する、
ことを特徴とするナット並べ装置。
【請求項2】
前記留置部は、
鉛直方向に対して傾斜した略円筒状の部位であって、下側の端部を前記底面部によって塞ぐ筒状部と、
前記筒状部における前記下側の端部において形成した、前記留置部から前記ナットを排出するための開口部たるナット出口と、
前記筒状部の外側から前記ナット配置部の間際まで連続する、水平方向に対して傾斜させた面である略リング状の傾斜部と、
を備え、
前記底面部の傾斜方向を任意の半径方向に変更しつつ、前記留置部に留め置かれた前記ナットを前記底面部の傾斜方向に沿って滑落させることによって、
前記ナット出口から前記傾斜部に向けて、前記留置部に留め置かれた前記ナットを、任意の半径方向に排出するとともに、
さらに、前記ナットを前記傾斜部において滑落させて、
前記ナット配置部の任意の位置に前記ナットを供給する、
ことを特徴とする請求項1に記載のナット並べ装置。
【請求項3】
前記ナット配置部は、
前記ナットを所定の位置に配置するために、該所定の位置に対応する配置で形成された前記ナットを収容可能な複数の凹部を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のナット並べ装置。
【請求項4】
前記ナット供給部は、
前記筒状部が鉛直方向に設定した軸回りに回転可能に構成され、
前記筒状部の回転に伴って、
前記底面部の傾斜方向を任意の方向に変更する、
ことを特徴とする請求項3に記載のナット並べ装置。
【請求項5】
前記底面部は、
ユニバーサルジョイントを介して支持されることによって、
傾斜方向を任意の方向に変更可能に構成される、
ことを特徴とする請求項4に記載のナット並べ装置。
【請求項6】
前記底面部には、
前記留置部に留め置かれた前記ナットを係止する突起部と、
前記留置部に留め置かれた前記ナットを落ち込ませる凹部と、
を備える、
ことを特徴とする請求項4または請求項5に記載のナット並べ装置。
【請求項7】
前記留置部は、
前記ナット出口において規制部を備え、
前記規制部は、所定の姿勢の前記ナットのみを通過させる、
ことを特徴とする請求項6に記載のナット並べ装置。
【請求項8】
前記ナット供給部は、
前記傾斜部の外周縁部において、
前記ナットを押圧するための第一のピンを備える、
ことを特徴とする請求項3から請求項7のいずれか一項に記載のナット並べ装置。
【請求項9】
前記ナット供給部は、
前記傾斜部の外周縁部に比して半径方向内側の位置において、
前記ナットを押圧するための第二のピンを備える、
ことを特徴とする請求項8に記載のナット並べ装置。
【請求項10】
前記傾斜部には、
前記ナット配置部から支持される、該傾斜部の回転に伴い回転しない部位であって、
前記傾斜部に存在する前記ナットと当接して、前記ナットの姿勢を修正するための部位である姿勢修正部を備える、
ことを特徴とする請求項8または請求項9に記載のナット並べ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2013−23288(P2013−23288A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−156099(P2011−156099)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】