説明

ナノインプリント用硬化性組成物および硬化物

【課題】パターン精度に優れ、かつ、弾性回復率が高いナノインプリント用硬化性組成物を提供する。
【解決手段】(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有するナノインプリント用硬化性組成物であって、 該組成物の固形分の90質量%以上が、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の固形分の10質量%以上が、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の粘度が6〜300mPa・sである、ナノインプリント用硬化性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノインプリント用硬化性組成物に関する。好ましくは、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材等の作製に用いられる光照射を利用した微細パターン形成のための光ナノインプリント用硬化性組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント法は、光ディスク製作ではよく知られているエンボス技術を発展させ、凹凸のパターンを形成した金型原器(一般的にモールド、スタンパ、テンプレートと呼ばれる)を、レジストにプレスして力学的に変形させて微細パターンを精密に転写する技術である。モールドを一度作製すれば、ナノ構造等の微細構造が簡単に繰り返して成型できるため経済的であるとともに、有害な廃棄・排出物が少ないナノ加工技術であるため、近年、さまざまな分野への応用が期待されている。
【0003】
ナノインプリント法には、被加工材料として熱可塑性樹脂を用いる熱インプリント法(例えば、非特許文献1参照)と、光硬化性組成物を用いる光インプリント法(例えば、非特許文献2参照)の2通りの技術が提案されている。熱ナノインプリント法の場合、ガラス転移温度以上に加熱した高分子樹脂にモールドをプレスし、冷却後にモールドを離型することで微細構造を基板上の樹脂に転写するものである。この方法は多様な樹脂材料やガラス材料にも応用可能であるため、様々な方面への応用が期待されている。例えば、特許文献1および特許文献2には、熱可塑性樹脂を用いて、ナノパターンを安価に形成するナノインプリントの方法が開示されている。
【0004】
一方、透明モールドや透明基材を通して光を照射し、光ナノインプリント用硬化性組成物を光硬化させる光ナノインプリント法では、モールドのプレス時に転写される材料を加熱する必要がなく室温でのインプリントが可能になる。熱インプリント法に比べると生産性が良い。
【0005】
次に、液晶ディスプレイ(LCD)やプラズマディスプレイ(PDP)などのフラットディスプレイへのナノインプリント法の応用例について説明する。
LCD基板やPDP基板の大型化や高精細化の動向に伴い、薄膜トランジスタ(TFT)や電極板の製造時に使用する従来のフォトリソグラフィ法に代わる安価なリソグラフィとして光ナノインプリント法が、近年注目されている。そのため、従来のフォトリソグラフィ法で用いられるエッチングフォトレジストに代わる光硬化性レジストの開発が必要になってきている。
さらにLCDなどの構造部材としては、特許文献3および特許文献4に記載される透明保護膜材料や、あるいは特許文献4に記載されるスペーサなどに対する光ナノインプリント法の応用も検討され始めている。このような構造部材用のレジストは、最終的にディスプレイ内に残るため、“永久レジスト”、あるいは“永久膜”と称されることがある。
また、液晶ディスプレイにおけるセルギャップを規定するスペーサも永久膜の一種であり、従来のフォトリソグラフィにおいては、樹脂、光重合性単量体および開始剤からなる光硬化性組成物が一般的に広く用いられてきた(例えば、特許文献5参照)。スペーサは、一般には、カラーフィルタ基板上に、カラーフィルタ形成後、もしくは、前記カラーフィルタ用保護膜形成後、光硬化性組成物を塗布し、フォオトリソグラフィにより10μm〜20μm程度の大きさのパターンを形成し、さらにポストベークにより加熱硬化して形成される。
【0006】
一方、LCDに関しては、近年、製造のためのマザーガラスが大きくなるに従い、従来の液晶流入方法(真空吸引方式)に代わって滴下方式(ODF:One Drop Fill)が提案されている。ODFでは、所定量の液晶を滴下した後、基板で挟持することによって液晶を注入するため、従来の真空吸引方式に比べ、工程数および工程時間の短縮が可能である。しかしながら、ODF方式においては、セルギャップから計算して見積もった所定量の液晶を滴下し、狭持するため、その際に掛かる面内での微妙な圧力差に影響しないような弾性特性を有することがフォトスペーサに対して望まれるようになってきた。
【0007】
すなわち、弾性の回復特性が優れたフォトスペーサが要求される。
このような特性を持たないフォトスペーサではパネル作製持に液晶中に気泡が生じることがあり、セルギャップが均一にならずに液晶表示装置としては表示品質が劣化し、例えば、色むらが顕著なものとなってしまう等の不具合が生じる。弾性の回復特性が優れたフォトスペーサとしては、例えば、特許文献6が挙げられる。
特許文献6に開示のスペーサは、弾性の回復特性は優れているものの、従来型のフォトリソグラフィを想定して設計されていて、ナノインプリントには全く適さないものである。
【0008】
ナノインプリントに適した光硬化性組成物としては、種々の組成物が開発されており、例えば特許文献6には、不飽和二重結合のラジカル重合反応を利用した光ラジカル重合系組成物、二重結合へのチオール基の付加反応を利用した光付加反応系組成物、および、エポキシ基の開環付加反応(カチオン重合)を利用した光カチオン重合系組成物等が挙げられている。また、特許文献7には、主鎖に含フッ素脂肪族環構造を有する含フッ素重合体を形成しうる含フッ素単量体を用いた光硬化性組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5,772,905号公報
【特許文献2】米国特許第5,956,216号公報
【特許文献3】特開2005−197699号公報
【特許文献4】特開2005−301289号公報
【特許文献5】特開2004−240241号公報
【特許文献6】特開2007−133032号公報
【特許文献7】特開2006−139148号公報
【特許文献8】特開2006−110997号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】S.Chouet al., Appl.Phys.Lett.Vol.67,3114(1995)
【非特許文献2】M.Colbun et al., Proc.SPIE,Vol. 3676,379 (1999)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ナノインプリント法により良好なパターンを形成するためには、モールドバターンを高精度に形成することが必要である。また、それに加えて、モールドとナノインプリント用硬化性組成物との剥離性が重要である。ここで、マスクと感光性組成物とが接触しないフォトリソグラフィ法に対し、ナノインプリント法においてはモールドとナノインプリント用硬化性組成物とが接触する。モールド剥離時にモールドにナノインプリント用組成物の残渣が付着すると以降のインプリント時にパターン欠陥となってしまう。
【0012】
ここで、特許文献7に記載されるようなナノインプリント用硬化性組成物は、モールドバターンをある程度精度良く形成できるが、モールドとナノインプリント用組成物の密着力が大きいために、モールドの剥離性に問題がある。このため、ナノインプリント用硬化性組成物の残渣がモールドに残存してしまうという欠点がある。
上記特許文献8に記載されるナノインプリント用硬化性組成物は、このような剥離性の問題に対処するものである。特許文献8では、重合開始剤の添加量を調整すること等により、機械的強度を調整しているが、スペーサや保護膜などの高い弾性回復率が要求される用途に適したものとはなっていない。
【0013】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであり、パターン精度に優れ、かつ、弾性回復率が高いナノインプリント用硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、下記手段により、パターン精度に優れ、かつ、弾性回復率の高いナノインプリント用硬化性組成物を提供することが可能になった。
【0015】
(1)(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有するナノインプリント用硬化性組成物であって、該組成物の固形分の90質量%以上が、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の固形分の10質量%以上が、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の粘度が6〜300mPa・sである、ナノインプリント用硬化性組成物。
(2)(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有するナノインプリント用硬化性組成物であって、該組成物の固形分の90質量%以上が、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の固形分の30質量%以上が、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の粘度が6〜300mPa・sである、ナノインプリント用硬化性組成物。
(3)前記組成物の粘度が、10〜150mPa・sである、(1)または(2)に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(4)前記組成物の固形分の40質量%以上が、3つの重合性基を有する重合性単量体および/または4つの重合性基を有する重合性単量体である、(1)〜(3)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(5)前記組成物の固形分のうち、5つ以上の重合性基を有する重合性単量体の割合が、20質量%以下である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(6)前記組成物の固形分のうち、1つの重合性基を有する重合性単量体の割合が、6質量%以下である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(7)重合性単量体として、重合性基の数が異なる2種類以上の重合性単量体を含有する、(1)〜(6)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(8)(A)重合性単量体として、2つの重合性基を有する重合性単量体と3つの重合性基を有する重合性単量体とを含有し、これらの合計の含有量が前記組成物の固形分の90質量%以上である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(9)(A)重合性単量体として、2つの重合性基を有する重合性単量体と、3つの重合性基を有する重合性単量体と、4つの重合性基を有する重合性単量体とを含有し、これらの合計の含有量が前記組成物の固形分の90質量%以上である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(10)(A)重合性単量体として、3つの重合性基を有する重合性単量体と4つの重合性基を有する重合性単量体とを含有し、これらの合計の含有量が前記組成物の固形分の90質量%以上である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(11)2つの重合性基を有する重合性単量体と4つの重合性基を有する重合性単量体とをそれぞれ含有し、これらの合計の含有量が前記組成物の固形分の90質量%以上である、(1)〜(7)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(12)さらに、(C)界面活性剤を含有する、(1)〜(11)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(13)さらに、(D)酸化防止剤を含有する、(1)〜(12)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(14)重合性単量体が有する重合性基が(メタ)アクリレート基、ビニル基およびエポキシ基から選ばれる重合性基である、(1)〜(13)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(15)前記組成物を、230℃で30分加熱してなる硬化物の弾性回復率が55%以上である、(1)〜(14)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
(16)(1)〜(15)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
(17)(16)に記載の硬化物を製造する方法であって、少なくとも(1)〜(15)のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基板に塗布する工程と、前記塗布物にモールドを押圧する工程と、前記塗布物に光照射する工程とを、この順番に含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
(18)(16)に記載の硬化物を有する表示装置。
【発明の効果】
【0016】
本発明のナノインプリント用硬化性組成物によれば、低粘度で、パターン精度が高く、スペーサや保護膜などの高い弾性回復率が要求される用途に適したナノインプリント用硬化性組成物を提供できる。
また、該硬化性組成物を用いて、弾性回復率に優れた高精度な微細パターンを提供でき、高品位なカラーフィルタや表示装置を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。尚、本願明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
【0018】
本明細書において、本発明のナノインプリント用硬化性組成物は、単に、「本発明の組成物」ということがある。また、本明細書において、本発明の組成物を硬化したものを、単に、「本発明の硬化物」ということがある。また、本明細書において、“(メタ)アクリレート”は“アクリレート”および“メタクリレート”を表す。本発明における重合性単量体は、オリゴマーおよびポリマーと区別され、重量平均分子量が1,000以下の化合物をいう。本明細書中において、“重合性基”は重合に関与する基をいう。
また、本発明でいうナノインプリントとは、およそ数十nmから数十μmのサイズのパターン転写をいい、ナノオーダーのものに限定されるものではない。
【0019】
本発明の組成物は、(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有するナノインプリント用硬化性組成物であって、該組成物の固形分の90質量%以上が、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の固形分の10質量%以上が、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の粘度が6〜300mPa・sである。
ここで、組成物の固形分とは、不揮発成分のことをいう。
【0020】
粘度の調節方法
本発明の組成物は、粘度が6〜300mPa・sである。本発明の組成物の粘度は、モールド剥離性等のインプリント適性の観点から、150mPa・s以下が好ましく、50mPa・s以下がより好ましい。また、厚膜塗布の観点から、粘度は高い方が好ましい。この観点からは、6mPa・s以上である必要があり、10mPa・s以上が好ましく、20mPa・s以上がさらに好ましい。本発明の技術分野では、粘度を低くすることが技術常識であったが、本発明では、粘度をあえて、中程度以上にしている点で、極めて特徴的である。
組成物の粘度を調整する方法は、特に定めるものではないが、例えば、粘度の高い重合性単量体の割合を多くすることによって、組成物の粘度が高めることができ、粘度の高い重合性単量体の割合を少なくすることによって、組成物の粘度を低くすることができる。
【0021】
弾性回復率
本発明の硬化物の弾性回復率は、高ければ高いほどよい。高いほうがムラの発生、低温気泡の発生などを抑制できる。この観点から、本発明では、本発明の組成物を露光後、230℃で30分加熱してなる硬化物の弾性回復率が、55%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、65%以上であることがさらに好ましく、75%以上であることが最も好ましい。
弾性回復率を高くするには、より多官能の重合性単量体をより多く用いることが好ましい。
【0022】
ここで、組成物の粘度を低くするために、粘度の高い重合性単量体の割合を低くすると、本発明の硬化物の弾性回復率が低下してしまう。しかしながら、本発明では、驚くべきことに、重合性単量体の種類や含量を調節することにより、粘度の範囲を適切な範囲に保ちつつ、高い弾性回復率の達成できることを見出したのである。
以下、組成物の各成分について説明する。
【0023】
(A)重合性単量体
本発明の組成物は、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体が90質量%以上を占めるが、94質量%以上を占めることが好ましい。この範囲にすることで、機械的特性がより向上する。
さらに、本発明の組成物は、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体が10質量%以上を占める。そして、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体が30質量%以上を占めることが好ましく、40質量%以上を占めることがより好ましく、50質量%以上を占めることがさらに好ましい。30質量%以上とすることにより、弾性回復率が顕著に向上する。特に、本発明では、組成物の固形分の40質量%以上が、3つの重合性基を有する重合性単量体および/または4つの重合性基を有する重合性単量体であることがより好ましい。
【0024】
本発明の組成物が含有する重合性単量体の重合性基の数について、本発明者が検討を行った結果、重合性基の数が多い重合性単量体の含有量を少なくすることで組成物の粘度が低下する傾向にあることが分かった。具体的には、本発明の組成物の固形分のうち、5つ以上の重合性基を有する重合性単量体の割合が、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることがさらに好ましい。さらに、本発明の組成物は、重合性単量体として、6つ以下の重合性基を有する重合性単量体を用いることが、さらには、4つ以下の重合性基を有する重合性単量体を用いることが、粘度を低下させる観点からより好ましい。
一方、本発明の組成物は、固形分のうち、1つの重合性基を有する重合性単量体の割合が、6質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。さらに、本発明では、含まれる重合性基の数が異なる2種類以上の重合性単量体を用いることが好ましい。例えば、2つの重合性基を有する重合性単量体と、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体を用いることが、本発明の硬化物の弾性回復率をより向上させる観点から好ましい。このような組み合わせの重合性単量体を用いることにより、粘度を低下させつつ、本発明の硬化物の弾性回復率をより向上させることができる。
【0025】
本発明では、特に、以下の組成を有する組成物が、特に好ましい態様として例示される。
(1)2つの重合性基を有する重合性単量体と3つの重合性基を有する重合性単量体と4つの重合性基を有する重合性単量体とを、それぞれ含有し、これらの合計量が本発明の組成物の固形分の90質量%以上。
(2)2つの重合性基を有する重合性単量体と3つの重合性基を有する重合性単量体とを、それぞれ含有し、これらの合計量が本発明の組成物の固形分の90質量%以上。
(3)3つの重合性基を有する重合性単量体と4つの重合性基を有する重合性単量体とを、それぞれ含有し、これらの合計量が本発明の組成物の固形分の90質量%以上。
(4)2つの重合性基を有する重合性単量体と4つの重合性基を有する重合性単量体とを、それぞれ含有し、これらの合計量が本発明の組成物の固形分の90質量%以上。
上記の中でも、(1)および(2)がバランスにさらに優れ、好ましい。
また、2つの重合性基を有する重合性単量体が、本発明の組成物の固形分の10質量%〜50質量%であることが好ましい。
【0026】
以下に、本発明で好ましく用いられる重合性単量体について具体的に説明する。
本発明で用いる重合性単量体は、重合性基を有するものが広く採用できる。重合性基の種類は、特に限定されないが、好ましくは、(メタ)アクリレート基、ビニル基またはエポキシ基であり、より好ましくは、(メタ)アクリレート基である。また、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体は、それぞれの重合性基が同一であってもよいし、異なっていても良い。
本発明で用いる重合性単量体の分子量は、分子量1000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。このような範囲とすることにより、本発明の組成物の粘度をより低く抑えることが可能になる。本発明で用いる重合性単量体の分子量の下限値は、特に定めるものではないが、通常は、100以上である。
【0027】
以下に、本発明で用いられる重合性単量体の好ましい例を述べるが、本発明がこれらに限定されるものではないことは言うまでも無い。
【0028】
重合性基を1つ有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を1つ有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)を挙げることができる。1官能の重合性不飽和単量体は組成物を低粘度にするのに適している。低粘度化の観点から、ビニル系化合物、(メタ)アクリレート系化合物が好ましく、特にN−ビニルピロリドン、ベンジルアクリレートがより好ましい。透明性の観点からはベンジルアクリレートが好ましい。
【0029】
重合性基を2つ有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体を挙げることができる。2官能の重合性不飽和単量体は組成物を低粘度にするのに適している。本発明では、反応性に優れ、残存触媒などの問題の無い(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
【0030】
特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0031】
重合性基を3つ以上有する重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体を挙げることができる。これら多官能の重合性不飽和単量体は機械的強度付与の点で優れる。本発明では、反応性に優れ、残存触媒などの問題の無い(メタ)アクリレート系化合物が好ましい。
具体的には、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が好適である。
【0032】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートが本発明に好適に用いられる。
【0033】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッソ原子を有する化合物も併用することができる。
【0034】
本発明で用いる重合性単量体として、エポキシ基を有する化合物やオキシラン環を有する化合物も採用できる。エポキシ基やオキシラン環を有する化合物を、(メタ)アクリレート系化合物と組み合わせて使用することにより、弾性回復率が顕著に向上する傾向にある。
オキシラン環を有する化合物としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0035】
好ましく使用することのできるエポキシ化合物としては、例えば、脂肪族環状エポキシ化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノールまたはこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などを例示することができる。
【0036】
これらの成分の中、脂肪族環状エポキシ化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0037】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、または2種以上組み合わせて用いることができる。
【0038】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,An Interscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報、特許第2906245号公報、特許第2926262号公報などの文献を参考にして合成できる。
【0039】
本発明で用いる重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を用いてもよい。
ビニルエーテル化合物は、適宜選択すれば良く、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0040】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers Paint Colour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、または多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
また、本発明で用いる重合性単量体として、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、p−メトキシスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0042】
また、本発明で用いる重合性単量体として、透明性の観点からは窒素原子を含まないことが好ましい。
【0043】
なお、本発明の組成物は、調整時における水分量が好ましくは5.0質量%以下、より好ましくは2.5質量%、さらに好ましくは1.0質量%以下である。調整時における水分量を5.0質量%以下とすることにより、本発明の組成物の保存性をより安定にすることができる。
【0044】
また、本発明の組成物は、行程簡略化の観点からは、有機溶剤の含有量を少なくすることができる。有機溶剤を含まなければ、溶剤の揮発を目的としたベーキング工程が不要となるため、プロセス簡略化に有効となるなどのメリットが大きい。この観点では有機溶剤の含有量は、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下であり、実質的に含有しないことが特に好ましい。
一方、薄膜化の観点からは、塗布性付与のため、有機溶剤を添加することもできる。有機溶剤で希釈することで粘度の調整が可能となり、薄膜塗布が容易になるという利点がある。
【0045】
前記有機溶剤としては、例えば、メトキシプロピレングリコールアセテート、2−ヒドロキシプロピン酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、2−ヘプタノンなどが好ましい。
【0046】
(B)光重合開始剤
本発明の組成物には、光重合開始剤が含まれる。本発明に用いられる光重合開始剤は、全組成物中、例えば0.1〜15質量%含有し、好ましくは0.2〜12質量%であり、さらに好ましくは0.3〜10質量%である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
光重合開始剤の割合を0.1質量%以上とすることにより、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の割合を15質量%以下とすることにより、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0047】
本発明で用いる光重合開始剤は、使用する光源の波長に対して活性を有するものが配合され、適切な活性種を発生させるものを用いる。このようにすることで感度が向上し、露光時間を短縮できる。
【0048】
本発明で使用される光重合開始剤は、市販されている公知の開始剤を適宜用いることができる。
【0049】
さらに本発明の組成物には、光重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J.V.Crivello,Adv.in Polymer Sci,62,1(1984)〕に開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2−クロロチオキサントン、ベンゾフラビン、N−ビニルカルバゾール、9,10−ジブトキシアントラセン、アントラキノン、クマリン、ケトクマリン、フェナントレン、カンファキノン、フェノチアジン誘導体などを挙げることができる。
【0050】
(C)界面活性剤
本発明の組成物には、界面活性剤を含めることができる。界面活性剤を含めることにより、パターン精度が向上する傾向にある。本発明に用いられる界面活性剤は、全組成物中、例えば、0.001〜5質量%含有し、好ましくは0.002〜4質量%であり、さらに好ましくは、0.005〜3質量%である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。この範囲にすることで、より良好な塗布性を付与できる。
界面活性剤は、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素・シリコーン系界面活性剤の少なくとも1種を含むことが好ましく、フッ素系界面活性剤を含むことがより好ましい。
このような界面活性剤を用いることにより、塗布均一性を大幅に改良でき、スピンコーターやスリットスキャンコーターを用いた塗布において、基板サイズに依らず良好な塗布適性が得られる。
さらに、このような界面活性剤を用いることにより、モールド剥離性を向上させることができる。このモールド剥離性の向上の観点からは、フッ素系界面活性剤を用いることがより好ましい。
【0051】
本発明で用いる非イオン性フッ素系界面活性剤の例としては、商品名フロラードFC−430、FC−431(住友スリーエム社製)、商品名サーフロン「S−382」(旭硝子社製)、EFTOP「EF−122A、122B、122C、EF−121、EF−126、EF−127、MF−100」(トーケムプロダクツ社製)、商品名PF−636、PF−6320、PF−656、PF−6520(いずれもOMNOVA社)、商品名フタージェントFT250、FT251、DFX18(いずれも(株)ネオス社製)、商品名ユニダインDS−401、DS−403、DS−451(いずれもダイキン工業(株)社製)、商品名メガフアック171、172、173、178K、178A、780F(いずれもDIC社製)が挙げられ、非イオン性ケイ素系界面活性剤の例としては、商品名SI−10シリーズ(竹本油脂社製)、メガファックペインタッド31(DIC社製)、KP−341(信越化学工業社製)が挙げられる。
本発明で用いる、フッ素・シリコーン系界面活性剤の例としては、商品名X−70−090、X−70−091、X−70−092、X−70−093、(いずれも信越化学工業社製)、商品名メガフアックR−08、XRB−4(いずれも大日本インキ化学工業社製)が挙げられる。
【0052】
(D)酸化防止剤
さらに、本発明の組成物には、公知の酸化防止剤を含めることができる。酸化防止剤を含むことにより、透明性を向上させることができる。本発明に用いられる酸化防止剤は、全組成物中、0.1〜10質量%が好ましく、0.3〜5質量%がより好ましく、1.0〜5質量%がもっとも好ましい。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0053】
酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NO、SO(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止できる、または分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中では、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0054】
なお、本発明における透過率は以下のような方法で評価することができる。本発明の組成物をガラス基板上にスピンコートし、モールドを圧着せずに露光し、その後オーブンで230℃、40分間加熱して硬化させた膜の波長400〜410nmにおける透過率を測定し、算術平均する。別途膜厚も測定し、1μmあたりの透過率を計算する。
透過率は、90%以上が好ましく、97%以上がより好ましく、98%以上がさらに好ましく、99%以上が特に好ましい。
【0055】
[その他の成分]
本発明の組成物には前記成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0056】
本発明の組成物には、貯蔵安定性等を向上させるために、重合禁止剤を配合してもよい。重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン、カテコール、ハイドロキノンモノメチルエーテル等のフェノール類;ベンゾキノン、ジフェニルベンゾキノン等のキノン類;フェノチアジン類;銅類等を用いることができる。重合禁止剤は、本発明の組成物の全量に対して任意に0.001〜10質量%の割合で配合するのが好ましい。
【0057】
[パターン形成方法]
次に、本発明の組成物を用いたパターン(特に、微細凹凸パターン)形成方法や表示装置について説明する。
本発明では、本発明の組成物を塗布して硬化してパターンを形成することができる。ここで、本発明の組成物は、光および熱により硬化させることが好ましい。具体的には、基板または、支持体上に少なくとも本発明の組成物からなるパターン形成層を塗布し、必要に応じて乾燥させて本発明の組成物からなる層(パターン形成層)を形成してパターン受容体を作製し、当該パターン受容体のパターン形成層表面にモールドを圧接し、モールドパターンを転写する加工を行い、微細凹凸パターン形成層を光照射により硬化させる。その後モールドを剥離する。必要に応じてモールド剥離前や後に加熱することもできる。このようにして本発明の微細パターンを得ることができる。
【0058】
液晶ディスプレイ(LCD)などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)においては、ディスプレイの動作を阻害しないようにするため、レジスト中の金属あるいは有機物のイオン性不純物の混入を極力避けることがのぞましく、その濃度としては、好ましくは、1000ppm以下、より好ましくは100ppm以下である。
【0059】
本発明の組成物は、一般によく知られた塗布方法、例えば、ディップコート法、エアーナイフコート法、カーテンコート法、ワイヤーバーコート法、グラビアコート法、エクストルージョンコート法、スピンコート方法、スリットスキャン法などにより、塗布することにより形成することができる。本発明の組成物からなる層の膜厚は、使用する用途によって異なるが、0.05μm〜30μmである。また、本発明の組成物は、多重塗布してもよい。
【0060】
本発明の組成物を塗布するための基板または支持体は、石英、ガラス、光学フィルム、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、紙、SOG、ポリエステルフイルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム等のポリマー基板、TFTアレイ基板、PDPの電極板、ガラスや透明プラスチック基板、ITOや金属などの導電性基材、絶縁性基材、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの半導体作製基板など特に制約されない。基板の形状は、板状でも良いし、ロール状でもよい。
【0061】
本発明の組成物を硬化させる光としては特に限定されないが、高エネルギー電離放射線、近紫外線、遠紫外線、可視線、赤外線等の領域の波長の光または放射線が挙げられる。光源の汎用性やエネルギー量などの観点から紫外線が特に好ましい。
露光に際しては、酸素によるラジカル重合の阻害を防ぐため、チッソやアルゴンなどの不活性ガスを流して、酸素濃度を100mg/L未満に制御しても良い。
【0062】
本発明の組成物を硬化させる熱としては、150〜280℃が好ましく、200〜250℃がより好ましい。また、熱を付与する時間としては、5〜60分が好ましく、15〜45分がより好ましい。
【0063】
次に本発明で用いることのできるモールド材について説明する。本発明の組成物を用いた光ナノインプリントリソグラフィは、モールド材および/または基板の少なくとも一方は、光透過性の材料を選択する必要がある。本発明に適用される光インプリントリソグラフィでは、基板の上にナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、光透過性モールドを押し当て、モールドの裏面から光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させる。また、光透過性基板上にナノインプリント用硬化性組成物を塗布し、モールドを押し当て、基板の裏面から光を照射し、ナノインプリント用硬化性組成物を硬化させることもできる。
光照射は、モールドを付着させた状態で行ってもよいし、モールド剥離後に行ってもよいが、本発明では、モールドを密着させた状態で行うのが好ましい。
【0064】
本発明で用いることのできるモールドは、転写されるべきパターンを有するモールドが使われる。モールドは、例えば、フォトリソグラフィや電子線描画法等によって、所望する加工精度に応じてパターンが形成できるが、本発明では、モールドパターン形成方法は特に制限されない。
本発明において用いられる光透過性モールド材は、特に限定されないが、所定の強度、耐久性を有するものであれば良い。具体的には、ガラス、石英、石英ガラス、PMMA、ポリカーボネート樹脂などの光透明性樹脂、透明金属蒸着膜、ポリジメチルシロキサンなどの柔軟膜、光硬化膜、金属膜等が例示される。
【0065】
本発明の透明基板を用いた場合に使われる非光透過型モールド材としては、特に限定されないが、所定の強度を有するものであればよい。具体的には、セラミック材料、蒸着膜、磁性膜、反射膜、Ni、Cu、Cr、Feなどの金属基板、SiC、シリコーン、窒化シリコーン、ポリシリコーン、酸化シリコーン、アモルファスシリコーンなどの基板などが例示され、特に制約されない。形状は板状モールド、ロール状モールドのどちらでもよい。ロール状モールドは、特に転写の連続生産性が必要な場合に適用される。
【0066】
本発明の組成物を用いて光インプリントリソグラフィを行う場合、通常、モールドの圧力が10気圧以下で行うのが好ましい。モールド圧力を10気圧を以下とすることにより、モールドや基板が変形しにくくパターン精度が向上する傾向にあり、また、加圧が低いため装置を縮小できる傾向にあり好ましい。モールドの圧力は、モールド凹部にナノインプリント用硬化性組成物が充分行き渡るように調整する。
【0067】
また、モールドを加圧する前に減圧状態にして、モールド加圧と露光を行うと、気泡混入防止、酸素混入による反応性低下の抑制に効果がある。この観点からは減圧状態にしてからモールドを加圧することが好ましい。本発明において、好ましい真空度は、10−1Paから常圧の範囲で行われる。生産性の観点からは大気圧のまま加圧することが好ましい。プロセスの設計上の都合の良い方を適宜選択できる。
【0068】
本発明において、光インプリントリソグラフィにおける光照射は、硬化に必要な照射量よりも十分大きければよい。硬化に必要な照射量は、ナノインプリント用硬化性組成物の不飽和結合の消費量や硬化膜のタッキネスを調べて決定される。
また、本発明に適用される光インプリントリソグラフィにおいては、光照射の際の基板温度は、通常、室温で行われるが、反応性を高めるために加熱をしながら光照射してもよい。
本発明においては、ナノインプリント用硬化性組成物からモールドを剥離する。この際、モールド圧を除去しモールドを基板から離すだけで剥離できることが理想である。モールドを基板から離すだけで剥離できない場合には超音波による振動などで剥離を促進することができる。
【0069】
本発明の組成物は、液晶表示装置などに用いられる永久膜(構造部材用のレジスト)として好ましく使用することができる。
【0070】
[表示装置]
本発明の表示装置としては既述の本発明の組成物を硬化してなる微細パターンを有するものであれば、特に限定するものではなく、液晶表示装置、プラズマディスプレイ表示装置、EL表示装置、CRT表示装置などの表示装置などを言う。表示装置の定義や各表示装置の説明は例えば「電子ディスプレイデバイス(佐々木 昭夫著、(株)工業調査会 1990年発行)」、「ディスプレイデバイス(伊吹 順章著、産業図書(株)平成元年発行)」などに記載されている。
【0071】
本発明の表示装置のうち、本発明の微細パターンを有するカラーフィルタを備えた液晶表示装置は特に好ましい。液晶表示装置については例えば「次世代液晶ディスプレイ技術(内田 龍男編集、(株)工業調査会 1994年発行)」に記載されている。本発明が適用できる液晶表示装置に特に制限はなく、例えば上記の「次世代液晶ディスプレイ技術」に記載されている色々な方式の液晶表示装置に適用できる。本発明はこれらのなかで特にカラーTFT方式の液晶表示装置に対して有効である。カラーTFT方式の液晶表示装置については例えば「カラーTFT液晶ディスプレイ(共立出版(株)1996年発行)」に記載されている。さらに本発明はもちろんIPSなどの横電界駆動方式、MVAなどの画素分割方式などの視野角が拡大された液晶表示装置にも適用できる。これらの方式については、例えば、「EL、PDP、LCDディスプレイ−技術と市場の最新動向−(東レリサーチセンター調査研究部門 2001年発行)」の43ページに記載されている。
【0072】
液晶表示装置はカラーフィルタ以外に電極基板、偏光フィルム、位相差フィルム、バックライト、スペーサ、視野角補償フィルムなどさまざまな部材から構成される。これらの部材については例えば「’94液晶ディスプレイ周辺材料・ケミカルズの市場(島 健太郎 (株)シーエムシー 1994年発行 )」、「2003液晶関連市場の現状と将来展望(下巻)(表 良吉 (株)富士キメラ総研 2003年発行)」に記載されている。
【0073】
本発明の液晶表示装置は、ECB(Electrically Controlled Birefringence)、TN(Twisted Nematic)、IPS(In-Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)、GH(Guest Host)のような様々な表示モードが採用できる。本発明の微細パターンは平坦性に優れるのでIPSに特に好適である。
【実施例】
【0074】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0075】
[実施例1〜16]
表1〜3に示す各素材を混合し、十分に攪拌して本発明の組成物を調整した。調整した組成物について、下記に従い、評価した。
【0076】
粘度測定
粘度の測定は、東機産業(株)社製のRE−80L型回転粘度計を用い、25±0.2℃で測定した。
測定時の回転速度は、0.5mPa・s以上5mPa・s未満は100rpm、5mPa・s以上10mPa・s未満は50rpm、10mPa・s以上は30mPa・s未満は20rpm、30mPa・s以上60mPa・s未満は10rpm、60mPa・s以上120mPa・s未満は5rpm、120mPa・s以上は1rpmで、それぞれ、行った。
結果を以下の区分にしたがって評価した。
A:6mPa・s以上50mPa・s以下
B:50mPa・sより大きく150mPa・s以下
C:150mPa・sより大きく300mPa・s以下
D:300mPa・sより大きい、または、6mPa・s未満
【0077】
弾性回復率の評価
本発明の組成物を膜厚3.5μmとなるようにガラス基板上にスリットコートした。スリットコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯を光源とするナノインプリント装置にセットし、真空度10Torrに減圧した。次いでモールド加圧力0.8kNで、直径25μmの円柱パターンを有し、溝深さ(=円柱高さ)が4.0μmの石英ガラスを材質とするモールドを押し付けた。モールド表面から150mJ/cmの条件で露光し、露光後、モールドを剥離し、レジストパターンを得た。このとき、実施例11以外は簡単にモールドを剥離でき、実施例11は超音波による振動をかけることで剥離できた。得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱することにより完全に硬化させた。
【0078】
上記で得られた硬化物(直径25μmで高さ4.0μmの円柱パターン)の、フォトスペーサの弾性特性を、フィッシャースコープH−100(フィッシャーインストルメンツ社製)装置を用いて、下記の弾性回復率の測定法に従って測定した。なお、断面が正方形の平面圧子(50μm×50μm)の平坦圧子を用いた。
25℃において、負荷速度および徐荷速度をともに3.0mN /秒とし、円柱パターンに0.6mN/μm2 の圧力をかけ、1秒間保持した後、圧力を除荷した時の荷重と変形量とのヒステリシス曲線から総変形量T0 、塑性変形量T1 を求め、所定の圧力における弾性回復率を下式で算出した。
弾性回復率(%)=(T0 −T1 /T0 )×100
それぞれの圧力におけるヒステリシス曲線を測定し、それぞれにおいて弾性回復率を求め、その算術平均をもって本発明の弾性回復率とした。
結果を以下の区分にしたがって評価した。
A: 75%以上
B: 65%以上75%未満
C: 60%以上65%未満
D: 55%以上60%未満
E: 55%未満
以下に、ヒステリシス曲線の一例を示す。総変形量T0 、塑性変形量T1 は以下のとおり決定される。
【0079】
【化1】

【0080】
パターン精度の評価
本発明の組成物を膜厚3.5μmとなるようにガラス基板上にスリットコートした。スリットコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯を光源とするナノインプリント装置にセットし、真空度10Torrに減圧した。次いでモールド加圧力0.8kNで、10μmのライン/スペースパターンを有し、溝深さが4.0μmの石英ガラスを材質とするモールドを押し付けた。モールド表面から150mJ/cmの条件で露光し、露光後、モールドを剥離し、レジストパターンを得た。このとき、実施例11以外は簡単にモールドを剥離でき、実施例11は超音波による振動をかけることで剥離できた。得られたレジストパターンをオーブンで230℃、30分間加熱することにより完全に硬化させた。
加熱硬化後のパターン形状を干渉型表面解析装置(NewView 7300、Zygo社製)にて観察し、パターン形状を以下の基準により評価した。なお、原版との比較は、ライン部全幅の平均高さを50μmの長さに渡って測定し、隣接するスペース部の平均高さを50μmの長さに渡って測定し、それぞれの平均高さの差を原版の高さ(4.0μm)と比較することで行った。
【0081】
結果を以下の区分にしたがって評価した。
A:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンとほぼ同一である(原版のパターンと5%未満の範囲)。
B:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と異なる(原版のパターンと5%以上15%未満の範囲)。
C:モールドのパターン形状の元となる原版のパターン形状と異なる(原版のパターンと15%以上25%未満の範囲)。
D:モールドのパターン形状の元となる原版のパターンと異なる(原版のパターンと25%以上異なる)。
【0082】
[実施例21〜24]
表4に示す各素材を混合し、十分に攪拌して本発明の組成物を調整した。調整した組成物について、下記に従い、評価した。
【0083】
透過率の評価
本発明の組成物を膜厚約3μmとなるようにガラス基板上にスリットコートした。スリットコートした塗布基膜をORC社製の高圧水銀灯を光源とするナノインプリント装置にセットし、真空度10Torrに減圧した。次いでモールドを押し付けずにそのまま150mJ/cmの条件で露光し、レジスト膜を得た。得られたレジストパターンをオーブンで230℃、40分間加熱した。
得られた加熱後のレジスト膜の透過スペクトルを、SolidSpec−3700(島津製作所製)で測定した。なお、バンド幅を1.0nmとし、ガラス基板単体のスペクトルを差し引いてベースライン作成した。
このようにして得た透過率スペクトルの400nm〜410nmの平均値を計算した。
また別途、加熱後のレジスト膜の接触式表面粗さ計P−16(TENCOR社製)を用いて測定した。400〜410nmの平均値を膜厚で割り算して得た1μmあたりの透過率をもってそのサンプルの透過率とした。
評価は、下記の5段階で示した。
A:99%以上
B:99%未満98%以上
C:98%未満97%以上
D:97%未満90%以上
E:90%未満
尚、評価D以上が、実用レベルである。
【0084】
[実施例31]
本実施例において、カラーフィルタ、表示装置を作製した。特開2004−182787号公報の応用例の記載の方法に従ってカラーフィルタを得た。このカラーフィルタにITO(IndiumTinOxide)の透明電極をスパッタリングにより形成した。
【0085】
実施例1の組成物をスリットコーターで、上記カラーフィルタの上に厚さ4.0μmとなるように塗布した。次いで、上記カラーフィルタのブラックマトリックス(BM)上に相当する位置に、深さ3.5μm、直径25μmのスペーサパターンの凹部を有するモールドを用いて実施例1と同様に押し付けた。ただし、完全に押し付けるのではなく、オーバーコート層として厚さ1.0μmの膜が残るように押し付けた。こうして上記カラーフィルタ上にオーバーコート層として1.0μm、オーバーコート層上面からの高さが3.5μmのスペーサの役目の凸部を有する本発明の微細パターンを得た。カラーフィルタに起因する凹凸が平坦化され、且つスペーサは高さ均一性の良いものであった。
【0086】
別途、対向基板としてガラス基板を用意し、対向基板上にITO電極を形成した。前記微細パターン上にさらにポリイミドよりなる配向膜を設けた。その後、カラーフィルタの画素群を取り囲むように周囲に設けられた隔壁外枠に相当する位置に紫外線硬化樹脂のシール剤をディスペンサ方式により塗布し、液晶を滴下し、対向基板と貼り合わせた後、貼り合わされた基板をUV照射し、熱処理してシール剤を硬化させた。このようにして得た液晶セルの両面に、(株)サンリッツ製の偏光板HLC2−2518を貼り付けた。次いで、冷陰極管のバックライトを構成し、前記偏光板が設けられた液晶セルの背面となる側に配置し、本発明の液晶表示装置とした。
【0087】
表示装置に各種画像を表示させ目視観察したところ、大変美しく画像が表示されていて、すばらしい表示性能であった。
【0088】
[実施例32]
本実施例において、組成物を実施例21の組成物に変更した以外は実施例31と同様にカラーフィルタ、表示装置を作製した。
表示装置に各種画像を表示させ目視観察したところ、実施例31や後述する実施例33に比べて画像の迫力にやや欠けるように感じたが、実用レベルとしては十分であった。
【0089】
[実施例33]
本実施例において、組成物を実施例23の組成物に変更した以外は実施例31と同様にカラーフィルタ、表示装置を作製した。
表示装置に各種画像を表示させ目視観察したところ、大変美しく画像が表示されていて、すばらしい表示性能であった。
【0090】
[比較例1〜6]
本発明の組成物を表5または表6に記載の比較例1〜6の組成物に変更した以外は実施例1と同様に行って評価した。比較例2においては、粘度が高すぎモールドを加圧してもパターンを形成できなかった。尚、比較例6については、実施例21と同様に行って透過率も測定した。
【0091】
[比較例31]
本発明の組成物を比較例1の組成物に変更した以外は実施例31と同様にカラーフィルタ、表示装置を作製した。
表示装置に各種画像を表示させ目視観察したところ、ムラが認められ、観賞に耐えないものであった。
【0092】
[比較例32]
本発明の組成物を比較例6の組成物に変更した以外は実施例31と同様にカラーフィルタ、表示装置を作製した。
表示装置に各種画像を表示させ目視観察したところ、ムラが認められ、また画像が黄色っぽく表示され、観賞に耐えないものであった。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

【0097】
【表5】

【0098】
【表6】

【0099】
<1つの重合性基を有する単量体(1官能)>
N−01:N−ビニルピロリドン(日本触媒製)
B−01:ベンジルアクリレート(日立化成工業製、FA−BZA)
<2つの重合性基を有する重合性単量体(2官能)>
N−02:ネオペンチルグリコールジアクリレート(新中村化学工業製、NK エステル、A−NPG)
F−02:CF=CFCFC(CF)(OH)CHCH=CH(特開2006−110997号公報の実施例で使用されているモノマー)
C−02:3、4−エポキシシクロヘキセニルメチル−3、’4’−エポキシシクロヘキセンカルボキシレート(ダイセル化学製、セロキサイド2021)
【0100】
<3つ以上の重合性基を有する重合性単量体(3官能、4官能、多官能)>
T−03:トリメチロールプロパントリアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM−309)
T−04:ペンタエリスリトールテトラアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM−450)
D−06:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(東亞合成社製、アロニックスM−405)
【0101】
<光重合開始剤>
P−1:2,4,6−トリメチルベンゾイル−エトキシフェニル−ホスフィンオキシド(BASF社製、Lucirin TPO−L)
P−2:Irg907、チバガイギー社製
P−3:Irg250、チバガイギー社製
【0102】
<界面活性剤>
W−1:フッ素系界面活性剤(DIC社製、F−780F)
W−2:フッ素系界面活性剤(3M社製、FC-4430)
【0103】
<酸化防止剤>
A−1:スミライザーGA80(住友化学製)
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の組成物は、粘度、モールド剥離性、対モールドパターン精度等のインプリント適性を付与しつつ、スペーサや保護膜などの高い弾性回復率が要求される用途に適したナノインプリント用硬化性組成物に用いることが可能になる。
さらに本発明の組成物は、硬化後に高い透過率を有するものとすることができる。
また、本発明の組成物を用いることにより、高品位なカラーフィルタや表示装置を提供することが可能になる。特に、本発明の組成物を用いることにより、機械的特性、特に弾性回復率に優れた高精度な微細パターンを提供できるため、該微細パターンを用いた高品位なカラーフィルタや表示装置を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有するナノインプリント用硬化性組成物であって、
該組成物の固形分の90質量%以上が、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の固形分の10質量%以上が、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の粘度が6〜300mPa・sである、ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項2】
(A)重合性単量体および(B)光重合開始剤を含有するナノインプリント用硬化性組成物であって、
該組成物の固形分の90質量%以上が、2つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の固形分の30質量%以上が、3つ以上の重合性基を有する重合性単量体であり、該組成物の粘度が6〜300mPa・sである、ナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項3】
前記組成物の粘度が、10〜150mPa・sである、請求項1または2に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項4】
前記組成物の固形分の40質量%以上が、3つの重合性基を有する重合性単量体および/または4つの重合性基を有する重合性単量体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項5】
前記組成物の固形分のうち、5つ以上の重合性基を有する重合性単量体の割合が、20質量%以下である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項6】
前記組成物の固形分のうち、1つの重合性基を有する重合性単量体の割合が、6質量%以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項7】
重合性単量体として、重合性基の数が異なる2種類以上の重合性単量体を含有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項8】
(A)重合性単量体として、2つの重合性基を有する重合性単量体と3つの重合性基を有する重合性単量体とを含有し、これらの合計の含有量が前記組成物の固形分の90質量%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項9】
(A)重合性単量体として、2つの重合性基を有する重合性単量体と、3つの重合性基を有する重合性単量体と、4つの重合性基を有する重合性単量体とを含有し、これらの合計の含有量が前記組成物の固形分の90質量%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項10】
(A)重合性単量体として、3つの重合性基を有する重合性単量体と4つの重合性基を有する重合性単量体とを含有し、これらの合計の含有量が前記組成物の固形分の90質量%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項11】
2つの重合性基を有する重合性単量体と4つの重合性基を有する重合性単量体とをそれぞれ含有し、これらの合計の含有量が前記組成物の固形分の90質量%以上である、請求項1〜7のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項12】
さらに、(C)界面活性剤を含有する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項13】
さらに、(D)酸化防止剤を含有する、請求項1〜12のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項14】
重合性単量体が有する重合性基が(メタ)アクリレート基、ビニル基およびエポキシ基から選ばれる重合性基である、請求項1〜13のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項15】
前記組成物を、230℃で30分加熱してなる硬化物の弾性回復率が55%以上である、請求項1〜14のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項17】
請求項16に記載の硬化物を製造する方法であって、少なくとも請求項1〜15のいずれか1項に記載のナノインプリント用硬化性組成物を基板に塗布する工程と、
前記塗布物にモールドを押圧する工程と、
前記塗布物に光照射する工程とを、
この順番に含むことを特徴とする硬化物の製造方法。
【請求項18】
請求項16に記載の硬化物を有する表示装置。

【公開番号】特開2010−41025(P2010−41025A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17637(P2009−17637)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】