説明

ナノエマルションの製造方法

【課題】エマルションの分散粒子の大きさを単分散化させうるナノエマルションの製造方法を提供する。
【解決手段】アルミニウムまたはアルミニウム合金を陽極酸化して得られたマイクロポア径の分散が平均径の3%以内であるマイクロポア貫通孔を有する微細構造体を介し、一方の側に分散質となる液体、他方の側に分散媒となる液体を配置し、前記分散質となる液体を、前記マイクロポア内を通し、分散媒となる液体中に分散させるナノエマルションの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノエマルションの製造方法に関する。また、本発明は、マイクロポア貫通孔を有する微細構造体を用いてナノエマルションを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、各種の産業分野において、性質の異なる流体を混合することが行われており、その一例として、性質の異なる流体である水と油との混合があり、油を水中に微細な粒子として分散しエマルション化する混合、いわゆる乳化がある。このエマルションの製造法としては、連続相(分散媒)となるべき液体に分散相(分散質)となるべき液体と界面活性剤などの乳化剤とを添加し、得られる混合液を攪拌機などの機械によりかきまぜて製造する機械的方法と、分散相となるべき液体をミクロ多孔質膜を通して連続相となるべき液体中に圧入する膜乳化法がある。前者の方法は、懸濁重合によるポリマーの性能に大きく影響するエマルション粒子の粒径を自由に変化させることが難しく、例えば特許文献1、2のように、後者の方法が一般的に利用されている。
【0003】
しかしながら、これらの方法で作製されるエマルションは、大きさが不揃いであり、さらに大きさが単分散となりうるエマルションの製造方法が望まれている。
【0004】
【特許文献1】特開平11−333271号公報
【特許文献2】特開2003−181262号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、いわゆる膜乳化法において、エマルションの分散粒子の大きさを単分散化させうる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、大きさが単分散化されたマイクロポアを有する陽極酸化皮膜を用いて膜乳化させることで、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、以下の発明を提供する。
(1)アルミニウムまたはアルミニウム合金を陽極酸化して得られたマイクロポア径の分散が平均径の3%以内であるマイクロポア貫通孔を有する微細構造体を介し、
一方の側に分散質となる液体、他方の側に分散媒となる液体を配置し、
前記分散質となる液体を、前記マイクロポア内を通し、分散媒となる液体中に分散させるナノエマルションの製造方法。
(2)前記分散質となる液体を、加圧して、前記マイクロポア内を通す(1)の製造方法。
(3)前記分散媒となる液体を、減圧して、前記分散質となる液体を、前記マイクロポア内を通す(1)の製造方法。
(4)前記マイクロポアのアスペクト比が平均値で10以上10000未満である(1)〜(3)のいずれかに記載のナノエマルションの製造方法。
(5)前記マイクロポアについて、下記式(1)により定義される規則化度が50%以上である、(1)〜(4)のいずれかに記載のナノエマルションの製造方法。
規則化度(%)=B/A×100 (1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
(6)アルミニウムまたはアルミニウム合金を陽極酸化して得られたマイクロポア径の分散が平均径の3%以内であるマイクロポア貫通孔を有する微細構造体を介し、
一方の側に分散質となる第1の流体、他方の側に分散媒となる第2の流体を配置し、
前記第1の流体を、前記マイクロポア内を通し、前記第2の流体中に分散させナノエマルションを製造する方法で、前記第1の流体が無機化合物の少なくとも1種の粒子を含む親水性流体であり、前記第2の流体が有機溶媒であるナノエマルションの製造方法。
(7)上記(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法で製造されるナノエマルション。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、膜乳化により製造される大きさが単分散化されたナノエマルションを得ることができる。
ここで、単分散とは、限定されないが、球体径の分散が平均径の10%以内であることが好ましく、8%以内、5%以内、さらには3%以内であることがより好ましい。
ここで、ナノエマルションとは、限定されないが、平均粒子径が10μm以下〜1nm以上である粒子、またはこれらの粒子を分散した分散媒が好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のナノエマルションの製造方法は、
アルミニウムまたはアルミニウム合金(以下、アルミニウムということがある)を陽極酸化して得られたポア径の分散が平均径の3%以内であるマイクロポア貫通孔を有する微細構造体を介し、
一方の側に分散質となる液体、他方の側に分散媒となる液体を配置し、
前記分散質となる液体を、前記マイクロポア内を通し、分散媒となる液体中に分散させるナノエマルションの製造方法である。
ここで、分散質となる液体を、加圧して、マイクロポア内を通してもよく、分散媒となる液体を、減圧して、分散質となる液体を、マイクロポア内を通してもよい。
【0010】
マイクロポアは、1μm2の範囲において、マイクロポア径(以下ポア径ということがある)の分散が平均径の3%以内であるものを用いる。2%以内であることが好ましい。なお、ポア径の平均径および分散はそれぞれ下記式で求めることができる。
平均径:μx=(1/n)ΣXi
分散:σ2=(1/n)(ΣXi2)−μx2
分散/平均径=σ/μx≦0.03
ここでXiは、1μm2の範囲で測定された1個のマイクロポアのポア径であり、nは1μm2の範囲で測定されたマイクロポアの数である。
【0011】
<マイクロポア貫通孔を有する微細構造体>
<アルミニウム基板>
アルミニウム基板は、特に限定されず、例えば、純アルミニウム板;アルミニウムを主成分とし微量の異元素を含む合金板;低純度のアルミニウム(例えば、リサイクル材料)に高純度アルミニウムを蒸着させた基板;シリコンウエハー、石英、ガラス等の表面に蒸着、スパッタ等の方法により高純度アルミニウムを被覆させた基板;アルミニウムをラミネートした樹脂基板が挙げられる。
【0012】
アルミニウム基板のうち、陽極酸化処理により陽極酸化皮膜を設ける表面は、アルミニウム純度が、99.5質量%以上であるのが好ましく、99.9質量%以上であるのがより好ましく、99.99質量%以上であるのが更に好ましい。アルミニウム純度が上記範囲であると、マイクロポア配列の規則性が十分となる。
【0013】
アルミニウム基板の表面は、あらかじめ脱脂処理および鏡面仕上げ処理を施されるのが好ましい。
【0014】
また、本発明により得られる微細構造体を、あらかじめアルミニウム基板が熱処理を施されるのが好ましい。熱処理により、ポア配列の規則性が向上する。
【0015】
<熱処理>
熱処理を施す場合は、200〜350℃で30秒〜2分程度施すのが好ましい。これにより、後述する陽極酸化処理により生成するマイクロポアの配列の規則性が向上する。
熱処理後のアルミニウム基板は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、水等に直接投入する方法が挙げられる。
【0016】
<脱脂処理>
脱脂処理は、酸、アルカリ、有機溶剤等を用いて、アルミニウム表面に付着した、ほこり、脂、樹脂等の有機成分等を溶解させて除去し、有機成分を原因とする後述の各処理における欠陥の発生を防止することを目的として行われる。
脱脂処理には、従来公知の脱脂剤を用いることができる。具体的には、例えば、市販されている各種脱脂剤を所定の方法で用いることにより行うことができる。
【0017】
中でも、以下の各方法が好適に例示される。
アルコール(例えば、メタノール)、ケトン、ベンジン、揮発油等の有機溶剤を常温でアルミニウム表面に接触させる方法(有機溶剤法);石けん、中性洗剤等の界面活性剤を含有する液を常温から80℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(界面活性剤法);濃度10〜200g/Lの硫酸水溶液を常温から70℃までの温度でアルミニウム表面に30〜80秒間接触させ、その後、水洗する方法;濃度5〜20g/Lの水酸化ナトリウム水溶液を常温でアルミニウム表面に30秒間程度接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して電解し、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;各種公知の陽極酸化処理用電解液を常温でアルミニウム表面に接触させつつ、アルミニウム表面を陰極にして電流密度1〜10A/dm2の直流電流を流して、または、交流電流を流して電解する方法;濃度10〜200g/Lのアルカリ水溶液を40〜50℃でアルミニウム表面に15〜60秒間接触させ、その後、濃度100〜500g/Lの硝酸水溶液を接触させて中和する方法;軽油、灯油等に界面活性剤、水等を混合させた乳化液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に接触させ、その後、水洗する方法(乳化脱脂法);炭酸ナトリウム、リン酸塩類、界面活性剤等の混合液を常温から50℃までの温度でアルミニウム表面に30〜180秒間接触させ、その後、水洗する方法(リン酸塩法)。
【0018】
脱脂処理は、アルミニウム表面の脂分を除去しうる一方で、アルミニウムの溶解がほとんど起こらない方法が好ましい。この点で、有機溶剤法、界面活性剤法、乳化脱脂法、リン酸塩法が好ましい。
【0019】
<鏡面仕上げ処理>
鏡面仕上げ処理は、アルミニウム基板の表面の凹凸をなくして、電着法等による粒子形成処理の均一性や再現性を向上させるために行われる。アルミニウム基板の表面の凹凸としては、例えば、アルミニウム基板が圧延を経て製造されたものである場合における、圧延時に発生した圧延筋が挙げられる。
本発明において、鏡面仕上げ処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。例えば、機械研磨、化学研磨、電解研磨が挙げられる。
【0020】
機械研磨としては、例えば、各種市販の研磨布で研磨する方法、市販の各種研磨剤(例えば、ダイヤ、アルミナ)とバフとを組み合わせた方法が挙げられる。具体的には、研磨剤を用いる方法を、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行う方法が好適に例示される。この場合、最終的に用いる研磨剤としては、#1500のものが好ましい。これにより、光沢度を50%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに50%以上)とすることができる。
【0021】
化学研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法が挙げられる。
また、リン酸−硝酸法、Alupol I法、Alupol V法、Alcoa R5法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好適に挙げられる。中でも、リン酸−硝酸法、H3PO4−CH3COOH−Cu法、H3PO4−HNO3−CH3COOH法が好ましい。
化学研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
【0022】
電解研磨としては、例えば、「アルミニウムハンドブック」,第6版,(社)日本アルミニウム協会編,2001年,p.164−165に記載されている各種の方法が挙げられる。
また、米国特許第2708655号明細書に記載されている方法が好適に挙げられる。
また、「実務表面技術」,vol.33,No.3,1986年,p.32−38に記載されている方法も好適に挙げられる。
電解研磨により、光沢度を70%以上(圧延アルミニウムである場合、その圧延方向および幅方向ともに70%以上)とすることができる。
【0023】
これらの方法は、適宜組み合わせて用いることができる。例えば、研磨剤を用いる方法を、用いる研磨剤を粗い粒子から細かい粒子へと経時的に変更して行い、その後、電解研磨を施す方法が好適に挙げられる。
【0024】
鏡面仕上げ処理により、例えば、平均表面粗さRa、0.1μm以下、光沢度50%以上の表面を得ることができる。平均表面粗さRaは、0.03μm以下であるのが好ましく、0.02μm以下であるのがより好ましい。また、光沢度は70%以上であるのが好ましく、80%以上であるのがより好ましい。
なお、光沢度は、圧延方向に垂直な方向において、JIS Z8741−1997の「方法3 60度鏡面光沢」の規定に準じて求められる正反射率である。具体的には、変角光沢度計(例えば、VG−1D、日本電色工業社製)を用いて、正反射率70%以下の場合には入反射角度60度で、正反射率70%を超える場合には入反射角度20度で、測定する。
【0025】
<(A)陽極酸化によるマイクロポア形成処理>
処理(A)では、アルミニウム基板に陽極酸化処理を施すことにより、該アルミニウム基板表面にマイクロポアを有する酸化皮膜を形成する。
陽極酸化処理としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、後述する自己規則化法を用いるのが好ましい。
自己規則化法は、陽極酸化皮膜のマイクロポアが規則的に配列する性質を利用し、規則的な配列をかく乱する要因を取り除くことで、規則性を向上させる方法である。具体的には、高純度のアルミニウムを使用し、電解液の種類に応じた電圧で、長時間(例えば、数時間から十数時間)かけて、低速で陽極酸化皮膜を形成させる。
この方法においては、陽極酸化により形成されるマイクロポアの平均径は電圧に依存するので、電圧を制御することにより、ある程度所望のポア径を得ることができる。
なお、自己規則化法によりマイクロポアを形成するには、後述する陽極酸化処理を実施すればよいが、好ましくは、後述する陽極酸化処理、脱膜処理および再陽極酸化処理をこの順に実施する。
【0026】
<陽極酸化処理>
陽極酸化処理をする際の平均流速は、0.5〜20.0m/minであるのが好ましく、1.0〜15.0m/minであるのがより好ましく、2.0〜10.0m/minであるのが更に好ましい。上記範囲の流速で陽極酸化処理を行うことにより、均一かつ高い規則性を有するマイクロポアを得ることができる。
また、電解液を上記条件で流動させる方法は、特に限定されないが、例えば、スターラーのような一般的なかくはん装置を使用する方法が用いられる。かくはん速度をデジタル表示でコントロールできるようなスターラーを用いると、平均流速が制御できるため、好ましい。そのようなかくはん装置としては、例えば、AS ONE社製のマグネティックスターラーHS−50Dが挙げられる。
【0027】
陽極酸化処理は、例えば、酸濃度0.01〜5mol/Lの溶液中で、アルミニウム基板を陽極として通電する方法を用いることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、酸溶液であることが好ましく、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等がより好ましく、中でも硫酸、リン酸、シュウ酸が特に好ましい。これらの酸は単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度0.01〜5mol/L、液温−10〜30℃、電流密度0.01〜20A/dm2、電圧3〜300V、電解時間0.5〜30時間であるのが好ましく、電解液濃度0.05〜3mol/L、液温−5〜25℃、電流密度0.05〜15A/dm2、電圧5〜250V、電解時間1〜25時間であるのがより好ましく、電解液濃度0.1〜1mol/L、液温0〜20℃、電流密度0.1〜10A/dm2、電圧10〜200V、電解時間2〜20時間であるのが更に好ましい。
【0029】
陽極酸化処理の処理時間は、0.5分〜16時間であるのが好ましく、1分〜12時間であるのがより好ましく、2分〜8時間であるのが更に好ましい。
【0030】
陽極酸化処理は、一定電圧下で行う以外に、電圧を断続的または連続的に変化させる方法も用いることができる。この場合は電圧を順次低くしていくのが好ましい。これにより、陽極酸化皮膜の抵抗を下げることが可能になり、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
【0031】
陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1〜2000μmであるのが好ましく、1〜1000μmであるのがより好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
また、マイクロポアのポア径は0.001〜0.5μmであるのが好ましい。
【0032】
マイクロポアは、1μm2の範囲において、ポア径の分散が平均径の3%以内であるものを用いる。2%以内であることが好ましい。なお、ポア径の平均径および分散はそれぞれ下記式で求めることができる。
平均径:μx=(1/n)ΣXi
分散:σ2=(1/n)(ΣXi2)−μx2
分散/平均径=σ/μx≦0.03
ここでXiは、1μm2の範囲で測定された1個のマイクロポアのポア径であり、nは1μm2の範囲で測定されたマイクロポアの数である。
【0033】
マイクロポアの占める面積率は、20〜50%であるのが好ましい。なお、マイクロポアの占める面積率は、アルミニウム表面の面積に対するマイクロポアの開口部の面積の合計の割合で定義される。
【0034】
<脱膜処理>
陽極酸化処理によりアルミニウム基板表面に陽極酸化皮膜を形成した後、直ちに後述する陽極酸化皮膜を加熱する処理を実施してもよいが、陽極酸化処理の実施後、脱膜処理および再陽極酸化処理をこの順で実施してから、陽極酸化皮膜を加熱する処理を実施することが好ましい。
脱膜処理では、陽極酸化処理によりアルミニウム基板表面に形成した陽極酸化皮膜を溶解させて除去する。
【0035】
陽極酸化皮膜は、アルミニウム基板に近くなるほど規則性が高くなっているので、この脱膜処理により、一度陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に残存した陽極酸化皮膜の底部分を表面に露出させて、規則的な窪みを得ることができる。したがって、脱膜処理では、アルミニウムは溶解させず、アルミナ(酸化アルミニウム)からなる陽極酸化皮膜のみを溶解させる。
【0036】
アルミナ溶解液は、クロム化合物、硝酸、リン酸、ジルコニウム系化合物、チタン系化合物、リチウム塩、セリウム塩、マグネシウム塩、ケイフッ化ナトリウム、フッ化亜鉛、マンガン化合物、モリブデン化合物、マグネシウム化合物、バリウム化合物およびハロゲン単体からなる群から選ばれる少なくとも1種を含有した水溶液が好ましい。
【0037】
具体的なクロム化合物としては、例えば、酸化クロム(III)、無水クロム(VI)酸等が挙げられる。
ジルコニウム系化合物としては、例えば、フッ化ジルコンアンモニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウムが挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、酸化チタン、硫化チタンが挙げられる。
リチウム塩としては、例えば、フッ化リチウム、塩化リチウムが挙げられる。
セリウム塩としては、例えば、フッ化セリウム、塩化セリウムが挙げられる。
マグネシウム塩としては、例えば、硫化マグネシウムが挙げられる。
マンガン化合物としては、例えば、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カルシウムが挙げられる。
モリブデン化合物としては、例えば、モリブデン酸ナトリウムが挙げられる。
マグネシウム化合物としては、例えば、フッ化マグネシウム・五水和物が挙げられる。
バリウム化合物としては、例えば、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウム、塩素酸バリウム、塩化バリウム、フッ化バリウム、ヨウ化バリウム、乳酸バリウム、シュウ酸バリウム、過塩素酸バリウム、セレン酸バリウム、亜セレン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、亜硫酸バリウム、チタン酸バリウム、水酸化バリウム、硝酸バリウム、あるいはこれらの水和物等が挙げられる。上記バリウム化合物の中でも、酸化バリウム、酢酸バリウム、炭酸バリウムが好ましく、酸化バリウムが特に好ましい。
ハロゲン単体としては、例えば、塩素、フッ素、臭素が挙げられる。
【0038】
中でも、上記アルミナ溶解液が、酸を含有する水溶液であるのが好ましく、酸として、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等が挙げられ、2種以上の酸の混合物であってもよい。
酸濃度としては、0.01mol/L以上であるのが好ましく、0.05mol/L以上であるのがより好ましく、0.1mol/L以上であるのが更に好ましい。上限は特にないが、一般的には10mol/L以下であるのが好ましく、5mol/L以下であるのがより好ましい。不要に高い濃度は経済的でないし、より高いとアルミニウム基板が溶解するおそれがある。
【0039】
アルミナ溶解液は、−10℃以上であるのが好ましく、−5℃以上であるのがより好ましく、0℃以上であるのが更に好ましい。なお、沸騰したアルミナ溶解液を用いて処理すると、規則化の起点が破壊され、乱れるので、沸騰させないで用いるのが好ましい。
【0040】
アルミナ溶解液は、アルミナを溶解し、アルミニウムを溶解しない。ここで、アルミナ溶解液は、アルミニウムを実質的に溶解させなければよく、わずかに溶解させるものであってもよい。
【0041】
脱膜処理は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。
【0042】
浸せき法は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上述したアルミナ溶解液に浸せきさせる処理である。浸せき処理の際にかくはんを行うと、ムラのない処理が行われるため、好ましい。
浸せき処理の時間は、10分以上であるのが好ましく、1時間以上であるのがより好ましく、3時間以上、5時間以上であるのが更に好ましい。
【0043】
脱膜処理では、工程(A)で形成した陽極酸化皮膜を、酸またはアルカリを用いて、部分的に溶解させる。陽極酸化皮膜を部分的に溶解させるとは、工程(A)で形成した陽極酸化皮膜を完全に溶解させるのではなく、図1(B)に示されるように、アルミニウム基板12a上に、マイクロポア16bを有する陽極酸化皮膜14bが残存するように、図1(A)に示す陽極酸化皮膜14aの表面およびマイクロポア16aの内部を部分的に溶解させることを指す。
【0044】
ここで、陽極酸化皮膜の溶解量は、陽極酸化皮膜全体の0.001〜50質量%であるのが好ましく、0.005〜30質量%であるのがより好ましく、0.01〜15質量%であるのが更に好ましい。上記範囲であると、陽極酸化皮膜の表面の配列が不規則な部分を溶解させて、マイクロポアの配列の規則性を高くすることができるとともに、マイクロポアの底部分に陽極酸化皮膜を残存させて、次に説明する再陽極酸化処理の起点を残すことができる。
【0045】
<再陽極酸化処理>
脱膜処理により陽極酸化皮膜を除去して、アルミニウム基板の表面に規則的な窪みを形成した後、再び陽極酸化処理を施すことで、マイクロポアの規則化度がより高い陽極酸化皮膜を形成することができる。
陽極酸化処理は、従来公知の方法を用いることができるが、上述した<陽極酸化処理>と同一の条件で行われるのが好ましい。
また、直流電圧を一定としつつ、断続的に電流のオンおよびオフを繰り返す方法、直流電圧を断続的に変化させつつ、電流のオンおよびオフを繰り返す方法も好適に用いることができる。これらの方法によれば、陽極酸化皮膜に微細なマイクロポアが生成するため、特に電着処理により封孔処理する際に、均一性が向上する点で、好ましい。
【0046】
陽極酸化皮膜を低温で行うと、マイクロポアの配列が規則的になり、また、ポア径が均一になる。
一方、陽極酸化処理を比較的高温で行うことにより、マイクロポアの配列を乱し、また、ポア径のばらつきを所定の範囲にすることができる。また、処理時間によっても、ポア径のばらつきを制御することができる。
【0047】
図1(C)に示されるように、再陽極酸化処理により、図1(B)に示されるアルミニウム基板12aの酸化反応が進行し、アルミニウム基板12b上に、マイクロポア16bよりも深さ方向に成長したマイクロポア16cを有する陽極酸化皮膜14cが形成される。陽極酸化処理−脱膜処理−再陽極酸化処理−脱膜処理−再陽極酸化処理のように上記の工程は複数回繰り返してもよい。
【0048】
陽極酸化皮膜の膜厚は、0.1〜2000μmであるのが好ましく、1〜1000μmであるのが好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
マイクロポアのポア径は0.001〜0.5μmであるのが好ましい。
結果としてマイクロポアのアスペクト比は、10以上10000未満であることが好ましく、25以上5000未満であることが好ましく、50以上1000未満であることが好ましい。ナノエマルション法においては、液相に加わる加圧力が皮膜へと伝わるため、アスペクト比が上記範囲を下回ると、破損する可能性があり、また、アススペクト比が上記範囲を上回ると、液相がマイクロポア内に滞留しやすくなり、それぞれ好ましくない。
また、平均ポア密度は50〜1500個/μm2であるのが好ましい。
【0049】
<(B).(A)で形成された陽極酸化皮膜の加熱処理>
上記手順で形成された陽極酸化皮膜を50℃以上の温度で、且つ、0.5g/cmの加重をかけながら、少なくとも10分間加熱処理する。この加熱処理を行うには、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板を上記の条件で加熱すればよい。
本発明者らは、鋭意検討した結果、陽極酸化皮膜を加熱処理する際に、所望の平坦性に応じて、平坦な表面を有するプレートで挟み込みながら固定焼成することで、陽極酸化皮膜の平坦性が大幅に向上することを見出した。
また、陽極酸化皮膜を加熱すること自体、陽極酸化皮膜表面やマイクロポア内に残留している酸イオンが、皮膜中に残存する水分の蒸発に伴い除去される効果があると推測される。この結果、陽極酸化皮膜の耐酸性および耐アルカリ性が向上する。
【0050】
加重が0.5g/cm未満だと、平坦性を十分に向上させることができない。
加重量は1.0g/cm以上が好ましく、5.0g/cm以上がより好ましく、10.0g/cm以上が更に好ましい。酸化皮膜の厚さにもよるが、加重量が500g/cmを超えると、皮膜自体が破損してしまうため、好ましくない。
【0051】
また、加熱温度が50℃未満だと、陽極酸化皮膜表面やマイクロポア内に残留している酸イオンを除去する作用を十分発揮することができない。
加熱温度は150℃以上であることが好ましく、200℃以上であることがより好ましく、400℃以上であることがさらに好ましい。
但し、加熱温度が高すぎると、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム基板が熱によって変形するため、固定プレート間で破損するおそれがあるので、加熱温度は800℃以下であることが好ましい。
【0052】
加熱時間が10分未満だと、酸化皮膜の平坦性向上化、および、陽極酸化皮膜表面やマイクロポア内に残留している酸イオンを除去する作用を十分発揮することができない。
加熱時間は15分間以上が好ましく、30時間以上がより好ましく、1時間以上がさらに好ましい。
10時間以上加熱しても、平坦性は向上せず、また、陽極酸化皮膜表面やマイクロポア内に残留している酸イオンを除去する作用にもはや寄与せず、歩留まりやエネルギー効率の観点から好ましくない。
【0053】
加熱後の陽極酸化皮膜は、急速に冷却するのが好ましい。冷却する方法としては、例えば、微細構造体を水等に直接投入する方法が挙げられる。
【0054】
微細構造体を本発明のエマルションの製造方法に用いる場合、マイクロポアが貫通していること、すなわち、マイクロポアが貫通孔であることが必要となる。
マイクロポア貫通孔を有する微細構造体を得る場合、本発明の微細構造体の製造方法では、さらに、(C)上記処理(A)で得られた酸化被膜から、アルミニウムを除去する処理、および(D)上記処理(A)で得られた酸化被膜のマイクロポアを貫通させる処理、
をこの順で施した後、上記処理(B)を施すことが好ましい。
【0055】
<(C)アルミニウム除去処理>
図1の(A)は、処理(A)後の状態を示した部分断面図である。図1の(A)に示すように、アルミニウム基板12aの表面には、マイクロポア16aを有する陽極酸化皮膜14aが形成されている。
アルミニウム除去処理では、図1(A)〜(D)に示す状態からアルミニウム基板12a、12bを溶解して除去する。図2は、本処理後の状態を示した部分断面図であり、マイクロポア16dを有する陽極酸化皮膜14dからなる微細構造体が示されている。
したがって、アルミニウム除去処理には、アルミナは溶解せず、アルミニウムを溶解する処理液を用いる。
【0056】
処理液としては、アルミナは溶解せず、アルミニウムを溶解する液であれば特に限定されないが、例えば、塩化水銀、臭素/メタノール混合物、臭素/エタノール混合物、王水、塩酸/塩化銅混合物等の水溶液等が挙げられる。
濃度としては、0.01〜10mol/Lが好ましく、0.05〜5mol/Lがより好ましい。
処理温度としては、−10℃〜80℃が好ましく、0℃〜60℃が好ましい。
【0057】
アルミニウム除去処理は、上述した処理液に接触させることにより行う。接触させる方法は、特に限定されず、例えば、浸せき法、スプレー法が挙げられる。中でも、浸せき法が好ましい。このときの接触時間としては、10秒〜5時間が好ましく、1分〜3時間がより好ましい。
【0058】
アルミニウム除去処理後の陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜1000μmであるのが好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
【0059】
アルミニウム除去処理後、後述する処理(D)を行う前に、陽極酸化皮膜14dを水洗処理する。水和によるマイクロポア16dのポア径の変化を抑制するため、水洗処理は30℃以下で実施することが好ましい。
【0060】
<(D)マイクロポア貫通処理>
マイクロポア貫通処理では、図2に示すマイクロポア16dを有する陽極酸化皮膜14dを、酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきさせることにより、陽極酸化皮膜14dを部分的に溶解させる。これにより、マイクロポア16d底部の陽極酸化皮膜14dが除去され、マイクロポア16dが貫通する(マイクロポア貫通孔16が形成される)。図3は、マイクロポア貫通処理後の状態を示した部分断面斜視図であり、マイクロポア貫通孔16を有する陽極酸化皮膜14からなる微細構造体が示されている。
図3では、陽極酸化皮膜14に存在する全てのマイクロポアがマイクロポア貫通孔16となっているが、処理(D)により、陽極酸化皮膜に存在する全てのマイクロポアが貫通しなくてもよい。但し、本発明の微細構造体をポーラスアルミナメンブレンフィルタとして使用する場合、陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアのうち70%以上が、処理(D)により貫通することが好ましい。
【0061】
マイクロポア貫通処理に酸水溶液を用いる場合は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれらの混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の濃度は1〜10質量%であるのが好ましい。酸水溶液の温度は、25〜40℃であるのが好ましい。
マイクロポア貫通処理にアルカリ水溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なくとも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。アルカリ水溶液の濃度は0.1〜5質量%であるのが好ましい。アルカリ水溶液の温度は、20〜35℃であるのが好ましい。
具体的には、例えば、50g/L、40℃のリン酸水溶液、0.5g/L、30℃の水酸化ナトリウム水溶液または0.5g/L、30℃の水酸化カリウム水溶液が好適に用いられる。
酸水溶液またはアルカリ水溶液への浸せき時間は、8〜120分であるのが好ましく、10〜90分であるのがより好ましく、15〜60分であるのが更に好ましい。
【0062】
マイクロポア貫通処理後の陽極酸化皮膜の膜厚は、1〜1000μmであるのが好ましく、10〜500μmであるのが更に好ましい。
【0063】
マイクロポア貫通処理後、上記の処理(B)を行う前に、陽極酸化皮膜14を水洗処理する。水和によるマイクロポア貫通孔16のポア径の変化を抑制するため、水洗処理は30℃以下で実施することが好ましい。
【0064】
アルミニウム基板に、少なくとも上記(A)および(B)の処理をこの順に施すことにより、好ましくは、上記(A)、(C)、(D)および(B)の処理をこの順を施すことにより得られる本発明の微細構造体は、処理(B)で、加重をかけながら陽極酸化皮膜を加熱することによって、皮膜が平坦な形状へと変形していく。平坦性としては、皮膜内の任意の箇所において、10mm長当たり20μm以下の反りであることが好ましく、15μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。
陽極酸化皮膜における反りの大きさは、例えば、表面荒さ計やマイクロマップ計により測定することができる。
【0065】
本発明の微細構造体は、マイクロポアについて、下記式(1)により定義される規則化度が50%以上であることが好ましく、70%以上でありことがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
規則化度(%)=B/A×100 (1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
【0066】
なお図4は、ポアの規則化度を算出する方法の説明図である。図4を用いて、上記式(1)をより具体的に説明する。
図4(A)に示されるマイクロポア1は、マイクロポア1の重心(平面の略円状の等価円の中心)を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円3(マイクロポア2に内接している。)を描いた場合に、円3の内部にマイクロポア1以外のマイクロポアの重心を6個含んでいる。したがって、マイクロポア1は、Bに算入される。
図4(B)に示されるマイクロポア4は、マイクロポア4の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円6(マイクロポア5に内接している。)を描いた場合に、円6の内部にマイクロポア4以外のマイクロポアの重心を5個含んでいる。したがって、マイクロポア4は、Bに算入されない。また、図1(B)に示されるマイクロポア7は、マイクロポア7の重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円9(マイクロポア8に内接している。)を描いた場合に、円9の内部にマイクロポア7以外のマイクロポアの重心を7個含んでいる。したがって、マイクロポア7は、Bに算入されない。
【0067】
<親水化処理>
微細構造体は、その表面および・またはマイクロポア内部に保護膜を形成しても良く、Zr元素およびSi元素からなる群から選択される少なくとも1つを含有する無機保護膜、又は、水不溶性ポリマーを含有する有機保護膜が挙げられる。なかでも、無機保護膜を形成する親水化処理が好ましい。
【0068】
<無機保護膜>
Zr元素を有する保護膜の形成としては、特に限定されないが、例えば、ジルコニウム化合物が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的であり、保護膜の強固性/安定性の観点からリン化合物をあわせて溶解させた水溶液を用いることが好ましい。
【0069】
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カルシウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、オキシ硝酸ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、ジルコニウムエトキシド、ジルコニウムプロポキシド、ジルコニウムブトキシド、ジルコニウムアセチルアセトナート、テトラクロロビス(テトラヒドロフラン)ジルコニウム、ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウム(IV)ジクロリド等が使用でき、特にフッ化ジルコン酸ナトリウムが好ましい。また濃度としては、保護膜厚の均一性の観点から、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜5質量%がより好ましい。
【0070】
リン化合物としては、リン酸、リン酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カルシウム等が使用でき、特にリン酸水素ナトリウムが好ましい。また濃度としては、保護膜厚の均一性の観点から、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0071】
また、形成される保護膜の陽極酸化皮膜の水和を妨げる機能が向上することから、浸せき処理の際、ジルコニウム化合物が溶解している水溶液にタンニン酸を含めることが好ましい。この場合、水溶液中におけるタンニン酸の濃度は、0.05〜10質量%であることが好ましく、0.1〜5質量%がより好ましい。
また処理温度としては、0〜120℃が好ましく、20〜100℃がより好ましい。
【0072】
Si元素を有する保護膜の形成としては、特に限定されないが、例えば、アルカリ金属ケイ酸塩が溶解している水溶液に直接浸せきして処理する方法が一般的である。
アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、ケイ酸塩の成分である酸化ケイ素SiO2とアルカリ金属酸化物M2Oの比率(一般に〔SiO2〕/〔M2O〕のモル比で表す)と濃度によって保護膜厚の調節が可能である。ここでMとしては、特にナトリウム、カリウムが好適に用いられる。
モル比としては、〔SiO2〕/〔M2O〕が0.1〜5.0が好ましく、0.5〜3.0がより好ましい。また、SiO2の含有量としては、0.1〜20質量%が好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
【0073】
上記の微細構造体は、本発明のナノエマルションの製造方法以外にもポーラスアルミナメンブランフィルタとして好適である。
また、微細構造体は、用途に応じて、陽極酸化皮膜のマイクロポアに、有機化合物や無機化合物、金属微粒子等を担持することもできる。
【0074】
<分散質となる液体・分散媒となる液体>
本発明の製造方法では、上記で説明したマイクロポア貫通孔を有する微細構造体を介し、一方の側に分散質となる液体(以下第1の流体ということがある)、他方の側に分散媒となる液体(以下第1の流体ということがある)を配置する。第1の流体と第2の流体とは特に限定されるものではない。エマルションは、互いに混じり合わない2液相間で一方が他方の相に微粒子状に分散しているコロイド分散系である。エマルションには分散媒が水(親水性液体)の場合の水−油エマルション(W/O型エマルション)と、分散媒が油(水に溶けない有機液体)の場合の油−水エマルション(O/W型エマルション)とがある。W/O型エマルションを製造する場合は、分散質である第1の流体は有機液体であり、分散媒である第2の流体は親水性の流体である。O/W型エマルションの場合は分散質と分散媒がこの逆であればよい。
【0075】
エマルションには、例えばクリーム、牛乳、バター、水中に分散した潤滑油、水中に分散した顔料、高分子物質の水分散懸濁系である場合もある。このような種々のエマルションの製造に応じて本発明ではそれぞれの分散質と分散媒とを第1の流体と第2の流体に選択する。
【0076】
<第1の流体>
本発明で使用する好ましい第1の流体は、アルカリ金属の珪酸塩、炭酸塩、リン酸塩、硫酸塩、アルカリ土類金属のハロゲン化物並びに銅族元素及び鉄族元素の硫酸塩、塩酸塩、硝酸塩からなる群より選ばれた無機化合物の少なくとも1種の粒子を含む親水性流体、例えば、水またはアルコールであるのが好ましい。無機化合物の粒子の濃度は0.3mol/L以上飽和濃度が好ましい。
【0077】
<第2の流体>
上記の無機化合物粒子を含有する親水性流体が第1の流体である場合は、第2の流体は、有機溶媒であることが好ましく、その種類として何を使用するかは特に限定はないが、水に対する溶解度が5%以下である有機溶媒を使用することが好ましい。その具体例を以下に列挙する。
【0078】
脂肪族炭化水素類;n−ヘキサン、イソヘキサン、n−ヘプタン、イソヘプタン、n−オクテン、イソオクテン、ガソリン、石油エーテル、灯油、ベンジン、ミネラルスピリットなど。
【0079】
脂環式炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン、シクロノナンなど。
【0080】
芳香族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、クメン、メシチレン、テトラリン、スチレンなど。
【0081】
エーテル類;プロピルエーテル、イソプロピルエーテルなど。
【0082】
ハロゲン化炭化水素;塩化メチレン、クロロホルム、塩化エチレン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンなど。
【0083】
エステル類;酢酸エチル、酢酸−n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸−n−アミル、酢酸イソアミル、乳酸ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチルなど。
【0084】
上記有機溶媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。
【0085】
<界面活性剤>
上記有機溶媒に界面活性剤を配合する場合、その界面活性剤としては、非イオン系のものであるという以外は特に限定はない。その好ましい具体例を以下に列挙する。界面活性剤はエマルションの乳化剤をして作用する。
【0086】
ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル系;ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレート、ポリオキシエチレンソルビタンステアレートなど。
【0087】
ポリオキシエチレン高級アルコールエーテル系;ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルなど。
【0088】
ポリオキシエチレン脂肪族エステル系;ポリオキシエチレングリコールモノラウレート、ポリオキシエチレングリコールモノステアレート、ポリオキシエチレングリコールステアレート、ポリオキシエチレングリコールモノオレートなど。
【0089】
グリセリン脂肪族エステル系;ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライドなど。
【0090】
ポリオキシエチレンソルビトール脂肪族エステル系;テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなど。
【0091】
上記界面活性剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用しても構わない。界面活性剤の使用量としては、用いる有機溶媒の10重量%程度以下が好ましく、0.1〜3重量%程度がさらに好ましい。
【0092】
<分散質となる液体をマイクロポア内を通し分散媒となる液体中に分散させる工程>
分散質となる液体をマイクロポア内を通し分散媒となる液体中に分散させる工程は、公知の膜乳化装置を用いることができる。本発明で用いる微細構造体を膜として用いる。分散質となる液体を加圧して、マイクロポア内を通す方法でもよいが、分散媒となる液体を減圧して分散質となる液体をマイクロポア内に通してもよく、加圧と減圧とを併用してもよい。加圧、減圧装置は公知の装置を用いることができる。加圧の場合、0.01〜10MPaが好ましい。この範囲であると本発明で用いる微細構造体を安定に分散質が通過できるからである。
分散させる工程は、常温で行ってもよいが、加熱してもよい。その場合温度は、30〜200℃が好ましく、40〜100℃がより好ましい。この理由は、加熱により分散質の表面エネルギーが向上し分散性がよくなるためであると推測している。
第1の流体、第2の流体のいずれの流体を攪拌してもよい。攪拌は、機械的攪拌、超音波攪拌、磁気的攪拌、気体挿入攪拌等のいずれを用いてもよい。
【0093】
<エマルションの沈殿化と形状補正>
有機溶媒中に形成した多数のエマルション粒子から微小球体を製造する方法としては、エマルション粒子を含む有機溶媒に該エマルション粒子を沈殿させることができるような沈殿剤を加え、粒子の前駆体である沈殿物を形成させ、この沈殿物を焼成して粒子を得る方法と、重合前の粒子原料を含むゾルを有機溶媒中でゾルのエマルション粒子としたのち、重合反応を促進させて前記ゾルのエマルション粒子をゲル化して沈殿させ、この沈殿物を乾燥して、焼成する方法とがある。後者の方法は、前者の方法に比べ、得られた無機質均一微小球体は不純物を含みにくい、微小球体における細孔の孔径のコントロールが容易となる、といったメリットがあり、このようにして得られた球体は、例えば液体クロマトグラフィー用の充填剤などの用途に適している。
【0094】
エマルション粒子を沈殿させることのできるような沈殿剤を含む水溶液としては、アルカリ土類金属のハロゲン化物、無機酸、有機酸、無機酸のアンモニウム塩、有機酸のアンモニウム塩およびアルカリ金属の炭酸塩からなる群より選ばれた少なくとも1種の水溶液であり、その具体例としては、重炭酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、塩化カリウム、炭酸水素カリウム等の水溶液が挙げられるが、これによって限定されるものではない。上記水溶液は、0.05mol/L〜飽和濃度で使用することが好ましく、0.1〜2.0mol/Lで使用することがさらに好ましい。
【0095】
また、重合反応を促進させる方法としては、加熱する方法、重合促進剤を添加する方法、光を照射する方法などがある。
【0096】
上記のようにして出来上がる、いわゆるナノエマルション方式により形成される微小球体の粒径の分布としては、分散質である第1の流体が抜けてくるマイクロポアの孔径が均一であるため、より単分散な粒径の微小球体が形成される。具体的には、マイクロポアの平均径、及び、アスペクト比により多少異なるが、球体径の分散が平均径の8%以内であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、3%以内であることが好ましい。
【0097】
また、本発明により得られる微小球体は多数の細孔を有するものであるが、前記細孔の孔径を容易にコントロールするために、次のような手段を講じても構わない。すなわち、水溶性有機高分子化合物を加えた粒子原料含有水溶液(例えばシリカゾル)を、厚み方向に貫通し孔径がほぼ均一である貫通孔を有するとともに疎水性の表面を持つ微細構造体のマイクロポアを介して有機溶媒中に注入する。得られたゾルのエマルション粒子を、重合反応を促進させて(上記方法参照)ゲル化してゲル微粒子となし、該ゲル微粒子を水洗、乾燥、焼成して微小球体を得る。このようにすれば、前記微小球体における細孔の孔径を容易にコントロールでき、細孔の孔径がほぼ均一な多孔質SiO球状微粒子からなる無機質均一微小球体を得ることができる。
【0098】
前記水溶性有機高分子化合物としては特に限定はなく、ポリエチレングリコール、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミン、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。水溶性有機高分子化合物を使用する場合の配合量としては特に限定はなく、重合前の粒子原料の重量の10〜500質量%であることが好ましい。
【0099】
本発明により製造された無機質均一微小球体は、既に述べた液体クロマトグラフィー用充填剤のほか、レーザードップラー流速計などによって行なう流体の計測に用いるトレーサー粒子、ガスクロマトグラフィー用の充填剤、液晶用スペーサとして使用することができる。
【0100】
また、除放性無機質マイクロカプセル壁材として芳香剤、染料、殺菌剤、殺虫剤、虫獣類の忌避剤、ビタミン剤、食品、栄養剤、医薬品、消臭剤、接着剤、液晶などを包含し、多くの分野に幅広く利用できる。
【0101】
体質顔料として化粧料、塗料、プラスチック、インキ、及びフィルム等の付着防止剤等の分野にも利用できる。
【0102】
顔料、染料などの着色物質を包含させて均一な着色微小球体とすることも可能であるために、化粧料、インキ、プラスチックの添加剤として優れた効果がある。磁気テープ並びに触媒としても優れた性能が期待される。
【実施例】
【0103】
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されない。
【0104】
[実施例1]
1.電解研磨処理
高純度アルミニウム基板(住友軽金属社製、純度99.99質量%、厚さ0.4mm)を、10cm四方の面積で陽極酸化処理できるようカットし、以下に示す組成の電解研磨液を用いて、電圧25V、液温度65℃、液流速3.0m/minの条件で電解研磨処理を行った。陰極はカーボン電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
【0105】
<電解研磨液組成>
・85質量%リン酸(和光純薬社製試薬) 660mL
・純水 160mL
・硫酸 150mL
・エチレングリコール 30mL
【0106】
2.陽極酸化によるマイクロポア形成処理
上記で得られた研磨処理後のサンプルを、0.30mol/L硫酸の電解液で、電圧25V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理した。さらに得られたサンプルを、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬して脱膜処理した。
この処理を4回繰り返した後、0.30mol/L硫酸の電解液で、電圧25V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で5時間再陽極酸化処理し、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬して脱膜処理し、図1に示す、アルミニウム基板12a表面に、マイクロポア16aが直管状で且つハニカム状に配列された陽極酸化皮膜14aを形成した。
なお、陽極酸化処理、再陽極酸化処理共に、陰極はステンレス電極とし、電源は、GP0110−30R(高砂製作所社製)を用いた。また、冷却装置としては、NeoCool BD36(ヤマト科学社製)、かくはん加温装置としてペアスターラー PS−100(EYELA社製)を用いた。電解液の流速は渦式フローモニターFLM22−10PCW(AS ONE製)を用いて計測した。
【0107】
3.アルミニウム除去処理
上記で得られたサンプルを、2mol/L塩化水銀水溶液を用いて、20℃、3時間浸漬させ、アルミニウム基板12bを溶解して除去し、図2に示すマイクロポア16dを有する陽極酸化皮膜14dからなる微細構造体を作成した。
【0108】
4.マイクロポア貫通処理
上記で得られたサンプルを、5質量%リン酸を用いて、30℃、30分間浸漬処理し、マイクロポアを貫通させて、図3に示す、マイクロポア貫通孔16を有する陽極酸化皮膜14からなる微細構造体を作成した。
【0109】
5.加熱処理
上記で得られた図3に示す微細構造体を、加重2.0g/cm温度400℃の条件下で1時間加熱処理を施し、実施例1のマイクロポアを有する微細構造体を得た。
【0110】
6.エマルションの作製
上記で得られたマイクロポアを有する微細構造体を乳化膜として、図4に示すような乳化装置に装着し、珪酸ナトリウム4%水溶液を、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレート20g/Lのヘキサン溶液800mlの中にシリンジポンプを用いて圧入した。圧入時の条件は、圧入量毎分1g/cm、温度25℃であった。これにより、溶液中に多数のエマルション粒子が形成した。
【0111】
ここで、図4に示した装置を簡単に説明する。符号30は、定量シリンジポンプ部である。この定量シリンジポンプ部30の先端部にマイクロポア貫通孔を有する微細構造体32が装着されている。符号34は、前記マイクロポア貫通孔を有する微細構造体32を支持するための支持網である。符号36は、筒状の反応容器であって、前記定量シリンジポンプ部30と連結するものである。符号20は、送入管であって、定量ポンプ22により有機溶媒ビーカー24中の有機溶媒25を前記反応容器36の中に供給することができる。しかるに、粒子原料を含有する水溶液31を、前記定量シリンジポンプ部30により、定量的に反応容器36内の有機溶媒25に注入することができる。多数のエマルション粒子が形成した反応容器36内の有機溶媒は、送出管26により再度有機溶媒ビーカー24に戻されることになる。用いた微細構造体の厚さは、いずれも70μmであった。
【0112】
多数のエマルション粒子が形成した溶液を、予め溶解しておいた1.5mol/Lの重炭酸アンモニウム溶液1Lに加えると、次第に水不溶性の沈殿物が形成しだした。その後、2時間放置し、濾過分離し、水洗、メタノール洗浄後、110℃で24時間乾燥した。こうしてシリカ微小球体(ナノエマルション)を得た。
【0113】
得られたシリカ微小球体(ナノエマルション)は、平均粒子径は70〜72nmの範囲内に体積基準で99%が入り、平均粒子径は71nmであった。径の分散は、2.6%であった。
【0114】
[実施例2]
上記、2.陽極酸化によるマイクロポア形成処理において、電解液を0.50mol/Lとし、電圧を40Vとした以外は、実施例1と同じ方法により実施例2のシリカ微小球体(ナノエマルション)を得た。
【0115】
得られたシリカ微小球体(ナノエマルション)は、平均粒子径は111〜107nmの範囲内に体積基準で99%が入り、平均粒子径は109nmであった。径の分散は、2.9%であった。
【0116】
[比較例1]
上記、2.陽極酸化によるマイクロポア形成処理のうち、0.30mol/L硫酸の電解液で、電圧25V、液温度15℃、液流速3.0m/minの条件で1時間陽極酸化処理、さらに得られたサンプルを、0.5mol/Lリン酸の混合水溶液を用いて40℃の条件で20分間浸漬して脱膜処理の4回繰り返し処理を省略した以外は、実施例1と同様の方法で比較例1のシリカ微小球体(ナノエマルション)を得た。
【0117】
得られたシリカ微小球体(ナノエマルション)は、平均粒子径は82〜48nmの範囲内に体積基準で99%が入り、平均粒子径は65nmであった。径の分散は、12.3%であった。
【0118】
また、実施例1、2、及び、比較例1のサンプルの表面写真(倍率20000倍)をFE−SEMにより撮影し、1μm×1μmの視野で任意のマイクロポア300個について、平均径および径の分散を下記式により求め、分散/平均径を求めた。結果を表1に示す。
平均径:μx=(1/n)ΣXi
分散:σ2=(1/n)(ΣXi2)−μx2
分散/平均径=σ/μx
ここでXiは、1μm2の範囲で測定された1個のマイクロポアのポア径である。
【0119】
また、実施例1、2、及び、比較例1のサンプルについて、FE−SEMによる表面写真(倍率20000倍)の1μm×1μmの視野で任意のマイクロポア300個を用いて、下記式(1)で定義される規則化度を求めた。結果を表1に示す。
規則化度(%)=B/A×100 (1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。
【0120】
また、実施例1、2、及び、比較例1のサンプルについて、FE−SEMによる破断面写真(倍率1000倍)の100μm×100μmの視野、及び、倍率20000倍)の1μm×1μmの視野で、マイクロポアを観察し、その平均アスペクト比を求めた。結果を表1に示す。
【0121】
なお、実施例1で用いた微細構造体をあらかじめナトリウムケイ酸塩(SiO2の含有量は、5質量%)が溶解している水溶液に直接浸せき処理したものを用いて、ナノエマルションを製造した場合は、水和による孔の封孔が抑止されるため未処理の微細構造体を用いた場合より長時間の使用が可能であった。
【0122】
[実施例3]
上記、2.陽極酸化によるマイクロポア形成処理において、電解液を0.45mol/Lシュウ酸と0.03mol/Lりん酸とし、電圧を55Vとした以外は、実施例1と同じ方法により実施例3のシリカ微小球体(ナノエマルション)を得た。
【0123】
得られたシリカ微小球体(ナノエマルション)は、平均粒子径は135〜138nmの範囲内に体積基準で99%が入り、平均粒子径は137nmであった。径の分散は、2.5%であった。
【0124】
[実施例4]
上記、2.陽極酸化によるマイクロポア形成処理において、電解液を0.25mol/L硫酸とし、電圧を16Vとした以外は、実施例1と同じ方法により実施例4のシリカ微小球体(ナノエマルション)を得た。
【0125】
得られたシリカ微小球体(ナノエマルション)は、平均粒子径は42〜44nmの範囲内に体積基準で99%が入り、平均粒子径は43nmであった。径の分散は、2.9%であった。
【0126】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】図1は、陽極酸化処理後の状態を示した部分断面図であり、(A)陽極酸化処理後、(B)脱膜処理後、(C)再陽極酸化処理後、(D)脱膜処理後の状態を示す。
【図2】図2は、アルミニウム除去処理後の状態を示した部分断面図である。
【図3】図3は、マイクロポアの貫通孔を示した部分断面図である。
【図4】図4は、エマルション製造装置を示す模式図である。
【符号の説明】
【0128】
1、2、4、5、7、8 マイクロポア
3、6、9 円
12a、12b:アルミニウム基板
14、14a、14b、14c、14d:陽極酸化皮膜
16a、16b、16c、16d:マイクロポア
16:マイクロポア貫通孔
20:送入管
22:定量ポンプ
24:有機溶媒ビーカー
25:有機溶媒
30:定量シリンジポンプ部
31:粒子原料を含有する水溶液
32:マイクロポア貫通孔を有する微細構造体
34:32を支持するための支持網
36:反応容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金を陽極酸化して得られたマイクロポア径の分散が平均径の3%以内であるマイクロポア貫通孔を有する微細構造体を介し、
一方の側に分散質となる液体、他方の側に分散媒となる液体を配置し、
前記分散質となる液体を、前記マイクロポア内を通し、分散媒となる液体中に分散させるナノエマルションの製造方法。
【請求項2】
前記分散質となる液体を、加圧して、前記マイクロポア内を通す請求項1の製造方法。
【請求項3】
前記マイクロポアのアスペクト比が平均値で10以上10000未満であることを特徴とする、請求項1または2に記載のナノエマルションの製造方法。
【請求項4】
前記マイクロポアについて、下記式(1)により定義される規則化度が50%以上である、請求項1〜3のいずれかに記載のナノエマルションの製造方法。
規則化度(%)=B/A×100 (1)
上記式(1)中、Aは、測定範囲におけるマイクロポアの全数を表す。Bは、一のマイクロポアの重心を中心とし、他のマイクロポアの縁に内接する最も半径が短い円を描いた場合に、その円の内部に前記一のマイクロポア以外のマイクロポアの重心を6個含むことになる前記一のマイクロポアの測定範囲における数を表す。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−28635(P2009−28635A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194928(P2007−194928)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】