説明

ナノカーボン材料製造装置及び方法

【課題】純度が高いナノカーボン材料を効率よく製造することができるナノカーボン材料製造装置及び方法を提供する。
【解決手段】流動触媒11を充填した流動層反応部12aと、炭素源である炭素原料(CH4)13を前記流動層反応部12a内に供給する原料供給装置14と、流動触媒11を前記流動層反応部12a内に供給する流動触媒供給装置15と、前記流動層反応部12a内の流動材である流動触媒11が飛散及び流下する空間を有するフリーボード部12bと、前記流動層反応部12aに導入し、内部の流動触媒11を流動させる流動ガス16を供給する流動ガス供給装置17と、流動層反応部12aを加熱する加熱部12cと、該フリーボード部12bから排出される排ガス18aを処理する排ガス処理装置18と、前記流動層反応部12aから触媒付ナノカーボン材料19Aを回収ライン20により抜出して回収する回収装置21とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、純度の高いナノカーボン材料を製造することができるナノカーボン材料製造装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カーボンナノチューブや、カーボンナノファイバ等のナノカーボン材料は、アーク法の他、気相熱分解法、レーザー昇華法、凝縮相の電解法などの製造方法が種々提案されている(特許文献1乃至3)。
【0003】
これに対し、本出願人は、大量にナノカーボン材料を製造する方法として、流動層反応方法によるナノ単位のカーボン材料の製造を先に提案した(特許文献4)。
【0004】
この流動層反応方法によるナノカーボン材料の製造においては、流動材と触媒とを兼用してなる流動触媒は一次粒子を造粒して粗粒化した二次粒子を用いることで、気泡上昇型の流動層反応機を形成し、触媒粒子の反応時間を十分に取るようにしている。そして、流動層反応装置で得られた触媒付ナノカーボン材料は、その製造の際に使用した触媒を分離除去するために、酸により洗浄除去するようにしている。
この触媒付ナノカーボン材料の洗浄過程の一例を図5に示す。
【0005】
図8に示すように、流動触媒からナノカーボン材料が成長した触媒付ナノカーボン材料106は、例えば塩酸等の酸110を用いた酸処理によって、触媒を溶解し、濾過処理をした後、精製ナノカーボン材料111を得ている。
【0006】
図9は、流動触媒に成長したナノカーボン材料の模式図である。図6に示すように、流動触媒103は、担体(例えばMgO)101に担持された活性成分(Fe)102から構成されており、流動層反応装置においては、ナノカーボン材料の成長の触媒機能として作用すると共に、流動材としての機能を発揮している。
【0007】
図10及び図11は、流動触媒の活性成分からナノカーボン材料が成長する様子を示す模式図である。
図10に示すように、流動層反応器内では流動触媒103は例えばメタン等の炭素原料の供給により、担体101に担持された活性成分102からナノカーボン材料105が成長することとなる。
その後、流動層反応器から分離されたナノカーボン材料は、酸処理工程において、担体と活性成分とが溶解され、消失させて、精製ナノカーボン材料としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3100962号公報
【特許文献2】特公表2001−520615号公報
【特許文献3】特開2001−139317号公報
【特許文献4】特開2004−76197号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、図11に示すように、酸処理工程の際において、活性金属102がナノカーボン材料の末端に残存すると、精製物野中にその活性金属102が不純物として残存することとなり、ナノカーボン材料の純度が低下する、という問題がある。
【0010】
図12は、活性成分の周囲にアモルファスカーボンが成長している様子を示す模式図である。図12に示すように、炭素減少(メタン:CH4)は、活性金属102の触媒作用により、ナノカーボン材料105を成長させているが、その成長の際に、ナノカーボン材料の末端部分の活性金属102の周囲をアモルファスカーボン107が発生し、活性金属102の全体を被覆する場合がある。
【0011】
このようなアモルファスカーボン107が存在すると、酸処理工程において、アモルファスカーボンを十分溶解させることができずに、ナノカーボン材料の末端にアモルファスカーボンに被覆された活性金属が残留し、純度の低下を招くこととなる。
【0012】
また、近年炭素材料の種々の用途が拡大しているので、純度の高いナノカーボン材料はその適用の幅が広がるので、大量にしかも純度が高いナノカーボン材料を効率よく製造することができる製造方法及び装置の出現が望まれている。
【0013】
本発明は、上記問題に鑑み、純度が高いナノカーボン材料を効率よく製造することができるナノカーボン材料製造装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、触媒とナノカーボン材料製造用原料とを供給して、ナノカーボン材料を製造するナノカーボン材料製造部と、該ナノカーボン材料製造装置で製造された触媒付ナノカーボン材料を回収する回収部と、を具備してなり、該回収部に酸素を導入し、触媒付ナノカーボン材料の接触端部を部分燃焼させることを特徴とするナノカーボン材料製造装置にある。
【0015】
第2の発明は、第1の発明において、前記酸素の供給を回収装置内の温度が200〜500℃となってから導入することを特徴とするナノカーボン材料製造装置にある。
【0016】
第3の発明は、触媒とナノカーボン材料製造用原料とからナノカーボン材料を製造し、得られた触媒付ナノカーボン材料を不活性雰囲気で回収し、その後酸素を導入し、触媒付ナノカーボン材料の接触端部を部分燃焼させることを特徴とするナノカーボン材料製造方法にある。
【0017】
第4の発明は、第3の発明において、前記部分燃焼する際、温度が200〜500℃となってから酸素を導入することを特徴とするナノカーボン材料製造方法にある。
【0018】
第5の発明は、流動層反応器を用いてナノカーボン材料を製造する方法であって、前記流動層反応器に流動触媒を供給する工程と、前記流動触媒を加熱する工程と、前記流動層反応器に炭素原料を供給することで流動触媒を流動させながら触媒上にナノカーボン材料を成長させる工程と、前記流動触媒を所定の温度まで徐冷させる工程において、徐冷された前記流動触媒に空気または酸素を供給することで触媒付ナノカーボン材料の接触端部を部分燃焼させながら流動させることを特徴とするナノカーボン材料製造方法にある。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、排出された触媒付ナノカーボン材料が製造温度から所定温度以下に冷却されたことを確認した後、空気を供給し、末端部分を部分燃焼させ、担体に担持された活性金属から成長されているナノカーボン材料が成長した活性金属との接触端部を、部分燃焼させ、触媒とナノカーボン材料とを切り離す。これにより精製ナノカーボン材料の純度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、実施例1に係るナノカーボン材料製造装置の概略図である。
【図2】図2は、実施例2に係るナノカーボン材料製造装置の概略図である。
【図3】図3は、ナノカーボン材料の燃料温度(低温)と燃焼割合との関係図を示す。
【図4】図4は、ナノカーボン材料の燃料温度(高温)と燃焼割合との関係図を示す。
【図5】図5は、実施例3に係るナノカーボン材料製造システムの概略図である。
【図6】図6は、実施例3に係る活性成分の周辺に形成されるアモルファスカーボンの様子を示す模式図である。
【図7】図7は、実施例4に係るナノカーボン材料製造システムの概略図である。
【図8】図8は、触媒付ナノカーボン材料の洗浄過程の一例を示す図である。
【図9】図9は、流動触媒に成長したナノカーボン材料の模式図である。
【図10】図10は、流動触媒の活性成分からナノカーボン材料が成長する様子を示す模式図である。
【図11】図11は、流動触媒の活性成分からナノカーボン材料が成長する様子を示す模式図である。
【図12】図12は、従来技術に係る活性成分の周辺に形成されるアモルファスカーボンの様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0022】
本発明による実施例に係るナノカーボン材料製造装置について、図面を参照して説明する。図1は、実施例1に係るナノカーボン材料製造装置の概略図である。
ここで、本実施例では、活性成分(鉄:Fe)を担持した担体(酸化マグネシウム:MgO)からなる一次粒子を圧密した所定粒径の二次粒子のナノカーボン材料製造用触媒を、触媒作用と流動作用とを兼用とする流動触媒として用いている。
図1に示すように、本実施例にかかるナノカーボン材料製造装置10は、内部に触媒と流動材とを兼用した流動触媒11を充填した流動層反応部12aと、炭素源である炭素原料(CH4)13を前記流動層反応部12a内に供給する原料供給装置14と、流動触媒11を前記流動層反応部12a内に供給する流動触媒供給装置15と、前記流動層反応部12a内の流動材である流動触媒11が飛散及び流下する空間を有するフリーボード部12bと、前記流動層反応部12aに導入し、内部の流動触媒11を流動させる流動ガス16を供給する流動ガス供給装置17と、流動層反応部12aを加熱する加熱部12cと、該フリーボード部12bから排出される排ガス18aを処理する排ガス処理装置18と、前記流動層反応部12aから触媒付ナノカーボン材料19Aを回収ライン20により抜出して回収する回収装置21とを具備するものである。
【0023】
本実施例では、ナノカーボン材料の回収装置21は、図示しない真空ポンプと空気導入手段とを備えている。
そして、ナノカーボン材料製造装置10でナノカーボン材料を製造した後、回収ライン20を介して、触媒付ナノカーボン材料19Aを回収装置21で回収後、200〜500℃になったことを確認したら、空気導入手段により空気(酸素)を導入し、ナノカーボン材料を部分燃焼させている。
【0024】
この部分燃焼は、短時間で行い、ナノカーボン材料が成長した接触端部を部分燃焼させて、ナノカーボン材料と活性金属とを切り離すこととしている。
この結果、アモルファスカーボンにより被覆されている活性金属とナノカーボン材料とが分離されることとなる。
【0025】
図3及び図4にナノカーボン材料の燃料温度と燃焼割合との関係図を示す。
図3の場合には、低温(200℃)で燃焼が開始するナノカーボン材料である。
図4の場合には、高温(400℃)で燃焼が開始するナノカーボン材料である。
よって、ナノカーボン材料の製造条件により、燃焼性の異なるナノカーボン材料が得られるので、その燃焼性に適した温度条件に設定するのが好ましい。
【0026】
なお、燃焼温度が500℃を超えると、図4に示すように、ナノカーボン材料自身の燃焼が促進されて、燃焼割合が増加するので、500℃未満で燃焼するのが好ましい。
【0027】
なお、この部分燃焼の際に、成長したナノカーボン材料の一部も燃焼することとなるので、燃焼時間は極めて未時間時間となる。
その後、回収装置21から部分燃焼された触媒付ナノカーボン材料19Bを排出する。また、回収装置21は、その後図示しない真空装置により真空引きを行い、次の回収に備える。
【0028】
ここで、前記流動層反応部12aの流動層反応形式には気泡型流動層型と噴流型流動層型とがあるが、本発明ではいずれのものを用いてもよい。
【0029】
本実施形態では、流動層反応部12aとフリーボード部12bと加熱部12cとから流動層反応器12を構成している。また、フリーボード部12bは、流動層反応部12aよりもその流路断面積の大きいものが好ましい。
【0030】
前記原料供給装置14より供給される原料ガスである炭素原料13は、炭素を含有する化合物であれば、いずれのものでもよく、例えばCO、CO2の他、メタン、エタン、プロパン及びヘキサン等のアルカン類、エチレン、プロピレン及びアセチレン等の不飽和有機化合物、ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等の含酸素官能基を有する有機化合物、ポリエチレン、ポリプロピレン等の高分子材料、又は石油や石炭(石炭転換ガスを含む)等を挙げることができるが、本発明はこれらに限定されるものではない。また、酸素濃度制御のため、含酸素炭素源CO、CO2、アルコール類、エーテル類、カルボン酸類等と、酸素を含まない炭素源とを2つ以上組合わせて供給することもできる。
【0031】
この炭素原料13は、流動層反応部12a内にガス状態で供給し、流動材である流動触媒11による攪拌により均一な反応が行われ、ナノカーボン材料を成長させている。この際、所定の流動条件となるように、別途流動ガス16として流動ガス供給装置17により不活性ガスを流動層反応部12a内に導入している。
【0032】
そして、流動層反応器12の加熱部12cにより流動層反応部12a内を300℃〜1300℃の温度範囲、より好ましくは400℃〜1200℃の温度範囲とし、メタン等の炭素原料11を不純物炭素分解物の共存環境下で一定時間触媒に接触することによってナノカーボン材料を合成している。
【0033】
なお、流動層反応部12aから排出された排ガス18aは排ガス処理装置18で排ガス処理がなされる。その際、サイクロン等の気固分離装置を用いて、微粒子を分離し、回収装置21へ導入するようにしてもよい。なお、サイクロン以外としては、例えばバグフィルタ、セラミックフィルタ、篩等の公知の分離手段を用いることができる。
【0034】
このように、回収装置21で回収された後、所定温度範囲内で部分燃焼させることにより、触媒付ナノカーボン材料の末端の活性金属を覆うアモルファスカーボンを燃焼するようにしているので、活性金属が剥き出し状態となり、次工程である酸処理装置32における酸洗浄が確実になされ、精製されたナノ単位の精製ナノカーボン材料(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ等)19Cを得ることができる。
【実施例2】
【0035】
次に、本発明の他の実施例について説明する。
図2は、実施例2に係るナノカーボン材料製造装置の概略図である。
本実施例では、連続して回収することができる装置である。
図2に示すように、本実施例では、第1の回収措置21Aと第2の回収装置21Bとを備えている。
流動層反応器12をから排出される触媒付ナノカーボン材料19Aは、回収ライン20から分岐された第1の回収ライン20aに介装された第1の回収措置21Aと、第2の回収ライン20bに介装された第2の回収装置21Bとのいずれかに導入される。なお、V1〜V8は第1乃至第8のバルブである。
【0036】
このような装置を用いて、部分燃焼させる工程について説明する。
1)先ず第1及びバルブV1及びV2を開放し、触媒付ナノカーボン材料19Aを第1の回収装置21A内に導入し、第1及び第2のバルブV1及びV2を閉じる。
2)次いで、温度計測装置T1により内部温度が所定の温度(例えば200℃)まで低下したことを確認したら、第8のバルブV8を開き、空気導入手段33により所定量の空気34を導入し、第1の回収装置21A内でナノカーボン材料を部分燃焼させる。
3)部分燃焼が終了した後、第4のバルブV4を開き、酸処理装置32へ部分燃焼した後の触媒付ナノカーボン材料19Bを供給し、ここで酸洗浄により触媒部分の担体及び活性金属を溶解させて精製ナノカーボン材料19Cを得る。
4)その後、第7のバルブV7を開き、真空ポンプ30を作動させることにより、第1の回収装置21A内を真空にして、次の部分燃焼に備える。
【0037】
この真空作業の際には、別に準備していた第2の回収装置21Bを用いて、部分燃焼し、交互で処理することで連続しての作業を行うことができる。
【実施例3】
【0038】
次に、本発明の他の実施例について説明する。
図5は、実施例3に係るナノカーボン材料製造システムの概略図である。本実施例では、触媒付ナノカーボン材料の部分燃焼中に触媒付ナノカーボン材料を流動させることで、ナノカーボン材料を担体から分離するプロセスを示す。
【0039】
図5は、実施例1と同様にナノカーボン材料製造装置10にてナノカーボン材料を製造した後に、徐冷される前の加熱された状態の触媒付ナノカーボン材料19Aを大気開放しないでナノカーボン材料分離装置40に供給し、触媒付ナノカーボン材料19Aが500℃以下の温度領域まで徐冷されたら、部分燃焼用流動ガス供給装置42により部分燃焼用ガス(例えば空気)41をナノカーボン材料分離装置40に供給し、触媒付ナノカーボン材料を流動させることで、触媒付ナノカーボン材料を部分燃焼させながら担体から分離するようにしている。
ナノカーボン材料分離装置40に供給された触媒付ナノカーボン材料は、不活性ガス43により流動させることで徐冷する。この不活性ガスによる流動させながら徐冷は、複数の触媒付ナノカーボン材料間の温度ムラを抑制する。
ナノカーボン材料分離装置40には、内部に部分燃焼用流動ガス41を供給する部分燃焼用流動ガス供給装置と、不活性ガス43を供給する不活性ガス供給装置と、ナノカーボン材料分離装置40から導出された不純物を含むナノカーボン材料51と不純物とを分離するナノカーボン材料回収装置50が設けられている。
【0040】
図5において、ナノカーボン材料分離装置40で触媒付ナノカーボン材料を部分燃焼用流動ガス41により部分燃焼させて、ナノカーボン材料が成長する起点となっている活性金属とナノカーボン材料の接触端部を覆うアモルファスカーボンを燃焼し、活性金属を剥き出しにしている。これにより、触媒付ナノカーボン材料は、ナノカーボン材料と担体との接触端部が露出され、アモルファスカーボンに覆われている状態よりも脆弱化されている。そして、触媒付ナノカーボン材料を流動させることで、触媒付ナノカーボン材料同士を衝突させて、脆弱化している接触端部に衝撃を加え、担体とナノカーボン材料を分離している。複数の触媒付ナノカーボン材料は別途導入される窒素等の不活性ガス43により流動させることで温度ムラを抑制させながら徐冷しているので、部分燃焼が均一に起こり、触媒付ナノカーボン材料間の温度ムラよるナノカーボン材料の過剰な燃焼を抑制する。この過剰な燃焼は不純物であるアモルファスカーボンの燃焼以外にナノカーボン材料も燃焼する現象であり、触媒付ナノカーボン材料の温度ムラがあり、一部に高温部分があると発生する。なお、不活性ガスは不活性ガス供給装置44によりナノカーボン材料分離装置40に供給される。
【0041】
図6では、触媒付ナノカーボン材料の成長起点である活性金属102を覆うアモルファスカーボンが燃焼されていく様子を示した概念図である。加熱された状態の触媒付ナノカーボン材料に空気を導入することで、ナノカーボン材料105と活性金属102との接触端部に存在するアモルファスカーボン107を部分燃焼させている。これにより、触媒付ナノカーボン材料においてナノカーボン材料105と活性金属102が剥き出しとなり、接触端部を脆弱化している。ここで、接触端部とはナノカーボン材料105の成長起点である活性金属102を含むナノカーボン材料端部のことである。
【0042】
図5に示したナノカーボン材料分離装置40において、流動ガス41として空気を導入することが好ましい。流動ガス供給装置42から供給される流動ガス41として空気を利用することで、触媒付ナノカーボン材料を部分燃焼させながら、担体からナノカーボン材料を分離することができる。ナノカーボン材料分離装置40における流動ガス41の導入方法は、気泡型流動層型と噴流型流動層型とがあるが、本発明ではいずれのものを用いてもよい。
【0043】
本実施例において、ナノカーボン材料分離装置40に導入される部分燃焼用流動ガス41の一例として、空気を用いて説明したが、本実施例において部分燃焼用流動ガス41としては酸素を含むガスであればいずれでも良く、水蒸気や酸素のみを流動ガスとして供給することも可能である。ナノカーボン材料分離装置40に供給される流動ガス41の流速は、触媒付ナノカーボン材料の重量や温度によって適宜調整されるものである。
【0044】
本実施例において、不活性ガスによる流動させながらの徐冷と空気による部分燃焼のための流動を連続的に行うことも可能である。この場合、不活性ガス43によって、触媒付ナノカーボン材料の温度が500℃以下になった時点で、流動ガス種を空気に変更して不純物の燃焼を行う。これによりナノカーボン材料の部分的な過剰燃焼が抑制される。これにより、部分燃焼プロセスによる過剰燃焼を抑制すると共に、再加熱によるプロセスの追加がないので、収率が向上し、コストが低減される。
【0045】
また、流動ガス41の流速を切り替えることでナノカーボン材料の分離のために必要な時間を短縮することもできる。流動ガスの導入初期段階では、流速を遅くすることで触媒付ナノカーボン材料の部分燃焼用空気を流動層内に拡散させ、流動層内に燃焼用の空気が拡散されたら、流速を早くして触媒付ナノカーボン材料を激しく流動させる。これにより、触媒付ナノカーボン材料同士の物理的な衝突を起こし、ナノカーボン材料を担体から分離しても良い。
【0046】
担体から分離されたナノカーボン材料51と流動により発生する不純物を含む分離物52は、ナノカーボン材料分離装置40の上部から導出され、ナノカーボン材料回収装置50によりナノカーボン材料51と不純物を含む分離物52とに分離され、ナノカーボン材料51は回収される。ナノカーボン材料回収装置50としては、ナノカーボン材料と不純物とを分離する装置を適用することが好ましく、サイクロン装置が好適に利用される。
【0047】
本実施例において、ナノカーボン材料分離装置40として、触媒付ナノカーボン材料に加える衝撃の回数を多くすることを目的として、流動層内に障害物を配置することも可能である。流動層内に配置される障害物としては、ナノカーボン材料分離装置40の内壁からナノカーボン材料分離装置40の内部に伸びる障害物等やナノカーボン材料分離装置40のフリーボード部に設けられた天板等であっても良い。
【実施例4】
【0048】
次に、本発明の他の実施例について説明する。
図7は、実施例4に係るナノカーボン材料製造システムの概略図である。本実施例では、実施例3において、さらに触媒付ナノカーボン材料19Aを一時的に貯留容器60に貯留して、貯留容器60で部分燃焼させ、徐冷した後に、ナノカーボン材料分離装置40で触媒付燃焼ナノカーボン材料を流動させることで、ナノカーボン材料を担体から分離するプロセスを示している。
【0049】
図7は、本実施例におけるナノカーボン材料製造装置10とその後段に設置されているナノカーボン材料分離装置40との間に貯留容器60を設けた態様を開示している。この貯留容器60は流動層反応器とナノカーボン材料分離装置40における処理量を調整するために一次的に貯留するために用いられるものであって、ナノカーボン材料分離装置40の処理状況に応じて、貯留容器60で触媒付ナノカーボン材料をナノカーボン材料分離装置40に供給できるまで一時的に貯留している。
【0050】
ナノカーボン材料製造装置40により製造された触媒付ナノカーボン材料は、大気開放されることなく、加熱された状態で貯留容器60に供給される。そして、触媒付ナノカーボン材料は、貯留容器60において所定温度範囲内で部分燃焼させる。この部分燃焼は実施例1と同様の方法にて実施されている。貯留容器60には空気導入手段61により燃焼用の空気62が供給されている。
【0051】
部分燃焼された触媒付ナノカーボン材料は、貯留容器60で徐冷しても良い。しかし、部分燃焼により触媒金属が剥き出しとなっていることから、触媒金属の再酸化を防止するために、燃焼終了後は不活性ガスでパージしている。その後、触媒付燃焼ナノカーボン材料を不活性ガス雰囲気で徐冷されることが好ましい。
【0052】
ナノカーボン材料分離装置40から担体が排出され、新たに触媒付ナノカーボン材料が供給できる状況となったら、貯留容器60に貯留していた触媒付燃焼ナノカーボン材料をナノカーボン材料分離装置40に供給する。触媒付燃焼ナノカーボン材料は、ナノカーボン材料分離装置40において、不活性ガスを導入し流動させることで担体から分離させる。
【0053】
貯蔵容器60における触媒付ナノカーボン材料の部分燃焼によりナノカーボン材料と担体の接触端部が脆弱化された触媒付燃焼ナノカーボン材料をナノカーボン材料分離装置40に投入し、触媒付燃焼ナノカーボン材料を激しく流動させることで物理的な衝突を起こし、ナノカーボン材料を担体から分離する。
【0054】
実施例3と同様に、担体から分離されたナノカーボン材料51および不純物を含む分離物は、ナノカーボン材料分離装置40の上部から導出され、ナノカーボン材料回収装置50によりナノカーボン材料51と不純物を含む分離物52とに分離され、ナノカーボン材料51は回収される。ナノカーボン材料回収装置50としては、ナノカーボン材料と不純物とを分離する装置を適用することが好ましく、サイクロン装置が好適に利用される。
【産業上の利用可能性】
【0055】
以上のように、本発明に係るナノカーボン材料製造装置によれば、製造後のナノカーボン材料を部分燃焼させることで、触媒とナノカーボン材料とを切り離し、精製ナノカーボン材料の純度を向上することができる。
【符号の説明】
【0056】
10 ナノカーボン材料製造装置
11 流動触媒
12 流動層反応器
13 炭素原料
14 原料供給装置
15 流動触媒供給装置
16 流動ガス
17 流動ガス供給装置
18 排ガス処理装置
19A 触媒付ナノカーボン材料
19B 部分燃焼された触媒付ナノカーボン材料
19C 精製ナノカーボン材料
20 回収ライン
21、21A、21B 回収装置
40 ナノカーボン材料分離装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒とナノカーボン材料製造用原料とを供給して、ナノカーボン材料を製造するナノカーボン材料製造部と、
該ナノカーボン材料製造装置で製造された触媒付ナノカーボン材料を回収する回収部と、を具備してなり、
該回収部に酸素を導入し、触媒付ナノカーボン材料の接触端部を部分燃焼させることを特徴とするナノカーボン材料製造装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記酸素の供給を回収装置内の温度が200〜500℃以下となってから導入することを特徴とするナノカーボン材料製造装置。
【請求項3】
触媒とナノカーボン材料製造用原料とからナノカーボン材料を製造し、得られた触媒付ナノカーボン材料を回収し、その後酸素を導入し、触媒付ナノカーボン材料の接触端部を部分燃焼させることを特徴とするナノカーボン材料製造方法。
【請求項4】
請求項3において、
前記部分燃焼する際、温度が200〜500℃以下となってから酸素を導入することを特徴とするナノカーボン材料製造方法。
【請求項5】
流動層反応器を用いてナノカーボン材料を製造する方法であって、
前記流動層反応器に流動触媒を供給する工程と、
前記流動触媒を加熱する工程と、
前記流動層反応器に炭素原料を供給することで流動触媒を流動させながら触媒上にナノカーボン材料を成長させる工程と、
前記流動触媒を所定の温度まで徐冷させる工程において、
徐冷された前記流動触媒に空気または酸素を供給することで触媒付ナノカーボン材料の接触端部を部分燃焼させながら流動させることを特徴とするナノカーボン材料製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−56775(P2012−56775A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−198247(P2010−198247)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】