説明

ナノサイズ粒子、ナノサイズ粒子を含むリチウムイオン二次電池用負極材料、リチウムイオン二次電池用負極、リチウムイオン二次電池、ナノサイズ粒子の製造方法

【課題】高容量と良好なサイクル特性を実現するリチウムイオン二次電池用の負極材料を提供する。
【解決手段】種類の異なる元素Aと元素Dとを含み、前記元素AがSi、Sn、Al、Pb、Sb、Bi、Ge、InおよびZnからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であり、前記元素DがFe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(Ce、およびPmを除く)、Hf、Ta、WおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であり、前記元素Aの単体または固溶体である第1の相と、前記元素Aと前記元素Dとの化合物である第2の相を少なくとも有することを特徴とするナノサイズ粒子と、前記ナノサイズ粒子を負極活物質として含むリチウムイオン二次電池用負極材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用の負極などに関するものであり、特に、高容量かつ長寿命のリチウムイオン二次電池用の負極に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、負極活物質としてグラファイトを用いたリチウムイオン二次電池が実用化されている。また、負極活物質と、カーボンブラック等の導電助剤と、樹脂の結着剤とを混練してスラリーを調製し、銅箔上に塗布・乾燥して、負極を形成することが行われている。
【0003】
一方、高容量化を目指し、リチウム化合物として理論容量の大きな金属や合金、特にシリコンおよびその合金を負極活物質として用いるリチウムイオン二次電池用の負極が開発されている。しかし、リチウムイオンを吸蔵したシリコンは、吸蔵前のシリコンに対して約4倍まで体積が膨張するため、シリコンを負極活物質として用いた負極は、充放電サイクル時に膨張と収縮を繰り返す。そのため、負極活物質の剥離などが発生し、従来のグラファイト負極と比較して、寿命が極めて短いという問題があった。
【0004】
そこで、シリコン系活物質の表面にカーボンナノファイバーを成長させ、その弾性作用により負極活物質粒子の膨張と収縮による歪みを緩和し、サイクル特性を向上させるという非水電解液二次電池用負極が開示されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0005】
また、SiやSnなどのLiを吸蔵可能な成分Aと、CuやFeなどの成分Bとをメカノケミカル法により混合することによって得られる、成分Aと成分Bの化合物の粉末からなるリチウム二次電池用負極材料が開示されている(特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−244984号公報
【特許文献2】特開2005−78999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、負極活物質と導電助剤と結着剤とのスラリーを塗布・乾燥して、負極を形成する従来の負極は、負極活物質と集電体とを導電性の低い樹脂の結着剤で結着しており、樹脂の使用量は内部抵抗が大きくならないように最小限に抑える必要があり、結合力が弱い。そのため、体積膨張を抑制できていないと、負極活物質は、充放電時に、負極活物質の微粉化と負極活物質の剥離、負極の亀裂の発生、負極活物質間の導電性の低下などが発生して容量が低下する。それゆえ、サイクル特性が悪く、二次電池の寿命が短いという問題点があった。
【0008】
また、特許文献1に記載の発明は、シリコン自体の体積膨張を抑制することが不十分であり、負極活物質と集電体とを結合力の不十分な樹脂で結着するものであり、サイクル特性の劣化は十分には防げなかった。さらに、カーボンナノファイバーの形成工程があるため、生産性が悪かった。また、特許文献2に記載の発明も、ナノサイズのレベルで各成分を均質に分散させることが困難であり、サイクル特性の劣化は十分には防げなかった。
【0009】
特に、負極材料としての実用化が期待されているシリコンは、充放電時の体積変化が大きいため、割れが発生しやすく、充放電サイクル特性が悪いという問題点があった。
【0010】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とすることは、高容量と良好なサイクル特性を実現するリチウムイオン二次電池用の負極材料を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、リチウムを吸蔵しやすい第1の相に、界面を介して、リチウムを吸蔵しにくい第2の相を接合させると、第1の相がリチウムを吸蔵して膨張する際に、第2の相が膨張しにくいため、第2の相に接する第1の相の膨張が抑制されることを見出した。本発明は、この知見に基づきなされたものである。
【0012】
すなわち本発明は、以下のナノサイズ粒子やリチウムイオン二次電池用負極材料などを提供するものである。
(1)種類の異なる元素Aと元素Dとを含み、前記元素AがSi、Sn、Al、Pb、Sb、Bi、Ge、InおよびZnからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であり、前記元素DがFe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(Ce、およびPmを除く)、Hf、Ta、W、およびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であり、前記元素Aの単体または固溶体である第1の相と、前記元素Aと前記元素Dとの化合物である第2の相を少なくとも有し、前記第1の相と前記第2の相が、界面を介して接合しており、前記第1の相と前記第2の相が、外表面に露出しており、前記第1の相は、界面以外が略球面状の表面を有することを特徴とするナノサイズ粒子。
(2)前記元素Aが、Siであり、前記元素Dが、Fe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、Hf、Ta、WおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であることを特徴とする(1)に記載のナノサイズ粒子。

(3)平均粒径が2〜500nmであることを特徴とする(1)または(2)に記載のナノサイズ粒子。
(4)前記第2の相がDA(1<x≦3)なる化合物であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(5)さらに、前記元素Aと前記元素Dとの化合物である第3の相を有し、前記第3の相は、前記第1の相中に分散していることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(6)前記第1の相が主として結晶質シリコンであり、前記第2の相および/または前記第3の相が結晶質シリサイドであることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(7)前記第1の相がリンまたはホウ素を添加したシリコンで構成されることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(8)前記第1の相に酸素を添加したことを特徴とする(1)〜(7)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(9)前記元素Aと前記元素Dの合計に占める前記元素Dの原子比率が0.01〜25%であることを特徴とする(1)〜(8)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(10)前記元素Dが、元素Dを選ぶことのできる群より選ばれた2種以上の元素であり、一つの前記元素Dと前記元素Aの化合物である前記第2の相および/または前記第3の相に、他の前記元素Dが、固溶体または化合物として含有されることを特徴とする(1)〜(9)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(11)Fe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(CeおよびPmを除く)、Hf、Ta、WおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である元素D´をさらに含み、前記元素D´が、前記第2の相を構成する前記元素Dとは種類の異なる元素であり、前記元素Aと前記元素D´との化合物である第4の相をさらに有し、前記第1の相と前記第4の相が、界面を介して接合しており、前記第4の相が、外表面に露出していることを特徴とする(1)〜(10)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(12)前記第1の相が主として結晶質シリコンであり、前記ナノサイズ粒子の外表面がアモルファス層で覆われていることを特徴とする(1)〜(11)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(13)前記第2の相が主として結晶質シリサイドであり、前記ナノサイズ粒子の外表面がアモルファス層で覆われていることを特徴とする(1)〜(12)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(14)前記アモルファス層の厚みは、0.5〜15nmであることを特徴とする(12)または(13)に記載のナノサイズ粒子。
(15)前記第2の相および/または前記第4の相は、界面以外が略球面状または多面体状の表面を有することを特徴とする(1)〜(14)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(16)63.7MPaで粉体粒子を圧縮した条件で、粉体導電率が4×10−8[S/cm]以上であることを特徴とする(1)〜(15)のいずれかに記載のナノサイズ粒子。
(17)(1)〜(16)のいずれかに記載のナノサイズ粒子を負極活物質として含むリチウムイオン二次電池用負極材料。
(18)導電助剤をさらに有し、前記導電助剤がC、Cu、Sn、Zn、NiおよびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の粉末であることを特徴とする(17)に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
(19)前記導電助剤がカーボンナノホーンを含むことを特徴とする(18)に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
(20)(17)〜(19)のいずれかに記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極。
(21)リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、(20)に記載の負極と、前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを有し、リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極と前記負極と前記セパレータとを設けたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
(22)Si、Sn、Al、Pb、Sb、Bi、Ge、InおよびZnからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、Fe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(CeおよびPmを除く)、Hf、Ta、WおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、を含む原料をプラズマ化し、ナノサイズの液滴を経由してナノサイズ粒子を得ることを特徴とするナノサイズ粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、高容量と良好なサイクル特性を実現するリチウムイオン二次電池用の負極材料を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)、(b)、(c)本発明に係るナノサイズ粒子を示す概略断面図。
【図2】(a)、(b)本発明に係るナノサイズ粒子の他の例を示す概略断面図。
【図3】(a)、(b)本発明に係るナノサイズ粒子の他の例を示す概略断面図。
【図4】本発明に係るナノサイズ粒子製造装置を示す図。
【図5】本発明に係るリチウムイオン二次電池の例を示す断面図。
【図6】実施例1に係るナノサイズ粒子のXRD解析結果。
【図7】(a)実施例1に係るナノサイズ粒子のBF−STEM写真、(b)実施例1に係るナノサイズ粒子のHAADF−STEM写真。
【図8】(a)実施例1に係るナノサイズ粒子の第1の観察箇所でのHAADF−STEM写真、(b)〜(c)同一視野でのEDSマップ。
【図9】(a)実施例1に係るナノサイズ粒子の第2の観察箇所でのHAADF−STEM写真、(b)〜(c)同一視野でのEDSマップ。
【図10】FeとSiの2元系状態図。
【図11】実施例2に係るナノサイズ粒子のXRD解析結果。
【図12】(a)、(b)実施例2に係るナノサイズ粒子のSTEM写真。
【図13】(a)実施例2に係るナノサイズ粒子の第1の観察箇所でのHAADF−STEM写真、(b)〜(d)同一視野でのEDSマップ。
【図14】(a)実施例2に係るナノサイズ粒子の第2の観察箇所でのHAADF−STEM写真、(b)〜(d)同一視野でのEDSマップ。
【図15】実施例3に係るナノサイズ粒子のXRD解析結果。
【図16】(a)〜(c)実施例3に係るナノサイズ粒子のTEM写真。
【図17】(a)、(b)実施例3に係るナノサイズ粒子のTEM写真。
【図18】(a)実施例3に係るナノサイズ粒子のHAADF−STEM写真、(b)〜(d)同一視野でのEDSマップ。
【図19】(a)〜(d)実施例3に係るナノサイズ粒子のEDS点分析結果。
【図20】実施例3に係るナノサイズ粒子の高分解能TEM写真。
【図21】実施例4に係るナノサイズ粒子のXRD解析結果。
【図22】(a)実施例4に係るナノサイズ粒子のHAADF−STEM写真、(b)〜(d)同一視野でのEDSマップ。
【図23】(a)実施例4に係るナノサイズ粒子のシリコン原子のEDSマップ、(b)同一視野でのチタン原子のEDSマップ、(c)(a)と(b)を重ね合わせたEDSマップ。
【図24】(a)、(b)実施例4に係るナノサイズ粒子の高分解能TEM写真。
【図25】実施例5に係るナノサイズ粒子のXRD解析結果。
【図26】(a)実施例5に係るナノサイズ粒子のBF−STEM写真、(b)同一視野でのHAADF−STEM写真。
【図27】(a)〜(c)実施例5に係るナノサイズ粒子の高分解能TEM写真。
【図28】(a)実施例5に係るナノサイズ粒子のHAADF−STEM像、(b)〜(c)同一視野でのEDSマップ。
【図29】(a)、(b)実施例6に係るナノサイズ粒子のXRD解析結果。
【図30】(a)実施例6に係るナノサイズ粒子のBF−STEM写真、(b)同一視野でのHAADF−STEM写真。
【図31】(a)〜(c)実施例6に係るナノサイズ粒子の高分解能TEM写真。
【図32】(a)実施例6に係るナノサイズ粒子の第1の観察箇所でのHAADF−STEM写真、(b)〜(d)同一視野でのEDSマップ。
【図33】(a)実施例6に係るナノサイズ粒子の第2の観察箇所でのHAADF−STEM写真、(b)〜(d)同一視野でのEDSマップ。
【図34】実施例1〜3、7と比較例1、2のサイクル回数と放電容量のグラフ。
【図35】実施例4〜6のサイクル回数と放電容量のグラフ。
【図36】CoとSiの2元系状態図。
【図37】FeとSnの2元系状態図。
【図38】CoとFeの2元系状態図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下図面に基づいて、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0016】
(1.ナノサイズ粒子)
(1−1.ナノサイズ粒子の構成)
第1の実施形態に係るナノサイズ粒子1について説明する。
図1は、ナノサイズ粒子1を示す概略断面図である。ナノサイズ粒子1は、第1の相3と第2の相5を有しており、第1の相3は、界面以外の表面が略球面状であり、第2の相5が第1の相3に界面を介して接合している。第1の相3と第2の相5との界面は平面あるいは曲面を示している。また、界面は階段状であってもよい。
【0017】
第1の相3は、元素Aの単体であり、元素AはSi、Sn、Al、Pb、Sb、Bi、Ge、InおよびZnからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。元素Aは、リチウムを吸蔵しやすい元素である。なお、第1の相3は、元素Aを主成分とする固溶体であってもよい。第1の相3は、結晶質であっても非晶質であってもよい。元素Aと固溶体を形成する元素は、元素Aを選ぶことができる前記群より選ばれた元素でもよいし、前記群に挙げられていない元素であってもよい。第1の相3はリチウムを吸蔵および脱離可能である。第1の相3は一度リチウムを吸蔵して合金化した後、リチウムを脱離して脱合金化すると非晶質となる。
【0018】
界面以外の表面が略球面状であるとは、球形や楕円体形に限られるものではなく、表面がおおむね滑らかな曲面で構成されていることを意味し、部分的には平坦な面があっても良い。ただし、破砕法により形成される固体のような、表面に角を有する形状とは異なる形状である。
【0019】
第2の相5は、元素Aと元素Dとの化合物であり、結晶質である。元素DがFe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(CeおよびPmを除く)、Hf、Ta、W、およびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である。元素Dは、リチウムを吸蔵しにくい元素であり、元素AとDA(1<x≦3)である化合物を形成可能である。大部分の元素Aに対して、例えば、FeSiやCoSiのようにx=2であるが、RhSi(RhSi1.33)のようにx=1.33となる場合や、RuSi(RuSi1.5)のようにx=1.5となる場合、SrSi(SrSi1.67)のようにx=1.67となる場合、MnSi(MnSi1.75)やTcSi(TcSi1.75)のようにx=1.75となる場合、さらにIrSiのようにx=3となる場合がある。第2の相5は、リチウムをほとんど吸蔵しない。なお、元素Dとして、他にTc、Re、Osを使用することもできる。
【0020】
ナノサイズ粒子を、水系スラリーを作製して塗布する場合は、ランタノイド元素は、水系スラリーで水酸化物を形成しやすく、各相間の剥離を招くため、好ましくない。また、ランタノイド元素を含むナノサイズ粒子は、形成時のプラズマ中でも、水素化されやすいという問題点がある。なお、ナノサイズ粒子形成時のプラズマ中において水分の混入を防いだり、有機溶媒系スラリーを作製したりすれば、ランタノイド元素を含むナノサイズ粒子でも問題なく使用できる。
【0021】
また、図1(b)に示すナノサイズ粒子7のように、元素Aと元素Dとの化合物である第3の相9が、第1の相3中に分散していてもよい。第3の相9は、第1の相3に覆われている。第3の相9は、第2の相5と同様、リチウムをほとんど吸蔵しない。また、図1(c)のように、一部の第3の相9が表面に露出していてもよい。つまり、必ずしも第3の相9の周囲の全てを第1の相3で覆っている必要はなく、第3の相9の周囲の一部のみを第1の相3で覆っていてもよい。
【0022】
なお、図1(b)においては、第1の相3中に、複数の第3の相9が分散しているが、単一の第3の相9が内包されていてもよい。
【0023】
また、第2の相5の界面以外の表面の形状は、図1(a)に示す第2の相5のように、表面がおおむね滑らかな球面であってもよいし、図2(a)に示す第2の相5´のように、多面体形状となってもよい。第2の相5´は、元素Aと元素Dの化合物の結晶の安定性等の影響により、多面体形状となる。
【0024】
また、図2(b)に示すナノサイズ粒子12のように、第2の相5を複数有してもよい。例えば、元素Dの割合が少なく、ガス状態や液体状態における元素D同士の衝突頻度が少なくなる場合や、第1の相3および第2の相5の融点の関係や濡れ性、さらに冷却速度の影響等により、第2の相5が、第1の相3の表面に分散して接合する場合が挙げられる。
【0025】
第1の相3上に複数の第2の相5を有する場合、第1の相3と第2の相5との界面の面積が広くなり、第1の相3の膨張収縮をさらに抑えることができる。また、第1の相3がSiやGeの場合、第2の相5は、第1の相3よりも導電率が高いため、電子の移動が促進され、ナノサイズ粒子12は、第1の相3上に、それぞれのナノサイズ粒子12に複数の集電スポットを有することとなる。よって、ナノサイズ粒子12は高い粉体導電率を有する負極材料となり、導電助剤を減らすことが可能となり、高容量の負極を形成することが出来る。さらに、ハイレート特性に優れる負極が得られる。
【0026】
元素Dとして、元素Dを選ぶことのできる群より選ばれた2種以上の元素が含まれる場合、ある一つの元素Dと元素Aの化合物である第2の相5および/または第3の相9に、別の他の元素Dが、固溶体または化合物として含有されることがある。つまり、ナノサイズ粒子中に、元素Dを選ぶことのできる群より選ばれた2種以上の元素が含まれる場合でも、後述の元素D´のように、第4の相15を形成しない場合がある。例えば、元素AがSi、一つの元素DがNi、他の元素DがFeの場合、FeはNiSi2に固溶体として存在することがある。また、EDSで観察した場合、Niの分布とFeの分布がほぼ同じ場合もあれば、異なる場合が有り、別の他の元素Dが、第2の相5および/または第3の相9に均一に含有されることもあれば、部分的に含有されることもある。
【0027】
また、ナノサイズ粒子は、元素Dに加えて、元素D´を含んでも良い。元素D´は、元素Dを選ぶことができる群より選ばれた元素であり、元素Aと元素Dと元素D´は種類の異なる元素である。図3(a)に示すナノサイズ粒子13は、元素Dと元素D´を含み、元素Aと元素Dの化合物である第2の相5に加えて、第4の相15を有する。第4の相15は、元素Aと元素D´の化合物である。ナノサイズ粒子13は、元素Dと元素D´からなる固溶体(図示せず)を含んでもよい。例えば、第2の相5がSiとFeの化合物であり、第4の相15がSiとCoの化合物であり、元素Dと元素D´からなる固溶体がFeとCoの固溶体である場合が挙げられる。
【0028】
また、図3(b)に示すように、元素Aと元素Dとの化合物である第3の相9と、元素Aと元素D´との化合物である第5の相19が、第1の相3中に分散していてもよい。なお、図3(a)および(b)は元素Dから2種類の元素を選んだ場合の例を示したが、3種類以上の元素を選んでもよい。
【0029】
これらのナノサイズ粒子の平均粒径は、好ましくは2〜500nmであり、より好ましくは50〜300nmである。ホールペッチの法則により、粒径サイズが小さいと、降伏応力が高まるため、ナノサイズ粒子の平均粒径が2〜500nmであれば、粒径サイズが十分小さく、降伏応力が十分大きく、充放電により微粉化しにくい。なお、平均粒径が2nmより小さいと、ナノサイズ粒子の合成後の取扱いが困難となり、平均粒径が500nmより大きいと、粒径サイズが大きくなってしまい、降伏応力が十分でない。
【0030】
元素Aと元素Dの合計に対する元素Dの原子比率が0.01〜25%であることが好ましい。この原子比率が0.01〜25%であると、ナノサイズ粒子1をリチウムイオン二次電池の負極材料に用いた際に、サイクル特性と高容量を両立できる。一方、0.01%を下回ると、ナノサイズ粒子1のリチウム吸蔵時の体積膨張を抑制できず、25%を超えると、元素Dと化合する元素Aの量が多くなり、リチウムの吸蔵可能な元素Aのサイトが少なくなり、高容量であるメリットが特になくなってしまう。なお、ナノサイズ粒子が元素D´を含む場合は、元素Aと元素Dと元素D´の合計に対する、元素Dと元素D´の合計の原子比率が0.01〜25%であることが好ましい。
【0031】
特に、第1の相が主として結晶質シリコンであり、第2の相が結晶質シリサイドであることが好ましい。また、第1の相がリンまたはホウ素を添加したシリコンで構成されることが好ましい。リンまたはホウ素を添加することでシリコンの導電性を高めることができる。なお、リンの代わりに、インジウムやガリウムを用いることができ、ホウ素の代わりにヒ素を用いることも可能である。第1の相のシリコンの導電性を高めることで、このようなナノサイズ粒子を用いた負極は、内部抵抗が小さくなり、大電流を流すことが可能となり、良好なハイレート特性を有する。
【0032】
さらに、第1の相Siに酸素を添加することでLiと結合するSiサイトを抑制し、Li吸蔵に伴う体積膨張を抑制することで良好な寿命特性を得ることができる。なお、酸素の添加量yは、SiO[0≦y<0.9]の範囲が好ましい。yが0.9以上の条件では、Li吸蔵可能なSiサイトが減少し、容量低下を招く。
【0033】
なお、微粒子は通常は凝集して存在しているので、ナノサイズ粒子の平均粒径は、ここでは一次粒子の平均粒径を指す。粒子の計測は、電子顕微鏡(SEM)の画像情報と動的光散乱光度計(DLS)の体積基準メディアン径を併用する。平均粒径は、SEM画像によりあらかじめ粒子形状を確認し、画像解析ソフトウェア(例えば、旭化成エンジニアリング製「A像くん」(登録商標))で粒径を求めたり、粒子を溶媒に分散してDLS(例えば、大塚電子製DLS−8000)により測定したりすることが可能である。微粒子が十分に分散しており、凝集していなければ、SEMとDLSでほぼ同じ測定結果が得られる。また、ナノサイズ粒子の形状が、アセチレンブラックのような高度に発達したストラクチャー形状である場合にも、ここでは一次粒径で平均粒径を定義し、SEM写真の画像解析で平均粒径を求めることができる。さらに、平均粒径はBET法等により比表面積を測定し、球形粒子と仮定して求めることもできる。この方法は、SEM観察やTEM観察により、あらかじめナノサイズ粒子が多孔質でない、中実な粒子であることを確認して適用することが必要である。
【0034】
なお、第1の相が主として結晶質シリコンの場合などは、ナノサイズ粒子1の最表面に酸素が結合しても良い。空気中にナノサイズ粒子1を取り出すと、空気中の酸素がナノサイズ粒子1の表面の元素と反応するからである。つまり、ナノサイズ粒子1の最表面は、厚さ0.5〜15nmのアモルファス層を有してもよく、特に、第1の相が主として結晶質シリコンの場合などは、酸化膜層を有していてもよい。アモルファス層で覆われることで、空気中で安定する上、スラリーの溶媒として水系を利用することができ、工業的利用価値が大きい。
【0035】
(1−2.ナノサイズ粒子の効果)
第1の相3がリチウムを吸蔵すると、体積膨張するが、第2の相5は、リチウムを吸蔵し難いため、第2の相5に接する第1の相3の膨張は、抑えられる。つまり、第1の相3がリチウムを吸蔵して体積膨張をしようとしても、第2の相5が膨張しにくいため、第1の相3と第2の相5との界面は滑りにくく、第2の相5がくさびやピンのような効果を発揮し、体積歪を緩和してナノサイズ粒子全体の膨張を抑制する。そのため、第2の相5を有しない粒子に比べて、第2の相5を有するナノサイズ粒子1は、リチウムを吸蔵する際に膨張しにくく、リチウム放出時には復元力が働いて元の形状に戻りやすくなる。そのため、本発明によれば、ナノサイズ粒子1は、リチウムを吸蔵させても、体積膨張に伴う歪が緩和され、サイクル特性時の放電容量の低下が抑制される。
【0036】
また、前述のとおり、ナノサイズ粒子1は、膨張しにくいため、ナノサイズ粒子1を、大気中に出したとしても、大気中の酸素と反応しにくい。第2の相5を有しないナノ粒子は、表面保護せずに大気中に放置すると、表面から酸素と反応し、表面から粒子内部へと酸化が進行するため、ナノ粒子全体が酸化する。しかしながら、本発明のナノサイズ粒子1を大気中に放置した場合、粒子の最表面は酸素と反応するが、全体としてナノサイズ粒子が膨張しにくいため、酸素が内部に侵入しにくく、ナノサイズ粒子1の中心部まで酸化が及びにくくなる。従って、通常の金属ナノ粒子は比表面積が大きく、酸化して発熱や体積膨張が生じやすいが、本発明のナノサイズ粒子1は有機物や金属酸化物で特別な表面コートを行う必要が無く、大気中で粉体のまま扱うことが出来、工業的利用価値が大きい。
【0037】
また、本発明によれば、第2の相5は元素Dを含むため導電性が高く、特に第1の相3がSiやGeの場合、ナノサイズ粒子1全体としての導電率が飛躍的に上昇する。そのため、ナノサイズ粒子1は、それぞれのナノサイズ粒子1にナノレベルの集電スポットを有することになり、導電助剤が少なくても導電性を有する負極材料となり、高容量の電極を形成することが可能となり、また、ハイレート特性に優れる負極が得られる。
【0038】
また、第1の相3中に第3の相9を含むナノサイズ粒子7や、第3の相9と第5の相19とを含むナノサイズ粒子17は、第1の相3の多くの部分がリチウムを吸蔵しない相と接することになり、第1の相3の膨張がより効果的に抑えられる。その結果、ナノサイズ粒子7や8および17は、少ない量の元素Dで体積膨張を抑制する効果を発揮することが可能となり、リチウム吸蔵可能な元素Aを増やすことができ、高容量かつサイクル特性が向上する。
【0039】
第2の相5と第4の相15の両方を備えるナノサイズ粒子13と17は、ナノサイズ粒子1と同様の効果を有するうえ、ナノレベルの集電スポットが増加し、集電性能が効果的に向上する。2種以上のD元素を添加すると、2種以上の化合物が生成し、これらの化合物は相互に分離しやすいため、集電スポットが増加しやすく、より好ましい。
【0040】
(1−3.ナノサイズ粒子の製造方法)
これらのナノサイズ粒子の製造方法を説明する。これらのナノサイズ粒子は、気相合成法により合成される。特に、原料粉末を、プラズマ化し、1万K相当にまで加熱し、その後冷却することで、これらのナノサイズ粒子を製造可能である。プラズマの発生方法には、(1)高周波電磁場を利用して誘導的に気体を加熱する方法、(2)電極間のアーク放電を利用する方法、(3)マイクロ波により気体を加熱する方法等があり、いずれも使用可能である。
【0041】
ナノサイズ粒子の製造に用いられる製造装置の一具体例として、(1)高周波電磁場を利用して誘導的に気体を加熱する方法に関して、図4に基づいて説明する。図4に示すナノサイズ粒子製造装置21において、反応チャンバー35の上部外壁には、プラズマ発生用の高周波コイル37が巻き付けてある。高周波コイル37には、高周波電源39より、数MHzの交流電圧が印加される。好ましい周波数は4MHzである。なお、高周波コイル37を巻きつける上部外壁は石英ガラスなどで構成された円筒形の2重管となっており、その隙間に冷却水を流してプラズマによる石英ガラスの溶融を防止している。
【0042】
また、反応チャンバー35の上部には、原料粉末供給口25と共に、シースガス供給口29が設けてある。原料粉末フィーダーから供給される原料粉末27は、キャリアガス(ヘリウム、アルゴンなどの希ガス)とともに原料粉末供給口25を通してプラズマ41中に供給される。また、シースガス31はシースガス供給口29を通して反応チャンバー35に供給される。シースガス31は、アルゴンガスと酸素ガスの混合ガスなどである。なお、原料粉末供給口25は、必ずしも図4のようにプラズマ41の上部に設置する必要はなく、プラズマ41の横方向にノズルを設置することもできる。また、原料粉末供給口25を冷却水により水冷してもよい。なお、プラズマに供給するナノサイズ粒子の原料の性状は、粉末だけに限られず、原料粉末のスラリーやガス状の原料を供給しても良い。
【0043】
反応チャンバー35は、プラズマ反応部の圧力の保持や、製造された微粉末の分散を抑制する役割を果たす。反応チャンバー35も、プラズマによる損傷を防ぐため、水冷されている。また、反応チャンバー35の側部には、吸引管が接続してあり、その吸引管の途中には合成された微粉末を捕集するためのフィルター43が設置してある。反応チャンバー35からフィルター43を連結する吸引管も、冷却水により水冷されている。反応チャンバー35内の圧力は、フィルター43の下流側に設置されている真空ポンプの吸引能力によって調整する。
【0044】
ナノサイズ粒子1の製造方法は、プラズマから気体、液体を経由して固体となりナノサイズ粒子1を析出させるボトムアップの手法なので、液滴の段階で球形状となり、ナノサイズ粒子1は球形状となる。一方、破砕法やメカノケミカル法などの大きな粒子を小さくするトップダウンの手法では、粒子の形状はいびつでごつごつしたものとなり、ナノサイズ粒子1の球形状の形状とは大きく異なる。
【0045】
なお、原料粉末に元素Aの粉末と元素Dの粉末の混合粉末を用いると、ナノサイズ粒子1、7、8、11、12が得られる。また、原料粉末に元素Aと元素Dと元素D´のそれぞれの粉末の混合粉末を用いると、ナノサイズ粒子13、17が得られる。さらに、第1の相3に酸素を導入するときは、例えば、SiとSiOのように元素Aとその酸化物AO等を粉末として導入することで簡単に組成比率を制御することができる。
【0046】
(2.リチウムイオン二次電池の作製)
(2−1.リチウムイオン二次電池用負極の作製)
まず、リチウムイオン二次電池用負極の製造方法を説明する。ミキサーに、スラリー原料を投入し、混練してスラリーを形成する。スラリー原料は、ナノサイズ粒子1、導電助剤、結着剤、増粘剤、溶媒などである。
【0047】
スラリー中の固形分において、ナノサイズ粒子25〜90重量%、導電助剤5〜70重量%、結着剤1〜30重量%、増粘剤0〜25重量%を含む。
【0048】
ミキサーは、スラリーの調製に用いられる一般的な混練機を用いることができ、ニーダー、撹拌機、分散機、混合機などと呼ばれるスラリーを調製可能な装置を用いてもよい。また、水系スラリーを調整するときは、結着剤としてスチレン・ブタジエン・ラバー(SBR)等のラテックス(ゴム微粒子の分散体)を使用することができ、増粘剤としてはカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース等の多糖類等を1種または2種以上の混合物として用いることが適している。また、有機系スラリーを調製するときは、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVdF)等を使用することができ、溶媒としてN−メチル−2−ピロリドンを用いることができる。
【0049】
導電助剤は、炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀からなる群より選ばれた少なくとも1種の導電性物質からなる粉末である。炭素、銅、スズ、亜鉛、ニッケル、銀の単体の粉末でもよいし、それぞれの合金の粉末でもよい。例えば、ファーネスブラックやアセチレンブラックなどの一般的なカーボンブラックを使用できる。特に、ナノサイズ粒子1の元素Aが導電性の低いシリコンである場合、ナノサイズ粒子1の表面には、シリコンが露出することとなり、導電性が低くなるため、カーボンナノホーンを導電助剤として加えることが好ましい。ここで、カーボンナノホーン(CNH)とは、グラフェンシートを円錐形に丸めた構造をしており、実際の形態は多数のCNHが頂点を外側に向けて、放射状のウニの様な形態の集合体として存在する。CNHのウニ様集合体の外径は50nm〜250nm程度である。特に、平均粒径80nm程度のCNHが好ましい。
【0050】
導電助剤の平均粒径も一次粒子の平均粒径を指す。アセチレンブラック(AB)のような高度にストラクチャー形状が発達している場合にも、ここでは一次粒径で平均粒径を定義し、SEM写真の画像解析で平均粒径を求めることができる。
【0051】
また、粒子状の導電助剤とワイヤー形状の導電助剤の両方を用いても良い。ワイヤー形状の導電助剤は導電性物質のワイヤーであり、粒子状の導電助剤に挙げられた導電性物質を用いることができる。ワイヤー形状の導電助剤は、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、銅ナノワイヤー、ニッケルナノワイヤーなどの外径が300nm以下の線状体を用いることができる。ワイヤー形状の導電助剤を用いることで、負極活物質や集電体などと電気的接続が保持しやすくなり集電性能が向上するとともに、ポーラス膜状の負極に繊維状物質が増え、負極にクラックが生じにくくなる。例えば粒子状の導電助剤としてABや銅粉末を用い、ワイヤー形状の導電助剤として気相成長炭素繊維(VGCF:Vapor Grown Carbon Fiber)を用いることが考えられる。なお、粒子状の導電助剤を加えずに、ワイヤー形状の導電助剤のみを用いても良い。
【0052】
ワイヤー形状の導電助剤の長さは、好ましくは0.1μm〜2mmである。導電助剤の外径は、好ましくは4nm〜1000nmであり、より好ましくは25nm〜200nmである。導電助剤の長さが0.1μm以上であれば、導電助剤の生産性を上げるのには十分な長さであり、長さが2mm以下であれば、スラリーの塗布が容易である。また、導電助剤の外径が4nmより太い場合、合成が容易であり、外径が1000nmより細い場合、スラリーの混練が容易である。導電物質の外径と長さの測定方法は、SEMによる画像解析により行った。
【0053】
結着剤は、樹脂の結着剤であり、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、スチレンブタジエンゴム(SBR)などのフッ素樹脂やゴム系、さらには、ポリイミド(PI)やアクリルなどの有機材料を用いることができる。
【0054】
次に、例えば、コーターを用いて、集電体の片面に、スラリーを塗布する。コーターは、スラリーを集電体に塗布可能な一般的な塗工装置を用いることができ、例えばロールコーターやドクターブレードによるコーター、コンマコーター、ダイコーターである。
【0055】
集電体は、銅、ニッケル、ステンレスからなる群より選ばれた少なくとも1種の金属からなる箔である。それぞれを単独で用いてもよいし、それぞれの合金でもよい。厚さは4μm〜35μmが好ましく、さらに8μm〜18μmがより好ましい。
【0056】
調整したスラリーを集電体に均一に塗布し、その後、50〜150℃程度で乾燥し、厚みを調整するため、ロールプレスを通して、リチウムイオン二次電池用負極を得る。
【0057】
(2−2.リチウムイオン二次電池用正極の作製)
まず、正極活物質、導電助剤、結着剤および溶媒を混合して正極活物質の組成物を準備する。前記正極活物質の組成物をアルミ箔などの金属集電体上に直接塗布・乾燥し、正極を準備する。
【0058】
前記正極活物質としては、一般的に使われるものであればいずれも使用可能であり、例えばLiCoO、LiMn、LiMnO、LiNiO、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiFePOなどの化合物である。
【0059】
導電助剤としては、例えばカーボンブラックを使用し、結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、水溶性アクリル系バインダーを使用し、溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、水などを使用する。このとき、正極活物質、導電助剤、結着剤および溶媒の含量は、リチウムイオン二次電池で通常的に使用するレベルである。
【0060】
(2−3.セパレータ)
セパレータとしては、正極と負極の電子伝導を絶縁する機能を有し、リチウムイオン二次電池で通常的に使われるものであればいずれも使用可能である。例えば、微多孔性のポリオレフィンフィルムを使用できる。
【0061】
(2−4.電解液・電解質)
リチウムイオン二次電池、Liポリマー電池などにおける電解液および電解質には、有機電解液(非水系電解液)、無機固体電解質、高分子固体電解質等が使用できる。
有機電解液の溶媒の具体例として、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル;ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、γ―ブチロラクトン、ジオキソラン、4−メチルジオキソラン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルクロロベンゼン、ニトロベンゼン等の非プロトン性溶媒、あるいはこれらの溶媒のうちの2種以上を混合した混合溶媒が挙げられる。
【0062】
有機電解液の電解質には、LiPF、LiClO、LiBF、LiAlO、LiAlCl、LiSbF、LiSCN、LiCl、LiCFSO、LiCFCO、LiCSO、LiN(CFSO等のリチウム塩からなる電解質の1種または2種以上を混合させたものを用いることができる。
【0063】
有機電解液の添加剤として、負極活物質の表面に有効な固体電解質界面被膜を形成できる化合物を添加することが望ましい。例えば、分子内に不飽和結合を有し、充電時に還元重合できる物質、例えばビニレンカーボネート(VC)などを添加する。
【0064】
また、上記の有機電解液に代えて固体状のリチウムイオン伝導体を用いることができる。たとえばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリエチレンイミン等からなるポリマーに前記リチウム塩を混合した固体高分子電解質や、高分子材料に電解液を含浸させゲル状に加工した高分子ゲル電解質を用いることができる。
【0065】
さらに、リチウム窒化物、リチウムハロゲン化物、リチウム酸素酸塩、LiSiO、LiSiO−LiI−LiOH、LiPO−LiSiO、LiSiS、LiPO−LiS−SiS、硫化リン化合物などの無機材料を無機固体電解質として用いてもよい。
【0066】
(2−5.リチウムイオン二次電池の組立て)
前述したような正極と負極との間にセパレータを配置して、電池素子を形成する。このような電池素子を巻回、または積層して円筒形の電池ケースや角形の電池ケースに入れた後、電解液を注入して、リチウムイオン二次電池とする。
【0067】
本発明のリチウムイオン二次電池の一例(断面図)を図5に示す。リチウムイオン二次電池71は、正極73、負極75を、セパレータ77を介して、セパレータ−負極−セパレータ−正極の順に積層配置し、正極73が内側になるように巻回して極板群を構成し、これを電池缶79内に挿入する。そして正極73は正極リード81を介して正極端子83に、負極75は負極リード85を介して電池缶79にそれぞれ接続し、リチウムイオン二次電池71内部で生じた化学エネルギーを電気エネルギーとして外部に取り出し得るようにする。次いで、電池缶79内に非水系電解液87を極板群を覆うように充填した後、電池缶79の上端(開口部)に、円形蓋板とその上部の正極端子83からなり、その内部に安全弁機構を内蔵した封口体89を、環状の絶縁ガスケットを介して取り付けて、本発明のリチウムイオン二次電池71を製造することができる。
【0068】
(2−6.本発明に係るリチウムイオン二次電池の効果)
本発明に係るナノサイズ粒子を負極材料として用いるリチウムイオン二次電池は、本発明に係るナノサイズ粒子が炭素よりも単位体積あたりの容量の高い元素Aを有するため、従来のリチウムイオン二次電池よりも容量が大きく、かつ本発明に係るナノサイズ粒子が微粉化しにくいためサイクル特性が良い。
【実施例】
【0069】
以下、本発明について実施例および比較例を用いて具体的に説明する。
[実施例1]
(ナノサイズ粒子の作製)
シリコン粉末と鉄粉末とをモル比でSi:Fe=23:2になるように混合し、乾燥させた混合粉末を原料粉末として、図4の装置を用い、反応チャンバー内に発生させたAr-H混合ガスのプラズマ中にキャリアガスで連続的に供給することにより、シリコンと鉄のナノサイズ粒子を作製した。
【0070】
さらに詳細には、下記の通りの方法で製造した。反応チャンバー内を真空ポンプで排気した後、Arガスを導入して大気圧とした。この排気とArガス導入を3回繰り返して、反応容器内の残留空気を排気した。その後、反応容器内にAr-H混合ガスを13L/minの流量で導入し、高周波コイルに交流電圧をかけて、高周波電磁場(周波数4MHz)により高周波プラズマを発生させた。この時のプレート電力は、20kWとした。原料粉末を供給するキャリアガスは、1.0L/minの流速のArガスを用いた。反応終了後12時間以上徐酸化処理を施した後、得られた微粉末をフィルターで回収した。
【0071】
(ナノサイズ粒子の構成の評価)
ナノサイズ粒子の結晶性に関して、リガク社製RINT−UltimaIIIを用いてXRD解析を行った。図6に実施例1のナノサイズ粒子のXRD回折パターンを示す。実施例1はSiとFeSiの2成分で構成されることが分かった。また、Feは全てシリサイドFeSiとして存在し、元素単体(価数0)としてのFeはほとんど存在しないことが分かった。
【0072】
ナノサイズ粒子の粒子形状の観察を、走査透過型電子顕微鏡(日本電子製、JEM 3100FEF)を用いて行った。図7(a)は、実施例1に係るナノサイズ粒子のBF−STEM(Bright−Field Scanning Transmission Electron Microscopy、明視野走査透過電子顕微鏡)像である。粒径約80〜100nm程度の略球形状の粒子に、半球状の粒子が界面を介して接合したナノサイズ粒子が観察され、同一粒子内で、色の比較的濃い箇所が、鉄を含む鉄シリサイドからなり、色の比較的薄い箇所がシリコンからなる。また、ナノサイズ粒子表面にアモルファスな厚さ2〜4nmのシリコンの酸化膜が形成されていることがわかる。図7(b)は、HAADF−STEM(High−Angle−Annular−Dark−Field−Scanning−Transmission−Electron−Microscopy:高角度散乱暗視野−走査透過型電子顕微鏡法)によるSTEM写真である。HAADF−STEMでは同一粒子内で色の比較的薄い箇所が鉄シリサイドからなり、色の比較的濃い箇所がシリコンからなる。
【0073】
ナノサイズ粒子の粒子形状の観察と組成分析を、走査透過型電子顕微鏡(日本電子製、JEM 3100FEF)を用いて、HAADF−STEMによる粒子形状の観察と、EDS(Energy Dispersive Spectroscopy:エネルギー分散型X線分析)分析を行った。図8(a)は、ナノサイズ粒子のHAADF−STEM像であり、図8(b)は、同一の観察箇所におけるシリコン原子のEDSマップであり、図8(c)は、同一の観察箇所における鉄原子のEDSマップである。
【0074】
図8(a)によれば、粒径約50〜150nm程度のナノサイズ粒子が観察され、それぞれのナノサイズ粒子は、それぞれ略球形状である。図8(b)より、ナノサイズ粒子の全体にシリコン原子が存在し、図8(c)より、図8(a)で明るく観察される箇所に鉄原子が多く検出されることがわかる。以上のことより、ナノサイズ粒子は、シリコンで形成される第1の相に、シリコンと鉄の化合物で形成される第2の相が接合している構造を有することが分かる。
【0075】
図9(a)〜(c)においても、同様に実施例1に係るナノサイズ粒子の粒子形状の観察と組成分析を行った。図9においても、図8と同様に、シリコンで形成される第1の相に、シリコンと鉄の化合物で形成される第2の相が接合している構造を有することが分かる。
【0076】
実施例1に係るナノサイズ粒子の形成過程を考察する。図10は、鉄とシリコンの2元系状態図である。シリコン粉末と鉄粉末とをモル比でSi:Fe=23:2になるように混合したので、原料粉末でのmole Si/(Fe+Si)=0.92となる。図10中の太線は、mole Si/(Fe+Si)=0.92を示す線である。高周波コイルにより生成したプラズマは、1万K相当となるので、状態図の温度範囲をはるかに超え、鉄原子とシリコン原子が均一に混合したプラズマが得られる。プラズマが冷却すると、プラズマから気体へ、気体から液体へと変化する過程で球状の液滴が成長し、1470K程度にまで冷却すると、FeSiとSiの両方が析出する。その後、1220K程度にまで冷却すると、FeSiが、FeSiとSiに相変化する。よって、シリコンと鉄のプラズマが冷却すると、FeSiとSiとが界面を介して接合するナノサイズ粒子が形成される。
【0077】
(粉体導電率の評価)
粉体状態における電子伝導性を評価するため、三菱化学製の粉体抵抗測定システムMCP−PD51型を用いて粉体導電率の評価を行った。導電率は、任意の圧力でサンプル粉体を圧縮したときの抵抗値から求めた。後述する表1のデータは、63.7MPaでサンプル粉体を圧縮して測定したときの値である。
【0078】
(ナノサイズ粒子のサイクル特性の評価)
(i)負極スラリーの調製
実施例1に係るナノサイズ粒子45.5重量部とアセチレンブラック(平均粒径35nm、電気化学工業株式会社製、粉状品)47.5重量部の比率でミキサーに投入した。さらに結着剤としてスチレンブタジエンラバー(SBR)40wt%のエマルジョン(日本ゼオン(株)製、BM400B)を固形分換算で5重量部、スラリーの粘度を調整する増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(ダイセル化学工業(株)製、#2200)1wt%溶液を固形分換算で10重量部の割合で混合してスラリーを作製した。
(ii)負極の作製
調製したスラリーを自動塗工装置のドクターブレードを用いて、厚さ10μmの集電体用電解銅箔(古河電気工業(株)製、NC−WS)上に25μmの厚みで塗布し、70℃で乾燥させた後、プレスによる調厚工程を経て、リチウムイオン二次電池用負極を製造した。
(iii)特性評価
リチウムイオン二次電池用負極と、1mol/LのLiPFを含むエチレンカーボネートとジエチルカーボネートの混合溶液からなる電解液と、金属Li箔対極を用いて3つの異なるリチウム二次電池を構成し、充放電特性を調べた。特性の評価は、初回の放電容量および50サイクルの充電・放電後の放電容量を測定し、放電容量の維持率を算出することによって行った。放電容量は、シリサイドと、リチウムの吸蔵・放出に有効な活物質Siの総重量を基準として算出した。まず、25℃環境下において、電流値を0.1C、電圧値を0.02Vまで定電流定電圧条件で充電を行い、電流値が0.05Cに低下した時点で充電を停止した。次いで、電流値0.1Cの条件で、金属Liに対する電圧が1.5Vとなるまで放電を行い、0.1C初期放電容量を測定した。なお、1Cとは、1時間で満充電できる電流値である。また、充電と放電はともに25℃環境下において行った。次いで、0.1Cでの充放電速度で上記充放電を50サイクル繰り返した。0.1C初期放電容量に対する、充放電を50サイクル繰り返したときの放電容量の割合を百分率で求め、50サイクル後放電容量維持率とした。
【0079】
[実施例2]
シリコン粉末と鉄粉末とをモル比でSi:Fe=38:1になるように混合し、乾燥させた混合粉末を原料粉末とする以外は、実施例1と同様にして、ナノサイズ粒子を合成し、XRDとSTEMにより観察を行った。また、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0080】
図11に実施例2に係るナノサイズ粒子のXRD回折パターンを示す。実施例2はSiとFeSiの2成分で構成されることが分かった。また、Feは全てシリサイドFeSiとして存在し、元素単体のFeはほとんど存在しないことが分かった。また、図6と比較すると、実施例1に係るナノサイズ粒子に比べて、Feの比率が少なく、FeSi由来のピークは痕跡程度しか確認できない。
【0081】
STEMによる観察結果を図12に示す。図12(a)によれば、直径50〜150nm程度の略球状の粒子が多数観察される。重なりの無い粒子内で、色の濃い部分が、鉄シリサイドであり、色の薄い部分がシリコンであると考えられる。また、図12(b)より、シリコン部分の原子が規則的に配列していることが観察され、第1の相に該当するシリコンが結晶質であることが分かる。また、ナノサイズ粒子の表面にはシリコン部分には厚さ約1nmのアモルファス層が、鉄シリサイドの部分には厚さ約2nmのアモルファス層が覆っていることが分かる。また、図7と図12のSTEM写真の比較により、SiとFeSiの相対的な大きさが確認でき、実施例2に係るナノサイズ粒子のFeSiは、実施例1に係るナノサイズ粒子のFeSiに比べて小さいことがわかる。
【0082】
HAADF−STEMによる粒子形状の観察と、EDS分析の結果を、図13、図14に示す。図13(a)によれば、粒径約150〜250nm程度のナノサイズ粒子が観察され、それぞれのナノサイズ粒子は、それぞれ略球形状である。図13(b)より、ナノサイズ粒子の全体にシリコン原子が存在し、図13(c)より、図13(a)で明るく観察される箇所に鉄原子が多く検出されることがわかる。図13(d)より、酸化によると思われる酸素原子がナノサイズ粒子全体にわずかに分布していることが分かる。
【0083】
同様に、図14(a)によれば、粒径約250nmの略球形状のナノサイズ粒子が観察され、図14(b)より、ナノサイズ粒子の全体にシリコン原子が存在し、図14(c)より、図14(a)で明るく観察される箇所に鉄原子が多く検出されることがわかる。図14(d)より、酸化によると思われる酸素原子がナノサイズ粒子全体にわずかに分布していることが分かる。以上のことより、ナノサイズ粒子は、シリコンで形成される第1の相に、シリコンと鉄の化合物で形成される第2の相が接合している構造を有することが分かる。
【0084】
[実施例3]
シリコン粉末と鉄粉末とをモル比でSi:Fe=6:1になるように混合し、乾燥させた混合粉末を原料粉末とする以外は、実施例1と同様にして、ナノサイズ粒子を合成し、XRDとSTEMにより観察を行った。また、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0085】
図15に実施例3に係るナノサイズ粒子のXRD回折パターンを示す。実施例3は実施例1や2と同じように、SiとFeSiの2成分で構成されることが分かった。また、Feは全てシリサイドFeSiとして存在し、元素単体(価数0)としてのFeはほとんど存在しないことが分かった。さらに、図6または図11と、図15を比較すると、実施例3に係るナノサイズ粒子は、実施例1と2に係るナノサイズ粒子に比べてFeの存在比率が大きく、FeSiに帰属するXRDピークが明確に確認でき、FeSi鉄シリサイドの存在量が多いことが分かる。
【0086】
STEMによる観察結果を図16、図17に示す。直径50〜150nm程度で、略球形状の粒子が界面を介して接合してなる粒子が多数観察される。重なりの無い粒子内で、色の濃い部分が、鉄シリサイドであり、色の薄い部分がシリコンであると考えられる。また、シリコンには直線的な影が観察され、複数の結晶相により構成されていることが分かる。図7と図12のSTEM写真と比較すると、色の濃い鉄シリサイド部分の量が多いことが分かる。さらに、図16(b)および(c)より、鉄シリサイドに格子像が観察され、鉄シリサイドが結晶性であることが分かる。
【0087】
図17(a)は、図16(a)と同一の視野のBF−STEM像である。なお、第1の相(シリコン部分)に存在する影(例えば、矢印で示した箇所)は、結晶の界面だと考えられ、シリコンは均一な結晶ではなく、結晶方位の異なる領域が存在することが分かる。図17(b)は、単独のナノサイズ粒子のSTEM像である。粒径50nm程度のナノサイズ粒子が観察できる。色の薄い部分がシリコンであり、色の濃い部分がFeSiであると考えられる。
【0088】
HAADF−STEMによる粒子形状の観察と、EDS分析の結果を、図18に示す。図18(a)によれば、それぞれ略球形状のナノサイズ粒子が観察される。図18(b)より、ナノサイズ粒子の全体にシリコン原子が存在し、図18(c)より、図18(a)で明るく観察される箇所に鉄原子が多く検出されることがわかる。図18(d)より、酸化によると思われる酸素原子がナノサイズ粒子全体にわずかに分布していることが分かる。
【0089】
また、図19に、EDS点分析の結果を示す。図19(a)のHAADF−STEM像で、箇所1は、SiのKa線、箇所2と箇所3からはSiのKa線とFeのKa線が確認できる。図18のEDSマッピング結果と合わせて、接合型のナノサイズ粒子を構成する各成分の帰属が明らかになった。
【0090】
さらに、図20に、高分解能TEM像を示す。露出した外表面に厚さ2〜4nmのアモルファス層が存在することが分かった。また、色の濃い部分には、鉄シリサイドの格子像が観察され、結晶面に沿って外周の一部に平坦な部分が存在することが分かった。
【0091】
[実施例4]
シリコン粉末とチタン粉末とをモル比でSi:Ti=11:1になるように混合し、乾燥させた混合粉末を原料粉末とする以外は、実施例1と同様にして、ナノサイズ粒子を合成し、XRDとSTEMにより観察を行った。また、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0092】
図21に実施例4に係るナノサイズ粒子のXRD回折パターンを示す。実施例4はSiとTiSiの2成分で構成されることが分かった。また、Tiは全てシリサイドTiSiとして存在し、元素単体(価数0)としてのTiはほとんど存在しないことが分かった。
【0093】
図22に、実施例4に係るナノサイズ粒子のHAADF−STEM像と、EDS分析の結果を示す。図22(a)によれば、粒径約50〜200nm程度のナノサイズ粒子が観察され、それぞれのナノサイズ粒子は、略球形状の大きな粒子に、略半球形状の他の粒子が界面を介して接合したような形状を有する。図22(b)より、ナノサイズ粒子の全体にシリコン原子が存在し、図22(c)より、図22(a)で明るく観察される箇所にチタン原子が多く検出されることがわかる。以上のことより、ナノサイズ粒子は、シリコンで形成される第1の相に、シリコンとチタンの化合物で形成される第2の相が接合している構造を有することが分かる。また、図22(d)より、酸化によると思われる酸素原子がナノサイズ粒子全体にわずかに分布していることが分かる。
【0094】
図23は、EDS分析結果をさらに示す。図23(a)は、シリコン原子のEDSマップであり、図23(b)は、チタン原子のEDSマップであり、図23(c)は、図23(a)と図23(b)を重ね合わせた図である。図23(c)によれば、シリコン原子からなる領域にチタン原子とシリコン原子からなる領域が接合していることが分かる。
【0095】
さらに、図24に、高分解能TEM像を示す。露出した外表面に厚さ2〜4nmのアモルファス層が存在することが分かった。また、シリコン及びチタンシリサイドの一部には格子像が観察され、結晶面に沿って外周の一部に平坦な部分が存在することが分かる。
【0096】
[実施例5]
シリコン粉末とニッケル粉末とをモル比でSi:Ni=12:1になるように混合し、乾燥させた混合粉末を原料粉末とする以外は、実施例1と同様にして、ナノサイズ粒子を合成し、XRDとSTEMにより観察を行った。また、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0097】
図25に実施例5に係るナノサイズ粒子のXRD回折パターンを示す。実施例5はSiとNiSiの2成分で構成されることが分かった。また、Niは全てシリサイドNiSiとして存在し、元素単体(価数0)としてのNiはほとんど存在しないことが分かった。SiとNiSiは回折角2θが一致し、面間隔がほぼ一致していることが分かる。
【0098】
図26(a)は、BF−STEM像であり、図26(b)は、同一視野のHAADF−STEM像である。図26によれば、粒径約75〜150nm程度のナノサイズ粒子が観察され、それぞれのナノサイズ粒子は、それぞれ略球形状の大きな粒子に、略半球状の他の粒子が界面を介して接合したような形状を有する。
【0099】
図27は、実施例5に係るナノサイズ粒子の高分解TEM像である。図27(a)〜(c)には、格子像が見られ、シリコン相とシリサイド相の格子縞がほぼ一致しており、シリサイドが多面体形状になっていることが分かる。また、シリコン相とシリサイド相の境界は、直線や曲線、階段状となっている。また、ナノサイズ粒子の表面を厚さ約2nmのシリコンのアモルファス層が覆っていることが分かる。
【0100】
図28に、実施例5に係るナノサイズ粒子のHAADF−STEM像と、EDS分析の結果を示す。図28(a)によれば、粒径約75〜150nm程度のナノサイズ粒子が観察される。図28(b)より、ナノサイズ粒子の全体にシリコン原子が存在し、図28(c)より、図28(a)で明るく観察される箇所にニッケル原子が多く検出されることがわかる。以上のことより、ナノサイズ粒子は、シリコンで形成される第1の相に、シリコンとニッケルの化合物で形成される第2の相が接合している構造を有することが分かる。また、図28(d)より、酸化によると思われる酸素原子がナノサイズ粒子全体にわずかに分布していることが分かる。
【0101】
[実施例6]
シリコン粉末とネオジム粉末とをモル比でSi:Nd=19:1になるように混合し、乾燥させた混合粉末を原料粉末とする以外は、実施例1と同様にして、ナノサイズ粒子を合成し、XRDとSTEMにより観察を行った。また、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0102】
図29に実施例6に係るナノサイズ粒子のXRD回折パターンを示す。図29(a)において、NdSi由来のピークが観察できず、図29(b)において、HNd由来のピークが観察されることから、実施例6は、金属単体としてのNdやNdシリサイドの存在は確認することはできず、結晶性のSiとネオジム水素化物HNdの2成分で構成されることが分かる。
【0103】
図30(a)は、実施例6に係るナノサイズ粒子のBF−STEM像であり、図30(b)は、同一視野のHAADF−STEM像である。図30によれば、粒径約50〜200nm程度のナノサイズ粒子が観察され、これらのナノサイズ粒子は、略球形状である。また、ナノサイズ粒子の一部に平坦な表面を有するが、これは、ネオジム水素化物が、ナノサイズ粒子より剥離した箇所である。ネオジムは、ランタノイド系元素の一種であり、原子量が大きく酸化されやすい金属である。そのため、空気中の水分により水酸化ネオジム等を生成して体積が膨張し、ナノサイズ粒子より剥離したものと考えられる。
【0104】
図31は、高分解能TEM像である。図31(a)によれば、ナノサイズ粒子の表面が、略球面と平坦な表面とから構成されていることが分かる。図31(b)においても、平坦な表面を有する。これらの平坦な表面は、ネオジム水素化物が、ナノサイズ粒子より剥離した箇所である。さらに、図31(c)においては、(a)や(b)の略平面状の箇所に、色の濃い領域が、形成されていることがわかる。この色の濃い領域が、シリコン原子よりも原子量の重いネオジム原子を含む領域であると考えられる。
【0105】
図32、図33は、EDS分析の結果を示す。図32(a)によれば、粒径約50〜150nmのナノサイズ粒子が観察され、このナノサイズ粒子は、略球形状である。図32(b)より、ナノサイズ粒子にシリコン原子が存在し、図32(c)より、図32(a)で明るく観察される箇所にネオジム原子が多く検出されることがわかる。また、図32(d)より、ナノサイズ粒子全体に、微量の酸素原子が検出される。しかしながら、実施例6に係るナノサイズ粒子中の水酸化ネオジムはスラリー中の水と反応して、水素ガスを発生しながら酸化が進行し、シリコンの粒子から剥離してしまう。このため、シリコンのリチウム吸蔵、脱離に伴う体積歪を緩和したり、導電率を向上させたりする役割が十分に果たせなくなり、活物質としての機能が低下する。
【0106】
図33(a)によれば、粒径約140nmのナノサイズ粒子が観察され、このナノサイズ粒子は、略球形状である。また、ナノサイズ粒子の一部に平坦な表面を有するが、これは、ネオジム水素化物が、ナノサイズ粒子より剥離した箇所である。図33(b)より、図33(a)での暗い領域にシリコン原子が存在し、図33(c)より、図33(a)で明るく観察される箇所にネオジム原子が多く検出されることがわかる。また、図33(d)より酸化に起因する酸素がナノサイズ粒子全体にわずかに分布していることがわかる。
【0107】
[実施例7]
実施例1で作製したナノサイズ粒子を用いる。ナノサイズ粒子と、カーボンナノホーン(NEC(株)製、平均粒径80nm)をナノサイズ粒子:CNH=7:3(重量比)の割合で磨砕機((株)奈良機械製作所製、ミラーロ)で精密混合させた後、精密混合品65重量部とアセチレンブラック28重量部の比率でミキサーに投入する以外は実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0108】
[実施例8]
シリコン粉末と鉄粉末とシリカ粉末とをモル比でSi:Fe:P=139:3:1になるように混合し、乾燥させた混合粉末を原料粉末とする以外は、実施例1と同様にして、ナノサイズ粒子を合成し、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0109】
[実施例9、10]
実施例9は、モル比でSi:Fe:O=38:1:6となるようにシリコン粉末と鉄粉末とシリカ(SiO)粉末を混合し、実施例1と同様にして、ナノサイズ粒子を合成し、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。実施例10は、モル比でSi:Fe:O:P=139:3:24:1となるようにシリコン粉末と鉄粉末とシリカ粉末とリン粉末を混合し、実施例1と同様にして、ナノサイズ粒子を合成し、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0110】
[比較例1]
ナノサイズ粒子に代えて、平均粒径60nmのシリコンナノ粒子(Hefei Kai’er NanoTech製)を用い、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0111】
[比較例2]
ナノサイズ粒子に代えて、平均粒径5μmのシリコン粒子(SIE23PB、高純度化学研究所製)を用い、実施例1と同様の方法で、リチウムイオン二次電池を構成し、サイクル特性を測定した。
【0112】
(ナノサイズ粒子の評価)
実施例1〜6、比較例1〜2で作成したSi系ナノサイズ粒子において、実施例1と同様の方法で、63.7MPaで粉体粒子を圧縮した条件で測定した粉体導電率を、表1に示した。
実施例1〜6は、粉体導電率が4×10−8[S/cm]以上であり、比較例1〜2は粉体導電率が4×10−8[S/cm]以下を示した。なお、比較例1〜2は、測定限界である1×10−8[S/cm]以下であった。粉体導電率が高いと導電助剤の配合を少なくすることができ、電極の単位体積当りの容量を高くすることができるとともに、ハイレート特性で有利となる。
【0113】
【表1】

【0114】
また、実施例1〜7、比較例1〜2のそれぞれの電池のサイクル回数と放電容量のグラフを図34と図35に示す。また、実施例1〜7、比較例1〜2の放電容量と容量維持率を表2に示す。表2における数値は、それぞれ3つの電池の平均値である。
【0115】
【表2】

【0116】
表2に示すように、実施例1〜6の初期放電容量は、比較例1、2よりも高い。これは、シリコンのみで形成された比較例1と2は、導電性が低いため、多くのシリコンが使用できず、放電容量が小さくなっている一方、実施例1〜5のナノサイズ粒子は、それぞれのナノサイズ粒子に金属シリサイドが接合しているため、導電性が高く、シリコンの利用率が高くなっており、放電容量が大きくなっているからである。
【0117】
表2に示すように、50サイクル後容量維持率は、実施例1では51%であるのに対し、比較例1では27%まで低下する。実施例1に係るナノサイズ粒子は、シリコンナノ粒子に比べて、容量低下が抑えられ、サイクル特性が良好であることが分かる。
【0118】
また、実施例1と実施例7を比較すると、カーボンナノホーンを添加することで、初期放電容量が高くなり、50サイクル後容量維持率も向上することがわかる。
【0119】
また、ネオジムを含む実施例6は、初期放電容量が鉄を含む実施例3と同程度であるが、充放電により放電容量の低下の程度が大きい。これは、電極の製造段階や充放電時に、ナノサイズ粒子中の一部の水素化ネオジムが、図30から図33で観察されるように、シリコンの粒子から剥離することが原因と考えられる。ネオジムを含む負極活物質のこのような特徴は、水と反応して安定な水酸化物を形成しやすいためであり、保管時の吸湿を回避し、電極の製造段階でN−メチル−2−ピロリドンなどの非水系スラリーを使用して吸湿に配慮すれば、シリコン粒子からの剥離を抑制することが可能である。ネオジムを含む活物質のこのような性質は、ランタンやプラセオジムなどのランタノイド元素に共通する特徴である。
【0120】
さらに、表1と表2を比較すると、粉体導電率が4.0×10−8[S/cm]以上の値を有する条件において、初期放電容量およびサイクル特性が良好であることが分かる。
【0121】
また、実施例2、実施例8〜10のそれぞれの電池の放電容量と容量維持率を表3に示す。表3における数値は、それぞれ3つの電池の平均値である。
【0122】
【表3】

【0123】
表3より、実施例2に比べて、実施例8は初期放電容量が同程度であるが、容量維持率が向上していることが分かる。実施例8はリンを添加したことで、実施例2に比べて粉体導電率が約50%上昇した。また、実施例9は、実施例1と初期放電容量が同程度であるが、容量維持率が向上していることが分かる。実施例9は、実施例1とリチウム吸蔵可能なシリコンサイトが同程度存在すると考えられるが、酸素の存在により、シリコンの体積変化に伴うひずみが緩和され、容量維持率が向上したと考えられる。さらに、実施例10はリンの添加により、粉体導電率が上昇して、容量維持率がさらに向上したことが分かる。
【0124】
(ナノサイズ粒子形成過程の考察)
なお、実施例1においては、シリコンと鉄の2元系でナノサイズ粒子を作製したが、本発明のナノサイズ粒子は、シリコンと鉄の2元系に限るものではない。例えば、図36に示すCo(コバルト)とSi(シリコン)の2元系状態図においても、mole Si/(Co+Si)=0.92のプラズマを冷却すると、CoSiとSiが析出することから、CoSiとSiとが界面を介して接合するナノサイズ粒子が得られる。図36中の太線は、mole Si/(Co+Si)=0.92を示す線である。
【0125】
同様に、図37に示すFe(鉄)とSn(スズ)の2元系状態図においても、mole Sn/(Fe+Sn)=0.92のプラズマを冷却すると、FeSnとSnが析出することから、FeSnとSnとが界面を介して接合するナノサイズ粒子が得られることが推測される。図37中の太線は、mole Sn/(Fe+Sn)=0.92を示す線である。FeとSnの2元系では、Snがリチウムを吸蔵、脱離する活物質として作用する。
【0126】
電気化学的にリチウムを吸蔵、脱離可能な元素Aとして、Si、Sn、Al、Pb、Sb、Bi、Ge、InおよびZnが挙げられるが容量の観点からSiが特に優れる。Siは、元素DをFe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(CeおよびPmを除く)、Hf、Ta、W、Re、OsおよびIrから選択したどの組合せにおいても、同様の2元系状態図が得られ、DA(1<x≦3)なる化合物が得られる。よって、以上の元素Aと元素Dの組合せにおいて、第2の相と第1の相とが界面を介して接合する構成を有するナノサイズ粒子が得られるものと考えられる。
【0127】
第4の相を有するナノサイズ粒子の形成過程を考察する。図38は、コバルトと鉄の2元系状態図である。コバルト粉末と鉄粉末との混合粉末を、プラズマから冷却すると、コバルト単体と鉄コバルト固溶体、鉄単体と鉄コバルト固溶体、または鉄コバルト固溶体のみが析出する。よって、シリコンと鉄とコバルトを含有するプラズマが冷却すると、FeSiとCoSiとSiとが界面を介して接合するナノサイズ粒子が形成される。この際、シリコンと鉄とコバルトの含有量によっては、ナノサイズ粒子内に鉄コバルト固溶体が析出することがある。
【0128】
以上、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されない。当業者であれば、本願で開示した技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しえることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0129】
1………ナノサイズ粒子
3………第1の相
5………第2の相
7………ナノサイズ粒子
8………ナノサイズ粒子
9………第3の相
11………ナノサイズ粒子
12………ナノサイズ粒子
13………ナノサイズ粒子
15………第4の相
17………ナノサイズ粒子
19………第5の相
21………ナノサイズ粒子製造装置
25………原料粉末供給口
27………原料粉末
29………シースガス供給口
31………シースガス
33………キャリアガス
35………反応チャンバー
37………高周波コイル
39………高周波電源
41………プラズマ
43………フィルター
71………リチウムイオン二次電池
73………正極
75………負極
77………セパレータ
79………電池缶
81………正極リード
83………正極端子
85………負極リード
87………非水系電解液
89………封口体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
種類の異なる元素Aと元素Dとを含み、
前記元素AがSi、Sn、Al、Pb、Sb、Bi、Ge、InおよびZnからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であり、
前記元素DがFe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(Ce、およびPmを除く)、Hf、Ta、W、およびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であり、
前記元素Aの単体または固溶体である第1の相と、
前記元素Aと前記元素Dとの化合物である第2の相を少なくとも有し、
前記第1の相と前記第2の相が、界面を介して接合しており、
前記第1の相と前記第2の相が、外表面に露出しており、
前記第1の相は、界面以外が略球面状の表面を有する
ことを特徴とするナノサイズ粒子。
【請求項2】
前記元素Aが、Siであり、
前記元素Dが、Fe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、Hf、Ta、WおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素であることを特徴とする請求項1に記載のナノサイズ粒子。
【請求項3】
平均粒径が2〜500nmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のナノサイズ粒子。
【請求項4】
前記第2の相がDA(1<x≦3)なる化合物であることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項5】
さらに、前記元素Aと前記元素Dとの化合物である第3の相を有し、
前記第3の相は、前記第1の相中に分散していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項6】
前記第1の相が主として結晶質シリコンであり、前記第2の相および/または前記第3の相が結晶質シリサイドであることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項7】
前記第1の相がリンまたはホウ素を添加したシリコンで構成されることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項8】
前記第1の相に酸素を添加したことを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項9】
前記元素Aと前記元素Dの合計に占める前記元素Dの原子比率が0.01〜25%であることを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項10】
前記元素Dが、元素Dを選ぶことのできる群より選ばれた2種以上の元素であり、
一つの前記元素Dと前記元素Aの化合物である前記第2の相および/または前記第3の相に、他の前記元素Dが、固溶体または化合物として含有されることを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項11】
Fe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(CeおよびPmを除く)、Hf、Ta、WおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素である元素D´をさらに含み、
前記元素D´が、前記第2の相を構成する前記元素Dとは種類の異なる元素であり、
前記元素Aと前記元素D´との化合物である第4の相をさらに有し、
前記第1の相と前記第4の相が、界面を介して接合しており、
前記第4の相が、外表面に露出している
ことを特徴とする請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項12】
前記第1の相が主として結晶質シリコンであり、前記ナノサイズ粒子の外表面がアモルファス層で覆われていることを特徴とする請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項13】
前記第2の相が主として結晶質シリサイドであり、前記ナノサイズ粒子の外表面がアモルファス層で覆われていることを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項14】
前記アモルファス層の厚みは、0.5〜15nmであることを特徴とする請求項12または請求項13に記載のナノサイズ粒子。
【請求項15】
前記第2の相および/または前記第4の相は、界面以外が略球面状または多面体状の表面を有することを特徴とする請求項1〜請求項14のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項16】
63.7MPaで粉体粒子を圧縮した条件で、粉体導電率が4×10−8[S/cm]以上であることを特徴とする請求項1〜請求項15のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子。
【請求項17】
請求項1〜請求項16のいずれか1項に記載のナノサイズ粒子を負極活物質として含むリチウムイオン二次電池用負極材料。
【請求項18】
導電助剤をさらに有し、前記導電助剤がC、Cu、Sn、Zn、NiおよびAgからなる群より選ばれた少なくとも1種の粉末であることを特徴とする請求項17に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
【請求項19】
前記導電助剤がカーボンナノホーンを含むことを特徴とする請求項18に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料。
【請求項20】
請求項17〜請求項19のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材料を用いたリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項21】
リチウムイオンを吸蔵および放出可能な正極と、
請求項20に記載の負極と、
前記正極と前記負極との間に配置されたセパレータとを有し、
リチウムイオン伝導性を有する電解質中に、前記正極と前記負極と前記セパレータとを設けたことを特徴とするリチウムイオン二次電池。
【請求項22】
Si、Sn、Al、Pb、Sb、Bi、Ge、InおよびZnからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、Fe、Co、Ni、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Ba、ランタノイド元素(CeおよびPmを除く)、Hf、Ta、WおよびIrからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素と、を含む原料をプラズマ化し、
ナノサイズの液滴を経由してナノサイズ粒子を得ることを特徴とするナノサイズ粒子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【公開番号】特開2012−101958(P2012−101958A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250220(P2010−250220)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(000005382)古河電池株式会社 (314)
【Fターム(参考)】