説明

ナノダイヤモンド、それを含有する重合性組成物及びそれを重合してなる樹脂及び光学部品、レンズ

【課題】粒子径が小さく、かつ揃っており、その後の再凝集も無い光学部品用材料として好適なナノダイヤモンドを提供する。
【解決手段】グラファイト相を含有し、動的光散乱法で求めた粒径の95%以上が1,000nm以下のナノダイヤモンドを、酸素と水及び/又はアルコールとが共存する流体中亜臨界処理又は超臨界処理により精製し、及び微粒化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラファイト相を有するナノダイヤモンドから、グラファイト相を効率的かつ十分に低コストで除去した後、微粒化処理して得られるナノダイヤモンド及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノダイヤモンドは、高い硬度を有し、平滑性に優れているので、研磨材や潤滑材として利用されている。ナノダイヤモンドはまた、誘電率が低く、電気絶縁性、耐熱性、熱伝導性、光学的性質及び生体適合性に優れているので、半導体や回路基板用の絶縁材料、光学部品用材料等の分野での利用も期待されている。
【0003】
ナノダイヤモンドの製造方法として、爆射法(炭素原子を含む爆薬を爆発させ、それに伴う衝撃によりナノサイズのダイヤモンドを生成させる方法)が代表的である。しかしこの方法により得られるナノダイヤモンドは、グラファイトを主とする炭素不純物を含んでいるので、ダイヤモンド本来の性質が阻害されている。
【0004】
特許文献1は、グラファイト相含有ナノダイヤモンドを超臨界水で処理することにより、精製する方法を記載している。しかしこの方法で十分にグラファイト相を除去するには、700〜800℃の温度及び100〜200MPaの圧力が必要であり、水の臨界点(臨界温度374℃、臨界圧力22.1MPa)に比較的近い温度・圧力では足りず、エネルギー及び装置にかかるコストが高いという問題がある。
【0005】
そこで、非特許文献1では、グラファイト相含有ナノダイヤモンドを大気圧下空気で酸化することにより、精製する方法を記載している。しかしこの方法では、酸素が粒界のグラファイト相に十分に浸透しないので、ナノダイヤモンド表面のグラファイト相しか除去されないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−43265号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Yury Gogotsi,外4名,「ジャーナル・オブ・ザ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)」,2006年,第128巻,pp.11635-11642
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、ナノダイヤモンドを光学部品用材料用途に展開する場合、例えば透明な光学樹脂中に均一に分散させ、さらに分散後の樹脂の光学的透明性を維持するためには、ナノダイヤモンドは、その粒子径が均一に揃い、かつ再凝集しない事が必要である。グラファイト相が十分に除去できないと、微粒化処理を行ったとしても得られるダイヤモンドの粒子径が均一に揃わず、透明性が要求される光学部品材料の用途への適用の観点からも、特許文献1および非特許文献1に記載の技術では不十分であった。
さらに、光学部品材料においては、高い光線透過率および低いヘイズ(曇り具合)が要求される観点から、この用途に適用されるナノダイヤモンドには、粒子径が小さいことが要求される。
従って、本発明の一つの目的は、光学部品材料の用途に好適な、粒子径が小さく、均一で、かつ再凝集しないナノダイヤモンドを提供する事である。
また、本発明のもう一つの目的は、得られた微粒化されたナノダイヤモンドを光学部品用材料用途に使用する事である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、酸素と水及び/又はアルコールからなる処理溶媒とが共存する流体中で、グラファイト相を有するナノダイヤモンドを、前記処理溶媒の標準沸点以上の温度及び一気圧(ゲージ圧)以上の圧力で亜臨界処理又は超臨界処理することにより、グラファイト相を効率的かつ十分に低コストで除去することができ、さらに、該グラファイト相が除去されたナノダイヤモンドを微粒化する事により、粒子径が小さく、均一で、かつ再凝集しないナノダイヤモンドが得られることを発見し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明のナノダイヤモンドは、グラファイト相を含有するナノダイヤモンドを、酸素と水及び/又はアルコールからなる処理溶媒とが共存する流体中で、処理溶媒の標準沸点以上の温度及び一気圧(ゲージ圧)以上の圧力で亜臨界処理又は超臨界処理し、及び、該ナノダイヤモンドを微粒化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明のナノダイヤモンドは、粒子径が小さく、かつ揃っており、その後の再凝集も無いことから、特に透明性の要求される光学部品用材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】ブレンドダイヤモンドを製造する装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について説明する。
本発明のナノダイヤモンドは、グラファイト相を含有し、動的光散乱法で求めた粒子径の95%以上が1,000nm以下のナノダイヤモンドに対して、以下の処理(A)および(B)を行って得られる淡色化されたナノダイヤモンドである:
(A)酸素と水及び/又はアルコールからなる処理溶媒とが共存する流体中、前記処理溶媒の標準沸点以上の温度及び一気圧(ゲージ圧)以上の圧力で前記ナノダイヤモンドを亜臨界処理又は超臨界処理すること、及び
(B)処理(A)にて調製されたナノダイヤモンドを微粒化処理すること。
【0014】
〔処理(A)〕
処理(A)では、グラファイト相含有ナノダイヤモンドを、酸素の存在下、所定の溶媒にて、亜臨界処理又は超臨界処理により精製する。
【0015】
[1]グラファイト相含有ナノダイヤモンドの調製
処理(A)にて精製処理される対象となるグラファイト相含有ナノダイヤモンドは、爆射法等により合成される。グラファイト相含有ナノダイヤモンドは、合成したままの状態の粗ダイヤモンド(ブレンドダイヤモンド、以下BDとよぶ)でもよいし、BDを選択的酸化処理した後塩基で中和することにより得られ、グラファイト相の一部が除去された超分散ダイヤモンド(Ultra Dispersed Diamond、以下UDDという)でもよいが、好ましくはUDDである。
【0016】
爆射法によるBD及びUDDの製造方法は、例えば特開2006−239511号に記載されている。
具体的には、図1に示すように、胴内に電気雷管6を装着し、爆薬[例えばTNT(トリニトロトルエン)/HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)=50/50(質量比)]5を収納した片面プラグ付き鋼鉄製パイプ4を、純チタン製耐圧容器2に入れた氷水1の中に沈め、鋼鉄製パイプ4に鋼鉄製へルメット3を被せて爆薬を爆発させると、氷水1中にBDが生成する。
【0017】
UDDの製造方法は、
(1−1)BDを、酸(濃硝酸、濃硫酸、これらの混合物等)中で1.4MPa程度の圧力及び150〜180℃程度の温度で10〜30分間加圧・加熱することにより選択的酸化処理し、
(1−2)得られた分散液を、1.8MPa程度の圧力及び200〜240℃程度の温度で加圧加熱することにより、BDを一次酸化性エッチング処理し、
(1−3)さらに2.5MPa程度の圧力及び230〜250℃程度の温度で加圧・加熱することにより、BDを二次酸化性エッチング処理し、
(1−4)得られた分散液に、酸の1〜1.5当量の塩基(アンモニア等)を添加することにより酸を中和し、
(1−5)得られたUDDを水で洗浄し、
(1−6)得られた懸濁液を遠心分離する工程を有する。
なお、 工程(1−6)で脱水したUDDは、水を加えて懸濁液とするか、乾燥して微粉末とすればよい。
【0018】
爆射法により得られたBD及びこれに上記工程(1−1)〜(1−6)の処理を施して得られたUDDは、95体積%以上が1,000nm以下の粒子径を有するのが好ましく、粒子径1,000nm以上の粒子を実質的に含んでいないのが好ましい。粒子径は動的光散乱法で求めることができる。この段階で得られるBD及びUDDのメジアン径は1000nm以下、好ましくは250nm以下、さらに好ましくは30〜250nmであるのが好ましい。
【0019】
BD及びUDDは、主として粒界及び表面にグラファイト相を有する。
BD及びUDDは、グラファイト以外の不純物として、(i)非晶質炭素、(ii)炭化水素、へテロ原子含有炭化水素等の炭化水素不純物、(iii)鉄等の金属及びその酸化物、塩(金属硫酸塩、金属カーボネート等)、カーバイド等、及び(iv)珪素、硫黄等の非金属無機物及びその酸化物等も有する。
BD及びUDDは、グラファイトを主とするこれらの不純物が有する官能基及び結合を有する。官能基として、メチル基、メチレン基、メチン基、カルボニル基、ケトン基、エステル基、カルボキシル基、エーテル基、アルデヒド基、アミノ基、アミド基、ニトロ基、硝酸エステル基、スルホン酸基、炭素原子に結合した水酸基(結合性水酸基)等が挙げられる。
本発明のナノダイヤモンドを得るために、酸素と水及び/又はアルコールからなる処理溶媒とが共存する流体中で、処理溶媒の標準沸点以上の温度及び一気圧(ゲージ圧)以上の圧力でBDやUDDを処理するので、上記の不純物を十分に分解又は溶解することができ、ナノダイヤモンドを淡色化することができる。
【0020】
[2]精製方法
グラファイト相含有ナノダイヤモンドの精製方法は、
(2−1)グラファイト相含有ナノダイヤモンドと、水及び/又はアルコールからなる処理溶媒とからなる混合物を調製し、
(2−2)このナノダイヤモンド−溶媒混合物に酸素を共存させた状態で、処理溶媒の標準沸点以上の温度及び一気圧(ゲージ圧)以上の圧力でグラファイト相含有ナノダイヤモンドを亜臨界処理又は超臨界処理し、
(2−3)得られた精製ナノダイヤモンドを含む液を遠心分離して処理溶媒を除去する工程を有する。
また、工程(2−3)の後、脱処理溶媒した精製ナノダイヤモンドを水洗する工程(2−4)、及び遠心分離する工程(2−5)を設けてもよい。
工程(2−3)又は工程(2−5)まで行った場合には工程(2−5)で得られた精製ナノダイヤモンドは、分散溶媒を加えて懸濁液にするか、乾燥して徴粉末にすればよい。この分散溶媒は水、アルコール等の有機溶媒又はこれらの混合液でよい。精製ダイヤモンドの懸濁液には、必要に応じて分散剤を添加してもよい。
【0021】
(2−1)ナノダイヤモンド−溶媒混合物の調製工程
ナノダイヤモンド−溶媒混合物のグラファイト相含有ナノダイヤモンドの濃度は、0.05〜16質量%が好ましく、0.1〜12質量%がより好ましく、1〜10質量%が最も好ましい。この濃度が上述した範囲であることにより、精製の観点、生産性の観点から両者のバランスに優れるものとなる。
【0022】
処理溶媒としては、水、アルコール又はこれらの混合液を用いる。アルコールとしては、炭素数1〜3の低級アルコール(以下単に「低級アルコール」という)が好ましい。低級アルコールの具体例として、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール及びこれらの混合液が挙げられる。
【0023】
(2−2)精製処理工程
ナノダイヤモンド−溶媒混合物をオートクレーブに入れ、酸素を導入する。必要に応じて酸化ホウ素などの触媒を添加してもよい。また、オートクレーブ内に空気がある場合、酸素で置換するのが好ましい。酸素の導入量は、グラファイト相含有ナノダイヤモンド中のグラファイト1gに対して、0.1モル以上が好ましく、0.15モル以上がより好ましく、0.2モル以上が最も好ましい。この導入量の上限は特に制限されない。ナノダイヤモンド中のグラファイトの割合は、例えば、JIS K2249に準拠してナノダイヤモンドの比重を測定し、この比重から、ダイヤモンドの比重を3.50g/cmとし、グラファイトの比重を2.25g/cmとして算出することができる。
【0024】
処理溶媒の標準沸点Tb以上及び一気圧(ゲージ圧)以上となるように、オートクレーブ内の温度及び圧力を調整する。
処理溶媒のTb以上及び一気圧(ゲージ圧)以上にする限り、処理溶媒を亜臨界状態にしてもよいし、超臨界状態にしてもよい。この精製処理工程では、激しい反応性を有することが知られている亜臨界又は超臨界状態の酸素及び処理溶媒を作用させることにより、比較的低い温度及び圧力でグラファイト相を効率的に選択的酸化することができる。
ここで、「亜臨界状態」とは、通常は、Tb以上の温度及び一気圧(ゲージ圧)以上の圧力で、かつ、臨界温度Tc未満及び/又は臨界圧力Pc未満の状態をいい、好ましくは(前記処理溶媒の臨界温度Tc−150℃)以上の温度、かつ、前記処理溶媒の臨界圧力の30%以上の圧力である状態、より好ましくは(前記処理溶媒の臨界温度Tc−100℃)以上の温度、かつ、前記処理溶媒の臨界圧力の50%以上の圧力である状態をいう。
【0025】
処理温度の下限は、(処理溶媒の臨界温度Tc−150℃)が好ましく、(Tc−100℃)がより好ましい。処理温度の上限は、800℃が好ましく、600℃がより好ましい。処理時問は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、0.1〜24時問が好ましい。
【0026】
下記表1に、酸素、水及び低級アルコールのTb、Tc及びPcを示す。
水及び低級アルコールのTcは、酸素のTc(−118°C)より選かに高く、水及び低級アルコールのPcは、酸素のPc(5.1MPa)以上である。
従って、水及び/又は低級アルコールからなる処理溶媒をTb以上及び一気圧(ゲージ圧)以上にした時、酸素は亜臨界状態のままか超臨界状態となり処理溶媒を超臨界状態にした時、酸素も超臨界状態となる。
【0027】
【表1】

【0028】
(2−3)脱処理溶媒工程
得られた精製ナノダイヤモンドを含む液を遠心分離し、処理溶媒を除去する。
【0029】
(2−4)水洗工程
デカンテーション法により、脱処理溶媒した精製ナノダイヤモンドを水洗してもよい。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。
【0030】
(2−5)脱水工程
水洗した精製ナノダイヤモンドを遠心分離し、脱水するのが好ましい。
【0031】
なお、ナノダイヤモンドの精製処理は、
(3−1)グラファイト相含有ナノダイヤモンドと、酸性化合物と、水及び/又はアルコールからなる処理溶媒とを含む混合物を調製し、
(3−2)このナノダイヤモンド−酸性化合物−溶媒混合物を、処理溶媒の臨界点以上の温度及び圧力で処理し、
(3−3)得られた精製ナノダイヤモンドを含む液を遠心分離して処理溶媒を除去する工程を有する方法によっても実現することができる。なお、工程(3−3)の終了後、脱溶媒した精製ナノダイヤモンドを水洗する工程(3−4)、及び遠心分離する工程(3−5)を設けるのが好ましい。工程(3−3)と工程(3−4)との間に、必要に応じて、脱溶媒した精製ナノダイヤモンドを塩基性溶液で中和する工程(3−6)、及び弱酸で処理する工程(3−7)を設けてもよい。工程(3−3)又は(3−5)で得られた精製ナノダイヤモンドは、上記と同様に懸濁液にするか、微粉末にすればよい。
【0032】
(3−1)ナノダイヤモンド−酸性化合物−溶媒混合物の調製工程
グラファイト相含有ナノダイヤモンドの処理溶媒分散液に、酸性化合物又はその溶液を添加するか、乾燥したグラファイト相含有ナノダイヤモンドに酸性化合物及び処理溶媒を添加することにより、ナノダイヤモンド−酸性化合物−溶媒混合物を調製する。
【0033】
酸性化合物としては、硝酸、硫酸、塩酸、リン酸、ホウ酸、フッ酸、臭化水素酸等の無機酸、及び蟻酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸が挙げられるが、無機酸が好ましく、硝酸がより好ましい。
【0034】
必要に応じて、さらに酸化性化合物を添加しても良い。酸化性化合物としては、過酸化水素、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カリウム、亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸カリウム、塩素酸リチウム、塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸カリウム、過マンガン酸ナトリウム、過マンガン酸カリウム、マンガン酸ナトリウム、マンガン酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、重クロム酸カリウム、クロム酸カリウム等が挙げられるが、過酸化水素が好ましい。酸性化合物と酸化性化合物との好ましい組合せとして、硝酸と過酸化水素との組合せが挙げられる。なお、酸性化合物を用いなくても後述の超臨界処理は可能であるが、この場合、酸化性化合物、特に過酸化水素を単独で用いることができる。
【0035】
ナノダイヤモンド−酸性化合物−溶媒混合物のグラファイト相含有ナノダイヤモンドの濃度は第一の方法と同じでよい。十分に精製するために、ナノダイヤモンド−酸性化合物−溶媒混合物における上記化合物の濃度は0.01〜10mol/Lが好ましく、0.1〜5mol/Lがより好ましい。
【0036】
(3−2)超臨界処理工程
ナノダイヤモンド−酸性化合物−溶媒混合物を処理溶媒の臨界点以上の温度及び圧力で処理する。水及び低級アルコールの臨界温度Tc及び臨界圧力Pcは、上記表に記載の通りである。温度は処理溶媒の臨界温度〜600℃が好ましい。温度の上限は550℃がより好ましい。圧力は処理溶媒の臨界圧力〜100MPaが好ましい。圧力の上限は70MPaがより好ましく、50MPaが最も好ましい。処理時間は温度及び圧力により適宜設定すればよいが、1〜24時間が好ましい。
【0037】
(3−3)脱溶媒工程、(3−4)水洗工程及び(3−5)脱水工程
工程(3−3)〜(3−5)は上述の方法と同じでよい。
【0038】
(3−6)中和工程
工程(3−3)で脱溶媒した精製ナノダイヤモンドを、塩基性溶液で中和してもよい。塩基性溶液としては水酸化ナトリウム水溶液及び水酸化カリウム水溶液が好ましい。塩基性溶液の濃度は0.01〜0.5mol/Lが好ましい。脱溶媒した精製ナノダイヤモンドに塩基性溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。中和後、遠心分離し、塩基性溶液を除去する。
【0039】
(3−7)弱酸処理工程
工程(3−6)で中和した精製ナノダイヤモンドを弱酸溶液で洗浄するのが好ましい。弱酸溶液によって、中和処理後に残留しているナトリウム等の金属イオンを除去することができる。弱酸溶液として、0.01〜0.5mol/Lの塩酸が挙げられる。中和した精製ナノダイヤモンドに弱酸溶液を添加し、超音波処理するのが好ましい。洗浄後、遠心分離し、弱酸溶液を除去する。
【0040】
〔処理(B)〕
処理(B)では、処理(A)で調製されたナノダイヤモンドを含む液をそのまま、もしくは遠心分離した後適切な媒体に再分散し、微粒化処理する。さらに、必要に応じて、遠心分離して処理溶媒を除去する。
【0041】
この微粒化処理は、例えば処理(A)で調製されたナノダイヤモンドを水、アルコール類、その他適切な有機溶媒に分散させた分散物に対して行うことができる。また、この分散物を、ビーズミルを用いる手法によって代表される湿式微粉砕法又は/および高エネルギー超音波処理法を組み合わせて微細化する。
ここで、湿式微粉砕法に相当する湿式分散法の例として、被粉砕物のスラリーをジェット噴射して、噴射流を二分し、再び合流させる際に正面衝突させて、被粉砕物自身の運動エネルギーによって粉砕を行うジェット噴射法、あるいは被粉砕物のスラリーを超高速回転する際に、特殊な攪拌羽根を用いて回転槽内壁に押し付けて薄膜状とし、攪拌羽根のせん断応力によって粉砕を実現する薄膜法などがある。
【0042】
より具体的には、微粉砕もしくは分散装置(例えばアシザワファインテック株式会社のミニツェア(MINI CER)やスターミル(商標)ナノゲッターDMS65などジルコニアビーズを粉砕メディアとする湿式の粉砕・分散の手法で、例えば数分から数時間かけて行うことができる。
【0043】
上記方法により得られる本発明のナノダイヤモンドは、粒子径が2nm〜100nmであり、かつさらに再凝集しないという特徴がある。
【0044】
さらに、微粒化したナノダイヤモンドを、水洗、脱水、再分散させてもよい。
水洗を行う工程においては、例えばデカンテーション法により、微粒化したナノダイヤモンドを水洗する。洗浄操作は3回以上行うのが好ましい。
また、脱水を行う工程においては、例えば水洗したナノダイヤモンドを遠心分離し、さらに脱水する。
また、再分散を行う工程においては、水洗、脱水したナノダイヤモンドを、実際の使用条件に合わせて適切な分散媒に再分散させる。
【0045】
別の側面から、本発明は、上述したナノダイヤモンドと、硫黄原子及び/又は金属原子を含有する化合物とを含んでなる重合性組成物を提供する。
【0046】
このような重合性組成物に用いることができる、金属原子を含有する化合物としては、例えば再公表2005−095490号公報、国際公開第2009/087717号パンフレットなどに記載されたものを使用でき、例えば下記で示す、分子内にチエタン基を1個または2個以上有し、かつ、金属原子を含有する化合物や、分子内に1つ以上のチエタニル基を含有する非金属チエタンなどが挙げられる。
【0047】
分子内にチエタン基を1個または2個以上有し、かつ、金属原子を含有する化合物について説明する。
この化合物に用いられる金属原子として好ましくはSn原子、Si原子、Zr原子、Ge原子、Ti原子、Zn原子、Al原子、Fe原子、Cu原子、Pt原子、Pb原子、Au原子またはAg原子であり、より好ましくはSn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、Ge原子、Al原子、Pb原子またはZn原子であり、さらに好ましくはSn原子、Si原子、Zr原子、Ti原子、Ge原子である。
【0048】
また、チエタン基として好ましくは一般式(1)または(2)で表されるチエタン基である。
【0049】
【化1】

【0050】
[式中、A1〜A10はそれぞれ独立に水素原子または一価の無機または有機残基を表す]
【0051】
かかる一価の無機または有機残基としては、ハロゲン原子、水酸基、チオール基、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、置換または無置換のアラルキル基、置換または無置換のアルコキシ基、置換または無置換のアルキルチオ基、置換または無置換のアリールオキシ基、置換または無置換のアリールチオ基が示される。
【0052】
また、一般式(1)または(2)で表されるチエタン基と金属原子の結合については特に限定されるものではない。すなわち、直接金属原子と結合してもよいし、適当な連結基を介して結合していてもよい。かかる連結基としては、鎖状または環状脂肪族基、芳香族基または芳香族−脂肪族基、一般式(3)で表される基が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0053】
【化2】

【0054】
[式中、XおよびXは各々独立に硫黄原子または酸素原子を表し、Rは二価の有機基を表し、mは0または1以上の整数を表し、]
【0055】
かかる連結基は、基中に炭素原子、水素原子以外のヘテロ原子を含有していても良い。かかるヘテロ原子としては、酸素原子または硫黄原子が挙げられるが、本発明の所望の効果を考慮すると、硫黄原子であることが好ましい。
【0056】
次に、非金属チエタン化合物について説明する。
非金属チエタン化合物は、分子内に1つ以上のチエタニル基を含有する。また、非金属チエタン化合物は、本発明の添加剤と相溶するものであればいかなる構造を有する化合物でも使用できるが、好ましくはチエタニル基を合計2つ以上含有する化合物である。
【0057】
具体的には、非金属チエタン化合物として、ビスチエタニルスルフィド、ビス(3−チエタニルチオ)メタン、3−(((3'−チエタニルチオ)メチルチオ)メチルチオ)チエタン等のスルフィド系チエタン化合物:
ビス(3−チエタニル)ジスルフィド、ビス(3−チエタニル)トリスルフィド、ビス(3−チエタニル)テトラスルフィド、ビス(3−チエタニル)ペンタスルフィド等のポリスルフィド系チエタン化合物等が挙げられる。
【0058】
ここで、「重合性組成物」とは、硫黄原子及び/又は金属原子を含有する化合物および上述した微粒化ナノダイヤモンドを含有する重合性組成物である。
【0059】
この重合性組成物に必要に応じて使用する重合触媒としては、特に限定するものではなく、例えば、特開2003−327583号公報などに記載の公知の重合触媒などを使用することができる。かかる重合触媒としては、例えば、アミン化合物、ホスフィン化合物、有機酸およびその誘導体(塩、エステルまたは酸無水物など)、無機酸、四級アンモニウム塩化合物、四級ホスホニウム塩化合物、三級スルホニウム塩化合物、二級ヨードニウム塩などのオニウム塩化合物、ルイス酸化合物、ラジカル重合触媒、カチオン重合触媒などが使用される。
【0060】
また重合性組成物を製造する際には、本発明の効果を損なわない範囲内で所望に応じて、内部離型剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色顔料(例えば、シアニングリーン、シアニンブルー等)、染料、流動調節剤、充填剤などの公知の各種添加剤を添加することが可能である。
【0061】
さらに、別の側面から、本発明は、以下のような(b−1)〜(b−3)の成分を含んでなる重合性組成物を提供する。
【0062】
(b−1)ポリイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物、イソシアネート基を有するイソチオシアネート化合物から選ばれる1種あるいは2種以上の化合物:
(b−2)ポリオール化合物、ポリチオール化合物、メルカプト基を有するアルコール化合物から選ばれる1種あるいは2種以上の化合物:および
(b−3)上述したナノダイヤモンド。
【0063】
このような重合性組成物に用いることができる、化合物(b−1)および(b−2)のそれぞれとしては、例えば再公表2008−018168号公報に記載されたものを使用でき、具体的には、それぞれ下記で示す化合物が挙げられる。
【0064】
ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、2,6−ビス(イソシアネートメチル)ビシクロ−[2.2.1]−ヘプタン、m−キシリレンジイソシアネート、2,5−ビス(イソシアネートメチル)−1,4−ジチアンが挙げられる。
【0065】
ポリイソチオシアネート化合物としては、上記に例示したポリイソシアネート化合物のイソシアナート基をイソチオシアナート基に変えたものが挙げられる。
【0066】
イソシアネート基を有するイソチオシアネート化合物としては、上記に例示したポリイソシアネート化合物のイソシアナート基の一部をイソチオシアナート基に変えたものが挙げられる。
【0067】
これらポリイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物、イソシアネート基を有するイソチオシアネート化合物は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0068】
ポリオール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,3−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,3−ヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、キシリトール、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、m−キシリレングリコール、p−キシリレングリコール、o−キシリレングリコールが挙げられる。
【0069】
また、ポリチオール化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキス(2-メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、4-メルカプトメチル-1,8-ジメルカプト-3,6-ジチアオクタン、5,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,7-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、4,8-ジメルカプトメチル-1,11-ジメルカプト-3,6,9-トリチアウンデカン、2,5-ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、1,1,3,3-テトラキス(メルカプトメチルチオ)プロパン、4,6−ビス(メルカプトメチルチオ)−1,3−ジチアン、2−(2,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エチル)−1,3−ジチエタンが挙げられる。
【0070】
また、メルカプト基を有するアルコール化合物としては、例えば、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グルセリンビス(メルカプトアセテート)、4−メルカプトフェノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)が挙げられる。
これらポリオール化合物、ポリチオール化合物、メルカプト基を有するアルコール化合物は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
ここで、「重合性組成物」とは、化合物(b−1)から選択される少なくとも1種、化合物(b−2)から選択される少なくとも1種および上述した微粒化ナノダイヤモンド(b−3)を含有する重合性組成物である。
【0072】
さらに、樹脂の改質を目的として、ヒドロキシ化合物、エポキシ化合物、エピスルフィド化合物、有機酸及びその無水物、(メタ)アクリレート化合物等を含むオレフィン化合物等の樹脂改質剤を加えてもよい。ここで、樹脂改質剤とは、チオウレタン系樹脂の屈折率、アッベ数、耐熱性、比重等の物性や耐衝撃性等の機械強度等を調製あるいは向上させる化合物である。
【0073】
また、必要に応じ、公知の成形法における手法と同様に、ジブチル錫ジクロライドなどの触媒、ベンゾトリアゾール系などの紫外線吸収剤、酸性リン酸エステルなどの内部離型剤、光安定剤、酸化防止剤、ラジカル反応開始剤などの反応開始剤、鎖延長剤、架橋剤、着色防止剤、油溶染料、充填剤などの物質を添加してもよい。
【0074】
さらに、別の側面から、本発明は、以下のような(c−1)、(c−2)の成分を含んでなる重合性組成物を提供する。
【0075】
(c−1)エピスルフィド基を含有する化合物:および
(c−2)上述したナノダイヤモンド。
【0076】
このような重合性組成物に用いることができるエピスルフィド基を含有する化合物としては、例えば特開2003−335859号公報に記載されたものを使用でき、具体的には、下記で示す化合物が挙げられる。
【0077】
【化3】

【0078】
(式中、R1aは炭素数1〜10の炭化水素基、R2a、R3a、R4aはそれぞれ炭素数1〜10の炭化水素基または水素原子を表す。)で表される構造を1個以上有する化合物を含有する。
【0079】
式(4)において、R1aは炭素数1〜10の二価の炭化水素基を表し、具体的には、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜10のアルキレン基、フェニレン、アルキル置換フェニレン及びナフタレン等の炭素数6〜10のアリーレン基、またはアルキレン及びアリーレンの組み合わせからなる炭素数7〜10のアラルキレン基が挙げられるが、炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。メチレンやエチレンであれば、より好ましい。メチレンであれば、更に好ましい。R2a、R3a、R4aはそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10の一価の炭化水素基を表し、炭素数1〜10の一価の炭化水素基としては、直鎖、分岐または環状の炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアラルキル基が挙げられるが、水素原子または炭素数1〜10のアルキレン基が好ましい。水素原子やメチル基であれば、より好ましい。水素原子であれば、更に好ましい。
【0080】
ここで、「重合性組成物」とは、少なくとも式(4)で表される構造を1個以上有する、エピスルフィド基を含有する化合物(c−1)および上述した微粒化ナノダイヤモンド(c−2)を含有する重合性組成物であり、この重合性組成物には、重合反応を触媒する硬化触媒、例示化合物の2量体、3量体、4量体等のポリスルフィドオリゴマー類、重合抑制剤として添加した無機酸類及び有機酸類、溶媒その他副成物等の有機化合物、無機化合物も問題にならない範囲で含まれていても良い。
【0081】
ここで用いることができる硬化触媒としては、3級アミン類、ホスフィン類、4級アンモニウム塩類、4級ホスホニウム塩類、ルイス酸類、ラジカル重合触媒類、カチオン重合触媒類等が通常用いられる。
【0082】
このような重合性組成物は、高屈折率樹脂のみならず中屈折率樹脂にも応用可能であり、主に得られる樹脂の耐衝撃性、比重等の諸物性を調整するためや、モノマーの粘度、その他の取扱い性を調整するためなど、樹脂の改良をする目的で、樹脂改質剤を加えることができる。
【0083】
樹脂改質剤としては、本発明に係わる重合性組成物に含まれるチオエポキシ化合物以外のチオエポキシ化合物類、チオール化合物、イソ(チオ)シアナート類、メルカプト有機酸類、有機酸類及び無水物類、アミノ酸及びメルカプトアミン類、アミン類、(メタ)アクリレート類等を含むオレフィン類が挙げられる。
【0084】
なお、樹脂成形の際には、目的に応じて公知の成形法における場合と同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、充填剤、外部または内部離型剤、密着性向上剤などの種々の物質を添加してもよい。
【0085】
さらなる観点から、本発明は、この重合性組成物を重合して得られる樹脂、ならびにこの樹脂からなる光学部品、例えばレンズを提供する。
【0086】
本発明の樹脂(例えば、プラスチックレンズ)を得る際の代表的な重合方法としては、注型重合が挙げられる。即ち、ガスケットまたはテープ等で保持された成型モールド間に、必要に応じて硬化触媒を含有する、上述した重合性組成物を注入する。この時、必要に応じて、脱泡等の処理を行っても何ら差し支えはない。
【0087】
次いで、オーブン中または水中等の加熱可能装置内で加熱することにより硬化させ、樹脂を取り出すことができる。
また、注型重合型を適宜選択することにより、メガネレンズ以外の光学部品を得ることもできる。
【実施例】
【0088】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例1)
(微粒化ナノダイヤモンドの調整)
・処理(A)
2.0質量%のUDD(JIS K2249に準拠して測定した比重は3.38g/cmであり、この比重から、ダイヤモンドの比重を3.50g/cmとし、グラファイトの比重を2.25g/cmとして算出した組成は、ダイヤモンド90体積%及びグラファイト10体積%であった)の水分散液(ビジョン開発株式会社製、動的光散乱法で測定したUDDの粒径分布より、1,000nm超の粒子を含まないことが確認され、メジアン径が25nmと求められた)30mLを、オートクレーブ(容量50mL、SUS316製)に入れ、酸素導入管、温度センサ及び調圧弁を有する蓋で密封した。オートクレーブ内の空気を酸素で置換し、オートクレーブ内が1.0MPa(ゲージ圧)の圧力となるように、室温で酸素を導入し、オートクレーブを炉内に設置し、平均昇温速度6.5℃/分で加熱した。400℃に到達後、400±5℃の温度及び24.8±1MPaの圧力で1時間処理し、室温まで冷却した後、大気圧まで減圧し、精製ナノダイヤモンドを含む液を回収した。この液は、上澄みと薄い灰色を呈する精製ナノダイヤモンドの沈殿とに分離していた。
【0090】
精製ナノダイヤモンド含有液を遠心分離し、上澄み液を除去し、脱水した精製ナノダイヤモンドをデカンテーション法で3回水洗し、速心分離し、脱水した精製ナノダイヤモンドを120°Cで加熱乾燥した。UDD及び精製ナノダイヤモンドの乾燥質量の差から算出した除去率は、UDDを100質量%として5.9質量%であった。精製ナノダイヤモンドの比重は3.49g/cmであった。この比重から算出した組成は、ダイヤモンド99体積%及びグラファイト1体積%であった。
【0091】
・処理(B)
処理(A)で得られた精製ナノダイヤモンドを5.0質量%にて含むトリエチレングリコール分散液(ビジョン開発株式会社製;製造時の平均粒径は200nm以下であったが凝集沈降していた)を攪拌と超音波処理を行った後、ジルコニアビーズ(ビーズ径φ:0.1mm)による湿式微粉砕に供した[装置条件:ミニツェア(MINI CER)アシザワ・ファインテック株式会社;周速:10m/sec;温度:40〜50℃]。粒度分布計(動的光散乱UPA)により経時的な粒度変化(平均粒径)を確認したところ、15分後に68nm、30分後に62nmだったものが、1時間後に56nm、1.5時間後に40nm、2時間後に40nmと徐々に微粒化できたことを確認した。2時間処理後に採取した分散液(平均粒径:40nm)は5日間経っても凝集や沈降を起こさず安定に存在していた。
なおここでいう平均粒子径とはメジアン径のことを言う。
【0092】
(実施例2)
(微粒化ナノダイヤモンドの光学樹脂への適用)
実施例1のジルコニアビース処理した5.0質量%ナノダイヤモンドのトリエチレングリコール分散液(平均粒径:40nm)(0.8g)を20℃にて、ジブチル錫ジクロリド(10mg)、内部離型剤(商品名:Zelec UN 、STEPAN社製)30 mgおよび2,5−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンと2,6−ビス(イソシアネートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタンの混合物(5.4g)と混合し均一溶液とした。さらに4−メルカプトメチル−1,8−ジメルカプト−3,6−ジチアオクタン(3.8g)を加え混合した。減圧下にて10分間脱泡を行った後、ガラスモールドとテープからなるモールド型へ注入した。このモールド型を重合オーブンへ投入、25℃〜120℃まで24時間かけて徐々に昇温して重合した。重合終了後、オーブンからモールド型を取り出し、離型して樹脂を得た。樹脂の屈折率をプルフリッヒ屈折計で測定したところ屈折率(ne):1.605であった。
【0093】
(比較例)
実施例2において5.0質量%ナノダイヤモンドのトリエチレングリコール分散液(0.8g)をトリエチレングリコール(0.8g)に替える他は実施例2と同じ操作を行い、硬化樹脂を得た。樹脂の屈折率をプルフリッヒ屈折計で測定したところ屈折率(ne):1.603であった。
【0094】
(結果)
実施例2の樹脂は、比較例の樹脂に比べ屈折率が高く、かつ色相、透明性も同等であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラファイト相を含有し、動的光散乱法で求めた粒子径の95%以上が1,000nm以下のナノダイヤモンドを
(A)酸素と水及び/又はアルコールからなる処理溶媒とが共存する流体中、前記処理溶媒の標準沸点以上の温度及び一気圧(ゲージ圧)以上の圧力で前記ナノダイヤモンドを亜臨界処理又は超臨界処理
及び、
(B)微粒化処理
をして得られるナノダイヤモンド。
【請求項2】
平均粒子径が2〜100nmである請求項1記載の淡色化されたナノダイヤモンド。
【請求項3】
請求項1〜2記載のナノダイヤモンドと硫黄原子及び/または金属原子を含有する化合物とを含んでなる重合性組成物。
【請求項4】
(1)ポリイソシアネート化合物、ポリイソチオシアネート化合物、イソシアネート基を有するイソチオシアネート化合物から選ばれる1種あるいは2種以上の化合物と
(2)ポリオール化合物、ポリチオール化合物、メルカプト基を有するアルコール化合物から選ばれる1種あるいは2種以上の化合物と
(3)請求項1〜2いずれか一項に記載のナノダイヤモンドと
を含んでなる重合性組成物。
【請求項5】
(1)エピスルフィド基を含有する化合物と
(2)請求項1〜2いずれか一項に記載のナノダイヤモンドとを含んでなる重合性組成物。
【請求項6】
請求項3乃至5いずれか一項に記載の重合性組成物を重合して得られる樹脂。
【請求項7】
請求項6に記載の樹脂からなる光学部品。
【請求項8】
請求項6に記載の樹脂からなるレンズ。

【図1】
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【公開番号】特開2011−201720(P2011−201720A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69483(P2010−69483)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(500462834)ビジョン開発株式会社 (51)
【出願人】(504300103)三井化学ファイン株式会社 (7)
【Fターム(参考)】