説明

ナノプラズモン素子

【課題】
【解決手段】本発明は、貫通チャネルを通して流体フローセルに接触させた、短範囲規則を有するナノプラズモン素子を用いて、ナノプラズモン計測を行うための方法に関する。この素子は、ミクロ/ナノスケールの複合コロイドリソグラフィ、薄膜蒸着及びエッチングのステップを組み合わせて用いるステップからなる微小加工プロセスにおいて製造され、化学的又は生物学的な検知分析等の用途に用いられる。この方法では、ナノプラズモン共鳴におけるシフトと、分子反応等のプロセスによって生じる屈折率の変化に感応する素子の光学特性とを利用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノプラズモン用途の素子、素子の使用法及び素子の製造方法に関し、特に生体分析検知用のセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
生体分析センサ素子は、医学診断法及び新薬の開発における基本的なツールとして登場した。これらのセンサ素子は、環境モニタリング及び食品の安全性においても不可欠である。生体分析センサ素子の適用領域の多くにおいて、検出を行う前にターゲット分子を標識化することは、一般には簡単でない。したがって、分子がセンサ表面上で受容体分子と特異的に結合する時に、例えばナノワイヤの電気的特性や振動する水晶の機械的特性における変化として、ターゲット分子を直接検出できることが望ましい。標識なしで生体分析検知を行うための第3の主な変換器原理は、表面の光学特性の変化に基づいている。表面プラズモン共鳴(SPR)は、長年商業使用されており、今日最も一般的に用いられている方法である。SPRは、集団的な電荷振動の光励起、又は平坦な金属表面上で伝播する表面プラズモンに基づく。表面プラズモンを励起する共鳴の状態は、金属界面近傍の屈折率(RI)の変化の影響を受け易いため、金属表面上の吸着プロセスのモニタリングにこれを利用できる。但し、表面プラズモンを励起するには、プラズモンのエネルギ及び運動量を、入射光のエネルギ及び運動量と一致させなければならない。平面金属皮膜の場合、このことは、光の入射角が大きい場合にのみ光をプラスモンに変換可能であり、プリズムカップリング及び比較的高度な光学構成を必要とすることを意味する。或いは、金属表面上の回折格子を用いて、光の入射角が小さい場合又は光の入射角が垂直の場合であっても、光をプラズモンに結合させることができる。最近では、ナノスケール穴の周期的配列によって、表面プラズモンを励起する上で必要な運動量の欠失分を提供できることがわかっており、いずれの構造も、屈折率に基づくプラズモンバイオセンシングで成功裏に用いられている。
【0003】
短範囲秩序で(非周期的に)分布するナノホールが穿孔された薄い金属皮膜もまた、垂直の入射光において明確なプラズモンピークを示す。しかし、これらのタイプの構造に関連する主なプラズモン場の崩壊長は、周期的なナノホール配列と回折格子が結合したSPRでの崩壊長(約数百ナノメートル前後)と比べて、1桁短い(数十ナノメートル)。事実、短範囲秩序のナノホールの平均貫入深さは、金属ナノ粒子に関連する局在的な表面プラズモンの深さと類似しているため、実際に、これら2つのシステムは、極めて類似した検知性能を備える。ピーク位置におけるバルク屈折率の変化に対する感度は、概して、回折格子及び周期的な穴配列に基づくSPRセンサの場合、短範囲秩序のナノホール及びナノ粒子に基づくセンサと比べると高いが、後者2つに関連する短い崩壊長により、薄い分子層がプラズモン場の比較的大部分を占めることになる。その結果、界面の屈折率の変化に対する感度が同程度のもとなる。更に、プラズモン場の短いシステムでは、プラズモン場の大部分が利用されるため、システムの感度は、バルク溶液の温度変化やその他生じ得る摂動の変動に対してもかなり低くなる。
【0004】
最近になって、崩壊長が短いナノプラズモン場もまた、表面の生体分子構造変化の研究に利用可能であることがわかっている。この方法は、プラズモン場の強度が異なる領域間を移動する分子によって生じるプラズモンシフトに基づくものであり、二酸化ケイ素(SiO2)の薄層で覆われた短範囲秩序の金ナノホールのプラズモン共鳴を、担持された脂質二重層に吸着脂肪ベシクルが形質転換する間にモニタリングを行うことにより、実証されている。穿孔された金皮膜の連続性(及び対応する導電率)を用いることで、散逸モニタリングを用いる、ナノプラズモンと水晶振動子マイクロバランス(QCM−D)を組み合わせた素子が開発され、生体分子構造の変化を計測する2つの独立した手段がもたらされた。ナノプラズモン場は、粒子中に局在するナノ粒子プラズモンと同様、短範囲秩序の穴のボイドに局在していることもわかっている。金及びSiO2に対する選択的界面化学的手法を用いて、近年では、ナノプラズモン場が最も強い穴だけに生体分子を特異的に結合させる。この手法は、ターゲット分子の総量が少なく(サンプル量が少なく低濃度)で、ターゲット分子の大半部分をセンサ面の最も感度の高い領域と結合させることが可能な場合には、とりわけ重要である。
【0005】
分子表面に基づく検出では、分子がセンサ表面に接近してセンサ面と結合することが必要となる。分子が結合すると、界面領域でのターゲット分子の局所濃度が極端に低下する。このため、実際の結合反応速度が十分に速い場合は、拡大する濃度低下領域全体の分子の拡散状態から、分子の結合速度を測定する。標的物質溶液をセンサ表面と平行に流すことにより、濃度低下領域の拡大を効率的に抑制し、分子の結合速度を増大させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許出願公開第2008/0285039号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、チャネルの内部領域が生体分子吸着事象等のプロセスによって生じる屈折率(RI)の変化に感応する、2次元的な(2D)平行流体チャネルを備えたナノ流体網用の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、貫流する化学物質、生体分子、又は気体等の検知等に使用可能である。本構造は、検知機能を組み込んだナノフィルタとしても、或いは検知機能を組み込んでいないナノフィルタとしても使用可能である。
【0009】
本発明は、短範囲秩序のナノプラズモン細孔に関する。本構造は、継続的に、細孔の表裏両側への液体のアクセスを可能にするという利点を有する。同時に、短範囲秩序は、検知能力を、少なくとも部分的に、被検物質が流れる細孔の内部に局在化させる。診断法及び薬物スクリーニング用ツール等の用途の開発では、低コスト且つ拡張性のあるナノ加工技術が使用可能なことが不可欠である。そこで、パラレルファブリケーションスキームを提案する。ナノホールが全く同時に作製される上、約50個の素子とサンプルが1つの単一のウエハ上に同時に作製される。各素子の寸法を縮小し、より大きいウエハを用いることにより、ウエハあたりの素子数を更に増やすことができる。
【0010】
ナノチャネル/ナノ細孔が(二次元で)同時に組織されるので、溶液のスループットを高めることができる。
【0011】
このことは、本発明の多くの態様において提示されており、その1つ目が、1以上の導電材料層からなる膜を含むナノプラズモン素子であり、この膜には、複数の貫通チャネルが穿孔され、チャネルの相対位置が、長距離秩序のないパターンを形成するように構成されている。
【0012】
直近の貫通チャネルの中心間の空間長は、1〜10000nm程度、好ましく10〜1000nm程度、さらに好ましくは50〜500nm程度である。貫通チャネルは、10〜500nm程度、好ましくは25〜250nm程度、さらに好ましくは50〜150nm程度の直径を有する。導電層は、金、銀、パラジウム及び白金の1種以上を含む。この素子の膜厚は、1〜1000nm程度、好ましく5〜500nm、さらに好ましくは10〜100nmである。導電層は更に、クロム、チタン、酸化クロム、酸化チタン及び酸化タンタルの1種以上を含む。
【0013】
膜は更に、1以上の機械的安定化層を含んでいてもよい。この機械的安定化層は、絶縁層又は半導電層のいずれでもよい。
【0014】
本発明の別の態様では、分子反応を計測するための計測システムを提供するが、本システムは、本発明の第1の態様による1以上のナノプラズモン素子と、流体フローセルであって、このセル中の液体とナノプラズモン素子とを接触させるように構成された流体フローセルと、ナノプラズモン素子の光学特性を測定するためのシステムと、光学特性を測定するためのシステムに電気的に接続された制御分析システム(302)とを備える。
【0015】
本発明のまた別の態様では、ナノプラズモン素子の製造方法を提供するが、本方法は、膜を形成するステップと、膜に複数の貫通チャネルを形成するステップとを含み、チャネルの相対位置は、長距離秩序のないパターンを形成するように構成される。
【0016】
膜及びチャネルを形成するこれらのステップは、機械的安定化層上に、コロイド1つあたり1〜10000nmの範囲の空間長でコロイドを沈着させるステップと、機械的安定化層及びコロイド上に導電層を蒸着させるステップと、導電層に穴を形成するコロイドを除去するステップと、機械的安定化層及び導電層を絶縁層で被覆するステップと、基質裏側の窓構造部を画定及び除去し、基質の窓構造部を除去した後に露出した機械的安定化層の窓構造部を除去するステップと、機械的安定化層及び導電層を通る貫通チャネルを生成して、ナノプラズモン特性を有するナノサイズの細孔を形成するステップとを含む。
【0017】
コロイドを沈着させるステップは、均一な短範囲秩序でコロイドを沈着させるステップを含んでいてもよい。本方法は更に、基質上に絶縁層又は半導電層を沈着させる初期ステップを含んでいてもよい。
【0018】
機械的安定化層は、基質層、或いは、別個の絶縁性又は半導電性の層の1つであってよい。
【0019】
本発明によるまた別の態様では、ナノプラズモン素子を用いて分子反応を計測する方法であって、長距離秩序のないナノプラズモン素子を、貫通チャネルを通して流体フローセルに接触するように配置するステップと、流体に反応物質を供給するステップと、反応物質を含む流体を流体フローセルに供給するステップと、ナノプラズモン素子の光学特性を経時的に測定するステップと、光学特性の変化を分子反応と関連付けるステップとを含む。
【0020】
本発明による別の態様では、第1の態様によるナノプラズモン素子を含み、計測システムによって保持されるように構成された保持構造を更に含む、消耗型センサを備える。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る素子及び素子の製造プロセスの模式図である。
【図2】本発明に係るシステムを模式的に示したブロック図である。
【図3】本発明に係るセンサシステムを模式的に示したブロック図である。
【図4】本発明に係る方法の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
下記の実施形態を参照すると、本発明のこれら及びその他の態様が明らかになるであろう。
【0023】
以下では、本発明を限定することなく説明し、添付図面に示す実施例を参照しながら本発明をより詳細に説明する。
【0024】
本発明は、化学的又は生物学的な分析検知等の用途に用いるミクロ/ナノスケールのコロイドリソグラフィ、薄膜蒸着及びエッチングステップを組み合わせて用いる、微小ナノプラズモン素子及び該素子の製造方法を含む。この方法は、ナノプラズモン共鳴におけるシフト、分子反応等のプロセスによって生じる屈折率の変化に感応する素子の光学特性を利用している。分子反応の制御は、供された被検物質の組成及び/又は素子の物理的構成を変化させることで可能である。素子は、計測システムにおいて消耗型センサとして使用可能であり、この使用については本明細書でより詳細に後述する。
【0025】
ナノプラズモン素子は、長距離秩序を一切示さないパターンで形成された貫通チャネルを有する膜を含む。このパターンは、例えば、完全にランダムなチャネルの分布に加えて、短範囲秩序のみを有する構造を有する。短範囲秩序は、チャネルの配置においては規則と定義できるが、最も近い隣接チャネルの中心間の距離の分布は、完全にランダムに分布した孔の場合の距離の分布よりも狭くなる。長距離秩序を有するシステムは、中心間の距離の分布が少なくとも一方向に周期的であるようにチャネルが配置された基質と定義できる。なお、本発明のチャネルは、いわゆる準秩序(例えば、特定のパターンによって画定されるが長距離秩序のない構造)で分布してもよい。本発明において、チャネルは、近隣との最短距離の平均が3、好ましくは10、さらに好ましくは100よりも長い長距離秩序のないように分布し得る。近隣との最短距離は、チャネルの中心と中心の間の距離と定義できる。
【0026】
素子の作製スキームを図1に示し、以下で説明する。簡単に述べると、例えば、短範囲秩序を示す直径150nmのナノホール105が穿孔された厚さ65nmの金皮膜104を、コロイドリソグラフィ(ステップi〜iv)を用いて、Sin101(200nm)を被覆したSiウエハ102上で作製する。潜在的に、二酸化ケイ素(SiO2)等の他の材料を、用途に応じてSinの代わりに用いてもよい。Si層は機械的安定化層として機能し、好ましくは絶縁されているが、同様に半導体材料を用いてもよい。このような機械的安定化層を有さない素子を作製して、機械的安定化層に代えてSi基質自体に素子を配置してもよい。この場合、素子の強度は低下するものの、多くの用途においてこのことは重要ではない。コロイドリソグラフィが選ばれているのは、この方法が、短範囲秩序をもたらすと共に広範囲にナノ構造を形成するための簡便、迅速、低コストな方法だからである。ナノホールは、その後、更に200nm SiN層(ステップv)107によって被覆される。SiN層は、ウェットエッチングの間、ナノホール構造を保護する。後述するように、この200nm SiN層や最初のSiN皮膜が、最終的な構造の機械的安定度を向上させることになる。その後、ネガティブフォトレジスト(ProTEK PSB−23、英国Brewer Science社)において方形の空間108、円、又はその他何らかの形状が、従来のUV−リソグラフィ(ステップvi)によって、ウエハの裏側に画定される。スクエア周辺には、細いスリットが形成され、各最終サンプルの寸法を画定している。次に、全ての空き領域を、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)中でのSiウェットエッチングによって除去できるが、このレジストで保護された領域を腐食させることはない(ステップvii)。代替的に、パターン形成された裏側のSiN(或いは二酸化ケイ素(SiO2)又は同様の材料)の層を、Siのウェットエッチングの間にマスキングとして用いてもよい。TMAH以外のエッチング溶液、例えば水酸化カリウム(KOH)等も、Siエッチングに用いてもよい。適切なマスキング材料を用いて、Siのドライエッチングを行ってもよい。ウエハ前面の金属ナノホール構造は、上層のSiNコーティングによって保護されている。方形の空間内のSiは、TMAH中で約13時間後に完全に除去され、最初に沈着したSiN皮膜がエッチングを停止させる。その結果、膜の外側のSiウエハによって担持された遊離SiN/金属ナノホール/SiN膜の方形部分109が形成される。スリット内にもエッチングが施されているため、ピンセット等の通常のツールを用いて、ウエハを約50のサンプルに容易に分けることができる。最終ステップは、貫通プラズモンチャネルや細孔にナノホールを穿孔するステップであり、ここでは反応性イオンエッチング(RIE)を選択する。このステップを、ウエハの表側(ステップviiia)又は裏側(ステップviiib)のいずれから行ってもよい。これらのアプローチの主な相違点は、後者の場合は、チャネルがあるのは膜領域のみなので、膜領域の金にしかアクセスできない点である。いずれのアプローチも、RIEの間、金皮膜をエッチングマスクとして用いる。なお、多かれ少なかれ、サンプルをウエハの寸法及び/又はサンプル(例えば1〜500個の任意数のサンプル)の寸法に応じて、ウエハ上に配置できる。
【0027】
例えば走査型電子顕微鏡を用いて、ナノ細孔の作製の成功を検証することができ、サンプルのプラズモン特性の調査を行うには、マイクロ吸光分光法により、裏面照射型2D−CCD分光計を備えた標準的な顕微鏡を用いることができる。
【0028】
なお、RIEの間、エッチングマスクとして金そのものを用いた。金を用いた理由は、RIEの間に、金と追加のマスキング層(例えばクロム)との間に合金が形成されるのを回避するためであった。しかし、金以外の材料や別々の材料を用いた多重層を、この作製方法により形成してもよい。RIEプロセスのパラメータは、SiNと金(約19:1)の間の高い選択性のために最適化され、エッチング速度はそれぞれ約230nm/分と12nm/分であった。厚さ約130nmのSiNの上部保護層を用いて、金を約116秒間RIEに曝して、金を約23nmエッチングした。
【0029】
プラズモン共鳴は屈折率(RI)の変化の影響を受け易い。このことは、ナノ細孔を通して流れる液体が、水に対してバルク屈折率を約0.33シフトさせることからわかる。サンプルを紫外線(UV)オゾンチャンバで処理することで、親水性を向上させることができる。なお、開口率の低い空気液浸顕微鏡対物レンズの計測では、その対物レンズによって集光された散乱光部分を最小化することができるが、その他の光学構造を用いてもよい。図2は、例えばレンズ、任意で光励起素子及びCCD等を有する光学検出器202を備えた、ナノプラズモン素子201に配置されたサンプルの光学特性を検知する計測装置200を示している。流体の流入口205及び吐出口206を備えた流体フローセル204は、ナノチャネル211に接するように配置されている。流体セルは、少なくとも部分的に軽量の透過物質212から作製されている。流体フローセルからの流体は、ナノチャネル211と相互作用可能になっている。ナノチャネルと光学検出素子との間には、用途に応じて、水やエタノール等の適切な液体の任意の液滴203を第2の液貯蔵器として配置してもよい。また、この構想を、素子の一方又は両方の流体チャネルと組み合せで採用してもよい。一実施形態において、光源210は、光学検出器に対して流体フローセルの反対側に配置され、吸光方式で光を検出する。この光源は、用途に応じて、例えば白色光の平行ビーム又は特定波長の光を提供し、よい。
【0030】
プラズモン共鳴のピークの計測には、例えば、マイクロ吸光分光法又は暗視野分光法を用いることができる。プラズモン共鳴におけるシフトは、ピーク位置自体の変化として計測可能であり、セントロイド法等のピークトラッキングアルゴリズムを用いても計測可能である。振幅等のパラメータにおける変化のようなその他のシフトも、用いることができる。プラズモン共鳴の検出は、光源を検出器と同じ側に配置してナノ細孔からの反射光を計測する反射技法を用いても可能である。
【0031】
ナノプラズモンチャネルを用いて、特定の生体分子認識反応のリアルタイムモニタリングが可能である。高い時間分解能で高SN比を実現するために、様々なファクタを考慮できる。金薄膜(RIE後約42〜45nm)を、不透明金属皮膜の代わりに選択してもよい。これらの薄膜は、可視領域(無孔でもある)の光の大半部分を透過させるため、プラズモン共鳴はしばしば、吸光スペクトルの凹みとしてではなくピークとして現れる。この現象は、光の透過率が高い厚い有孔金属皮膜の場合に、吸光スペクトルで凹みが観測される現象とは、正反対の現象である。特にミクロン単位の計測では、例えば14ms等の短い積分時間でも検出器のダイナミックレンジを最大限に利用す焼成、光透過量を最大にすることが極めて重要である。このことは、結果として、プラズモンセンサで検出可能な最低濃度を最終的に決定するSN比を最大化させるには有効である。同様の理由から、高ダイナミックレンジの超高感度裏面照射型2DCCD分光計を用いてもよい。更に、ピーク位置自体の代わりに、ピークトラッキングに基づく検知方法の場合にSN比を顕著に向上させることが判っている、プラズモンピークの重心(質量中心)をモニタリングしてもよい。
【0032】
フロースルー計測に可能なスキームは次の通りである。金側を下側にしてサンプルをフローセル内に配置する。反対側の液区画では、バッファ1滴を(例えば倍率63倍、63Xの)水浸顕微鏡対物レンズと接触させておく。この構成により、フロースルー計測の前に、上部液区画の液体を交換することなく、フローセルで洗浄ステップを機能させてこれを実施できる。次いで、シリンジ又はフロースルー計測が可能な同様の手段を用いて、ターゲット分子をバッファ滴に添加する。ターゲット分子がナノプラズモンチャネル中を流れる際に、これらのターゲット分子を結合させることができる。フロースルーセンシングを用いる理由の1つは、結合速度の増大である。従って、SN比を最適化する際に高い時間分解能を維持することは極めて重要である。
【0033】
金に近接したチャネル内の領域は、ある程度がナノプラズモン場内に存在する。このことは、類似ではあるが貫通式ではないナノプラズモンウェルにおいて例証されており、プラズモン共鳴でのシフトを用いて、これらのウェル底部の特にガラス領域への生体分子の吸着をモニタリングできる。これによって、金に近接した細孔内のSiNに対するニュートラアビジンの非特異的吸着が、プラズモン共鳴のシフトを誘発することが予測される。したがって、金及びSiNに対する界面化学的手法を選択的に制御することで、例えばニュートラアビジンがビオチン化金に吸着する場合等の、特異的吸着によって誘発される反応のみを計測可能とすることは有利である。このことは、例えば金の上のチオール−PEG:チオール−PEGビオチンの比を(例えば1:1)とし、その後PLL−PEGを用いてSiNを不動態化させ、金を官能化させることによって達成可能である。PLL−PEGがSiO2上に高いタンパク質耐性層をもたらし、チオール−PEGには吸着しないことは既知であり、SiN上でも首尾よくタンパク質吸着を防止することがわかった。
【0034】
結果として、本発明では、ナノプラズモン貫通チャネルの配列を同時に作製するためのスキームを提供し、このスキームでは、同時に生成されるサンプルの数はウエハ及びサンプルの寸法によってのみ制限される。これらのチャネルは、主に分子が急速に交換され得るチャネル内に検知性能を局在化させるために、一切の長距離秩序を有さずに分布する。任意で、これらのチャネルを短範囲秩序で配置させる。生体分子の認識反応を正確且つ高い時間分解能でモニタリングできるという事実は、フロースルーバイオセンシングに用い得る構造としての可能性を示している。ナノチャネルの両側で微小流体を合流させることは、フロースルーセンシングの利点を応用する上で有効である。なお、液体がナノプラズモンチャネルの両側にアクセスするナノプラズモンチャネルの配列は、細孔に跨がる人工細胞膜のプラットフォームとして興味深いものであり、単一の膜イオンチャネルのモニタリングにも使用可能である。本発明に示される構造のナノプラズモン成分は、かかる人工膜を用いて、電気的手段のみならず光学的にも、分子の輸送を計測できるという可能性を付与するものである。既存技術とは対照的に、荷電及び非荷電の分子の輸送を計測できる。なお、貫通チャネルは、円筒状に成形される必要はなく、円錐形、砂時計形、又は不規則形状をしていてもよい。更に、チャネル表面が円形である必要はなく、楕円形又は多角形等のその他の形状であってもよい。チャネルの幾何的特性を用いて、ナノプラズモン特性の微調整を行える。
【0035】
最も近接する貫通チャネル間の中心間の空間長は、1〜10000nm程度、好ましくは10〜1000nm程度、さらに好ましくは50〜500nm程度である。貫通チャネルの直径は、10〜500nm程度、好ましくは25〜250nm程度、さらに好ましくは50〜150nmである。導電層は、金、銀、パラジウム及び白金の1種以上を含む。更に、導電層を形成するために他の金属を用いてもよく、実際には、例えばリン化ガリウム等の一部の半導体材料も使用可能である。この素子の膜厚は、1〜1000nm程度、好ましくは5〜500nm、さらに好ましくは10〜100nmである。
【0036】
ナノプラズモンチャネルの更なる使用法は、ナノプラズモンセンシング機能を組み込んだナノサイズのフィルタとしての作用である。これによって、例えば、チャネルを通過可能な十分に小さな分子の一部分のみを選択的に計測できる。これによって、例えば、血液分析の調製を大幅に単純化させることができる。
【0037】
これより、1つの考えられる方法を用いたナノプラズモン素子の作製を、図1に照らしてより詳細に説明する。これは、あくまでも実施例であって、方法ステップの一部を他のステップに変更したり、ステップの順序を入れ替えたりしてもよいこと、また、記載の寸法及び割合も例示的なものであることを理解されたい。
【0038】
まず、(i)約200nmの窒化珪素(SiN)薄膜101を、プラズマ強化化学蒸着法(PECVD)を用いて、シリコンウエハ102(例えば厚さ275μm、直径2インチ)に上に沈着させる。PECVDの間、高周波(RF)信号を印加してもよく、高周波(RF)信号を周期的に交替させることで、SiN被膜のストレスを最小化させてもよい。代替的に、他の種類のSiN、二酸化ケイ素皮膜、又は多重層をも上記のSiN被膜の代わりに用いてもよい。更に、SiN被膜及びSi基質の厚さは、SiN被膜では、例えば1nmから1マイクロメートルと様々であってよい。
【0039】
その後、短範囲秩序の金のナノホールを、コロイドリソグラフィを用いてSiN被膜上に作製する。まず、5w%の水酸化塩化アルミニウムを、60秒間かけてSiN層に添加した後、水中で濯ぎ、窒素で乾燥させる。これにより、SiN表面が正に帯電する。次に、(ii)直径150nmの負に帯電した0.1w%ポリスチレンコロイド103を添加する。SiN表面とコロイドの間の静電相互作用と、コロイド間の反発性とのバランスが、SiN表面上でコロイドを均一な短範囲秩序に整列させる。次いで、ウエハを水で濯いだ後、エチレングリコールを噴霧し、再度水で濯ぎ、最後に窒素でブロー乾燥する。エチレングリコールは、乾燥プロセス中の微粒子の運動及び凝集を最小化する一助となる。次いで、軽度の酸素プラズマエッチングを行って、コロイドを除去することなくSiN被膜から電解質を除去する。このステップにより、金属を下層の膜に良好に付着させられることがわかっている。なお、コロイドリソグラフィの処方では多数のパラメータが変化し得る。例えば、単層のACHの代わりに、多重層を用いてもよく、或いは、コロイドを、例えば酸素プラズマ処理を用いて、金属付着の前に小さくしてもよい。次に、(iii)1nmのクロム、65nmの金104、1nmのクロム1nmを電子ビームを用いてサンプル上に蒸着する。ここではクロムが付着層として作用する。クロム層を用いて、隣接する材料の付着性を向上させた。金層の厚さは、例示の65nmに限定されるものではなく、(コロイドの直径に応じて)1nmから500nmの範囲であってもよく、この金を、(銀、パラジウム又は白金、それらの混合物、又は2種類以上の材料で成る多重層等の)他の材料と置き換えてもよいことを理解されたい。また、クロム層は、接着性向上剤として用いる場合、例えば0.1nmから10nmと様々であってよい。更に、クロムを、チタン、酸化クロム、酸化チタン及び酸化タンタルの1種以上と置き換えてもよい。(iv)テープストリッピング等の手段でコロイドを除去して、表面上に金属ナノホール105を形成する。次に、(v)PECVDを用いて、ナノホール構造を200nm前後のSiN107で被覆する。この時点では、ナノホール構造は、大きな縮尺で見ると(即ち、マイクロメータ以上の規模で見ると)、無秩序に配置されている。
【0040】
次いで、(vi)ウエハの裏側にUV−リソグラフィを行い、ネガティブフォトレジストProTEK PSB−23 112に、方形の空間等の空き領域108を画定してもよい。このステップで細いスリット(図示せず)を形成し、最終サンプルの寸法を画定してもよい。最初に、ProTEK PSプライマをウエハの裏側に、1000rpm(回転数/分)で60秒間スピンコートし、110℃で60秒間及び220℃で120秒間焼成した(全ての焼成ステップをホットプレート又はオーブンで行える)。フォトレジストProTEK PSB−23を、次いで3000rpmで60秒間スピンコートし、110℃で60秒間焼成した。次いで、クロムマスクの逆パターンを、5mW/cm2前後、30秒間3回露光して、例えばKarl Suss MJB3−UV400等のマスクアライナのレジストに転写した。更に110℃で120秒間焼成した後、2分間前後、乳酸エチルでレジスト現像してから、イソプロピルアルコール(IPA)で濯ぎ、窒素でブロー乾燥した。UVリソグラフィの最終ステップは、220℃で120秒間の焼成である。パターン形成されたSiN又はSiO2の作製は、例えばフォトリソグラフィーやエッチング等のステップによって可能であり、このSiN又はSiO2を、ProTEK PSB−23の代わりに用いてもよい。
【0041】
次いで、(vii)ProTEK PSB−23を腐食させることなくSiを異方性エッチングするテトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)に、ウエハを浸漬する。ウエハ表側のSiN被膜は、金属ナノ構造をエッチング溶液による腐食から保護する。方形の空間内のSiは、TMAH中で約12時間後に完全に除去され、下層のSiN被膜はエッチングストッパとして作用した。ウエハを、次いで水で十分に濯ぎ、窒素でブロー乾燥する。その結果、金属被膜中にナノホールを有し且つ方形の空間の外側に担体としてのSiウエハを有する、遊離SiN/金属/SiN薄膜の方形部分109が形成される。TMAH以外のエッチング技術を用いてもよく、他のマスキング層を用いる場合には、水酸化カリウムウェットエッチングや更にはドライエッチング等の他のエッチング技法を用いることもできる。Siが、UVリソグラフィステップで画定したスリットにエッチングされることにより、素子及びウエハ上の寸法に応じて、ウエハを約50のサンプルに容易に分割することができる。最終ステップは、反応性イオンエッチング(RIE)を用いて、貫通プラズモンチャネルに、ナノホールを穿孔することである。このステップは、ウエハの表側(viii a)又は裏側(viii b)のいずれかから行われ、後者のアプローチの場合、金がアクセスできるナノ細孔110が窓構造領域に生じ、前者の場合、金が全くアクセスできないナノ細孔111が窓構造領域に生じる。いずれのアプローチでも、金被膜自体は、RIEの間、エッチングマスクとして機能した(図1のステップviiia及びbを参照)。RIEは、NF3を用い、流量50sccm、出力70W、圧力10mTorrで、様々な時間で実施可能である。例えばCF4ガス等を含む他のRIE処方を用いてもよい。
【0042】
プラズモン素子のクオリティの分析は、例えば、100Wの石英タングステンハロゲン光源とOceanOptics社のQE65000(商標)等の裏面照射型2DCCD分光計を備えた従来の顕微鏡を用いて、素子の吸光スペクトルを取得することで、可能である。分光計の制御は、例えばNational Instruments社のLabView(商標)プログラム等のカスタムデザインプログラムを用いて可能である。最初は、分光計に照射を行わずに、ダークスペクトルを取得する。その後、基準スペクトルを記録し、最後に素子を光路内に配置して、吸光スペクトルを取得し、次式に従って吸光スペクトルが表示される。
【0043】
【数1】

なお、吸光係数は0〜1である。光学特性の表示は、他の関係を用いても可能である。
【0044】
検知実験では、倍率63の水浸対物レンズを用い、浸漬液滴をナノプラズモン細孔のいずれかの側の、2つの分液区画の1つに用いる。基準スペクトルの取得は、顕微鏡のスライド上で同じ対物レンズと液滴を用いて、計測前に行われる。強度及びピーク位置が絶対的に正確なものとはなり得ないという事実は重要ではないが、それは、我々がこれらの実験で注目しているのは、プラズモン共鳴におけるシフトのみだからである。バイオセンシング試験では、スペクトルを多項式に代入してピークの重心(質量中心)が算出され、カスタムデザインのLabViewプログラムを用いてプロッティングされる。
【0045】
プラズモンの特性評価のためにネガティブコントロールを行ってもよい。SiN平面薄膜にナノホール有する(SiNを貫通する穴はない)サンプルの作製は、SiNのトップコーティングを行わずに、上記の方法で可能である。代わりに、例えばBrewer Science社のProTEK B3等のポリマーを、TMAHでウェットエッチングを行う間、保護剤として用いてもよい。このポリマーは、後でメチルイソアミルケトン(MIAK)で除去される。いずれの液体もこれらのナノホールを通過しないため、かかるサンプルを用いて、サンプルのSiN側の屈折率の変化においてもプラズモンシフトが見られるかどうかを調べることができる。エタノール1滴をサンプルの裏側に配置してもシフトは見られないが、金が露出した側に液滴を配置した場合にのみ、プラズモン共鳴のシフトが見られる。
【0046】
図3は、適当にケース収納された図2に記載の計測装置301、流体貯蔵器304、廃液貯蔵器305及び計測制御装置302を備えた、本発明に係る計測システム300を示す。貯蔵器は、適当な配管306と307を用いて、計測装置に接続されている。液流の制御は、素子の両側(図示せず)で、流体チャネルによって可能である。計測制御装置は、例えば、イーサネット(登録商標)、GPIB HPIB、VXI、I2C、RS232等の適当なパラレル又はシリアル通信手段と制御インタフェース303を用いて、計測装置に接続されている。計測システムは、貯蔵器の充填又は排出、ナノプラズモン素子の交換、ナノプラズモン素子の光検出側での液滴の添加、洗浄等を行うためのポート等、適宜のユーザインタフェースを備える単一のケーシングに結合可能である。システムは、ナノプラズモン素子を受け入れ、且つ、計測の間、ナノプラズモン素子を保持する、ナノプラズモン素子受容ユニット(図示せず)を有する。この受容ユニットは、ナノプラズモン素子を容易に交換できるように構成されており、例えばナノプラズモン素子がぴったり嵌まり込む、自身を静止させるための幾つかのクランプ手段(即ち、幾つかの簡易脱着機能)を有する構造を備えている。この構造は、凹部やスロットを含み、ナノプラズモン素子が横方向にスロットまで摺動するようになっていてもよい。クランプ手段は、例えば何らかのバネ又は摩擦を用いた手法であってよい。受容ユニットが受容構造を備えている必要はないが、ナノプラズモン素子は、例えば光学顕微鏡を用いる際にそのガラススライドがクランプのような1つ以上のバネで保持されるように、クランプ手段で保持されてさえいればよいことを、理解されたい。一実施形態では、ナノプラズモン素子は、例えば金属製の別個の保持構造に接着されており、この保持構造はクランピングや摩擦手法等の手段によって、計測装置内に固定されている。ナノプラズモン素子には、別個の保持構造を有するタイプと有しないタイプがあり、例えば適当なOリングや類似の封止手段を用いて、好都合に、漏れを封止するように載置されている。
【0047】
図4に関して、計測方法には以下の形態が可能である。
401.本発明に係るナノプラズモン素子を計測装置301に配置する。ナノプラズモン素子を局在的に配置すること、又は、特定の分子反応に所定の親和性を示すナノプラズモン素子を、実施する計測のタイプに応じて調達することが可能である。
402.ナノプラズモン素子の片側に対象の分子を含む液体を供給する。適宜の分子組成を有する液体を貯蔵器に供給するか、又は、流体セルチャンバに直接供給する。
403.ナノプラズモン素子の光学特性を検出する。CCD検出器又は同様のものを用いて、反応容積(即ち、ナノ孔)における光学特性を測定する。
404.経時的な光学特性の変化を、ナノプラズモン素子での分子反応プロセスとの関連において計測する。多くの計測形態において、反応が経時的に変化したり、経時的な一体化によってSN比が向上したりするのがわかるのは、興味深い。
405.計測した変化を分析及び表示する。計測の形態に応じて、ピーク又は凹みの位置、平均レベル、微分積分作用等の測定に、異なる形態の分析を行うことは興味深い。
【0048】
このナノプラズモンシステムを、既存の顕微鏡のプラットフォームに組み込むことも、スタンドアロン機器として開発して販売することもできる。ナノプラズモン素子を、予め表面を官能化して、或いは官能化せずに、消耗品として販売することもできる。
【0049】
本発明には、構造体をフィルタとして、例えばナノプラズモンセンシングと組み合わせて用いる用途も見出せる。導電層を、本用途又は他の用途において電極として用いることもできる。例えば、導電層を用いて、細孔構造体の導電率の変化を計測できる。
【0050】
本発明は、例えば表面を固定化したターゲット分子種とタンパクとの相互作用の検知、ウイルス研究、細胞分析、DNA鑑定、抗原抗体分析、創薬、診断用途等の多くの専門領域において、用途を見出せる。
【0051】
なお、製品の上述の例で用いた幾何的寸法は、あくまでも寸法の目安として用いられたものであり、当業者には明らかなように、使用する材料、処理ステップ、機能によって大幅に変化することがあり、本発明を限定するものではない。
【0052】
「有する」という語が、列挙した要素又はステップ以外のものの存在を排除することはなく、単数名詞の要素が、かかる要素の複数形の存在を排除することはない。また、どの参照符号も特許請求の範囲を限定するものではなく、それぞれの「手段」又は「装置」をハードウェアの同一の品目で表すこともできる。
【0053】
以上に記載及び記述した実施形態は、あくまでも例として提示されたものであって、本発明を限定するものではない。その他の解決策、使用法、目的及び機能も、添付の特許請求の範囲に記載の発明の範囲内であることは、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電材料の1以上の層を有する膜(104)を含むナノプラズモン素子(201)であって、前記膜には複数の貫通チャネル(110、111、211)が穿孔されており、前記チャネルの相対位置が長距離秩序のないパターンを形成するように配置される、素子。
【請求項2】
最も近接した貫通チャネル間の空間長が、1〜10000nm程度、好ましくは10〜1000nm程度、さらに好ましくは50〜500nm程度である、請求項1記載の素子。
【請求項3】
前記貫通チャネルの直径が、10〜500nm程度、好ましくは25〜250nm程度、さらに好ましくは50〜150nmである、請求項1記載の素子。
【請求項4】
前記導電層が、金、銀、パラジウム及び白金の1種以上を含む、請求項1記載の素子。
【請求項5】
前記膜の厚さが、1〜1000nm程度、好ましく5〜500nm、さらに好ましくは10〜100nmである、請求項1記載の素子。
【請求項6】
前記導電層が、クロム、チタン、酸化クロム、酸化チタン及び酸化タンタルの1種以上を更に含む、請求項4記載の素子。
【請求項7】
前記膜が1以上の機械的安定化層(101)を更に含む、請求項1記載の素子。
【請求項8】
前記機械的安定化層が、絶縁層又は半導電層のうちの1つである、請求項7記載の素子。
【請求項9】
分子反応を計測するための計測システム(300)であって、
1以上の、請求項1記載のナノプラズモン素子(201)と、
流体フローセル(212)であって、該流体フローセル(212)中の液流によって消耗型センサと接触するように構成された流体フローセル(212)と、
前記消耗型センサの光学特性を測定するためのシステム(202、210)と、
光学特性を測定するための前記システムと電気的に接続された制御分析システム(302)と
を備える、システム。
【請求項10】
ナノプラズモン素子(201)の製造方法であって、当該方法が、
膜(104)を形成するステップと、
前記膜中に複数の貫通チャネル(110、111、211)を形成するステップと
を含んでおり、前記チャネルの相対位置が、長距離秩序のないパターンを形成するように構成される、方法。
【請求項11】
膜及びチャネルを形成する前記ステップが、
機械的安定化層(101、102)上にコロイド(103)を1コロイドあたり1〜10000nmの空間長で沈着させるステップと、
前記機械的安定化層及び前記コロイド上に導電層(104)を蒸着させるステップと、
前記導電層に穴を形成するコロイドを除去するステップと、
前記機械的安定化層及び前記導電層を絶縁層で被覆するステップと、
基質裏側の窓構造部(108)を画定及び除去し、前記基質の前記窓構造部を除去した後に露出した前記機械的安定化層の窓構造部(109)を除去するステップと、
ナノプラズモン特性を有するナノサイズの細孔を形成する、前記機械的安定化層及び前記導電層を通る貫通チャネル(110、111、211)を作製するステップと
を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
コロイドを沈着させる前記ステップが、均一な短範囲秩序でコロイドを沈着させるステップを含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記基質(102)上に絶縁層又は半導電層(101)を沈着させる初期ステップを更に含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記機械的安定化層が、基質層(102)、或いは、別個の絶縁層又は半導電層(101)のうち1つである、請求項11記載の方法。
【請求項15】
請求項1記載のナノプラズモン素子(201)と、請求項9記載の計測システムによって保持されるように構成された保持構造とを含む、消耗型センサ。
【請求項16】
ナノプラズモン素子(201)を用いて分子反応を計測する方法であって、
長距離秩序のないナノプラズモン素子(201)を、貫通チャネル(110、111)を通して流体フローセル(211)に接触するように配置するステップと、
流体に反応物質を供給するステップと、
前記反応物質を含む流体を前記流体フローセルに供給するステップと、
前記ナノプラズモン素子の光学特性を経時的に測定するステップと、
前記光学特性の変化を分子反応と関連付けるステップと
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2013−506831(P2013−506831A)
【公表日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532046(P2012−532046)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051034
【国際公開番号】WO2011/040868
【国際公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【出願人】(597064713)ジーイー・ヘルスケア・バイオサイエンス・アクチボラグ (109)
【Fターム(参考)】