ナノメートルスケールの計測標準試料およびナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法
【課題】原子スケールで制御されて作製された3次元構造を持ち、その構造が大気中でも安定であり、かつSEMやSTMでも観察可能な導電性を持つ計測標準試料を提供すると共に、計測標準試料を使用した走査型顕微鏡(AFM、STM、SEM、SLM等)の校正方法を提供する。
【解決手段】主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイタモンド基板と、該単結晶ダイタモンド基板上に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn段(n≧1の整数)有する三角形島構造体とを備え、三角形島構造体のテラス面のステップ段差を高さの標準とするナノメートルスケール計測を行うための計測標準資料として利用する。
【解決手段】主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイタモンド基板と、該単結晶ダイタモンド基板上に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn段(n≧1の整数)有する三角形島構造体とを備え、三角形島構造体のテラス面のステップ段差を高さの標準とするナノメートルスケール計測を行うための計測標準資料として利用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノメートルスケールの計測標準試料およびナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法に関するものであり、詳細には、大気中でも安定なナノメートルあるいは原子スケールにおける高さ及びもしくは長さの計測標準試料となるナノメートルスケールの計測標準試料およびナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルスケールの計測を行う際、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)、走査型原子間力顕微鏡(AFM)及び走査型レーザ顕微鏡(SLM)等の走査型顕微鏡が主に用いられている。SEMは主に線幅の測定に用いられる。AFMやSTM等の走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、長さや高さだけでなく表面のラフネスの測定にも用いられる。その際、長さや高さを校正するための標準資料を必要とする。AFMの計測標準資料としては、従来、原子的に平坦なテラスと高さ0.31nmの原子ステップを表面に有する単結晶シリコン基板(シリコン標準試料)が用いられている(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、非特許文献1に係るシリコン標準試料は、大気にさらすと表面に酸化膜が生成される。その一方で、通常AFMの校正は大気中において行われており、シリコン標準試料は時間との経過とともに、テラスの平坦性は損なわれるため、0.31nmの高さの校正値から容易にずれてしまうという問題があった。
【0004】
それらを改善するため、大気中で安定なステップ構造を有するサファイアを用いた標準試料が開発された(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−284316号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(社)電子情報技術産業協会規格 「AFMにおける1nmオーダの高さ校正法」p.3〜5 2002年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、サファイアはアルミニウムと酸素の2元素から構成された化合物であるため、単元素の物質と比較すると、その結晶の完全性は劣る。その結果、ステップテラス構造を有するサファイア基板のテラス部分において、そのステップ高さと同等あるいはそれ以上大きいラフネスが存在する。つまり、シリコン標準試料と比較して、時間と共にテラスのラフネスが増加するということは抑えられるが、元々ラフネスが存在しているため正確な高さの校正を行うことは困難という問題がある。
【0008】
また、サファイアは絶縁体のため、SEM、STMの標準試料には不適である。
【0009】
ナノメートルスケールの計測を行うためには、原子スケールで制御された3次元構造を持ち、その構造が大気中でも安定であり、かつSEMやSTMでも観察可能な導電性を持つ計測標準試料が必要とされているが、これまで、そのような計測標準試料は提供されていなかった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ナノメートルスケールの計測標準試料およびナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料が、主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn層(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、前記三角形構造体の2つの頂点を結ぶ三角形の直線を長さの標準とすることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、第2の態様として、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料が、主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn層(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、前記三角形構造体の三角形の1辺を直線性の標準とすることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、第3の態様として、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料が、主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn段(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、前記三角形構造体のステップ段差を高さの標準とすることを特徴とするものである。
【0014】
この場合に、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料において、前記三角形構造体の三角形は、正三角形であり、また、前記三角形構造体の三角形の1辺の長さは、上段に位置する三角形ほど短いものとする。
【0015】
また、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料において、前記原子的に平坦なテラス面は、その主表面に1辺の長さの異なる三角形構造体を複数備えることを特徴とするものであり、また、前記単結晶ダイヤモンド基板の単結晶ダイヤモンドは、水素終端を備えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明による前記ナノメートルスケールの計測標準試料は、走査型顕微鏡用であることを特徴とするものであり、走査型プローブ顕微鏡(SPM)または走査型電子顕微鏡(SEM)において好適に利用される。
【0017】
本発明は、別の態様として、上記のナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法を提供する。
【0018】
第1の態様として、本発明により提供されるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSPMの校正方法は、標準試料を走査型プローブ顕微鏡(SPM)装置にセットする工程と、標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する工程と、校正場所として指定されたn段(n≧1の整数)の三角形構造体のSPM像を取得する工程と、取得したSPM像から指定されたn段の三角形構造体を含む断面プロファイルを抽出する工程と、前記抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の最下段の左及びまたは右の同一のテラスの部分を直線の一部とみなして直線近似を行い、これを基準線とし、かつ、前記テラスとは異なる三角形構造体の全てのテラスに対して、左及びまたは右の同一のテラス部分を直線の一部とみなして前記基準線と傾きを一致させながら直線近似を行い、これらの直線と前記基準線との差をそれぞれ見かけ上の高さとし、前記見かけ上の高さが、標準試料に記載された高さ0.206nmのn倍にそれぞれ一致するように装置の高さパラメタを変更する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
第2の態様として、本発明により提供されるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSPMの校正方法は、標準試料をSPM装置にセットする工程と、標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する工程と、校正場所として指定された三角形構造体のSPM像を取得する工程と、前記取得したSPM像から、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標を抽出する工程と、前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さとし、前記見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さにそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向及びZ方向の長さパラメタを変更する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
また、第3の態様として、本発明により提供されるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSEMの校正方法は、標準試料をSEM装置にセットする工程と、標準試料表面の指定のメサ構造の位置にSEMの測定範囲を移動する工程と、SEM観察を行い、メサ構造表面上の原子的に平坦な面全面において焦点が合うように標準試料を傾ける工程と、校正場所として指定された三角形構造体のSEM像を取得する工程と、取得した画像において、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標を抽出する工程と、前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さとし、前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さにそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向の長さパラメタを変更する工程とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のナノメートルスケールの計測標準試料は、原子スケールで平坦な表面及びステップ構造を有する大気中でも安定な単結晶ダイヤモンド基板により構成されるので、ナノメートルスケールの計測標準試料として提供されて、走査型顕微鏡の校正において好適に使用される。
【0022】
ダイヤモンドは物質中最高の硬度や物質中最小の熱膨張率を有し、また、大気中でも安定であり、耐強酸や強塩基性を有し、物理的にも化学的にも最も安定な材料であるため、計測標準試料の材料として最も優れており、この特質が活用できる。
【0023】
特に、水素で終端されたダイヤモンドは、その表面に伝導層を持つため、SEMやSTMにおいて計測標準試料として好適に利用できる。
【0024】
本発明のナノメートルスケールの計測標準試料においては、結晶学的に決定付けられた正三角形構造体の形状を用いるため、既知の一辺の長さにより、一つの画面上で縦横の2次元の長さ校正が同時に行える利点がある。さらに、正三角形構造体の一辺が、結晶学的に決定付けられた直線であるため、直線性の標準の試料とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料のメサ構造の作製手順を説明する図である。
【図2】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料1を説明する図である。
【図3】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料2を説明する図である。
【図4】{111}ダイヤモンドの三角形構造体を説明する図である。
【図5】単原子ステップの高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する第1の図である。
【図6】単原子ステップの高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する第2の図である。
【図7】単原子ステップの高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する第3の図である。
【図8】単原子ステップの高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する第4の図である。
【図9】n個の高さの計測標準試料を用いた本発明によるSPMの高さ校正方法を説明する第1の図である。
【図10】n個の高さの計測標準試料を用いた本発明によるSPMの高さ校正方法を説明する第2の図である。
【図11】n個の高さの計測標準試料を用いた本発明によるSPMの高さ校正方法を説明する第3の図である。
【図12】n個の高さの計測標準試料を用いた本発明によるSPMの高さ校正方法を説明する第4の図である。
【図13】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第1の図である。
【図14】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第2の図である。
【図15】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第3の図である。
【図16】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第4の図である。
【図17】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第1の図である。
【図18】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第2の図である。
【図19】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第3の図である。
【図20】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第4の図である。
【図21】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料3を説明する図である。
【図22】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第1の図である。
【図23】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第2の図である。
【図24】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第3の図である。
【図25】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第4の図である。
【図26】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第1の図である。
【図27】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第2の図である。
【図28】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第3の図である。
【図29】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第4の図である。
【図30】(a)から(f)は、図2(b)の高さ0.206nmダイヤモンドの三角形構造体の平面図、左側面図、右側面図、正面図、背面図、および裏面図をそれぞれ示す図である。
【図31】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料4を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明のナノメートルスケールの計測標準試料は、一実施形態として、単結晶ダイヤモンド基板に形成した原子スケールで平坦な表面とステップ構造を有するナノメートルスケールの計測標準試料とする。以下に説明する走査型顕微鏡とは、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型レーザ顕微鏡(SLM)等である。
【0027】
本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料の実施形態として利用される単結晶ダイヤモンド基板は、主面として{111}面、または{111}面から10度以内のオフ角度を持った面を有するものを用いる。その単結晶ダイヤモンド基板について、主面上に単数または複数のメサ構造を形成する。メサ構造の形成方法としては、フォトリソグラフィ、電子線リソグラフィ、集束イオンビーム等を用いる。
【0028】
上記のような形成方法によりメサ構造を形成した単結晶ダイヤモンド基板は、表面の付着物を洗浄等の手段により除去した後、化学気相成長法を用いて、2次元核形成を伴うホモエピタキシャル成長を行うことにより、このメサ構造の表面上に原子的に平坦なテラスとシングルステップで囲まれた凸状の三角形構造体が形成される。その成長方法はマイクロ波プラズマ気相成長法を用いることが好ましい。その成長条件としては、マイクロ波出力を400〜5000W、圧力を10〜200Torr、基板温度を400〜1200℃、導入ガス中のメタン/水素比を0.001〜10%とすることができる。さらに、マイクロ波出力を800〜3000W、圧力を20〜100Torr、基板温度を500〜1000℃、導入ガス中のメタン/水素比を0.005〜2.0%とすることが好ましい。
【0029】
ここで、メサ構造の表面上には原子的に平坦な表面と、その上に三角形構造体が形成される。その構造体の表面もまた原子的に平坦な表面であり、原子スケールで制御された正三角形である。そして、この三角形構造体の島はステップで囲まれており、そのステップの1段当りの高さは、ダイヤモンド{111}のバイレイヤーのシングルステップ高さである0.206nmである。この高さは格子定数から決定される。つまり、この正三角形構造体は原子スケールで制御された構造の3次元構造物となっている。
【0030】
この構造体の形状が正三角形であるため、3つの頂点を持ち、3辺が等しく、各頂点の角度は60度という特徴を有する。この特徴は長さを決定する際、非常に有効である。例えば、三角形の各頂点はその空間座標を与えるため、その内2点を結ぶ直線は長さの絶対的な標準となる。また、残りの頂点を結ぶ2辺も同じ長さである。この三角形構造体の島が原子スケールで制御されていることから、それらの頂点がナノメートルスケールの目盛りとなる。さらに、その表面が原子分解能で観察できるので、各々原子が原子スケールの目盛りとなる。
【0031】
このシングルステップ構造は、2次元核形成を伴う成長を続けることにより、メサ構造の表面上に例えば多段形成することができる(マルチステップ構造)。このため、すなわち、この構造は、三角形構造体が多段積み重なった構造であり、高さ方向のナノメートルスケールの計測を行うためのn×0.206nm(n:1,2,3,…)の標準試料が提供できる。
【0032】
また、1辺の長さが異なる三角形構造体を複数形成することで複数の長さスケールの標準試料が提供できる。このため、複数の値で長さの校正が可能となり、その校正された測定系では、より正確な測定が可能となる。
【0033】
さらに、2次元核形成を完全に抑制した成長を行うこともできるので、上記の方法で核形成を行った後、横方向だけに成長することにより、最上部の三角形の辺を長くすることができる。つまり、それぞれの測定系の最適な構造となった標準試料を提供することができる。
【0034】
上記のような方法より製造された標準試料は、以下のようにして、SPMの垂直方向について、測定値の校正に用いる。三角形構造体がある領域(例えば5μm四方のメサ構造の表面)をSPMによって測定した後、その領域の表面のステップ構造をAFMで拡大して測定を行う。
【0035】
次に、各々のテラスが2次元的に水平になるように画像処理を行う。画像処理の方法としては、走査方向に平行に断面観察を行い、同一層に対応するステップの高さを測り、その差を0に近づける方法により行う。ここで、同一三角形構造体に対向したテラスの水準を複数用いて校正を行うことにより、テラスの水平化がより2次元的に行うことができ、高さデータの校正精度をより高めることができる。
【0036】
また、測定データの全高さデータのヒストグラムを作成し、各ステップ高さに相当した高さの値のピークがより鋭くなるように2次元的に水平処理を行う画像処理の方法も用いることができる。このとき、高さのピークの間隔を0.206nmとして、SPM装置のスキャナー及び装置を校正することとなる。
【0037】
また、標準の高さとして、シングルステップの0.206nmだけでなく、n×0.206nm(n:1,2,3,…)で構成することができ、それぞれのAFM装置に最適な高さで校正を行うことができる。
【0038】
本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料の構造の作製は、単結晶ダイヤモンド基板に形成した三角形構造体のシングルステップ構造を用いた実施形態に限られない。例えば、(111)面から10度以内のオフ角度をもった主面を有する単結晶ダイヤモンド基板をウェット処理、水素プラズマ処理、あるいはホモエピタキシャル成長を行うことでも作製することができ、主面上に形成されたシングルステップ構造又はマルチステップ構造を用いた形態のSPM高さ校正板についても適用可能である。
【0039】
ダイヤモンドは、大気中でも安定であり、一度作製した標準試料の構造は不変である。そのため、メサ構造を光学顕微鏡やSLMで観察できるサイズにすることで、全く同じ部分の計測が容易に可能となる。これは、例えば全く同じ部分の計測を全く別の場所のSPM装置を用いて評価することができるので、つまり、本発明のダイヤモンド標準試料はSPMを校正するための標準試料だけではなく、絶対的なナノメートルスケールの計測標準物質としても適用できる。
【0040】
以上のことから、本発明はSPMの高さだけでなく横方向についても測定値の校正に用いることができる。その正確な校正のためには、上記の方法で水平処理を行った後、十分な精度を持つSPMを用いて、その三角形構造体の頂点を結ぶ直線の長さを測定する。この場合、そのダイヤモンド基板はその三角形構造体の辺の長さが定義された標準試料となる。その標準を元に上記方法と同様にSPM横方向の校正を行うことができる。
【0041】
また、原子分解能を持つSPM装置を用いて、ダイヤモンドの標準試料を測定することにより、原子間隔を測定することで校正を行うことも可能である。
【0042】
本発明のナノメートルスケールの計測標準試料について、実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
図1を参照して説明する。高温高圧合成により得られたIb型ダイヤモンド(111)基板の表面に、ZEP520Aを塗布しスピンコーターで基板を回転し、レジスト膜を形成する(図1a参照)。次いで、電子線露光によりレジストの所望箇所を除去し(図1b参照)、次いで、金を蒸着することにより、そのダイヤモンド基板表面に金の層を設けた(図1c参照)。次いで、金がのったレジスト部分をリフトオフすることにより、ダイヤモンドに直接蒸着された金の層を残した(図1d参照)。次いで、O2とCF4中でバイアスを印加し誘導結合プラズマによりダイヤモンドエッチングすることによりダイヤモンド基板を加工しメサ構造を形成した(図1e参照)。次いで、混酸により金層を除去し、その基板を洗浄した(図1f参照)。その後、マイクロ波プラズマ化学気相成長法を用いて2次元核形成を伴うホモエピタキシャル成長を行った。その時の成長条件は1200W、50Torr、水素濃度99.95%、メタン濃度0.05%とした。
【0044】
その成長後のメサ構造の表面上を原子間力顕微鏡(AFM)により大気中で観察した像を図2(a)に示す。成長後、メサ構造の表面はエッチングで除去された基板表面に比べて平坦になっていることが分かる。また、図2(b)に示すようにメサ構造表面には原子的に平坦な領域と三角形構造体が形成された。さらに、図2(c)の断面図に示すように、その段差は0.21nmであった。つまり、この三角形構造体の段差部分はダイヤモンド(111)のバイレイヤーのシングルステップ(0.206nm)で構成されている。このように、大気でも安定なダイヤモンドを用いて0.206nmの高さの計測標準試料を提供することができる。
【0045】
また、図3に5層のシングルステップ構造を持つ三角形構造体を形成したAFM像を示す。その結果、ステップ構造の段差を5×0.206=1.03nmとすることができる。つまり、図3に示されるように、0.206nmの整数倍の高さの計測標準試料を提供することが可能である。また、ステップ構造の段差をもつ高さの計測標準試料が用いられても良い。
【0046】
メサ構造表面に形成された三角形構造体の辺は直線であるため、これを用いて横方向の計測標準試料にすることもできる。この横方向の計測標準試料は1nmから5μmの範囲とすることが好ましい。メサ構造表面に形成された三角形構造体を構成している炭素原子の様子を図4に示す。実際には、これらの炭素原子に水素などが終端されている。この同一層の最近接の炭素原子の間隔は0.252nmである。つまり、0.252nmの整数倍の長さを計測標準試料とすることも可能となる。
【0047】
1個の高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する。SPMは、AFMもしくはSTMである。その標準試料は、例えば、図5に示されるように、ある高さの標準0.206nmを持つダイヤモンド試料とする。
(工程1);標準試料をSPM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する。
(工程3);校正場所として指定された三角形構造体を含むSPM像を取得する(図6参照)。
(工程4);取得したSPM像から、例えば、図6に示す直線BB’のように三角形構造体を含む断面プロファイルを抽出する。
(工程5);抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の下段の左及びまたは右の同一のテラスの部分を直線の一部とみなして直線近似を行い、これを基準線とする(図7参照)。
(工程6);抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の上段を直線の一部とみなして前記基準線と傾きを一致させながら直線近似を行い、この直線と前記基準線との差を見かけ上の高さとする(図8参照)。
(工程7);前記見かけ上の高さが、標準試料に記載された高さ0.206nmに一致するように装置の高さパラメタを変更する。
【0048】
次に、n個の高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する。SPMは、AFMもしくはSTMである。標準試料は高さの標準n個の高さの標準0.206nm、0.412nm、0.618nm、…、すなわち、0.206×n(n≧1の整数)nmを持つダイヤモンド試料とする。ここでは、図9を参照して、n=5の高さ標準試料による高さ校正方法について説明する。
(工程1);標準試料をSPM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する。
(工程3);校正場所として指定された5段の三角形構造体のSPM像を取得する(図10参照)。
(工程4);取得したSPM像から、例えば、図10に示す直線BB’のように指定された5段の三角形構造体を含む断面プロファイルを抽出する。
(工程5);抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の最下段の左及びまたは右の同一のテラスの部分を直線の一部とみなして直線近似を行い、これを基準線とする(図11参照)。
(工程6);抽出した断面プロファイルにおいて、前記テラスとは異なる三角形構造体の全てのテラスに対して、左及びまたは右の同一のテラス部分を直線の一部とみなして前期基準線と傾きを一致させながら直線近似を行い、これらの直線と前記基準線との差をそれぞれ見かけ上の高さh1、h2、h3、h4、h5とする。(図12参照)
(工程7);前記見かけ上の高さh1、h2、h3、h4、h5が、標準試料に記載された高さ0.206nm、0.412nm、0.618nm、0.824nm、1.030nmにそれぞれ一致するように装置の高さパラメタを変更する。
【0049】
次に、長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する。SPMは、AFMもしくはSTMである。標準試料は、例えば、図13に示すような三角形構造体を持つダイヤモンド試料とする。
(工程1);標準試料をSPM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する。
(工程3);校正場所として指定された三角形構造体のSPM像を取得する。(図14参照)
(工程4);前記取得したSPM像から、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標(x1、y1、z1)、(x2、y2、z2)、(x3、y3、z3)を抽出する。(図15参照)
(工程5);前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さL1’、L2’、L3’とする。(図16参照)
(工程6);前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さ(L1、L2、L3)にそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向及びZ方向の長さパラメタを変更する。
【0050】
次に、長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する。標準試料は、例えば、図17に示すような三角形構造体を持つダイヤモンド試料とする。
(工程1);標準試料をSEM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置にSEMの測定範囲を移動する。
(工程3);SEM観察を行い、メサ構造表面上の原子的に平坦な面全面において焦点が合うように標準試料を傾ける。
(工程4);校正場所として指定された三角形構造体のSEM像を取得する。(図18参照)
(工程5);取得した画像において、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)を抽出する。(図19参照)
(工程6);前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さL1’、L2’、L3’とする。(図20参照)
(工程7);前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さ(L1、L2、L3)にそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向の長さパラメタを変更する。
【0051】
上記と同様の成長法を用いて成長した後の凸表面上をAFMにより大気中で観察した像を図21に示す。成長後、同一凸上に3つの三角形構造体が形成されたものを示している。この場合、それらの異なる三角形構造体の任意の頂点を結んだ直線を、横方向の計測標準試料にすることもできる。この横方向の計測標準試料は100nmから10μmの範囲とすることが好ましい。このときの成長条件は、二次元構造体を形成可能な条件とするが、例えば、気相中のメタン濃度を0.5%まで高くすることも可能である。
【0052】
次に、長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する。SPMは、AFMもしくはSTMである。この長さの計測標準試料は、試料の中央付近の凸上に異なる三角形構造体を持つダイヤモンドである(図22a参照)。この計測標準試料は、例えば、図22bに示すように凸上に3つの三角形構造体を持つ。その異なる三角形構造体の任意の頂点を結ぶ直線を長さの計測標準試料とする。長さは、例えば、図22cに示すように1μm、2μm、3μmである。
(工程1);標準試料をSPM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する。
(工程3);校正場所として指定された三角形構造体のSPM像を取得する(図23参照)。
(工程4);前記取得したSPM像から、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標(x1、y1、z1)、(x2、y2、z2)、(x3、y3、z3)を抽出する(図24参照)。
(工程5);前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さL1’、L2’、L3’とする(図25参照)。
(工程6);前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さ(L1、L2、L3)にそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向及びZ方向の長さパラメタを変更する。
【0053】
次に、長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する。この長さの計測標準試料は試料の中央付近の凸上に異なる三角形構造体を持つダイヤモンドである(図26a参照)。この計測標準試料は、例えば、図26bに示すように凸上に3つの三角形構造体を持つ。その三角形構造体の周辺は、ダイヤモンドとは異なる電子親和力あるいは異なる仕事関数の材料で構成されている。その異なる三角形構造体の任意の頂点を結ぶ直線を長さの計測標準試料とする。長さは、例えば、図26cに示すように1μm、2μm、3μmである。
(工程1);標準試料をSEM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置にSEMの測定範囲を移動する。
(工程3);SEM観察を行い、メサ構造表面上の原子的に平坦な面全面において焦点が合うように標準試料を傾ける。
(工程4);校正場所として指定された三角形構造体のSEM像を取得する(図27参照)。
(工程5);取得した画像において、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)を抽出する(図28参照)。
(工程6);前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さL1’、L2’、L3’とする(図29参照)。
(工程7);前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さ(L1、L2、L3)にそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向の長さパラメタを変更する。
【0054】
また、エッチング法を用いることにより、ダイヤモンド表面に凹状の三角形構造体を形成することができる。図31aには、マイクロ波プラズマCVDチャンバー中において水素流量を400sccm、投入電力を1200W、圧力を50Torr、試料温度850℃における水素プラズマ処理を用いて結晶欠陥部分をエッチングすることにより形成した三角形構造体を示している。その凹状の三角形構造体の断面図(図31b参照)の段差は2.06nmであり、この三角形構造体は、10層のシングルステップ構造で構成された高さの計測標準試料である。上述の基板上に形成された三角形構造体を持つダイヤモンドの高さ及び長さの計測標準試料と同様の方法(高さ方向が逆の構造)を用いて、この凹状の三角形構造体を持つダイヤモンドも高さ及び長さの計測標準試料とすることができる。上記結晶欠陥は、例えば、電子あるいはイオンビームや圧痕法などを用いることにより意図的な場所に形成することが可能である。なお、結晶欠陥部分は、X線トポグラフィを用いて見出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、大気中でも安定なナノメートルあるいは原子スケールにおける高さ及びあるいは長さの計測標準試料を提供することができる。近年、シリコンLSIに代表されるナノエレクトロニクスや、バイオ、医療等の分野においてナノメートルスケールの構造の作製が行われている。そこで、本発明は作製した構造物が設計した高さ及びあるいは長さになっているかを正しく計測することを可能にし、その加工装置及びプロセスの診断及び作製したデバイス特性またはその機能の信頼性の確保に期待できる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノメートルスケールの計測標準試料およびナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法に関するものであり、詳細には、大気中でも安定なナノメートルあるいは原子スケールにおける高さ及びもしくは長さの計測標準試料となるナノメートルスケールの計測標準試料およびナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ナノメートルスケールの計測を行う際、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)、走査型原子間力顕微鏡(AFM)及び走査型レーザ顕微鏡(SLM)等の走査型顕微鏡が主に用いられている。SEMは主に線幅の測定に用いられる。AFMやSTM等の走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、長さや高さだけでなく表面のラフネスの測定にも用いられる。その際、長さや高さを校正するための標準資料を必要とする。AFMの計測標準資料としては、従来、原子的に平坦なテラスと高さ0.31nmの原子ステップを表面に有する単結晶シリコン基板(シリコン標準試料)が用いられている(非特許文献1)。
【0003】
しかしながら、非特許文献1に係るシリコン標準試料は、大気にさらすと表面に酸化膜が生成される。その一方で、通常AFMの校正は大気中において行われており、シリコン標準試料は時間との経過とともに、テラスの平坦性は損なわれるため、0.31nmの高さの校正値から容易にずれてしまうという問題があった。
【0004】
それらを改善するため、大気中で安定なステップ構造を有するサファイアを用いた標準試料が開発された(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−284316号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】(社)電子情報技術産業協会規格 「AFMにおける1nmオーダの高さ校正法」p.3〜5 2002年7月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、サファイアはアルミニウムと酸素の2元素から構成された化合物であるため、単元素の物質と比較すると、その結晶の完全性は劣る。その結果、ステップテラス構造を有するサファイア基板のテラス部分において、そのステップ高さと同等あるいはそれ以上大きいラフネスが存在する。つまり、シリコン標準試料と比較して、時間と共にテラスのラフネスが増加するということは抑えられるが、元々ラフネスが存在しているため正確な高さの校正を行うことは困難という問題がある。
【0008】
また、サファイアは絶縁体のため、SEM、STMの標準試料には不適である。
【0009】
ナノメートルスケールの計測を行うためには、原子スケールで制御された3次元構造を持ち、その構造が大気中でも安定であり、かつSEMやSTMでも観察可能な導電性を持つ計測標準試料が必要とされているが、これまで、そのような計測標準試料は提供されていなかった。
【0010】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、ナノメートルスケールの計測標準試料およびナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、第1の態様として、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料が、主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn層(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、前記三角形構造体の2つの頂点を結ぶ三角形の直線を長さの標準とすることを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、第2の態様として、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料が、主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn層(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、前記三角形構造体の三角形の1辺を直線性の標準とすることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、第3の態様として、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料が、主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn段(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、前記三角形構造体のステップ段差を高さの標準とすることを特徴とするものである。
【0014】
この場合に、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料において、前記三角形構造体の三角形は、正三角形であり、また、前記三角形構造体の三角形の1辺の長さは、上段に位置する三角形ほど短いものとする。
【0015】
また、本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料において、前記原子的に平坦なテラス面は、その主表面に1辺の長さの異なる三角形構造体を複数備えることを特徴とするものであり、また、前記単結晶ダイヤモンド基板の単結晶ダイヤモンドは、水素終端を備えることを特徴とするものである。
【0016】
本発明による前記ナノメートルスケールの計測標準試料は、走査型顕微鏡用であることを特徴とするものであり、走査型プローブ顕微鏡(SPM)または走査型電子顕微鏡(SEM)において好適に利用される。
【0017】
本発明は、別の態様として、上記のナノメートルスケールの計測標準試料を用いた走査型顕微鏡の校正方法を提供する。
【0018】
第1の態様として、本発明により提供されるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSPMの校正方法は、標準試料を走査型プローブ顕微鏡(SPM)装置にセットする工程と、標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する工程と、校正場所として指定されたn段(n≧1の整数)の三角形構造体のSPM像を取得する工程と、取得したSPM像から指定されたn段の三角形構造体を含む断面プロファイルを抽出する工程と、前記抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の最下段の左及びまたは右の同一のテラスの部分を直線の一部とみなして直線近似を行い、これを基準線とし、かつ、前記テラスとは異なる三角形構造体の全てのテラスに対して、左及びまたは右の同一のテラス部分を直線の一部とみなして前記基準線と傾きを一致させながら直線近似を行い、これらの直線と前記基準線との差をそれぞれ見かけ上の高さとし、前記見かけ上の高さが、標準試料に記載された高さ0.206nmのn倍にそれぞれ一致するように装置の高さパラメタを変更する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0019】
第2の態様として、本発明により提供されるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSPMの校正方法は、標準試料をSPM装置にセットする工程と、標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する工程と、校正場所として指定された三角形構造体のSPM像を取得する工程と、前記取得したSPM像から、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標を抽出する工程と、前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さとし、前記見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さにそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向及びZ方向の長さパラメタを変更する工程とを備えることを特徴とするものである。
【0020】
また、第3の態様として、本発明により提供されるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSEMの校正方法は、標準試料をSEM装置にセットする工程と、標準試料表面の指定のメサ構造の位置にSEMの測定範囲を移動する工程と、SEM観察を行い、メサ構造表面上の原子的に平坦な面全面において焦点が合うように標準試料を傾ける工程と、校正場所として指定された三角形構造体のSEM像を取得する工程と、取得した画像において、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標を抽出する工程と、前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さとし、前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さにそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向の長さパラメタを変更する工程とを備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明のナノメートルスケールの計測標準試料は、原子スケールで平坦な表面及びステップ構造を有する大気中でも安定な単結晶ダイヤモンド基板により構成されるので、ナノメートルスケールの計測標準試料として提供されて、走査型顕微鏡の校正において好適に使用される。
【0022】
ダイヤモンドは物質中最高の硬度や物質中最小の熱膨張率を有し、また、大気中でも安定であり、耐強酸や強塩基性を有し、物理的にも化学的にも最も安定な材料であるため、計測標準試料の材料として最も優れており、この特質が活用できる。
【0023】
特に、水素で終端されたダイヤモンドは、その表面に伝導層を持つため、SEMやSTMにおいて計測標準試料として好適に利用できる。
【0024】
本発明のナノメートルスケールの計測標準試料においては、結晶学的に決定付けられた正三角形構造体の形状を用いるため、既知の一辺の長さにより、一つの画面上で縦横の2次元の長さ校正が同時に行える利点がある。さらに、正三角形構造体の一辺が、結晶学的に決定付けられた直線であるため、直線性の標準の試料とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料のメサ構造の作製手順を説明する図である。
【図2】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料1を説明する図である。
【図3】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料2を説明する図である。
【図4】{111}ダイヤモンドの三角形構造体を説明する図である。
【図5】単原子ステップの高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する第1の図である。
【図6】単原子ステップの高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する第2の図である。
【図7】単原子ステップの高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する第3の図である。
【図8】単原子ステップの高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する第4の図である。
【図9】n個の高さの計測標準試料を用いた本発明によるSPMの高さ校正方法を説明する第1の図である。
【図10】n個の高さの計測標準試料を用いた本発明によるSPMの高さ校正方法を説明する第2の図である。
【図11】n個の高さの計測標準試料を用いた本発明によるSPMの高さ校正方法を説明する第3の図である。
【図12】n個の高さの計測標準試料を用いた本発明によるSPMの高さ校正方法を説明する第4の図である。
【図13】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第1の図である。
【図14】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第2の図である。
【図15】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第3の図である。
【図16】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第4の図である。
【図17】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第1の図である。
【図18】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第2の図である。
【図19】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第3の図である。
【図20】三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第4の図である。
【図21】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料3を説明する図である。
【図22】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第1の図である。
【図23】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第2の図である。
【図24】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第3の図である。
【図25】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する第4の図である。
【図26】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第1の図である。
【図27】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第2の図である。
【図28】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第3の図である。
【図29】複数の三角形構造体を持つ長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する第4の図である。
【図30】(a)から(f)は、図2(b)の高さ0.206nmダイヤモンドの三角形構造体の平面図、左側面図、右側面図、正面図、背面図、および裏面図をそれぞれ示す図である。
【図31】本発明のナノメートルスケールの計測標準試料4を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。本発明のナノメートルスケールの計測標準試料は、一実施形態として、単結晶ダイヤモンド基板に形成した原子スケールで平坦な表面とステップ構造を有するナノメートルスケールの計測標準試料とする。以下に説明する走査型顕微鏡とは、原子間力顕微鏡(AFM)、走査型トンネル顕微鏡(STM)、走査型電子顕微鏡(SEM)、走査型レーザ顕微鏡(SLM)等である。
【0027】
本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料の実施形態として利用される単結晶ダイヤモンド基板は、主面として{111}面、または{111}面から10度以内のオフ角度を持った面を有するものを用いる。その単結晶ダイヤモンド基板について、主面上に単数または複数のメサ構造を形成する。メサ構造の形成方法としては、フォトリソグラフィ、電子線リソグラフィ、集束イオンビーム等を用いる。
【0028】
上記のような形成方法によりメサ構造を形成した単結晶ダイヤモンド基板は、表面の付着物を洗浄等の手段により除去した後、化学気相成長法を用いて、2次元核形成を伴うホモエピタキシャル成長を行うことにより、このメサ構造の表面上に原子的に平坦なテラスとシングルステップで囲まれた凸状の三角形構造体が形成される。その成長方法はマイクロ波プラズマ気相成長法を用いることが好ましい。その成長条件としては、マイクロ波出力を400〜5000W、圧力を10〜200Torr、基板温度を400〜1200℃、導入ガス中のメタン/水素比を0.001〜10%とすることができる。さらに、マイクロ波出力を800〜3000W、圧力を20〜100Torr、基板温度を500〜1000℃、導入ガス中のメタン/水素比を0.005〜2.0%とすることが好ましい。
【0029】
ここで、メサ構造の表面上には原子的に平坦な表面と、その上に三角形構造体が形成される。その構造体の表面もまた原子的に平坦な表面であり、原子スケールで制御された正三角形である。そして、この三角形構造体の島はステップで囲まれており、そのステップの1段当りの高さは、ダイヤモンド{111}のバイレイヤーのシングルステップ高さである0.206nmである。この高さは格子定数から決定される。つまり、この正三角形構造体は原子スケールで制御された構造の3次元構造物となっている。
【0030】
この構造体の形状が正三角形であるため、3つの頂点を持ち、3辺が等しく、各頂点の角度は60度という特徴を有する。この特徴は長さを決定する際、非常に有効である。例えば、三角形の各頂点はその空間座標を与えるため、その内2点を結ぶ直線は長さの絶対的な標準となる。また、残りの頂点を結ぶ2辺も同じ長さである。この三角形構造体の島が原子スケールで制御されていることから、それらの頂点がナノメートルスケールの目盛りとなる。さらに、その表面が原子分解能で観察できるので、各々原子が原子スケールの目盛りとなる。
【0031】
このシングルステップ構造は、2次元核形成を伴う成長を続けることにより、メサ構造の表面上に例えば多段形成することができる(マルチステップ構造)。このため、すなわち、この構造は、三角形構造体が多段積み重なった構造であり、高さ方向のナノメートルスケールの計測を行うためのn×0.206nm(n:1,2,3,…)の標準試料が提供できる。
【0032】
また、1辺の長さが異なる三角形構造体を複数形成することで複数の長さスケールの標準試料が提供できる。このため、複数の値で長さの校正が可能となり、その校正された測定系では、より正確な測定が可能となる。
【0033】
さらに、2次元核形成を完全に抑制した成長を行うこともできるので、上記の方法で核形成を行った後、横方向だけに成長することにより、最上部の三角形の辺を長くすることができる。つまり、それぞれの測定系の最適な構造となった標準試料を提供することができる。
【0034】
上記のような方法より製造された標準試料は、以下のようにして、SPMの垂直方向について、測定値の校正に用いる。三角形構造体がある領域(例えば5μm四方のメサ構造の表面)をSPMによって測定した後、その領域の表面のステップ構造をAFMで拡大して測定を行う。
【0035】
次に、各々のテラスが2次元的に水平になるように画像処理を行う。画像処理の方法としては、走査方向に平行に断面観察を行い、同一層に対応するステップの高さを測り、その差を0に近づける方法により行う。ここで、同一三角形構造体に対向したテラスの水準を複数用いて校正を行うことにより、テラスの水平化がより2次元的に行うことができ、高さデータの校正精度をより高めることができる。
【0036】
また、測定データの全高さデータのヒストグラムを作成し、各ステップ高さに相当した高さの値のピークがより鋭くなるように2次元的に水平処理を行う画像処理の方法も用いることができる。このとき、高さのピークの間隔を0.206nmとして、SPM装置のスキャナー及び装置を校正することとなる。
【0037】
また、標準の高さとして、シングルステップの0.206nmだけでなく、n×0.206nm(n:1,2,3,…)で構成することができ、それぞれのAFM装置に最適な高さで校正を行うことができる。
【0038】
本発明によるナノメートルスケールの計測標準試料の構造の作製は、単結晶ダイヤモンド基板に形成した三角形構造体のシングルステップ構造を用いた実施形態に限られない。例えば、(111)面から10度以内のオフ角度をもった主面を有する単結晶ダイヤモンド基板をウェット処理、水素プラズマ処理、あるいはホモエピタキシャル成長を行うことでも作製することができ、主面上に形成されたシングルステップ構造又はマルチステップ構造を用いた形態のSPM高さ校正板についても適用可能である。
【0039】
ダイヤモンドは、大気中でも安定であり、一度作製した標準試料の構造は不変である。そのため、メサ構造を光学顕微鏡やSLMで観察できるサイズにすることで、全く同じ部分の計測が容易に可能となる。これは、例えば全く同じ部分の計測を全く別の場所のSPM装置を用いて評価することができるので、つまり、本発明のダイヤモンド標準試料はSPMを校正するための標準試料だけではなく、絶対的なナノメートルスケールの計測標準物質としても適用できる。
【0040】
以上のことから、本発明はSPMの高さだけでなく横方向についても測定値の校正に用いることができる。その正確な校正のためには、上記の方法で水平処理を行った後、十分な精度を持つSPMを用いて、その三角形構造体の頂点を結ぶ直線の長さを測定する。この場合、そのダイヤモンド基板はその三角形構造体の辺の長さが定義された標準試料となる。その標準を元に上記方法と同様にSPM横方向の校正を行うことができる。
【0041】
また、原子分解能を持つSPM装置を用いて、ダイヤモンドの標準試料を測定することにより、原子間隔を測定することで校正を行うことも可能である。
【0042】
本発明のナノメートルスケールの計測標準試料について、実施例により、さらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0043】
図1を参照して説明する。高温高圧合成により得られたIb型ダイヤモンド(111)基板の表面に、ZEP520Aを塗布しスピンコーターで基板を回転し、レジスト膜を形成する(図1a参照)。次いで、電子線露光によりレジストの所望箇所を除去し(図1b参照)、次いで、金を蒸着することにより、そのダイヤモンド基板表面に金の層を設けた(図1c参照)。次いで、金がのったレジスト部分をリフトオフすることにより、ダイヤモンドに直接蒸着された金の層を残した(図1d参照)。次いで、O2とCF4中でバイアスを印加し誘導結合プラズマによりダイヤモンドエッチングすることによりダイヤモンド基板を加工しメサ構造を形成した(図1e参照)。次いで、混酸により金層を除去し、その基板を洗浄した(図1f参照)。その後、マイクロ波プラズマ化学気相成長法を用いて2次元核形成を伴うホモエピタキシャル成長を行った。その時の成長条件は1200W、50Torr、水素濃度99.95%、メタン濃度0.05%とした。
【0044】
その成長後のメサ構造の表面上を原子間力顕微鏡(AFM)により大気中で観察した像を図2(a)に示す。成長後、メサ構造の表面はエッチングで除去された基板表面に比べて平坦になっていることが分かる。また、図2(b)に示すようにメサ構造表面には原子的に平坦な領域と三角形構造体が形成された。さらに、図2(c)の断面図に示すように、その段差は0.21nmであった。つまり、この三角形構造体の段差部分はダイヤモンド(111)のバイレイヤーのシングルステップ(0.206nm)で構成されている。このように、大気でも安定なダイヤモンドを用いて0.206nmの高さの計測標準試料を提供することができる。
【0045】
また、図3に5層のシングルステップ構造を持つ三角形構造体を形成したAFM像を示す。その結果、ステップ構造の段差を5×0.206=1.03nmとすることができる。つまり、図3に示されるように、0.206nmの整数倍の高さの計測標準試料を提供することが可能である。また、ステップ構造の段差をもつ高さの計測標準試料が用いられても良い。
【0046】
メサ構造表面に形成された三角形構造体の辺は直線であるため、これを用いて横方向の計測標準試料にすることもできる。この横方向の計測標準試料は1nmから5μmの範囲とすることが好ましい。メサ構造表面に形成された三角形構造体を構成している炭素原子の様子を図4に示す。実際には、これらの炭素原子に水素などが終端されている。この同一層の最近接の炭素原子の間隔は0.252nmである。つまり、0.252nmの整数倍の長さを計測標準試料とすることも可能となる。
【0047】
1個の高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する。SPMは、AFMもしくはSTMである。その標準試料は、例えば、図5に示されるように、ある高さの標準0.206nmを持つダイヤモンド試料とする。
(工程1);標準試料をSPM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する。
(工程3);校正場所として指定された三角形構造体を含むSPM像を取得する(図6参照)。
(工程4);取得したSPM像から、例えば、図6に示す直線BB’のように三角形構造体を含む断面プロファイルを抽出する。
(工程5);抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の下段の左及びまたは右の同一のテラスの部分を直線の一部とみなして直線近似を行い、これを基準線とする(図7参照)。
(工程6);抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の上段を直線の一部とみなして前記基準線と傾きを一致させながら直線近似を行い、この直線と前記基準線との差を見かけ上の高さとする(図8参照)。
(工程7);前記見かけ上の高さが、標準試料に記載された高さ0.206nmに一致するように装置の高さパラメタを変更する。
【0048】
次に、n個の高さの計測標準試料を用いたSPMの高さ校正方法を説明する。SPMは、AFMもしくはSTMである。標準試料は高さの標準n個の高さの標準0.206nm、0.412nm、0.618nm、…、すなわち、0.206×n(n≧1の整数)nmを持つダイヤモンド試料とする。ここでは、図9を参照して、n=5の高さ標準試料による高さ校正方法について説明する。
(工程1);標準試料をSPM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する。
(工程3);校正場所として指定された5段の三角形構造体のSPM像を取得する(図10参照)。
(工程4);取得したSPM像から、例えば、図10に示す直線BB’のように指定された5段の三角形構造体を含む断面プロファイルを抽出する。
(工程5);抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の最下段の左及びまたは右の同一のテラスの部分を直線の一部とみなして直線近似を行い、これを基準線とする(図11参照)。
(工程6);抽出した断面プロファイルにおいて、前記テラスとは異なる三角形構造体の全てのテラスに対して、左及びまたは右の同一のテラス部分を直線の一部とみなして前期基準線と傾きを一致させながら直線近似を行い、これらの直線と前記基準線との差をそれぞれ見かけ上の高さh1、h2、h3、h4、h5とする。(図12参照)
(工程7);前記見かけ上の高さh1、h2、h3、h4、h5が、標準試料に記載された高さ0.206nm、0.412nm、0.618nm、0.824nm、1.030nmにそれぞれ一致するように装置の高さパラメタを変更する。
【0049】
次に、長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する。SPMは、AFMもしくはSTMである。標準試料は、例えば、図13に示すような三角形構造体を持つダイヤモンド試料とする。
(工程1);標準試料をSPM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する。
(工程3);校正場所として指定された三角形構造体のSPM像を取得する。(図14参照)
(工程4);前記取得したSPM像から、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標(x1、y1、z1)、(x2、y2、z2)、(x3、y3、z3)を抽出する。(図15参照)
(工程5);前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さL1’、L2’、L3’とする。(図16参照)
(工程6);前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さ(L1、L2、L3)にそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向及びZ方向の長さパラメタを変更する。
【0050】
次に、長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する。標準試料は、例えば、図17に示すような三角形構造体を持つダイヤモンド試料とする。
(工程1);標準試料をSEM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置にSEMの測定範囲を移動する。
(工程3);SEM観察を行い、メサ構造表面上の原子的に平坦な面全面において焦点が合うように標準試料を傾ける。
(工程4);校正場所として指定された三角形構造体のSEM像を取得する。(図18参照)
(工程5);取得した画像において、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)を抽出する。(図19参照)
(工程6);前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さL1’、L2’、L3’とする。(図20参照)
(工程7);前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さ(L1、L2、L3)にそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向の長さパラメタを変更する。
【0051】
上記と同様の成長法を用いて成長した後の凸表面上をAFMにより大気中で観察した像を図21に示す。成長後、同一凸上に3つの三角形構造体が形成されたものを示している。この場合、それらの異なる三角形構造体の任意の頂点を結んだ直線を、横方向の計測標準試料にすることもできる。この横方向の計測標準試料は100nmから10μmの範囲とすることが好ましい。このときの成長条件は、二次元構造体を形成可能な条件とするが、例えば、気相中のメタン濃度を0.5%まで高くすることも可能である。
【0052】
次に、長さの計測標準試料を用いたSPMの長さ校正方法を説明する。SPMは、AFMもしくはSTMである。この長さの計測標準試料は、試料の中央付近の凸上に異なる三角形構造体を持つダイヤモンドである(図22a参照)。この計測標準試料は、例えば、図22bに示すように凸上に3つの三角形構造体を持つ。その異なる三角形構造体の任意の頂点を結ぶ直線を長さの計測標準試料とする。長さは、例えば、図22cに示すように1μm、2μm、3μmである。
(工程1);標準試料をSPM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する。
(工程3);校正場所として指定された三角形構造体のSPM像を取得する(図23参照)。
(工程4);前記取得したSPM像から、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標(x1、y1、z1)、(x2、y2、z2)、(x3、y3、z3)を抽出する(図24参照)。
(工程5);前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さL1’、L2’、L3’とする(図25参照)。
(工程6);前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さ(L1、L2、L3)にそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向及びZ方向の長さパラメタを変更する。
【0053】
次に、長さの計測標準試料を用いたSEMの長さ校正方法を説明する。この長さの計測標準試料は試料の中央付近の凸上に異なる三角形構造体を持つダイヤモンドである(図26a参照)。この計測標準試料は、例えば、図26bに示すように凸上に3つの三角形構造体を持つ。その三角形構造体の周辺は、ダイヤモンドとは異なる電子親和力あるいは異なる仕事関数の材料で構成されている。その異なる三角形構造体の任意の頂点を結ぶ直線を長さの計測標準試料とする。長さは、例えば、図26cに示すように1μm、2μm、3μmである。
(工程1);標準試料をSEM装置にセットする。
(工程2);標準試料表面の指定のメサ構造の位置にSEMの測定範囲を移動する。
(工程3);SEM観察を行い、メサ構造表面上の原子的に平坦な面全面において焦点が合うように標準試料を傾ける。
(工程4);校正場所として指定された三角形構造体のSEM像を取得する(図27参照)。
(工程5);取得した画像において、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標(x1、y1)、(x2、y2)、(x3、y3)を抽出する(図28参照)。
(工程6);前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さL1’、L2’、L3’とする(図29参照)。
(工程7);前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さ(L1、L2、L3)にそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向の長さパラメタを変更する。
【0054】
また、エッチング法を用いることにより、ダイヤモンド表面に凹状の三角形構造体を形成することができる。図31aには、マイクロ波プラズマCVDチャンバー中において水素流量を400sccm、投入電力を1200W、圧力を50Torr、試料温度850℃における水素プラズマ処理を用いて結晶欠陥部分をエッチングすることにより形成した三角形構造体を示している。その凹状の三角形構造体の断面図(図31b参照)の段差は2.06nmであり、この三角形構造体は、10層のシングルステップ構造で構成された高さの計測標準試料である。上述の基板上に形成された三角形構造体を持つダイヤモンドの高さ及び長さの計測標準試料と同様の方法(高さ方向が逆の構造)を用いて、この凹状の三角形構造体を持つダイヤモンドも高さ及び長さの計測標準試料とすることができる。上記結晶欠陥は、例えば、電子あるいはイオンビームや圧痕法などを用いることにより意図的な場所に形成することが可能である。なお、結晶欠陥部分は、X線トポグラフィを用いて見出すことができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、大気中でも安定なナノメートルあるいは原子スケールにおける高さ及びあるいは長さの計測標準試料を提供することができる。近年、シリコンLSIに代表されるナノエレクトロニクスや、バイオ、医療等の分野においてナノメートルスケールの構造の作製が行われている。そこで、本発明は作製した構造物が設計した高さ及びあるいは長さになっているかを正しく計測することを可能にし、その加工装置及びプロセスの診断及び作製したデバイス特性またはその機能の信頼性の確保に期待できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn層(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、
前記三角形構造体の2つの頂点を結ぶ三角形の直線を長さの標準とする
ことを特徴とするナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項2】
主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn層(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、
前記三角形構造体の三角形の1辺を直線性の標準とする
ことを特徴とするナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項3】
主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn段(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、
前記三角形構造体のステップ段差を高さの標準とする
ことを特徴とするナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項4】
前記三角形構造体の三角形は、正三角形である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項5】
前記三角形構造体の三角形の1辺の長さは、上段に位置する三角形ほど短い
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項6】
前記原子的に平坦なテラス面は、その主表面に1辺の長さの異なる三角形構造体を複数備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項7】
前記単結晶ダイヤモンド基板の単結晶ダイヤモンドは、水素終端を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項8】
前記ナノメートルスケールの計測標準試料は、走査型顕微鏡用である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項9】
標準試料を走査型プローブ顕微鏡(SPM)装置にセットする工程と、
標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する工程と、
校正場所として指定されたn段(n≧1の整数)の三角形構造体のSPM像を取得する工程と、
取得したSPM像から指定されたn段の三角形構造体を含む断面プロファイルを抽出する工程と、
前記抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の最下段の左及びまたは右の同一のテラスの部分を直線の一部とみなして直線近似を行い、これを基準線とし、かつ、前記テラスとは異なる三角形構造体の全てのテラスに対して、左及びまたは右の同一のテラス部分を直線の一部とみなして前記基準線と傾きを一致させながら直線近似を行い、これらの直線と前記基準線との差をそれぞれ見かけ上の高さとし、前記見かけ上の高さが、標準試料に記載された高さ0.206nmのn倍にそれぞれ一致するように装置の高さパラメタを変更する工程と、
を備えるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSPMの校正方法。
【請求項10】
標準試料をSPM装置にセットする工程と、
標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する工程と、
校正場所として指定された三角形構造体のSPM像を取得する工程と、
前記取得したSPM像から、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標を抽出する工程と、
前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さとし、前記見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さにそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向及びZ方向の長さパラメタを変更する工程と、
を備えるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSPMの校正方法。
【請求項11】
標準試料をSEM装置にセットする工程と、
標準試料表面の指定のメサ構造の位置にSEMの測定範囲を移動する工程と、
SEM観察を行い、メサ構造表面上の原子的に平坦な面全面において焦点が合うように標準試料を傾ける工程と、
校正場所として指定された三角形構造体のSEM像を取得する工程と、
取得した画像において、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標を抽出する工程と、
前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さとし、前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さにそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向の長さパラメタを変更する工程と、
を備えるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSEMの校正方法。
【請求項1】
主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn層(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、
前記三角形構造体の2つの頂点を結ぶ三角形の直線を長さの標準とする
ことを特徴とするナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項2】
主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn層(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、
前記三角形構造体の三角形の1辺を直線性の標準とする
ことを特徴とするナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項3】
主表面{111}面又は{111}面から10度以内のオフ角の単結晶ダイヤモンド基板と、該単結晶ダイヤモンド基板に形成された1ステップ高さ;0.206nmの原子的に平坦なテラス面をn段(n≧1の整数)有する三角形構造体とを備え、
前記三角形構造体のステップ段差を高さの標準とする
ことを特徴とするナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項4】
前記三角形構造体の三角形は、正三角形である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項5】
前記三角形構造体の三角形の1辺の長さは、上段に位置する三角形ほど短い
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項6】
前記原子的に平坦なテラス面は、その主表面に1辺の長さの異なる三角形構造体を複数備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項7】
前記単結晶ダイヤモンド基板の単結晶ダイヤモンドは、水素終端を備える
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項8】
前記ナノメートルスケールの計測標準試料は、走査型顕微鏡用である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のナノメートルスケールの計測標準試料。
【請求項9】
標準試料を走査型プローブ顕微鏡(SPM)装置にセットする工程と、
標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する工程と、
校正場所として指定されたn段(n≧1の整数)の三角形構造体のSPM像を取得する工程と、
取得したSPM像から指定されたn段の三角形構造体を含む断面プロファイルを抽出する工程と、
前記抽出した断面プロファイルにおいて、三角形構造体の最下段の左及びまたは右の同一のテラスの部分を直線の一部とみなして直線近似を行い、これを基準線とし、かつ、前記テラスとは異なる三角形構造体の全てのテラスに対して、左及びまたは右の同一のテラス部分を直線の一部とみなして前記基準線と傾きを一致させながら直線近似を行い、これらの直線と前記基準線との差をそれぞれ見かけ上の高さとし、前記見かけ上の高さが、標準試料に記載された高さ0.206nmのn倍にそれぞれ一致するように装置の高さパラメタを変更する工程と、
を備えるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSPMの校正方法。
【請求項10】
標準試料をSPM装置にセットする工程と、
標準試料表面の指定のメサ構造の位置に光学顕微鏡でSPMの測定範囲を移動する工程と、
校正場所として指定された三角形構造体のSPM像を取得する工程と、
前記取得したSPM像から、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標を抽出する工程と、
前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さとし、前記見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さにそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向及びZ方向の長さパラメタを変更する工程と、
を備えるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSPMの校正方法。
【請求項11】
標準試料をSEM装置にセットする工程と、
標準試料表面の指定のメサ構造の位置にSEMの測定範囲を移動する工程と、
SEM観察を行い、メサ構造表面上の原子的に平坦な面全面において焦点が合うように標準試料を傾ける工程と、
校正場所として指定された三角形構造体のSEM像を取得する工程と、
取得した画像において、指定された三角形構造体の三つの頂点の見かけ上の座標を抽出する工程と、
前記抽出した三つの座標から三つの直線距離を算出し、それぞれ見かけ上の長さとし、前記三つの見かけ上の長さが、標準試料に記載された長さにそれぞれ一致するように装置のX方向及びY方向の長さパラメタを変更する工程と、
を備えるナノメートルスケールの計測標準試料を使用したSEMの校正方法。
【図5】
【図7】
【図8】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図31】
【図7】
【図8】
【図11】
【図13】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図22】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図6】
【図9】
【図10】
【図12】
【図14】
【図15】
【図20】
【図21】
【図23】
【図24】
【図31】
【公開番号】特開2010−78582(P2010−78582A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37517(P2009−37517)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】
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