ナノ多孔性炭素質膜及びそれに関する方法
【解決手段】 ナノ多孔性炭素質膜及びそれに関する装置及び方法を開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2006年5月12日に出願された米国特許仮出願第60/799,980号明細書に対して優先権を主張し、この参照によりその全体が本明細書に取り込まれるものである。
【0002】
米国政府は本発明において一定の権利を有し得るものである。この研究は米国エネルギー省の契約DE−FC36−04GO14282及び米国国立科学財団IGERT認可番号DGE−0221664によって部分的に援助された。
【0003】
本発明はナノ多孔性炭素組成物の分野に関する。本発明は炭素材料化学の分野にも関連する。
【背景技術】
【0004】
薄膜は、ガス、水、生物流体、有機及び無機化学物質の精製を含む多様な用途に工業的に使用される。このような薄膜としては、種々の理由により重合体レジンを含むものが本
技術分野で広く使用されている。
【0005】
しかしながら、重合体膜には一定の制約がある。例えば、通常、重合体膜の選択性が増加するにつれて膜の透過性は減少する。Robeson,L.M.,J.Membr.Sci.1991,62,165。重合体材料はまた極端な熱又は化学的状態下では安定性を失うことも知られている。また、重合体膜を分離に使用する際、分離ガス及び流体は重合体膜を分解したり、膜を汚染することがある。
【0006】
重合体レジンに比べ、炭素は高温及び厳しい環境においてより高い熱安定性及び化学的安定性を有する。また、塩素及び極端なpHによって重合体膜を損傷することもある。重合体膜にはしばしば開孔率において制限があり、結果として流動抵抗が高くなりエネルギー必要量が増加する。さらに、重合体膜中で均一の開孔率を得ることは困難である。
【0007】
一方、燻しシリカ(Merkel,T.C;Freeman,B.D.;Spontak,R.J.;He,Z.;Pinnau,I.;Meakin,P.;Hill,A.J.,Science,2002,296,519)又はゼオライト粒子を重合体マトリックスに組み入れた重合体ナノ複合体材料膜も知られており、この膜では純粋な重合体膜に比べ小さな気体(例、CO2又はH2)に対する大きな有機分子の膜透過性及び分離が改良されている。しかしながら、複合体膜は、重合体と粒子の間に望ましい接着を得る困難性及び一様な粒子拡散を得る困難性のため使用が阻まれる。このほか重合体/セラミック複合体の熱及び化学的安定性は重合体膜と類似しており、従って同じ欠点を有する。
【0008】
また、膜製造に使用されるもう一つの材料は結晶ゼオライトである。しかしながら、ゼオライトは結晶性質のため亀裂が入りやすいので加工が困難である。さらに、一般的に高い透過流束を生成するために必要とされる薄いゼオライト膜を形成することも困難である。
【0009】
ナノ多孔性炭素膜は重合体前駆物質の熱分解によって合成され、この重合体前駆物質は非グラファイト化天然重合体及び合成重合体の双方を指す。重合体前駆物質は脆弱なため一般的にマクロ多孔性支持体に利用される(Strano M.S.and Foley,H.C.AIChE Journal,2001 47:66−78)。炭素膜は一般的に40〜50マイクロメーターの厚さで平面状と管状の双方の形状で製造される(Rajagopalan,R.and Foley,H.C.Materials Research Society 2003)。
【0010】
炭素膜の一般的な重合体前駆物質はポリ−フルフリルアルコール、塩化ポリビニリデン、塩化ポリビニル(PVC)、ポリアクリルニトリル(PAN)、セルロース、カプトン、フェノールホルムアルデヒド、フェノール樹脂、パーフルオロアルコキシ(PFA)及び ポリイミドを含む(Shiflett,M.B.and Foley,H.C.,Journal of Membrane Science,2000,179:275−282;Saufi,S.M.and Ismail,A.F.Carbon 2004 42(2):241−259)。炭素膜合成方法には課題が残っており、その課題には支持膜が約20マイクロメーターよりも厚いという膜の厚さの制限、膜中の亀裂の形成、結果として得られる膜の孔サイズの制御、及び炭素膜前駆物質が一般的に有機材料に制限されるという課題が含まれる。
【0011】
したがって、本技術分野では亀裂がなく同時に調節可能な孔サイズ及び広い表面面積を持つ薄いナノ多孔性膜が明らかに必要とされている。そのような組成物及び膜の合成方法もまた必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、適切なナノ多孔性組成物をつくる課題に答えるため、複数のナノ細孔を含む粘着性炭素質組成物を有する膜を開示するものであり、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満である。
【0013】
、支持体に近接する無機炭素含有前駆物質を処理して、無機炭素含有前駆物質から実質的に全ての非炭素種を除去するものである処理する工程を有する方法も提供され、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満である。
【0014】
さらに、複数のナノ細孔を含む炭素質膜を有する装置が提供され、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数的理論方法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であり、前記炭素質膜は支持体に近接している。
【0015】
概要及び添付の詳細な説明は、例示的及び説明なものであり、添付の特許請求の範囲で定義された発明を限定するものではない。本明細書に提供されている発明の詳細な説明を考慮すると当業者であれば本発明の他の態様があることも明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本開示の一部を成す添付図面及び実施例と併せて以下の詳細な説明を参照することによって、本発明はより容易に理解されるれあろう。本発明は本明細書に記載され及び/又は示される特定の装置、方法、用途、状態、パラメーターに制限されず、本明細書にて使用される専門用語は特定の実施形態を例示する目的のみのためであるということが理解され、特許請求の範囲に記載されている発明を限定するものではない。また、添付された請求項を含んむ明細書に使用されるように、文中において明らかに明言されていなければ、単数形「a」、「an」及び「the」は複数形を含み、特定の数値の参照は少なくともその特定の数値を含む。本明細書にて使用される複数形の言葉は1よりも大きいことを意味する。数値の範囲が表現される時、別の実施形態は1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に数値が「約」という先行詞を使用して概数として表現される時、特定の値は別の実施形態をつくると理解されるだろう。全ての範囲は包含的であり組み合わせも可能である。
【0017】
明確にするため本明細書の別個の実施形態において記載された本発明の複数の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されることもある。逆に、簡潔にするため単一の実施形態中に記載された本発明の様々な特徴は、別々に又はあらゆる副次的な組み合わせで提供されることもある。また、ある範囲で述べられた値に対する参照はその範囲内の各々及び全ての値を含むものである。
【0018】
複数のナノ細孔を有する粘着性炭素質組成物を含む膜が提供される。前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満である。
【0019】
粘着性炭素質組成物は炭化物、炭窒化物、又はそれらの任意の組み合わせに由来することが特徴づけられる。場合によっては、粘着性炭素質組成物は無秩序な微小構造を持つことが特徴づけられる。
【0020】
複数のナノ細孔は実質的に長尺な孔であることが特徴づけられる。他の実施形態において、複数のナノ細孔は実質的に円柱状の形状であることが特徴づけられる。ある場合には、複数のナノ細孔は長尺な孔及び円柱状のナノ細孔の両方を含む。適切なナノ細孔は孔サイズの分布が一様である。
【0021】
複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約3nm未満、又はある実施形態において約1nm未満である。
【0022】
浸透性は以下のように計算された。浸透Kは
【0023】
【数1】
【0024】
として定義され、Δpは膜上の圧力勾配であり、Jはガス流束である。膜層を横切る流量に対する抵抗性は
【0025】
【数2】
【0026】
として定義され、膜コーティングあり及びなしの塩素化支持膜(例:Sterlitech(商標))を通るガス流量抵抗の差:RCDC=Rwith−Rwithoutとして評価された。したがって、膜層の浸透は
【0027】
【数3】
【0028】
として評価された。浸透性PはP=L・Kという確立された従来の式にしたがって表現され、Lは活性層の厚さである。この分析において、粘着炭素質組成物は約1バレル(Barrer)〜500バレル(1バレル=7.5005x10−15m2s−1kPa−1)又は約50バレル〜約200バレル、又は約100バレル〜約150バレルの範囲の浸透性を持つことが特徴づけられる。組成物の浸透性は使用者の必要に応じて変化させることが可能である。
【0029】
無機炭素含有前駆物質から実質的に全ての非炭素種を除去するため、支持体に近接する無機炭素含有前駆物質を処理する工程を含む方法もまた提供され、複数のナノ細孔を有する支持ナノ多孔性炭素質膜を生成するため、無機炭素含有前駆物質は支持体に近接し、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満である。
【0030】
本発明の方法はまた無機炭素含有前駆物質の処理前に支持体に近接して無機炭素含有前駆物質を配置する工程を含むことも可能である。そのような配置は処理前に化学蒸着、物理蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、又はそれらの任意の組み合わせによって適切に達成されることが可能である。これらの及び他の配置技術は当業者に周知である。
【0031】
複数のナノ細孔は実質的に長尺な孔、又は実質的に形状が円柱状であり、又はそれらの任意の組み合わせとして特徴づけられる。一般的に前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって平均的な横断面の幅が約3nm未満又は約1nm未満である。
【0032】
適切な無機炭素含有前駆物質は炭化物、炭窒化物、又はそれらの任意の組み合わせを含む。適切な炭化物は二元炭化物、三元炭化物、又はそれらの任意の組み合わせを含み、例えばAlfa Aesar,Inc.(www.alfaaesar.com)から商業的に入手可能である。本発明における無機炭素含有前駆物質の適切な使用は無晶形、水晶形、ナノ水晶形、マイクロ水晶形、水晶形、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0033】
適切な無機炭素含有前駆物質は少なくとも1つの金属を含むことが可能である。適切な金属はTi、Zr、Hf、V、Ta、Nb、Mo、W、Fe、Al、Si、B、Ca、Cr、又はそれらの任意の組み合わせを含む。タイタニウム炭化物は特に適切な前駆物質とみなされる。
【0034】
無機炭素含有前駆物質はある立体配置において薄膜又は層として特徴づけられることが可能であり、約5nm〜約1000マイクロメーターの範囲、又は約30nm〜約500マイクロメーターの範囲、又は約300nm〜約100マイクロメーターの範囲、又はさらに約500nm〜約1マイクロメーターの範囲の厚さを適宜有する。約1センチメーターまでの膜の厚さが考慮される。前記無機炭素含有前駆物質は厚い膜でもよいし、又はある実施形態においてはバルク、粉末、粒子形状であることが特徴づけられる。
【0035】
適切な支持体は多孔性であるが、無孔性、又は多孔性及び無孔性材質の組み合わせでさえあることも可能である。適切な支持体は精密濾過基質(Sterlitech Corporation,Kent,米国ワシントン州から入手可能)、及び他の多孔性媒体(例えば、Anodisc(商標)25,Whatman International Ltd,Maidstone,英国)を含む。支持体は組成物において無機質である。1つの適切な支持体組成物は酸化アルミニウム、又はそれに関連する誘導体、例えばAnodisc(商標)25である。
【0036】
適切な処理工程はハロゲン化、加熱、焼結、又はそれらの組み合わせを含む。塩素は特に適切なハロゲンと考慮される。そのような処理は約10℃〜約2000℃の範囲、約100℃〜約1000℃の範囲、又は約300℃〜約700℃の範囲の温度にて実行される。処理はリアクター、加熱炉、他の適切な容器において実行されることが可能である。ある実施形態において、余剰なハロゲンは液化ガストラップ又は当該技術において周知の他のシステムを通した気泡によって集められる。
【0037】
ある実施形態において、開示される方法は支持ナノ多孔性炭素質膜を冷却する工程を含む。冷却は温度勾配、流体、熱シンク、又はそれらの任意の組み合わせに支持ナノ多孔性炭素質膜を曝す工程を適宜含む。本発明はまた開示される方法によって提供される支持ナノ多孔性炭素質膜を含む。
【0038】
本発明はまた装置を提供する。前記装置は複数のナノ細孔を有する炭素質膜を含み、複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であり、炭素質膜は支持体に近接する。
【0039】
適切な炭素質膜は無機炭素含有前駆物質に由来する。適切な複数のナノ細孔の横断面の幅及び特徴が記載されるように、適切な無機炭素含有前駆物質が本明細書の各箇所に記載される。無機炭素含有前駆物質は物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、又はそれらの任意の組み合わせによって支持体に近接するように適宜配置される。
【0040】
本明細書で提供される適切な装置は、分離、濾過、精製、吸着、篩過、又はそれらの任意の組み合わせを行なうことが可能であり、さらに、原子、イオン、分子、タンパク質、マクロ分子、生物学的分子、ガス、流体、及び同様のものに適用される。いかなる特定の動作理論に縛られないで、そのような装置は、濾過、吸着、分離、精製、篩過、又はそれらの任意の組み合わせを行なうことにより機能することが考えられる。
【0041】
1つの制限されない例として、支持ナノ多孔性膜を2若しくはそれ以上の異なる種を有する混合物を分離するのに使用することができる。いかなる特定の動作理論に縛られないで、特定の立体配置において、本発明装置は分離される種のサイズの差(例えば、分子、タンパク質、ウィルス、細菌、抗体、組織、細胞、イオン、原子など)又は膜を通して分離される拡散性の差を利用することが想定される。
【0042】
1つの制限されない例において、比較的小さい又は比較的早い拡散率を持つ前記混合物の種は前記混合物の他の種よりも速く膜を動き、よってそれを基に分離可能かもしれない。適切な膜の支持体は各応用の必要に応じて、多孔性または無孔性であってもよい。本発明装置は分離装置の中でも有用であり、例えば、本発明装置は水試料から不純物を取り除くのに使用されることが可能であり、その水は人間の飲料として安全になる。
【0043】
他の実施形態において、本発明装置は、混合物の組成物物が通る−効率的な静止吸着媒体である−多孔性炭素膜に対する組成物物の親和性の差を基に混合物中の組成物物を分離、同定、又は精製するのに使用されることが可能である。代替的な実施形態において、装置のガス、流体、又は他の可動媒体の混合組成物物に対して親和性の差に基づいた分離をするため、多孔性炭素にガス、流体、又は他の可動媒体を充満させることが想定される。そのような装置では2若しくはそれ以上の興味のある組成物物を含む混合物の分離が可能であることが想定される。本明細書の他の箇所で言及されるように、膜支持体は特定の用途の必要に応じて多孔性又は無孔性でありうる。制限されない例において、多孔性支持体は濾過用に使用されることが可能である。無孔性支持体は電極、触媒支持体、又は他の適切な用途において使用されることが可能である。
【0044】
本発明装置は電気化学的細胞又は電極に使用されることが想定され、そのような用途は本発明の膜の比較的広い表面積をうまく活用する。本装置はまた触媒支持体として使用されることも可能であり、本発明装置の広い表面積は触媒が留まり本装置に入る反応種に反応する広い場所を提供することが期待される。
【0045】
本発明装置はまたある立体配置において、流体から水を吸収することができ、いかなる特定の動作理論に縛られないで、流体が膜に沿い、横切り、又は通じて移動するにつれ水が膜の表面に吸収されるように本装置は形成される。
【0046】
いずれにしても、個々の用途及び処理される又は分離される個々の混合物に適するように、当業者が本発明の膜の孔サイズ及び厚さを最適化することが想定される。
【0047】
実施例及び図示される実施形態
以下の実施例は、典型的な実施例のみを示したものであり、本発明の範囲を必ずしも限定するものではない。
【実施例1】
【0048】
実施例1:試料は図1の模式図に従って作成した。2つの多孔性セラミックの基質をCDC薄膜を支持するのに使用した。1つは多孔性精密濾過基質であり(Sterlitech Corporation,Kent,米国ワシントン州)、直径47mm及び厚さ2.5mmであった。2つ目は(Anodisc(商標)25,Whatman International Ltd,Maidstone,英国)直径25mm及び厚さ0.08mmを有した。無機炭素含有前駆物質をスパッタリングする前に加熱率5℃/分で5分間空気中にて600℃まで基質を加熱することによってAnodisc(商標)25基質の周りのポリプロリレン環を取り除いた。
【0049】
およそ500nm層のTiCをマグネトロンスパッタリングによって基質に蒸着させた。Wendler,B.;Danielewski,M.;Przybylski,K.;Rylski,A.;Kaczmarek,L.;Jachowicz,M.,Journal of Materials Processing Technology,2006,175,427.スパッタリング中に鋼線を使用し回転テーブルにセラミック支持膜を接着させた。蒸気チャンバーは約10−6Torr残圧に圧縮した。回転テーブルのモータードライブを0.3rad/sの角速度で作動させた。アルゴンを蒸気チャンバーに0.18sccmの流入速度で導入し、2x10−3Torrの平衡圧を得た。4つの全てのマグネトロンを放出するのに3.0kWの出力を使用した。
【0050】
スパッタリングがはじまった後、全圧力が増加しはじめるまでアセチレンをチャンバーに導入した。840秒後、マグネトロンのスイッチを消し、Ar及びC2H2の流入をゼロに減少させ、真空チャンバーをゆっくり換気した。
【0051】
CDC合成のため、TiC粉末(Alfa Aesar,粒子サイズ2マイクロメーター)又はTiC塗布Anodisc(商標)25ディスクを直径1インチの水平な石英加熱管に配置し、40sccmの流入速度で25℃2時間Arによって浄化し、次に20sccmの流入速度で350℃30分間塩素化した。より大きなTiC塗布Sterlitech(商標)ディスクはより広い(2.5インチ)水平加熱管に配置し、40sccmの流入速度で25℃2時間Arによって浄化した。その後温度を20時間120℃まで上昇させ、前記システムから吸収された酸素を取り除いた。この後20sccmの流入速度で350℃30分間塩素化を続けた。簡単な塩素化反応は以下に記載される(Yushin,G.;Gogotsi,Y.;Nikitin,A.,Carbide Derived Carbon,In Nanomaterials Handbook;Gogotsi,Y.,Ed.;CRC Press,2006;p237;Dash,R.K.;Chmiola,J.;Yushin,G.N.;Gogotsi,Y.;Laudisio,G.;Singer,J.;Fischer,J.E.;Kucheyev,S.Carbon,2006,44,2489):
TiC(s)+2Cl2(g)=C(s)+TiCl4(g)
【0052】
合成CDC薄膜をArの流入下で室温まで冷却し、特性解析のため取り除いた。大量生産の可能性に合わせるため比較的低い塩素化の温度を使用した。CDC膜を通しての流動をよく理解するために、Sterlitech(商標)支持体を同じ条件で塩素化した。
【0053】
電子顕微鏡及びエネルギー分散スペクトロスコピー(EDS)をEDAX(US)EDSシステムを備えたFEI(US)XL30環境制御型走査型電子顕微鏡を使用し20kVで行った。−195.8℃でアルゴン吸収剤とともにQuantachrome(US)Autosorb−1を使用しガス吸着分析がされた。
【0054】
CDCの孔サイズ分布はQuantachromeのデータ整理ソフトウェア(バージョン1.27)によって提供される窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析(non−local density functional theory:NLDFT)を使用して決定した。Ravikovitch,P.I.;Vishnyakov,A.;Neimark,A.V.,Physical Review E,2001,6401.ラマン分析を514nm(Arイオンレーザー)の励起波長とともにRenishaw(UK)1000/2000マイクロ−スペクトロメーターを使用して行った。透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscopy:TEM)分析はGatan GIFイメージングフィルターを装備し200kVの加速電圧で操作する顕微鏡(JEOL 2010F、日本)で行った。TEM試料はCDC塗布を掻爬し、レース状の炭素を塗布した銅のグリッド(200メッシュ)上に薄片を蒸着させることによって作成した。
【0055】
炭素膜を通るガス浸透を確認するため、窒素ガスを膜システムに通した。初めに窒素ガスを炭素層に通し、その後CDC層間剥離を避けるためにマクロ多孔性支持層に通した。膜をシリコン接着剤でガス線と連結するようにおさまるガラスに接着させた。漏出をモニターするため全アセンブリを常圧下で水槽に浸した。窒素ガスをまたCDC層を持たない塩素化Sterlitech(商標)膜を通し、同一状態で処理されるSterlitech(商標)膜支持体の透過度を決定した。
【0056】
平面及び断面のSEM分析を前記処理過程の各段階の膜で行った。無処理のSterlitech(商標)及びAnodisc(商標)25基質のいずれもディスク各面の孔サイズが異なり非対称である。Anodisc(商標)25の円柱状の孔の直径は試料の片側では約50nmであるのに対して他側は約200nmに増加した(図2)。焼結セラミック粒子間の空隙がSterlitech(商標)膜の孔を形成した(図示せず)。それらの形状は不規則であって、孔サイズ分布が広範囲にわたりSEMを使用して直径を計算するのは困難であった。平均の腔はさらなるTiC蒸着に使用される平滑な側面は約150nm、反対側の面は約500nmのようであった。
【0057】
スパッタリングのされたTiC薄膜(図3a,3b)は時折表面上に小さなTiC球を形成しながら(差し込み図、図3a)両方の多孔性ディスク上に連続層を形成した(Anodisc(商標)25試料のみが示されている)。TiC層の厚さはSEMによって決定されたように0.5マイクロメーターであった(図3b)。CDCのエネルギー分散スペクトロスコピー(EDS)によって約1%以下のTiが薄膜に残存しているということが示された。TiC−CDC表面(図3c)及び破砕横断面(図3d)のSEM像は亀裂及び層間剥離のない膜を示す。塗布物の厚さは塩素化中に変化せず(図3b、図3d)CDC形成中に炭化物の形状が保存されることを確認した。
【0058】
さらに付け加えると、約7nmの平均孔サイズとともに、狭い孔サイズ分布を観察した。図4を参照。TiC塗布セラミック膜は窒素ガスに透過性がないが、CDC塗布膜は多くの窒素ガスを通す。図5を参照。
【実施例2】
【0059】
実施例2:ナノ多孔性膜の合成のため、マグネトロンスパッタリング技術を使用し一様に亀裂のないタイタニウム炭化物の薄膜を多孔性アルミニウムディスク、Anodisc(商標)25(Whatman International Ltd,Maidstone,英国)に加えた。薄膜の厚さは約0.5マイクロンであり、その厚さは走査型電子顕微鏡によって決定された。図3bを参照。
【0060】
塗布ディスクを水平石英加熱管の加熱帯に置いた。石英管の内径は25mmであった。管を60sccmで30分間Arで浄化した後、約30℃/分の速度で望ましい温度に達するまで加熱した。温度が一旦400℃に達し安定化すると、Arの流入を停止し、20sccmの速度でCl2が流入する3時間の塩素化を開始した。結晶化した塩化金属を加熱帯の出口の冷却液化装置で集めた。塩素化過程完了後、孔から残余塩化金属を取り除くため試料をArの流入下で冷却し、さらなる分析のため試料を取り出した。空気の逆流を避けるため、排気管を硫酸で充満した気泡管に連結した。
【0061】
エネルギー分散スペクトロスコピー(EDS)によって塩素化後のタイタニウムの完全な除去を確認した。表Aを参照。
【0062】
【表1】
【0063】
表A:3つの主要な炭素薄膜合成段階の元素組成物のエネルギー分散スペクトロスコピー結果。結果によるとタイタニウムは薄膜から根本的に除去された。結果は25kV加速電圧を使用して得られ、四捨五入して原子%の概数で表示した。*のマークはAnodisc(商標)25支持膜から観察されたシグナルである。
【0064】
ラマンマイクロスペクトロスコピーによって炭化物の炭素への変換がさらに確認された。図6aを参照。ラマンマイクロスペクトロスコピーを50x対物レンズ及び514nmアルゴンイオンレーザーを使用して用い、一般的に炭素の存在に伴うD及びGバンドピークを測定した。TEMによる検査によってCDC層の無秩序な微小構造を明らかにした。図6bを参照。
【実施例3】
【0065】
実施例3:ナノ多孔性炭素膜は1000℃で焼結した3mmの熱さのTi3SiC2セラミックを塩素化することによって作成した。塗布ディスクを水平石英加熱管の加熱帯に配置した。石英管は内径が22mmであった。管を約60sccmで30分間Arで浄化した後、約30℃/分の速度で1000℃に達するまで加熱した。一旦温度が1000℃に達し安定化すると、Arの流入を停止し、20sccmの速度でCl2が流入する4時間の塩素化を開始した。結晶化した塩化金属を加熱帯の出口の冷却液化装置で集めた。塩素化過程完了後、孔から残余塩化金属を取り除くため試料をArの流入下で冷却し、さらなる分析のため試料を取り出した。空気の逆流を避けるため、排気管を硫酸で充満した気泡管に連結した。
【0066】
濾過実験を生成親水性自立膜上で行った。CDC膜を(およそ1cm2開口範囲)は2つの開放端を持つプラスチック管の間で接着させた。管の上端部を染色液で満たし、1.5barまで圧力をかけた。266及び235の分子量の2つの色素を選んだ。両方の色素の濾過に成功した(溶液を精製するのに成功した)。約40 l・m−2・h−1の流入率を記録した。図7に見られるように、合成膜によるOrange−11色素(組成物:C15H11NO2)(図7a)及びBlue−14色素(組成物:C16H14NO2)(図7b)の濾過は効率的であった。
【実施例4】
【0067】
実施例4:焼結Ti3SiC2、15x15x3mmのバルク部分を5分間20sccmの塩素ガス流入率のもとで塩素化し、バルク炭化物上のCDCの薄い塗布を生成した(図8)。NaCl及びKClの3.0M溶液を組み合わせ、混合液を(NaCl及びKCl両方の溶液)を作った。ピペットを使用し、NaCl/KCl混合物の一滴をCDC薄膜の中央に置き、自然乾燥させた。一旦乾燥すると、試料をEDS検出器を備えたFEIXL−30電界放射型SEMで観察した。EDSをスポットサイズ3の20kVで行った。EDS分析は乾燥滴の外環におけるナトリウム及びカリウム原子の空間分離を明らかにした(図9)。塩化ナトリウムは塩化カリウムよりも前記滴の最初の位置からより遠くに拡散した(図9a,9b)。
【実施例5】
【0068】
実施例5:実施例4で記載された試料をこの実験にも使用した。ポリスチレンによって封入した2つの蛍光色素を含む混合溶液の一滴をCDCの表面に落とし、自然乾燥させた。2つのポリスチレン封入色素はポリスチレンによって封入された0.90マイクロメーターの球を形成する青の蛍光色素及びポリスチレンによって封入された0.33マイクロメーターの球を形成するピンクの蛍光色素であった。1%固体を含む両方の蛍光水性粒子溶液はBangs Laboratory,Fishers,米国インディアナ州の製品であった。
【0069】
滴が完全に乾燥した後、UVフィルター補正光学顕微鏡(Zeiss,Thornwood,米国ニューヨーク州)を使用し観察した。20x対象レンズを使用して、粒子分離を乾燥滴の外端に沿って見た(図10)。ピンクの色素を有する小さい粒子ほど、青の色素を有する大きな粒子よりもCDC薄膜にそってさらに遠くへ拡散した。
【実施例6】
【0070】
実施例6:NPC膜の合成には、Sterlitech Corporationから得た、直径47mm及び2.5mm厚さの47M014多孔性基質使用し実施例1と同じ手順を踏んだ。これらの基質を収めるため、石英管のサイズを内径約70mmに増加させ、Ar浄化時間を約60sccmで約6時間に増加させ、その後約400℃で3時間の塩素化を行った。Cl2を約30sccmの速さで流入させた。塩素化過程完了後、孔から残余金属の塩素を取り除くため試料をAr流入下で冷却し、さらなる分析のため試料を取り出した。
【0071】
CDC膜を通るガス浸透のばらつきを確認するため、アルゴン、ヘリウム、窒素ガス、メタンの各々を膜システムに通した。初めに各々のガスを炭素層に通して、マクロ多孔性支持層に排気した。圧力測定器を吸気口に連結し、電気流量計を膜の吸気口と排気口の両方に配置した。シリコン接着剤でガス線と連結するように取り付けられたガラスに膜を接着させた。漏出をモニターするため膜全体、シリコン、ガラスアセンブリを水槽に浸した。ガスをまた無処理及び蒸着炭素層なしで塩素化したSterlitech(商標)膜に通し、Sterlitech(商標)膜支持体の浸透率を決定した。無処理のSterlitech(商標)膜と炭化物又は炭素塗布なしで400℃で3時間塩素化したSterlitech(商標)膜の間でガス浸透の明らかな差を観察した。
【0072】
炭化物を塗布したディスクの塩素化後、炭化物塗布は炭素に変わるが、これは塗布色の視覚的変化によって証明された。(図11)。エネルギー分散スペクトロスコピーを試料が完全に塩素化したかどうかを決定するために使用した。試料には5%未満のTiが見られたのみであり、いかなる作動形態にも縛られないで、層は完全に炭素に変化していた。
【0073】
図12は膜を横切る圧力差に対してプロットした典型的CDC膜の吸入口での各種ガスの流入率を図示する。この特定の実施例において、より高い圧力においてより大きな流入率のばらつきを観察した。塩素化Sterlitech(商標)セラミックは流入に対して抵抗が比較的小さいので(データ参照なし)、ガス流入動態で観察されたばらつきの原因はCDC層であった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
本発明の要旨及び添付の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとさらに理解される。本発明の説明を目的として、図面には本発明の例示的な実施形態が示されているが、本発明は開示された特定の方法、組成物、及び装置に限定されるものではない。また、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【図1】図1(a)は、炭化物由来炭素膜生成の加工の流れの模式図であり、図1(b)は対応する加工段階での典型的な膜の光学像を図示する。
【図2】図2(a)は、多様な多孔質を示し商業的に入手できるAnodisc(商標)無機基質膜(Whatman PLC,www.whatman.com)の光沢のない方の面のSEM顕微鏡写真であり、図2(b)はAnodisc(商標)基質膜の光沢のある方の面のSEM顕微鏡写真である。
【図3】図3(a)は、塩素化前Anodisc(商標)基質上の典型的な約500nm TiCコーティングのSEM顕微鏡上面図写真であり、図3(b)は塩素化前Anodisc(商標)基質膜のSEM顕微鏡横断図写真であり、図3(c)は塩素化後Anodisc(商標)基質膜上TiCコーティングのSEM顕微鏡上面図写真であり、図3(d)は塩素化後Anodisc(商標)基質膜上TiCコーティングのSEM顕微鏡横断図写真である(他の実施例に使用され商業的に入手可能なSterlitech(商標)膜(Sterlitech,Kent,WA,www.sterlitech.com)上に形成されるTiCコーティング及び炭化物由来炭素(carbide−derived carbon:CDC)のコーティングの形態と厚さはAnodisc(商標)基質上に形成されるコーティングに類似する)
【図4】図4は、典型的実施例のTiC−CDCの孔サイズ分布を図示する。孔表面積の相対値は約0.3nm〜約7nmの範囲の直径を有する。
【図5】図5は、層に対する圧力勾配に対応する典型的多孔性CDC層にわたる窒素ガスの流束を図示する。
【図6】図6は、典型的塩素化TiC膜及び粉末のラマンスペクトル(図6(a))及びTEM顕微鏡写真(図6(b))を図示し、炭化物由来炭素膜の無秩序な構造を示す。
【図7】図7は、(図7a)ディスパースオレンジ−11(Disperse Orange−11:分子式C15H11NO2:Sigma−Aldrichから入手可能、www.sigmaaldrich.com)色素溶液、及び(図7b)ディスパース青―14(Disperse Blue−14:C16H14NO2:Sigma−Aldrich)色素溶液を典型的な比較的厚いCDC膜を通して濾過したものを図示する。
【図8】図8は、炭化物バルク上の比較的薄い典型的CDC膜の大きさと形状を図示する。
【図9】図9は、(図9a)Ti3SiC2前駆物質から生成される典型的炭素膜の表面上にて乾燥したNaCl/KCl液滴の外環におけるカリウム及びナトリウムKライン強度のEDS線走査(6つの線の平均)を図示し、及び(図9b)図9aに示される平均データを得るために取られた線走査の位置を示すSEM像である。
【図10】図10は、Ti3SiC2前駆物質から生成された(最初の混合に蛍光ピンク及び青色素が使用された)典型的炭素膜表面上の乾燥した色素溶液滴末端の蛍光顕微鏡写真を図示するものであり、色素分離がグレイスケール像にて明らかである。
【図11】図11は、入手時のままのSterlitech(商標)セラミック膜(図の左部分)、TiC被覆Sterlitech(商標)セラミック膜(図の中央部分)、及びTiC被覆膜の塩素化によって得られたCDC薄層に被覆されたSterlitech(商標)セラミック膜(図の右部分)を図示する。
【図12】図12は、圧力差に対応する典型的CDC被覆Sterlitech(商標)セラミック膜を通した様々なガス浸透を図示するものであり、流量率の変化はより高い圧力において明らかである。
【技術分野】
【0001】
本願は2006年5月12日に出願された米国特許仮出願第60/799,980号明細書に対して優先権を主張し、この参照によりその全体が本明細書に取り込まれるものである。
【0002】
米国政府は本発明において一定の権利を有し得るものである。この研究は米国エネルギー省の契約DE−FC36−04GO14282及び米国国立科学財団IGERT認可番号DGE−0221664によって部分的に援助された。
【0003】
本発明はナノ多孔性炭素組成物の分野に関する。本発明は炭素材料化学の分野にも関連する。
【背景技術】
【0004】
薄膜は、ガス、水、生物流体、有機及び無機化学物質の精製を含む多様な用途に工業的に使用される。このような薄膜としては、種々の理由により重合体レジンを含むものが本
技術分野で広く使用されている。
【0005】
しかしながら、重合体膜には一定の制約がある。例えば、通常、重合体膜の選択性が増加するにつれて膜の透過性は減少する。Robeson,L.M.,J.Membr.Sci.1991,62,165。重合体材料はまた極端な熱又は化学的状態下では安定性を失うことも知られている。また、重合体膜を分離に使用する際、分離ガス及び流体は重合体膜を分解したり、膜を汚染することがある。
【0006】
重合体レジンに比べ、炭素は高温及び厳しい環境においてより高い熱安定性及び化学的安定性を有する。また、塩素及び極端なpHによって重合体膜を損傷することもある。重合体膜にはしばしば開孔率において制限があり、結果として流動抵抗が高くなりエネルギー必要量が増加する。さらに、重合体膜中で均一の開孔率を得ることは困難である。
【0007】
一方、燻しシリカ(Merkel,T.C;Freeman,B.D.;Spontak,R.J.;He,Z.;Pinnau,I.;Meakin,P.;Hill,A.J.,Science,2002,296,519)又はゼオライト粒子を重合体マトリックスに組み入れた重合体ナノ複合体材料膜も知られており、この膜では純粋な重合体膜に比べ小さな気体(例、CO2又はH2)に対する大きな有機分子の膜透過性及び分離が改良されている。しかしながら、複合体膜は、重合体と粒子の間に望ましい接着を得る困難性及び一様な粒子拡散を得る困難性のため使用が阻まれる。このほか重合体/セラミック複合体の熱及び化学的安定性は重合体膜と類似しており、従って同じ欠点を有する。
【0008】
また、膜製造に使用されるもう一つの材料は結晶ゼオライトである。しかしながら、ゼオライトは結晶性質のため亀裂が入りやすいので加工が困難である。さらに、一般的に高い透過流束を生成するために必要とされる薄いゼオライト膜を形成することも困難である。
【0009】
ナノ多孔性炭素膜は重合体前駆物質の熱分解によって合成され、この重合体前駆物質は非グラファイト化天然重合体及び合成重合体の双方を指す。重合体前駆物質は脆弱なため一般的にマクロ多孔性支持体に利用される(Strano M.S.and Foley,H.C.AIChE Journal,2001 47:66−78)。炭素膜は一般的に40〜50マイクロメーターの厚さで平面状と管状の双方の形状で製造される(Rajagopalan,R.and Foley,H.C.Materials Research Society 2003)。
【0010】
炭素膜の一般的な重合体前駆物質はポリ−フルフリルアルコール、塩化ポリビニリデン、塩化ポリビニル(PVC)、ポリアクリルニトリル(PAN)、セルロース、カプトン、フェノールホルムアルデヒド、フェノール樹脂、パーフルオロアルコキシ(PFA)及び ポリイミドを含む(Shiflett,M.B.and Foley,H.C.,Journal of Membrane Science,2000,179:275−282;Saufi,S.M.and Ismail,A.F.Carbon 2004 42(2):241−259)。炭素膜合成方法には課題が残っており、その課題には支持膜が約20マイクロメーターよりも厚いという膜の厚さの制限、膜中の亀裂の形成、結果として得られる膜の孔サイズの制御、及び炭素膜前駆物質が一般的に有機材料に制限されるという課題が含まれる。
【0011】
したがって、本技術分野では亀裂がなく同時に調節可能な孔サイズ及び広い表面面積を持つ薄いナノ多孔性膜が明らかに必要とされている。そのような組成物及び膜の合成方法もまた必要とされている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
この発明は、適切なナノ多孔性組成物をつくる課題に答えるため、複数のナノ細孔を含む粘着性炭素質組成物を有する膜を開示するものであり、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満である。
【0013】
、支持体に近接する無機炭素含有前駆物質を処理して、無機炭素含有前駆物質から実質的に全ての非炭素種を除去するものである処理する工程を有する方法も提供され、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満である。
【0014】
さらに、複数のナノ細孔を含む炭素質膜を有する装置が提供され、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数的理論方法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であり、前記炭素質膜は支持体に近接している。
【0015】
概要及び添付の詳細な説明は、例示的及び説明なものであり、添付の特許請求の範囲で定義された発明を限定するものではない。本明細書に提供されている発明の詳細な説明を考慮すると当業者であれば本発明の他の態様があることも明らかである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本開示の一部を成す添付図面及び実施例と併せて以下の詳細な説明を参照することによって、本発明はより容易に理解されるれあろう。本発明は本明細書に記載され及び/又は示される特定の装置、方法、用途、状態、パラメーターに制限されず、本明細書にて使用される専門用語は特定の実施形態を例示する目的のみのためであるということが理解され、特許請求の範囲に記載されている発明を限定するものではない。また、添付された請求項を含んむ明細書に使用されるように、文中において明らかに明言されていなければ、単数形「a」、「an」及び「the」は複数形を含み、特定の数値の参照は少なくともその特定の数値を含む。本明細書にて使用される複数形の言葉は1よりも大きいことを意味する。数値の範囲が表現される時、別の実施形態は1つの特定の値から及び/又は他の特定の値までを含む。同様に数値が「約」という先行詞を使用して概数として表現される時、特定の値は別の実施形態をつくると理解されるだろう。全ての範囲は包含的であり組み合わせも可能である。
【0017】
明確にするため本明細書の別個の実施形態において記載された本発明の複数の特定の特徴はまた、単一の実施形態において組み合わせて提供されることもある。逆に、簡潔にするため単一の実施形態中に記載された本発明の様々な特徴は、別々に又はあらゆる副次的な組み合わせで提供されることもある。また、ある範囲で述べられた値に対する参照はその範囲内の各々及び全ての値を含むものである。
【0018】
複数のナノ細孔を有する粘着性炭素質組成物を含む膜が提供される。前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満である。
【0019】
粘着性炭素質組成物は炭化物、炭窒化物、又はそれらの任意の組み合わせに由来することが特徴づけられる。場合によっては、粘着性炭素質組成物は無秩序な微小構造を持つことが特徴づけられる。
【0020】
複数のナノ細孔は実質的に長尺な孔であることが特徴づけられる。他の実施形態において、複数のナノ細孔は実質的に円柱状の形状であることが特徴づけられる。ある場合には、複数のナノ細孔は長尺な孔及び円柱状のナノ細孔の両方を含む。適切なナノ細孔は孔サイズの分布が一様である。
【0021】
複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約3nm未満、又はある実施形態において約1nm未満である。
【0022】
浸透性は以下のように計算された。浸透Kは
【0023】
【数1】
【0024】
として定義され、Δpは膜上の圧力勾配であり、Jはガス流束である。膜層を横切る流量に対する抵抗性は
【0025】
【数2】
【0026】
として定義され、膜コーティングあり及びなしの塩素化支持膜(例:Sterlitech(商標))を通るガス流量抵抗の差:RCDC=Rwith−Rwithoutとして評価された。したがって、膜層の浸透は
【0027】
【数3】
【0028】
として評価された。浸透性PはP=L・Kという確立された従来の式にしたがって表現され、Lは活性層の厚さである。この分析において、粘着炭素質組成物は約1バレル(Barrer)〜500バレル(1バレル=7.5005x10−15m2s−1kPa−1)又は約50バレル〜約200バレル、又は約100バレル〜約150バレルの範囲の浸透性を持つことが特徴づけられる。組成物の浸透性は使用者の必要に応じて変化させることが可能である。
【0029】
無機炭素含有前駆物質から実質的に全ての非炭素種を除去するため、支持体に近接する無機炭素含有前駆物質を処理する工程を含む方法もまた提供され、複数のナノ細孔を有する支持ナノ多孔性炭素質膜を生成するため、無機炭素含有前駆物質は支持体に近接し、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満である。
【0030】
本発明の方法はまた無機炭素含有前駆物質の処理前に支持体に近接して無機炭素含有前駆物質を配置する工程を含むことも可能である。そのような配置は処理前に化学蒸着、物理蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、又はそれらの任意の組み合わせによって適切に達成されることが可能である。これらの及び他の配置技術は当業者に周知である。
【0031】
複数のナノ細孔は実質的に長尺な孔、又は実質的に形状が円柱状であり、又はそれらの任意の組み合わせとして特徴づけられる。一般的に前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって平均的な横断面の幅が約3nm未満又は約1nm未満である。
【0032】
適切な無機炭素含有前駆物質は炭化物、炭窒化物、又はそれらの任意の組み合わせを含む。適切な炭化物は二元炭化物、三元炭化物、又はそれらの任意の組み合わせを含み、例えばAlfa Aesar,Inc.(www.alfaaesar.com)から商業的に入手可能である。本発明における無機炭素含有前駆物質の適切な使用は無晶形、水晶形、ナノ水晶形、マイクロ水晶形、水晶形、又はそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0033】
適切な無機炭素含有前駆物質は少なくとも1つの金属を含むことが可能である。適切な金属はTi、Zr、Hf、V、Ta、Nb、Mo、W、Fe、Al、Si、B、Ca、Cr、又はそれらの任意の組み合わせを含む。タイタニウム炭化物は特に適切な前駆物質とみなされる。
【0034】
無機炭素含有前駆物質はある立体配置において薄膜又は層として特徴づけられることが可能であり、約5nm〜約1000マイクロメーターの範囲、又は約30nm〜約500マイクロメーターの範囲、又は約300nm〜約100マイクロメーターの範囲、又はさらに約500nm〜約1マイクロメーターの範囲の厚さを適宜有する。約1センチメーターまでの膜の厚さが考慮される。前記無機炭素含有前駆物質は厚い膜でもよいし、又はある実施形態においてはバルク、粉末、粒子形状であることが特徴づけられる。
【0035】
適切な支持体は多孔性であるが、無孔性、又は多孔性及び無孔性材質の組み合わせでさえあることも可能である。適切な支持体は精密濾過基質(Sterlitech Corporation,Kent,米国ワシントン州から入手可能)、及び他の多孔性媒体(例えば、Anodisc(商標)25,Whatman International Ltd,Maidstone,英国)を含む。支持体は組成物において無機質である。1つの適切な支持体組成物は酸化アルミニウム、又はそれに関連する誘導体、例えばAnodisc(商標)25である。
【0036】
適切な処理工程はハロゲン化、加熱、焼結、又はそれらの組み合わせを含む。塩素は特に適切なハロゲンと考慮される。そのような処理は約10℃〜約2000℃の範囲、約100℃〜約1000℃の範囲、又は約300℃〜約700℃の範囲の温度にて実行される。処理はリアクター、加熱炉、他の適切な容器において実行されることが可能である。ある実施形態において、余剰なハロゲンは液化ガストラップ又は当該技術において周知の他のシステムを通した気泡によって集められる。
【0037】
ある実施形態において、開示される方法は支持ナノ多孔性炭素質膜を冷却する工程を含む。冷却は温度勾配、流体、熱シンク、又はそれらの任意の組み合わせに支持ナノ多孔性炭素質膜を曝す工程を適宜含む。本発明はまた開示される方法によって提供される支持ナノ多孔性炭素質膜を含む。
【0038】
本発明はまた装置を提供する。前記装置は複数のナノ細孔を有する炭素質膜を含み、複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であり、炭素質膜は支持体に近接する。
【0039】
適切な炭素質膜は無機炭素含有前駆物質に由来する。適切な複数のナノ細孔の横断面の幅及び特徴が記載されるように、適切な無機炭素含有前駆物質が本明細書の各箇所に記載される。無機炭素含有前駆物質は物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、又はそれらの任意の組み合わせによって支持体に近接するように適宜配置される。
【0040】
本明細書で提供される適切な装置は、分離、濾過、精製、吸着、篩過、又はそれらの任意の組み合わせを行なうことが可能であり、さらに、原子、イオン、分子、タンパク質、マクロ分子、生物学的分子、ガス、流体、及び同様のものに適用される。いかなる特定の動作理論に縛られないで、そのような装置は、濾過、吸着、分離、精製、篩過、又はそれらの任意の組み合わせを行なうことにより機能することが考えられる。
【0041】
1つの制限されない例として、支持ナノ多孔性膜を2若しくはそれ以上の異なる種を有する混合物を分離するのに使用することができる。いかなる特定の動作理論に縛られないで、特定の立体配置において、本発明装置は分離される種のサイズの差(例えば、分子、タンパク質、ウィルス、細菌、抗体、組織、細胞、イオン、原子など)又は膜を通して分離される拡散性の差を利用することが想定される。
【0042】
1つの制限されない例において、比較的小さい又は比較的早い拡散率を持つ前記混合物の種は前記混合物の他の種よりも速く膜を動き、よってそれを基に分離可能かもしれない。適切な膜の支持体は各応用の必要に応じて、多孔性または無孔性であってもよい。本発明装置は分離装置の中でも有用であり、例えば、本発明装置は水試料から不純物を取り除くのに使用されることが可能であり、その水は人間の飲料として安全になる。
【0043】
他の実施形態において、本発明装置は、混合物の組成物物が通る−効率的な静止吸着媒体である−多孔性炭素膜に対する組成物物の親和性の差を基に混合物中の組成物物を分離、同定、又は精製するのに使用されることが可能である。代替的な実施形態において、装置のガス、流体、又は他の可動媒体の混合組成物物に対して親和性の差に基づいた分離をするため、多孔性炭素にガス、流体、又は他の可動媒体を充満させることが想定される。そのような装置では2若しくはそれ以上の興味のある組成物物を含む混合物の分離が可能であることが想定される。本明細書の他の箇所で言及されるように、膜支持体は特定の用途の必要に応じて多孔性又は無孔性でありうる。制限されない例において、多孔性支持体は濾過用に使用されることが可能である。無孔性支持体は電極、触媒支持体、又は他の適切な用途において使用されることが可能である。
【0044】
本発明装置は電気化学的細胞又は電極に使用されることが想定され、そのような用途は本発明の膜の比較的広い表面積をうまく活用する。本装置はまた触媒支持体として使用されることも可能であり、本発明装置の広い表面積は触媒が留まり本装置に入る反応種に反応する広い場所を提供することが期待される。
【0045】
本発明装置はまたある立体配置において、流体から水を吸収することができ、いかなる特定の動作理論に縛られないで、流体が膜に沿い、横切り、又は通じて移動するにつれ水が膜の表面に吸収されるように本装置は形成される。
【0046】
いずれにしても、個々の用途及び処理される又は分離される個々の混合物に適するように、当業者が本発明の膜の孔サイズ及び厚さを最適化することが想定される。
【0047】
実施例及び図示される実施形態
以下の実施例は、典型的な実施例のみを示したものであり、本発明の範囲を必ずしも限定するものではない。
【実施例1】
【0048】
実施例1:試料は図1の模式図に従って作成した。2つの多孔性セラミックの基質をCDC薄膜を支持するのに使用した。1つは多孔性精密濾過基質であり(Sterlitech Corporation,Kent,米国ワシントン州)、直径47mm及び厚さ2.5mmであった。2つ目は(Anodisc(商標)25,Whatman International Ltd,Maidstone,英国)直径25mm及び厚さ0.08mmを有した。無機炭素含有前駆物質をスパッタリングする前に加熱率5℃/分で5分間空気中にて600℃まで基質を加熱することによってAnodisc(商標)25基質の周りのポリプロリレン環を取り除いた。
【0049】
およそ500nm層のTiCをマグネトロンスパッタリングによって基質に蒸着させた。Wendler,B.;Danielewski,M.;Przybylski,K.;Rylski,A.;Kaczmarek,L.;Jachowicz,M.,Journal of Materials Processing Technology,2006,175,427.スパッタリング中に鋼線を使用し回転テーブルにセラミック支持膜を接着させた。蒸気チャンバーは約10−6Torr残圧に圧縮した。回転テーブルのモータードライブを0.3rad/sの角速度で作動させた。アルゴンを蒸気チャンバーに0.18sccmの流入速度で導入し、2x10−3Torrの平衡圧を得た。4つの全てのマグネトロンを放出するのに3.0kWの出力を使用した。
【0050】
スパッタリングがはじまった後、全圧力が増加しはじめるまでアセチレンをチャンバーに導入した。840秒後、マグネトロンのスイッチを消し、Ar及びC2H2の流入をゼロに減少させ、真空チャンバーをゆっくり換気した。
【0051】
CDC合成のため、TiC粉末(Alfa Aesar,粒子サイズ2マイクロメーター)又はTiC塗布Anodisc(商標)25ディスクを直径1インチの水平な石英加熱管に配置し、40sccmの流入速度で25℃2時間Arによって浄化し、次に20sccmの流入速度で350℃30分間塩素化した。より大きなTiC塗布Sterlitech(商標)ディスクはより広い(2.5インチ)水平加熱管に配置し、40sccmの流入速度で25℃2時間Arによって浄化した。その後温度を20時間120℃まで上昇させ、前記システムから吸収された酸素を取り除いた。この後20sccmの流入速度で350℃30分間塩素化を続けた。簡単な塩素化反応は以下に記載される(Yushin,G.;Gogotsi,Y.;Nikitin,A.,Carbide Derived Carbon,In Nanomaterials Handbook;Gogotsi,Y.,Ed.;CRC Press,2006;p237;Dash,R.K.;Chmiola,J.;Yushin,G.N.;Gogotsi,Y.;Laudisio,G.;Singer,J.;Fischer,J.E.;Kucheyev,S.Carbon,2006,44,2489):
TiC(s)+2Cl2(g)=C(s)+TiCl4(g)
【0052】
合成CDC薄膜をArの流入下で室温まで冷却し、特性解析のため取り除いた。大量生産の可能性に合わせるため比較的低い塩素化の温度を使用した。CDC膜を通しての流動をよく理解するために、Sterlitech(商標)支持体を同じ条件で塩素化した。
【0053】
電子顕微鏡及びエネルギー分散スペクトロスコピー(EDS)をEDAX(US)EDSシステムを備えたFEI(US)XL30環境制御型走査型電子顕微鏡を使用し20kVで行った。−195.8℃でアルゴン吸収剤とともにQuantachrome(US)Autosorb−1を使用しガス吸着分析がされた。
【0054】
CDCの孔サイズ分布はQuantachromeのデータ整理ソフトウェア(バージョン1.27)によって提供される窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析(non−local density functional theory:NLDFT)を使用して決定した。Ravikovitch,P.I.;Vishnyakov,A.;Neimark,A.V.,Physical Review E,2001,6401.ラマン分析を514nm(Arイオンレーザー)の励起波長とともにRenishaw(UK)1000/2000マイクロ−スペクトロメーターを使用して行った。透過型電子顕微鏡(Transmission electron microscopy:TEM)分析はGatan GIFイメージングフィルターを装備し200kVの加速電圧で操作する顕微鏡(JEOL 2010F、日本)で行った。TEM試料はCDC塗布を掻爬し、レース状の炭素を塗布した銅のグリッド(200メッシュ)上に薄片を蒸着させることによって作成した。
【0055】
炭素膜を通るガス浸透を確認するため、窒素ガスを膜システムに通した。初めに窒素ガスを炭素層に通し、その後CDC層間剥離を避けるためにマクロ多孔性支持層に通した。膜をシリコン接着剤でガス線と連結するようにおさまるガラスに接着させた。漏出をモニターするため全アセンブリを常圧下で水槽に浸した。窒素ガスをまたCDC層を持たない塩素化Sterlitech(商標)膜を通し、同一状態で処理されるSterlitech(商標)膜支持体の透過度を決定した。
【0056】
平面及び断面のSEM分析を前記処理過程の各段階の膜で行った。無処理のSterlitech(商標)及びAnodisc(商標)25基質のいずれもディスク各面の孔サイズが異なり非対称である。Anodisc(商標)25の円柱状の孔の直径は試料の片側では約50nmであるのに対して他側は約200nmに増加した(図2)。焼結セラミック粒子間の空隙がSterlitech(商標)膜の孔を形成した(図示せず)。それらの形状は不規則であって、孔サイズ分布が広範囲にわたりSEMを使用して直径を計算するのは困難であった。平均の腔はさらなるTiC蒸着に使用される平滑な側面は約150nm、反対側の面は約500nmのようであった。
【0057】
スパッタリングのされたTiC薄膜(図3a,3b)は時折表面上に小さなTiC球を形成しながら(差し込み図、図3a)両方の多孔性ディスク上に連続層を形成した(Anodisc(商標)25試料のみが示されている)。TiC層の厚さはSEMによって決定されたように0.5マイクロメーターであった(図3b)。CDCのエネルギー分散スペクトロスコピー(EDS)によって約1%以下のTiが薄膜に残存しているということが示された。TiC−CDC表面(図3c)及び破砕横断面(図3d)のSEM像は亀裂及び層間剥離のない膜を示す。塗布物の厚さは塩素化中に変化せず(図3b、図3d)CDC形成中に炭化物の形状が保存されることを確認した。
【0058】
さらに付け加えると、約7nmの平均孔サイズとともに、狭い孔サイズ分布を観察した。図4を参照。TiC塗布セラミック膜は窒素ガスに透過性がないが、CDC塗布膜は多くの窒素ガスを通す。図5を参照。
【実施例2】
【0059】
実施例2:ナノ多孔性膜の合成のため、マグネトロンスパッタリング技術を使用し一様に亀裂のないタイタニウム炭化物の薄膜を多孔性アルミニウムディスク、Anodisc(商標)25(Whatman International Ltd,Maidstone,英国)に加えた。薄膜の厚さは約0.5マイクロンであり、その厚さは走査型電子顕微鏡によって決定された。図3bを参照。
【0060】
塗布ディスクを水平石英加熱管の加熱帯に置いた。石英管の内径は25mmであった。管を60sccmで30分間Arで浄化した後、約30℃/分の速度で望ましい温度に達するまで加熱した。温度が一旦400℃に達し安定化すると、Arの流入を停止し、20sccmの速度でCl2が流入する3時間の塩素化を開始した。結晶化した塩化金属を加熱帯の出口の冷却液化装置で集めた。塩素化過程完了後、孔から残余塩化金属を取り除くため試料をArの流入下で冷却し、さらなる分析のため試料を取り出した。空気の逆流を避けるため、排気管を硫酸で充満した気泡管に連結した。
【0061】
エネルギー分散スペクトロスコピー(EDS)によって塩素化後のタイタニウムの完全な除去を確認した。表Aを参照。
【0062】
【表1】
【0063】
表A:3つの主要な炭素薄膜合成段階の元素組成物のエネルギー分散スペクトロスコピー結果。結果によるとタイタニウムは薄膜から根本的に除去された。結果は25kV加速電圧を使用して得られ、四捨五入して原子%の概数で表示した。*のマークはAnodisc(商標)25支持膜から観察されたシグナルである。
【0064】
ラマンマイクロスペクトロスコピーによって炭化物の炭素への変換がさらに確認された。図6aを参照。ラマンマイクロスペクトロスコピーを50x対物レンズ及び514nmアルゴンイオンレーザーを使用して用い、一般的に炭素の存在に伴うD及びGバンドピークを測定した。TEMによる検査によってCDC層の無秩序な微小構造を明らかにした。図6bを参照。
【実施例3】
【0065】
実施例3:ナノ多孔性炭素膜は1000℃で焼結した3mmの熱さのTi3SiC2セラミックを塩素化することによって作成した。塗布ディスクを水平石英加熱管の加熱帯に配置した。石英管は内径が22mmであった。管を約60sccmで30分間Arで浄化した後、約30℃/分の速度で1000℃に達するまで加熱した。一旦温度が1000℃に達し安定化すると、Arの流入を停止し、20sccmの速度でCl2が流入する4時間の塩素化を開始した。結晶化した塩化金属を加熱帯の出口の冷却液化装置で集めた。塩素化過程完了後、孔から残余塩化金属を取り除くため試料をArの流入下で冷却し、さらなる分析のため試料を取り出した。空気の逆流を避けるため、排気管を硫酸で充満した気泡管に連結した。
【0066】
濾過実験を生成親水性自立膜上で行った。CDC膜を(およそ1cm2開口範囲)は2つの開放端を持つプラスチック管の間で接着させた。管の上端部を染色液で満たし、1.5barまで圧力をかけた。266及び235の分子量の2つの色素を選んだ。両方の色素の濾過に成功した(溶液を精製するのに成功した)。約40 l・m−2・h−1の流入率を記録した。図7に見られるように、合成膜によるOrange−11色素(組成物:C15H11NO2)(図7a)及びBlue−14色素(組成物:C16H14NO2)(図7b)の濾過は効率的であった。
【実施例4】
【0067】
実施例4:焼結Ti3SiC2、15x15x3mmのバルク部分を5分間20sccmの塩素ガス流入率のもとで塩素化し、バルク炭化物上のCDCの薄い塗布を生成した(図8)。NaCl及びKClの3.0M溶液を組み合わせ、混合液を(NaCl及びKCl両方の溶液)を作った。ピペットを使用し、NaCl/KCl混合物の一滴をCDC薄膜の中央に置き、自然乾燥させた。一旦乾燥すると、試料をEDS検出器を備えたFEIXL−30電界放射型SEMで観察した。EDSをスポットサイズ3の20kVで行った。EDS分析は乾燥滴の外環におけるナトリウム及びカリウム原子の空間分離を明らかにした(図9)。塩化ナトリウムは塩化カリウムよりも前記滴の最初の位置からより遠くに拡散した(図9a,9b)。
【実施例5】
【0068】
実施例5:実施例4で記載された試料をこの実験にも使用した。ポリスチレンによって封入した2つの蛍光色素を含む混合溶液の一滴をCDCの表面に落とし、自然乾燥させた。2つのポリスチレン封入色素はポリスチレンによって封入された0.90マイクロメーターの球を形成する青の蛍光色素及びポリスチレンによって封入された0.33マイクロメーターの球を形成するピンクの蛍光色素であった。1%固体を含む両方の蛍光水性粒子溶液はBangs Laboratory,Fishers,米国インディアナ州の製品であった。
【0069】
滴が完全に乾燥した後、UVフィルター補正光学顕微鏡(Zeiss,Thornwood,米国ニューヨーク州)を使用し観察した。20x対象レンズを使用して、粒子分離を乾燥滴の外端に沿って見た(図10)。ピンクの色素を有する小さい粒子ほど、青の色素を有する大きな粒子よりもCDC薄膜にそってさらに遠くへ拡散した。
【実施例6】
【0070】
実施例6:NPC膜の合成には、Sterlitech Corporationから得た、直径47mm及び2.5mm厚さの47M014多孔性基質使用し実施例1と同じ手順を踏んだ。これらの基質を収めるため、石英管のサイズを内径約70mmに増加させ、Ar浄化時間を約60sccmで約6時間に増加させ、その後約400℃で3時間の塩素化を行った。Cl2を約30sccmの速さで流入させた。塩素化過程完了後、孔から残余金属の塩素を取り除くため試料をAr流入下で冷却し、さらなる分析のため試料を取り出した。
【0071】
CDC膜を通るガス浸透のばらつきを確認するため、アルゴン、ヘリウム、窒素ガス、メタンの各々を膜システムに通した。初めに各々のガスを炭素層に通して、マクロ多孔性支持層に排気した。圧力測定器を吸気口に連結し、電気流量計を膜の吸気口と排気口の両方に配置した。シリコン接着剤でガス線と連結するように取り付けられたガラスに膜を接着させた。漏出をモニターするため膜全体、シリコン、ガラスアセンブリを水槽に浸した。ガスをまた無処理及び蒸着炭素層なしで塩素化したSterlitech(商標)膜に通し、Sterlitech(商標)膜支持体の浸透率を決定した。無処理のSterlitech(商標)膜と炭化物又は炭素塗布なしで400℃で3時間塩素化したSterlitech(商標)膜の間でガス浸透の明らかな差を観察した。
【0072】
炭化物を塗布したディスクの塩素化後、炭化物塗布は炭素に変わるが、これは塗布色の視覚的変化によって証明された。(図11)。エネルギー分散スペクトロスコピーを試料が完全に塩素化したかどうかを決定するために使用した。試料には5%未満のTiが見られたのみであり、いかなる作動形態にも縛られないで、層は完全に炭素に変化していた。
【0073】
図12は膜を横切る圧力差に対してプロットした典型的CDC膜の吸入口での各種ガスの流入率を図示する。この特定の実施例において、より高い圧力においてより大きな流入率のばらつきを観察した。塩素化Sterlitech(商標)セラミックは流入に対して抵抗が比較的小さいので(データ参照なし)、ガス流入動態で観察されたばらつきの原因はCDC層であった。
【図面の簡単な説明】
【0074】
本発明の要旨及び添付の詳細な説明は、添付の図面と併せて読むとさらに理解される。本発明の説明を目的として、図面には本発明の例示的な実施形態が示されているが、本発明は開示された特定の方法、組成物、及び装置に限定されるものではない。また、図面は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【図1】図1(a)は、炭化物由来炭素膜生成の加工の流れの模式図であり、図1(b)は対応する加工段階での典型的な膜の光学像を図示する。
【図2】図2(a)は、多様な多孔質を示し商業的に入手できるAnodisc(商標)無機基質膜(Whatman PLC,www.whatman.com)の光沢のない方の面のSEM顕微鏡写真であり、図2(b)はAnodisc(商標)基質膜の光沢のある方の面のSEM顕微鏡写真である。
【図3】図3(a)は、塩素化前Anodisc(商標)基質上の典型的な約500nm TiCコーティングのSEM顕微鏡上面図写真であり、図3(b)は塩素化前Anodisc(商標)基質膜のSEM顕微鏡横断図写真であり、図3(c)は塩素化後Anodisc(商標)基質膜上TiCコーティングのSEM顕微鏡上面図写真であり、図3(d)は塩素化後Anodisc(商標)基質膜上TiCコーティングのSEM顕微鏡横断図写真である(他の実施例に使用され商業的に入手可能なSterlitech(商標)膜(Sterlitech,Kent,WA,www.sterlitech.com)上に形成されるTiCコーティング及び炭化物由来炭素(carbide−derived carbon:CDC)のコーティングの形態と厚さはAnodisc(商標)基質上に形成されるコーティングに類似する)
【図4】図4は、典型的実施例のTiC−CDCの孔サイズ分布を図示する。孔表面積の相対値は約0.3nm〜約7nmの範囲の直径を有する。
【図5】図5は、層に対する圧力勾配に対応する典型的多孔性CDC層にわたる窒素ガスの流束を図示する。
【図6】図6は、典型的塩素化TiC膜及び粉末のラマンスペクトル(図6(a))及びTEM顕微鏡写真(図6(b))を図示し、炭化物由来炭素膜の無秩序な構造を示す。
【図7】図7は、(図7a)ディスパースオレンジ−11(Disperse Orange−11:分子式C15H11NO2:Sigma−Aldrichから入手可能、www.sigmaaldrich.com)色素溶液、及び(図7b)ディスパース青―14(Disperse Blue−14:C16H14NO2:Sigma−Aldrich)色素溶液を典型的な比較的厚いCDC膜を通して濾過したものを図示する。
【図8】図8は、炭化物バルク上の比較的薄い典型的CDC膜の大きさと形状を図示する。
【図9】図9は、(図9a)Ti3SiC2前駆物質から生成される典型的炭素膜の表面上にて乾燥したNaCl/KCl液滴の外環におけるカリウム及びナトリウムKライン強度のEDS線走査(6つの線の平均)を図示し、及び(図9b)図9aに示される平均データを得るために取られた線走査の位置を示すSEM像である。
【図10】図10は、Ti3SiC2前駆物質から生成された(最初の混合に蛍光ピンク及び青色素が使用された)典型的炭素膜表面上の乾燥した色素溶液滴末端の蛍光顕微鏡写真を図示するものであり、色素分離がグレイスケール像にて明らかである。
【図11】図11は、入手時のままのSterlitech(商標)セラミック膜(図の左部分)、TiC被覆Sterlitech(商標)セラミック膜(図の中央部分)、及びTiC被覆膜の塩素化によって得られたCDC薄層に被覆されたSterlitech(商標)セラミック膜(図の右部分)を図示する。
【図12】図12は、圧力差に対応する典型的CDC被覆Sterlitech(商標)セラミック膜を通した様々なガス浸透を図示するものであり、流量率の変化はより高い圧力において明らかである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜であって、
複数のナノ細孔を有する粘着性炭素質組成物を有し、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であることを特徴とするものである、前記粘着性炭素質組成物を有する膜。
【請求項2】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は炭化物、炭窒化物、又はそれらの任意の組み合わせに由来するものである。
【請求項3】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は実質的に長尺な孔であることを特徴とするものである。
【請求項4】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は形が実質的に円柱状であることを特徴とするものである。
【請求項5】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約3nm未満であるものである。
【請求項6】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約1nm未満であるものである。
【請求項7】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は一様な孔サイズ分布を有することを特徴とするものである。
【請求項8】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は無秩序な微小構造を有することを特徴とするものである。
【請求項9】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は約1バレル(Barrer)〜約500バレルの範囲で浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項10】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は約50バレル〜約200バレルの範囲で浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項11】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は約100バレル〜約150バレルの範囲で浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項12】
方法であって、
支持体に近接する無機炭素含有前駆物質を処理して、当該無機炭素含有前駆物質から実質的に全ての非炭素種を除去するものである処理する工程を有し、
前記無機炭素含有前駆物質は、前記支持体に近接して位置することにより、複数のナノ細孔を有する支持ナノ多孔性炭素質膜を生成するものであり、
前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であることを特徴とするものである、
方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、この方法は、さらに、
前記無機炭素含有前駆物質の処理前に、化学蒸着、物理蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、又はそれらの任意の組み合わせによって支持体に近接する前記無機炭素含有前駆物質を蒸着する工程を有するものである。
【請求項14】
請求項12記載の方法において、前記複数のナノ細孔は実質的に長尺な孔であることを特徴とするものである。
【請求項15】
請求項12記載の方法において、前記複数のナノ細孔は形が実質的に円柱状であることを特徴とするものである。
【請求項16】
請求項12記載の方法において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約3nm未満であることを特徴とするものである。
【請求項17】
請求項12記載の方法において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約1nm未満であることを特徴とするものである。
【請求項18】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は炭化物、炭窒化物、又はそれらの任意の組み合わせに由来するものである。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記炭化物は2価炭化物、4価炭化物、又はそれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項20】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は無晶形、水晶形、ナノ水晶形、マイクロ水晶形、水晶形、又はそれらの任意の組み合わせを特徴とするものである。
【請求項21】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は少なくとも1つの金属を有するものである。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記金属はTi、Zr、Hf、V、Ta、Nb、Mo、W、Fe、Al、Si、B、Ca、Cr、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【請求項23】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約5nm〜約1000マイクロメーターの範囲の厚さを有することを特徴とするものである。
【請求項24】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約30nm〜約500マイクロメーターの範囲の厚さを有することを特徴とするものである。
【請求項25】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約300nm〜約100マイクロメーターの範囲の厚さを有することを特徴とするものである。
【請求項26】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約500nm〜約1マイクロメーターの範囲の厚さを有することを特徴とするものである
【請求項27】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は粉末状、バルク状、粒子状、又はそれらの任意の組み合わせであることを特徴とするものである。
【請求項28】
請求項12記載の方法において、前記支持体は多孔性である。
【請求項29】
請求項12記載の方法において、前記支持体は無孔性である。
【請求項30】
請求項12記載の方法において、前記支持体は無機質組成物を有するものである。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、前記無機質組成物は酸化アルミニウムを有するものである。
【請求項32】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質を処理する工程はハロゲン化、加熱、焼結、又はそれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約10℃〜約2000℃の範囲の温度で処理されるものである。
【請求項34】
請求項32記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約100℃〜約1000℃の範囲の温度で処理されるものである。
【請求項35】
請求項32記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約300℃〜約700℃の範囲の温度で処理されるものである。
【請求項36】
請求項12記載の方法において、この方法は、さらに、
支持ナノ多孔性炭素質膜を冷却する工程を有するものである。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、前記冷却工程は支持ナノ多孔性炭素質膜を温度勾配、流体、ヒートシンク、又はそれらの任意の組み合わせに曝す工程を有するものである。
【請求項38】
請求項12記載の方法において、この方法によって生成される支持ナノ多孔性炭素質膜である。
【請求項39】
装置であって、
複数のナノ細孔を有する炭素質膜を有し、
前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であることを特徴とするものであり、
前記炭素質膜は直接支持体に近接するものである
装置。
【請求項40】
請求項39記載の装置において、前記炭素質膜は無機炭素含有前駆物質に由来するものである。
【請求項41】
請求項40記載の装置において、前記無機炭素含有前駆物質は物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、又はそれらの任意の組み合わせによって支持体に直接近接し蒸着されるものである。
【請求項42】
請求項39記載の装置において、前記支持体は多孔性、無孔性、又はそれらの任意の組み合わせである。
【請求項43】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約3nm未満であることを特徴とするものである。
【請求項44】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約1nm未満であることを特徴とするものである。
【請求項45】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔は一様な孔サイズ分布を有することを特徴とするものである。
【請求項46】
請求項39記載の装置において、前記組成物は無秩序な微小構造を有することを特徴とするものである。
【請求項47】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔が実質的に長尺な形状であることを特徴とするものである。
【請求項48】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔は形が実質的に円柱状であることを特徴とするものである。
【請求項49】
請求項39記載の装置において、前記炭素質膜は約1バレル〜約500バレルの範囲で窒素ガスの浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項50】
請求項39記載の装置において、前記炭素質膜は約20バレル〜約200バレルの範囲で窒素ガスの浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項51】
請求項39記載の装置において、前記炭素質膜は約50バレル〜約100バレルの範囲で窒素ガスの浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項52】
請求項39記載の装置において、前記装置は少なくとも1つの種を分離する、少なくとも1つの種を濾過する、少なくとも1つの種を精製する、少なくとも1つの種を吸着する、少なくとも1つの種を篩過する、又はそれらの任意の組み合わせが可能なものである。
【請求項53】
請求項52記載の装置において、種は元素、分子、イオン、タンパク質、生物学的マーカー、高分子、又はそれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項54】
請求項39記載の装置において、この装置は濾過、吸着、分離、精製、篩過、又はそれらの任意の組み合わせに使用されるものである。
【請求項1】
膜であって、
複数のナノ細孔を有する粘着性炭素質組成物を有し、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であることを特徴とするものである、前記粘着性炭素質組成物を有する膜。
【請求項2】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は炭化物、炭窒化物、又はそれらの任意の組み合わせに由来するものである。
【請求項3】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は実質的に長尺な孔であることを特徴とするものである。
【請求項4】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は形が実質的に円柱状であることを特徴とするものである。
【請求項5】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約3nm未満であるものである。
【請求項6】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約1nm未満であるものである。
【請求項7】
請求項1記載の膜において、前記複数のナノ細孔は一様な孔サイズ分布を有することを特徴とするものである。
【請求項8】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は無秩序な微小構造を有することを特徴とするものである。
【請求項9】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は約1バレル(Barrer)〜約500バレルの範囲で浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項10】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は約50バレル〜約200バレルの範囲で浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項11】
請求項1記載の膜において、前記粘着性炭素質組成物は約100バレル〜約150バレルの範囲で浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項12】
方法であって、
支持体に近接する無機炭素含有前駆物質を処理して、当該無機炭素含有前駆物質から実質的に全ての非炭素種を除去するものである処理する工程を有し、
前記無機炭素含有前駆物質は、前記支持体に近接して位置することにより、複数のナノ細孔を有する支持ナノ多孔性炭素質膜を生成するものであり、
前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であることを特徴とするものである、
方法。
【請求項13】
請求項12記載の方法において、この方法は、さらに、
前記無機炭素含有前駆物質の処理前に、化学蒸着、物理蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、又はそれらの任意の組み合わせによって支持体に近接する前記無機炭素含有前駆物質を蒸着する工程を有するものである。
【請求項14】
請求項12記載の方法において、前記複数のナノ細孔は実質的に長尺な孔であることを特徴とするものである。
【請求項15】
請求項12記載の方法において、前記複数のナノ細孔は形が実質的に円柱状であることを特徴とするものである。
【請求項16】
請求項12記載の方法において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約3nm未満であることを特徴とするものである。
【請求項17】
請求項12記載の方法において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約1nm未満であることを特徴とするものである。
【請求項18】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は炭化物、炭窒化物、又はそれらの任意の組み合わせに由来するものである。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記炭化物は2価炭化物、4価炭化物、又はそれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項20】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は無晶形、水晶形、ナノ水晶形、マイクロ水晶形、水晶形、又はそれらの任意の組み合わせを特徴とするものである。
【請求項21】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は少なくとも1つの金属を有するものである。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記金属はTi、Zr、Hf、V、Ta、Nb、Mo、W、Fe、Al、Si、B、Ca、Cr、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【請求項23】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約5nm〜約1000マイクロメーターの範囲の厚さを有することを特徴とするものである。
【請求項24】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約30nm〜約500マイクロメーターの範囲の厚さを有することを特徴とするものである。
【請求項25】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約300nm〜約100マイクロメーターの範囲の厚さを有することを特徴とするものである。
【請求項26】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約500nm〜約1マイクロメーターの範囲の厚さを有することを特徴とするものである
【請求項27】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は粉末状、バルク状、粒子状、又はそれらの任意の組み合わせであることを特徴とするものである。
【請求項28】
請求項12記載の方法において、前記支持体は多孔性である。
【請求項29】
請求項12記載の方法において、前記支持体は無孔性である。
【請求項30】
請求項12記載の方法において、前記支持体は無機質組成物を有するものである。
【請求項31】
請求項30記載の方法において、前記無機質組成物は酸化アルミニウムを有するものである。
【請求項32】
請求項12記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質を処理する工程はハロゲン化、加熱、焼結、又はそれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項33】
請求項32記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約10℃〜約2000℃の範囲の温度で処理されるものである。
【請求項34】
請求項32記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約100℃〜約1000℃の範囲の温度で処理されるものである。
【請求項35】
請求項32記載の方法において、前記無機炭素含有前駆物質は約300℃〜約700℃の範囲の温度で処理されるものである。
【請求項36】
請求項12記載の方法において、この方法は、さらに、
支持ナノ多孔性炭素質膜を冷却する工程を有するものである。
【請求項37】
請求項36記載の方法において、前記冷却工程は支持ナノ多孔性炭素質膜を温度勾配、流体、ヒートシンク、又はそれらの任意の組み合わせに曝す工程を有するものである。
【請求項38】
請求項12記載の方法において、この方法によって生成される支持ナノ多孔性炭素質膜である。
【請求項39】
装置であって、
複数のナノ細孔を有する炭素質膜を有し、
前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約7nm未満であることを特徴とするものであり、
前記炭素質膜は直接支持体に近接するものである
装置。
【請求項40】
請求項39記載の装置において、前記炭素質膜は無機炭素含有前駆物質に由来するものである。
【請求項41】
請求項40記載の装置において、前記無機炭素含有前駆物質は物理蒸着、化学蒸着、スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、又はそれらの任意の組み合わせによって支持体に直接近接し蒸着されるものである。
【請求項42】
請求項39記載の装置において、前記支持体は多孔性、無孔性、又はそれらの任意の組み合わせである。
【請求項43】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約3nm未満であることを特徴とするものである。
【請求項44】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔は窒素ガス吸着等温線の非局所密度汎関数理論法分析によって決定される平均的な横断面の幅が約1nm未満であることを特徴とするものである。
【請求項45】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔は一様な孔サイズ分布を有することを特徴とするものである。
【請求項46】
請求項39記載の装置において、前記組成物は無秩序な微小構造を有することを特徴とするものである。
【請求項47】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔が実質的に長尺な形状であることを特徴とするものである。
【請求項48】
請求項39記載の装置において、前記複数のナノ細孔は形が実質的に円柱状であることを特徴とするものである。
【請求項49】
請求項39記載の装置において、前記炭素質膜は約1バレル〜約500バレルの範囲で窒素ガスの浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項50】
請求項39記載の装置において、前記炭素質膜は約20バレル〜約200バレルの範囲で窒素ガスの浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項51】
請求項39記載の装置において、前記炭素質膜は約50バレル〜約100バレルの範囲で窒素ガスの浸透性を有することを特徴とするものである。
【請求項52】
請求項39記載の装置において、前記装置は少なくとも1つの種を分離する、少なくとも1つの種を濾過する、少なくとも1つの種を精製する、少なくとも1つの種を吸着する、少なくとも1つの種を篩過する、又はそれらの任意の組み合わせが可能なものである。
【請求項53】
請求項52記載の装置において、種は元素、分子、イオン、タンパク質、生物学的マーカー、高分子、又はそれらの任意の組み合わせを有するものである。
【請求項54】
請求項39記載の装置において、この装置は濾過、吸着、分離、精製、篩過、又はそれらの任意の組み合わせに使用されるものである。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−536916(P2009−536916A)
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−510994(P2009−510994)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/011442
【国際公開番号】WO2007/133700
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(598072065)ドレクセル・ユニバーシティー (11)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【国際出願番号】PCT/US2007/011442
【国際公開番号】WO2007/133700
【国際公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【出願人】(598072065)ドレクセル・ユニバーシティー (11)
【Fターム(参考)】
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