説明

ナノ構造体を利用した検出方法及び検出システム

【課題】試料の標識化が不要であり且つ簡素なシステム構成となり、更には、連続的な測定も可能となる検出方法及び検出システムを提供すること。
【解決手段】周期的ナノ構造体領域を備えた流路に試料を流すステップと、単一波長の光を前記ナノ構造体領域に照射し、回折光を生成させるステップと、生成した前記回折光の内、一次回折光の回折角度変化を検知するステップと、を含む検出方法及び当該検出方法に用いられる検出システムが開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ構造体を利用した検出方法及び検出システムに関する。詳しくは、ナノ構造体による光の回折を利用した検出方法及びそれに用いられる検出システムに関する。
【背景技術】
【0002】
前処理や分離のための手法及びシステムは飛躍的な進歩を遂げている。特に、ここ数年の間に、ナノスケールの構造体を利用した生体分子の分離に関して数多くの報告がなされた(例えば非特許文献1を参照)。ナノ構造体は従来の分離法におけるゲルやポリマーの代替品として用いられている。実際、ナノ構造体の利用によってゲルやポリマーが無くとも高分離能が得られることが示された。ナノ構造体を備えたチップの登場は、微小化学分析システム(Micro-Total Analysis Systems;μTAS)の実現に多大な貢献をした。尚、ナノ構造体を利用した光学素子の例を以下に列挙する(特許文献1〜4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2001−511906号公報
【特許文献2】特開2005−337771号公報
【特許文献3】特開2007−164068号公報
【特許文献4】特開2009−104074号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】G. B. Salieb-Beugelaar, K. D. Dorfman, A. van den Berg, and J. C. T. Eijkel, Lab chip, 9, 2508 (2009).
【非特許文献2】J. Fu, R. B. Schoch, A. L. Stevens, S. R. Tannenbaum, and J. Han, Nat. Nanotechnol., 2, 121 (2007).
【非特許文献3】Darryl J. Bornhop, et al., Science, 317, 1732 (2007).
【非特許文献4】T. Kitamori, et al. Anal. Chem., 1, 53A (2004).
【非特許文献5】G. Shekhawat, et al., Science, 311, 1592 (2006).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
検出方法や検出システムの開発・改良のスピードは比較的遅い。ナノ構造体を利用した検出方法においても、通常は試料中の生体分子を検出するためには蛍光色素などによる標識化が必要であり、そのための工程を要する(非特許文献2)。試料中に目的の生体分子が存在するか否かを検出するだけであれば、操作が煩雑になることは別にして、試料を蛍光標識化することに問題はない。しかしながら、臨床応用した場合等、目的の生体分子を検出するとともに分離・分取することが必要な場合もあり、このような用途においては非標識の状態で試料を分析できるか否かは極めて重要な問題となる。
【0006】
ところで、無標識の試料を用いて検出する方法(無標識検出方法)として、(1)バックスキャッタリング干渉分光法を用いて自由溶液中で無標識検出を行う方法(非特許文献3)、(2)熱レンズ顕微鏡を用いて無標識検出を行う方法(非特許文献4)、(3)マイクロカンチレバーを用いて無標識検出を行う方法(非特許文献5)等が開発されている。しかしながら、(1)の方法では無標識検出を行う際にフローを止める必要があり、フローを使った連続的なサンプル測定ができないという問題があり、(2)の方法では参照光とプローブ光の二つの波長のレーザーを導入する必要があるため装置が複雑になるという問題があり、(3)の方法では試料をマイクロカンチレバーに固定化する必要があり、フローを使った計測ができないという問題がある。そこで本発明の課題は、試料の標識化が不要であり且つ簡素なシステム構成となり、更には、連続的な測定も可能となる検出方法及び検出システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは以下に示す発明を創出するに至った。
[1]周期的ナノ構造体領域を備えた流路に試料を流すステップと、
単一波長の光を前記ナノ構造体領域に照射し、回折光を生成させるステップと、
生成した前記回折光の内、一次回折光の回折角度変化を検知するステップと、
を含む、検出方法。
[2]前記周期的ナノ構造体領域は、周期的配列で形成されたナノウォール又はナノピラーによって流路が分岐する領域である、[1]に記載の検出方法。
[3]前記周期的ナノ構造体領域のピッチが250nm〜1330nmである、[1]又は[2]に記載の検出方法。
[4]前記光の波長が200nm〜830nmである、[3]に記載の検出方法。
[5]前記光がレーザー光である、[1]〜[4]のいずれか一項に記載の検出方法。
[6]一次回折光を定位置で受光し、その強度変化を検出することによって、前記回折角度変化を検知する、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の検出方法。
[7]フィルタによって周縁光がカットされた一次回折光を受光する、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の検出方法。
[8]前記周期的ナノ構造体領域への照射前に前記光を強度変調するとともに、
該強度変調に同期した成分を前記一次回折光として検出する、[1]〜[7]のいずれか一項に記載の検出方法。
[9]前記周期的ナノ構造体領域の上流側に前記流路を横断する第2の流路が備えられており、該第2の流路内で処理された試料を前記流路に導入する、[1]〜[8]のいずれか一項に記載の検出方法。
[10]前記流路が前記周期的ナノ構造体領域の下流側で分岐しており、一次回折光の回折角度変化を検知した結果を用いて試料中の目的物を特定の支流路に誘導する、[1]〜[9]のいずれか一項に記載の検出方法。
[11]試料が標識化されていない、[1]〜[10]のいずれか一項に記載の検出方法。
[12]周期的ナノ構造体領域を備えた流路と、
前記周期的ナノ構造体領域に照射される光を生成する単一波長の光源と、
前記周期的ナノ構造体領域への光の照射によって生成する回折光の内、一次回折光を受光する受光部と、
受光部からの信号を処理する処理部と、
処理結果を表示する表示部と、
を備えた検出システム。
[13]前記周期的ナノ構造体領域は、周期的配列で形成されたナノウォール又はナノピラーによって流路が分岐する領域である、[12]に記載の検出システム。
[14]前記周期的ナノ構造体領域のピッチが250nm〜1330nmである、[12]又[13]に記載の検出システム。
[15]前記光の波長が200nm〜830nmである、[14]に記載の検出システム。
[16]前記光源がレーザー光源である、[12]〜[15]のいずれか一項に記載の検出システム。
[17]一次回折光の周縁光をカットするフィルタを備える、[12]〜[16]のいずれか一項に記載の検出システム。
[18]前記光源の光を強度変調するための光強度変調器と、一次回折光における該強度変調に同期した成分を検出し、増幅するロックインアンプと、を備える、[12]〜[17]のいずれか一項に記載の検出システム。
[19]前記周期的ナノ構造体領域の上流側に前記流路を横断する第2の流路が備えられている、[12]〜[18]のいずれか一項に記載の検出システム。
[20]前記流路が前記周期的ナノ構造体領域の下流側で分岐している、[12]〜[19]のいずれか一項に記載の検出システム。
【0008】
[21]減光フィルタで減光された光が前記ナノ構造体領域に照射する、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の検出方法。
[22]フォトダイオードによって一次回折光を受光する、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の検出方法。
[23]前記周期的ナノ構造体領域への照射前に前記光を対物レンズによって集光する、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の検出方法。
[24]前記流路を試料が流れている際に、前記流路に対してその長さ方向に電圧を印加する、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の検出方法。
[25]前記回折角度変化を経時的に検知する、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の検出方法。
[26]試料がDNA、タンパク質、糖鎖又は細胞含む溶液である、[1]〜[12]のいずれか一項に記載の検出方法。
[27]前記光源の光を減光する減光フィルタを備える、[12]〜[20]のいずれか一項に記載の検出システム。
[28]前記受光部がフォトダイオードを備える、[12]〜[20]のいずれか一項に記載の検出システム。
[29]前記光源の光を集光する対物レンズを備える、[12]〜[20]のいずれか一項に記載の検出システム。
[30]前記流路に対してその長さ方向に電圧を印加するための電源部を備える、[12]〜[20]のいずれか一項に記載の検出システム。
[31]前記周期的ナノ構造体領域の材質が石英、石英硝子、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンコポリマー、サファイア又はガラスである、[12]〜[20]のいずれか一項に記載の検出システム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の検出方法ではナノ構造体由来の回折光を利用して検出を行うため、試料を蛍光色素などで事前に標識する必要がない。また、光源の光も1波長のみでよく、システムの構成が簡素となる。さらに、ナノ構造体とナノ構造体の間にある間隔を検出の場として用いていることから、試料を流路表面に固定化する必要も無く、フローを用いた連続的な測定も可能である。このような利点を備える本発明は、例えば、生体分子又は生体由来分子の微量検出に適する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】周期的ナノ構造体領域の一例を示す図。(a)は平面図、(b)は(a)のI−I線位置での断面図である。
【図2】周期的ナノ構造体領域の一例を示す図。ナノピラー5の配列が異なる二つの例(左と右)を示した。(a)は平面図、(b)は(a)のII−II線位置での断面図である。同様に(A)は平面図、(B)は(A)のIII−III線位置での断面図である。
【図3】本発明の検出システムの一例を示す図。
【図4】本発明の検出システムにおける回折条件と検出原理を示す図。二つのナノウォールをレーザー光が通過することにより回折光が生じる。本発明の検出システムでは、回折の式(psinα = mλ)におけるpは周期構造の幅(実施例では、ナノウォールの幅+間隔=800 nm)、mは整数値、λは光の波長(実施例では532 nm)となる。
【図5】本発明の検出システムにおける回折条件と検出原理を示す図。ナノウォール(石英製)の屈折率の方が、ナノウォール間隙にある媒質の屈折率よりも大きいために周期的ナノ構造体内部にてレーザー光が全反射をし、周期的ナノ構造体の出口にて回折が生ずる。生じた回折光の内、一次回折光をフォトダイオードにて検出する。レーザー光が全反射する際のエネルギー損失量が媒体に依存するために、周期的ナノ構造体内に導入する媒質によって回折光の信号強度が変化する。
【図6】集光したレーザーの直径と検出体積を示す図。
【図7】周期的ナノ構造体領域に水を流したときの信号強度の変化を示す図。
【図8】本発明の検出システムの一例(ピンホールを有するフィルタ18を使用した例)を示す図。
【図9】フィルタ18を使用しない場合(上)と使用した場合(下)の信号強度を比較して示す図。周期的ナノ構造体領域には空気を充填した。
【図10】フィルタ18を使用しない場合(上)と使用した場合(下)の信号強度を比較して示す図。周期的ナノ構造体領域には水を充填した。
【図11】ピンホールを有するフィルタ18を使用した場合における、周期的ナノ構造体領域に水を流したときの信号強度の変化を示す図。
【図12】蛍光色素の検出結果を示す図。蛍光色素の濃度ごとに、信号強度の経時的変化(左)と変化量(右)が示される。蛍光色素の濃度が高い程、シグナル強度の変化(低下)が大きい。
【図13】蛍光色素を検出対象とした応答性の評価法(左)と評価結果(右)を示す図。
【図14】溶媒の屈折率と信号強度の関係を示す図。信号強度の経時的変化(左)と変化量(右)が示される。
【図15】DNAの検出結果を示す図。DNAのサイズごとに、信号強度の経時的変化(左)と変化量(右)が示される。DNAのサイズが大きい程、シグナル強度の変化(低下)が大きい。
【図16】DNAの検出結果を示す図。DNA濃度と信号強度の変化量の関係(左)と、DNAサイズと信号強度の変化量の関係(右)が示される。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<ナノ構造体を利用した検出方法>
本発明の第1の局面はナノ構造体による光の回折を利用した検出方法に関する。本発明の検出方法は、周期的ナノ構造体を流路に形成し、当該周期的ナノ構造体による光の回折を利用した検出を行う点に最大の特徴がある。具体的には、本発明の検出方法では以下のステップを行う。
(1)周期的ナノ構造体領域を備えた流路に試料を流すステップ
(2)単一波長の光を前記ナノ構造体領域に照射し、回折光を生成させるステップ
(3)生成した前記回折光の内、一次回折光の回折角度変化を検知するステップ
【0012】
1.ステップ(1)
ステップ(1)ではまず、周期的ナノ構造体領域を備えた流路を用意する。典型的には、周期的ナノ構造体領域は流路の一部に形成されるが、流路全体を周期的ナノ構造体領域にしてもよい。分離処理(例えば電気泳動による分離)のための区画として、周期的ナノ構造体が形成されていない領域を周期的ナノ構造体領域の前方位置に備えることにしてもよい。尚、周期的ナノ構造体領域はそれ自体が分子ふるいとしても機能し得る。従って、周期的ナノ構造体領域を用いることにより、従来の電気泳動等に利用されるゲルやポリマーなどを使用しなくとも、一定の分離効果を得ることができる。
【0013】
本発明において「周期的ナノ構造体領域」とはナノサイズの構造体が周期性をもって形成された領域である。周期的ナノ構造体領域を構成するナノ構造体の形状は好ましくはウォール状又はピラー状である。説明の便宜上、以下では、ウォール状のナノ構造体をナノウォールと呼称し、ピラー状のナノ構造体をナノピラーと呼称する。周期性を認める限り、ナノ構造体の形態や周期性の態様等は特に限定されない。ナノウォールとナノピラーの両者を併用して周期的ナノ構造体領域を形成してもよい。周期的ナノ構造体領域の態様の具体例を図1、2に示す。図1の例では、その長手方向が流路1の長手方向と平行な状態で、所定の長さ(例えば1μm〜1000μm)、所定の幅(例えば200nm〜1000nm)のナノウォール2が一定の方向(例えば流路の長手方向と垂直方向)に一定のピッチ(例えば250nm〜1330nm)で整列している。隣接するナノウォール2間の距離(間隙3の幅)は例えば50nm〜500nmである。図2の例では、流路4、7においてナノピラー5、8が一定のピッチ(例えば250nm〜1330nm)で平面視ドットマトリクス状に配列している。尚、図2の左と右ではピラーの配列が異なる。ナノピラー5、8は円柱、四角柱など、様々な形状を採用し得る。
【0014】
周期的ナノ構造体は、ナノ構造体の形成方法として使用されている方法、例えば電子線フォトリソグラフィー、フォトリソグラフィー、プラズマエッチングなど(例えばN. Kaji, Y. Tezuka, Y. Takamura, M. Ueda, T. Nishimoto, H. Nakanishi, Y. Horiike, and Y. Baba, Anal. Chem., 76, 15 (2004).を参照)によって形成することができる。
【0015】
回折光を生成するためには、周期的ナノ構造体は、使用する光に対して透過性の材料(好ましくは透過率の高い材料)で形成されている必要がある。周期的ナノ構造体を形成する材料の例として石英、石英硝子、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、シクロオレフィンコポリマー、サファイア、ガラスを挙げることができる。
【0016】
周期的ナノ構造体領域ではナノ構造体によって流路が分岐する。本発明では、ナノ構造体間の間隙(支流路)を試料が流れる際、ナノ構造体領域に光が照射され(後述のステップ(2))、それによって生ずる回折光を利用した検出(ステップ(3))が行われる。
【0017】
ここで、図面を参照しながら、本発明における回折条件と検出原理を簡単に説明する。図4及び5に示すように、二つのナノ構造体を光が通過することにより回折光が生じる。即ち、回折光が生じるために必要な最小ユニットは二つのナノ構造体である(但し、各ナノ構造体の両側には間隙(支流路)が形成され、間隙の数は3である)。ナノ構造体の屈折率の方が、間隙(支流路)を流れる媒質の屈折率よりも大きいためにナノ構造体内部で光の全反射が生じ、ナノ構造体の出口にて回折が生ずる。全反射の際のエネルギー損失量が媒体に依存するため、周期的ナノ構造体内に導入する媒質によって回折光の信号強度が変化することになる。
【0018】
本発明の検出方法は様々な試料の検出に適用可能である。試料の例として、生体由来又は非由来(例えば化学合成されたもの)のDNA、タンパク質、糖鎖、細胞を含む試料、抽出又は合成された有機化合物を含む試料、その他の微粒子を含む試料等を挙げることができる。本発明の検出方法によれば試料の標識化(蛍光標識化など)が不要となる。従って、好ましい一態様では、標識化されていない試料を用いた検出を行う。但し、一次回折光を利用して検出するという本発明の特徴が損なわれないのであれば、標識化された試料を検出対象にすることも可能である。
【0019】
一態様では、流路を試料が流れている際に、流路に対してその長さ方向に電圧を印加する。即ち、電気泳動による分離を行いつつ検出する。当該態様は、例えば、複数種類の分子を含む試料の中から特定の分子を検出する場合に有効である。また、試料中の特定の分子を分離・抽出する場合にも有用である。尚、サイズが異なる同種の分子を複数含む試料(例えば、サイズが異なる複数の核酸(DNA、RNAなど)を含む試料)もここでの「複数種類の分子を含む試料」に該当する。
【0020】
一態様では、周期的ナノ構造体領域の上流側に、流路(便宜上、「主流路」とも呼ぶ)を横断する第2の流路が備えられている。この第2の流路は試料の前処理に用いられる。例えば、電気泳動を利用して第2の流路内で分離処理した後の試料を、主流路との合流位置から主流路に導入する。例えば、所望のタイミングで主流路に対して長さ方向に電圧を印加することによってこのような導入が可能である。
【0021】
2.ステップ(2)
ステップ(2)では、単一波長の光を、流路に形成された周期的ナノ構造体領域に照射し、回折光を生成させる。照射する光の波長は200nm〜830nmとする。但し、周期的ナノ構造体領域で回折が生ずるように、周期的ナノ構造体の幅よりも光の波長の方が短くなるようにする。好ましくは、周期的ナノ構造体による光の吸収を考慮し、可視光領域の波長(360nm〜830nm)の光を照射する。光源にはレーザー(半導体レーザー(レーザーダイオード)、固体レーザー等)、LED(発光ダイオード)等を用いることができる。照射範囲を絞り、高感度の検出を可能とするため、光源の光を対物レンズで集光した後に周期的ナノ構造体領域に照射することが好ましい。上記の通り、周期的ナノ構造体領域ではナノ構造体によって流路が分岐し、複数の支流路(周期的ナノ構造体領域内の間隙)が形成される。本発明では、周期的ナノ構造体によって回折が生ずるように、照射範囲中に少なくとも二つのナノ構造体が含まれることになる。そこで、好ましくは照射範囲の径(d)は{(2×ナノ構造体の幅)+(ナノ構造体間の間隙の幅)}<dである。
【0022】
減光フィルタで光源の光の一部をカットした後に周期的ナノ構造体領域に照射することにしてもよい。即ち、減光フィルタによって照射光の強度(光量)を調節することにしてもよい。このような態様は出力の大きな光源を使用する場合に有効であり、例えば、システムの構成を簡素にしつつ汎用的な光源の使用を可能とする。
【0023】
3.ステップ(3)
ステップ(2)に続くステップ(3)では、生成した回折光の内、一次回折光の回折角度変化を検知する。このように本発明では、最も強度の強い一次回折光(プラス側又はマイナス側)を利用することによって検出感度の向上を図る。一次回折光の回折角度は、光照射範囲内に存在する、ナノ構造体間の間隙(支流路)の状態に依存的である。換言すれば、光照射範囲内の支流路の状態変化に伴って回折角度に変化が生ずる。本発明では当該回折角度変化を検知し、試料中の目的物質を検出する。回折角度の変化を検知するための手段としては、定位置での一次回折光の強度の検出が有効であり、簡便でもある。例えば、溶媒のみを流したときに最大の強度となる位置を受光位置として試料を流し検出すれば、光照射領域内の支流路中に試料中の物質(溶媒以外の成分)が到達した際、回折角度が変化し、受光位置での強度が低下(又は上昇)する。従って、強度の低下(又は上昇)を検出すれば、回折角度の変化を間接的に把握できることになる。
【0024】
一次回折光は一定の広がりをもった光であり、通常は周縁部に向かって強度が低下する。本発明の好ましい態様では、フィルタで周縁部の光をカットし、中央部の光のみを受光することで僅かな変化を検出し、検出感度の向上を図る。例えば、ピンホールが形成された透明又は不透明のフィルムをフィルタとして用いることができる。ピンホールの最適なサイズは、周期的ナノ構造体領域の形態(特にピッチや形状)によって変動し得るが、例えば1μm〜400μmとする。
【0025】
一態様では、周期的ナノ構造体領域への入射前に光源の光を強度変調させるとともに、当該強度変調に同期した成分を一次回折光として検出する。このように強度変調を利用すればノイズが低減し、S/N比が向上する。例えば、チョッパ等の強度変調器とロックインアンプの併用によって当該態様の検出が可能である。
【0026】
受光手段は特に限定されない。例えばフォトダイオード(PINフォトダイオード、アバランシェフォトダイオード等)、光電子増倍管、CCD(Charge Coupled Device)素子、CMOS素子等を用いることができる。
【0027】
目的物の分離又は分取を目的とした場合には、例えば、周期的ナノ構造体領域の下流側で分岐した流路を用い、一次回折光の回折角度変化を検知した結果を用いて試料中の目的物を特定の支流路に誘導すればよい。誘導法の例として、検知結果に基づき特定のタイミングで特定の支流路に対して長さ方向に電圧を印加する方法、チャネル構造に起因する流体力学的方法を挙げることができる。尚、ここでの分岐の数は特に限定されない。例えば2〜20に分岐した流路を採用することができる。
【0028】
ここで、フローを用いた連続的な測定も可能になる点が本発明の最大の特徴の一つである。この特徴を活かし、回折角度変化の検知は例えば連続的(経時的)に行われる。このような連続的な測定は目的物を分離しつつ測定する目的や、目的物を分取する目的において特に有用である。また、目的物の濃度変化を測定することにも有用である。尚、連続的な測定ではなく単回のみの測定や断続的な測定などを行うことにしてもよい。
【0029】
本発明の検出方法は、例えば、試料中の目的物の有無や濃度の検出、試料中の物質の特定、試料中の物質の属性評価などに利用可能である。本発明の検出方法の応用として、特定の物質の有無又は濃度を指標にした生化学的検査、環境測定などが想定される。
【0030】
<ナノ構造体を利用した検出システム>
本発明の第2の局面は、本発明の検出方法に使用されるシステムないし装置に関する。本発明のシステムは、(1)周期的ナノ構造体領域を備えた流路、(2)周期的ナノ構造体領域に照射される光を生成する単一波長の光源、(3)周期的ナノ構造体領域への光の照射によって生成する回折光の内、一次回折光を受光する受光部、(4)受光部からの信号を処理する処理部、及び(5)処理結果を表示する表示部を備える。
【0031】
周期的ナノ構造体領域の構成や光源の種類など、本発明のシステムを構成する部材ないし要件の多くに関しては、本発明の検出方法に関する上記説明がそのまま当てはまることから、重複する説明は省略する。以下では、一実施形態を示した図3を参照しながら、本発明のシステムに固有の事項及び特徴を中心に説明する。図3に示したシステムは、石英製のチップ10、レーザー光源11、受光部としてのフォトダイオード12、ロックインアンプ13、チョッパ14、減光フィルタ15、ミラー16及び対物レンズ17を備える。チップ10は2cm×2cmのサイズであり、その片面側には流路(第1流路10a、第2流路10b)が形成されている。第1流路10aと第2流路10bは平面視略十字となるように設けられる。この例では第1流路10aの長さは2.0mm、第2流路10bの長さは8.0mmである。また、第1流路10a及び第2流路10bの深さはともに2.7μmであり、同様に幅は25μmである。
【0032】
第1流路10aの中央部より少し下流側(図示右側)には周期的ナノ構造体領域10cが備えられる。第2流路10bは周期的ナノ構造体領域10cよりも上流側(図示左側)の位置において第1流路10aに連通している。周期的ナノ構造体領域10c(7.0mm)は、その長手方向が第1流路10aの長手方向と平行となるナノウォール10dが一定の間隔をおいて長手方向及び幅方向に整列した構造を有する。ナノウォール10dの長さは215μm、幅は600nm、高さは2,700nmである。隣接する二つのナノウォール10d間の距離(間隙)は長手方向では35μm、幅方向では200nmである。
【0033】
レーザー光源11は波長532nmの光を出射する。レーザー光源11の出射方向には間に減光フィルタ15を介在させてチョッパ14が配置される。減光フィルタ15はレーザー光の強度を調節するために設けられるが、省略することも可能である。チョッパ14はレーザー光を変調する。変調された光はミラー16によって所定の方向に反射される。ミラー16を用いることにより、チップ10やその他の部材の配置自由度が高まり、装置の小型化に有利となる。但し、ミラー16は省略してもよい。ミラー16によって反射された光は続いて対物レンズ17で集光した後、チップ10の周期的ナノ構造体領域10cに照射する。この例では、半径(ε)が1081.7nmの照射領域を設定した(図6)。照射領域には、二つのナノウォールが含まれる。
【0034】
周期的ナノ構造体領域に入射した光が回折して生ずる一次回折光(プラス側)を受光可能な一に受光部が配置される。受光部には受光素子としてフォトダイオード12が備えられる。この例では、試料に使用する溶媒を第1流路10aに流した際に生ずる一次回折光の中心がフォトダイオード12の受光面の中心となるように受光部の位置が調節されている。図8に示すシステムのように、フォトダイオード12の受光面(直径400μm)を覆うようにニッケル製のフィルタ18を備えることにしてもよい。フィルタ18の中央には直径100μmのピンホールが穿孔されている。当該ピンホールによって周縁の光がカットされた後、一次回折光がフォトダイオード12に入射する。このように、フィルタ18を用いることにより、一次回折光の中心部と周縁部の利用率(透過率)に差を設け、高感度の検出を実現している。
【0035】
ロックインアンプ13は、チョッパ14の動作周波数に同調して受光部の出力を同期検出し、増幅する。増幅された信号はロックインアンプ13の表示部に表示される。従ってこの例では、ロックインアンプ13が処理部と表示部を兼ねることになる。ロックインアンプ13からの出力を外部ディスプレイ等に表示することにしてもよい。また、ロックインアンプ13からの出力をPC等で更に処理・加工することにしてもよい。
【0036】
図3、8の例では、石英製のチップ1に流路を形成することにしたが、流路の形成に用いる材料の種類や全体の形状などは適宜選択可能である。
【0037】
以上の構成のシステムを用いた検出方法の具体例を説明する。まず、第1流路10aの一端に設けられた導入部10eに試料を滴下することによって、上流側から下流側に向かって試料を流す。一方、チョッパ14による変調、ミラー16による反射及び対物レンズ17(10x / 0.30NA)による集光を受けたレーザー光が第1流路10aの周期的ナノ構造体領域10cに対して垂直に入射する。その結果、回折光が生ずる。生成した回折光の内、一次回折光をフォトダイオード12が受光する。フォトダイオード12からの信号はロックインアンプ13に入力され、チョッパ14による変調に同期した成分に係る検出信号の強度が表示される。ここで、試料中に存在する物質(目的物)依存的に回折角度は変化するが、試料に使用する溶媒のみを流した場合に一次回折光の強度が最大となる位置に受光部を配置しておくことにより、回折角度の変化は、検出信号の強度変化として検知される。即ち、検出信号の強度変化を用いて試料中の目的物が検出されることになる。
【0038】
第2の実施形態では、第1流路10aに対して長さ方向に電圧を印加するための電源部が備えられる。当該構成によれば、第1流路10a内で電気泳動による分離を行いつつ目的物を検出することが可能になる。電源部が第2流路10bに対してもその長さ方向に電圧を印加できるように構成したり、或いは第2流路10bに電圧を印加するために別の電源部を設けることにしてもよい。このような構成によれば、第2流路10b内においても電圧を利用した試料の分離が可能になる。当該構成による検出方法の一例は次の通りである。即ち、まず、試料を第2流路10bの一端に設けられた導入部に滴下し、上流側から下流側に向かって試料を流す。一方、第2流路10bに対して長さ方向に電圧を印加する。これにより、第2流路10b内において電気泳動による分離が行われる。所望のタイミングで第1流路10aに溶媒を導入するとともに第1流路10aに対して長さ方向に電圧を印加し、目的物が含まれた画分を第1流路10aに誘導・導入する。その後の検出操作は上記実施態様と同様である。このように、当該実施形態によれば、前処理と検出を一つのシステムで行うことができる。
【実施例】
【0039】
無標識検出方法の開発を目指し、図3に示したシステム又は図8に示したシステム(ピンホールを備えるフィルタを使用)を用いて以下の実験を行った。当該システムは周期的ナノ構造体によって生ずる回折光を利用する(回折条件と検出原理については図4、5を参照)。尚、最も信号強度が大きい位置にフォトダイオードを固定した。
【0040】
周期的ナノ構造領域に入射するレーザー光の直径と検出体積の関係を図6に示す。採用した条件では、レーザースポットあたりのサンプルを導入することができる面積(S)は0.802x106 nm2 ≦ S ≦ 1.01x106 nm2となる。また、レーザースポットあたりの導入サンプル量(V)は2.17x10-15 L ≦ V ≦ 2.73x10-15 Lとなる。尚、本システムでは、ナノウォールの高さが2,700nm、幅が600nm、ナノウォール間の距離(間隙の幅)が200nm、レーザー光の波長が532nmであることから、レイリーリミット(ε)は1081.7nmとなる。
【0041】
(1)周期的ナノ構造体領域に水を流したときの信号強度の変化
周期的ナノ構造体領域に空気が充填されている状態で回折光の信号強度が極大となる位置にフォトダイオードを固定し、蒸留水を毛細管力によって周期的ナノ構造体内に充填し、経時的に信号強度を測定した。尚、この実験ではフィルタ18を使用しなかった。
【0042】
測定結果を図7に示す。360 mV(空気中(測定開始時))から60mV(水中(測定終了時))まで信号強度が連続的に低下した(信号強度変化量: 300 mV)。即ち、空気と水の屈折率の違いによって回折光の信号強度が変化した。このように、周期的ナノ構造体中の間隙(支流路)の状態を反映して信号強度が変化することが明らかとなった。尚、信号ノイズは15 mV、S/N比は20であった。
【0043】
(2)ピンホールの有無による信号ノイズの低減
ピンホール(直径100μm)を穿孔したフィルタ18の使用によって信号ノイズの低減を図った(図8)。受光する回折光の周縁光をピンホールでカットすることにより、回折光の僅かな変化を捉えることが可能と期待された。
【0044】
周期的ナノ構造体領域に空気が充填されている状態で信号強度を測定した。フィルタ18を使用しない場合(図9上)とフィルタ18を使用した場合(図9下)の結果を図9に比較して示す。信号ノイズを1 mVにまで抑えることができており、ピンホールによって信号ノイズが大幅に低減されることがわかる。
【0045】
一方、周期的ナノ構造体領域に水を充填した状態で信号強度を測定したところ、信号ノイズを0.1 mVにまで抑えることができた(図10)。以上の通り、信号ノイズの低減にピンホールが有効であることが示されたことから、以降の実験では、フィルタ18を使用したシステムを用いることにした。
【0046】
(3)周期的ナノ構造体領域に水を流したときの信号強度の変化(ピンホールを使用)
フィルタ18を備えたシステムを使用したこと以外、(1)の場合と同様の条件で実験を行った。結果を図11に示す。フィルタ18を使用しない場合((1)の実験)と比較して信号ノイズが大幅に低減し、S/N比が46にまで上昇した。
【0047】
(4)蛍光色素の検出
まず、周期的ナノ構造体領域に3xTBE緩衝溶液を導入した。この状態で信号強度が極大となる位置にフォトダイオードを固定した。所定の濃度(0.1μM、1μM、10μM、100μM、1mM、10mM)で3×TBEに溶解したサンセットイエローを流路の導入部10eに添加した後、流路に対して電圧を印加することによって、サンセットイエローを周期的ナノ構造体領域に導入し(電気浸透流による導入)、一次回折光の強度を経時的に測定した。測定結果を図12に示す。経時的に信号強度が変化した。また、サンセットイエローの濃度が高い程、シグナル強度の変化(低下)が大きい。即ち、信号強度の変化量が濃度依存性を示した。この結果は、本システムによれば溶媒中の物質を検出可能であることを示すとともに、溶媒中の物質の濃度を測定する手段として本システムが有効であることを示す。
【0048】
本システムの応答性を評価するため、上記の方法(電気浸透流による導入)でサンセットイエローを周期的ナノ構造体領域に導入した後、電場の向きを逆転させた。この操作を繰り返し、信号強度の電場応答性を調べた。図13に示す通り電場の向きの変化に応答して信号強度が迅速に変化し、応答性に優れたシステムであることが確認された。
【0049】
(5)溶媒の屈折率と信号強度の関係
周期的ナノ構造体領域内に水を導入した状態で信号強度が極大となる位置にフォトダイオードを固定した。その後、3xTBEを電気浸透流によって周期的ナノ構造体領域へ導入し、信号強度の測定を開始した。信号強度が安定した段階で1xTEを電気浸透流によって周期的ナノ構造体領域へ導入し、信号強度の経時的変化を調べた。測定結果を図14に示す。3xTBEの屈折率による回折光の変化よりも、1xTEの屈折率による回折光の変化の方が少ないため、3xTBEから1xTEへの置換に伴って信号強度が上昇した。この結果は、信号強度の低下ではなく信号強度の上昇を指標にした検出も可能であることを示す。
【0050】
(6)試料中のDNAの検出
本システムの有用性及び汎用性を更に検証するため、DNAの検出を試みた。まず、周期的ナノ構造体領域内に1xTE緩衝溶液を導入し、信号強度が極大となる位置にフォトダイオードを固定した。その後、1xTEに溶解した各サイズのDNA(濃度: 100 ng/μl)を電気泳動(流路に対して電圧を印加)によって導入した。図15に示す通り、DNAのサイズが大きい程、シグナル強度の変化(低下)が大きい。即ち、DNAの塩基対の長さに応じて信号強度の変化量に差が生ずることが明らかとなった。このように、本システムによればDNAを検出できること、及びDNAのサイズの検出・識別にも本システムは有効であることが示された。
【0051】
次に、試料中のDNA濃度と信号強度の関係を調べることにした。まず、周期的ナノ構造体領域内に1xTE緩衝溶液を導入し、信号強度が極大となる位置にフォトダイオードを固定した。その後、1xTEに溶解した200bpのDNA(50ng/μl、100ng/μl、150ng/μl、200ng/μl)を電気泳動によって導入し、信号強度を測定した。その結果、経時的な信号強度の変化を認めた(図16左)。このように、DNAの濃度に応じて信号強度が変化することが判明した。換言すれば、本システムによればDNAの濃度変化を検出できることが示された。
【0052】
一方、濃度を一定(1.515μM)にした各サイズ(100bp、200bp、300bp、500bp)のDNAを導入した場合の信号強度の変化を調べた結果、DNAのサイズに応じて信号強度が変化した(図16右)。即ち、DNAのサイズの検出・識別に本システムが有用であることがこの実験でも確認された。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の検出方法は、試料中の目的物の有無や濃度の検出、試料中の物質の特定、試料中の物質の属性評価などに利用可能である。特に微量成分の検出に好適である。
【0054】
この発明は、上記発明の実施の形態及び実施例の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
本明細書の中で明示した論文、公開特許公報、及び特許公報などの内容は、その全ての内容を援用によって引用することとする。
【符号の説明】
【0055】
1、4、7 流路
2 ナノウォール
3、6、9 間隙
5、8 ナノピラー
10 ナノウォールチップ
10a 第1流路
10b 第2流路
10c 周期的ナノ構造体領域
10d ナノウォール
10e 導入部
11 レーザー光源
12 フォトダイオード
13 ロックインアンプ
14 チョッパ
15 減光フィルタ
16 ミラー
17 対物レンズ
18 フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的ナノ構造体領域を備えた流路に試料を流すステップと、
単一波長の光を前記ナノ構造体領域に照射し、回折光を生成させるステップと、
生成した前記回折光の内、一次回折光の回折角度変化を検知するステップと、
を含む、検出方法。
【請求項2】
前記周期的ナノ構造体領域は、周期的配列で形成されたナノウォール又はナノピラーによって流路が分岐する領域である、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
前記周期的ナノ構造体領域のピッチが250nm〜1330nmである、請求項1又は2に記載の検出方法。
【請求項4】
前記光の波長が200nm〜830nmである、請求項3に記載の検出方法。
【請求項5】
前記光がレーザー光である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項6】
一次回折光を定位置で受光し、その強度変化を検出することによって、前記回折角度変化を検知する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項7】
フィルタによって周縁光がカットされた一次回折光を受光する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項8】
前記周期的ナノ構造体領域への照射前に前記光を強度変調するとともに、
該強度変調に同期した成分を前記一次回折光として検出する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項9】
前記周期的ナノ構造体領域の上流側に前記流路を横断する第2の流路が備えられており、該第2の流路内で処理された試料を前記流路に導入する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項10】
前記流路が前記周期的ナノ構造体領域の下流側で分岐しており、一次回折光の回折角度変化を検知した結果を用いて試料中の目的物を特定の支流路に誘導する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項11】
試料が標識化されていない、請求項1〜10のいずれか一項に記載の検出方法。
【請求項12】
周期的ナノ構造体領域を備えた流路と、
前記周期的ナノ構造体領域に照射される光を生成する単一波長の光源と、
前記周期的ナノ構造体領域への光の照射によって生成する回折光の内、一次回折光を受光する受光部と、
受光部からの信号を処理する処理部と、
処理結果を表示する表示部と、
を備えた検出システム。
【請求項13】
前記周期的ナノ構造体領域は、周期的配列で形成されたナノウォール又はナノピラーによって流路が分岐する領域である、請求項12に記載の検出システム。
【請求項14】
前記周期的ナノ構造体領域のピッチが250nm〜1330nmである、請求項12又は13に記載の検出システム。
【請求項15】
前記光の波長が200nm〜830nmである、請求項14に記載の検出システム。
【請求項16】
前記光源がレーザー光源である、請求項12〜15のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項17】
一次回折光の周縁光をカットするフィルタを備える、請求項12〜16のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項18】
前記光源の光を強度変調するための光強度変調器と、一次回折光における該強度変調に同期した成分を検出し、増幅するロックインアンプと、を備える、請求項12〜17のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項19】
前記周期的ナノ構造体領域の上流側に前記流路を横断する第2の流路が備えられている、請求項12〜18のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項20】
前記流路が前記周期的ナノ構造体領域の下流側で分岐している、請求項12〜19のいずれか一項に記載の検出システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−78168(P2012−78168A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222528(P2010−222528)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【Fターム(参考)】