説明

ナノ粒子を含む移植可能な製品

本発明は、ナノ粒子を含有する移植可能な、および好ましくは生分解性の、医療製品と、腫瘍および癌性潰瘍の外科的除去後の後療法としての温熱治療におけるその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に腫瘍や癌性潰瘍の外科的除去後の後療法としての温熱療法に用いられる、ナノ粒子を含有する移植可能な製品とその医療分野における使用に関する。
腫瘍組織の外科的除去後、ほとんどの場合、腫瘍細胞が体内に残存するという問題(不完全切除)が生じる。これらの腫瘍細胞は、創傷閉鎖後再び成長し、腫瘍の拡大および/または腫瘍転移を起こし得る。このため、後療法として患者に非常に有効な化学療法が行われる。しかし、最低限の正常組織を除去すべきであるため、執刀医は好ましくは腫瘍の完全切除と最低限の正常組織の除去について妥協しなければならない。
【0002】
本発明は、癌手術後のより効果的な後療法のための製品および方法の提供を目的とする。
上記目的は、独立請求項によって解決される。さらに有利な実施形態は、従属請求項、実施例、および記載により明らかにする。
【0003】
驚くべきことに、交番磁界で加熱可能なナノ粒子を含有する移植可能な医療製品を手術領域内に移植または配置すれば、化学療法に比べ癌手術の後療法を顕著に改善できることが発見された。
【0004】
従って、本発明は、生理学的に受容可能な組織、スポンジ、薄膜またはゲルの形態で存在する、交番磁界で加熱可能な固体またはゲル状の医療製品に関する。この場合、医療製品は、交番磁界により励起されると発熱する磁性粒子を含有するため、加熱される。
【0005】
本発明の医療製品では、粒子、即ち交番磁界により励起可能な粒子が、医療製品内に埋め込み固定されるか、または医療製品に付着することが重要である。
従来、薬理学的薬物を付加した粒子を静磁場を介して特定の標的部位に導くように磁性粒子の水溶液を生成するか、または交番磁界で励起可能な粒子の水溶液を腫瘍に直接注入して腫瘍細胞に粒子を蓄積させ、発熱により腫瘍細胞を破壊している。この発熱は、初期段階では粒子のヒステリシス熱の損失によるものである。
【0006】
本発明の医療製品は、磁性粒子の水溶液または物理的水溶液または懸濁液ではなく、粒子が埋め込み固定された組織または薄膜等の固体またはゲル状の担体である。生分解性医療製品でないとすれば、粒子は永久的に医療製品内に残存し、人工歯根または人工膝関節のように永久的に移植部位に残存する。
【0007】
生分解性医療製品の場合、粒子は医療製品内に永久的に残存し、拡散により溶出せず、単に生分解過程で放出されるため、移植された医療製品が配置された領域は、任意の所望期間後、即ち、移植後1週間、移植後1カ月、移植後1年、および移植後10年たって加熱することができる。
【0008】
本発明の好ましい実施形態は、人体および動物体により可変速度で分解可能な生分解性医療製品に関する。しかし、これらの医療製品からの粒子の放出は、拡散によらず、生物学的分解のみに限られる。従って、生体吸収性医療製品の場合、溶解を続ける医療製品の残留物は交番磁界によりさらに加熱され、溶解が生じる。
【0009】
しかし、本発明の医療製品は、弾力性または変形性があり、外科的腫瘍除去後の組織または臓器または術野の表面外形に沿い得ることが重要である。このように、本発明の医療製品は、組織または臓器または術野上に配置され得り、非平坦面に問題なく沿う組織の形態か、またはその性質上非平坦面に塗布可能なゲル、薄膜形成組成物または薄膜形成噴霧剤の形態である。
【0010】
本明細書において、術野とは、手術創傷の外縁部によって画定される領域を意味する。即ち、術野は、腫瘍と正常組織間の過渡領域または境界領域である。この領域の後療法の治療は、再発防止のために非常に重要である。
【0011】
本明細書に記載の医療製品は、術野に塗布および被覆され、噴霧剤の場合は術野に噴霧されるため、腫瘍手術後の手術創傷の後療法に適している。
従って、本発明の医療製品は主に全身投与ではなく、術野での移植が意図されている。本発明の医療製品は、好ましくは後続の化学療法の過程で術野に残存すべきであるため、予定された治療セッションの時間枠に従って生分解可能であるか、長期間生体吸収可能であるか、または分解不可能であるかのいずれかである。
【0012】
本発明の医療製品、好ましくは生分解性または緩徐に生分解可能な医療製品は、硬質ではなく、対象となる術野の表面に弾力的に適合し得ることが重要である。このように、加熱または加温可能な粒子の医療製品または担体は、弾力性があり、容易に適応し、他の形態に容易に調節可能で、または無形であることが特に好ましい。
【0013】
従って、本発明の医療製品は全て非硬質且つ非金属製の担体であり、この担体は任意の表面に適合してこの表面を最大限に覆い、さらに磁性粒子、特に超常磁性ナノ粒子の取り込みに適している。好ましくは生分解性の本発明の医療製品は、医療用セルロース、包帯材料、創傷挿入物、外科用縫合材料、圧定布、スポンジ、医療用織物、軟膏剤、ゲルまたは薄膜形成噴霧剤である。
【0014】
医療用セルロースと医療用織物は、粒子を含浸する好ましくは厚さの薄い二次元構造物を構成する。磁性粒子は本医療製品の繊維構造に付着し、この繊維構造は手術後、乾燥した状態または予め湿潤された状態で手術領域の創傷内に挿入される。
【0015】
表面上、多孔質構造の空洞内、ならびにスポンジ材料自体の中に磁性粒子を含有し得る、スポンジまたは生分解性多孔質三次元構造物は、一般的に、本発明の医療製品の別の形態である。手術後、このようなスポンジは創傷内に挿入され、手術領域を最大限に、または単に部分的に充填する。磁性粒子は、これらのスポンジ状構造物から放出され得る。この場合、磁性粒子は固く結合した形態でも存在し得る。粒子の放出は、多孔質構造の空洞から緩く結合した粒子のみが拡散することにより、また粒子がスポンジ構造自体の材料内に組み込まれるか埋め込まれている場合、スポンジ構造が生分解することにより、達成され得る。
【0016】
本発明の医療製品は、人体および動物体への移植に適しており、生理学的に受容可能でなければならない。本発明の医療製品は、溶解液または懸濁液等の液体ではなく、粘性があり、または厚みがあり、または薄膜形成の、または硬質の製剤として存在する。これにより、本医療製品は移植後、確実に所望の位置に残存する。
【0017】
同様に、本医療製品はいかなる表面にも適合すること、即ち表面外形に沿うことが重要である。
本明細書において、磁性粒子の担体は「医療製品」として指定される。また、本明細書に詳細に記載された組織、セルロース、ゲル、薄膜形成組成物等は、「担体」として機能する。この「担体」は、生分解可能であるか、または生物学的に安定しており、非磁性であり得るため、磁性粒子が存在しなければ交番磁界で加熱不可能である。担体は、非生命体からなり、X線マーカーまたは造影剤を含み得り、好ましくは接着結合および/または共有結合で粒子と結合する。しかし、磁性粒子はほとんどの場合非生分解性であり、交番磁界で励起によって熱を放出する。従って、磁性粒子は磁性粒子自体だけでなく、担体、いわば医療製品全体も加熱し、これにより周囲の組織も加熱する。その上、後述のように、細胞分裂阻害剤等の薬理学的薬剤を医療製品に組み込むことができる。この薬理学的薬剤は、拡散および/または担体の生分解および/または発熱および/または交番磁界により放出され、まず第一に腫瘍細胞と戦う。
【0018】
本明細書において、医学的に使用可能な織物またはセルロースを「組織」と称する。この「組織」から、包帯材料、創傷挿入物、包帯等の医療用布または織物が作製される。
「生分解性医療製品」という用語は、明示的に、単に磁性粒子の母体に関するものであり、通常は非生分解性の磁性粒子自体に関するものではない。従って、磁性粒子を適用するまたは組み込む対象である医療用セルロース、包帯材料、創傷挿入物、外科用縫合材料、圧定布、スポンジ、医療用繊維、軟膏剤、ゲルまたは薄膜形成噴霧剤は、生分解性である。このように、磁性粒子を有する分解性医療製品の磁性粒子の母体は生分解性である。つまり、通常、磁性粒子を有さない医療製品と磁性粒子は腫瘍組織または癌細胞にそれぞれ残存または蓄積し、ほとんどの場合生分解しないか、コーティングの一部のみが生分解する。この場合、磁心は通常、生分解性ではない。
【0019】
除去した腫瘍または癌組織が存在していた領域を術野と定義する。
本発明の医療製品の別の好ましい代替品は、軟膏剤、クリーム、ゲル、および噴霧剤、特に薄膜形成噴霧剤の形態での液体またはゲル状の製剤である。これらの製剤は、磁性粒子を含有し、腫瘍除去後手術領域に塗布または噴霧される。
【0020】
磁性粒子を除き、本発明の医療製品は好ましくは生分解性であるため、好ましくは1〜12カ月以内、より好ましくは1〜6か月以内に完全に溶解し、含有された磁性粒子は放出される。
【0021】
本発明の医療製品の機能原理は、残存する癌細胞または癌組織に磁性粒子が可能な限り近接するように、本発明の医療製品が可能な限り完全に術野を覆うべきことにある。磁性粒子および好ましくは超常磁性粒子は交番磁界で加熱され得り、残存する癌細胞は温熱療法で死滅する。本明細書において、本発明の医療製品に含有される磁性粒子は医療製品全体を加熱し、医療製品から拡散した磁性粒子は、付着または浸入した癌細胞を加熱する。
【0022】
さらに、温熱治療法は、比較的副作用が少なく、化学療法と同時に行えるため、従来の化学療法または放射線治療を支援し得る。本発明の医療製品は、可能な限り完全に術野を覆うかまたは手術領域を満たすため、残存する癌細胞および癌組織に好ましくは直接接触し、近接する磁性粒子により特に効果的に死滅させ得る。従って、本発明の医療製品を用いた温熱治療法は、化学療法や放射線治療よりもかなり選択的且つ温存的である。
【0023】
本発明の1つの好ましい実施形態では、少なくとも1つの薬理学的活性化合物、好ましくは抗癌剤は、上記磁性粒子と結合する。適切な抗癌剤として、アクチノマイシン、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、プリンまたはピリミジン塩基の拮抗薬、アントラサイクリン、アロマターゼ阻害剤、アスパラギナーゼ、抗エストロゲン薬、ベキサロテン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン誘導体、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン(シトシンアラビノシド)、アルキル化細胞分裂阻害剤、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フルダラビン、フルオロウラシル、葉酸拮抗薬、ホルメスタン、ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリン、ホルモンおよびホルモン拮抗薬、ハイカムチン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、レトロゾール、リュープロレリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミルテホシン、マイトマイシン、有糸分裂阻害剤、ミトキサントロン、ニムスチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、チオグアニン、トポイソメラーゼ阻害剤、トポテカン、トレオスルファン、トレチノイン、トリプトレリン、トロホスファミド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、細胞静止性有効抗生物質(cytostatically effective antibiotics)が挙げられる。
【0024】
さらに、少なくとも1つの治療効果のある薬物の磁性粒子からの分離は、交番磁界により達成または開始され得る。これにより、温熱治療法は直接手術領域で抗増殖薬によって支援され、さらに効果を高める。もちろん、本明細書において、さらなる化学療法または放射線治療を同時または時間差で用いることも可能である。
【0025】
少なくとも1つの薬理学的薬剤を、粒子、好ましくはナノ粒子に強制的に結合させる必要はない。薬理学的薬剤は、本発明の医療製品に追加的に含有されるか、または粒子に結合することなく医療製品の表面に適用され得る。
【0026】
粒子を伴う薬物は癌細胞に侵入または付着可能であり、磁場により誘起されて癌細胞において放出され得るため、薬物を粒子と結合させるとかなり標的を指向する放出が生じるという利点がある。
【0027】
このような状況下で、「磁場により誘起され」または「達成され」るということは、1つには交番磁界またはインパルスが直接放出または分離の原因であることを意味し、または薬物の分離は例えば酵素の活性化または発熱により間接的に生じることを意味する。
【0028】
従って、医療用セルロース、包帯材料、創傷挿入物、外科用縫合材料、圧定布、医療用スポンジ、医療用織物、軟膏剤、ゲル、または薄膜形成噴霧剤の形態でのナノ粒子含有医療製品は、さらに少なくとも1つの薬理学的薬剤、好ましくは抗癌物質を含有し得る。適切な薬物およびその粒子との結合について、以下に詳述する。
【0029】
上記移植片および移植可能な医療製品は、手術領域に医療製品または生分解性医療製品を適用した後に外部交番磁界を利用することにより、交番磁界で加熱される。
粒子の加熱は交番磁界で生じる。この場合、交番磁界の強度は、好ましくは1〜25kA/m、より好ましくは2〜18kA/mであり、周波数は、好ましくは5〜5,000kHz、より好ましくは10〜1000kHzである。
【0030】
磁性粒子、好ましくは超常磁性ナノ粒子、ならびに任意に本発明の薬物は、加熱に支援されて放出され、その後癌細胞に付着して癌細胞を死滅させる。上記温熱療法の温存的な治療形態は、特に放射線治療および/または化学療法等の他の治療手順と組み合わせて適用することができる。
[磁性粒子]
本発明によれば、交番磁界により加熱され得る限り、いかなる磁性粒子も使用することができる。
【0031】
従って、特に微粒子およびナノ粒子、ならびに特に超常磁性微粒子および超常磁性ナノ粒子が好ましい。
上記ナノ粒子は、好ましくは磁心、より好ましくは超常磁性磁心を備えることを特徴とする。磁赤鉄鉱、磁鉄鉱、鉄−ニッケル合金、ニッケル−銅合金またはコバルト−ニッケル合金(FeNiまたはCoNi等)等の材料が好ましい。
【0032】
磁気特性を改善するため、第2磁心層を適用することもできる。これにより、単層の磁心を有するナノ粒子より高い保磁力が得られる。第1磁心層は超常磁性材料からなり、第2磁心層は第1磁心層とは異なる材料からなり得る。例えば薬物を保有するさらなる層をこの磁心に適用することができる。粒子−薬物結合により腫瘍細胞を浸潤するための複数層の粒子については、WO98/58673A号に記載されている。
【0033】
1つ以上の磁心自体は、磁性材料、好ましくは強磁性、反強磁性、フェリ磁性、反フェリ磁性または超常磁性材料から構成され、さらに好ましくは酸化鉄、特に超常磁性酸化鉄から、または酸化層を有する純鉄からなる。上記ナノ粒子は、2〜25kA/mの好ましい磁場強度と好ましくは5〜5000kHzの周波数の交番磁界により加熱することができる。この方法により、ナノ粒子を含有する組織を50℃超まで加熱することができる。ナノ粒子の形態での鉄は腫瘍細胞1個につき800pg以上まで吸収され得るため、このような高温が達成され得る。従って、ナノ粒子は長期間標的領域にとどまらざるを得ず、非常に正確に且つ外部からの接触なしにこのようにして腫瘍に熱を(しかも繰り返し)加えることができる。加熱は、磁気緩和過程およびヒステリシス熱損失による遷移熱および回転熱の放出に基づく。
【0034】
ナノ粒子は、好ましくは酸化鉄、特に磁鉄鉱(Fe34)、磁赤鉄鉱(γ−Fe23)または双方の酸化物の混合物から構成される。一般的に、好ましいナノ粒はFeOXとして定義される。この場合、xは1〜2の有理数を意味する。ナノ粒子の平均直径は、好ましくは500nm未満であることを特徴とする。ナノ粒子の直径は、好ましくは15nmまたは好ましくは1〜200nm、および特に好ましくは5〜30nmである。
【0035】
薬物およびコーティングを有さないナノ粒子の生成については、DE4428851Aに詳しく記載されている。
本発明によれば、xが1.0〜2.0の範囲の有理数であるFeOXの磁性材料の他に、M=Co、Ni、Mn、Zn、Cd、Baまたは他のフェライトである、一般式MFe24の材料も使用できる。
【0036】
酸化鉄の代わりに別の金属磁心を有するナノ粒子を構成することも可能である。本明細書において、金、銀、白金、銅、コバルト、ニッケル、鉄、マンガン、サマリウム、ネオジム、イリジウム、オスミウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウムの金属またはこれらの金属の合金が挙げられる。
【0037】
しかし、二酸化ケイ素(SiO2)等の非磁性材料からナノ粒子を生成することも可能である。さらに、上述の磁性材料等の磁性材料が組み込まれたおよび/または付着したシリカまたはポリマー粒子も同様に適切である。
【0038】
さらに、標的探索機能を有する抗体、核酸、ペプチド、アプタマーまたは他の分子等の化学構造が粒子表面に存在し、粒子の変性細胞への結合性を強化するように、磁性粒子を誘導することができる。このように表面を修飾することにより、変性細胞上の特定の表面構造が認識され、癌細胞への結合性が向上する。磁性粒子に標的探索機能をもたらす好ましい化学構造は、例えば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、組換え抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメント、アプタマー、Fabフラグメント、Fcフラグメント、ペプチド、ペプチド模倣物、ギャップマー、リボザイム、CpGオリゴマー、DNAザイム、リボスイッチおよび脂質である。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、ナノ粒子は任意に治療活性物質と結合し得る。薬物は、共有結合、または主に共有結合、および/または十分に強力なイオン結合、包接化合物または錯体結合により結合し得る。これにより、薬物の制御されない放出は大きく抑制される。交番磁界の影響を受けない薬物の分離は、制御されない放出として理解される。
【0040】
治療活性物質として、抗増殖薬、抗遊走薬、抗血管新生薬、抗血栓薬、抗炎症薬、消炎薬、細胞分裂阻害剤、細胞毒性薬、抗凝固薬、抗菌剤、抗ウイルス薬および/または抗真菌薬を選択することができる。この場合、抗増殖薬、抗遊走薬、抗血管新生薬、細胞分裂阻害剤および/または細胞毒性薬、ならびに抗増殖性、抗遊走性、抗血管新生性、抗血栓性、抗炎症性、消炎性、細胞分裂阻害性、細胞毒性、抗凝固性、抗菌性、抗ウイルス性および/または抗真菌性の特性を有する核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、炭水化物、脂質、糖タンパク質、グリカンまたはリポ蛋白が好ましい。さらに、これらの物質は、他の従来の癌治療方法(の組み合わせ)の放射線増感剤または感作物質またはエンハンサーであり得り、または上記感作物質を含み得る。
【0041】
細胞毒性および/または細胞分裂阻害性化合物、即ち細胞毒性および/または細胞分裂阻害性の特性を有する化学化合物として、とりわけ、アルキル化剤、細胞分裂阻害性の抗生物質、代謝拮抗薬、微小管重合阻害剤およびトポイソメラーゼ阻害剤、白金含有化合物、ならびに他の細胞分裂阻害剤(アスパラギナーゼ、トレチノイン)、アルカロイド、ポド薄膜毒素、タキサン類およびミルテホシン(登録商標)、ホルモン、免疫調節因子、モノクローナル抗体、シグナル伝達因子(シグナル伝達分子)およびサイトカインを用いることができる。
【0042】
アルキル化剤の例として、特にクロレタミン、シクロホスファミド、トロホスファミド、イホスファミド、メルファラン、クロラムブシル、ブスルファン、チオテパ、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジン、プロカルバジン、テモゾロミド、トレオスルファン、エストラムスチンおよびニムスチンを挙げることができる。
【0043】
細胞分裂阻害性の抗生物質の例は、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ダクチノマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシン、エピルビシン(4−エピ−アドリアマイシン)、イダルビシン、ミトキサントロンおよびアムサクリンである。
【0044】
代謝拮抗薬(抗代謝剤)の例として、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、6−チオグアニン、6−メルカプトプリン、フルダラビン、クラドリビン、ペントスタチン、ゲムシタビン、アザチオプリン、ラルチトレキセド、カペシタビン、シトシンアラビノシド、チオグアニンおよびメルカプトプリンを挙げることができる。
【0045】
特に、ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、エトポシドならびにテニポシドは、アルカロイドおよびポド薄膜毒素の部類に属する。さらに、本発明によれば、白金含有化合物を使用することができる。白金含有化合物として、例えばシスプラチン、カルボプラチンおよびオキサプラチン(oxaplatin)が挙げられる。例えば、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、ビンデシン、ビノレルビン)等のアルカロイドおよびタキサン類(パクリタキセル/Taxol(登録商標)、パクリタキセルおよびドセタキセル)、ならびにパクリタキセルの誘導体は、微小管重合阻害剤に属する。トポイソメラーゼ阻害剤として、ポド薄膜毒素(エトポシド、テニポシド)およびカンプトテカアルカロイド(camptotheca alkaloids)(カンプトテシン、トポテカンおよびイリノテカン)が挙げられる。
【0046】
例えば、ヒドロカルバミド(ヒドロキシ尿素)、イマチニブ、ミルテホシン(登録商標)、アムサクリン、ペントスタチン、ベキサロテン、トレチノインおよびアスパラギナーゼは、他の細胞分裂阻害剤として挙げられる。モノクローナル抗体の化合物の種類として代表的なものは、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標)としても知られている)、アレムツズマブ(マブキャンパス(登録商標)としても知られている)およびリツキシマブ(マブセラ(登録商標)としても知られている)である。
【0047】
本発明によれば、グルココルチコイド(プレドニゾン)、エストロゲン(ホスフェストロール、エストラムスチン)、LHRH(ブセレリン、ゴセレリン、リュープロレリン、トリプトレリン)、フルタミド、酢酸シプロテロン、タモキシフェン、トレミフェン、アミノグルテチミド、ホルメスタン、エキセメスタン、レトロゾールおよびアナストロゾール等のホルモンも使用可能である。インターロイキン−2、インターフェロン−α、インターフェロン−γ、エリスロポエチン、G−CSF、トラスツズマブ(ハーセプチン(登録商標))、リツキシマブ(マブセラ(登録商標))、エフィチニブ(efitinib)(イレッサ(登録商標))、イブリツモマブ(ゼバリン(登録商標))、レバミソールならびにレチノイドは、免疫調節因子、サイトカイン、抗体およびシグナル伝達因子の種類に属する。
【0048】
上記薬物は磁性粒子とともに本発明の医療製品に含まれ得るか、または磁性粒子の表面に適用される。薬物が磁性粒子または医療製品または生分解性医療製品と共有結合またはイオン結合する場合、薬物の結合は、各薬物が有している官能基に従って、例えばヒドロキシ基、アミノ基、カルボニル基、チオール基、またはカルボキシ基によって生じる。
【0049】
ヒドロキシ基は好ましくはエステル、アセタールまたはケタールとして、チオール基は好ましくはチオールエステル、チオールアセタールまたはチオールケタールとして、アミノ基は好ましくはアミドおよび部分的にイミン(シッフ塩基)として、カルボキシ基は好ましくはエステルまたはアミドとして、およびカルボニル基は好ましくはケタールとして、それぞれ結合する。
【0050】
さらに、1つ以上の薬物をナノ粒子または医療製品または生分解性医療製品に直接結合させるのではなく、リンカー分子によって固定化することが好ましい。さらに、ナノ粒子の表面の官能性付与が公知であるため、公知の方法を用いて、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基またはカルボニル基をナノ粒子の表面上に生成することができる。
【0051】
治療活性物質は、直接的にまたはリンカー分子により、好ましくはアミド結合またはエステル結合により、ナノ粒子および/または医療製品または生分解性医療製品に結合される。
【0052】
pH切断性のアセタール基、エステル基、ヒドラゾン基またはイミン基を含み、且つ酸性反応または酵素反応により切断され得るリンカーが好ましい。
アミド基は、リンカー分子において酵素的に切断可能な基として挙げられる。熱的にまたは酸によって切断可能な基は、例えば、リン酸基、チオリン酸基、硫酸基、ホスファミド基、カルバマート基またはイミン基を含む。
【0053】
薬物は必ずしもリンカーまたは生分解性医療製品に共有結合する必要はなく、イオン結合または水素結合でもよく、またはインターカレートした形態または配位された形態で存在し得る。
【0054】
前述のように、いかなる磁性粒子も本発明の医療製品に使用することができる。このような磁性粒子の例は、WO 2005 070471 A2、WO 02/43708 A2、US5,411,730 A1、WO 2005 042142 A2、WO 03/026618 A1、WO 2005 065282 A2、WO 2006 108405 A2およびWO 2007 019845 A2に記載されている。
[生分解性医療製品]
移植片、ゲル、組織、織物、創傷コーティングまたは薄膜形成製剤の形態での本発明の生分解性医療製品は、外科医による癌手術後の創傷閉鎖後に患者の体内に残存する。
【0055】
本発明の生分解性医療製品は特に、残存する腫瘍細胞を死滅させ且つ再発を防止するため、温熱療法により発生した熱を用いた術野の後療法に用いられる。
従って、本発明の生分解性医療製品は、生理学的に受容可能な材料から構成され、および/または生理学的に受容可能な分解産物および成分に切断される。
【0056】
本発明の医療製品の材料は、以下を含む基または以下からなる基から選択される:ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカルボウレタン、ポリビニルケトン、ハロゲン化ポリビニル、ハロゲン化ポリビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDMゴム、フルオロシリコン、カルボキシメチルキトサン、ポリエチレンテレフタレート、ポリバリレート、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースブチレート、セルロースアセテート−ブチレート、エチルビニルアセテート共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、EPDMゴム、シリコーンプレポリマー、シリコーン、ポリシロキサン、ポリビニルハロゲン、セルロースエーテル、セルローストリアセテート、キトサン、キトサン誘導体、重合可能な油、ポリバレロラクトン、ポリ−ε−デカノラクトン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドとポリグリコリドの共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリヒドロキシブチレート−コ−バリレート、ポリ(1,4−ジオキサン−2,3−ジオン)、ポリ(1,3−ジオキサン−2−オン)、ポリ−パラ−ジオキサノン、ポリ無水物、ポリマレイン酸無水物、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ−β−マレイン酸、ポリカプロラクトンブチルアクリレート、オリゴカプロラクトンジオールおよびオリゴジオキサノンジオールからなるマルチブロックポリマー、PEGおよびポリ(ブチレンテレフタレート)からなるポリエーテルエステル−マルチブロックポリマー、ポリピボトラクトン(Polypivotolactone)、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリカプロラクトン−グリコリド、ポリ(γ−エチルグルタメート)、ポリ(DTH−イミノカーボネート)、ポリ(DTE−コ−DT−カーボネート)、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリトリメチルカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール化ポリエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスファゼン、ポリ[p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸(polyhydroxypentaic acid)、ポリエチレンオキシドプロピレンオキシド、軟質ポリウレタン、骨格にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリエチレンオキシド、ポリアルケンオキサレート、ポリオルトエステル、カラギーナン、デンプン、コラーゲン、タンパク質ベースのポリマー、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、修飾されたゼイン、ポリヒドロキシアルカノアート、ペクチン酸、アクチニック酸(actinic acid)、フィブリン、修飾されたフィブリン、カゼイン、修飾されたカゼイン、カルボキシメチルサルフェート、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパランサルフェート、ヘパリン、コンドロイチンサルフェート、デキストラン、シクロデキストリン、PEGとポリプロピレングリコールからなる共重合体、アラビアゴム、グアー、または他のゴム樹脂、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン−N−ヒドロキシスクシンイミド、脂質、リポイド、重合可能な油とその修飾体、上記物質の共重合体および混合物。
【0057】
上記ポリマーは、生分解性であり、且つ生分解性の重合度および架橋で生成され得る。
「生分解性」または「生体吸収性」という用語により、上記材料は生理的条件下で1カ月〜12カ月以内に、好ましくは6カ月以内に、90重量%まで分解されるか、または分解されていると理解される。
【0058】
好ましい生分解性ポリマーは、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドおよびポリグリコリドの共重合体、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリオルトエステル、グリコール化ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドアクリル酸共重合体、ヒアルロン酸、ヘパランサルフェート、ヘパリン、コンドロイチンサルフェート、デキストラン、β−サイクロデキストリン、親水性架橋デキストリン、アルギン酸塩、リン脂質、カルボメルク、架橋ペプチドおよびタンパク質、シリコーン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、PEGおよびPPGの共重合体、コラーゲン、重合可能な油およびワックス、およびこれらの混合物および共重合体である。
【0059】
さらに、ポリエステル、ポリラクチド、ならびにジオールおよびエステルまたはジオールおよびラクチドの共重合体が好ましい。例えば、ジオールとして、エタン−1,2−ジオール、プロパン−1,3−ジオールまたはブタン−1,4−ジオールが用いられる。
【0060】
本発明によれば、ポリマー層として特にポリエステルが用いられる。以下の繰り返しユニットを特徴とするポリエステル基のポリマーが好ましい。
【0061】
【化1】

【0062】
図示の繰り返しユニットにおいて、R、R’、R’’およびR’’’は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基、特にメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、t−ブチル、イソ−ブチル、n−ペンチルまたはシクロペンチル、および好ましくはメチルまたはエチルを表す。Yは1〜9の整数であり、xは重合度を意味する。詳細には、図示の繰り返しユニットを有する以下のポリマーが好ましい:
【0063】
【化2】

【0064】
さらに代表的な吸収性ポリマーとして、Resomer(登録商標)が挙げられる。Resomerは、L210、L210S、L207S、L209S等の一般式−(C684n−のポリ(L−ラクチド)、LR706、LR708、L214S、LR704等の一般式−(C684n−のポリ(L−乳酸−コ−D,L−ラクチド)、LT706等の一般式−[(C684)x−(C463yn−のポリ(L−乳酸−コ−トリメチルカーボネート)、LG824、LG857等の一般式−[(C684x−(C444yn−のポリ(L−乳酸−コ−グリコリド)、LC703等の一般式−[(C684x−(C6102yn−のポリ(L−乳酸−コ−ε−カプロラクトン)、RG509S、RG502H、RG503H、RG504H、RG502、RG503、RG504等の一般式−[(C684x−(C444yn−のポリ(D,L−乳酸−コ−グリコリド)、R202S、R202H、R203SおよびR203H等の一般式−[(C684n−のポリ(D,L−ラクチド)である。Resomer(登録商標)203Sは、本明細書において、特に好ましいポリマーであるResomer(登録商標)R203に取って代わるものである。Resomer(登録商標)という名称は、ベーリンガーインゲルハイム社(Boehringer Ingelheim GmbH)のハイテク製品を象徴している。
【0065】
基本的に、本発明では吸収性ポリマーの使用が特に好ましい。さらに、乳酸(ポリラクチド)のホモポリマーならびに乳酸およびグリコール酸から生成されるポリマーが好ましい。
[生体安定性医療製品]
ゲル、スポンジおよび特に薄膜形成製剤、薄膜形成噴霧剤または織物、組織、セルロース、創傷被覆材等の形態での本発明の生体安定性または非生分解性医療製品は、非生分解性または低生分解性材料から生成される。
【0066】
本発明の生体安定性医療製品の材料は、以下を含む基または以下からなる基から選択される:ポリアクリル酸ならびにポリメチルメタクリレートおよびポリブチルメタクリレート等のポリアクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカーボウレタン、ポリビニルケトン、ポリ(ビニルハロゲン化物)、ポリ(ビニリデンハロゲン化物)、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族化合物、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDMゴム、フルオロシリコーン、カルボキシメチルキトサン、ポリエチレンテレフタレート、ポリバリレート、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、ニトロセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、エチルビニルアセテート−共重合体、ポリスルホン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、EPDMゴム、ポリシロキサン等のシリコーン、ポリビニルハロゲンと共重合体、セルロースエーテル、セルローストリアセテート、キトサンおよびこれらの共重合体および/または混合物。
【0067】
医療工学において生体安定性移植片として使用される好ましい生体安定性ポリマーは、ポリエーテルスルホン、置換ポリエーテルスルホン、ポリフェニルスルホン、置換ポリフェニルスルホン、ポリスルホンブロック共重合体、全フッ素化ポリスルホンブロック共重合体、半フッ素化ポリスルホンブロック共重合体、置換ポリスルホンブロック共重合体および/または上記ポリマーの混合物である。
[ゲル]
本発明のナノ粒子は、ゲルまたはヒドロゲルに取り込むことも可能であり、または好ましくは同様に生分解性である薄膜形成噴霧剤の成分であり得る。ゲルまたは薄膜形成噴霧剤の安定性を改善するため、本明細書に記載の本発明のナノ粒子をゲル化剤または薄膜形成剤と組み合わせることができる。
【0068】
適切なゲル化剤または薄膜形成剤は、好ましくは、ニトロセルロースまたはエチルセルロース等のセルロース系材料またはこれらの生理学的に安全なポリマー、ポリ酢酸ビニル、部分けん化ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよびアクリル酸またはクロトン酸またはマレイン酸モノアルキルエステルのポリマー混合物、酢酸ビニルおよびクロトン酸およびネオデカン酸ビニルまたはクロトン酸およびプロピオン酸ビニルの三元ポリマー混合物、メチルビニルエーテルおよびマレイン酸モノアルキルエステル(特にマレイン酸モノブチルエステル)のポリマー混合物、脂肪酸ビニルエステルおよびアクリル酸またはメタクリル酸のポリマー混合物、N−ビニルピロリドンおよびメタクリル酸およびメタクリル酸アルキルエステルのポリマー混合物、アクリル酸およびメタクリル酸またはアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルのポリマー混合物(特に4級アンモニウム基の含有量を有する)、またはエチルアクリレートまたはメチルメタクリレートまたはトリメチルアンモニオエチルメタクリレートクロライド(trimethylammonioethyl methacrylate chloride)を含むポリマーまたは共重合体または混合物、またはポリビニルアセタールおよびポリビニルブチラール、アルキル置換ポリ−N−ビニルピロリドン、オレフィンおよび無水マレイン酸のポリマー混合物のアルキルエステル、松ヤニとアクリル酸およびスチラックス樹脂(styraxresins)との反応生成物、キトサン、Luvimer 100(登録商標)、ステアリン酸アルミニウム、カルボメルク、コカミド(cocamide)MEA、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアーまたは紅藻カラギーナンである。
【0069】
上記エステルのアルキル基は、通常短鎖であり、且つほとんどの場合4個を超える炭素原子を有さない。このような化合物は、本明細書において、ポリマー形成剤またはゲル化剤として指定される。
【0070】
さらに、水溶性ポリマー(例えば、イオン性のポリアミド、ポリウレタンおよびポリエステル)、ならびにエチレン性不飽和モノマーのホモポリマーおよび共重合体は、それぞれゲル化剤および薄膜形成剤に属する。このような化合物の商標は、例えば、Acronal(登録商標)、Acudyne(登録商標)、Amerhold(登録商標)、Amphome(登録商標)、EastmanAQ(登録商標)、Ladival(登録商標)、Lovocryl(登録商標)、Luviflex VBM(登録商標)、Luvimer(登録商標)、Luviset P.U.R.(登録商標)、Luviskol(登録商標)、Luviskol Plus(登録商標)、Stepanhold(登録商標)、Ultrahold(登録商標)、Ultrahold Strong(登録商標)またはVersatyl(登録商標)である。Luvimer(登録商標)はポリアクリレートである。
【0071】
本発明のゲルのさらなる成分は、何よりも天然ポリマーである。これには、アルブミン、コラーゲン、ヒアルロン酸、キトサンおよびキチンが含まれる。末端にα−ヒドロキシ酸またはポリ−α−ヒドロキシ酸を有するポリエチレンオキシドの共重合体またはブロック共重合体が特に好ましい非天然ポリマーである。
【0072】
さらに、アグリカン、デコリン、ビグリカンおよびフィブロモジュリン等のグリコサミノグリカンは、生体吸収性のゲルまたは薄膜形成溶液または噴霧剤の共通成分である。
生理食塩水(0.9%)、PBS(リン酸緩衝生理食塩水、即ち、リン酸塩緩衝生理食塩水溶液)、DMEM(ダルベッコ変法イーグル培地)等の食塩水も、ゲル、溶液および噴霧剤で使用できる。
【0073】
酸化鉄コアを有する超常磁性粒子を使用する場合、200mgのゲル中の酸化鉄の含有量は、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、特に好ましくは10〜20重量%である。
[ポリマー担体]
上記磁性粒子は、ポリマーの製造中に添加することが可能であり、その後生体吸収性ポリマー構造に取り込まれる。
【0074】
本発明の生分解性医療製品の例は、上記磁性粒子を含有するポリマービーズである。このポリマービーズは、好ましくはポリヒドロキシ酪酸、ポリラクチド、ポリグリコリド、またはポリラクチド−コ−グリコリドの共重合体からなる。アルギン酸ならびにEudragit(登録商標)は、別の特に好ましい材料である。これらのポリマービーズは、最高20重量%の磁性粒子を含有する。
【0075】
ポリマービーズは、上記のように使用することができるが、ゲルやペースト剤に取り込むこともできる。また、医療用セルロースに固定化することもできる。
ポリマービーズは、交番磁界で50℃まで加熱され得る。
[医療用セルロース]
ナノ粒子を適用した被覆された医療用移植型製品は、好ましくは生体吸収性である。つまり、この製品は体内で完全に溶解可能であるか、または少なくとも生理学的に認容性が良好である。
【0076】
ナノ粒子を含有する医療用移植片は、特に医療用セルロース、包帯材料、創傷挿入物、縫合糸、圧定布および医療用織物である。
ポリヒドロキシ酪酸およびセルロース誘導体、キトサン誘導体ならびにコラーゲン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドおよびポリラクチドは、医療用セルロースおよび織物用の好ましい材料である。アルギン酸を創傷被覆材として使用する場合、好ましくはナトリウム・カルボキシメチル・セルロースと織り合わされたアルギン酸カルシウム製品が使用される。Coloplast社のSeaSorb Softはその一例である。
【0077】
ナノ粒子を包帯および/または創傷挿入物に適用する場合、ジョンソン・エンド・ジョンソン社のTabotamp(登録商標)およびスポンゴスタン(登録商標)について特に言及する必要がある。これらの製品は、再生セルロースから制御酸化によって生成される。
【0078】
縫合糸にナノ粒子を含浸させる場合、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン−コ−グリコリドまたはポリ−p−ジオキサノンからなる縫合糸を使用する。例として、Catgut社(Catgut GmbH)のMarlin(登録商標)、PCLおよびMarisorb(登録商標)が挙げられる。
【0079】
圧定布にナノ粒子を含浸させる場合、本明細書において、特に綿100%の滅菌ガーゼ圧定布を使用しなければならない。例として、Stericomp(登録商標)およびAskina(登録商標)の製品ラインが挙げられる。
【0080】
医療用セルロースを使用する場合、セルロース含有量は90%を超えることが好ましい。
医療用織物を使用する場合、Trevira(登録商標)製品が好ましい。
【0081】
医療用織物およびセルロースに、水、エタノール、または水とエタノールの混合物中に磁性粒子を含む溶液を噴霧するか、または浸漬させる。この浸漬または噴霧過程は、医療製品の乾燥後数回繰り返すことができる。
【0082】
医療製品の表面1cm2当たり10μg〜100mgの磁性粒子を適用する。
医療製品1g当たり100μg〜2gの磁性粒子を被覆する。
[スポンジ]
医療用スポンジは、海綿状の多孔質構造を有する生体吸収性移植片である。
【0083】
医療用スポンジの好ましい材料は、コラーゲン、酸化セルロース、キトサン、トロンビン、フィブリン、キチン、アルギン酸、ヒアルロン酸、PLGA、PGA、PLA、多糖類およびグロビンである。
【0084】
医療用スポンジを使用する場合、コラーゲン含有量は90%を超えることが好ましい。
医療製品1g当たり100μg〜2gの磁性粒子を適用する。
[軟膏剤およびペースト剤]
ナノ粒子を軟膏剤に組み込む場合、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、および最も好ましくは20〜30重量%の純水からなる軟膏剤ベースを用いる。さらに、軟膏剤は、好ましくは40〜90重量%、より好ましくは50〜80重量%、および最も好ましくは20〜60重量%のワセリンを含有する。さらに、軟膏剤は、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜40重量%、および最も好ましくは20〜30重量%の粘性パラフィンを含有し得る。
【0085】
さらに、本明細書に記載のゲル化剤および/または薄膜形成剤を30重量%まで加えることができる。さらに、セルロース、キトサン、トロンビン、フィブリノゲン、キチン、アルギン酸塩、アルブミン、ヒアルロン酸、ヒアルロナン、多糖類、グロビン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチド−コ−グリコリド、ポリヒドロキシブチレート、セルロース誘導体、キトサン誘導体、ポリエチレングリコールおよびポリエチレンオキシド等のポリマーを30重量%まで使用することができる。
[薄膜形成噴霧剤]
本発明のナノ粒子は、噴霧溶液に組み込むことができ、または薄膜形成噴霧剤の成分となり得る。薄膜形成噴霧剤の安定性を向上させるため、本明細書に記載の磁性粒子または薬物含有ナノ粒子をゲル化剤または薄膜形成剤と併用することができる。薄膜形成噴霧剤は、少なくとも1つ以上の薄膜剤を含有する。
【0086】
適切な薄膜形成剤は、好ましくは、ニトロセルロースまたはエチルセルロース等のセルロースをベースとした化合物またはこれらの生理学的に安全なポリマー、ポリ酢酸ビニル、部分けん化ポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルおよびアクリル酸またはクロトン酸またはマレイン酸モノアルキルエステルのポリマー混合物、酢酸ビニルおよびクロトン酸およびネオデカン酸ビニルまたはクロトン酸およびプロピオン酸ビニルの三元ポリマー混合物、メチルビニルエーテルおよびマレイン酸モノアルキルエステル(特にマレイン酸モノブチルエステル)のポリマー混合物、脂肪酸ビニルエステルおよびアクリル酸またはメタクリル酸のポリマー混合物、N−ビニルピロリドンおよびメタクリル酸およびメタクリル酸アルキルエステルのポリマー混合物、アクリル酸およびメタクリル酸またはアクリル酸アルキルエステルまたはメタクリル酸アルキルエステルのポリマー混合物(特に4級アンモニウム基の含有量を有する)、またはエチルアクリレートまたはメチルメタクリレートまたは塩化メタクリル酸トリメチルアンモニオエチル(trimethylammonioethyl methacrylate chloride)を含むポリマーまたは共重合体または混合物、またはポリビニルアセタールおよびポリビニルブチラール、アルキル置換ポリ−N−ビニルピロリドン、オレフィンおよび無水マレイン酸のポリマー混合物のアルキルエステル、松ヤニとアクリル酸およびスチラックス樹脂(styraxresins)との反応生成物、キトサン、Luvimer 100(登録商標)、ステアリン酸アルミニウム、カルボメルク、コカミド(cocamide)MEA、カルボキシメチルデキストラン、カルボキシメチルヒドロキシプロピルグアーまたは紅藻カラギーナンである。
【0087】
上記エステルのアルキル基は、通常短鎖であり、ほとんどの場合4個を超える炭素原子を有さない。
さらに、イオン性ポリアミド、ポリウレタンおよびポリエステル等の水溶性ポリマー、ならびにエチレン性不飽和モノマーのホモポリマーおよび共重合体は、それぞれゲル化剤および薄膜形成剤に属する。このような化合物の商品名は、例えば、Acronal(登録商標)、Acudyne(登録商標)、Amerhold(登録商標)、Amphome(登録商標)、Eastman AQ(登録商標)、Ladival(登録商標)、Lovocryl(登録商標)、Luviflex VBM(登録商標)、Luvimer(登録商標)、Luviset P.U.R.(登録商標)、Luviskol(登録商標)、Luviskol Plus(登録商標)、Stepanhold(登録商標)、Ultrahold(登録商標)、Ultrahold Strong(登録商標)またはVersatyl(登録商標)である。Luvimer(登録商標)は、BASF社がヘアセット用ポリマーとして開発したポリアクリレートである。
【0088】
好ましい溶媒は、水、エタノール、または水およびエタノールの混合物である。
酸化鉄コアを有する超常磁性粒子を使用する場合、200mgのゲル中の酸化鉄の含有量は、好ましくは3〜30重量%、より好ましくは5〜25重量%、および最も好ましくは10〜20重量%である。
【0089】
医療製品1g当たり100μg〜2gの磁性粒子を適用する。
浸漬または噴霧工程によって、ナノ粒子含有移植片の製造が行われる。本明細書において、移植される製品はナノ粒子含有溶液または懸濁液中に浸漬されるか、またはナノ粒子含有溶液で噴霧される。その後、製品は乾燥および無菌包装される。ゲル、軟膏剤、溶液および噴霧剤は標準的な手順に従って所望の医薬品を製造することにより得られ、好ましくは最後の段階で所望量の磁性粒子を加える。
【0090】
得られた本発明の生分解性医療製品は、腫瘍、細胞腫および癌の治療および予防に用いられ、癌手術後および特に固形腫瘍の除去後の手術野の後療法において特に機能する。
本発明の医療製品の使用が可能な癌および腫瘍の例は以下のとおりである:腺癌、脈絡膜黒色腫、急性白血病、聴神経鞘腫、膨大部癌、肛門癌、星状細胞腫、基底細胞腫、膵臓癌、結合組織腫瘍、膀胱癌、気管支癌、非小細胞気管支癌、乳癌、バーキットリンパ腫、子宮体癌、CUP症候群、結腸癌、小腸癌、小腸腫瘍、卵巣癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、ユーイング腫瘍、胃腸腫瘍、胆嚢癌、胆道癌、子宮癌、子宮頚癌、神経膠芽腫、婦人科腫瘍、耳鼻咽喉科腫瘍、血液腫瘍(hematologic neoplasias)、尿道癌、皮膚癌、脳腫瘍(神経膠腫)、脳腫瘍転移、精巣癌、下垂体腫瘍、カルチノイド、カポジ肉腫、喉頭癌、胚腫瘍、骨癌、結腸直腸癌、頭頚部腫瘍(頚部、鼻耳領域の腫瘍)、結腸癌、頭蓋咽頭腫、口の領域および唇の癌、肝癌、肝転移、眼瞼腫瘍、肺癌、リンパ腺癌(ホジキン/非ホジキン)、リンパ腫、胃癌、悪性黒色腫、悪性腫瘍、胃腸管悪性腫、乳癌、直腸癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、ホジキン病、菌状息肉腫、鼻癌、神経鞘腫、神経芽細胞腫、腎臓癌、腎細胞腫、非ホジキンリンパ腫、乏突起膠腫、食道癌、溶骨性細胞腫および骨形成細胞腫(osteoplastic carcinoma)、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、頭頚部扁平上皮癌、前立腺癌、咽頭癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、膣癌、甲状腺癌シュネーベルガー病(Schneeberger’s disease)、食道癌、棘細胞腫、T細胞リンパ腫(菌状息肉症)、胸腺腫、卵管癌、眼腫瘍、尿道癌、泌尿器系腫瘍、尿路上皮癌、外陰癌、乳様突起合併症(mastoid involvement)、軟部組織腫瘍、軟部肉腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌および舌癌。
【0091】
特に、固形腫瘍が好ましい。さらに好ましいのは、前立腺細胞腫、脳腫瘍、肉腫、子宮頸癌、卵巣癌、乳癌、気管支癌、黒色腫、頭頚部腫瘍、食道癌、直腸癌、膵臓癌、膀胱癌、腎癌、肝臓、脳およびリンパ節での腫瘍転移である。
【0092】
さらに、本発明の生体吸収性医療製品の使用および適用は、医薬分野において、好ましくは放射線治療および/または従来の化学療法と併用することが特に好ましい。
この温存的な温熱療法では、癌薬物を局部に限定して適用し、患者への薬物負担と副作用を和らげる。さらに、不完全切除後に残存する腫瘍細胞が癌を局部的および選択的に死滅させるため、転移が再発する確率は格段に減少する。さらに、本発明の移植製品または医療製品上に任意に配置される薬物は、外部から適用される交番磁界によってナノ粒子から分離することができ、まさに活性部位でより選択的な効果を有する。従って、局所療法であるため、薬物が体内輸送中に失われることはなく、薬物用量をより正確にすることができる。また、上述の方法は、付着する薬物を有さないナノ粒子を用いて癌細胞に対して効果的に実施することもできる。本明細書において、ナノ粒子は、癌細胞に付着または浸入し、磁性粒子を加熱する外部から適用される磁場により癌細胞を死滅させる。
【0093】
さらに、特定の細胞の種類への結合性をさらに高めるため、モノクローナル抗体および/またはアプタマー等の標的探索機能を有する分子を、ナノ粒子の表面またはナノ粒子の外層または殻に結合させてもよい。
【0094】
本発明の好ましい実施形態では、磁性ナノ粒子の磁心は、磁鉄鉱(Fe34)、磁赤鉄鉱(γ−Fe23)または双方の酸化物の混合物から構成され、好ましくは超常磁性である。さらに、治療上有効な薬剤の付着を許容するコロイド性保護殻により、磁心を安定化する。
[実施例]
実施例1A:
担体に浸透または噴霧または浸漬させるためのナノ粒子懸濁液/溶液の生成に関する一般的指図
水1L中に0.23モルのFeCl2と0.46モルのFeCl3を含む溶液を窒素で脱気する。その上で、pH値が11.5に到達する量の5モル濃度のNaOHを20分以内に加える。得られた沈殿物を10分間65℃まで加熱し、引き続いて5分間室温まで冷却する。その後、洗浄溶液のpH値が9に到達するまで、脱イオン水および脱気水中で沈殿物を懸濁する。この沈殿物を水中で懸濁し、この懸濁水を氷酢酸でpH値が6になるまで調節する。得られた懸濁液に30重量%の水(H2O)溶液を10容量%加え、その後気体の発生が止まるまで撹拌する。その上で、5重量%の固体酸化鉄含有量が得られるまで懸濁液を水で希釈する。
【0095】
実施例1B(酸化無し/空気ガス供給有り):
900mLのエチレングリコール中0.1モルのFeCl3×6H2Oおよび0.2モルのFeCl3(無水)、50gの酢酸ナトリウムおよび195gのジアミノヘキサンを溶解して、エチレングリコール中酸化鉄ナノ粒子を生成し、1時間60℃まで加熱した。それから、この溶液を30分以内に沸点まで加熱した。沸騰温度を6時間維持した。得られた分散物を室温まで緩徐に冷却した。
エタノールと水の混合物でこの粒子を3回洗浄した。その後、900mLのエチレングリコール中でこの粒子を再懸濁し、大気中の酸素でガス供給を行った。この懸濁液をエチレングリコールの沸点まで加熱し、この温度を24時間維持した。冷却後、水/エタノールでこの粒子を洗浄し、水中で懸濁した。実施例1Gと同様の方法でこれらの粒子を被覆した。
【0096】
実施例1C(酸化有り/空気ガス供給有り):
900mLのエチレングリコール中0.1モルのFeCl3×6H2Oおよび0.2モルのFeCl3(無水)、50gの酢酸ナトリウムならびに195gのジアミノヘキサンを溶解して、エチレングリコール中酸化鉄ナノ粒子を生成し、1時間60℃まで加熱した。それから、この溶液を30分以内に沸点まで加熱した。沸騰温度を6時間維持した。得られた分散物を緩徐に室温まで冷却した。
エタノールおよび水の混合物でこの粒子を3回洗浄した。その後、900mLのエチレングリコール中でこの粒子を再懸濁し、大気中の酸素でガス供給を行った。この懸濁液をエチレングリコールの沸点まで加熱し、この温度を24時間維持した。冷却後、水/エタノールでこの粒子を洗浄し、900mLの1モル濃度のHNO3中で懸濁した。それから、0.7モル濃度の硝酸鉄溶液(Fe(NO33×9H2O)を450mL追加し、1時間(100℃)還流下で沸騰させた。それぞれ500mLの水で3回、得られた粒子を洗浄した。実施例1Gと同様の方法で上記粒子を被覆した。
【0097】
実施例1D(酸化無し/空気ガス供給無し):
900mLのエチレングリコール中0.1モルのFeCl3×6H2Oおよび0.2モルのFeCl3(無水)、50gの酢酸ナトリウムならびに195gのジアミノヘキサンを溶解して、エチレングリコール中酸化鉄ナノ粒子を生成し、1時間60℃まで加熱した。それから、この溶液を30分以内に沸点まで加熱した。沸騰温度を6時間維持した。得られた分散物を緩徐に室温まで冷却した。
【0098】
エタノールおよび水の混合物でこの粒子を3回洗浄した。その後、900mLのエチレングリコール中でこの粒子を再懸濁した。この懸濁液をエチレングリコールの沸点まで加熱し、この温度を24時間維持した。冷却後、水/エタノールでこの粒子を洗浄し、水中で懸濁した。実施例1Gと同様の方法で上記粒子を被覆した。
【0099】
実施例1E(酸化有り/空気ガス供給無し):
900mLのエチレングリコール中0.1モルのFeCl3×6H2Oおよび0.2モルのFeCl3(無水)、50gの酢酸ナトリウムならびに195gのジアミノヘキサンを溶解して、エチレングリコール中酸化鉄ナノ粒子を生成し、1時間60℃まで加熱した。それから、この溶液を30分以内に沸点まで加熱した。沸騰温度を6時間維持した。得られた分散物を緩徐に室温まで冷却した。
【0100】
エタノールおよび水の混合物でこの粒子を3回洗浄した。その後、900mLのエチレングリコール中でこの粒子を再懸濁した。この懸濁液をエチレングリコールの沸点まで加熱し、この温度を24時間維持した。冷却後、水/エタノールでこの粒子を洗浄し、900mLの1モル濃度のHNO3中で懸濁した。それから、0.7モル濃度の硝酸鉄溶液(Fe(NO33×9H2O)を450mL加え、1時間還流下で沸騰させた(100℃)。それぞれ500mLの水で3回、得られた粒子を洗浄した。実施例1Gと同様の方法で上記粒子を被覆した。
【0101】
実施例1F:
2000mLのメタノール中96gの水酸化ナトリウムおよび680mLのオレイン酸を含む溶液を500mLのメタノール中に216gの塩化鉄(III)六水和物を含む溶液に加え、酸化鉄ナノ粒子を生成した。メタノールで得られた固形物を洗浄しジエチルエーテルに溶解した。それから、水で数回抽出を行った。アセトンでこの固形物を沈殿させ、洗浄および真空乾燥を行った。
【0102】
250mのトリオクチルアミン中にこの固形物を75g溶解させ、1時間120℃まで加熱した。それから、オートクレーブ内で30分以内にこの溶液を380℃まで加熱した。4時間この温度を維持した。得られた分散物を室温まで緩徐に冷却した。エタノールと水の混合物でこの粒子を3回洗浄した。その後、300mLのジエチレングリコールジブチルエーテル中でこの粒子を懸濁し、大気中の酸素でガス供給を行った。オートクレープ内でこの懸濁液を300℃まで加熱し、この温度を24時間維持した。実施例1Cと同様の方法で上記粒子を酸化し、引き続いて実施例1Gと同様の方法で被覆した。
【0103】
実施例1G:
遠心分離法により高いg力で実施例1B〜1Fの粒子を収集し、エタノールで洗浄した。500mgの洗浄した生成物を抽出シェル(extraction shell)(603g、Whatman製)に量り取り、ソックスレー装置に挿入した。抽出剤として200mLのエタノールをソックスレー装置の蒸留釜に充填した。抽出剤を沸騰するまで加熱した。8時間にわたって連続して約16サイクルの抽出を行った。この過程でエタノール溶液は黄色がかった色に染色する。終了後抽出シェルを撤去し、粉末をシュレンク装置に移し、1時間真空乾燥した。抽出後、粉末を分散させるため、0.5gの実施例4のナノ粒子粉末を20mLの0.01モル濃度のHCl中で懸濁した。それから、このナノ粒子を30分間超音波処理した。その後、0.5gの固体オレイン酸ナトリウムを加えた。
【0104】
120mLの水/エタノール(3:1)と1.5重量%アンモニウムの混合物に3.3mLの実施例5の粒子分散物(0.97モル/LのFe)および2.14mLのテトラエトキシシランを加えた。添加中は分散物を撹拌し、その後6時間超音波処理を行った。遠心分離法および水中での再分散により、この分散物を精製した。
【0105】
実施例2:スポンジ
ナノ粒子で含浸された創傷挿入物
実施例1により生成されたナノ粒子懸濁液に市販のTabotamp(登録商標)スポンジを6分間浸漬した。乾燥後、この浸漬過程を2回繰り返した。代替的に、ピペットでこの懸濁液を適用することもできる。所望のスポンジ添加量に到達するまでこの過程を数回繰り返すことができる。
【0106】
実施例3:医療用セルロース
ナノ粒子で被覆された医療用セルロース
アルギン酸カルシウムおよびナトリウムカルボキシメチルセルロースからなる、Coloplast社製のSeaSorb等の、幅3cm長さ6cmの一片の創傷被覆材に、約1mLの実施例1のナノ粒子懸濁液を5回噴霧し、各噴霧段階後約20分間空気乾燥した。代替的に、ピペットで懸濁液を適用することもできる。所望の創傷被覆材添加量に到達するまで、この過程を数回繰り返すことができる。
【0107】
実施例4:薬物を有する医療用セルロース
ナノ粒子および細胞分裂阻害剤で含浸された医療用セルロース
0.3mg/mLのパクリタキセル溶液を含む実施例1で生成されたナノ粒子懸濁液中に、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ポリ−N−ビニルピロリドンおよびポリエチレンオキシド(5cm2)からなる市販の医療用セルロースを5分間浸漬した。乾燥および殺菌後、この医療製品はすぐに使える状態になる。
【0108】
実施例5:ゲル
本発明のゲルの生成:
50ミリモルの酢酸溶液1リットル中に4gのI型コラーゲンおよびII型コラーゲンの混合物を溶解する。4℃で45分間、9,500rpmでコラーゲン溶液を遠心分離する。上清を透析管に静かに移し、25リットルの1モル濃度の酢酸溶液に対して2日間、その後水に対してさらに4日間、透析を行う。
【0109】
その後、透析管内でこのコラーゲン溶液を濃度20mg/mL(2重量/容量%)まで濃縮した。
ゲルを生成するため、10mLのコラーゲン溶液を0.1mLの1N NaOH溶液および1mLのDMEM(ダルベッコ変法イーグル培地10倍)を用いて37℃で1時間培養した。その後、粒度分布が1〜100nmの乾燥凍結されたナノ粒子を1.5g加えた。
【0110】
固形小腸腫瘍の外科的除去後、可能な限り完全に術野にこのゲルを塗布した。
交番磁界での温熱療法による連続治療により、手術領域が53℃まで暖められることが示された。
【0111】
実施例6:薬物を有するゲル
実施例5で生成された10gのゲルに0.1gの細胞分裂阻害剤、テモゾロミドを加え、その後十分に混合する。実施例5に記載のようにゲルを塗布した。
【0112】
実施例7:スポンジ
US 2007031474 Aに記載のように2gのグロビン粉末を生成する。
1.5重量%グロビン粉末中に酸化セルロースを含む1%水性懸濁液をpH値7.2で凍結乾燥することにより、スポンジ状の移植片を生成する。酸化セルロースは、繊維または二次元もしくは三次元構造物の形態でも使用可能である。
【0113】
得られたスポンジ状構造は、約100mgの酸化セルロースおよび40〜200mgのグロビンからなり、体積は約10cm3、厚さは約3mmである。
このスポンジ状構造をエチレンオキシドで滅菌し梱包する。
【0114】
実施例8A:薬物を有する粒子
マイトマイシンが付着したナノ粒子の生成:
最初に、細胞分裂阻害性マイトマイシンをアミノシラン安定化酸化鉄ナノ粒子に結合させるため、マイトマイシンとアルデヒド官能化アルコキシシラン(例えば、トリエトキシシリルブチルアルデヒド)の共役体を合成する。このようにして、イミン結合により薬物を結合させる。WO97/38058Aに記載のようなアミノシラン安定化粒子の水溶性分散物に、この共役体を撹拌しながら加える。この混合物にエチレングリコールを加え、蒸留により水を除去する。その結果、薬物とシラン間の共役体はアミノシランの基礎上に既に存在する殻に結合(縮合)する。超純水に対する透析により精製が生じる。この反応に関する詳細な説明は、WO 2006108405 A2に記載されている。
【0115】
実施例8B:
アビジン架橋によりドキソルビシンが結合したナノ粒子の生成は、WO 2006108405 A2の記載に従って行う。
【0116】
実施例8C:
ヌクレオチド配列によってドキソルビシンが結合したナノ粒子の生成は、WO2006108405A2の記載に従って行う。
【0117】
実施例9:スポンジ
実施例7の記載に従ってスポンジ状構造を生成する。この場合、酸化セルロースの代わりにI型コラーゲン、II型コラーゲンおよびキトサンの混合物(25:25:50重量%)を使用する。
【0118】
その後、実施例8Bまたは8Cのドキソルビシンに結合したナノ粒子の水性懸濁液を上記スポンジに浸漬させ、乾燥する。
この浸漬の代わりに、実施例7の懸濁液を実施例8A、8Bまたは8Cのナノ粒子懸濁液に加え、他の成分とともに乾燥凍結してもよい。
【0119】
実施例10:医療用セルロース
キトサン、ウロン酸およびカルボキシメチルデキストラン(4cm2、約20mg)を基礎とする医療用セルロースを培養皿に平たく広げ、セルロースに50mgのナノ粒子が添加されるまで実施例8Aのマイトマイシンが結合したナノ粒子を含有する水性懸濁液を滴下する。
【0120】
実施例11:ナノ粒子を有するゲル
23.5重量%の非水和性レシチン(non−hydrated lecithin)、20.0重量%のプロピレングリコール、10.0重量%のエタノール、2.5重量%のソルビトール、0.05モル濃度のリン酸緩衝液(100.0%まで)を室温で16時間撹拌した。
【0121】
得られたゲルを実施例1のナノ粒子懸濁液とともに4時間撹拌し、ナノ粒子ゲルを得た。
実施例12:ナノ粒子を有する薄膜形成噴霧剤
172gのマレイン酸ジエチルエステル(maleic acid diethyl ester)(流入物1)、98gの無水マレイン酸(流入物2、加熱可能な滴下漏斗内)、200gのイソブチルビニルエーテル(流入物3)および12gのネオデカン酸tert‐ブチル(tert.−butyl perneodecanoate)(流入物4)を対応する計量容器に充填する。まず、撹拌棒、加熱装置、還流冷却器および調製薬品注入装置ならびにガス入口およびガス出口を備える2Lの撹拌容器に、111mLの流入物1、10mLの流入物3および3mLの流入物4を入れ、60℃まで加熱する。残りの流入物1、残りの流入物3および流入物2を3時間以内にさらに添加し、残りの流入物4を4時間以内にこの温度でさらに添加する。その後80℃でさらに1時間撹拌する。無色で高い粘性の溶解物が得られ、これをこの温度で18gの水と混合し1時間撹拌する。75℃まで冷却したら、480gのエタノールを15分以内にさらに添加し、この温度で1時間撹拌する。25℃まで冷却すると、固体含有量が48.1重量%の澄んだ粘性のあるポリマー溶液が得られる。
【0122】
このようにして得られた粘性ポリマー溶液を実施例1のナノ粒子懸濁液とともに2時間撹拌し、薄膜形成ナノ粒子噴霧剤を得た。
実施例13:ナノ粒子および薬物を有する薄膜形成噴霧剤
実施例12で得られた10mLのポリマー溶液を100mgのカルボプラチンおよび実施例1の1000mgの乾燥凍結されたナノ粒子と混合する。
【0123】
実施例14:子宮頚部、胸壁部および耳鼻咽喉部の腫瘍の治療
実施例1Aのナノ粒子溶液(2モル濃度&3モル濃度)で浸漬した担体材料を骨に適用する。骨を治療用装置内に置き、交番磁界に曝す。骨の上部で測定される温度上昇は、可能な限り一定の周囲温度で決定する。この実験設定は、ナノ粒子を被覆した担体を骨上または骨近傍に適用することにより、子宮頚部、胸壁部および耳鼻咽喉部腫瘍を交番磁界で治療可能であることを示すものである。
【0124】
材料
・装置:
−治療用装置MFH−12TS、
−管接続部を有する再循環冷却器(Julabo製;FC600S)、
−管接続部を有する固定器(ラット)、
−2つの温度計測センサを備えたPolytec Luxtron(モデル:LAB.KIT)、
−磁界強度測定装置(センサ付き)、
−水浴(37℃)、
−キャリブレーションセンサ(11/09まで較正)

・材料:
−実施例1Aの2モル濃度または3モル濃度のナノ粒子懸濁液:それぞれ15分間超音波処理
−担体材料:
1:スポンゴスタン粉末
(1g、吸収性ゼラチン粉末、止血薬;ジョンソン・エンド・ジョンソン社)
2:スポンゴスタン・スペシャル
(7×5×0.1cm、吸収性および止血性ゼラチンスポンジ;ジョンソン・エンド・ジョンソン社)
3:Gelitaタンポン
(1×1×1cm、スポンジ状、豚由来の硬化ゼラチンからなる、生分解性抗出血剤;B.Braun Melsungen社)
4:Lyostypt(登録商標)
(3×5cm、局部止血用ウシ由来天然コラーゲンの湿潤安定性湿布、吸収性;B.Braun Melsungen社)
−骨(「豚のスペアリブ」)
−鉗子
−プラスティシン(油粘土)
−医療用絆創膏、(Durapore(商標);3M社;2.5cm×9.14m)
−冷感/温感湿布(Pharma−Depot社;13×14cm)
−ツベルクリン用シリンジ(Omnifix(登録商標)−F;Braun社;0.01mL/1mL)
−使い捨て注射カニューラ(Sterican(登録商標);Braun社;27G×11/2”、0.40×40mm)
−ノギス(Vernier Caliper)(DialMax.08/09まで較正;MS150−4/Atl)
−スカルペル(ブレードNo.11)
−ビーカー
−カメラ
化学物質:
−過酸化水素(H22;30%)、
−アルギン酸(アルギン酸ナトリウム塩)、
実験設定
適切な固定器を再循環冷却器で55℃に調節した。機密性試験を行った。
1.治療用装置のスロットに固定器を配置した。
2.予熱(37℃)した冷感/温感湿布を固定器の「ヘッド領域」内に置いた(治療用装置内の空気体積を減らし、温度振動を僅かに「和らげる」)。
3.骨:
・スペアリブから骨を分離し、肉を大まかに取り除いた。
・H22のビーカーに入れた。
・引き続いてスカルペルで骨を「きれいに」した。
・のこぎりで骨を実験で使用可能なパーツに分けた。
4.磁界強度:
・磁界強度を測定する測定ヘッドを、固定器内の後で測定を行う位置に配置する。本明細書において、プラスティシンはマーキングを補助する役割を果たす。
・(医療用に関連した)3つの磁界強度を分析する:3.0kA/m、3.5kA/m、4.0kA/m
・上記測定により以下の数値を得た:
【0125】
【表1】

【0126】
%磁界強度は、割り当てられた磁界強度(kA/m)に対応する当該装置設定である。
5.内部空間およびアプリケータ底面の空気温度は、固定器内で決定する。
実施例14A:Lyostypt(登録商標)
粒子:実施例1Aのナノ粒子懸濁液(0.5mL、2モル濃度)
担体:Lyostypt(登録商標)、サイズ:(19.95×14.9×3.4)mm
骨:サイズ:(44.4×13.2×10.9)mm
骨断片を測定し[測定値:(44.4×13.2×10.9)mm]、担体の一部を特定の大きさに切り揃えた[測定値:(19.95×14.9×3.4)mm]。この担体を骨の上に置き、粒子(実施例1Aに記載、0.5mL、2モル濃度)を浸漬する。添加した骨をアプリケータ内に配置し[センサ1(赤):浸漬した担体上方から垂直方向;センサ2(青):基本値(「空の」骨)]、担体の数値を決定する:
【0127】
【表2】

【0128】
【表3】

【0129】
【表4】

【0130】
センサは常に担体と骨間に配置する。
MF↑:交番磁界オン
MF↓:交番磁界オフ
ファン↑:ファン入
ファン↓:ファン切
センサ1↓:センサ機能せず
実施例14B:スポンゴスタン
粒子:実施例1Aのナノ粒子懸濁液(1.5mL、2モル濃度)
担体:スポンゴスタン粉末、質量:0.3g
骨:サイズ:(44.4×13.2×10.9)mm
1.5mLの粒子(実施例1Aに記載、2モル濃度)中で1.08gの粉末(担体)を浸漬して十分に混合し、浸漬した担体のm=0.46gの部分量は骨をモデルとする。
【0131】
磁界強度を測定する測定ヘッドを、固定器内の後で測定を行う位置に配置する。プラスティシンはマーキングを補助する役割を果たす。(医療用に関連する)3つの磁界強度を分析する(3.0kA/m、3.5kA/m、4.0kA/m)。
【0132】
【表5】

【0133】
【表6】

【0134】
【表7】

【0135】
実施例14C:スポンゴスタン
粒子:実施例1Aのナノ粒子懸濁液(1.6mL、2モル濃度)
担体:実施例14Bにより浸漬した担体、質量:約0.8g
骨:サイズ:(44.4×13.2×10.9)mm
実施例14Bの浸漬した担体の残量約0.8グラムを1.6mLの粒子(実施例1Aに記載、2モル濃度)と混合し、実施例14により洗浄した骨の上に適用する。同様に、骨と担体間にセンサを配置する。同様に、3つの磁界強度(3.0kA/m、3.5kA/m、4.0kA/m)で測定を行った。
【0136】
【表8】

【0137】
【表9】

【0138】
【表10】

【0139】
実施例14D:スポンゴスタン・スペシャル
粒子:実施例1Aのナノ粒子懸濁液(1.0mL、2モル濃度)
担体:実施例14Bにより浸漬した担体、サイズ:(10.0×10.0×2.0)mm
骨:サイズ:(44.4×13.2×10.9)mm
担体が粒子(実施例1Aに記載、1.0mL、2モル濃度)を吸収するように、担体に粒子懸濁液を浸漬させる必要がある(15分)。1mLの粒子懸濁液をこの担体に注入して梱包する[m=0.00];この石積み状の担体は最大限に吸収し、骨の上に配置される。実施例14Aの記載に従って測定を行う。
【0140】
【表11】

【0141】
【表12】

【0142】
【表13】

【0143】
実施例14E:Gelitaタンポン
粒子:実施例1Aのナノ粒子懸濁液(1.0mL、2モル濃度)
担体:Gelitaタンポン、サイズ:(1×1×1)cm
骨:サイズ:(44.4×13.2×10.9)mm
担体にナノ粒子懸濁液(実施例1aに記載、1.0mL、2モル濃度)を吸収させるため、担体に粒子懸濁液を浸漬させる必要がある(15分)。1mLの粒子懸濁液をGelitaタンポンの梱包物に注入する。立方体のGelitaタンポンは最大限に吸収し(ナノ粒子懸濁液を含むGelitaタンポン[m=0.00]:m=0.45g)、骨の上に配置する。
【0144】
【表14】

【0145】
【表15】

【0146】
【表16】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
交番磁界により加熱可能な固体またはゲル状の医療製品であって、
前記医療製品は、生理学的に受容可能な組織、スポンジ、薄膜またはゲルの形態で提供され、且つ
交番磁界により励起されると発熱する磁性粒子が、前記医療製品内に含有され、これにより前記医療製品は加熱されることを特徴とする、医療製品。
【請求項2】
前記粒子は、前記医療製品内に埋め込み固定されるか、または前記医療製品に付着されることを特徴とする、請求項1に記載の医療製品。
【請求項3】
前記粒子は、前記医療製品内に永久的に残存し、拡散によって放出されず、且つ生分解性医療製品の場合、単に生分解過程により放出されることを特徴とする、請求項1または2に記載の医療製品。
【請求項4】
前記医療製品は、変形性があり、外科的腫瘍除去後の組織または臓器または術野の表面外形に沿い得ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項5】
前記医療製品は、生分解性であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項6】
前記粒子は、微粒子またはナノ粒子であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項7】
前記粒子は、常磁性または超常磁性であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項8】
前記医療製品は、前記磁性粒子で含浸、被覆または浸漬されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項9】
前記医療製品は、1〜12カ月以内に生体吸収可能であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項10】
前記医療製品は、生理学的に認容性があり、生理学的に認容性がある成分に分解されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項11】
前記医療製品は、弾力性があり、金属または金属合金から構成されず、且つ、
前記医療製品は、前記粒子の水溶液の形態で提供されないことを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項12】
前記生分解性医療製品は、前記磁性粒子を放出し、および/または前記磁性粒子を周囲の腫瘍組織または腫瘍細胞に送達することを特徴とする、請求項5〜11のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項13】
前記磁性粒子は、前記医療製品の表面1立方センチメートル当たり10〜100ミリグラムの濃度で提供されることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項14】
前記磁性粒子は、前記医療製品1グラム当たり100ミリグラム〜2グラムの濃度で提供されることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項15】
前記医療製品は、医療用セルロース、包帯材料、創傷挿入物、外科用縫合糸、圧定布、スポンジ、医療用織物、軟膏剤、ゲル、薄膜形成組成物または薄膜形成噴霧剤であることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項16】
抗増殖薬、抗遊走薬、抗血管新生薬、抗血栓薬、抗炎症薬、消炎薬、細胞分裂阻害剤、細胞毒性薬、抗凝固薬、抗菌剤、抗ウイルス薬および/または抗真菌薬からなる群から選択される少なくとも1つの治療上有効な薬剤をさらに含む、請求項1〜15のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項17】
前記少なくとも1つの治療上有効な物質は、アクチノマイシンS、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、プリンまたはピリミジン塩基の拮抗薬、アントラサイクリン、アロマターゼ阻害剤、アスパラギナーゼ、抗エストロゲン薬、ベキサロテン、ブレオマイシン、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン誘導体、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、シクロホスファミド、シタラビン、シトシンアラビノシド、アルキル化細胞分裂阻害剤、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エストラムスチン、エトポシド、エキセメスタン、フルダラビン、フルオロウラシル、葉酸拮抗薬、ホルメスタン、ゲムシタビン、グルココルチコイド、ゴセレリン、ホルモンおよびホルモン拮抗薬、ハイカムチン、ヒドロキシル尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、イリノテカン、レトロゾール、リュープロレリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、ミルテホシン、マイトマイシン、有糸分裂阻害剤、ミトキサントロン、ニムスチン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペントスタチン、プロカルバジン、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、テストラクトン、チオテパ、チオグアニン、トポイソメラーゼ阻害剤、トポテカン、トレオスルファン、トレチノイン、トリプトレリン、トロホスファミド、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、細胞静止性有効抗生物質(cytostatically effective antibiotics)を含む群から選択されることを特徴とする、請求項16に記載の医療製品。
【請求項18】
前記少なくとも1つの薬物は、接着結合、イオン結合、供給結合、またはリンカー結合により前記粒子と結合することを特徴とする、請求項16または17に記載の医療製品。
【請求項19】
前記少なくとも1つの薬物の前記担体からの分離は、交番磁界によって開始されることを特徴とする、請求項16〜18のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項20】
前記医療製品は、以下の材料からなることを特徴とする、請求項1〜19のいずれか1項に記載の医療製品:ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリイソブチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアミド、ポリエーテルアミド、ポリエチレンアミン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカルボウレタン、ポリビニルケトン、ハロゲン化ポリビニル、ハロゲン化ポリビニリデン、ポリビニルエーテル、ポリビニル芳香族、ポリビニルエステル、ポリビニルピロリドン、ポリオキシメチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリウレタン、ポリオレフィンエラストマー、ポリイソブチレン、EPDMゴム、フルオロシリコン、カルボキシメチルキトサン、ポリエチレンテレフタレート、ポリバリレート、カルボキシメチルセルロース、セルロース、レーヨン、レーヨントリアセテート、硝酸セルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースブチレート、セルロースアセテートブチレート、エチルビニルアセテート共重合体、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ABS樹脂、EPDMゴム、シリコンプレポリマー、シリコーン、ポリシロキサン、ポリビニルハロゲン、セルロースエーテル、セルローストリアセテート、キトサン、キトサン誘導体、重合可能な油、ポリバレロラクトン、ポリ−ε−デカノラクトン、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリラクチドとポリグリコリドの共重合体、ポリ−ε−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレート、ポリヒドロキシブチレート−コ−バリレート、ポリ(1、4−ジオキサン−2、3−ジオン)、ポリ(1、3−ジオキサン−2−オン)、ポリ−パラ−ジオキサノン、ポリ無水物、ポリマレイン酸無水物、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリシアノアクリレート、ポリカプロラクトンジメチルアクリレート、ポリ−β−マレイン酸、ポリカプロラクトンブチルアクリレート、オリゴカプロラクトンジオールおよびオリゴジオキサノンジオールからのマルチブロックポリマー、ポリエーテルエステル−マルチブロックポリマーPEGおよびポリ(ポリブチレンテレフタレート)、ポリピボトラクトン(Polypivotolactone)、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリカプロラクトン−グリコリド、ポリ(γ−エチルグルタミン酸)、ポリ(DTH−イミノカーボネート)、ポリ(DTE−コ−DT−カーボネート)、ポリ(ビスフェノールA−イミノカーボネート)、ポリオルトエステル、ポリグリコール酸トリメチルカーボネート、ポリトリメチルカーボネート、ポリイミノカーボネート、ポリビニルアルコール、ポリエステルアミド、グリコール化ポリエステル、ポリリン酸エステル、ポリホスファゼン、ポリ[p−カルボキシフェノキシ)プロパン]、ポリヒドロキシペンタン酸(polyhydroxypentaic acid)、ポリエチレンオキシド−プロピレンオキシド、軟質ポリウレタン、骨格にアミノ酸残基を有するポリウレタン、ポリエーテルエステル、ポリエチレンオキシド、ポリアルケンオキサレート、ポリオルトエステル、カラギーナン、デンプン、コラーゲン、タンパク質ペースのポリマー、ポリアミノ酸、合成ポリアミノ酸、ゼイン、修飾されたゼイン、ポリヒドロキシアルカノアート、ペクチン酸、アクチニック酸(actinic acid)、フィブリン、修飾されたフィブリン、カゼイン、修飾されたカゼイン、カルボキシメチルサルフェート、アルブミン、ヒアルロン酸、ヘパランサルフェート、ヘパリン、コンドロイチンサルフェート、デキストラン、シクロデキストリン、PEGとポリプロピレングリコールからなる共重合体、アラビアゴム、グアー、または他のゴム樹脂、ゼラチン、コラーゲン、コラーゲン−N−ヒドロキシスクシンイミド、脂質、リポイド、重合可能な油とその修飾体、上記物質の共重合体および混合物。
【請求項21】
医学の領域で使用される請求項1〜20のいずれか1項に記載の医療製品。
【請求項22】
癌、腫瘍および増殖性疾病の予防、治療および後療法のための手段を提供するための請求項1〜21のいずれか1項に記載の医療製品の使用。
【請求項23】
癌手術の術野の前記後療法における請求項22に記載の医療製品の使用。
【請求項24】
癌、腫瘍または増殖性疾病は、以下からなる群から選択されることを特徴とする、請求項22または23に記載の医療製品の使用:腺癌、脈絡膜黒色腫、急性白血病、聴神経鞘腫、膨大部癌、肛門癌、星状細胞腫、基底細胞腫、膵臓癌、結合組織腫瘍、膀胱癌、気管支癌、非小細胞気管支癌、乳癌、バーキットリンパ腫、子宮体癌、CUP症候群、結腸癌、小腸癌、小腸腫瘍、卵巣癌、子宮内膜癌、上衣腫、上皮癌、ユーイング腫瘍、胃腸腫瘍、胆嚢癌、胆道癌、子宮癌、子宮頚癌、神経膠芽腫、婦人科腫瘍、耳鼻咽喉腫瘍、血液腫瘍(hematologic neoplasias)、尿道癌、皮膚癌、脳腫瘍(神経膠腫)、脳腫瘍転移、精巣癌、下垂体腫瘍、カルチノイド、カポジ肉腫、喉頭癌、胚腫瘍、骨癌、結腸直腸癌、頭頚部腫瘍(頚部、鼻耳領域の腫瘍)、結腸癌、頭蓋咽頭腫、口の領域および唇の癌、肝癌、肝腫瘍転移、眼瞼腫瘍、肺癌、リンパ腺癌(ホジキン/非ホジキン)、リンパ腫、胃癌、悪性黒色腫、悪性腫瘍、胃腸管悪性腫、乳癌、直腸癌、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、ホジキン病、菌状息肉腫、鼻癌、神経鞘腫、神経芽細胞腫、腎臓癌、腎細胞腫、非ホジキンリンパ腫、乏突起膠腫、食道癌、溶骨性細胞腫および骨形成細胞腫(osteoplastic carcinoma)、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、陰茎癌、頭頚部扁平上皮癌、前立腺癌、咽頭癌、直腸癌、網膜芽細胞腫、膣癌、甲状腺癌シュネーベルガー病(Schneeberger’s disease)、食道癌、棘細胞腫、T細胞リンパ腫(菌状息肉症)、胸腺腫、卵管癌、眼腫瘍、尿道癌、泌尿器系腫瘍、尿路上皮癌、外陰癌、乳様突起合併症(mastoid involvement)、軟部組織腫瘍、軟部肉腫、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌および舌癌。

【公表番号】特表2011−511684(P2011−511684A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546211(P2010−546211)
【出願日】平成21年2月11日(2009.2.11)
【国際出願番号】PCT/DE2009/000196
【国際公開番号】WO2009/100716
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510160890)マグフォース ナノテクノロジーズ アーゲー (2)
【Fターム(参考)】