説明

ナノ粒子を含有する二層反射防止フィルム

光ディスプレイ基板用反射防止膜として役立つ低屈折率組成物用のナノ粒子含有層状組成物および調製方法について記載する。これら組成物は、ナノ粒子を含有する高屈折率反射層と、この高屈折率層の上の低屈折率層とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスプレイ基板用反射防止膜として役立つ低屈折率組成物用のナノ粒子含有層状組成物に関し、またそのような組成物の調製方法に関する。これら組成物は、ナノ粒子を含有する高屈折率反射層およびこの高屈折率反射層の上の低屈折率反射層を構成する。
【背景技術】
【0002】
反射防止膜は、周囲の光の反射が原因のコントラスト低下または鮮明度の低下を干渉の利用によって防止するために、一般に光ディスプレイ、例えば陰極線管ディスプレイ(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、および液晶ディスプレイ(LCD)の最も外側の面に配置される。物質の屈折率は、フッ素を含ませることによってまたその物質の密度を減らすこと(例えばボイド)によって下げることができるが、この両方の手法はフィルム強度(すなわち耐摩耗性)の低下を伴う。ナノ粒子を含ませることもまた使用されてきた。
【0003】
これらの難点を克服するために使用されてきた別の方法は、基板上に、任意選択でナノ粒子を含有する、2枚以上の反射防止膜を貼ることである。この場合、2枚のレイヤーまたは層の組合せが全体として反射防止レイヤーを生み出す。しかしながら2ステップ法は、商業的利用の場合、複雑でありまた法外な費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、産業界では低コストの単一ステップ塗布工程で利用することができる低反射率をもつ反射防止フィルムを有することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
簡潔に言えば、また本発明の一態様によれば、
(i)基板と、
(ii)(iia)低屈折率フルオロエラストマー高分子バインダーと、アクリルまたはビニル官能基で表面官能基化した複数個の高屈折率ナノ粒子とを含む前記基板上に位置づけられた高屈折率下側層、および
(iib)前記低屈折率フルオロエラストマー高分子バインダーを含む前記高屈折率下側層の上に位置づけられた低屈折率上側層
を備え、
その低屈折率上側層の屈折率が高屈折率下側層の屈折率よりも小さい、
前記基板上の層状反射防止膜と
を備えた物品を提供する。
【0006】
本発明の別の態様によれば、1.41またはそれより大きい屈折率を有することができる高屈折率層を提供する。さらにその層状反射防止膜を、単一の塗布ステップにおいて基板上に形成することができる。
【0007】
本発明の別の態様によれば、
(i)液体混合物を形成するステップであって、
(i−a)フルオロエラストマーポリマー、
(i−b)任意選択で、マルチオレフィン架橋剤、および
(i−c)任意選択で、少なくとも1個の重合性基を有するオキシシラン
がその中に溶解された溶媒を含み、
かつ前記溶媒が、その中に
(i−d)アクリル官能基で表面官能基化された複数個のナノ粒子
を懸濁している
液体混合物を形成するステップと、
(ii)基板上に前記液体混合物を塗布して、前記基板上に液体混合物の膜を形成するステップと、
(iii)前記液体混合物の膜から溶媒を除去して、前記基板上に未硬化膜を形成するステップと、
(iv)前記未硬化膜を硬化し、それによって
(iv−a)硬化される高分子バインダーおよび前記複数個のナノ粒子を含む前記基板上に位置づけられた高屈折率下側層、および
(iv−b)硬化される高分子バインダーを含む前記高屈折率下側層の上に位置づけられた低屈折率上側層
を備え、
その低屈折率上側層の屈折率が高屈折率下側層の屈折率よりも小さい、
層状反射防止膜を形成するステップと
を含む方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本明細書中で開示した層状反射防止膜を有する実施例1からのハードコートしたトリアセチルセルロースフィルムの断面の透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
【図2】層状反射防止膜を現わさない比較例Aからのハードコートしたトリアセチルセルロースフィルムの断面の透過電子顕微鏡写真(TEM)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、その上に層状反射防止膜を有する基板を含む物品を開示する。この基板上の層状反射防止膜は、
(i)基板と、
(ii)(iia)低屈折率フルオロエラストマー高分子バインダーと、アクリルまたはビニル官能基で表面官能基化された複数個の高屈折率ナノ粒子とを含む前記基板上に位置づけられた高屈折率下側層、および
(iib)前記低屈折率フルオロエラストマー高分子バインダーを含む前記高屈折率下側層の上に位置づけられた低屈折率上側層
を備え、
その低屈折率上側層の屈折率が高屈折率下側層の屈折率よりも小さい、
前記基板上の層状反射防止膜と
を含む。
【0010】
本発明はまた、
(i)液体混合物を形成するステップであって、
(i−a)フルオロエラストマーポリマー、
(i−b)任意選択で、マルチオレフィン架橋剤、
(i−c)任意選択で、少なくとも1個の重合性基を有するオキシシラン
がその中に溶解された溶媒を含み、
かつ前記溶媒が、その中に
(i−d)アクリル官能基で表面官能基化された複数個のナノ粒子
を懸濁している
液体混合物を形成するステップと、
(ii)基板上に前記液体混合物を塗布して、前記基板上に液体混合物の膜を形成するステップと、
(iii)前記液体混合物の膜から溶媒を除去して、前記基板上に未硬化膜を形成するステップと、
(iv)前記未硬化膜を硬化し、それによって
(iv−a)前記硬化される高分子バインダーおよび前記複数個のナノ粒子を含む前記基板上に位置づけられた高屈折率下側層、および
(iv−b)硬化される高分子バインダーを含む前記高屈折率下側層の上に位置づけられた低屈折率上側層
を含み、
その低屈折率上側層の屈折率が高屈折率下側層の屈折率よりも小さい、
層状反射防止膜を形成するステップと
を含む、基板上に層状反射防止膜を形成する方法を開示する。
【0011】
用語「層」は、レイヤーを意味するためにも使用される。
【0012】
望ましい反射防止特性を得るために必要な粒子、バインダー、および厚さの適切な選択については、下記でより詳細に述べるモデリング方程式を用いて決めることができる。
【0013】
低屈折組成物形成に使用するのに適したフルオロエラストマーをここで詳細に述べる。この用途の目的ではフルオロエラストマーは、少なくとも約65重量%のフッ素、好ましくは少なくとも約70重量%のフッ素を含有する炭素系ポリマーであり、かつそのコポリマー骨格中に炭素−炭素結合を有することを特徴とする実質上非晶質のコポリマーである。フルオロエラストマーは、2種類以上のモノマーから生じる反復単位を含み、かつ三次元網目を形成するための架橋を可能にする硬化部位を有する。第一のモノマーの型は、結晶化する傾向のある直鎖フルオロエラストマーセグメントを生じさせる。嵩高の基を有する第二のモノマーの型は、そのような結晶化の傾向を打ち破り、実質上非晶質のエラストマーを生成させるようにフルオロエラストマー鎖中にところどころに組み込まれる。直鎖セグメントに役立つモノマーは、嵩高の置換基のないものであり、それらにはフッ化ビニリデン(VDF)CH2=CF2、テトラフルオロエチレン(TFE)CF2=CF2、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)CF2=CFCl、およびエチレン(E)CH2=CH2が挙げられる。結晶性を妨げるのに有用な嵩高の基を有するモノマーには、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)CF2=CFCF3、1−ヒドロペンタフルオロプロピレンCHF=CFCF3、2−ヒドロペンタフルオロプロピレンCF2=CHCF3、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)類(例えばペルフルオロ(メチルビニル)エーテル)(PMVE)CF2=CFOCF3、およびプロピレン(P)CH2=CHCH3が挙げられる。フルオロエラストマーは、全般的にはA.MooreがFluoroelastomers Handbook:The Definitive User’s Guide and Databook,William Andrew Publishing,ISBN 0−8155−1517−0(2006)中で述べている。
【0014】
本発明によるフルオロエラストマーは、臭素、ヨウ素(ハロゲン)、およびエテニルからなる群から選択される少なくとも1種類の硬化部位を有することができる。硬化部位は、そのフルオロエラストマー骨格上に、またはフルオロエラストマー骨格に付着している基上に位置することができ、この場合、そのフルオロエラストマーを製造する重合中に硬化部位モノマーを含ませることによって生ずる。ハロゲン化硬化部位もまた、フルオロエラストマー鎖末端に位置することができ、そのフルオロエラストマーを製造する重合中に加えられるハロゲン化連鎖移動剤の使用によって生ずる。硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、フルオロエラストマーとその未硬化組成物中の他の反応性成分の間の共有結合(すなわち架橋)の形成を引き起こす硬化(例えば、熱または光化学硬化)とも呼ばれる反応条件に曝される。そのフルオロエラストマー骨格上に、またはフルオロエラストマー骨格に付着している基上に位置する硬化部位の形成を引き起こす硬化部位モノマーには、臭素化アルケンおよび臭素化不飽和エーテル(臭素硬化部位をもたらす)と、ヨウ素化アルケンおよびヨウ素化不飽和エーテル(ヨウ素硬化部位をもたらす)と、他の炭素−炭素不飽和と共役していない少なくとも1種類のエテニル官能基を含有するジエン(エテニル硬化部位をもたらす)とが一般に挙げられる。これに加えてまたは別法では、ヨウ素原子、臭素原子、またはこれらの混合物が、フルオロエラストマーを製造する重合の間の連鎖移動剤の使用の結果としてそのフルオロエラストマー鎖末端に存在してもよい。有用なフルオロエラストマーは、そのフルオロエラストマーを構成するモノマーの重量を基準にして、一般には硬化部位を約0.25重量%から約1重量%、好ましくは硬化部位を約0.35重量%含有する。
【0015】
臭素硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、そのフルオロエラストマーを形成する重合の間にフルオロエラストマー中に臭素化硬化部位モノマーを共重合させることによって得ることができる。臭素化硬化部位モノマーは、臭素がその二重結合に付着しているか、または分子中の他のどこかに付着している炭素−炭素不飽和を有し、H、F、およびOを含めた他の元素を含有することができる。臭素化硬化部位モノマーの例には、ブロモトリフルオロエチレン、臭化ビニル、1−ブロモ−2,2−ジフルオロエチレン、臭化ペルフルオロアリル、4−ブロモ−1,1,2−トリフルオロブテン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、4−ブロモ−1,1,3,3,4,4−ヘキサフルオロブテン、4−ブロモ−3−クロロ−1,1,3,4,4−ペンタフルオロブテン、6−ブロモ−5,5,6,6−テトラフルオロヘキセン、4−ブロモペルフルオロ−1−ブテン、および臭化3,3−ジフルオロアリルが挙げられる。さらなる例には、臭化不飽和エーテル、例えば2−ブロモ−ペルフルオロエチルペルフルオロビニルエーテルと、BrCF2(ペルフルオロアルキレン)OCF=CF2の部類のフッ化化合物、例えばCF2BrCF2OCF=CF2と、ROCF=CFBrおよびROCBr=CF2(ただし、Rは低級アルキル基またはフルオロアルキル基)の部類のフルオロビニルエーテル、例えばCH3OCF=CFBrおよびCF3CH2OCF=CFBrとが挙げられる。
【0016】
ヨウ素硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、そのフルオロエラストマーを形成する重合の間にフルオロエラストマー中へヨウ素化硬化部位モノマーを共重合させることによって得ることができる。ヨウ素化硬化部位モノマーは、ヨウ素がその二重結合に付着しているか、または分子中の他のどこかに付着している炭素−炭素不飽和を有し、H、Br、F、およびOを含めた他の元素を含有することができる。ヨウ素化硬化部位モノマーの例には、ヨードエチレン、ヨードトリフルオロエチレン、4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、3−クロロ−4−ヨード−3,4,4−トリフルオロブテン、2−ヨード−1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(ビニルオキシ)エタン、2−ヨード−1−(ペルフルオロビニルオキシ)−1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−ヨード−1−(ペルフルオロビニルオキシ)プロパン、2−ヨードエチルビニルエーテル、および3,3,4,5,5,5−ヘキサフルオロ−4−ヨードペンテンが挙げられる。さらなる例には、式、CHR=CHZCH2CHRIのオレフィン(ただし、Rはそれぞれ独立にHまたはCH3であり、Zは、線状または分岐した、任意選択で1個または複数個のエーテル酸素原子を含有するC1〜C18(ペル)フルオロアルキレンラジカルであるか、または(ペル)フルオロポリオキシアルキレンラジカルである)が挙げられる。役に立つヨウ素化硬化部位モノマーのさらなる例は、式、I(CH2CF2CF2nOCF=CF2およびICH2CF2O[CF(CF3)CF2O]nCF=CF2(ただしn=1〜3)の不飽和エーテルである。
【0017】
エテニル硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、そのフルオロエラストマーを形成する重合の間にフルオロエラストマー中へエテニル含有硬化部位モノマーを共重合させることによって得ることができる。エテニル硬化部位モノマーは、他の炭素−炭素不飽和と共役していないエテニル官能性をもつ炭素−炭素不飽和を有する。したがってエテニル硬化部位は、少なくとも2点の炭素−炭素不飽和を有し、また任意選択でH、Br、F、およびOを含めた他の元素を含有する非共役ジエンから生まれることができる。炭素−炭素不飽和の一方の点はフルオロエラストマー骨格中に組み込まれ(すなわち重合し)、他方はフルオロエラストマー骨格に懸垂し、反応性硬化(すなわち架橋)に利用可能である。エテニル硬化部位モノマーの例には、1,4−ペンタジエン、1,5−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン、8−メチル−4−エチリデン−1,7−オクタジエンなどの非共役ジエンおよびトリエンが挙げられる。
【0018】
硬化部位モノマーのなかではブロモトリフルオロエチレン、4−ブロモ−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン、および4−ヨード−3,3,4,4−テトラフルオロ−1−ブテン−1が好ましい。
【0019】
前述の硬化部位に加えて、または別法では、ハロゲン硬化部位が、そのフルオロエラストマーの重合の間の臭素および/またはヨウ素(ハロゲン化)連鎖移動剤の使用の結果としてフルオロエラストマー鎖末端に存在することができる。このような連鎖移動剤には、そのポリマー鎖の一方または両方の端に結合ハロゲンを生じさせるハロゲン化化合物が挙げられる。役に立つ連鎖移動剤の例には、ヨウ化メチレン、1,4−ジヨードペルフルオロ−n−ブタン、1,6−ジヨード−3,3,4,4−テトラフルオロヘキサン、1,3−ジヨードペルフルオロプロパン、1,6−ジヨードペルフルオロ−n−ヘキサン、1,3−ジヨード−2−クロロペルフルオロプロパン、1,2−ジ(ヨードジフルオロメチル)ペルフルオロシクロブタン、モノヨードペルフルオロエタン、モノヨードペルフルオロブタン、2−ヨード−1−ヒドロペルフルオロエタン、1−ブロモ−2−ヨードペルフルオロエタン、1−ブロモ−3−ヨードペルフルオロプロパン、および1−ヨード−2−ブロモ−1,1−ジフルオロエタンが挙げられる。ヨウ素および臭素の両方を含有する連鎖移動剤が好ましい。
【0020】
硬化部位を含有するフルオロエラストマーは、塊の状態の、不活性溶媒に溶かした溶液の状態の、水性エマルションの状態の、または水性懸濁液の状態のいずれかの遊離基開始剤の助けを借りた適切なモノマー混合物の重合によって調製することができる。重合は、連続、バッチ、または半バッチ操作で行うことができる。役に立つ一般的な重合法は、前述のMooreのFluoroelastomers Handbook中で考察されている。一般的なフルオロエラストマー作製方法は、米国特許第4,281,092号明細書、第3,682,872号明細書、第4,035,565号明細書、第5,824,755号明細書、第5,789,509号明細書、第3,051,677号明細書、および第2,968,649号明細書中に開示されている。
【0021】
硬化部位を含有するフルオロエラストマーの例には、硬化部位モノマー、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、および任意選択のテトラフルオロエチレンのコポリマーと、硬化部位モノマー、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレン、およびクロロトリフルオロエチレンのコポリマーと、硬化部位モノマー、フッ化ビニリデン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、および任意選択のテトラフルオロエチレンのコポリマーと、硬化部位モノマー、テトラフルオロエチレン、プロピレン、および任意選択のフッ化ビニリデンのコポリマーと、硬化部位モノマー、テトラフルオロエチレン、およびペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、好ましくはペルフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマーとが挙げられる。フッ化ビニリデンを含有するフルオロエラストマーが好ましい。
【0022】
エチレン、テトラフルオロエチレン、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)、および臭素含有硬化部位モノマーを含むフルオロエラストマー、例えば、米国特許第4,694,045号明細書中でMooreが開示しているものが、本発明の組成物に役立つ。DuPont Performance Elastomers,DE,USAから入手できるVITON(登録商標)GFシリーズのフルオロエラストマー類、例えばVITON(登録商標)GF−200Sなどのヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、およびハロゲン硬化部位モノマーのコポリマーもまた役立つ。
【0023】
未硬化組成物の別の随意の成分は、少なくとも1種類のマルチオレフィン架橋剤である。「マルチオレフィン」とは、互いに共役していない少なくとも2種類の炭素−炭素二重結合を含有することを意味する。マルチオレフィン架橋剤は、未硬化組成物中に、架橋性ポリマー100重量部当たり約1から約25重量部(phr、100分の1)、好ましくは約1から約10phrの量で存在する。役に立つマルチオレフィン架橋剤には、アクリル(例えば、アクリロイルオキシ、メタクリロイルオキシ)およびアリル官能基を含有するものが挙げられる。
【0024】
好ましいマルチオレフィン架橋剤は、非フッ素化マルチオレフィン架橋剤である。「非フッ素化」とは、共有結合したフッ素原子を含有しないことを意味する。
【0025】
アクリルマルチオレフィン架橋剤には、式、R(OC(=O)CR’=CH2n(ただしRは、線状または分岐アルキレン、線状または分岐オキシアルキレン、芳香族、芳香族エーテル、またはヘテロ環であり、R’はHまたはCH3であり、nは2から8の整数である)によって表されるものが挙げられる。アクリルマルチオレフィン架橋剤を調製することができる代表的な多価アルコールには、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリトリトール、ジトリメチロールプロパン、およびジペンタエリトリトールが挙げられる。代表的なアクリルマルチオレフィン架橋剤には、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ビストリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリトリトールヘキサ(メタ)アクリレート、およびこれらの組合せが挙げられる。本明細書中で、呼称「(メタ)アクリレート」は、アクリレートとメタクリレートの両方を包含することを意味する。
【0026】
アリルマルチオレフィン架橋剤には、式、R(CH2CR’=CH2n(ただしRは、線状または分岐アルキレン、線状または分岐オキシアルキレン、芳香族、芳香族エーテル、芳香族エステル、またはヘテロ環であり、R’はHまたはCH3であり、nは2から6の整数である)によって表されるものが挙げられる。代表的アリルマルチオレフィン架橋剤には、1,3,5−トリアリルイソシアヌレート、1,3,5−トリアリルシアヌレート、およびトリアリルベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレートが挙げられる。
【0027】
未硬化組成物の別の随意の成分は、少なくとも1種類のオキシシランである。本発明による低屈折率組成物を形成するのに役立つオキシシランは、i)アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基、ii)オキシシラン官能基、およびiii)そのアクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基とそのオキシシラン官能基を結びつける二価有機ラジカルを含む化合物である。オキシシランには、式、X−Y−SiR123によって表されるものが挙げられる。Xは、アクリロイルオキシ(CH2=CHC(=O)O−)またはメタクリロイルオキシ(CH2=C(CH3)C(=O)O−)官能基を表す。Yは、このアクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基およびこのオキシシラン官能基に共有結合で結合した二価有機ラジカルを表す。Yラジカルの例には、2から10個の炭素原子を有する置換および非置換アルキレン基と、6から20個の炭素原子を有する置換および非置換アリーレン基とが挙げられる。このアルキレンおよびアリーレン基は、任意選択でその中にさらにエーテル、エステル、およびアミド結合を有する。置換基には、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、およびアリールが挙げられる。SiR123は、それらのうちの1つ以上全部を(例えば求核)置換によって置き換えることができる3個の置換基(R1~3)を含有するオキシシラン官能基を表す。例えばR1~3置換基の少なくとも1つは、アルコキシ、アリールオキシ、またはハロゲンなどの基であり、この置換用の基には、オキシシラン加水分解または縮合生成物上に存在するヒドロキシルなどの基、あるいは基板フィルム表面に存在する同等の反応性官能基が含まれる。代表的なSiR123オキシシラン置換には、R1がC1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、またはハロゲンであり、R2およびR3が独立にC1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、C7〜C30アラルキル、C7〜C30アルキルアリール、ハロゲン、および水素から選択されるものが挙げられる。R1は、好ましくはC1〜C4アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、またはハロゲンである。オキシシランの例には、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS、H2C=CHCO2(CH23Si(OCH33)、アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、およびメタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。オキシシランのなかではAPTMSが好ましい。
【0028】
オキシシランは、使用に先立って予加水分解することができる。予加水分解とは、そのオキシシラン中のR1~3置換基の少なくとも1つがヒドロキシルによって置き換えられていることを意味する。例えばX−Y−SiR2OH、X−Y−SiR(OH)2、およびX−Y−Si(OH)3が挙げられる。オキシシラン縮合生成物とは、1個または複数個のオキシシランおよび/またはオキシシラン加水分解生成物の縮合反応によって形成される生成物を意味する。例えば縮合生成物には、X−Y−Si(R1)(R2)OSi(R1)(OH)−Y−X、X−Y−Si(R1)(OH)OSi(R1)(OH)−Y−X、X−Y−Si(OH)2OSi(R1)(OH)−Y−X、X−Y−Si(R1)(OH)OSi(R1)(OSi(R1)(OH)−Y−X)−Y−X、およびX−Y−Si(R1)(R2)OSi(R1)(OSi(R1)(OH)−Y−X)−Y−Xが挙げられる。
【0029】
オキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物は、オキシシランを、そのオキシシランのケイ素に結合している加水分解性官能基1モル当たり約3から約9モルの水と接触させることによって形成される。オキシシランの加水分解は、加水分解後に1重量%未満のAPTMS残留物が存在するので、25℃で24時間後に完結したとみなされる。好ましい実施形態ではオキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物は、オキシシランを、そのオキシシランのケイ素に結合している加水分解性官能基1モル当たり約4から約9モルの水と接触させることによって形成される。より好ましい実施形態ではオキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物は、オキシシランを、そのオキシシランのケイ素に結合している加水分解性官能基1モル当たり約5から約7モルの水と接触させることによって形成される。オキシシラン官能基に付着している炭素−炭素二重結合含有官能基は、そのオキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物を形成するために使用される条件によって影響を受けない。
【0030】
オキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物は、オキシシランを、低級アルキルアルコール溶媒の存在下で水と接触させることによって形成される。代表的な低級アルキルアルコール溶媒には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、およびシクロペンタノールなどの脂肪族および脂環式C1〜C5アルコールが挙げられ、エタノールが好ましい。
【0031】
オキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物は、オキシシランを、オキシシラン置換基R1~3の1個、2個、または3個の加水分解を触媒し、さらにその得られたオキシシランヒドロシレートの縮合を触媒することができる有機酸の存在下で水と接触させることによって形成される。これら有機酸は、アルコキシおよびアリールオキシなどのオキシシラン置換基の加水分解を触媒し、その場所にヒドロキシル(シラノール)基の形成を引き起こす。有機酸は、炭素、酸素、および水素、任意選択で窒素およびイオウの元素を含み、かつ少なくとも1個の反応活性(酸性)プロトンを含有する。有機酸の例には、酢酸、マレイン酸、シュウ酸、およびギ酸などのカルボン酸と、メタンスルホン酸およびトルエンスルホン酸などのスルホン酸とが挙げられる。一実施形態では有機酸は、少なくとも約4.7のpKaを有する。好ましい有機酸は酢酸である。
【0032】
一実施形態では低級アルキルアルコール溶媒中の約0.1重量%から約1重量%の有機酸濃度が、オキシシランからオキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物を形成するのに役立つ。一実施形態では低級アルキルアルコール溶媒中の約0.4重量%の有機酸濃度が、オキシシランからオキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物を形成するのに役立つ。
【0033】
有機酸および低級アルキルアルコールの存在下でのオキシシランと水の反応のために本明細書中で教示する条件は、その形成されたオキシシランヒドロシレートおよび/または縮合物中に残留する約1モル%未満の未加水分解オキシシラン(X−Y−SiR123)を結果としてもたらす。
【0034】
未硬化組成物を硬化するためにUV硬化を使用する実施形態では、アクリルマルチオレフィン架橋剤とアリルマルチオレフィン架橋剤の混合物が役立つ。例えばアクリル対アリルマルチオレフィン架橋剤の約2:1から約1:2、好ましくは約1:1の重量比の混合物が挙げられる。アクリルの架橋剤は、一般にはアルコキシル化ポリオールポリアクリレート、特にエトキシル化(3モル)トリメチロールプロパントリアクリレートであり、またアリルの架橋剤は、一般には1,3,5−トリアリルイソシアヌレートである。
【0035】
未硬化組成物の一実施形態ではその架橋性ポリマーは、臭素およびヨウ素からなる群から選択される少なくとも1種類の硬化部位、特にヨウ素を有するフルオロエラストマーであり、そのマルチオレフィン架橋剤はアリルマルチオレフィン架橋剤、特に1,3,5−トリアリルイソシアヌレートであり、その未硬化組成物は光開始剤を含有し、その未硬化組成物は極性非プロトン性有機溶媒を含有し、また未硬化組成物を硬化するためにUV硬化が使用される。
【0036】
硬化することができる少なくとも1種類の反応性成分(例えば、架橋性ポリマーおよびマルチオレフィン架橋剤)の混合物を含む未硬化組成物を硬化して組成物を形成する。未硬化組成物は、好ましくはラジカル機構により硬化される。遊離基は、周知の方法により、例えば任意選択でその未硬化組成物中に含まれる有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩、レドックス開始剤、およびこれらの組合せの熱分解により、あるいは任意選択で光開始剤の存在下において紫外(UV)線、γ線、または電子ビーム放射線などの照射により発生させることができる。未硬化組成物は、好ましくはUV線の照射により硬化される。
【0037】
UV放射による開始を用いて未硬化組成物を硬化する場合、その未硬化組成物は光開始剤を、一般には1と10phrの間、好ましくは5と10phrの間で含むことができる。光開始剤は、単独でまたは2種類以上の併用で用いることができる。役に立つ遊離基開始剤には、一般にアクリレートポリマーをUV硬化するのに有用なものが挙げられる。役に立つ光開始剤の例には、ベンゾフェノンおよびその誘導体、すなわちベンゾイン、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、α−アリルベンゾイン、α−ベンジルベンゾインと、ベンゾインエーテル、例えばベンジルジメチルケタール(Irgacure(登録商標)651(Ciba Specialty Chemicals Corporation,Tarrytown,NY,USAから入手できるIrgacure(登録商標)製品)として市販されている)、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインn−ブチルエーテルと、アセトフェノンおよびその誘導体、例えば2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン(Darocur(登録商標)1173(Ciba Specialty Chemicals Corporation,Tarrytown,NY,USAから入手できるDarocur(登録商標)製品)として市販されている)および1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(Irgacure(登録商標)184として市販されている)と、2−メチル−1−[(4−メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノン(Irgacure(登録商標)907として市販されている)と、アルキルベンゾイルホルマート、例えばメチルベンゾイルホルマート(Darocur(登録商標)MBFとして市販されている)と、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン(Irgacure(登録商標)369として市販されている)と、芳香族ケトン、例えばベンゾフェノンおよびその誘導体ならびにアントラキノンおよびその誘導体と、オニウム塩、例えばジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩と、チタン錯体、例えばこれもまたCiba Specialty Chemicals Corporationから「CGI 784 DC」として市販されているものと、ハロメチルニトロベンゼンと、モノ−およびビス−アシルホスヒン、例えばCiba Specialty Chemicals Corporationから商品名Irgacure(登録商標)1700、Irgacure(登録商標)1800、Irgacure(登録商標)1850、Irgacure(登録商標)819、Irgacure(登録商標)2005、Irgacure(登録商標)2010、Irgacure(登録商標)2020、およびDarocur(登録商標)4265として入手できるものが挙げられる。さらに、Ciba Specialty Chemicals CorporationからDarocur(登録商標)ITXとして市販されている2−および4−イソプロピルチオキサントンなどの増感剤を上記光開始剤と共に使用することができる。
【0038】
光開始剤は、一般には約254nmと約450nmの間の波長を有する入射光によって活性化される。好ましい実施形態では未硬化組成物は、波長260nm、320nm、370nm、および430nmを中心に強い発光を有する高圧水銀灯からの光によって硬化される。この実施形態では本発明の未硬化組成物を硬化するために、より短い波長(すなわち245〜350nm)において比較的強い吸収を有する少なくとも1種類の光開始剤と、より長い波長(すなわち350〜450nm)において比較的強い吸収を有する少なくとも1種類の光開始剤との組合せを使用することが好ましい。開始剤のこのような混合物は、UV光源から発出するエネルギーを最も効率的に利用することになる。短い波長において比較的強い吸収を有する光開始剤の例には、ベンジルジメチルケタール(Irgacure(登録商標)651)およびメチルベンゾイルホルマート(Darocur(登録商標)MBF)が挙げられる。長い波長において比較的強い吸収を有する光開始剤の例には、2−および4−イソプロピルチオキサントン(Darocur(登録商標)ITX)が挙げられる。このような光開始剤の混合物の例は、Irgacure(登録商標)651とDarocur(登録商標)MBFの重量比2:1の混合物の10重量部対Darocur(登録商標)ITXの1重量部が挙げられる。
【0039】
UV硬化の場合、熱開始剤を光開始剤と一緒に使用することもできる。有用な熱開始剤には、例えばアゾ、過酸化物、過硫酸塩、およびレドックス開始剤が含まれる。
【0040】
本発明の未硬化組成物のUV硬化は、酸素が実質上存在しない状態で行うことができる。酸素は、ある種のUV光開始剤の性能に悪影響を与える恐れがある。酸素を排除するためにはUV硬化を窒素などの不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。
【0041】
本発明の未硬化組成物のUV硬化は、周囲温度で行うことができるが、また高温で行うこともできる。
【0042】
有機過酸化物の熱分解を用いて未硬化組成物の硬化のための遊離基を発生させる場合、その未硬化組成物は、一般に1と10phrの間、好ましくは5と10phrの間の有機過酸化物を含む。有用な遊離基熱開始剤には、例えばアゾ、過酸化物、過硫酸塩、およびレドックス開始剤、およびこれらの組合せが挙げられる。有機過酸化物が好ましく、これら有機過酸化物の例には、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)オクタン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブタン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジヒドロキシペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、α,α’−ビス(t−ブチルペルオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキセン−3、過酸化ベンゾイル、t−ブチルペルオキシベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルペルオキシ)−ヘキサン、t−ブチルペルオキシマレイン酸、およびt−ブチルペルオキシイソプロピルカーボネートが挙げられる。過酸化ベンゾイルが好ましい。有機過酸化物は、単独でまたは2種類以上の併用で用いることができる。
【0043】
塗布を容易にするために未硬化組成物中に1種類または複数種類の溶媒を含ませてその未硬化組成物の粘度を下げることができる。溶媒を含有した未硬化組成物の適切な粘度レベルは、その反射防止膜の所望の厚さ、施工技術、およびその未硬化組成物が貼り付けられる基板などの様々な要因に左右され、必要以上の実験なしに当分野の当業者が決めることができる。一般には未硬化組成物中の溶媒の量は、約10重量%から約60重量%、好ましくは約20重量%から約40重量%である。
【0044】
溶媒は、未硬化組成物の硬化特性に悪影響を及ぼさないか、または光ディスプレイ基板を侵食しないように選択される。さらに溶媒は、未硬化組成物へのその溶媒の添加がナノ粒子のフロキュレーションを引き起こさないように選択される。さらに溶媒は、適切な乾燥速度を有するように選択されるべきである。すなわち溶媒は、あまりゆっくりと乾燥すべきではない。それは未硬化組成物から反射防止膜を製造する工程を遅らせる恐れがあるので望ましくない。またあまり速く乾燥すべきでもない。それは得られる反射防止膜中にピンホールまたは凹みなどの欠陥を引き起こす恐れがある。役に立つ溶媒には極性非プロトン性有機溶媒が挙げられ、代表的な例には脂肪族または脂環式化合物、すなわちメチルエチルケトンおよびメチルイソブチルケトンなどのケトン類、酢酸プロピルなどのエステル類、ジ−n−ブチルエーテルなどのエーテル類、およびこれらの併用が挙げられる。好ましい溶媒には、酢酸プロピルおよびメチルイソブチルケトンが挙げられる。低級アルキルヒドロカルビルアルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなど)がその溶媒中に存在してもよいが、その架橋性ポリマーが臭素、ヨウ素、およびエテニルからなる群から選択される少なくとも1種類の硬化部位を有するフルオロエラストマーである場合は、それはその溶媒の約8重量%以下を構成すべきである。
【0045】
固体ナノ粒子は、それらを用いて本発明における限界方程式(bounding equation)の屈折率の要求条件を満たして使用することができる限り、球形および長円形を含めた任意の形状であることができ、また比較的均一なサイズであり、かつ実質上非凝集状態のままである。それらは中空、多孔質、または中実であることができる。粒子の直径は、その使用される粒子およびバインダーの相対屈折率に左右されるが、好ましくない光散乱を避けるために一般には十分小さく、かつ層の厚さよりも小さくすべきである。一般にはその中位径は、約100nm未満、好ましくは約70nm未満である。ナノ粒子の濃度は、粒子およびバインダーの粒子の屈折率に左右され、また下記で述べる等式の解に左右される。
【0046】
ナノ粒子は、一般には無機酸化物、例えば、これらには限定されないが酸化チタンと、酸化アルミニウムと、酸化アンチモンと、酸化ジルコニウムと、酸化インジウムスズと、酸化アンチモンスズと、混合チタン/スズ/ジルコニウム酸化物と、チタン、アルミニウム、アンチモン、ジルコニウム、インジウム、スズ、ニオブ、タンタル、および亜鉛から選択される1種類または複数種類の陽イオンの二元、三元、四元、およびより高次の複合酸化物とである。2種類以上のナノ粒子を組み合わせて使用することもできる。他の事例では、或る酸化物が1粒子中で別の酸化物を封じ込めるナノ粒子複合体(例えば、一重または多重コア/シェル構造体)を用いることもできる。ナノ粒子の屈折率は、その屈折率が本明細書中で述べる等式を満たす限り重要ではないが、一般に粒子の組合物の複合屈折率は1.6である。
【0047】
一実施形態ではナノ粒子は導電性または半導電性であり、それは帯電防止特性を有する膜を生成することになる。使用することができる典型的な金属粒子には、酸化インジウムスズ、酸化アンチモンスズ、Sb23、Sb25、In23、SnO2、酸化アンチモン亜鉛、酸化亜鉛、酸化アルミニウム−亜鉛、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化バナジウム、および酸化鉄が挙げられる。
【0048】
本明細書中で述べる層状反射防止膜に適した基板は、表示面、光学レンズ、窓、偏光子、光フィルター、光沢をつけた印刷物および写真、透明ポリマーフィルムなどとして使用される。基板は、透明、防汚、またはアンチグレアのいずれかであることができ、アセチル化セルロース(例えばトリアセチルセルロース(TAC))、ポリエステル(例えばポリエチレンテレフタレート(PET))、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ガラス、ビニル、ナイロンなどが挙げられる。好ましい基板は、TAC、PET、PMMA、およびガラスである。基板は、任意選択でその基板と反射防止膜の間に貼り付けられるハードコート、例えば、これには限定されないがアクリル酸エステルのハードコートを有することができる。それらはまた他のレイヤー、例えばハードコートの上面に貼り付けられる帯電防止層を有することができる。
【0049】
ナノ粒子は、重合性であることができるアクリルまたはビニル官能基で表面官能基化される。「アクリル官能基」とは、場合によってはアルキル置換を有するCH2=CH2−C(O)O−、例えばメタクリル官能基を意味する。具体的にはアクリル官能基は式、X−Y−Si−によって表すことができ、この場合、そのフラグメントは、表面ヒドロキシルのX−Y−SiR123型オキシシランとの反応を用いてナノ粒子表面に共有結合でグラフトされてもよい。Xは、アクリロイルオキシ(CH2=CHC(=O)O−)またはメタクリロイルオキシ(CH2=C(CH3)C(=O)O−)官能基である。Yは、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基とオキシシラン官能基とに共有結合で結合した二価有機ラジカルを表す。Yラジカルの例には2個から10個の炭素原子を有する置換および非置換アルキレン基と、6個から20個の炭素原子を有する置換および非置換アリーレン基とが挙げられる。このアルキレンおよびアリーレン基は、任意選択でその中にさらにエーテル、エステル、またはアミド結合を有する。置換基には、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、およびアリールが含まれる。SiR123は、3個の置換基(R1~3)を含有するオキシシラン官能基を表し、それらのうちの1つまたは全部を(例えば求核)置換によって置き換えることができる。例えばR1、R2、およびR3置換基の少なくとも1つはアルコキシ、アリールオキシ、またはハロゲンなどの基であり、この置換用の基には、オキシシラン加水分解または縮合生成物上に存在するヒドロキシルなどの基、あるいは基板フィルム表面に存在する同等の反応性官能基が含まれる。代表的なSiR123オキシシラン置換には、R1がC1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、またはハロゲンであり、R2およびR3が独立にC1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、C7〜C30アラルキル、C7〜C30アルキルアリール、ハロゲン、および水素から選択されるものが挙げられる。R1は、好ましくはC1〜C4アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、またはハロゲンである。オキシシランの例には、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS、H2C=CHCO2(CH23Si(OCH33)、アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、およびメタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
【0050】
本明細書中での目的では「ビニル官能基」は、場合によってはアルキル置換を有するCH2=CH2−を意味する。具体的にはビニル官能基は式、X−Y−Si−によって表すことができ、この場合、そのフラグメントは、表面ヒドロキシルのX−Y−SiR123型オキシシランとの反応を用いてナノ粒子の表面に共有結合でグラフトされてもよい。Xは、ビニルCH2=CH2−官能基を表す。Yは、ビニル官能基とオキシシラン官能基とに共有結合で結合した二価有機ラジカルを表す。Yラジカルの例には2個から10個の炭素原子を有する置換および非置換アルキレン基と、6個から20個の炭素原子を有する置換および非置換アリーレン基とが挙げられる。このアルキレンおよびアリーレン基は、任意選択でその中にさらにエーテル、エステル、またはアミド結合を有する。置換基には、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、およびアリールが含まれる。SiR123は、3個の置換基(R1~3)を含有するオキシシラン官能基を表し、それらのうちの1つまたは全部を(例えば求核)置換によって置き換えることができる。例えばR1、R2、およびR3置換基の少なくとも1つは、アルコキシ、アリールオキシ、またはハロゲンなどの基であり、この置換用の基には、オキシシラン加水分解または縮合生成物上に存在するヒドロキシルなどの基、あるいは基板フィルム表面に存在する同等の反応性官能基が含まれる。ビニル基を含有するオキシシランの例は、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシランH2C=CHSi(OR)3、H2C=CH−Si(CH32NHSi(CH32CH=CH2である。ジビニルテトラメチルジシラザンなどのシラザン類を使用することができる。
【0051】
表面官能基化は、高分子バインダーとの混合の後に、または混合に先立つナノ粒子の個々の反応中に行うことができる。
【0052】
好適な表面官能基化粒子は、市場で得ることもでき、また様々な方法で合成することもできる。典型的な方法は、無機分散物と、例えば反応性−OH基のようなナノ粒子上の表面の基と反応する表面官能基化剤との混合物と関係している。
【0053】
アクリル官能基を含有する好適な組成物には、アクリルマルチオレフィン架橋剤としてもまた使用される本明細書中で列挙したものが挙げられる。他の好適な組成物には、そのアクリル官能基が、i)アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基、ii)オキシシラン官能基、およびiii)そのアクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基とそのオキシシラン官能基とを結合する二価有機ラジカルを含むオキシシランであるものが挙げられる。オキシシランには、式、X−Y−SiR123によって表されるものが挙げられる。Xは、アクリロイルオキシ(CH2=CHC(=O)O−)またはメタクリロイルオキシ(CH2=C(CH3)C(=O)O−)官能基である。Yは、アクリロイルオキシまたはメタクリロイルオキシ官能基と、オキシシラン官能基とに共有結合で結合した二価有機ラジカルを表す。Yラジカルの例には2個から10個の炭素原子を有する置換および非置換アルキレン基と、6個から20個の炭素原子を有する置換および非置換アリーレン基とが挙げられる。このアルキレンおよびアリーレン基は、任意選択でその中にさらにエーテル、エステル、またはアミド結合を有する。置換基には、ハロゲン、メルカプト、カルボキシル、アルキル、およびアリールが含まれる。SiR123は、3個の置換基(R1~3)を含有するオキシシラン官能基を表し、それらのうちの1つから全部を(例えば求核)置換によって置き換えることができる。例えばR1~3置換基の少なくとも1つは、アルコキシ、アリールオキシ、またはハロゲンなどの基であり、この置換用の基には、オキシシランの加水分解または縮合生成物上に存在するヒドロキシルなどの基、あるいは基板フィルム表面に存在する同等の反応性官能基が含まれる。代表的なSiR123オキシシラン置換には、R1がC1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、またはハロゲンであり、R2およびR3が独立にC1〜C20アルコキシ、C6〜C20アリールオキシ、C1〜C20アルキル、C6〜C20アリール、C7〜C30アラルキル、C7〜C30アルキルアリール、ハロゲン、および水素から選択されるものが挙げられる。R1は、好ましくはC1〜C4アルコキシ、C6〜C10アリールオキシ、またはハロゲンである。オキシシランの例には、アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(APTMS、H2C=CHCO2(CH23Si(OCH33)、アクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、アクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、およびメタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。オキシシランのなかではAPTMSが好ましい。
【0054】
Rvisとしてもまた知られる正反射率を、Software Spectra,Portland,ORから入手できるTFCalc薄膜設計ソフトウェアを用いて計算した。このソフトウェアは、多重薄膜レイヤーによる干渉の計算を行う。材料は、それらの屈折率の複素分散関係式によって規定される。これは、レイヤー表面による反射だけでなく、全体による吸収を計算に入れる。干渉の計算は、その透過および反射ビームの計算のために光波の強度と位相の両方がすべてのあり得る経路について扱われ、また組み合わせられることを必要とした。入射光の法線角もまたこれらの計算に反映された。
【0055】
3種類の二層反射防止設計を使用した。これらは、当業界では「クォーター・クォーター」、「w」、および「v」設計として知られている。これらは、各設計物中の二層のそれぞれの光学的厚さによって特徴づけられる。これらすべてのケースにおいて、基板に隣接した「高屈折率下側層」とも呼ばれる高屈折率材料と、その上に「低屈折率上側層」とも呼ばれる低屈折率材料とを必要とする。基板は、少なくとも3ミクロンの架橋したアクリルハードコートを有する半無限厚のTAC(トリアセタールセルロース)レイヤー(一般には70ミクロンを超える)からなると仮定した。実際にはハードコートは、一般に6と10ミクロンの間にある。報告される結果は、その厚さが3ミクロンの少なくとも数倍の厚さである限り、そのハードコートレイヤーの厚さとは無関係である。計算結果は、ハードコートレイヤーの屈折率に左右される。このレイヤーに使用される一般的な屈折率は、550nmにおいて1.53である。幾つかの市販のハードコートは、そのハードコートレイヤーの深さの関数である屈折率を有する。この場合、モデリングの目的で表面における屈折率を使用することもでき、また勾配をシミュレートするために一連のより薄いレイヤーを作製することによってその勾配を使用こともできる。使用される計算結果は、どの手法を選ぶかには比較的無関係である。
【0056】
検討した3種類の設計物の理想光学的厚さを下記表1に四分の一波長単位で示す。これらは550nmが基準波長であると仮定し、したがって四分の一波長は(550/4)nmである。限界方程式の極値間では、一般にその層の光学的厚さは25%変動することができるが、それでもまだこれらの膜は低反射率を示すはずである。光学的厚さは、非吸収性の層の場合はn×dと定義される。ただし、nは屈折率であり、dは物理的厚さである。
【0057】
【表1】

【0058】
これら3種類の設計物についてそのAR膜の上側および下側の両方の層の屈折率を変えることによって、潜在的に有用な屈折率域を調査した。屈折率を変えた場合の層の光学的厚さを一定に保つためにTFCalcプログラムにプリファレンスを設定した。こうすることによって物理的厚さを自動的に調整して、各層の光学的厚さを一定に保つように屈折率の変化を補償した。各設計について、xyY色空間中の反射の光度を計算すると同時に、その屈折率を体系的にサーチして両層の屈折空間を求めた。大文字Yは、TFCalcプログラム中の光度値である。本明細書中で使用されるRvis%は、大文字Yの100倍である。
【0059】
Rvisが最小になる最適反射防止層の媒介変数を求めることは最も役立つが、潜在的に有用な空間を画定することもまた必要である。1.3%未満のRvisを選択した。したがって次の手順は、各下側層の屈折率に関してその上側層の屈折率を、Rvisが最適反射率から1.3%の値に増加するまで、最適値から離れて上方および下方の両方へ変化させることであった。次いで低屈折率上側層の屈折率の上限および下限を、各高屈折率下側層の屈折率について記録した。この低屈折率上側層の屈折率の上限および下限を、高屈折率下側層の屈折率の関数としてグラフに記入した。最小二乗適合法を用いてこれらのグラフ中に生じた曲線に当てはめ、これら3種類の設計の各層の屈折率の有用な値の範囲を記述する経験式を生成した。
【0060】
この単純化した等式は、Rvisを1.3%と仮定し、アクリルハードコートレイヤ−(>2ミクロンの厚さを有する)を含む基板に基づく。基板はトリアセチルセルロースを基材とする。他の基板(例えば、ガラス、ハードコートPET)は、それら設計物のそれぞれの屈折率の限界を表す別の等式で記述されることになる。
【0061】
これらの等式から、1.3%のRvisを有するはずである設計物のそれぞれ1つについて、真の厚さを計算することができる。下記の等式においてHighIndexは高屈折率下側層の屈折率であり、またLowIndexは低屈折率上側層の屈折率である。すべてのケースにおいて本発明の設計空間は、高屈折率下側層が1.41以上の屈折率を有する構造を対象として含むことに注目されたい。
【0062】
クォーター・クォーター設計
低屈折率上側層:屈折率は約1.25から約1.40まで変動する。
LowIndex=1.25〜1.40
【0063】
低屈折率上側層の屈折率のそれぞれの値に対するその高屈折率下側層の屈折率の対応する境界条件は、次に述べる等式によって示される。高屈折率の下限は、1.41以上の値に限定され、かつその構造は、低屈折率上側層の屈折率が高屈折率下側層の屈折率よりも低いことを必要とする。
HighIndexの下限=[1.196849×LowIndex]−0.12526
HighIndexの上限=[1.177721×LowIndex]+0.244887
【0064】
W設計
低屈折率上側層は、屈折率が約1.25から約1.46まで変動する。
LowIndex=1.25〜1.46
【0065】
低屈折率上側層の屈折率のそれぞれの値に対するその高屈折率下側層の屈折率の対応する境界条件は、次に述べる等式によって示される。
【0066】
高屈折率の下限は、1.41以上の値に限定され、かつその構造は、低屈折率上側層の屈折率が高屈折率下側層の屈折率よりも低いことを必要とする。
HighIndexの下限=[LowIndex2×47.39975]−[121.43156×LowIndex]+78.88532
HighIndexの上限=[LowIndex2×(−61.309701)]+[LowIndex×160.269626]−101.960123
【0067】
V設計
低屈折率上側層は、約1.25から約1.60まで変動する。
LowIndex=1.25〜1.60
HighIndex=1.41以上
【0068】
低屈折率上側層の屈折率のそれぞれの値に対するその高屈折率下側層の屈折率の対応する境界条件は、次に述べる等式によって示される。高屈折率の下限は、1.41以上の値に限定され、かつその構造は、低屈折率上側層の屈折率が高屈折率下側層の屈折率よりも低いことを必要とする。
HighIndexの下限=[LowIndex×1.778499]−0.820833
HighIndexの上限=[LowIndex×1.55196]−0.03609
【0069】
限界方程式の極値間では、一般にその層の光学的厚さは25%変動することができ、それでもまだそれらの膜は低い反射率を示すはずである。
【0070】
この膜は、単回塗布ステップにおいて基板上に液体混合物を塗布してその基板上に液体混合物膜を形成するステップを含む方法によって調製することができる。単回塗布ステップにおいて基板上に未硬化組成物を塗布するのに役立つ塗布技術は、基板上に液体の薄い均一なレイヤーを形成することができるもの、例えば米国特許出願公開第2005/18733号明細書中に記載されているようなマイクログラビアコーティングである。
【0071】
好適な溶媒には上記で列挙したものが挙げられる。この方法は、基板上の液体混合物膜から溶媒を除去してその基板上に未硬化の膜を形成するステップを含む。溶媒は、既知の方法、例えば熱、真空、また基板上の塗布された液体分散物の近傍の不活性ガスの流れによって除去することができる。
【0072】
摩擦係数を下げる(すべりを向上させる)ために、かつ/または乾燥時のフィルムのレベリング挙動を改善するために塗料配合物中に添加剤を含ませることができる。これらの添加剤は、その塗料配合物の溶媒に可溶であるべきであり、また濃度が塗料配合物総重量の0.01から3重量%の範囲にあることができる。シリコーンまたはポリシロキサンを基剤とする添加剤を使用することができる。それらには、例えばシリコーン油、高分子量ポリジメチルシロキサン、ポリエーテル変性シリコーン、およびシリコーングリコールコポリマー界面活性剤を含めることができる。
【0073】
この方法は、基板上に液体混合物を塗布して液体混合物膜を形成するステップを含む。一実施形態では塗布ステップを単回塗布ステップで行うことができる。単回塗布ステップで基板上へ未硬化組成物を塗布するのに有用な塗布技術は、例えば米国特許出願公開第2005/18733号明細書中に記載されているようなマイクログラビアコーティングなどの、基板上に液体の薄い均一なレイヤーを形成することができるものである。
【0074】
この方法は、基板上の液体混合物膜から溶媒を除去してその基板上に未硬化の膜を形成するステップを含む。溶媒は、既知の方法、例えば熱、真空、また塗布された液体分散物の近傍の不活性ガスの流れによって除去することができる。
【0075】
この方法は、未硬化の膜を硬化するステップを含む。本明細書中でさきに考察したように未硬化の膜は、好ましくはラジカル機構によって硬化される。遊離基は、既知の方法によって、例えば、場合によってその未硬化組成物中に含まれる有機過酸化物の熱分解によって、あるいは紫外(UV)線、γ線、または電子ビーム放射線などの照射によって発生させることができる。本発明の未硬化組成物は、工業規模で利用される場合にはUV硬化技術の比較的低コストおよび速さの故に、好ましくはUV硬化される。
【実施例】
【0076】
略語および材料
APTMS:アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Aldrich Chemicals,St.Louis,MOから入手できる)
Darocur(登録商標)ITX:2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンの混合物(Ciba Specialty Chemicals Corporation,Tarrytown,NY,USAから入手できる光開始剤)
Genocure(登録商標)MBF:メチルベンゾイルホルマート(Rahn USA Co.,IL,USAから入手できる光開始剤)
Irgacure(登録商標)651:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(Ciba Specialty Chemicals Corporation,Tarrytown,NY,USAから入手できる光開始剤)
Irgacure(登録商標)907:(Ciba Specialty Chemicals Corporation,Tarrytown,NY,USAから入手できる光開始剤)
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
Nissan MEK−ST:中位径(d50)約10〜16nmのシリカ30〜31重量%をメチルエチルケトン中に分散させたシリカコロイド(Nissan Chemical America Co.,Houston,TX,USAから入手できる)
Sartomer SR533:トリアリルイソシアヌレート架橋剤(Sartomer Company,Inc.,Exton,PA)
TAIC:トリアリル−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(Aldrich Chemicals,St.Louis,MO,USAから入手できる)
TMP(3EO)TA:Sartomer SR454(Sartomer Company,Warrington,PA,USAから入手できる)
Viton(登録商標)9267:(E.I.DuPont de Nemours,Inc.,Wilmington,DE)
Viton(登録商標)GF200S:(E.I.DuPont de Nemours,Inc.,Wilmington,DE)
【0077】
塗布方法
米国特許第4,791,881号明細書に記載されている日本、東京の株式会社康井精機のマイクログラビアコーティング装置を用いて基板フィルムに未硬化組成物を塗布する。この装置は、ドクターナイフと、20mmのロール径を有する康井精機のグラビアロールとを含む。塗布は、グラビアロール回転速度6.0rpmおよび移送ラインスピード0.5m/分を用いて行う。
【0078】
塗布条件は、550nmにおいて最低の反射を示す最終塗布厚(乾燥フィルム)を有する材料をもたらすように調整した。
【0079】
この塗布された基板を、Fusion UV Systems/Gaithersburg MDによって提供されたUV露光ユニットを用いて硬化する。これは、10から1,000ppmの酸素の測定範囲にわたって制御する窒素不活性化能力を有するDRS Conveyer/UV Processor(幅15cm)に結合されたLH−I6P1 UV源(200w/cm)からなる。
【0080】
ランプ出力およびコンベア速度は、測定エネルギー密度500〜600ミリジュール/cm2(UV−A照射)、移送速度約0.7から1.0m/分を用いてフィルムの硬化が得られるように設定される。EIT UV Power Puck(登録商標)放射計を用いて、UV−Aバンド幅中のそのUV総エネルギーを測定する。
【0081】
LH−I6P1中で使用される「H」バルブは、下記の表に示すように、上記UV−Aに加えてUV−B、UV−C、およびUV−Vバンド中に下記の特有のスペクトル出力を有する。
【0082】
【表2】

【0083】
ユニット中の酸素レベルは、350ppm以下になるように窒素パージを用いて制御される。硬化されたフィルムを70℃に予熱した金属基板上に置いてから硬化用コンベアベルトに乗せる。
【0084】
分光反射率(Rvis)の測定
測定用に、反射防止塗料を塗布した3.7cm×7.5cmの基板フィルム片を調製する。これは、閉じ込められた気泡を遮断するように、フィルムの塗布していない面に黒色PVC絶縁テープ(日東電工株式会社のPVC Plastic tape #21)のストリップを接着して、背面反射を阻止することによって調製される。次いでこのフィルムを、塗布面を上にして分光計の光路に直角に固定して、かつフラットに保持する。法線入射の約2度以内の反射光を捕え、接着テープまたはフラットウェイトを用いて赤外拡張範囲分光計(infra−red extended range spectrometer)(Filmetrics,model F50)の台上に向ける。赤外分光計は、その背面を粗くかつ黒くしたBK7ガラスの低反射率基準により400nmと1700nmの間で較正される。分光反射は、約2度の受光角を有する法線入射が測定される。反射スペクトルは、400nmから1700nmの範囲が約1nmの間隔で記録される。低ノイズのスペクトルは、計器が全域であるか、または6%反射付近で飽和するように長い検出器積分時間を使用することによって得られる。さらなるノイズ低下は、3つ以上の別のスペクトル測定値を平均することによって達成される。記録したスペクトルから報告される反射率は、x、y、およびY(Yが分光反射率(Rvis)として報告される)の色計算の結果である。色座標の計算は、C型光源を用いて10度視野標準観測者に対して行われる。
【0085】
表面摩耗の定量化
本発明の反射防止塗料を塗布した3.7cm×7.5cmの基板フィルム片を、塗布面を上にしてフラットなガラス板の表面に、接着テープでフィルムの縁部をプレートに固定することによって取り付ける。Liberon #0000等級スチールウールを1×1cmよりもわずかに大きいパッチに切断する。1×1cmに切断した軟質(可撓性)のフォームパッドをスチールウールパッドの上に置き、また滑り嵌めしたDelrin(登録商標)スリーブ中に保持された200グラムの真鍮製分銅をそのフォームパッドの上に置く。スリーブを、ステップモーターで駆動する平行移動台、モデルMB2509P5J−S3 CO18762によって移動させる。VELMEX VXMステップモーター制御装置がそのステップモーターを駆動する。このスチールウールと分銅のアセンブリーをフィルム面上に置き、そのフィルム面上を距離3cmにわたって5cm/秒の速度で繰り返し10回(20回通過)往復させて擦る。
【0086】
本発明の方法は、上記方法によって摩耗したフィルムを画像化し、またその画像のソフトウェア操作により摩耗したフィルム上の引掻き傷のついた面積パーセントを定量化するものである。
【0087】
あらゆる可能性を対象として含む単一の画像分析手順は存在しない。当業者は、その実行される画像分析がきわめて特定のものであることを理解するはずである。ここでは、指定されていないパラメーターは、必要以上の実験なしに通常の実務家の認識できる範囲内にあるという条件で一般的な手引きを与える。
【0088】
この分析は、「軸上」および「軸外」の両方の試料の照明が存在すると仮定し、画像は法線入射から約7度で反射光中に取り込まれる。また引掻き傷は、画像中で垂直の向きにあると仮定する。適切な画像のコントラストは、実務者または当業者が必要以上の実験なしに設定することができる。画像のコントラストは、照明強度、カメラの白色および暗基準設定、基板の屈折率、低屈折率組成物の屈折率および厚さによって調節される。また画像のコントラストを増すために黒色絶縁テープ片を基板の裏に接着する。これは、背面反射を阻止する効果を有する。
【0089】
上記方法によって生じたフィルム上の引掻き傷域を分析するために使用される画像は、コンピュータ中のフレームグラバカードに接続されたビデオカメラから得られる。画像は、グレイスケール640×480ピクセル画像である。カメラ上の光学素子は、画像形成領域の幅が7.3mmになるように摩耗域を拡大する(それは摩削される1cm幅の領域の大部分である)。
【0090】
PhotoShop用のReindeer Graphic’s Image Processing Toolkit plug−insを備えたAdobe PhotoShop V7を用いて下記のように画像を処理する。
【0091】
まず画像をグレイスケール画像に変換する(それまでに変換されていない場合)。引掻き傷の方向の25ピクセルのモーションブラーを行って引掻き傷を強調し、ノイズとフィルムに対する外来の傷とを減ずる。このブラーは、画像をきれいにするために3つのことを行う。第一に、バックグラウンドで平均することによって摩削方向とは異なる方向のフィルムの傷をウォッシュアウトする。第二に、バックグラウンドで平均することによって個々のホワイトドットを除去する。第三に、一列に並んだ引掻き傷間を平均することによって引掻き傷中の小さな割れ目を埋める。
【0092】
画像中のピクセル強度の自動コントラスト調整に向けて左上隅近くの4個のピクセルを選択する。200(255のうち)の強度でこれらのピクセルを埋める。このステップは、画像中に光っている引掻き傷が存在しない場合、非摩削材料の暗いバックグラウンドとは異なる何らかのマークが画像中に存在することを確実にする。これは、自動コントラスト調整を制限する効果を有する。使用される自動コントラスト調整は、「ヒストグラム限界:最大〜最小」と呼ばれ、8ビットグレイスケール画像中で利用できる0から255のレベルをヒストグラムが埋めるように画像のコントラストを変える。
【0093】
次いで水平方向に微分を取る画像にカスタムフィルターを適用し、次に元の画像を微分画像に追加(add back)する。これは、垂直の引掻き傷の縁部を強調する効果を有する。
【0094】
128グレイレベルにおいて2階層閾値を適用する。128以上のレベルにおけるピクセルを白色(255)に設定し、明るさ128以下のピクセルを黒色(0)に設定する。次いでこの画像を反転させて黒色のピクセルを白色にし、白色のピクセルを黒色にする。これは、最終ステップ(黒色域の大域測定の適用)で使用される大域測定機構に適応させるためである。この結果は、画像中の黒色ピクセルのパーセントで与えられる。これは、上記方法によって引掻き傷をつけられた全面積のパーセント(すなわち、引掻き傷%)である。この全体の手順は、画像当たり数秒を要する。従来の方法では必要とされた人間操作者に依存しないこの方法によって、多数の摩耗試料を迅速かつ再現可能に評価することができる。
【0095】
実施例1
Viton中に分散させた22.1体積%のTiO2
メタクリルで表面官能基化したTiO2ナノ粒子を、MIBK中に約20.5重量%のTiO2を含有させた状態で使用した。これは日本の触媒化成工業株式会社(ELCOM DU−1014TIV等級)によって供給された。この酸化チタンナノ粒子は、動的光散乱により測定される約20nmの直径であった。2.17gのAPTMS(Aldrich Chemicals)を8.29gのTiO2コロイドと不活性雰囲気のドライボックス中で室温において混ぜ合わせることによって材料混合物を形成した。この複合体を、さらなる使用に先立って約24時間のあいだ室温で保った。
【0096】
フルオロエラストマーを含む混合物を、MIBK中に溶かしたViton(登録商標)GF200Sの10重量%溶液18.00gと、0.199gのSartomer SR533と、0.025gのDarocur(登録商標)ITXと、0.178gのIrgacure(登録商標)651と、0.089gのGenocure(登録商標)MBFと、14.7644gのMIBKとを混ぜ合わせることによって形成した。
【0097】
このフルオロエラストマーを含む混合物に、APTMSを含有するTiO2混合物10.0363gを加えた。
【0098】
次いでこの得られた未硬化組成物を0.47μTeflon(登録商標)PTFEメンブランフィルターを通して濾過し、調製の2から5時間以内に塗布用に使用した。
【0099】
アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロース(TAC)フィルムの40.6cm×10.2cmストリップに、上記未硬化塗料溶液を塗布した。約0.5%のRvisを結果としてもたらす層状被膜を得た(Rmin=0.3%)。
【0100】
得られた塗布後TACフィルムを室温でウルトラミクロトームにかけて厚さ80から100nmの断面片を生成した。そのウルトラミクロトームのダイヤモンドナイフに隣接した脱イオン水のボート上にこの断面片を浮かべ、穴のある炭素被覆TEMグリッド(200メッシュCuグリッド)上に水から拾い上げた。この超薄切片を、Link軽元素エネルギー分散分光(EDS)分析計を備えたPhillips CM−20 Ultratwin TEM中で画像化した。このTEMを200kVの加速電圧で操作し、考察対象の断面領域の明視野像を高解像(HR)モードで得て、SO−163シートフィルム上に記録した。層化を示す図1の画像は100kXの倍率で得た。ハードコート基板の上の下側層中に粒子を見ることができる。
【0101】
実施例2
Viton(登録商標)中に分散させた17体積%のTiO2および3体積%のSiO2
APTMSの予加水分解を、0.48gのAPTMSを7.77gのエタノール(95体積%のエタノール100gを氷酢酸0.4gと混ぜ合わせることにより得られる)と混ぜ合わせることによって行った。この混合物を室温に24時間放置した。
【0102】
MIBK中にTiO2を約20.5重量%含有させた状態の4.148gのTiO2ナノ粒子(Shokubai Kasei Kogyo Kabushiki Kaisha,Japan,ELCOM DU−1014TIV等級)を、3.728gの予加水分解したAPTMSに加えた。この酸化チタンナノ粒子は、動的光散乱により測定され、約20nmの直径であった。この混合物を、さらなる使用に先立って24時間のあいだ50℃で熟成させた。
【0103】
0.795gの予加水分解したAPTMSを、0.580gのNissan MEK−STコロイドと混ぜ合わせることによって第二混合物を調製した。この混合物を、さらなる使用に先立って24時間のあいだ50℃で熟成させた。
【0104】
フルオロエラストマーを含む第三混合物を、MIBKに溶かしたViton(登録商標)GF200Sの10重量%溶液12.00gと、0.119gのSartomer SR533と、0.071gのIrgacure(登録商標)907と、6.73gのMIBKとを混ぜ合わせることによって形成した。
【0105】
このフルオロエラストマーを含む第三混合物に、6.564gの第一混合物(TiO2および加水分解APTMSを含有する)および0.573gの第二混合物(SiO2および加水分解APTMSを含有する)を加えて、未硬化組成物を形成した。
【0106】
次いでこの得られた未硬化組成物を0.47μTeflon(登録商標)PTFEメンブランフィルターを通して濾過し、調製の2から5時間以内に塗布用に使用した。
【0107】
アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースフィルムの40.6cm×10.2cmストリップに、上記未硬化塗料溶液を塗布した。約0.05〜0.1%のRvisが得られた(Rvis=0.3%)。ハードコート基板の上の下側層中に、両方の種類の粒子を含む層化が観察された。
【0108】
実施例3
Viton(登録商標)中に分散させた13.7体積%のTiO2および9.3体積%のSiO2
APTMSの予加水分解を、1.22gのAPTMSを19.82gのエタノール(95体積%のエタノール100gを0.4gの氷酢酸と混ぜ合わせることにより得られる)と混ぜ合わせることによって行った。この混合物を室温に24時間放置した。
【0109】
MIBK中にTiO2を約30重量%含有させた状態のメタクリルで表面官能基化したTiO2ナノ粒子(日本の触媒化成工業株式会社ELCOM DU−1013TIV等級)2.133gを、3.122gの予加水分解したAPTMSに加えた。この酸化チタンナノ粒子は、動的光散乱により測定され、約20nmの直径であった。
【0110】
1.280gの予加水分解したAPTMSを、0.935gのNissan MEK−STコロイドと混ぜ合わせることによって第二混合物を調製した。この第一および第二混合物を混ぜ合わせ、この混ぜ合わせた混合物を、さらなる使用に先立って24時間のあいだ50℃で熟成させた。
【0111】
フルオロエラストマーを含む第三混合物を、MIBKに溶かしたViton(登録商標)GF200Sの10重量%溶液57.60gと、0.570gのSartomer SR533と、0.342gのIrgacure(登録商標)907とを混ぜ合わせることによって形成した。
【0112】
この第三のフルオロエラストマー含有混合物12.190gをMIBK溶媒7.687gと混ぜ合わせた。次いでこの混合物に、第一および第二混合物を混ぜ合わせたもの(TiO2および加水分解APTMSと、およびSiO2および加水分解APTMSとを含有する)6.224gを加えて未硬化組成物を形成した。
【0113】
次いでこの得られた未硬化組成物を0.47μTeflon(登録商標)PTFEメンブランフィルターを通して濾過し、調製の2から5時間以内に塗布用に使用した。これは下側層中に粒子を含む二層を形成する。
【0114】
実施例4
Viton(登録商標)中に分散させた13.7体積%のTiO2および9.3体積%のSiO2
APTMSの予加水分解を、1.22gのAPTMSを、19.82gのエタノール(95体積%のエタノール100gを0.4gの氷酢酸と混ぜ合わせることにより得られる)と混ぜ合わせることによって行った。この混合物を室温に24時間放置した。
【0115】
MIBK中にTiO2を約30重量%含有させた状態のメタクリルで表面官能基化したTiO2ナノ粒子(日本の触媒化成工業株式会社ELCOM DU−1013TIV等級)2.133gを、3.122gの予加水分解したAPTMSに加えた。この酸化チタンナノ粒子は、動的光散乱により測定され、約20nmの直径であった。
【0116】
1.280gの予加水分解したAPTMSを、0.935gのNissan MEK−STコロイドと混ぜ合わせることによって第二混合物を調製した。この第一および第二混合物を混ぜ合わせ、この混ぜ合わせた混合物を、さらなる使用に先立って24時間のあいだ50℃で熟成させた。
【0117】
フルオロエラストマーを含む第三混合物を、MIBKに溶かしたViton(登録商標)GF200Sの10重量%溶液57.60gと、0.570gのSartomer SR533と、0.342gのIrgacure(登録商標)907とを混ぜ合わせることによって形成した。
【0118】
この第三のフルオロエラストマー含有混合物12.190gをMIBK溶媒7.687gと混ぜ合わせた。次いでこの混合物に、第一および第二混合物を混ぜ合わせたもの(TiO2および加水分解APTMSと、SiO2および加水分解APTMSとを含有する)6.224gを加えて未硬化組成物を形成した。
【0119】
次いでこの得られた未硬化組成物を0.47μTeflon(登録商標)PTFEメンブランフィルターを通して濾過し、調製の2から5時間以内に塗布用に使用した。これは下側層中に粒子を含む二層を形成し、0.3%のTvisを有した。
【0120】
不活性雰囲気ドライボックス中で、イソプロピルアルコール中に分散させた固体ナノ酸化ケイ素(30重量%、IPA−ST、日産化学工業)100gを、イソプロピルアルコール100gと混ぜ合わせた。この混合物に、1,3−ジビニルテトラメチルジシラザン(Gelest Company,Morrisville,PA,Part Number SID 4612.0)6.37gを加えた。この材料を丸底フラスコに移し、その液体混合物を還流させた。一般的な還流温度は、反応の度合いに応じて50と60℃の間であった。約4時間の還流後、材料を放置して冷却した。次いで反応混合物に約80〜90gのMIBKを加えた。
【0121】
このMIBKを含有する反応混合物中の残留アルコールを真空下で蒸留して、官能基付きナノ酸化ケイ素を含む、主にMIBKを含有(アルコール<10%)するコロイドを生成し、重量測定を用いてそのコロイド中の最終固体含量を求めた。コロイドは、使用の前に0.45ミクロンTeflon(登録商標)フィルターを通して濾過した。
【0122】
上記と同じ手順を用いて塗料組成物を調製し、さらに塗布用に使用した。これは下側層中に粒子を含む二層を形成し、0.34%のTvisを有した。
【0123】
これら塗布後の物品の両方を耐引掻性について試験し、200gにおいて約10%引掻き傷面積を示した。
【0124】
比較例A
下記の実施例は、アクリル官能基付き粒子が二層を形成し、一方、アリル官能性を有する同一の粒子が単層を形成することを例示する。
【0125】
アリルトリメトキシシラン0.84gを、室温でNissan MEK−ST(固体ナノ酸化ケイ素)16.67gと混ぜ合わせることによって複合体を形成した。複合体を、さらなる使用に先立って約24時間のあいだ室温に保った。
【0126】
フルオロエラストマーを含む混合物を、酢酸プロピルに溶かしたViton(登録商標)GF200S(乾燥密度1.8g/cc)の10重量%溶液45gと、過酸化ベンゾイル(乾燥密度1.33g/cc)0.45gと、59.48gの酢酸プロピルに溶かした0.45gのSartomer SR533(乾燥密度1.16g/cc)とを混ぜ合わせることによって形成する。
【0127】
このフルオロエラストマーを含む混合物に複合体9.60gを室温で加えて未硬化組成物を形成する。次いでこの未硬化組成物を0.47μTeflon(登録商標)PTFEメンブランフィルターを通して濾過し、調製の2から5時間以内に塗布用に使用した。
【0128】
帯電防止処理し、アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースフィルムの40.6cm×10.2cmストリップに、上記と同じ方法で未硬化組成物を塗布する。この塗布したフィルムを、10.2cm×12.7cmの断片に切断し、窒素雰囲気中で120℃において20分間加熱することによって硬化する。この硬化後の被膜は約100nmの厚さを有する。図2のTEM画像を実施例1と同様に撮ったが、二層の形成は見られなかった。
【0129】
1.32gのAPTMSを、室温で16.67gのNissan MEK−ST(乾燥密度2.32g/cc)と混ぜ合わせることによって複合体を形成した。この複合体を、さらなる使用に先立って約24時間のあいだ室温に保った。この期間の後、複合体は、APTMSと、APTMSの加水分解および縮合生成物とを含有する。
【0130】
フルオロエラストマーを含む混合物を、酢酸プロピルに溶かしたViton(登録商標)GF200S(乾燥密度1.8g/cc)の10重量%溶液45gと、過酸化ベンゾイル(乾燥密度1.33g/cc)0.45gと、酢酸プロピル60.14gに溶かした0.45gのSartomer SR533(乾燥密度1.16g/cc)とを混ぜ合わせることによって形成した。
【0131】
このフルオロエラストマーを含む混合物に複合体8.94gを室温で加えて未硬化組成物を形成した。次いでこの未硬化組成物を0.47μTeflon(登録商標)PTFEメンブランフィルターを通して濾過し、調製の2から5時間以内に塗布用に使用した。
【0132】
帯電防止処理し、アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースフィルムの40.6cm×10.2cmストリップに、この未硬化組成物を塗布した。この塗布したフィルムを10.2cm×12.7cmの断片に切断し、窒素雰囲気中で120℃において20分間加熱することによって硬化した。この硬化後の被膜は約100nmの厚さを有し、二層を示した。
【0133】
Rvisを上記と同様に測定し、1.54であると判定した。
【0134】
したがって、本明細書中でさきに述べた目的および利点を完全に満足させる、基板上に層状反射防止膜を有する物品が、本発明により提供されたことは明らかである。本発明をその特定の実施形態に関連して述べてきたが、当業者には多くの代替案、修正形態、および変形形態がはっきり理解できるであろうことは明白である。したがって、添付の特許請求の範囲のその趣旨および広い範囲の中に含まれるそのようなすべての代替案、修正形態、および変形形態を包含することを意図している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)基板と、
(ii)前記基板上の層状反射防止膜であって、
(iia)低屈折率フルオロエラストマー高分子バインダーと、アクリルまたはビニル官能基で表面官能基化された複数個のナノ粒子とを含む前記基板上に位置づけられた高屈折率下側層、および
(iib)前記低屈折率フルオロエラストマー高分子バインダーを含む前記高屈折率下側層の上に位置づけられた低屈折率上側層
を備え、
前記低屈折率上側層の屈折率が前記高屈折率下側層の屈折率よりも小さい、
層状反射防止膜と
を備えた物品。
【請求項2】
前記高屈折率下側層の前記屈折率が1.41またはそれより大きい、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記基板が、アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースであり、
前記低屈折率上側層が、550nmにおいて四分の一波長の光学的厚さと、550nmにおいて約1.25から約1.40までの範囲にあるLowIndexの屈折率値とを有し、かつ
前記高屈折率下側層が、550nmにおいて四分の一波長の光学的厚さと、
[1.196849×LowIndex]−0.12526
によって計算される下限から、
[1.177721×LowIndex]+0.244887
によって計算される上限までの範囲にあるHighIndexの屈折率値とを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記基板が、アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースであり、
前記低屈折率上側層が、550nmにおいて四分の一波長の光学的厚さと、約1.25から約1.46までの範囲にあるLowIndexの屈折率値とを有し、かつ
前記高屈折率下側層が、550nmにおいて四分の一波長の2倍の光学的厚さと、
[LowIndex2×47.39975]−[121.43156×LowIndex]+78.88532
によって計算される下限から、
[LowIndex2×(−61.309701)]+[LowIndex×160.269626]−101.960123
によって計算される上限までの範囲にあるHighIndexの屈折率値とを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記基板が、アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースであり、
前記低屈折率上側層が、550nmにおいて四分の一波長の0.733倍の光学的厚さと、約1.25から約1.60までの範囲にあるLowIndexの屈折率値とを有し、かつ
前記高屈折率下側層が、550nmにおいて四分の一波長の1.72倍の光学的厚さと、
[LowIndex×1.778499]−0.820833
によって計算される下限から、
[LowIndex×1.778499]−0.820833
によって計算される上限までの範囲にあるHighIndexの屈折率値とを有する、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記ナノ粒子は、少なくとも1種類の構成要素が、酸化チタンと、酸化アルミニウムと、酸化アンチモンと、酸化ジルコニウムと、酸化インジウムスズと、酸化アンチモンスズと、混合チタン/スズ/ジルコニウム酸化物と、1種類または複数種類の陽イオンの二元、三元、四元、およびより高次の複合酸化物とからなる群から選択される無機酸化物を含み、前記陽イオンが、チタン、アルミニウム、アンチモン、ジルコニウム、インジウム、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記層状反射防止膜が、帯電防止特性を有する、請求項1に記載の物品。
【請求項8】
前記層状反射防止膜が、単回塗布ステップにおいて前記基板上に形成される、請求項1に記載の物品。
【請求項9】
前記基板が、トリアセチルセルロース、アセチル化セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ガラス、ビニル、またはナイロンを含み、かつ前記基板が、任意選択でアクリル酸エステルハードコートで処理される、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
(i)液体混合物を形成するステップであって、
(i−a)フルオロエラストマーポリマー、
(i−b)任意選択で、マルチオレフィン架橋剤、
(i−c)任意選択で、少なくとも1個の重合性基を有するオキシシラン
がその中に溶解された溶媒を含み、
かつ前記溶媒が、その中に
(i−d)アクリル官能基で表面官能基化される複数個のナノ粒子
を懸濁している
液体混合物を形成するステップと、
(ii)基板上に前記液体混合物を塗布して、前記基板上に液体混合物膜を形成するステップと、
(iii)前記液体混合物膜から前記溶媒を除去して、前記基板上に未硬化膜を形成するステップと、
(iv)前記未硬化膜を硬化し、それによって
(iv−a)硬化される高分子バインダーおよび前記複数個のナノ粒子を含む、前記基板上に位置づけられた高屈折率下側層、および
(iv−b)硬化される高分子バインダーを含む前記高屈折率下側層の上に位置づけられた低屈折率上側層
を備えた層状反射防止膜を形成するステップであって、
前記低屈折率上側層の屈折率が前記高屈折率下側層の屈折率よりも小さい、
ステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記高屈折率下側層の前記屈折率が1.41またはそれより大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースであり、
前記低屈折率上側層が、550nmにおいて四分の一波長の光学的厚さと、約1.25から約1.40までの範囲にあるLowIndexの屈折率値とを有し、かつ
前記高屈折率下側層が、550nmにおいて四分の一波長の光学的厚さと、
[1.196849×LowIndex]−0.12526
によって計算される下限から、
[1.177721×LowIndex]+0.244887
によって計算される上限までの範囲にあるHighIndexの屈折率値とを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記基板が、アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースであり、
前記低屈折率上側層が、550nmにおいて四分の一波長の光学的厚さと、約1.25から約1.46までの範囲にあるLowIndexの屈折率値とを有し、かつ
前記高屈折率下側層が、550nmにおいて四分の一波長の2倍の光学的厚さと、
[LowIndex2×47.39975]−[121.43156×LowIndex]+78.88532
によって計算される下限から、
[LowIndex2×(−61.309701)]+[LowIndex×160.269626]−101.960123
によって計算される上限までの範囲にあるHighIndexの屈折率値とを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記基板が、アクリル酸エステルをハードコートしたトリアセチルセルロースであり、
前記低屈折率上側層が、550nmにおいて四分の一波長の0.733倍の光学的厚さと、約1.25から約1.60までの範囲にあるLowIndexの屈折率値とを有し、かつ
前記高屈折率下側層が、550nmにおいて四分の一波長の1.72倍の光学的厚さと、
[LowIndex×1.778499]−0.820833
によって計算される下限から、
[LowIndex×1.778499]−0.820833
によって計算される上限までの範囲にあるHighIndexの屈折率値とを有する、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ粒子は、少なくとも1種類の構成要素が、酸化チタンと、酸化アルミニウムと、酸化アンチモンと、酸化ジルコニウムと、酸化インジウムスズと、酸化アンチモンスズと、混合チタン/スズ/ジルコニウム酸化物と、1種類または複数種類の陽イオンの二元、三元、四元、およびより高次の複合酸化物とからなる群から選択される無機酸化物を含み、前記陽イオンが、チタン、アルミニウム、アンチモン、ジルコニウム、インジウム、スズ、亜鉛、ニオブ、タンタル、およびこれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記層状反射防止膜が、帯電防止特性を有する、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記層状反射防止膜が、単回塗布ステップにおいて前記基板上に形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記基板が、トリアセチルセルロース、アセチル化セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ガラス、ビニル、またはナイロンを含み、かつ前記基板が、任意選択でアクリル酸エステルハードコートで処理される、請求項10に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−511304(P2011−511304A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539761(P2010−539761)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/087297
【国際公開番号】WO2009/085878
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】