説明

ナノ粒子分散体中の分散剤を定量的に分析する方法

【課題】ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分散媒体中の分散剤を、簡便かつ定量的に分析する方法を提供すること。
【解決手段】ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分散媒体中の分散剤を定量的に分析する方法であって、以下のステップ;該ナノ粒子分散体を、孔径100nm未満の細孔を有する多孔性材料に通して、該ナノ粒子と、該分散媒体とを分離する;そして該分離されたナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分離された分散媒体中の分散剤を定量的に分析する:を含む前記方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分散媒体中の分散剤を、簡便かつ定量的に分析する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノ粒子を電子材料、光学材料などの先端材料で利用する技術が脚光を浴びている。さらに、ナノ粒子の粒子径が小さくなると透明性が発現することから、数十nm以下の粒子径を有するナノ粒子が特に注目されている。
ナノ粒子は特有の大きな表面エネルギーに由来した凝集が起きやすいため、粒子表面に電荷を与えたり、もしくは分散剤を利用して分散媒体に対する親和性を高めたりして、ナノ粒子に分散性が付与されている。また、ナノ粒子表面の状態を最適に制御すると、ナノ粒子を長期的に安定に分散させることが可能となることが知られている。
さらに、ナノ粒子の分散性とナノ粒子表面の状態の相関を得るためには、粒子表面の電荷を利用した場合には、ゼータ電位を測定して粒子表面の電荷を定量できるが、分散剤を利用した場合には、実際に粒子表面と反応した分散剤を定量することが困難であることも知られている。
【0003】
100nmを超える粒子や凝集粉体では、メンブレンフィルター等の汎用の濾過膜を利用して粒子や凝集粉体を分散媒体から分離できる。例えば、分離した粒子や凝集粉体から未反応の分散剤を洗浄して除いた後に、粒子や凝集粉体と反応した分散剤を分析することで定量することが可能である(非特許文献1)。一方、汎用の濾過膜の孔径は100nmが下限であり、100nmより小さなナノ粒子の場合は、ナノ粒子が濾過膜を通過してしまい、前述のような定量的な分析ができない。また、凝集粉体を分散媒体から分離する方法として、遠心分離法に代表される遠心力の利用も挙げられるが、分散したナノ粒子は粒子径が小さいほどブラウン運動による分散力が大きくなり、その分散力が遠心力を上回ってしまうため、ナノ粒子の分離は困難となる。
【0004】
ナノ粒子分散体において、分散剤を分析する場合には、分散したナノ粒子と分散媒体とを分離できないため、ナノ粒子分散液をそのまま分析したり、乾燥後の粉体を分析するしかないのが現状である。これらの方法では、分散媒体中に遊離した未反応の分散剤を含めた分析評価となり、ナノ粒子表面と反応した分散剤を正確に定量することができない。従って、ナノ粒子を分散させるための分散剤の選定や添加量は、試行錯誤から脱することができず、ナノ粒子表面の状態を最適化するために、その定量的な分析法が熱望されていた。
【0005】
【非特許文献1】「粉体工学会誌」 第39巻 第2号 2002年 p.102
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分散媒体中の分散剤を、簡便かつ定量的に分析する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ナノ粒子分散体を、孔径100nm未満の細孔を有する多孔性材料に通して、分散剤と反応したナノ粒子と分散剤を含む分散媒体とに分離し、該分離されたナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は該分離された分散媒体中の分散剤を定量的に分析することで、上記課題を予想外に解決しうることを発見し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、具体的に以下の(1)〜(4)である。
【0009】
(1)ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分散媒体中の分散剤を定量的に分析する方法であって、以下のステップ;
該ナノ粒子分散体を、孔径100nm未満の細孔を有する多孔性材料に通して、該ナノ粒子と該分散媒体とを分離する;そして
該分離されたナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分離された分散媒体中の分散剤を定量的に分析する:
を含む前記方法。
(2)該多孔性材料の細孔の孔径が、50nm以下である、(1)に記載の方法。
【0010】
(3)該多孔性材料を用いたナノ粒子と分散媒体との分離が、遠心力を用いて行われる、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)該分散剤が、シランカップリング剤又はその部分加水分解物である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法によると、ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分散媒体中の分散剤を、簡便かつ定量的に分析することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分散媒体中の分散剤を定量的に分析する方法であって、該ナノ粒子分散体を、孔径100nm未満の細孔を有する多孔性材料に通し、分散剤と反応したナノ粒子と、ナノ粒子を含む分散媒体とに分離させる段階、そして該分散剤と反応したナノ粒子中の分散剤及び/又は該ナノ粒子を含む分散媒体中の分散剤を定量的に分析する段階を含む方法に関する。
【0013】
本明細書中で、ナノ粒子は、200nm未満、好ましくは100nm未満、より好ましくは50nm未満の粒子径を有する微粒子を意味する。本明細書中で、ナノ粒子の粒子径は、体積平均粒子径である。
【0014】
上記ナノ粒子の製法としては、気相法や液相法で合成された凝集粉体を機械的なエネルギーで粉砕するブレークダウン手法や原料からナノ粒子を化学的に合成するビルドアップ手法が挙げられる。得られるナノ粒子としては、無機化合物や有機化合物等が挙げられ、無機化合物としては、ケイ素、2族のマグネシウム、カルシウム等のアルカリ土類金属、亜鉛、3族のアルミニウム、ガリウム、希土類等、4族のチタン、ジルコニウム等、5族のリン、バナジウム等、6族のクロム、モリブデン等、7族のマンガン等、8族の鉄、コバルト等の無機酸化物や窒化珪素、窒化アルミニウムなどの窒化物、硫化亜鉛や硫化鉛などの硫化物が挙げられる。また、有機化合物としては、有機顔料や有機ポリマーなどが挙げられる。
【0015】
ナノ粒子を分散させる分散媒体としては、水及びアルコール類、ケトン類、エーテル類、エステル類などの有機溶媒が挙げられ、より具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピレングリコールモノプロピルエーテルなどのグリコールエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコールなどのグリコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチルなどのエステル類が用いられる。また、アクリル酸やメタクリル酸メチルなどの重合性モノマー、炭化水素ポリマーやシリコーンなどの重合体を利用することもできる。これらは単独であっても、2種類以上を混合して用いることもできる。
【0016】
上記分散媒体中のナノ粒子の濃度は、分散媒体に対して0.1〜80質量%が好ましく、粘性が低く、多孔性材料により分散剤と反応したナノ粒子と、ナノ粒子を含む分散媒体とを短時間で分離しやすい観点から、0.1〜40質量%がさらに好ましい。
【0017】
本発明の多孔性材料としては、孔径100nm未満の細孔を有するものが用いられる。本発明では、多孔性材料の孔径は、積算細孔量の90%径の値と定義する。上記孔径は、窒素吸着法を用いて算出することができる。上記多孔性材料は、ナノ粒子や分散剤が吸着したり、分散媒体によって溶解するなどの化学的な反応を起こさないものであれば任意の多孔性材料を用いることができるが、ナノ粒子を短時間で分離できる限外濾過膜が好ましい。上記多孔性材料の材質としては、酢酸セルロース、再生セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリルなどの高分子材料やシリカ、アルミナ、ジルコニアなどの無機材料が挙げられる。上記多孔性材料の孔径は、ナノ粒子を分離する観点で100nm未満のものを用いるが、透明性が発現する小さなナノ粒子にも適用できる観点から、50nm以下であることが好ましい。孔径は分離時間、工業的な実施しやすさの観点から、1nm以上であることが好ましい。限外濾過膜の一般的な孔径範囲は、1〜100nm程度であり、限外濾過膜は本発明を適用する多孔性材料として好ましい例の一つに挙げられる。
【0018】
多孔性材料を用いて、該ナノ粒子分散体を、ナノ粒子と、分散媒体とに分離させる際には、分離時間の短縮のため、減圧や加圧などの圧力差、遠心力等を利用することができる。特に、遠心力を利用すると、分離が簡便となり、さらに分離中に分散媒体が揮発せず、分散媒体に含まれる分散剤の定量精度が上がる。
【0019】
本発明においては、ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体を、分散剤と反応したナノ粒子と、分散剤を含む分散媒体とに分離し、その後、分離されたナノ粒子及び/又は分散媒体を分析する。分散剤は分散媒体へのナノ粒子の分散を促進し、また表面エネルギーが高く凝集しやすいナノ粒子同士の再度の凝集を防ぐために利用される。分散剤は分散対象となるナノ粒子や分散媒体に応じて使い分けられる。本発明で分析対象となる分散剤は特に限定されないが、ナノ粒子表面と反応しやすく、ケイ素の分析をすれば容易に定量できるシランカップリング剤やその部分加水分解物は本発明を適用する分散剤として好ましい例の一つに挙げられる。
【0020】
シランカップリング剤の例としては、下記一般式[1]:
nSi(OR)4-n…[1]
{式中、Xはメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基(n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル)、ペンチル基(n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル等)、ヘキシル基(n−ヘキシル、i−ヘキシル等)、ヘプチル基(n−ヘプチル、i−ヘプチル等)、オクチル基(n−オクチル、i−オクチル、t−オクチル等)、ノニル基(n−ノニル、i−ノニル等)、デシル基(n−デシル、i−デシル等)、ドデシル基(n−ドデシル、i−ドデシル等)等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基やシクロヘキシル基、ベンジル基等の環状炭化水素基であり、これらの水素原子又は主鎖骨格の一部又は全部がエーテル基、エステル基、カルボニル基、シロキサン基、フッ素等のハロゲン原子、アクリル基、メタクリル基、ビニル基、アリル基、メルカプト基、アミノ基、ヒドロキシル基等で置換されていてもよく、そしてnは0〜3の整数である}で表されるものが挙げられる。
【0021】
Rの具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、ブチル基(n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、sec−ブチル)、ペンチル基(n−ペンチル、i−ペンチル、ネオペンチル等)、ヘキシル基(n−ヘキシル、i−ヘキシル等)、ヘプチル基(n−ヘプチル、i−ヘプチル等)、オクチル基(n−オクチル、i−オクチル、t−オクチル等)、ノニル基(n−ノニル、i−ノニル等)、デシル基(n−デシル、i−デシル等)、ドデシル基(n−ドデシル、i−ドデシル等)等の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基やシクロヘキシル基、ベンジル基等の環状炭化水素基が挙げられ、複数のRは互いに同一でも異なっていてもよい。
【0022】
上記一般式[1]で表される化合物の具体例としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ジメトキシジメチルシラン、メトキシトリメチルシラン、メチルトリエトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、アリルトリエトシキシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチルアミノプロピル)トリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、テトラエトキシシラン等を例示することができる。このようなシランカップリング剤の加水分解は、水、有機溶媒の存在下で行われ、必要に応じて酸やアルカリ等の触媒が利用できる。
【0023】
ナノ粒子表面と反応した分散剤を定量的に分析する手法としては、分散剤に応じて既知の分析方法を便宜選択できる。定量的な分析方法の具体例としては、赤外分光光度法、ラマン分光光度法、紫外・可視分光光度法、核磁気共鳴法、熱重量分析法、ガスクロマトグラフ分析法、液体クロマトグラフ分析法、イオンクロマトグラフ分析法、ゲル浸透クロマトグラフ分析法、誘導結合プラズマ質量分析法、誘導結合プラズマ発光分光分析法、炭素や窒素、硫黄の元素分析法、蛍光X線分析法、光電子分光法などが例示できる。
【実施例】
【0024】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
凝集粉体の粉砕には、ビーズミル装置(寿工業製ウルトラアペックスミルUAM−015型)を用いた。
粉砕後の微粒子の粒子径は、日機装製のマイクロトラックUPA(MODEL:9340−UPA)を用いて動的光散乱法により測定した。
【0025】
ナノ粒子表面と反応した分散剤の熱重量分析には、島津製作所製のTG/DTA同時測定装置(DTG−60H)を用いた。測定には、空気中で30℃から1000℃まで、20℃/分の昇温速度を用いた。
分散媒体に含まれる分散剤の誘導結合プラズマ発光分光分析には、セイコーインスツル製のICP発光分光分析装置(SPS4000)を用いた。
【0026】
[実施例1]
−ナノ粒子分散体の作製−
凝集粉体として一次粒子径が7nmのアナターゼ型酸化チタン粉体(石原産業(株)製、ST−01)を用いた。分散媒体としてメチルイソブチルケトン(MIBK)を用い、分散剤としてトリメトキシビニルシラン(TMVS)を用いた。
【0027】
まず、1.85gのTMVSを490gのMIBKに分散し、次いで5gの酸化チタン粉体を加え、撹拌して、凝集粉体の分散液(A)を得た。分散液(A)中のSi/Ti元素比(α)は、0.2となる。次に、ビーズ径が15μmのジルコニア製ビーズを撹拌容器の70体積%になるように入れたビーズミル装置で、分散液(A)を粉砕した。その際、撹拌ブレード先端の周速が15m/秒となるように撹拌翼の回転数を調整して粉砕した。1時間粉砕し、体積平均粒子径が78nmのナノ粒子分散体(a)を得た。
【0028】
−限外濾過によるナノ粒子と分散媒体との分離−
ナノ粒子分散体(a)4gを、分画分子量10万(孔径:7nm相当)の限外濾過膜を利用した遠心フィルターユニット(ミリポア社製、セントリプラスYM−100)に入れ、遠心分離機を用いて3000Gの遠心力を90分間かけ、ナノ粒子と分散媒体とに分離した。限外濾過膜上に沈積したナノ粒子に4gのMIBKを添加、撹拌し、さらに3000Gの遠心力で90分間濾過した(洗浄工程)。この洗浄工程を2回繰り返した。
【0029】
−ナノ粒子表面と反応した分散剤の熱重量分析及び定量−
2回の洗浄工程後、限外濾過膜上に沈積したナノ粒子を熱重量分析し、ナノ粒子表面と反応した分散剤量を定量する。なお、本実施例では、当該ナノ粒子表面と反応した分散剤量を、Si/Ti元素比(βTG)として評価する。
ここで、200℃まで加熱された沈積したナノ粒子の質量をW200、1000℃まで加熱された沈積したナノ粒子の質量をW1000とすると、W200、W1000、βTG、及び一般式[1]中のXnには、以下の関係式[2]:
{βTG×(Xnの化学式量)}/[(酸化チタンの分子量)+βTG×{(Xnの化学式量)+(ケイ素の原子量)}]=(W200−W1000)/W200…[2]
が成立する。W200は限外濾過膜上に沈積したナノ粒子から吸着水分や残留分散媒体を除いた重量であり、W1000はさらにシランカップリング剤の有機分が燃焼除去された重量である。
本実施例では、W200=0.0402g、W1000=0.0381gの値が得られ、さらにXn=27、酸化チタンの分子量=80及びケイ素の原子量=28を用いて、関係式[2]からβTG=0.17の値を得た。
【0030】
−分散媒体に含まれる分散剤の誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP分析)及び定量−
最初にナノ粒子から分離された分散媒体と、2回の洗浄工程で分離された洗浄液とを混合して均一溶液とし、ICP分析を行った。Si元素量及びTi元素量から、ナノ粒子分散体(a)の分散媒体中のTMVS量を0.195g、酸化チタン量を0.04gと算出した。分散液(A)を作製する際に添加した初期のTMVS量(1.85g)、酸化チタン量(5g)から上記値をそれぞれ差し引くと、ナノ粒子表面と反応したTMVS量及び分散剤と反応した酸化チタン量を算出することができ、ナノ粒子表面と反応したTMVS量は1.655g、分散剤と反応した酸化チタン量は4.96gとなる。これらの値を基にナノ粒子表面と反応した分散剤量をSi/Ti元素比(βICP)として計算し、βICP=0.18の値を得た。
【0031】
[実施例2]
4.63gのTMVSを用いた(α=0.5)以外は、実施例1と同様にビーズミル装置で粉砕し、体積平均粒子径が52nmのナノ粒子分散体(b)を得た。限外濾過によるナノ粒子と分散媒体との分離、熱重量分析、ICP分析を行い、βTG=0.54、βICP=0.48の値を得た。
【0032】
[実施例3]
9.26gのTMVSを用いた(α=1.0)以外は、実施例1と同様にビーズミル装置で粉砕し、体積平均粒子径が49nmのナノ粒子分散体(c)を得た。限外濾過によるナノ粒子と分散媒体との分離、熱重量分析、ICP分析を行い、βTG=0.64、βICP=0.73の値を得た。
【0033】
[実施例4]
分散剤として3.11gの3−メタクロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)を用いた(α=0.2)以外は、実施例1と同様にビーズミル装置で粉砕し、体積平均粒子径が137nmのナノ粒子分散体(d)を得た。限外濾過によるナノ粒子と分散媒体との分離、熱重量分析、ICP分析を行い、βTG=0.14、βICP=0.17の値を得た。
【0034】
[実施例5]
分散剤として7.76gのMPTMSを用いた(α=0.5)以外は、実施例1と同様にビーズミル装置で粉砕し、体積平均粒子径が26nmのナノ粒子分散体(e)を得た。限外濾過によるナノ粒子と分散媒体との分離、熱重量分析、ICP分析を行い、βTG=0.40、βICP=0.44の値を得た。
【0035】
[比較例1]
ナノ粒子と分散媒体との分離を、孔径が100nmの四フッ化エチレン樹脂フィルター(アドバンテック東洋製、PTFEタイプメンブレンフィルター)を用いた吸引濾過で行った以外は、実施例5と同様の処理を行った。ナノ粒子分散体(e)はフィルターを通過し、フィルター上に残らなかった。
【0036】
以上の結果から、各実施例におけるβTGとβICPの値はほぼ同一であり、いずれの分析においても、ナノ粒子表面と反応した分散剤を定量的に分析することができた。また、どちらか一方の分析のみでもナノ粒子表面と反応した分散剤を定量的に分析することができた。加えて、α=1.0のような多量の分散剤を添加した場合には、全ての分散剤がナノ粒子表面と反応してはいないと判断することができる。さらに、ICP分析から、分散媒体に含まれる分散剤も定量的に分析することができた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、電子材料用途や光学材料用途に用いられるナノ粒子表面の状態を最適化する際に使用しうる、ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤を簡便かつ定量的に分析する方法として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノ粒子、分散剤、及び分散媒体を含むナノ粒子分散体の中の該ナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分散媒体中の分散剤を定量的に分析する方法であって、以下のステップ;
該ナノ粒子分散体を、孔径100nm未満の細孔を有する多孔性材料に通して、該ナノ粒子と該分散媒体とを分離する;そして
該分離されたナノ粒子表面と反応した分散剤及び/又は分離された分散媒体中の分散剤を定量的に分析する:
を含む前記方法。
【請求項2】
該多孔性材料の細孔の孔径が、50nm以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該多孔性材料を用いたナノ粒子と分散媒体との分離が、遠心力を用いて行われる、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
該分散剤が、シランカップリング剤又はその部分加水分解物である、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2010−91342(P2010−91342A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−259987(P2008−259987)
【出願日】平成20年10月6日(2008.10.6)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】