説明

ナノ細孔内の分子を操作するためのシステムおよび方法

脂質二重層に埋め込まれたナノ細孔内の分子を操作するための技法を述べる。一例では、脂質二重層にわたって獲得用電気的刺激レベルが印加され、ここで、ナノ細孔を含有する脂質二重層の領域は抵抗によって特徴付けられ、獲得用電気的刺激レベルは、周囲の流体からナノ細孔に分子を引き込む傾向があり、ナノ細孔内への分子の少なくとも一部の獲得により生じる脂質二重層の抵抗値の変化が検出され、獲得用電気的刺激レベルが保持用電気的刺激レベルに変えられ、獲得用電気的刺激レベルが保持用電気的刺激レベルに変化した後に分子の一部がナノ細孔に残る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
内径が1ナノメートル程度の細孔径を有するナノ細孔膜デバイスが、高速のヌクレオチド配列決定に有望であることが示されている。導電性流体中に浸漬されたナノ細孔にわたって電圧ポテンシャルが印加されるとき、ナノ細孔にわたるイオンの伝導による小さなイオン電流を観察することができる。電流の大きさは、細孔径に高感度である。DNAやRNA分子などの分子がナノ細孔を通過するとき、分子は、ナノ細孔を部分的にまたは完全に塞ぐことがあり、これは、ナノ細孔を通る電流の大きさの変化を引き起こす。イオン電流遮断をDNA分子の塩基対配列と相関させることができることが示されている。
【0002】
しかし、この技術は依然として様々な課題に直面しており、これまで、単一の塩基対を区別することはできていない。特に、ナノ細孔内にssDNA分子を引き込むのに必要な電気ポテンシャルは、ssDNA分子を非常に高速でナノ細孔を通過させる傾向があり、これは分析を困難にする。この問題を解決するために、ssDNAをビーズに固定化して、ナノ細孔を通るssDNA分子の移動を止める試みがなされている。しかし、そのような手法は、大がかりな試料調製を含むことがあり、小さな試料サイズには適していないことがある。ナノ細孔膜デバイスを使用するDNA分析のための改良された技法が必要とされる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本発明の様々な実施形態を、以下の詳細な説明および添付図面で開示する。図面は、本発明の様々な実施形態を例示する意図のものであり、必ずしも一律の縮尺では描かれていないことに留意されたい。
【0004】
【図1】ナノ細孔含有脂質二重層を備えるナノ細孔デバイスの一実施形態の概略図である。
【0005】
【図2】電気的刺激を制御するため、および検体分子の電気的シグネチャを検出するためのナノ細孔デバイスで使用される回路の一実施形態の概略図である。
【0006】
【図3A】ナノ細孔デバイスアレイを含むチップの一実施形態の概略斜視図である。
【0007】
【図3B】図3Aに示されるチップの断面図である。
【0008】
【図4A】固体基板上に脂質二重層を形成するためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【図4B】固体基板上に脂質二重層を形成するためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【図4C】固体基板上に脂質二重層を形成するためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【図4D】固体基板上に脂質二重層を形成するためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【0009】
【図5A】脂質二重層内にナノ細孔を挿入するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【図5B】脂質二重層内にナノ細孔を挿入するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【図5C】脂質二重層内にナノ細孔を挿入するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【図5D】脂質二重層内にナノ細孔を挿入するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【図5E】脂質二重層内にナノ細孔を挿入するためのプロセスの一実施形態の概略図である。
【0010】
【図6A】ナノ細孔内の分子の操作、検出、特徴付け、相関、分析、および/または配列決定を行うためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【図6B】ナノ細孔内の分子の操作、検出、特徴付け、相関、分析、および/または配列決定を行うためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【図6C】ナノ細孔内の分子の操作、検出、特徴付け、相関、分析、および/または配列決定を行うためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【0011】
【図7A】逆「V」字形の進行用電気的刺激以外の、進行用電気的刺激の様々な実施形態を示す図である。
【図7B】逆「V」字形の進行用電気的刺激以外の、進行用電気的刺激の様々な実施形態を示す図である。
【図7C】逆「V」字形の進行用電気的刺激以外の、進行用電気的刺激の様々な実施形態を示す図である。
【図7D】逆「V」字形の進行用電気的刺激以外の、進行用電気的刺激の様々な実施形態を示す図である。
【0012】
【図8A】ナノ細孔内の分子の進行を逆転させるためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【図8B】ナノ細孔内の分子の進行を逆転させるためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【図8C】ナノ細孔内の分子の進行を逆転させるためのプロセスの一実施形態を示す概略図である。
【0013】
【図9】ナノ細孔を通して移動される分子の抵抗値プロファイルの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、プロセス、装置、システム、組成物、コンピュータ可読記憶媒体で具現化されたコンピュータプログラム製品、および/または処理装置、例えば処理装置に結合されたメモリに記憶されている命令および/またはメモリによって提供される命令を実行するように構成された処理装置を含めた多くの様式で実装することができる。本明細書では、これらの実装形態、または本発明が取ることができる任意の他の形態を技法と呼ぶ。一般に、開示するプロセスのステップの順序は、本発明の範囲内で変えることができる。特に指定のない限り、タスクを行うように構成されているものとして述べる処理装置やメモリなどの構成要素は、そのタスクを所与の時間に一時的に行うように構成された汎用構成要素として実装することも、そのタスクを行うために製造された専用構成要素として実装することもできる。本明細書で使用するとき、用語「処理装置」は、コンピュータプログラム命令などのデータを処理するように構成された1つまたは複数のデバイス、回路、および/または処理コアを表す。
【0015】
以下、本発明の1つまたは複数の実施形態の詳細な説明を、本発明の原理を図示する添付図面と共に提供する。本発明をそのような実施形態に関連付けて説明するが、本発明はいかなる実施形態にも限定されない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によってのみ限定され、本発明は、多くの代替形態、修正形態、および均等形態を包含する。本発明を完全に理解できるように、以下の説明において多くの具体的な詳細を記載する。これらの詳細は例示の目的で提示するものであり、本発明は、特許請求の範囲に従って、これらの具体的な詳細のいくつかまたは全てを用いずに実施することもできる。分かりやすくする目的で、本発明を不要に曖昧にすることがないように、本発明に関係する技術分野で知られている技術項目は詳細には説明していない。
【0016】
本明細書では、ナノ細孔デバイスを使用して分子の操作、検出、特徴付け、相関、および/または決定を行うための技法を説明する。一例では、抵抗とキャパシタンスによって特徴付けられるナノ細孔含有脂質二重層にわたって獲得用電気的刺激が印加され、ここで、獲得用電気的刺激は、周囲の流体からナノ細孔内に分子を引き込む傾向があるレベルである。ナノ細孔内への分子の少なくとも一部の獲得により生じる脂質二重層の電気的特性の変化が検出される。応答時、電気的刺激レベルは、保持用電気的刺激レベルに変えられる。典型的には、周囲の流体からナノ細孔内に分子を引き込む傾向がある獲得用電気的刺激のレベルは、ナノ細孔を通して非常に迅速に分子を進行させるようにする傾向もある。ナノ細孔内への分子の少なくとも一部の獲得により生じるナノ細孔含有脂質二重層の電気的特性の変化を検出した後、さらに詳細な特徴付けのためにナノ細孔内に分子を捕獲するために、しばしば、電気的刺激レベルをより低い保持用電気的刺激レベルに迅速に減少させる必要がある。
【0017】
分子がナノ細孔内に捕獲された後、次いで、分子がナノ細孔を通って進行するまで、ナノ細孔含有脂質二重層にわたって進行用電気的刺激(例えば可変電気的刺激)が印加される。進行用電気的刺激レベルは、特徴付けのために分子の有用な(1つまたは複数の)電気的シグネチャを記録することができるようにナノ細孔を通して分子を進行させるようなものである。いくつかの実施形態では、進行用電気的刺激レベルは、獲得用電気的刺激のレベルよりも低く、保持用電気的刺激のレベルよりも高い。分子がナノ細孔を通って進行するとき、分子の1つまたは複数の電気的シグネチャが記録される。次いで、検出された(1つまたは複数の)電気的シグネチャに基づいて分子の特徴付けを行うことができる。
【0018】
また、分子が逆進行できるように、すなわちナノ細孔を通って逆戻りさせることができるように、逆進行用電気的刺激を印加することもできる。逆進行用電気的刺激は、進行用電気的刺激の前に印加する、進行用電気的刺激の後に印加する、および/または進行用電気的刺激と混在させて印加することができる。進行用電気的刺激と逆進行用電気的刺激を交互に繰り返すことによって、ナノ細孔を通る分子の進行および/または逆進行中に分子の反復測定値を得ることができる。いくつかの実施形態では、この繰返しは、分子の選択された領域、例えばSNP部位、コピー数多型部位、メチル化部位、タンパク質結合部位、酵素結合部位、反復配列部位、および制限酵素部位に対して行われて、分子の選択された領域に関するより精密な測定およびより良い精度を実現する。一例では、まず進行用電気的刺激を印加し、次いで逆進行用電気的刺激を印加し、それに続いてさらなる進行用電気的刺激を印加することができる。分子の同じ部分に対して測定を繰り返すことによって、測定に関する信号対雑音比の改良を実現することができる。一例では、複数の逆進行用電気的刺激が複数の進行用電気的刺激と混在され、複数の進行用電気的刺激それぞれに逆進行用電気的刺激が続く。いくつかの実施形態では、逆電気的刺激レベルの極性は進行用電気的刺激に対して逆にされ、逆電気的刺激は分子を逆進行方向に引っ張る。いくつかの実施形態では、逆電気的刺激は、進行用電気的刺激と同じ極性であるが、大きさが進行用電気的刺激よりも小さく(または大きさがゼロであり)、分子がナノ細孔を通って逆進行する自然な傾向が、分子を逆進行方向に引っ張る。そのような場合、逆電気的刺激は、ナノ細孔を通る分子の逆進行を遅くする働きをすることがある。また、逆進行中に検出された(1つまたは複数の)電気的シグネチャを使用して分子の特徴付けを行うこともできる。いくつかの状況下では、分子は、ナノ細孔を通って逆進行するときに、より予測可能な速度および/またはより遅い速度で移動することができ、記録される(1つまたは複数の)電気的シグネチャは、より良い品質および信号対雑音比を有することができる。一例では、特徴付けを行われる分子がdsDNA分子であり、逆進行用電気的刺激の印加時、分子がナノ細孔を通って逆進行するときに、解かれているssDNA分子が再アニールしてdsDNA分子を形成する。この例では、逆進行用電気的刺激は、進行用電気的刺激と同じ極性であるが、大きさは進行用電気的刺激よりも小さい。解かれているssDNA分子が再アニールしてdsDNA分子を形成する自然な傾向は、分子を逆進行方向に押し進める。逆進行用電気的刺激は、DNA分子がナノ細孔を通って逆進行する速度を遅くする働きをする。逆進行用電気的刺激が進行用電気的刺激と同じ極性を有する場合、逆進行用電気的刺激の大きさが増加すると、分子の逆進行が遅くなる。逆進行用電気的刺激が進行用電気的刺激と異なる極性を有する場合、逆進行用電気的刺激の大きさが増加すると、分子の逆進行が速くなる。DNA分子がナノ細孔を通って逆進行するときにssDNAが再アニールしてdsDNAを形成するこの例では、ssDNA分子が再アニールしてdsDNAを形成する傾向(例えばssDNA分子が再アニールしてdsDNAを形成するときに解放されるエネルギー)が、逆進行用電気的刺激の極性および/または大きさに影響を及ぼすことがある。分子がナノ細孔を通って逆進行するときに分子がハイブリダイゼーションマーカーと再ハイブリダイゼーションする他の例では、分子がハイブリダイゼーションマーカーと再ハイブリダイゼーションする傾向(例えば分子がハイブリダイゼーションマーカーと再ハイブリダイゼーションするときに解放されるエネルギー)が、逆進行用電気的刺激の極性および/または大きさに影響を及ぼすことがある。
【0019】
本明細書に記載する技法を使用して特徴付けを行われる分子は、荷電または極性分子、例えば荷電または極性ポリマ分子を含めた様々なタイプのものでよい。具体的な例としては、リボ核酸(RNA)およびデオキシリボ核酸(DNA)分子が挙げられる。DNAは、一本鎖DNA(ssDNA)分子でも二本鎖DNA(dsDNA)分子でもよい。他の例としては、ポリペプチド鎖またはタンパク質が挙げられる。
【0020】
分析前に分子を修飾することができる。例えば、分析前に分子をハイブリダイゼーションマーカーとハイブリダイゼーションさせることができる。ハイブリダイゼーションマーカーは、特徴付けを行われる分子に結合することができる任意のものでよい。ハイブリダイゼーションマーカーは、ナノ細孔を通して分子を移動させるのに必要なエネルギー(例えば電圧レベル)を修正する働きをすることができ、および/またはナノ細孔を通して分子が進められるときに分子の電気的シグネチャを変えることができる。これは、例えば、特徴付けを行われる分子の配座に影響を及ぼすこと、ナノ細孔を通して分子を進めるために、特徴付けを行われる分子をハイブリダイゼーションマーカーから切り離すのに必要なエネルギーに影響を及ぼすこと、または分子がハイブリダイゼーションマーカーと再ハイブリダイゼーションされるときに解放されるエネルギーに影響を及ぼすことによって行われる。ハイブリダイゼーションマーカーは、特徴付けを行われる分子と共にナノ細孔を通って移動することがあり、または必ずしも移動しなくてもよいことに留意すべきである。ハイブリダイゼーションマーカーの例としては、DNA、RNA、修飾DNA、修飾RNA、配位子、ポリマ、ビタミン、蛍光分子、ビーズが挙げられる。例えば、特徴付けを行われる分子がヌクレオチド分子(例えばDNA分子)を含む場合、ハイブリダイゼーションマーカーは、ヌクレオチド配列(例えばDNAまたはRNA配列)または修飾ヌクレオチド配列(例えば修飾DNAまたはRNA配列)の鎖を含むことができ、これは、特徴付けを行われるヌクレオチド分子全体、または特徴付けを行われるヌクレオチド分子の対象領域を補完する。ハイブリダイゼーションマーカーは、例えば、一塩基多型(SNP)部位、コピー数多型部位、メチル化部位、タンパク質結合部位、酵素結合部位、反復配列部位、制限酵素部位、miRNA部位、siRNA部位、tRNA部位、トランスポゾン部位、セントロメア部位、テロメア部位、転座部位、挿入部位、または削除部位のヌクレオチド配列を補完するヌクレオチド配列を含むことができる。
【0021】
本明細書で述べる電気的刺激は、印加電流や印加電圧など様々な電気的刺激でよい。電流は、直流(DC)および/または交流(AC)でよい。電気的刺激は、一連の電気パルスを成すことができる。
【0022】
電気的シグネチャは、ナノ細孔、脂質二重層、またはナノ細孔−脂質二重層の系の任意の測定可能な電気的特性を含むことができ、この電気的特性は、分子がナノ細孔を通って進行するときに変化し、これが分子の特性または構造を示唆する。例えば、DNA分子の異なる個々の塩基対、または塩基対の配列により、ナノ細孔が異なるイオン電流または抵抗値を有することがある。また、DNA分子の異なる塩基対の異なる結合強度により、捕獲されたDNA分子をナノ細孔を通して移動させるのに必要な電圧が増減することがある。DNA分子の異なる塩基対間の結合強度は、DNA分子を異なるハイブリダイゼーションマーカーにハイブリダイゼーションすることによって増減させることができる。したがって、様々な実施形態において、電気的シグネチャは、脂質二重層にわたる電圧、抵抗値、および/または電流のプロファイルの瞬時的測定値または経時的測定値を含むことがある。例えば、電気的シグネチャは、ナノ細孔を通る分子の進行に影響を及ぼすのに必要な可変電気的刺激の(1つまたは複数の)大きさを含むことがある。また、電気的シグネチャは、分子がナノ細孔を通って進行するときに分子の様々な離散部分またはフレームの電気的シグネチャを組み合わせた複合の電気的シグネチャでもよい。例えば、DNA分子の特徴付けは、DNA分子の様々なフレームに関する電気的シグネチャを組み合わせた複合の電気的シグネチャに基づくことがあり、各フレームは、印加される電気的刺激の下で分子がナノ細孔を通って進むときのDNA分子の一領域(例えば1〜20個の塩基配列)の電気的シグネチャに対応する。いくつかの実施形態では、分子の1つまたは複数の重畳するフレームの電気的シグネチャを組み合わせ、デコンボリューションして、分子の電気的シグネチャを生成することができる。サンプリングフレームの重畳は、分子のより正確な特徴付けを可能にすることがある。
【0023】
いくつかの実施形態では、分子の特徴付けを行うために使用することができるより多くのデータを収集するために、同じまたは異なる化学的または環境的条件の下で、分子の複数の電気的測定値を獲得することができる。ナノ細孔を通して分子を繰り返し逆戻りさせ、同じまたは異なる条件下で電気的測定を繰り返すことによって、同じ分子の複数回の電気的測定を実現することができる。いくつかの実施形態では、異なる化学的または環境的条件は、様々な環境的変数の1つまたは複数を変えることによって実現することができ、そのような環境的変数は、例えば、pH、塩濃度、グリセロール濃度、尿素濃度、ベタイン濃度、ホルムアミド濃度、温度、二価カチオン濃度、および他の環境的変数である。単一の実験で同じ分子に対して、または異なる実験で同じ分子または異なる分子に対して反復測定を行うことができる。反復測定は、逆進行用電気的刺激が印加された状態で、ナノ細孔内で分子を逆戻りさせることによって行うことができる。いくつかの実施形態では、反復測定は、DNA分子の一塩基多型(SNP)部位やメチル化部位など、分子の1つまたは複数の対象領域に対して行うことができる。いくつかの実施形態では、特徴付けを行われる分子は、ナノ細孔を通して引かれるときに異なる配座および/または配向を取ることがあり、それにより、同じ分子の測定される(1つまたは複数の)電気的シグネチャが実験ごとに異なり、分子の特徴付けを行うのが難しくなる。通常は同じ条件下で、同じ分子の(1つまたは複数の)電気的シグネチャを繰り返し測定し、反復測定から分子の一意の電気的シグネチャのライブラリを得ることによって、分子の異なる配座および/または配向からの異なるシグネチャを使用してクロスチェックを行い、特定のバイオマーカーの同定の信頼度を高めることができる。
【0024】
分子の特徴付けは、測定可能な電気的シグネチャの分散をもたらす分子の任意の特性を決定することを含むことができる。例えば、DNA分子の塩基配列は、DNA分子がナノ細孔を通って進行するときにナノ細孔を通るイオン電流(または電気抵抗)の分散を測定することから導出することができ、および/または、分子の様々な点で、ナノ細孔を通して分子の少なくとも一部(例えばdsDNA分子の一本鎖)を引張るのに必要な電圧を測定することから導出することができる。特徴付けを行われる分子がdsDNAである場合、分子の特徴付けは、dsDNA分子の1つまたは複数のGCおよび/またはAT塩基対を同定することを含むことがある。また、分子の特徴付けは、分子の可能な構造を得るために、分子の測定された(1つまたは複数の)電気的シグネチャを既知の分子の(1つまたは複数の)電気的シグネチャと比較して相関させることによって、分子の特性を決定することを含むこともできる。例えば、あるDNA分子のセグメントの塩基配列は、そのDNA分子の測定された(1つまたは複数の)電気的シグネチャを既知のDNAセグメントの(1つまたは複数の)電気的シグネチャと比較して相関させることによって決定することができる。いくつかの実施形態では、特徴付けを行われる分子は、遺伝子のDNAセグメントである。本明細書で述べる技法を使用して決定されるDNAセグメントの配列は、遺伝子の新規配列決定のために使用することができる。一例では、遺伝子配列は、1つまたは複数の制限酵素を使用して、より短いヌクレオチド配列(例えば50〜10000個の塩基対)に断片化することができる。個々のDNAセグメントの配列は、DNAセグメントの検出された(1つまたは複数の)電気的シグネチャを既知のDNA配列の電気的シグネチャと相関させることによって決定することができる。次いで、断片化されたDNAセグメントの重畳部分を位置合わせすることによって、ゲノム配列全体を再構成することができる。
【0025】
本明細書で述べる分子の操作および特徴付けを行うための技法は、非常に高感度にすることができ、大規模な試料処理、例えば増幅、分離、誘導体化を必要としないことがあり、したがって必要な試料を非常に少量にすることができる。これにより、本明細書で述べる技法は、高感度を要し、および/または試料サイズが限られている用途に特に適したものとなる。そのような用途の例としては、癌バイオマーカースクリーニング、感染病検出、新生児スクリーニング、およびバイオテロリズム病原体スクリーニングが挙げられる。
【0026】
さらに、本明細書において、実質的に平坦な固体表面上に脂質二重層を取り付けるための技法を述べる。脂質二重層適合表面は、脂質二重層を形成するのに適していない1つまたは複数の脂質二重層不適合表面によって隔離されることがある。脂質二重層は、脂質二重層適合表面上にしか生じず、脂質二重層不適合表面上には生じないので、脂質二重層不適合表面は、形成される脂質二重層のサイズを脂質二重層適合表面の縁部までに制限することがある。一例では、脂質懸濁液(例えば、懸濁された脂質コロイドを含有する電解質水溶液)が、脂質二重層適合表面および隣接する脂質二重層不適合表面の上に堆積される。いくつかの実施形態では、脂質二重層適合表面は親水性材料から成る。脂質二重層の形成を可能にする傾向がある任意の材料を使用することができる。いくつかの実施形態では、脂質二重層不適合表面は脂肪親和性材料から成る。脂質二重層の形成を妨げる傾向がある任意の材料を使用することができる。次いで、高速で拡散するガス分子を充填された脂質の泡が、脂質二重層適合表面上に生成される。本明細書では、この泡を脂質二重層開始泡と呼ぶ。ガス分子が泡から外に拡散され、泡がつぶれて、または崩壊して、固体表面上に脂質二重層を形成する。
【0027】
上述した脂質二重層開始泡を生成するために様々な技法を使用することができる。例えば、脂質二重層適合表面(例えば電極表面)上に堆積される脂質懸濁液が化学物質を含むことがあり、これらの化学物質が反応または分解して、高速で拡散するガス分子を生成することができる。高速で拡散するガス分子は、脂質層を通って迅速に拡散することができる任意の気体分子でよい。一般に、より大きな分子またはイオン気体分子は、脂質二重層を通ってあまり良く拡散せず、より小さな無極性分子は、脂質二重層を通って迅速に拡散することができる。高速で拡散する気体分子の例としては、O2およびCO2が挙げられる。一例では、脂質懸濁液はギ酸カリウム分子を含み、0.3V〜3.0Vの範囲を有する泡開始電気的刺激が脂質懸濁液に100ms〜1s印加され、それによりギ酸分子が分解して、高速で拡散するC2Oを生成する。別の例では、0.5V〜3.0Vの範囲を有する泡開始電気的刺激を脂質懸濁液に印加して、H2Oを酸化して、高速で拡散するO2ガス分子を生成することができる。
【0028】
脂質二重層が所要の構造的および/または電気的特性を有することを保証するために、様々な技法を使用して脂質二重層の構造完全性および/または電気的特性を検査することができる。一例では、脂質二重層にわたって交流(AC)を印加して、脂質二重層のキャパシタンスを検出することができる。いくつかの実施形態では、検出されたキャパシタンスが約5fF/μm2よりも大きい場合には、脂質二重層が適切に形成されており、所要の構造的および電気的特性を有するとみなされ、そうでない場合には、脂質二重層が適切に形成されておらず、消去用電気的刺激を印加して脂質二重層を消去することができ、それにより、脂質二重層適合表面上に脂質二重層を取り付けるプロセスをもう一度開始することができる。
【0029】
さらに、本明細書において、脂質二重層内にナノ細孔を挿入するための技法を述べる。一例では、ナノ細孔形成分子を含有する溶液が脂質二重層上に堆積され、脂質二重層にわたって撹拌用刺激が印加されて、脂質二重層を破壊し、脂質二重層へのナノ細孔の挿入を促す。撹拌用刺激は、ナノ細孔挿入を促すために脂質二重層の破壊、好ましくは一時的な破壊を生じることができる任意の種類の刺激でよい。これは、電気的刺激、熱的刺激、化学的刺激、音(音響)刺激、機械的刺激、および/または光刺激でよい。一例では、撹拌用刺激は、50ms〜1sにわたって100mV〜1.0Vの範囲を有する撹拌電気的電圧レベルである。
【0030】
いくつかの実施形態では、脂質二重層またはナノ細孔含有脂質二重層は、偶発的に、または300mV〜3V(もしくは−300mV〜−3V)の範囲を有する破壊電気的刺激を使用して意図的に損傷または破壊され、それにより、平坦な固体表面の上に新たなナノ細孔含有脂質二重層を形成することができる。脂質二重層の破壊により、脂質二重層の下の表面が酸化または還元することがある。そのような場合、50mV〜300mVの大きさを有する洗浄電気的刺激を印加して、固体表面の酸化または還元を戻すことができる。
【0031】
所望の数のナノ細孔が挿入され、プロセス中に脂質二重層が損傷されないことを保証するために、脂質二重層を監視することができる。一例では、脂質二重層にわたって測定電気的刺激が印加され、脂質二重層の抵抗(またはイオン電流)が測定される。脂質二重層の抵抗の大きさは、脂質二重層にナノ細孔が挿入されているかどうかを示し、ナノ細孔が挿入されている場合にはナノ細孔がいくつ挿入されているかを示し、また、プロセス中に脂質二重層が損傷されているかどうかを示す。所望の数のナノ穴が挿入されており、プロセス中に脂質二重層が損傷されていないと判断された場合、本明細書で述べる技法を使用して分子の特徴付けを行うために脂質二重層を使用することができる。ナノ細孔が挿入されていないと判断された場合、さらなる撹拌用電気的刺激を印加することができる。所望の数のナノ細孔よりも多くのナノ細孔が挿入されている、または脂質二重層が損傷されていると判断された場合、脂質二重層にわたって消去用電気的刺激を印加して脂質二重層を消去することができ、脂質二重層を形成してナノ細孔を挿入するプロセスを再び開始する。
【0032】
図1は、ナノ細孔デバイス100の概略図である。このデバイス100は、上述した例で説明したように分子の特徴付けを行うために使用することができ、ここで、ナノ細孔含有脂質二重層は、抵抗とキャパシタンスによって特徴付けられる。ナノ細孔デバイス100は、導電性固体基板106の脂質二重層適合表面104上に形成された脂質二重層102を含み、ここで、脂質二重層適合表面104は、脂質二重層不適合表面105によって隔離することができ、導電性固体基板106は、絶縁材107によって電気的に絶縁することができ、脂質二重層102は、脂質二重層不適合表面105上に形成された無定形の脂質103によって取り囲むことができる。脂質二重層102は、特徴付けを行われる分子112の少なくとも一部および/または小さなイオン(例えばNa+、K+、Ca2+、Cl-)を脂質二重層102の2面間で通過させるのに十分に大きなナノ細孔110を有するただ1つのナノ細孔構造108を埋め込まれる。脂質二重層適合表面104上に水分子114の層を吸着させて、脂質二重層102と脂質二重層適合表面104の間に挟むことができる。親水性脂質二重層適合表面104上に吸着された水被膜114は、脂質分子の秩序化を促進し、脂質二重層適合表面104上での脂質二重層の形成を促すことができる。特徴付けのために分子112を導入するために、分子112の溶液を含む試料チャンバ116を脂質二重層102の上に提供することができる。溶液は、電解質を含有し、最適なイオン濃度に緩衝され、ナノ細孔110を開いておくために最適なpHで維持された水溶液でよい。デバイスは、脂質二重層にわたって電気的刺激(例えば電圧バイアス)を提供するため、および脂質二重層の電気的特性(例えば抵抗、キャパシタンス、およびイオン電流)を感知するために、可変電圧源120に結合された1対の電極118(負のノード118aと正のノード118bを含む)を含む。負の正極118bの表面は、脂質二重層適合表面104の一部であるか、または脂質二重層適合表面104の一部を成す。導電性固体基板106は、電極108の一方の一部に結合されるか、または電極108の一方の一部を成すことができる。また、デバイス100は、電気的刺激を制御するため、および検出された信号を処理するための電気回路122を含むこともある。いくつかの実施形態では、可変電圧源120は、電気回路122の一部として含まれる。電気回路122は、増幅器、積分器、ノイズフィルタ、フィードバック制御論理回路、および/または様々な他の構成要素を含むことができる。電気回路122は、シリコン基板128の内部に集積された集積電気回路でよく、メモリ126に結合されたコンピュータ処理装置124にさらに結合させることができる。
【0033】
脂質二重層適合表面104は、脂質二重層の形成を促すためのイオン変換およびガス生成に適した様々な材料から形成することができる。いくつかの実施形態では、絶縁性の親水性材料ではなく導電性または半導電性の親水性材料が好ましい。なぜなら、導電性または半導電性の親水性材料は、脂質二重層の電気的特性の変化をより良く検出できるようにするからである。例示的な材料としては、Ag−AgCl、Ag−Au合金、Ag−Pt合金、またはドープトシリコンもしくは他の半導体材料が挙げられる。
【0034】
脂質二重層不適合表面105は、脂質二重層の形成に適していない様々な材料から形成することができ、それらの材料は典型的には疎水性である。いくつかの実施形態では、非導電性の疎水性材料が好ましい。なぜなら、そのような材料は、脂質二重層の領域を互いに分離することに加えて、脂質二重層の領域を電気的に絶縁するからである。例示的な脂質二重層不適合材料としては、例えば窒化ケイ素(例えばSi34)およびテフロン(登録商標)が挙げられる。
【0035】
1つの特定の例では、図1のナノ細孔デバイス100は、アルファヘモリジン(αHL)ナノ細孔デバイスであり、このデバイスは、銅材料106上にコーティングされた脂質二重層適合性の銀−金合金表面104の上に形成されたジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)脂質二重層102に埋め込まれた単一αHLタンパク質108を有する。脂質二重層適合性の銀−金合金表面104は、脂質二重層不適合性の窒化ケイ素表面105によって隔離され、銅材料106は、窒化ケイ素材料107によって電気的に絶縁される。銅106は、シリコン基板128内に集積された電気回路122に結合される。チップに実装された、またはカバープレート128から下に延在する銀−塩化銀電極が、dsDNA分子を含有する水溶液に接触する。
【0036】
αHLナノ細孔は、7種の別々のペプチドの集合である。αHLナノ細孔の入口または前室は、直径が約26Åであり、これはdsDNA分子の一部を収容するのに十分に広い。αHLナノ細孔は、前室からまず広がり、次いで狭まって、約15Åの直径を有する樽状になり、これは、単一のssDNA分子を通過させるには十分に広いが、dsDNA分子が通過できるほど十分には広くない。所与の時間に、約1〜20個のDNA塩基が、αHLナノ細孔の樽内を占めることができる。
【0037】
DPhPCの他にも、様々な考慮事項に基づいて選択された様々な他の適切な両親媒性材料からナノ細孔デバイスの脂質二重層を取り付けることができる。そのような考慮事項は、例えば、使用されるナノ細孔のタイプ、特徴付けを行われる分子のタイプ、ならびに、形成される脂質二重層の様々な物理的、化学的、および/または電気的特性、例えば形成される脂質二重層の安定性、透過性、抵抗、およびキャパシタンスである。例示的な両親媒性材料としては、様々なリン脂質が挙げられ、例えば、パルミトイル−オレオイル−フォスファチジル−コリン(POPC)、およびジオレオイル−フォスファチジル−メチルエステル(DOPME)、ジフィタノイルフォスファチジルコリン(DPhPC)、ジパルミトイルフォスファチジルコリン(DPPC)、フォスファチジルコリン、フォスファチジルエタノールアミン、フォスファチジルセリン、フォスファチジル酸、フォスファチジルイノシトール、フォスファチジルグリセロール、およびスフィンゴミエリンである。
【0038】
上に示したαHLナノ細孔に加えて、ナノ細孔は、様々な他のタイプのナノ細孔でもよい。例としては、γ−ヘモリジン、ロイコシジン、メリチン、および様々な他の天然由来ナノ細孔、修飾された天然ナノ細孔、および合成ナノ細孔が挙げられる。適切なナノ細孔は、ナノ細孔の細孔径に対する検体分子のサイズなど、検体分子の様々な特性に基づいて選択することができる。例えば、約15Åの制限細孔径を有するαHLナノ細孔である。これは、一本鎖DNA(ssDNA)が通過できるようにするが、二本鎖DNA(dsDNA)を制限するので、DNA分子を分析するのに適している。
【0039】
図2は、ナノ細孔アレイの1つのセルの例示的な電気回路122の概略図である。電気回路122は、ナノ細孔を含有する脂質二重層102にわたって印加される電気的刺激を制御するため、およびナノ細孔を通過する分子の電気的シグネチャまたは電気的パターンを検出するために使用される。太線はアナログ信号レベルを表し、細線は論理信号レベルを表す。ここで示されるように、回路122は、ナノ細孔含有脂質二重層102の両側に配置された1対の電極118a、118bを含む。正極118bの表面が脂質二重層適合表面104を形成し、隣接する窒化ケイ素107の表面が脂質二重層不適合表面105を形成する。電極によって脂質二重層にわたって印加される入力電圧は、マルチプレクサ204で複数の入力源202から1つの入力源を選択することによって制御される。複数の電圧源はそれぞれ、DC、AC、パルス、ランプ波AC、および/またはランプ波DC信号を提供することができる。信号は増幅器206によって増幅され、次いで比較器212によって設定値214と比較され、増幅された信号が設定値214に達したときに比較器212が信号を出力する。
【0040】
一定の入力電圧の下で増幅された信号が設定値214に達する時間は、脂質二重層の抵抗値、および脂質二重層を通過するイオン電流と相関させることができる。より長い時間が、より大きい抵抗値、および脂質二重層を通るより小さいイオン電流に対応する。同様に、(例えば正弦波で変調された)変調入力電圧の下で比較器214によって検出される増幅された信号のピーク間振幅は、脂質二重層のキャパシタンスと相関させることができる。より大きなピーク間振幅は、より高いキャパシタンスに対応する。
【0041】
回路122は、さらに、ノイズレベルを減少させるためのコンデンサ216と、コンデンサ208をリセットするためのスイッチ210とを含む。回路の様々な構成要素の動作を制御するため、および比較器の信号出力を処理するために論理制御装置218が提供される。
【0042】
上記の回路設計は一例にすぎないことに留意すべきである。脂質二重層にわたって印加される電気的刺激を制御するため、および電極の上の表面の電気的特性またはシグネチャを測定するため、例えば脂質懸濁液、脂質二重層、ナノ細孔含有脂質二重層、および/または脂質二重層に含まれるナノ細孔を通過する検体分子の電気的特性またはシグネチャを測定するために、他の適切な回路設計も使用することができる。
【0043】
図3Aは、脂質二重層不適合表面105によって隔離された脂質二重層適合表面104を有する個別にアドレス可能なナノ細孔デバイス100のアレイ302を有するナノ細孔チップ300の一実施形態の概略上面図である。各ナノ細孔デバイス100は、シリコン基板128上に集積された制御回路122を備える。いくつかの実施形態では、ナノ細孔デバイス100の個々のグループに側壁136が含まれることがあり、それにより、各グループが、特徴付けのために異なる試料を受け取ることができる。いくつかの実施形態では、ナノ細孔チップ300は、カバープレート128を含むことがある。また、ナノ細孔チップ300は、コンピュータ処理装置とインターフェースするための複数のピン304を含むこともある。いくつかの実施形態では、ナノ細孔チップ300は、ナノ細孔ワークステーション306に結合(例えば合体)されることがあり、ナノ細孔ワークステーション306は、本発明のプロセスの様々な実施形態を実施する(例えば自動的に実施する)ための様々な構成要素を含むことがあり、それらの構成要素としては、例えば、脂質懸濁液、検体溶液、および/または他の液体、懸濁液、もしくは固体を送達するためのピペットなど検体送達メカニズム、ロボットアーム、コンピュータ処理装置、およびメモリが挙げられる。図3Bは、ナノ細孔チップ300の断面図である。
【0044】
図4は、脂質二重層適合表面104上に脂質二重層を取り付けるための例示的なプロセス400Aを示す概略図である。プロセス400Aは、図1および図3のナノ細孔デバイス100を使用して行うことができる。図4B、図4C、および図4Dは、プロセス中のナノ細孔デバイス100の様々な段階を示す。
【0045】
図4Aに戻って参照すると、この例では、脂質二重層は、ジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)脂質二重層である。脂質二重層適合表面104は、1つまたは複数の脂質二重層不適合性の窒化ケイ素表面によって隔離されたAg−Au合金表面である。電気回路、コンピュータハードウェア、および/またはコンピュータソフトウェアを使用してプロセスの1つまたは複数のステップを自動化することができる。上側の波形402は、脂質二重層にわたって印加される電圧のプロファイルを表す。下側の波形404は、脂質二重層にわたって検出される抵抗値のプロファイルを表す。
【0046】
時間t0で、デカン中に溶解された10mg/mLのコロイド状のジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)と、1M KCl中に溶解された0.1Mのギ酸カリウムとを含有する水性脂質懸濁液が、Ag−Au合金電極表面上に堆積される。脂質懸濁液は、例えば、ピペットなど液体供給装置を使用して堆積することができる。いくつかの実施形態では、液体供給装置は、様々なハードウェア(例えばロボットアーム)およびソフトウェアによって自動化することができる。Ag−Au合金は親水性であり、その表面上で、脂質二重層の形成を促すように脂質分子を自己組織化させる。時間t0〜t1で、ナノ細孔デバイスは、(図4Bに示される)段階Iにある。段階Iにおいて、アモルファス脂質103が脂質二重層不適合表面105上に集中し、脂質二重層適合表面104の上にはほとんど生じない。測定電圧(約50mV)406が電極に印加される。電極の抵抗値対時間のプロファイル408は、抵抗値が比較的低く(約10Ω〜10MΩ)、電極が短絡していることを示す。
【0047】
時間t1で、約1.4V〜約3.0Vの範囲および約100ms〜約1sの持続時間を有する泡開始刺激410が、電極にわたって印加される。泡開始刺激410は、ギ酸を分解させて気体CO2を生成し、これにより固体銀−金合金電極表面上に泡130が生じる。ここで、ギ酸は、本発明者の見解では、大抵は親水性脂質二重層適合性の銀−金合金表面の上に存在し、疎水性の脂質二重層不適合性の窒化ケイ素表面の上には存在しない。ナノ細孔デバイスは、(図4Cに示される)段階IIになる。泡は、電極を覆い、脂質二重層適合表面104の縁部でアモルファス脂質材料103に達すると止まる。脂質二重層適合表面の上に電気的および機械的シールが形成される。時間t1〜t2での抵抗値対時間のプロファイル412は、泡の発生による抵抗値の急激な増加(例えば、>10GΩ)を示す。
【0048】
時間t2〜t3(約100ms〜1s)で、CO2が泡から外に急速に拡散し、泡を崩壊させ、徐々に脂質二重層(102)を形成する。ナノ細孔デバイスは、固体電極表面104の上で(図4Cに示される)段階IIにある。脂質二重層は、脂質二重層不適合性の窒化ケイ素表面105の上に集まったアモルファス脂質103によって取り囲まれる。脂質二重層102の存在により、印加された測定電圧(約50mV)414の下でのナノ細孔デバイス416にわたる抵抗値は高いままである。
【0049】
時間t3〜t4(約50ms〜500ms)で、脂質二重層102が形成されており、ナノ細孔デバイスは、(図4Dに示される)段階IIIにある。適切な脂質二重層の抵抗420および/またはキャパシタンス(図示せず)をチェックするために、脂質二重層にわたって交流418が印加される。測定されたキャパシタンスが約5fF/μm2よりも大きい値を有する場合、および測定された抵抗値が約10GΩよりも大きい値を有する場合、強固な構造的完全性を有する適切に形成された脂質二重層が形成されていると判断される。そうでない場合、脂質二重層の構造的完全性が低いと判断される。脂質二重層が強固な構造的完全性を有すると判断された場合、図5を参照して示されるように、ナノ細孔デバイス100は、ナノ細孔挿入の準備ができた状態である。脂質二重層の構造的完全性が低いと判断された場合、脂質二重層にわたって破壊または消去用電気的刺激(例えば約2V)が印加されて脂質二重層を消去する。ナノ細孔デバイス100は、(図4Bに示される)段階Iに戻る。
【0050】
図5Aは、脂質二重層にナノ細孔を挿入するためのプロセス500の一実施形態の概略図である。プロセスは、図1または図3のナノ細孔デバイス100を使用して行うことができる。ハードウェア(例えば集積回路)および/またはコンピュータコードを使用してプロセスの1つまたは複数のステップを自動化することができる。二重層形成プロセスは、図1のナノ細孔デバイス100を使用して監視される。波形Aは、脂質二重層にわたって印加される電圧を表す。波形Bは、脂質二重層にわたって検出される抵抗値を表す。図5B〜図5Eは、ナノ細孔デバイス100がプロセス中に取る様々な段階を示す。
【0051】
図5Aに戻って参照すると、時間t0〜t1で、ナノ細孔デバイスは、構造的に強固な脂質二重層膜を含み、ナノ細孔デバイスは(図5Bに示される)段階IIIにある。α−ヘモリジン(ナノ細孔形成ペプチド)を含有する溶液が脂質二重層の上にある。脂質二重層にわたる測定刺激(例えば約50mV)502の印加は、所望の範囲(約10GΩ)内の抵抗値504を返し、脂質二重層を通るイオン電流がないことを示す。
【0052】
時間t1〜t2で、脂質二重層膜にわたって撹拌用電気的刺激506(約100mV〜1.0V、50ms〜1s)が印加されて、脂質二重層の破壊を生じ、脂質二重層へのα−ヘモリジンナノ細孔の挿入を開始する。
【0053】
時間t2〜t3で、撹拌用電気的刺激506の直後に、負の電気的刺激508が印加される。負のパルスは、脂質二重層の偶発的な破裂によって引き起こされていることがある酸化(例えば電極の酸化)を戻すように意図される。
【0054】
時間t3〜t4で、適切なナノ細孔挿入をチェックするために測定電気的刺激(約50mV)510が印加される。測定される抵抗512の大きさは、ナノ細孔が挿入されているかどうかを示し、ナノ細孔が挿入されている場合にはナノ細孔がいくつ挿入されているかを示し、また、プロセス中に脂質二重層が破壊または崩壊されているかどうかを示す。参照番号512は、ナノ細孔の挿入に伴う抵抗の低下の一例を示す。例えば、ナノ細孔が挿入されていない脂質二重層は、10GΩ程度の抵抗を有し、ナノ細孔が1つ挿入されている脂質二重層(図5Cに示される段階IV)は、1GΩ程度の抵抗を有し、2つ以上のナノ細孔が挿入されている脂質二重層(図5Dに示される段階V)は、約500MΩ程度の抵抗を有し、破壊または損傷された脂質二重層は、約10MΩ未満の範囲内の抵抗値を有する。脂質二重層内にナノ細孔が挿入されていないと判断された場合、さらなる撹拌用電気的刺激を印加することができる。ナノ細孔が1つだけ挿入されており、脂質二重層が構造的に強固であることが示された場合、このプロセスは停止し、ナノ細孔デバイスは、検体分子の分析の準備ができた状態になる。2つ以上のナノ細孔が挿入されている、または脂質二重層が破壊されていることが検出された場合、消去または破壊電気的刺激(約300mV〜3V)514を印加して脂質二重層を消去することができる。ここで再び脂質二重層電極が短絡し、ナノ細孔デバイスは(図5Eに示される)段階Iになる。破壊電気的刺激に続いて、洗浄電気的刺激(50mV〜300mV)を印加して、脂質二重層の破壊により電極表面上で生じていることがある酸化を戻すことができる。脂質二重層を取り付け(例えば図4)、ナノ細孔を挿入する(例えば図5)プロセス全体をもう一度開始することができる。
【0055】
図6Aは、ナノ細孔デバイスを使用してナノ細孔内の分子の操作、検出、相関、特徴付け、分析、および/または配列決定を行うためのプロセス600の一実施形態を示す概略図である。ハードウェア(例えば集積回路)および/またはコンピュータコードの実行によってプロセスの1つまたは複数のステップを自動化することができる。図示される例では、図1または図3に示されるように、ナノ細孔デバイスに形成されたDPhPC脂質二重層などの脂質二重層に挿入されたαHLナノ細孔を使用してdsDNA分子が特徴付けを行われる。図6B〜図6Cは、ナノ細孔デバイスがプロセス中に取る様々な段階を示す。
【0056】
図6Aに戻って参照すると、波形Aは、ナノ細孔含有脂質二重層にわたって印加される電圧を表す。波形Bは、ナノ細孔含有脂質二重層にわたって検出される抵抗値を表す。時間t0で、二本鎖DNA(dsDNA)分子を含有する検体溶液が、例えば脂質二重層の近くに検体溶液を堆積することによって脂質二重層に提供される。この例での検体溶液は、約pH7.5〜8.0に緩衝された検体分子および小さな電解質(例えばNa+、K+、Ca2+、Cl-)を含有する水溶液である。ナノ細孔は、開いたチャネルを有し、ナノ細孔含有脂質二重層の抵抗は、約1GΩの抵抗値を有する(図6Aに示される段階IV)。
【0057】
時間t0〜t1で、ナノ細孔デバイスの脂質二重層にわたって獲得用電気的刺激(約100mV〜400mV)602が印加され、ナノ細孔内にdsDNA分子を1つだけ捕捉させる(図6Aに示される段階V)。抵抗値対時間のプロファイルは、6GΩへの抵抗604の急激な増加を示し、これは、遮られた孔の状態に対応し(図6Cに示される段階V)、ここで、ナノ細孔はdsDNA分子によって部分的に塞がれている。
【0058】
時間t1〜t2で、抵抗604の急激な増加が制御メカニズム(例えば図2の回路122内のフィードバック制御メカニズム)をトリガして、高速の応答時間(例えば<10mS)606で電気的刺激を保持用電気的刺激(約50mV〜150mV)に低下させて、検出、特徴付け、および/または分析を行うためにdsDNAをナノ細孔内に保持する。短い応答時間により、検体分子はナノ細孔を通過して他端から出ず、特徴付けのために検体分子をナノ細孔内に捕獲することができる。
【0059】
時間t2〜t3で、保持用電気的刺激によってdsDNA分子がナノ細孔内に保持され、抵抗値対時間のプロファイルの第1のフレーム(f1)が記録される。
【0060】
その後、t3〜t7で、複数組の一連の可変進行用電気的刺激609が、ナノ細孔内に捕獲されたDNA分子に印加され、ここで、一連の可変進行用電気的刺激610それぞれが、順次に高くなる、または強くなる電気パルス613を含む。図示されるように、電気パルス613はそれぞれ、逓増段階615と逓減段階617を備え、逆「V」字形に類似した形であり、約100mV〜200mVの範囲を有する。各電気パルス613に保持段階619が続く。図示されるように、最初の逓増段階615の傾きは、後続の逓減段階617の傾きよりも急峻である。一連の電気パルス610それぞれにより、dsDNA分子のフレーム(例えば1〜20個の塩基対)が解かれ、解かれたdsDNAフレームの単鎖が、印加された進行用電気的刺激の下でナノ細孔を通して引張られることがある。各保持段階619中に、分子のフレームの電気的パターンまたはシグネチャが測定される。詳細は以下のようである。
【0061】
時間t3〜t4で、一連の順次に高くなる進行用電気的刺激(例えば非対称電気パルス)610が脂質二重層にわたって印加されて、ナノ細孔を通してdsDNAを押し進める。各電気パルス613の後、電気パルス613の直後の保持段階619中に、抵抗値対時間のプロファイルが監視される。検出された抵抗値対時間のプロファイルが前のフレームf1のものと同じである場合、これは、ナノ細孔を通してDNA分子を押し進めるのに電気的刺激レベルが十分には高くないことを示し、より高い電気的刺激レベルが印加される。より高い電気的刺激レベルを順次に印加するプロセスは、新たなフレームf2が得られており新たなフレームが記録されていることが異なる抵抗値対時間のプロファイルによって示されるまで繰り返される。
【0062】
時間t4〜t5で、DNA分子を引張るために順次に高くなる進行用電気的刺激を印加する先行プロセスが、新たなフレームf3が得られるまで繰り返される。
【0063】
時間t5〜t6で、DNA分子を引張るために可変の順次に高くなる進行用電気的刺激を印加する先行プロセスが、記録される新たなフレームf4を得られるように繰り返される。
【0064】
時間t6〜t7で、順次に高くなる進行用電気的刺激を印加する先行プロセスが、新たなフレームf5を得るために繰り返される。新たなフレームを得るために順次に高くなる進行用電気的刺激を印加するこのプロセスを繰り返すことができる。
【0065】
時間t7を超えると、抵抗値対時間のプロファイルは、ナノ細孔に関する開いた状態に対応するレベル612に達することがある(図6Bに示される段階IV)。これは、DNA分子がナノ細孔から抜け出ており、ナノ細孔内のイオンの流れがDNA分子によって妨げられていないことを示す。
【0066】
様々なフレーム(f1〜f5)はそれぞれ、DNA分子の特定の領域がナノ細孔の狭い経路内に詰まったときの抵抗情報に対応する。検体分子がナノ細孔を通るときに検体分子の様々な構造的および化学的特徴を解明、検出、相関、決定、特徴付け、配列、および/または区別するために、様々なフレームを個別に、または組み合わせて使用することができる。いくつかの実施形態では、分子の1つまたは複数のフレームが重畳することがある。サンプリングフレームの重畳は、DNA分子のより正確な特徴付けを可能にすることができる。例えば、dsDNA分子の単鎖がナノ細孔を通して進められ、ssDNAは、5’TGACTCATTAGCGAGG・・・3’の配列を有する。分子の最初のフレームは、セグメントTGACTに関して検出される電気的シグネチャであり、第2のフレームは、ACTCAに関して検出される電気的シグネチャであり、第3のフレームは、TCATTに関して検出される電気的シグネチャであり、第4のフレームは、ATTAGに関して検出される電気的シグネチャであり、以下同様である。様々な重畳するフレームの電気的シグネチャを組み合わせてデコンボリューションして、分子のより正確な電気的シグネチャを生成することができる。
【0067】
この例では、最初の逓増段階615と後続の逓減段階617を有する逆「V」字形の進行用電気的刺激パルス613が使用されるが、他のタイプの進行用電気的刺激パルスを使用することもできる。いくつかの実施形態では、進行用電気的刺激パルスは、(図7Aに示されるような)方形波、(図7Bに示されるような)滑らかな波、または(図7Cに示されるような)平坦な中央部を有する逆「U」字形に類似した形にすることができる。いくつかの実施形態では、進行用電気的刺激は、逓増段階615と逓減段階617を有さず、例えば、(図7Dに示されるような)定常の進行用電気的刺激610を含む。
【0068】
この例では、保持段階619が各進行用電気的刺激パルス613に続き、各保持段階619中に分子の電気的シグネチャが測定されるが、他の実施形態では、保持段階619をなくすことができ、進行用電気的刺激を印加しながら、印加された進行用電気的刺激の下で分子がナノ細孔を通って移動している間に、分子の電気的シグネチャを(例えば連続的に)測定することができる。一例では、逆「V」字形の進行用電気的刺激パルス613が保持段階619なしで印加され、進行用電気的刺激が逓増および逓減される(例えば電極での印加電圧が逓増または逓減している)ときに分子の電気的シグネチャが測定される。そのような場合には、分子の電気的シグネチャ(例えば分子の抵抗プロファイル)は、変化する進行用電気的刺激レベル(例えば変化する電圧レベル)の関数として求めることができ、そのような情報を使用して、特徴付けを行われる異なる分子(例えば異なるDNAフレーム)を区別することができる。別の例では、一定の進行用電気的刺激が保持段階なしで印加され、一定の進行用電気的刺激が印加されているときに、一定の進行用電気的刺激の下で分子がナノ細孔を通って移動している間に分子の電気的シグネチャが測定される。
【0069】
前述したように、図7A〜図7Dは、逆「V」字形の進行用電気的刺激以外の、進行用電気的刺激の様々な実施形態を示す。
【0070】
図8は、ナノ細孔デバイスのナノ細孔内での分子の進行を逆転させるためのプロセス800の一実施形態を示す概略図である。図示される例では、αHLナノ細孔を使用してdsDNAが分析される。一定の進行用電気的刺激および逆進行用電気的刺激が使用され、一定の進行用電気的刺激および逆進行用電気的刺激を印加しながら、分子がナノ細孔を通って移動している間に、分子の電気的シグネチャが連続的に記録される。
【0071】
この例では一定の進行用電気的刺激が使用されているが、様々な他のタイプの進行用電気的刺激を使用することもできる。様々な進行用電気的刺激の例が図6および図8に示されている。この例では一定の逆進行用電気的刺激が使用されるが、様々な他のタイプの逆進行用電気的刺激を使用することもできる。逆進行用電気的刺激は、逓増および/または逓減段階を含むことができ、また、進行用電気的刺激と同様の滑らかなプロファイル、方形のプロファイル、「V」字形のプロファイル、および/または「U」字形のプロファイルを含むこともできる。
【0072】
波形Aは、ナノ細孔含有脂質二重層にわたって印加される電圧を表す。波形Bは、ナノ細孔含有脂質二重層にわたって検出される抵抗値を表す。ハードウェア(例えば集積回路)および/またはコンピュータコードの実行を用いてプロセスの1つまたは複数のステップを自動化することができる。
【0073】
時間t0〜t1で、ナノ細孔デバイスの脂質二重層にわたって進行用電気的刺激802が印加され、脂質二重層の抵抗値対時間のプロファイル804が記録されるときに、印加される電気的な力805の方向にdsDNA分子を移動させる(図8Bに示される段階V)。
【0074】
時間t1〜t2で、脂質二重層にわたって逆進行用電気的刺激806が印加される。この例では、逆進行用電気的刺激806は、約−50mV〜100mVの範囲を有する印加電圧レベルである。ssDNA分子が再結合してdsDNAを形成する自然な傾向が、DNA分子を逆方向807に押し進める(図8Cに示される段階VI)。DNA分子がナノ細孔を通して逆方向807に押し戻されるとき、ssDNAは再結合してdsDNAを形成する。
【0075】
時間t2を超えると、脂質二重層にわたって進行用電気的刺激810が再び印加され、DNA分子の前進を再開する(図8Bに示される段階V)。
【0076】
図9は、本明細書で述べる技法を使用してdsDNA分子の単鎖がαHLナノ細孔を通して進められたときに検出される例示的な抵抗値対時間のプロファイル902である。図示される例では、一定の進行用電気的刺激がナノ細孔含有脂質二重層に印加され、一定の進行用電気的刺激を印加しながら、DNA分子がナノ細孔を通って移動している間に、ナノ細孔内に捕獲されたDNA分子の電気的シグネチャが連続的に記録される。DNA分子の塩基配列は、検出された抵抗値プロファイルを既知の(1つまたは複数の)DNA配列の(1つまたは複数の)抵抗値プロファイルと比較することによって決定することができる。例えば、抵抗値対時間のプロファイルが合致する場合には、DNA分子の塩基配列が既知のDNA分子の塩基配列であると判断することができる。振幅、周波数、立ち上がり(例えば立ち上がり時間)、および/または立ち下がり(例えば立ち下がり時間)などプロファイルの様々な特徴を使用して、特定のDNA配列を同定することができる。
【0077】
脂質二重層に埋め込まれたナノ細孔内の分子を操作するための技法を述べる。一例では、脂質二重層にわたって獲得用電気的刺激レベルが印加され、ここで、ナノ細孔を含有する脂質二重層の領域は抵抗によって特徴付けられ、獲得用電気的刺激レベルは、周囲の流体からナノ細孔に分子を引き込む傾向があり、ナノ細孔内への分子の少なくとも一部の獲得により生じる脂質二重層の抵抗値の変化が検出され、獲得用電気的刺激レベルが保持用電気的刺激レベルに変えられ、獲得用電気的刺激レベルが保持用電気的刺激レベルに変化した後に分子の一部がナノ細孔に残る。
【0078】
本明細書において、分子の一部を同定するための技法を述べる。一例では、分子に関連付けられる複数の電気測定値が獲得され、複数の電気測定値がそれぞれ、ナノ細孔内部の分子の離散位置に対応する。複数の電気測定値は、分子の可能な構造に対応する電気的測定値の1つまたは複数のシーケンスと相関される。この相関に基づいて、分子の一部が、分子の可能な構造を含むか判断される。
【0079】
本明細書において、分子の特徴付けを行うための技法を述べる。一例では、分子の一部がナノ細孔内に捕獲され、捕獲された分子部分がナノ細孔内部で移動されるまでナノ細孔にわたって可変電圧が印加され、ナノ細孔内部での捕獲された分子部分の少なくとも一部の移動に影響を及ぼすのに必要な電気的刺激に基づいて分子が特徴付けられる。
【0080】
本明細書において、実質的に平坦な固体表面上に脂質二重層を取り付けるための技法を述べる。一例では、脂質懸濁液などの脂質材料が実質的に平坦な固体表面上に堆積され、高速で拡散するガス分子を充填された泡が固体表面上に生成され、ガス分子が泡から外に拡散されて、固体表面上に脂質二重層を形成する。
【0081】
本明細書において、脂質二重層内にナノ細孔を形成するための技法を述べる。一例では、電気的撹拌用刺激などの撹拌用刺激レベルが脂質二重層に印加され、ここで、撹拌用刺激レベルは、脂質二重層内でのナノ細孔の形成を促す傾向がある。いくつかの実施形態では、脂質二重層内でのナノ細孔の形成により生じる脂質二重層の電気的特性の変化が検出され、検出された脂質二重層の電気的特性の変化に基づいて、脂質二重層内にナノ細孔が形成されているか判断される。
【0082】
前述した実施形態は、理解しやすくするためにいくぶん詳細に説明してきたが、本発明は、提供した詳細に限定されない。本発明を実施する多くの代替方法が存在する。開示した実施形態は例示であり、限定ではない。
【0083】
本明細書で述べる様々な実施形態において抵抗値対時間のプロファイルに関して電気的シグネチャを表したが、他の実施形態では、電気的シグネチャは、電圧対時間のプロファイルおよび/または電流対時間のプロファイルに関して表すこともできることに留意すべきである。また、電気的特性を直接測定することも間接的に測定することもできることに留意すべきである。例えば、抵抗値は、直接測定することも、電圧および/または電流によって間接的に測定することもでき、電流は、直接測定することも、抵抗値および/または電圧によって間接的に測定することもできる。電気的刺激の全ての範囲は、本明細書で述べた特定の例示的なナノ細孔システムに関して与えたものである。化学的性質が異なる他のナノ細孔システムでは異なる範囲の電気的刺激を適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂質二重層内に埋め込まれたナノ細孔内の分子を操作する方法であって、
脂質二重層にわたって獲得用電気的刺激レベルを印加するステップであって、前記ナノ細孔を含有する前記脂質二重層の領域が抵抗によって特徴付けられ、前記獲得用電気的刺激レベルが、周囲流体から前記ナノ細孔内に前記分子を引き込む傾向があるステップと、
前記ナノ細孔内への分子の少なくとも一部の獲得により生じる前記脂質二重層の抵抗値の変化を検出するステップと、
前記獲得用電気的刺激レベルを保持用電気的刺激レベルに変化させるステップであって、前記獲得用電気的刺激レベルが前記保持用電気的刺激レベルに変化した後に、前記分子の前記部分が前記ナノ細孔内に留まるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記ナノ細孔がα−ヘモリジンナノ細孔である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ナノ細孔が、ジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)脂質二重層内に埋め込まれたα−ヘモリジンナノ細孔である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記獲得用電気的刺激と前記保持用電気的刺激がそれぞれ印加電圧(V)レベルを備える請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記獲得用電気的刺激レベルを保持用電気的刺激レベルに変化させるステップが、前記獲得用電気的刺激レベルを前記保持用電気的刺激レベルに減少させるステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記獲得用電気的刺激レベルを前記保持用電気的刺激レベルに減少させるステップが、前記ナノ細孔内への前記分子の少なくとも一部の獲得により生じる前記二重層の抵抗値の変化を検出した後、10ms以内に前記獲得用電気的刺激レベルを減少させるステップを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分子が荷電または極性ポリマを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分子が核酸分子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記分子がデオキシリボ核酸(DNA)分子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記分子が二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)分子を含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記獲得用電気的刺激レベルが100〜400mVの範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記保持用電気的刺激レベルが50〜150mVの範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項13】
さらに、前記ナノ細孔を通して前記分子を移動させるために可変進行用電気的刺激を印加するステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記進行電圧レベルが100mV〜200mVの範囲内である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ナノ細孔を通して前記分子を移動させるために印加される前記可変進行用電気的刺激が、前記分子の構造成分を区別する請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記分子が核酸分子であり、前記進行用電気的刺激が、前記核酸分子のヌクレオチド塩基を区別するために印加される請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記可変進行用電気的刺激が、一連の順次に強くなる電気パルスを含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記進行用電気的刺激パターンが、非対称の逆「V」字形の時間プロファイルを含む請求項13に記載の方法。
【請求項19】
前記分子が二本鎖DNAであり、前記進行用電気的刺激が、前記二本鎖DNAを解き、前記ナノ細孔を通してDNAの単鎖を引張る請求項13に記載の方法。
【請求項20】
さらに、前記分子が前記ナノ細孔を通って逆進行できるように、ナノ細孔を含有する脂質二重層の領域に逆進行用電気的刺激を印加するステップを含む請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記逆進行用電気的刺激が、前記獲得用電気的刺激と同じ極性を有し、前記逆進行用電気的刺激の大きさが、前記獲得用電気的刺激の大きさよりも小さいが、前記保持用電気的刺激の大きさよりも大きい請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記逆進行用電気的刺激が前記獲得用電気的刺激と逆の極性を有する請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記分子が二本鎖DNA分子であり、前記進行用電気的刺激が、前記二本鎖DNAを解き、前記ナノ細孔を通してDNAの単鎖を引張り、前記一本鎖DNAが前記ナノ細孔を通って逆進行するときに再アニールして二本鎖になる請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記分子の電気的シグネチャが、前記分子の逆進行中に記録される請求項20に記載の方法。
【請求項25】
脂質二重層内に埋め込まれたナノ細孔内の分子を操作するためのシステムであって、
脂質二重層にわたって獲得用電気的刺激レベルを印加するように構成された可変電圧源であって、前記ナノ細孔を含有する前記脂質二重層の領域が抵抗によって特徴付けられ、前記獲得用電気的刺激レベルが、周囲流体から前記ナノ細孔内に前記分子を引き込む傾向がある可変電圧源と、
前記ナノ細孔内への分子の少なくとも一部の獲得により生じる前記脂質二重層の抵抗値の変化を検出するように構成された感知回路とを含み、
前記可変電圧源が、獲得用電気的刺激レベルを保持用電気的刺激レベルに変化させるようにさらに構成され、前記獲得用電気的刺激レベルが前記保持用電気的刺激レベルに変化した後に前記分子の一部が前記ナノ細孔内に残る
システム。
【請求項26】
前記ナノ細孔がα−ヘモリジンナノ細孔である請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
前記ナノ細孔が、ジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)脂質二重層内に埋め込まれたα−ヘモリジンナノ細孔である請求項25に記載のシステム。
【請求項28】
前記獲得用電気的刺激と前記保持用電気的刺激がそれぞれ印加電圧(V)レベルを備える請求項25に記載のシステム。
【請求項29】
前記獲得用電気的刺激レベルを保持用電気的刺激レベルに変化させることが、前記獲得用電気的刺激レベルを前記保持用電気的刺激レベルに減少させることを含む請求項25に記載のシステム。
【請求項30】
前記獲得用電気的刺激レベルを前記保持用電気的刺激レベルに減少させることが、前記ナノ細孔内への前記分子の少なくとも一部の獲得により生じる前記二重層の抵抗値の変化を検出した後、10ms以内に前記獲得用電気的刺激レベルを減少させることを含む請求項29に記載のシステム。
【請求項31】
前記分子が荷電または極性ポリマを含む請求項25に記載のシステム。
【請求項32】
前記分子が核酸分子を含む請求項25に記載のシステム。
【請求項33】
前記分子がデオキシリボ核酸(DNA)分子を含む請求項25に記載のシステム。
【請求項34】
前記分子が二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)分子を含む請求項25に記載のシステム。
【請求項35】
前記獲得用電気的刺激レベルが100〜400mVの範囲内である請求項25に記載のシステム。
【請求項36】
前記保持用電気的刺激レベルが50〜150mVの範囲内である請求項25に記載のシステム。
【請求項37】
さらに、前記ナノ細孔を通して前記分子を移動させるために可変進行用電気的刺激を印加することを含む請求項25に記載のシステム。
【請求項38】
前記進行電圧レベルが100mV〜200mVの範囲内である請求項37に記載のシステム。
【請求項39】
前記ナノ細孔を通して前記分子を移動させるために印加される前記可変進行用電気的刺激が、前記分子の構造成分を区別する請求項37に記載のシステム。
【請求項40】
前記分子が核酸分子であり、前記進行用電気的刺激が、前記核酸分子のヌクレオチド塩基を区別するために印加される請求項37に記載のシステム。
【請求項41】
前記可変進行用電気的刺激が、一連の順次に強くなる電気パルスを含む請求項37に記載のシステム。
【請求項42】
前記進行用電気的刺激パターンが、非対称の逆「V」字形の時間プロファイルを含む請求項37に記載のシステム。
【請求項43】
前記分子が二本鎖DNAであり、前記進行用電気的刺激が、前記二本鎖DNAを解き、前記ナノ細孔を通してDNAの単鎖を引張る請求項37に記載のシステム。
【請求項44】
さらに、前記分子が前記ナノ細孔を通って逆進行できるように、ナノ細孔を含有する脂質二重層の領域に逆進行用電気的刺激を印加することを含む請求項37に記載のシステム。
【請求項45】
前記逆進行用電気的刺激が、前記獲得用電気的刺激と同じ極性を有し、前記逆進行用電気的刺激の大きさが、前記獲得用電気的刺激の大きさよりも小さいが、前記保持用電気的刺激の大きさよりも大きい請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記逆進行用電気的刺激が前記獲得用電気的刺激と逆の極性を有する請求項44に記載のシステム。
【請求項47】
前記分子が二本鎖DNA分子であり、前記進行用電気的刺激が、前記二本鎖DNAを解き、前記ナノ細孔を通してDNAの単鎖を引張り、前記一本鎖DNAが前記ナノ細孔を通って逆進行するときに再アニールして二本鎖になる請求項44に記載のシステム。
【請求項48】
前記分子の電気的シグネチャが、前記分子の逆進行中に記録される請求項44に記載のシステム。
【請求項49】
脂質二重層内に埋め込まれたナノ細孔内の分子を操作するためのシステムであって、
脂質二重層にわたって獲得用電気的刺激レベルを印加するための手段であって、前記ナノ細孔を含有する前記脂質二重層の領域が抵抗によって特徴付けられ、前記獲得用電気的刺激レベルが、周囲流体から前記ナノ細孔内に前記分子を引き込む傾向がある手段と、
前記ナノ細孔内への分子の少なくとも一部の獲得により生じる前記脂質二重層の抵抗値の変化を検出するための手段と、
前記獲得用電気的刺激レベルを保持用電気的刺激レベルに変化させるための手段であって、前記獲得用電気的刺激レベルが前記保持用電気的刺激レベルに変化した後に、前記分子の前記部分が前記ナノ細孔内に留まる手段と
を含むシステム。
【請求項50】
前記ナノ細孔がα−ヘモリジンナノ細孔である請求項49に記載のシステム。
【請求項51】
前記ナノ細孔が、ジフィタノイルホスファチジルコリン(DPhPC)脂質二重層内に埋め込まれたα−ヘモリジンナノ細孔である請求項49に記載のシステム。
【請求項52】
前記獲得用電気的刺激と前記保持用電気的刺激がそれぞれ印加電圧(V)レベルを備える請求項49に記載のシステム。
【請求項53】
前記獲得用電気的刺激レベルを保持用電気的刺激レベルに変化させることが、前記獲得用電気的刺激レベルを前記保持用電気的刺激レベルに減少させることを含む請求項49に記載のシステム。
【請求項54】
前記獲得用電気的刺激レベルを前記保持用電気的刺激レベルに減少させることが、前記ナノ細孔内への前記分子の少なくとも一部の獲得により生じる前記二重層の抵抗値の変化を検出した後、10ms以内に前記獲得用電気的刺激レベルを減少させることを含む請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記分子が荷電または極性ポリマである請求項49に記載のシステム。
【請求項56】
前記分子が核酸分子である請求項49に記載のシステム。
【請求項57】
前記分子がデオキシリボ核酸(DNA)分子である請求項49に記載のシステム。
【請求項58】
前記分子が二本鎖デオキシリボ核酸(dsDNA)分子である請求項49に記載のシステム。
【請求項59】
前記獲得用電気的刺激レベルが100〜400mVの範囲内である請求項49に記載のシステム。
【請求項60】
前記保持用電気的刺激レベルが50〜150mVの範囲内である請求項49に記載のシステム。
【請求項61】
さらに、前記ナノ細孔を通して前記分子を移動させるために可変進行用電気的刺激を印加することを含む請求項49に記載のシステム。
【請求項62】
前記進行電圧レベルが100mV〜200mVの範囲内である請求項61に記載のシステム。
【請求項63】
前記ナノ細孔を通して前記分子を移動させるために印加される前記可変進行用電気的刺激が、前記分子の構造成分を区別する請求項61に記載のシステム。
【請求項64】
前記分子が核酸分子であり、前記進行用電気的刺激が、前記核酸分子のヌクレオチド塩基を区別するために印加される請求項61に記載のシステム。
【請求項65】
前記可変進行用電気的刺激が、一連の順次に強くなる電気パルスを含む請求項61に記載のシステム。
【請求項66】
前記進行用電気的刺激パターンが、非対称の逆「V」字形の時間プロファイルを含む請求項61に記載のシステム。
【請求項67】
前記分子が二本鎖DNAであり、前記進行用電気的刺激が、前記二本鎖DNAを解き、前記ナノ細孔を通してDNAの単鎖を引張る請求項61に記載のシステム。
【請求項68】
さらに、前記分子が前記ナノ細孔を通って逆進行できるように、ナノ細孔を含有する脂質二重層の領域に逆進行用電気的刺激を印加するための手段を含む請求項61に記載のシステム。
【請求項69】
前記逆進行用電気的刺激が、前記獲得用電気的刺激と同じ極性を有し、前記逆進行用電気的刺激の大きさが、前記獲得用電気的刺激の大きさよりも小さいが、前記保持用電気的刺激の大きさよりも大きい請求項68に記載のシステム。
【請求項70】
前記逆進行用電気的刺激が前記獲得用電気的刺激と逆の極性を有する請求項68に記載のシステム。
【請求項71】
前記分子が二本鎖DNA分子であり、前記進行用電気的刺激が、前記二本鎖DNAを解き、前記ナノ細孔を通してDNAの単鎖を引張り、前記一本鎖DNAが前記ナノ細孔を通って逆進行するときに再アニールして二本鎖になる請求項68に記載のシステム。
【請求項72】
前記分子の電気的シグネチャが、前記分子の逆進行中に記録される請求項68に記載のシステム。
【請求項73】
分子の一部を同定する方法であって、
分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得するステップであって、前記複数の電気的測定値がそれぞれ、ナノ細孔内部の前記分子の離散位置に対応するステップと、
前記複数の電気的測定値を、前記分子の可能な構造に対応する電気的測定値の1つまたは複数のシーケンスと相関させるステップと、
前記相関に基づいて、分子の前記部分が分子の前記可能な構造を含むか判断するステップと
を含む方法。
【請求項74】
前記電気的測定値が抵抗測定値を含む請求項73に記載の方法。
【請求項75】
前記電気的測定値がキャパシタンス測定値を含む請求項73に記載の方法。
【請求項76】
前記分子がポリマ分子を含む請求項74に記載の方法。
【請求項77】
前記分子がヌクレオチド分子を含む請求項73に記載の方法。
【請求項78】
前記分子がDNA分子を含む請求項73に記載の方法。
【請求項79】
前記分子がdsDNA分子を含む請求項73に記載の方法。
【請求項80】
前記分子がRNA分子を含む請求項73に記載の方法。
【請求項81】
前記分子が二本鎖DNA分子を含み、前記方法がさらに、
前記DNA分子の塩基対の引裂きに関連付けられる電気的測定値を獲得するステップと、
前記電気的測定値を既知のDNA塩基対と相関させるステップと
を含む請求項73に記載の方法。
【請求項82】
前記電気的測定値が、前記分子の1つまたは複数の電気的パターンを含む請求項73に記載の方法。
【請求項83】
複数の電気的測定値を獲得するステップが、以下の環境的変数、すなわち塩濃度、グリセロール濃度、尿素濃度、ベタイン濃度、ホルムアミド濃度、温度、二価カチオン濃度のうちの1つまたは複数を変えることによって実現される様々な環境的条件の下で複数の電気的測定値を獲得するステップを含む請求項73に記載の方法。
【請求項84】
前記分子がハイブリダイゼーションマーカーとハイブリダイゼーションされる請求項73に記載の方法。
【請求項85】
前記分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得するステップが、前記分子の一領域内で、他の領域よりも厳密な電気的測定値を獲得するステップを含む請求項73に記載の方法。
【請求項86】
前記分子がヌクレオチド分子を含み、前記領域が、SNP部位、コピー数多型部位、メチル化部位、タンパク質結合部位、酵素結合部位、反復配列部位、制限酵素部位、miRNA部位、siRNA部位、tRNA部位、トランスポゾン部位、セントロメア部位、テロメア部位、転座部位、挿入部位、または削除部位の1つを含む請求項85に記載の方法。
【請求項87】
前記分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得するステップが、前記分子の単一の領域の反復電気的測定値を獲得するステップを含む請求項73に記載の方法。
【請求項88】
前記分子に関連付けられた反復電気的測定値を獲得するステップが、前記分子の領域内の2つ以上の重畳するフレームをサンプルするステップを含む請求項87に記載の方法。
【請求項89】
反復電気的測定値を獲得するステップが、さらに、前記重畳するフレームからの情報を組み合わせるステップを含む請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記分子の前記単一の領域の反復測定が、単一の実験で同じ分子に対して行われる請求項87に記載の方法。
【請求項91】
前記反復測定が、前記ナノ細孔内で前記分子を逆戻りさせることによって行われる請求項87に記載の方法。
【請求項92】
さらに、前記反復測定値に基づいて、前記分子が前記ナノ細孔を通して引かれるときの前記分子の回転を考慮するステップを含む請求項87に記載の方法。
【請求項93】
分子の一部を同定するためのシステムであって、
分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得するように構成された感知回路であって、前記複数の電気的測定値がそれぞれ、ナノ細孔内部の前記分子の離散位置に対応する感知回路と、
前記分子の可能な構造に対応する電気測定値の1つまたは複数のシーケンスを記憶するメモリと、
処理装置とを含み、前記処理装置が、
前記複数の電気的測定値を、前記分子の可能な構造に対応する電気的測定値の1つまたは複数のシーケンスと相関させ、
前記相関に基づいて、分子の前記部分が分子の可能な構造を含むか判断するように構成される
システム。
【請求項94】
前記電気的測定値が抵抗測定値を含む請求項93に記載のシステム。
【請求項95】
前記電気的測定値がキャパシタンス測定値を含む請求項93に記載のシステム。
【請求項96】
前記分子がポリマ分子を含む請求項93に記載のシステム。
【請求項97】
前記分子がヌクレオチド分子を含む請求項93に記載のシステム。
【請求項98】
前記分子がDNA分子を含む請求項93に記載のシステム。
【請求項99】
前記分子がdsDNA分子を含む請求項93に記載のシステム。
【請求項100】
前記分子がRNA分子を含む請求項93に記載のシステム。
【請求項101】
前記分子が二本鎖DNA分子を含み、
前記感知回路が、さらに、前記DNA分子の塩基対の引裂きに関連付けられる電気的測定値を獲得するように構成され、
前記処理装置が、さらに、前記電気的測定値を既知のDNA塩基対と相関させるように構成される
請求項93に記載のシステム。
【請求項102】
前記電気的測定値が、前記分子の1つまたは複数の電気的パターンを含む請求項93に記載のシステム。
【請求項103】
複数の電気的測定値を獲得することが、以下の環境的変数、すなわち塩濃度、グリセロール濃度、尿素濃度、ベタイン濃度、ホルムアミド濃度、温度、二価カチオン濃度のうちの1つまたは複数を変えることによって実現される様々な環境的条件の下で複数の電気的測定値を獲得することを含む請求項93に記載のシステム。
【請求項104】
前記分子がハイブリダイゼーションマーカーとハイブリダイゼーションされる請求項93に記載のシステム。
【請求項105】
前記分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得することが、前記分子の一領域内で、他の領域よりも厳密な電気的測定値を獲得することを含む請求項93に記載のシステム。
【請求項106】
前記分子がヌクレオチド分子を含み、前記領域が、一塩基多型(SNP)部位、コピー数多型部位、メチル化部位、タンパク質結合部位、酵素結合部位、反復配列部位、および制限酵素部位の1つを含む請求項105に記載のシステム。
【請求項107】
前記分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得することが、前記分子の単一の領域の反復電気的測定値を獲得することを含む請求項93に記載のシステム。
【請求項108】
前記分子に関連付けられた反復電気的測定値を獲得することが、前記分子の領域内の2つ以上の重畳するフレームをサンプルすることを含む請求項107に記載のシステム。
【請求項109】
反復電気的測定値を獲得することが、さらに、前記重畳するフレームからの情報を組み合わせることを含む請求項108に記載のシステム。
【請求項110】
前記分子の前記単一の領域の反復測定が、単一の実験で同じ分子に対して行われる請求項107に記載のシステム。
【請求項111】
前記反復測定が、前記ナノ細孔内で前記分子を逆戻りさせることによって行われる請求項107に記載のシステム。
【請求項112】
処理装置が、さらに、前記反復測定値に基づいて、前記分子が前記ナノ細孔を通して引かれるときの前記分子の回転を考慮するように構成される請求項107に記載のシステム。
【請求項113】
分子の一部を同定するためのシステムであって、
分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得するための手段であって、前記複数の電気的測定値がそれぞれ、ナノ細孔内部の前記分子の離散位置に対応する手段と、
前記複数の電気的測定値を、前記分子の可能な構造に対応する電気的測定値の1つまたは複数のシーケンスと相関させるための手段と、
前記相関に基づいて、分子の前記部分が分子の可能な構造を含むか判断する手段と
を含むシステム。
【請求項114】
前記電気的測定値が抵抗測定値を含む請求項113に記載のシステム。
【請求項115】
前記電気的測定値がキャパシタンス測定値を含む請求項113に記載のシステム。
【請求項116】
前記分子がポリマ分子を含む請求項113に記載のシステム。
【請求項117】
前記分子がヌクレオチド分子を含む請求項113に記載のシステム。
【請求項118】
前記分子がDNA分子を含む請求項113に記載のシステム。
【請求項119】
前記分子がdsDNA分子を含む請求項113に記載のシステム。
【請求項120】
前記分子がRNA分子を含む請求項113に記載のシステム。
【請求項121】
前記分子が二本鎖DNA分子を含み、前記システムが、さらに、
前記DNA分子の塩基対の引裂きに関連付けられる電気的測定値を獲得するための手段と、
前記電気的測定値を既知のDNA塩基対と相関させるための手段と
を含む請求項113に記載のシステム。
【請求項122】
前記電気的測定値が、前記分子の1つまたは複数の電気的パターンを含む請求項113に記載のシステム。
【請求項123】
複数の電気的測定値を獲得することが、以下の環境的変数、すなわち塩濃度、グリセロール濃度、尿素濃度、ベタイン濃度、ホルムアミド濃度、温度、二価カチオン濃度のうちの1つまたは複数を変えることによって実現される様々な環境的条件の下で複数の電気的測定値を獲得することを含む請求項113に記載のシステム。
【請求項124】
前記分子がハイブリダイゼーションマーカーとハイブリダイゼーションされる請求項113に記載のシステム。
【請求項125】
前記分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得することが、前記分子の一領域内で、他の領域よりも厳密な電気的測定値を獲得することを含む請求項113に記載のシステム。
【請求項126】
前記分子がヌクレオチド分子を含み、前記領域が、SNP部位、コピー数多型部位、メチル化部位、タンパク質結合部位、酵素結合部位、反復配列部位、および制限酵素部位の1つを含む請求項125に記載のシステム。
【請求項127】
前記分子に関連付けられる複数の電気的測定値を獲得することが、前記分子の単一の領域の反復電気的測定値を獲得することを含む請求項113に記載のシステム。
【請求項128】
前記分子に関連付けられた反復電気的測定値を獲得することが、前記分子の領域内の2つ以上の重畳するフレームをサンプルすることを含む請求項127に記載のシステム。
【請求項129】
反復電気的測定値を獲得することが、さらに、前記重畳するフレームからの情報を組み合わせることを含む請求項128に記載のシステム。
【請求項130】
前記分子の前記単一の領域の反復測定が、単一の実験で同じ分子に対して行われる請求項127に記載のシステム。
【請求項131】
前記反復測定が、前記ナノ細孔内で前記DNA分子を逆戻りさせることによって行われる請求項127に記載のシステム。
【請求項132】
さらに、前記反復測定値に基づいて、前記分子が前記ナノ細孔を通して引かれるときの前記分子の回転を考慮するステップを含む請求項127に記載のシステム。
【請求項133】
分子の特徴付けを行う方法であって、
ナノ細孔内に前記分子の一部を捕獲するステップと、
前記捕獲された分子部分が前記ナノ細孔内で移動されるまで前記ナノ細孔にわたって可変電圧を印加するステップと、
前記ナノ細孔内部での前記捕獲された分子部分の少なくとも一部の移動に影響を及ぼすのに必要な前記電気的刺激に基づいて、前記分子の特徴付けを行うステップと
を含む方法。
【請求項134】
前記分子がポリマ分子を含む請求項133に記載の方法。
【請求項135】
前記分子がヌクレオチド分子を含む請求項133に記載の方法。
【請求項136】
前記分子がDNA分子を含む請求項133に記載の方法。
【請求項137】
前記分子がRNA分子を含む請求項133に記載の方法。
【請求項138】
前記分子がdsDNA分子を含み、前記分子の特徴付けを行うステップが、GC塩基対および/またはAT塩基対を同定するステップを含む請求項133に記載の方法。
【請求項139】
さらに、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときに、前記分子の電気信号に基づいて前記分子の特徴付けを行うステップを含む請求項133に記載の方法。
【請求項140】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電気抵抗情報を含む請求項139に記載の方法。
【請求項141】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電気抵抗値対時間のプロファイルを含む請求項139に記載の方法。
【請求項142】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電流対時間のプロファイルを含む請求項139に記載の方法。
【請求項143】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電圧対時間のプロファイルを含む請求項139に記載の方法。
【請求項144】
前記分子の前記電気信号が、前記分子の複数の領域に関する電気信号を組み合わせた複合の電気信号を含む請求項139に記載の方法。
【請求項145】
前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記分子の電気信号に基づいて前記分子の特徴付けを行うステップが、前記電気信号の振幅、周波数、立ち上がり時間、立ち下がり時間の情報のうちの1つまたは複数に基づいて前記分子の特徴付けを行うステップを含む請求項139に記載の方法。
【請求項146】
前記分子がヌクレオチド分子を含み、前記分子の特徴付けを行うステップが、前記分子の少なくとも一部の塩基配列の特徴付けを行うステップを含む請求項133に記載の方法。
【請求項147】
分子の特徴付けを行うためのシステムであって、
ナノ細孔デバイスを含み、前記ナノ細孔デバイスが、
ナノ細孔内に前記分子の一部を捕獲し、
前記捕獲された分子部分が前記ナノ細孔内で移動されるまで前記ナノ細孔にわたって可変電圧を印加するように構成され、
システムがさらに、処理装置を備え、前記処理装置が、前記ナノ細孔内部での前記捕獲された分子部分の少なくとも一部の移動に影響を及ぼすのに必要な前記電気的刺激に基づいて、前記分子の特徴付けを行うように構成され、
システムがさらに、前記処理装置に命令を提供するように構成されたメモリ
を備えるシステム。
【請求項148】
前記分子がポリマ分子を含む請求項147に記載のシステム。
【請求項149】
前記分子がヌクレオチド分子を含む請求項147に記載のシステム。
【請求項150】
前記分子がDNA分子を含む請求項147に記載のシステム。
【請求項151】
前記分子がRNA分子を含む請求項147に記載のシステム。
【請求項152】
前記分子がdsDNA分子を含み、前記分子の特徴付けを行うステップが、GC塩基対および/またはAT塩基対を同定するステップを含む請求項147に記載のシステム。
【請求項153】
前記ナノ細孔デバイスが、さらに、分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記分子の電気信号を検出するように構成され、
前記処理装置が、さらに、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記分子の電気信号に基づいて前記分子の特徴付けを行うように構成される
請求項147に記載のシステム。
【請求項154】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電気抵抗情報を含む請求項153に記載のシステム。
【請求項155】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電気抵抗値対時間のプロファイルを含む請求項153に記載のシステム。
【請求項156】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電流対時間のプロファイルを含む請求項153に記載のシステム。
【請求項157】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電圧対時間のプロファイルを含む請求項153に記載のシステム。
【請求項158】
前記分子の前記電気信号が、前記分子の複数の領域に関する電気信号を組み合わせた複合の電気信号を含む請求項153に記載のシステム。
【請求項159】
前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記分子の電気信号に基づいて前記分子の特徴付けを行うことが、前記電気信号の振幅、周波数、立ち上がり時間、立ち下がり時間の情報のうちの1つまたは複数に基づいて前記分子の特徴付けを行うことを含む請求項153に記載のシステム。
【請求項160】
前記分子がヌクレオチド分子を含み、前記分子の特徴付けを行うことが、前記分子の少なくとも一部の塩基配列の特徴付けを行うことを含む請求項147に記載のシステム。
【請求項161】
分子の特徴付けを行うためのシステムであって、
ナノ細孔内に前記分子の一部を捕獲するための手段と、
前記捕獲された分子部分が前記ナノ細孔内で移動されるまで前記ナノ細孔にわたって可変電圧を印加するための手段と、
前記ナノ細孔内部での前記捕獲された分子部分の少なくとも一部の移動に影響を及ぼすのに必要な前記電気的刺激に基づいて、前記分子の特徴付けを行うための手段と
を含むシステム。
【請求項162】
前記分子がポリマ分子を含む請求項161に記載のシステム。
【請求項163】
前記分子がヌクレオチド分子を含む請求項161に記載のシステム。
【請求項164】
前記分子がDNA分子を含む請求項161に記載のシステム。
【請求項165】
前記分子がRNA分子を含む請求項161に記載のシステム。
【請求項166】
前記分子がdsDNA分子を含み、前記分子の特徴付けを行うことが、GC塩基対および/またはAT塩基対を同定することを含む請求項161に記載のシステム。
【請求項167】
さらに、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときに、前記分子の電気信号に基づいて前記分子の特徴付けを行うことを含む請求項161に記載のシステム。
【請求項168】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電気抵抗情報を含む請求項167に記載のシステム。
【請求項169】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電気抵抗値対時間のプロファイルを含む請求項167に記載のシステム。
【請求項170】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電流対時間のプロファイルを含む請求項167に記載のシステム。
【請求項171】
前記電気信号が、前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記ナノ細孔の電圧対時間のプロファイルを含む請求項167に記載のシステム。
【請求項172】
前記分子の前記電気信号が、前記分子の複数の領域に関する電気信号を組み合わせた複合の電気信号を含む請求項167に記載のシステム。
【請求項173】
前記分子が前記ナノ細孔を通って移動するときの前記分子の電気信号に基づいて前記分子の特徴付けを行うことが、前記電気信号の振幅、周波数、立ち上がり時間、立ち下がり時間の情報のうちの1つまたは複数に基づいて前記分子の特徴付けを行うことを含む請求項167に記載のシステム。
【請求項174】
前記分子がヌクレオチド分子を含み、前記分子の特徴付けを行うことが、前記分子の少なくとも一部の塩基配列の特徴付けを行うことを含む請求項161に記載のシステム。
【請求項175】
実質的に平坦な固体表面上に脂質二重層を取り付ける方法であって、
前記固体表面の近くに脂質材料を堆積するステップと、
前記固体表面上に、高速で拡散するガス分子を充填された泡を生成するステップと、
前記固体表面上に脂質二重層を形成するために、前記ガス分子を前記泡から外に拡散させるステップと
を含む方法。
【請求項176】
前記固体表面が脂質二重層適合表面を含む請求項175に記載の方法。
【請求項177】
前記固体表面が電極表面を含む請求項175に記載の方法。
【請求項178】
前記固体表面が、銀−塩化銀、銀−金合金、銀−白金合金、ドープトシリコン、および他の半導体材料からなる群から選択される材料から形成される請求項175に記載の方法。
【請求項179】
前記固体表面が、吸着された水分子の層を含み、前記脂質二重層が、前記吸着された水分子の上に形成される請求項175に記載の方法。
【請求項180】
前記泡を生成するステップが、気体分子を生成するためにギ酸分解を開始するステップを含む請求項175に記載の方法。
【請求項181】
ギ酸分解を開始するステップが、前記電極表面に泡開始電気的刺激を印加することによって実現される請求項180に記載の方法。
【請求項182】
前記開始電気的刺激が、1.4V〜3.0Vの範囲および100ms〜1sの持続時間を有する泡開始電圧レベルである請求項181に記載の方法。
【請求項183】
さらに、前記泡の電気的パラメータを検出することによって前記泡の生成を検出するステップを含む請求項182に記載の方法。
【請求項184】
前記電気的パラメータが前記泡の抵抗値を含む請求項183に記載の方法。
【請求項185】
さらに、前記脂質二重層の電気的パラメータを検出することによって前記脂質二重層の完全性を監視するステップを含む請求項175に記載の方法。
【請求項186】
前記電気的パラメータが、交流(AC)の下で測定される前記脂質二重層のキャパシタンスを含む請求項185に記載の方法。
【請求項187】
前記電気的パラメータが、交流の下で測定される前記脂質二重層のインピーダンスを含む請求項185に記載の方法。
【請求項188】
さらに、不適切な構造的完全性を有するものと検出された脂質二重層を消去するために消去用電気的刺激レベルを印加するステップを含む請求項185に記載の方法。
【請求項189】
1つまたは複数のステップが自動化される請求項188に記載の方法。
【請求項190】
平坦な固体表面上に脂質二重層を取り付けるためのシステムであって、
前記平坦な親水性固体表面の近くに脂質材料を堆積するように構成された供給装置と、
高速で拡散するガス分子を充填された泡が前記固体表面上に生じるように前記脂質懸濁液に刺激を印加するように構成された可変電圧源と、
前記固体表面上に脂質二重層を形成するために前記ガス分子が前記泡から外に拡散していることを検出するように構成された感知回路と
を含むシステム。
【請求項191】
前記固体表面が脂質二重層適合表面を含む請求項190に記載のシステム。
【請求項192】
前記固体表面が電極表面を含む請求項190に記載のシステム。
【請求項193】
前記固体表面が、銀−塩化銀、銀−金合金、銀−白金合金、ドープトシリコン、および他の半導体材料からなる群から選択される材料から形成される請求項190に記載のシステム。
【請求項194】
前記固体表面が、吸着された水分子の層を含み、前記脂質二重層が、前記吸着された水分子の上に形成される請求項190に記載のシステム。
【請求項195】
前記刺激アクチュエータが、さらに、気体分子を発生するためにギ酸分解を開始するように企図された泡開始刺激を印加するように構成される請求項190に記載のシステム。
【請求項196】
泡開始刺激が電気的刺激を含む請求項195に記載のシステム。
【請求項197】
前記開始電気的刺激が、1.4V〜3.0Vの範囲および100ms〜1sの持続時間を有する泡開始電圧レベルを備える請求項196に記載のシステム。
【請求項198】
前記感知回路が、さらに、前記泡の電気的パラメータを検出することによって前記泡の生成を検出するように構成される請求項197に記載のシステム。
【請求項199】
前記電気的パラメータが前記泡の抵抗値を含む請求項198に記載のシステム。
【請求項200】
前記感知回路が、さらに、前記脂質二重層の完全性を監視するように構成される請求項196に記載のシステム。
【請求項201】
前記感知回路が、さらに、前記脂質二重層の電気的パラメータを検出することによって前記脂質二重層の完全性を監視するように構成される請求項200に記載のシステム。
【請求項202】
前記電気的パラメータが、交流(AC)の下で測定される前記脂質二重層のキャパシタンスを含む請求項201に記載のシステム。
【請求項203】
前記電気的パラメータが、交流(AC)の下で測定される前記脂質二重層のインピーダンスを含む請求項201に記載のシステム。
【請求項204】
前記可変電圧源が、さらに、不適切な構造的完全性を有するものと検出された脂質二重層を消去するために消去用電気的刺激レベルを印加するように構成される請求項201に記載のシステム。
【請求項205】
前記システムが自動化される請求項204に記載のシステム。
【請求項206】
平坦な固体表面上に脂質二重層を取り付けるためのシステムであって、
前記平坦な親水性固体表面の近くに脂質材料を堆積するための手段と、
高速で拡散するガス分子を充填された泡が前記固体表面上に生じるように前記脂質懸濁液に刺激を印加するための手段と、
前記固体表面上に脂質二重層を形成するために前記ガス分子が前記泡から外に拡散していることを検出するための手段と
を含むシステム。
【請求項207】
前記固体表面が脂質二重層適合表面を含む請求項206に記載のシステム。
【請求項208】
前記固体表面が電極表面を含む請求項206に記載のシステム。
【請求項209】
前記固体表面が、銀−塩化銀、銀−金合金、銀−白金合金、ドープトシリコン、および他の半導体材料からなる群から選択される材料から形成される請求項206に記載のシステム。
【請求項210】
前記固体表面が、吸着された水分子の層を含み、前記脂質二重層が、前記吸着された水分子の上に形成される請求項206に記載のシステム。
【請求項211】
さらに、気体分子を発生するためにギ酸分解を開始するための泡開始刺激を送達するための手段を含む請求項206に記載のシステム。
【請求項212】
泡開始刺激が電気的刺激を含む請求項211に記載のシステム。
【請求項213】
前記開始電気的刺激が、1.4V〜3.0Vの範囲および100ms〜1sの持続時間を有する泡開始電圧レベルを備える請求項212に記載のシステム。
【請求項214】
さらに、前記泡の電気的パラメータを検出することによって前記泡の生成を検出するための手段を含む請求項206に記載のシステム。
【請求項215】
前記電気的パラメータが前記泡の抵抗値を含む請求項214に記載のシステム。
【請求項216】
さらに、前記脂質二重層の完全性を監視するための手段を含む請求項206に記載のシステム。
【請求項217】
さらに、前記脂質二重層の電気的パラメータを検出することによって前記脂質二重層の完全性を監視するための手段を含む請求項206に記載のシステム。
【請求項218】
前記電気的パラメータが、交流(AC)の下で測定される前記脂質二重層のキャパシタンスを含む請求項217に記載のシステム。
【請求項219】
前記電気的パラメータが、交流(AC)の下で測定される前記脂質二重層のインピーダンスを含む請求項217に記載のシステム。
【請求項220】
さらに、不適切な構造的完全性を有するものと検出された脂質二重層を消去するために消去用電気的刺激レベルを印加するための手段を含む請求項217に記載のシステム。
【請求項221】
前記システムが自動化される請求項220に記載のシステム。
【請求項222】
脂質二重層内にナノ細孔を形成する方法であって、
脂質二重層に撹拌用刺激レベルを印加するステップであって、前記撹拌用刺激レベルが、前記脂質二重層内でのナノ細孔の形成を促す傾向があるステップ
を含む方法。
【請求項223】
前記撹拌用刺激が、電気的刺激、機械的刺激、音響刺激、化学的な光刺激、および熱的刺激からなる群から選択される請求項222に記載の方法。
【請求項224】
前記撹拌用刺激が電圧(V)レベルを含む請求項222に記載の方法。
【請求項225】
前記撹拌用刺激レベルが、前記脂質二重層内へのα−ヘモリジンナノ細孔の挿入を促す傾向がある請求項222に記載の方法。
【請求項226】
さらに、
前記脂質二重層内へのナノ細孔の形成により生じる前記脂質二重層の電気的特性の変化を検出するステップと、
検出された前記脂質二重層の電気的特性の変化に基づいて、ナノ細孔が前記脂質二重層内に形成されているか判断するステップと
を含む請求項222に記載の方法。
【請求項227】
1つまたは複数のステップが自動化される請求項226に記載の方法。
【請求項228】
前記脂質二重層の電気的特性の変化を検出するステップが、前記脂質二重層の抵抗値の変化を検出するステップを含む請求項226に記載の方法。
【請求項229】
ナノ細孔が形成されたと判断するステップが、前記二重層の電気的特性の変化の大きさに基づいて、形成されたナノ細孔の数を求めるステップを含む請求項226に記載の方法。
【請求項230】
さらに、前記脂質二重層内に複数のナノ細孔が形成されていると判断されたときに、前記脂質二重層を消去するために消去用電気的刺激を印加するステップを含む請求項229に記載の方法。
【請求項231】
さらに、ナノ細孔が前記脂質二重層内に形成されていないと判断されたときに、脂質二重層にさらなる撹拌用電気的刺激レベルを印加するステップであって、前記撹拌用電気的刺激レベルが、前記脂質二重層内でのナノ細孔の形成を促す傾向があるステップを含む請求項229に記載の方法。
【請求項232】
前記脂質二重層内へのナノ細孔の形成により生じる前記二重層の電気的特性の変化を検出するステップが、前記二重層の抵抗値の減少を検出するステップを含む請求項222に記載の方法。
【請求項233】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な脂質二重層適合固体表面上に形成される請求項222に記載の方法。
【請求項234】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な親水性固体表面上に形成される請求項222に記載の方法。
【請求項235】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な電極表面上に形成される請求項222に記載の方法。
【請求項236】
抵抗によって特徴付けられる脂質二重層内にナノ細孔を形成するためのシステムが、
脂質二重層に撹拌用刺激レベルを印加するように構成された刺激発生源であって、前記撹拌用刺激レベルが、前記脂質二重層内でのナノ細孔の形成を促す傾向がある刺激発生源
を含むシステム。
【請求項237】
前記撹拌用刺激が、電気的刺激、機械的刺激、音響刺激、化学的な光刺激、および熱的刺激からなる群から選択される請求項236に記載のシステム。
【請求項238】
前記撹拌用刺激が撹拌用電気的刺激を含み、前記刺激発生源が、前記脂質二重層に撹拌用電気的刺激レベルを印加するように構成された電圧源を含み、前記撹拌用電気的刺激レベルが、前記脂質二重層内でのナノ細孔の形成を促す傾向がある請求項236に記載のシステム。
【請求項239】
前記撹拌用刺激レベルが、前記脂質二重層内へのα−ヘモリジンナノ細孔の挿入を促す傾向がある請求項236に記載のシステム。
【請求項240】
さらに、
前記脂質二重層内へのナノ細孔の形成により生じる前記脂質二重層の電気的特性の変化を検出するように構成された感知回路と、
検出された前記脂質二重層の電気的特性の変化に基づいて、ナノ細孔が前記脂質二重層内に形成されているか判断するように構成された処理装置と
を備える請求項236に記載のシステム。
【請求項241】
前記脂質二重層の電気的特性の変化を検出することが、前記脂質二重層の抵抗値の変化を検出することを含む請求項240に記載のシステム。
【請求項242】
ナノ細孔が形成されたと判断することが、前記二重層の電気的特性の変化の大きさに基づいて、形成されたナノ細孔の数を求めることを含む請求項240に記載のシステム。
【請求項243】
前記可変電圧源が、さらに、前記脂質二重層内に複数のナノ細孔が形成されていると判断されたときに、前記脂質二重層を消去するために消去用電気的刺激を印加するように構成される請求項242に記載のシステム。
【請求項244】
前記可変電圧源が、さらに、ナノ細孔が前記脂質二重層内に形成されていないと判断されたときに、脂質二重層にさらなる撹拌用電気的刺激レベルを印加するように構成され、前記撹拌用電気的刺激レベルが、前記脂質二重層内でのナノ細孔の形成を促す傾向がある請求項242に記載のシステム。
【請求項245】
前記脂質二重層内へのナノ細孔の形成により生じる前記二重層の電気的特性の変化を検出することが、前記二重層の抵抗値の減少を検出することを含む請求項240に記載のシステム。
【請求項246】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な脂質二重層適合固体表面上に形成される請求項236に記載のシステム。
【請求項247】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な親水性固体表面上に形成される請求項236に記載のシステム。
【請求項248】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な電極表面上に形成される請求項236に記載のシステム。
【請求項249】
前記システムが自動化される請求項236に記載のシステム。
【請求項250】
抵抗によって特徴付けられる脂質二重層内にナノ細孔を形成するためのシステムが、
脂質二重層に撹拌用刺激レベルを印加するための手段であって、前記撹拌用刺激レベルが、前記脂質二重層内でのナノ細孔の形成を促す傾向がある手段
を含むシステム。
【請求項251】
前記撹拌用刺激が、電気的刺激、機械的刺激、音響刺激、化学的な光刺激、および熱的刺激からなる群から選択される請求項250に記載のシステム。
【請求項252】
前記撹拌用刺激が電気的撹拌用刺激を含む請求項250に記載のシステム。
【請求項253】
前記撹拌用刺激レベルが、前記脂質二重層内へのα−ヘモリジンナノ細孔の挿入を促す傾向がある請求項250に記載のシステム。
【請求項254】
さらに、
前記脂質二重層内へのナノ細孔の形成により生じる前記脂質二重層の電気的特性の変化を検出するための手段と、
検出された前記脂質二重層の電気的特性の変化に基づいて、ナノ細孔が前記脂質二重層内に形成されているか判断するための手段と
を含む請求項250に記載のシステム。
【請求項255】
前記脂質二重層の電気的特性の変化を検出することが、前記脂質二重層の抵抗値の変化を検出することを含む請求項254に記載のシステム。
【請求項256】
ナノ細孔が形成されたと判断することが、前記二重層の電気的特性の変化の大きさに基づいて、形成されたナノ細孔の数を求めることを含む請求項254に記載のシステム。
【請求項257】
さらに、前記脂質二重層内に複数のナノ細孔が形成されていると判断されたときに、前記脂質二重層を消去するために消去用電気的刺激を印加するステップを含む請求項256に記載のシステム。
【請求項258】
さらに、ナノ細孔が前記脂質二重層内に形成されていないと判断されたときに、脂質二重層にさらなる撹拌用電気的刺激レベルを印加するための手段であって、前記撹拌用電気的刺激レベルが、前記脂質二重層内でのナノ細孔の形成を促す傾向がある手段を含む請求項256に記載のシステム。
【請求項259】
前記脂質二重層内へのナノ細孔の形成により生じる前記二重層の電気的特性の変化を検出することが、前記二重層の抵抗値の減少を検出することを含む請求項254に記載のシステム。
【請求項260】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な脂質二重層適合固体表面上に形成される請求項250に記載のシステム。
【請求項261】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な親水性固体表面上に形成される請求項250に記載のシステム。
【請求項262】
前記脂質二重層が、実質的に平坦な電極表面上に形成される請求項250に記載のシステム。
【請求項263】
前記システムが自動化される請求項250に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図5E】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【公表番号】特表2013−519088(P2013−519088A)
【公表日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551978(P2012−551978)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2011/000205
【国際公開番号】WO2011/097028
【国際公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(512205865)ジニア・テクノロジーズ・インコーポレーテッド (1)
【氏名又は名称原語表記】GENIA TECHNOLOGIES INCORPORATED
【Fターム(参考)】