説明

ナノ複合体、これを含むポリマー組成物及びその製造方法

本発明は、層状無機材料と、疎水性モノマー及び親水性モノマーのランダム共重合体とを含むナノ複合体、このナノ複合体を含むポリマー組成物、及びこのポリマー組成物の製造方法に関するものである。このランダム共重合体は、簡単な方法において、低コストで製造することができ、少量でも相溶化剤として機能し、ナノ複合体の耐磨耗性、硬度、引張弾性率及び引裂き抵抗性などの優れた機械的特性、優れた熱的特性、高い液体並びに気体透過性、及び低い難燃性などの優れた物性を維持することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、層状無機材料と、疎水性モノマー及び親水性モノマーのランダム共重合体とを含むナノ複合体、このナノ複合体を含むポリマー組成物及びこのポリマー組成物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1990年代以降、ナノ技術に対する関心が高まる一方、ナノ複合体に関する研究も活発に行われてきている。ナノ複合体は、ポリマーマトリックス内に、1nm〜100nmのフィラー(例えば、ポリマー、無機物及び/又は金属粒子)が均一に分散されている複合体を意味する。
【0003】
ナノ複合体は、含まれる成分の表面積(界面面積)が非常に大きく、粒子間の距離が大きく減少するため、1μm〜100μmサイズの分散粒子を含む従来のポリマー化合物に比べて、特性が顕著に改善されるか、又は新しい機能を示すようになる。このようなナノ複合体は、従来の無機系フィラー/補強剤に比べて、少量の分散粒子の添加だけでも大幅に改善された熱的特性並びに機械的特性、高い液体並びに気体の透過性、及び低い難燃性を含む長所を有していることから、研究者及び企業の大きな関心を引き付けてきた。
【0004】
ナノ複合体の製造に最も広く使われるナノスケールの粒子(フィラー又は補強材)として、層状シリケート(例えばフィロシリケート)が挙げられる。ナノ複合体は、一般的に層状シリケートを精製又は合成し、純度の高い添加剤を製造する工程、この添加剤をポリマー樹脂によく分散されるように前処理する工程、及び前処理された添加剤をポリマー樹脂と混合する工程、を経て製造される。
【0005】
ナノ複合体の製造方法において、最も重要な部分は層状シリケートなどのナノスケールの添加剤を樹脂内に均一に分散させることである。均一な分散を達成するために、各種の技術が提案されている。
【0006】
特許文献1は、ラテックス形態(latex form)のブロック共重合体を用いて層間挿入(intercalated)された及び/又は剥離(exfoliated)された天然又は合成粘土化合物を製造する方法であり、ブロック共重合体として、4−ビニルピリジン及びスチレンのジブロック共重合体を使用する方法を開示している。また、特許文献2は、層状シリケート及びシリケートと相溶性を有するブロック共重合体を含むナノ複合体であり、ブロック共重合体として、やはりスチレンと4−ビニルピリジンのジブロック共重合体を使用するナノ複合体を開示している。
【0007】
前述した先行技術は、いずれもシリケートの層間に挿入され、これを剥離させる相溶化剤として特定モノマーのブロック共重合体を使用している。しかし、ブロック共重合体は、製造工程が非常に複雑で、製造コストが非常に高いため、効果的な製造が難しい。このように、前述した先行文献に開示されている技術はナノ複合体の実際の製造工程において、商業化が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1801158号
【特許文献2】米国公開特許第2006−74167号
【特許文献3】米国特許第3,252,757号
【特許文献4】米国特許第3,666,407号
【特許文献5】米国特許第3,671,190号
【特許文献6】米国特許第3、844、978号
【特許文献7】米国特許第3、844、979号
【特許文献8】米国特許第3、852、405号
【特許文献9】米国特許第3,855,147号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Alberda van Ekenstein el, Macromolecules 2000, 33, 3752
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前述した従来技術を鑑みてなされたものであり、非常に簡単な工程を使用して低コストで製造することができるランダム共重合体を用いて製造され、改善された機械的特性並びに熱的特性、高い液体並びに気体の透過性、及び低い難燃性などの、物性に優れたナノ複合体、これを含むポリマー組成物及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の1つの態様は、層状無機材料と、疎水性モノマー及び親水性モノマーのランダム共重合体と、を含むナノ複合体を提供する。
【0012】
本発明の別の態様は、ポリマー樹脂と、本発明によるナノ複合体とを含む、ポリマー組成物を提供する。
【0013】
さらに、本発明の別の態様は、層状無機材料と、親水性モノマー及び疎水性モノマーとを含むランダム共重合体を混合し、ナノ複合体を製造する工程、及びナノ複合体をポリマー樹脂と混合する工程、を含むポリマー組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、層状無機材料と、簡単な工程を介して低コストで製造することができるランダム共重合体とを含み、少量でもポリマー組成物の優れた機械的特性並びに熱的特性、高い液体並びに気体の透過性、及び低い難燃性を可能にするナノ複合体を提供する。本発明はまた、これを含むポリマー組成物及びその製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施例で製造されたナノ複合体のTEMイメージである。
【図2】本発明の実施例で製造されたナノ複合体のTEMイメージである。
【図3】本発明の実施例で製造されたナノ複合体のXRDパターンである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の典型的な実施形態を詳細に説明する。しかし、本発明は以下で開示される実施形態に制限されるものではなく、様々な形態で実施することができる。以下の辞し形態は当業者が本発明を具体的に実用することができるようにするために説明するものである。
【0017】
本発明は、層状無機材料と、疎水性モノマー及び親水性モノマーのランダム共重合体とを含むナノ複合体(nanocomposite)に関する。本発明のナノ複合体では、反応性比(reactivity ratio)の差が大きいモノマー間のランダム共重合体により、層状無機材料が高い剥離度(degree of exfoliation)を示す。これにより、本発明のナノ複合体は、優れた分散特性を有し、例えばポリマーに添加される場合、少ない量でも組成物は、優れた機械的特性及び熱的特性、高い液体透過性及び気体透過性、並びに低い難燃性などの、優れた物性を示すことができる。
【0018】
以下、本発明のナノ複合体をより詳細に説明する。
【0019】
本発明で使用する用語“ナノ複合体”とは、ナノスケールの無機材料が樹脂内で均一に分散されている物質を意味する。この時、ナノ複合体に含まれる層状無機材料の種類は特に限定されなく、例えば、層状シリケート(layered silicate)(たとえば、フィロシリケート)などの粘土鉱物を使用することができる。層状シリケートは、シリコン、アルミニウム、マグネシウム及び酸素などの成分で構成された板状のシリケートが積み重なった無機化合物である。特に限定されないが、本発明では層状シリケートに含まれる個々の小板(platelet)は、その厚さが0.5nm〜5nmであり、縦長さが25nm〜2,000nmであり、アスペクト比(aspect ratio)が50〜2,000のものが好ましい。用語“小板”とは、層状シリケートを構成する個々の層(layer)を意味し、前記小板の形態が前述した範囲を外れた場合、ナノ複合体の物性が低下されるおそれがある。
【0020】
本発明のナノ複合体で、層状無機材料は、好ましくは後述するランダム共重合体などにより、層間挿入(intercalated)又は剥離(exfoliated)されている。したがって、層状シリケート小片のポリマー樹脂への分散性及び混和性が向上される。用語“層間挿入”とは、無機材料を構成する個々の小板が膨脹などを通じて離れた状態を意味し、“剥離”とは、個々の小板が完全に離れてナノスケールで分散された状態を意味する。具体的には、本発明の層状無機材料では含まれる個々の小板間の間隔は1nm以上であってもよく、好ましくは3nm以上である。小板の間隔が1nm未満のとき、ナノ複合体での分散性及び混和性が劣るおそれがある。
【0021】
層状シリケートは、容易に自然界から得られるか、又はシリカなどから合成でき、合成において、種類及び純度などの物性を容易に制御できる。本発明で用いられる層状シリケートの種類は、前述した条件を満たしていれば特に限定されず、例えば、天然若しくは合成層状シリケート、又は有機改質された層状シリケート、例えば有機粘土(organoclay)などが挙げられる。
【0022】
天然又は合成層状シリケートには、マイカ(mica)、フルオロマイカ(fluoromica)、パイロフィライト(pyrophyllite)、海緑石(glauconite)、バーミキュライト(vermiculite)、セピオライト(sepiolite)、アロフェン(allophane)、イモゴライト(imogolite)、タルク(talc)、イルライト(illite)、ソボカイト(sobockite)、スビンホルダイト(svinfordite)、カオリナイト(kaolinite)、ディッカイト(dickite)、ナクライト(nacrite)、アノーキサイト(anauxite)、絹雲母(sericite)、レディカイト(ledikite)、モントロナイト(montronite)、メタハロイサイト(metahalloysite)、蛇紋石粘土(serpentine clay)、クリソタイル(chrysotile)、アンチゴライト(antigorite)、アタパルジャイト(attapulgite)、パリゴルスカイト(palygorskite)、木節粘土(Kibushi clay)、蛙目粘土(gairome clay)、ヒシンゲライト(hisingerite)、緑泥石(chlorite)、モンモリロナイト(montmorillonite)、ナトリウムモンモリロナイト(sodium montmorillonite)、マグネシウムモンモリロナイト(magnesium montmorillonite)、カルシウムモンモリロナイト(calcium montmorillonite)、ノントロナイト(nontronite)、ベントナイト(bentonite)、バイデライト(beidellite)、ヘクトライト(hectorite)、ナトリウムヘクトライト(sodium hectorite)、サポナイト(saponite)、ソーコナイト(sauconite)、フルオロヘクトライト(fluorohectorite)、ステベンサイト(stevensite)、ボルコンスコアイト(volkonskoite)、マガディアイト(magadiite)、ケニヤアイト(kenyaite)、ハロイサイト(halloysite)、ハイドロタルサイト(hydrotalcite)、スメクタイト(smectite)又はスメクタイト型(smectite-type)層状シリケートなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。層状シリケートは、自然界から天然状態で得るか、又はこの分野で公知の一般的な方法によって合成することができる。また、本発明には、米国特許第3,252,757号、第3,666,407号、第3,671,190号、第3、844、978号、第3、844、979号、第3、852、405号及び第3,855,147号などに開示されている方法(熱水工程(hydrothermal process))により合成された層状シリケートが含まれ、Laponite(Southern Clay Product)、Laponite D(Southern Clay Product)及びLaponite RD(Southern Clay Product)などの名称で商業的に入手可能なこの分野の一般的な層状シリケートを大部分使用してもよい。
【0023】
特に限定されないが、後述するランダム共重合体及び/又はポリマー樹脂との相溶性の観点から、前述したそれぞれの層状シリケートが有機的に改質された有機粘土が、本発明のためには好ましい。有機粘土は、官能基化されていない粘土(unfunctionalized clay)を少なくとも1つのインターカレント(intercalant)と相互作用させて製造したスメクタイト又はスメクタイト型粘土を意味する。この時、インターカレントは一般的に中性又はイオン性有機化合物である。中性有機化合物の例には、アミド、エステル、ラクタム、ニトリル、ウレア、カーボネート、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート又はニトロ化合物のような極性化合物のモノマー性、オリゴマー性又はポリマー性化合物が挙げられる。このような中性有機化合物は、粘土の電荷平衡イオン(charge balancing ion)を完全に置換することなく、水素結合を通じて粘土の層間に挿入され得る。また、イオン性有機化合物の例には、アンモニウム(1級、2級、3級又は4級)、ホスホニウム(phosphonium)、スルホニウム(sulfonium)誘導体、芳香族又は脂肪族アミン、ホスフィンあるいはスルフィドなどのオニウム化合物;又は4級窒素原子と結合した少なくとも1つの長鎖脂肪族基(例えば、オクタデシル、ミリスチル、又はオレイル)を有する4級アンモニウムイオンなどのオニウムイオンのようなカチオン性界面活性剤が挙げられる。有機粘土はCloisite(Southern Clay Product;層状マグネシウムアルミニウムシリケートから誘導される)[例えば、Cloisite 6A、Cloisite 15A及びCloisite 20A]、Claytone(Southern Clay Product;天然ナトリウムベントナイトから誘導される)[例えば、Claytone HY及びClaytone AF]及びNanomer(Nanocor)などの名称で市販されている。
【0024】
本発明において、ナノ複合体は、前述した層状無機材料とともに疎水性モノマー及び親水性モノマーのランダム共重合体とを含む。この時、共重合体に含まれる親水性及び/又は疎水性モノマーは層状無機材料と親和性を有し、これにより、前記共重合体は層状無機材料の各小板の間に挿入され、これを膨脹又は剥離させる役割を果たす。
【0025】
特に限定されないが、本発明のランダム共重合体では、下記式(1)で示される親水性モノマーの反応性比(r)及び下記式(2)で示される疎水性モノマーの反応性比(r)が下記式(3)及び(4)の関係を満たすことが好ましい。
式(1):r=k11/k12
式(2):r=k22/k21
式(3):r−r≧0.5
式(4):「r>1及びr<1」又は「r<1及びr>1」
[式中、k11は親水性ラジカル(M・)と親水性モノマー(M)の反応速度定数を意味し、k12は親水性ラジカル(M・)と疎水性モノマー(M)の反応速度定数を意味し、k21は疎水性ラジカル(M・)と親水性モノマー(M)の反応速度定数を意味し、k22は疎水性ラジカル(M・)と疎水性モノマー(M)の反応速度定数を意味する]
【0026】
本発明のランダム共重合体に含まれるモノマーの反応性比の差(式(3))が0.5未満であれば、疎水性モノマーの反応性が過度に大きくなり、共重合体の無機材料への混和性が低下するおそれがある。
【0027】
本発明では前述した条件を満たせば、この分野で一般的に公知の、任意の疎水性又は親水性モノマーを、制限されることなく使用することができる。
【0028】
疎水性モノマーには、プロピレン、イソプレン(isoprene)、スチレン又はブタジエンなどのエチレン性不飽和炭化水素;デカメチルシクロペンタシロキサン又はデカメチルテトラシロキサンなどのシロキサン;ジフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、クロロフルオロエチレン又はヘキサフルオロプロピレンなどのハロゲン化オレフィン;又はブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート又はステアリル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートが含まれ、この中から、スチレンなどのエチレン性不飽和炭化水素が好ましい。
【0029】
親水性モノマーは共重合体に、−COH、−SOH又は−POHなどの酸性基;−OH;−SH;1級、2級又は3級アミン;アンモニウムN−置換又は非置換アミド又はラクタム;N−置換又は非置換チオアミド又はチオラクタム;無水物;直鎖状又は環状エーテル又はポリエーテル;イソシアネート;シアネート;ニトリル;カルバメート;ウレア;チオウレア又はピリジンあるいはイミダゾールなどのヘテロ環アミン、などの親水性単位を導入できるモノマーを含んでもよい。親水性モノマーには、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどの親水性官能基含有(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド又はN−置換(メタ)アクリルアミド(例えば、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−(ジアルキルアミノ)アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド及びN−ジアルキル−N−ジヒドロキシ(メタ)アクリルアミド)などのエチレン性不飽和結合含有アミド又はアミン;3−ジアルキルアミノアルキルアミン及びN,N−ジアルキルアルキレンジアミンなどの脂肪族アミン;エチレン性不飽和結合を有する窒素含有ヘテロ環化合物(例えば、ビニルアジリジン、ビニルアゼチジン、ビニルジヒドロピロール、ビニルテトラヒドロピロール、ビニルピロール、ビニルピペリジン、ビニルピリジン、ビニルピロリジン、ビニルキヌクリジン(vinyl quinuclidine)、ビニルピロリドン、ビニルカプロラクタム、アミノアルキルピリジン及びアミノアルキルピロリジン)よりなる群から選択された少なくとも1つが含まれてもよく、好ましくは、この中から、ビニルピリジンなどのエチレン性不飽和結合を有する窒素含有ヘテロ環化合物である。前述したモノマーの例示で使われた用語“アルキル”及び“アルキレン”は、それぞれ炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜4の直鎖又は分枝鎖の置換又は置換されていないアルキル及びアルキレンが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0030】
本発明のランダム共重合体には、親水性モノマーが10重量部以上、好ましくは20重量部以上含まれてもよく、疎水性モノマーが90重量部以下、好ましくは80重量部以下の量で含まれてもよい。親水性モノマーの含有量が10重量部未満であるか、疎水性モノマーの含有量が90重量部を超えると、層状無機材料の剥離度及び/又はポリマー樹脂への分散性が低下されるおそれがある。親水性モノマー含有量の上限及び疎水性モノマー含有量の下限は特に限定されないが、好ましくは、それぞれ70重量部以下及び30重量部以上の範囲内で適宜調節することができる。
【0031】
ランダム共重合体には、前述した親水性及び疎水性モノマーに、さらに、ポリマー樹脂との相溶性ないしは反応性付与の観点から、官能基含有モノマーが含まれてもよい。官能基含有モノマーには、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー及び/又はグリシジル基含有モノマーが含まれ、好ましくはグリシジル基含有モノマーである。ヒドロキシ基含有モノマーの例には、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチレングリコール(メタ)アクリレート及び2−ヒドロキシプロピレングリコール(メタ)アクリレートが含まれ;カルボキシ基含有モノマーの例には、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシ酢酸、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシブチル酸、アクリル酸二量体、イタコン酸、マレイン酸及びマレイン酸無水物などが含まれ;グリシジル基含有モノマーの例には、グリシジル(メタ)アクリレートなどが含まれるが、これに制限されるものではない。
【0032】
本発明において、ランダム共重合体は、官能基含有モノマーを、親水性モノマー及び疎水性モノマーの合計100重量部に対して、0.1重量部〜15重量部、好ましくは1重量部〜10重量部の量で含んでもよい。モノマーの含有量が0.1重量部未満のとき、ナノ複合体及びポリマーの間の分散性が低下するおそれがあり、15重量部を超えるとランダム共重合体の基本ポリマー鎖構造が変形され、層状無機材料の剥離度ないしはポリマーへの分散性などが低下するおそれがある。
【0033】
本発明において、ナノ複合体に含まれる各成分の含有量は特に制限されない。例えば、ナノ複合体の全固形分(層状無機材料及びランダム共重合体の合計)100重量部に対して、層状無機材料が0.1重量部〜80重量部、好ましくは1重量部〜60重量部の量で含まれてもよい。層状無機材料の含有量が0.1重量部より小さいと、層状無機材料の分散による物性の改善効果が小さくなるおそれがあり、80重量部を超えると、無機材料同士が凝集し、ナノスケールでの分散性が低下し、物性の改善効果も低下する。
【0034】
本発明は、ポリマー樹脂と、ポリマー樹脂内に分散された本発明によるナノ複合体とを含むポリマー組成物に関する。前述のように、本発明のナノ複合体は、層状無機材料の高い剥離度によりポリマー樹脂への優れた分散性及び混和性を有する。したがって、ポリマー組成物の優れた機械的並びに熱的特性、高い液体並びに気体の透過性、及び低い難燃性などの優れた物性を維持することができる。これにより、本発明のポリマー組成物は各種自動車部品、瓶、遮断フィルム及び/又は難燃材料などの用途に有用に使用できる。
【0035】
ポリマー組成物に含まれるポリマー樹脂の種類は特に限定されず、この分野で一般的に使われる各種の熱可塑性樹脂及び/又は熱硬化性樹脂を制限することなく使用することができる。
【0036】
熱可塑性樹脂には、ポリ(ピバロラクトン)及びポリ(カプロラクトン)などのポリラクトン;ジイソシアネート[例えば、1,5−ナフタレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニルジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート及び4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン]と直鎖状長鎖ジオール[例えば、ポリ(テトラメチレンアジペート)、ポリ(エチレンアジペート)、ポリ(1,4−ブチレンアジペート)、ポリ(エチレンスクシネート)、ポリ(2,3−ブチレンスクシネート)及びポリエーテルジオール]とから誘導されたポリウレタン;ポリ(メタンビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1−エーテルビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(ジフェニルメタンビス(4−フェニル)カーボネート)、ポリ(1,1−シクロヘキサンビス(4−フェニル)カーボネート)及びポリ(2,2−(ビス−4−ヒドロキシフェニル)プロパン)カーボネートなどのポリカーボネート;ポリスルホン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリ(4−アミノブチレート)、ポリ(ヘキサメチレンアジパミド)、ポリ(6−アミノヘキサノエート)、ポリ(m−キシリレンアジパミド)、ポリ(p−キシリレンセバカミド)、ポリ(メタフェニレンイソフタルアミド)及びポリ(p−フェニレンテレフタルアミド)などのポリアミド;ポリ(エチレンアゼレート)、ポリ(エチレン−1,5−ナフタレート)、ポリ(エチレン−2,6−ナフタレート)、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンオキシベンゾエート)、ポリ(p−ヒドロキシベンゾエート)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)(cis)、ポリ(1,4−シクロヘキシリデンジメチレンテレフタレート)(trans)、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル;ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)及びポリ(2,6−ジフェニル−1,1−フェニレンオキシド)などのポリ(アリーレンオキシド);ポリフェニレンスルフィドなどのポリ(アリーレンスルフィド);ポリエーテルイミド;ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニリデンクロライド及びエチレン−ビニルアセテート共重合体などのビニルポリマー及びこれらの共重合体;ポリ(エチル(メタ)アクリレート)、ポリ(n−ブチル(メタ)アクリレート)、ポリ(メチル(メタ)アクリレート)、ポリ(n−プロピル(メタ)アクリレート)、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリ((メタ)アクリレート)、エチレン−エチル(メタ)アクリレート共重合体及びエチレン−(メタ)アクリレート共重合体などのアクリル系ポリマー;ポリ(アクリロニトリル−co−ブタジエン−co−スチレン)及びポリ(スチレン−co−アクリロニトリル)などのアクリロニトリル共重合体;ポリスチレン、ポリ(スチレン−co−マレイン酸無水物)ポリマー及びその誘導体、メチルメタクリレート−スチレン共重合体及びメタクリル化ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系ポリマー;ポリエチレン、ポリブチレン、ポリプロピレン、塩素化低密度ポリエチレン及びポリ(4−メチル−1−ペンテン)などのポリオレフィン;イオノマー;ポリ(エピクロロヒドリン);2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのナトリウム塩と4,4’−ジクロロジフェニルスルホンの反応物のなどのポリスルホン;ポリ(フラン)などのフラン樹脂;セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びセルロースプロピオネートなどのセルロースエステル熱可塑性物質;タンパク質熱可塑性物質;ポリフェニレンオキシドなどのポリアリーレンエステル;ポリイミド;ポリビニリデンハライド;芳香族ポリケトン;ポリアセタール;ポリスルホネート;ポリエステルイオノマー;ポリオレフィンイオノマー;ポリブタジエン、ポリイソブチレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、スルホン化エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー、ポリクロロプレン、ポリ(2,3−ジメチルブタジエン)、ポリ(ブタジエン−co−ペンタジエン)、クロロスルホン化ポリエチレン、ポリスルフィド弾性ポリマー、ガラス質又は結晶質ブロック(例えば、ポリスチレン、ポリ(ビニルトルエン)、ポリ(t−ブチルスチレン)及びポリエステル)及び弾性ポリマーブロック(例えば、ポリブタジエン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブチレン共重合体及びポリエーテルエステル)のブロック共重合体(例えば、ポリ(スチレン−ブタジエン−スチレン)ブロック共重合体、KRATON(登録商標)(Shell Chemical Company))などの熱可塑性弾性ポリマー;又はフルオロポリマー(例えば、Dyneon LLCのTHV 220、THV 400G、THV 500G、THV 815、THV 610X、PVDF、PFA、HTE、ETFE及びFEP;Atofina ChemicalsのKYNAR;Solvay SolexisのHYLAR及びHALAR ECTFEなど)などが含まれる。
【0037】
熱硬化性樹脂には、エポキシ樹脂;フェノキシ樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ビニルエステル樹脂;アルキド樹脂;アクリル樹脂;1液型ウレタン樹脂;2液型ウレタン樹脂;シアネート樹脂;フェノール樹脂;及びアミノプラスト樹脂よりなる群から選択された少なくとも1つが含まれる。
【0038】
本発明のポリマー組成物では、ナノ複合体が、ポリマー樹脂100重量部に対して、1重量部〜40重量部の量で含まれてもよい。含有量が1重量部未満のとき、ナノ複合体添加による効果が得られないおそれがあり、40重量部を超えると経済性が悪化する。
【0039】
本発明のポリマー組成物は、前述したポリマー樹脂及びナノ複合体に、さらに、界面活性剤、防炎剤、フィラー、紫外線吸収剤、抗酸化剤、増粘剤、着色剤、芳香剤及び抗生剤よりなる群から選択された少なくとも1つの添加剤を含むことができる。
【0040】
また、本発明は、
層状無機材料と、親水性モノマー及び疎水性モノマーを含むランダム共重合体とを混合し、ナノ複合体を製造する工程、
ナノ複合体をポリマー樹脂と混合する工程、
を含むポリマー組成物の製造方法に関する。
【0041】
本発明の第1工程は、層状無機材料及びランダム共重合体を混合し、ナノ複合体を製造する工程である。この時、本発明のために使われる層状無機材料の具体的な種類は前述したものと同様である。ランダム共重合体は、前述したモノマーを用いて、ランダム共重合法のような従来のラジカル重合法で製造することができる。
【0042】
本発明の第1工程で使われるランダム共重合体は、親水性及び疎水性モノマーとともに官能基含有モノマーを、さらに含んでもよい。
【0043】
無機材料及びランダム共重合体を混合する方法は特に限定されず、例えば、溶液混合又は溶融混合のようなこの分野の通常の方法を用いて行うことができる。溶液混合において、溶媒として水性溶媒、有機溶媒又はこれらの混合溶媒を使用することができ、水性溶媒と有機溶媒の混合溶媒を使用することが好ましい。溶媒は、層状無機材料がランダム共重合体に分散されることを補助する役割を果たす。これにより、本発明において、無機材料及び/又は共重合体を膨脹させることが可能な溶媒を使用することが望ましいが、これに限定されるものではない。また、本発明において、溶融混合を使用する場合には、通常の1軸及び2軸押出機、撹拌機又は混練機などを使用して溶融混合及び混練を行うことができる。この工程では、効果的に混合するために、前記のような溶媒の存在下で共重合体及び無機材料を混合するか、又は前記それぞれの材料を直接溶融状態で混合する方法を使用し、ナノ複合体を製造することができる。
【0044】
第1工程中に、層状無機材料はランダム共重合体により層間挿入及び/又は剥離される。この分野の当業者は、各成分の濃度、組成、混合時の圧力、工程の温度プロファイル(等温型又は増加型)、材料の添加順序、加えられるせん断力の大きさ及び/又は速度、及び混合工程の耐久性などの変数を調節して、層間挿入及び/又は剥離の程度を容易に制御することができる。
【0045】
本発明の第2工程は、上記の方法で製造されたナノ複合体をポリマー樹脂内に分散させる工程である。この時、使われる方法は特に限定されなく、例えば、適切な溶媒の存在下で、又は溶媒が存在しない状態で、押出、撹拌及び/又は混練過程を経てナノ複合体を分散させることができる。
【0046】
本発明の一態様において、ナノ複合体及び/又はポリマー樹脂は顆粒状(granular)又は流体状(molten)で混合してもよい。また、ナノ複合体は2軸押出機などの混合装置内で、流体状のポリマー樹脂と混合され、押出後、凝固してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明に係る実施例を通して本発明をより具体的に説明するが、本発明の範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0048】
製造例1.ランダム共重合体の製造
疎水性モノマーとしてスチレン(S)、親水性モノマーとして2−ビニルピリジン(2−VP)を用いて、文献(Alberda van Ekenstein el, Macromolecules 2000, 33, 3752)などに開示された通常のラジカル重合法で、2−ビニルピリジンの含有量がそれぞれ25重量%及び56重量%のランダム共重合体(以下、それぞれ“ポリ(S−ran−2VP)−25”及び“ポリ(S−ran−2VP)−56”と言及する)を製造した。具体的には、スチレン(Aldrich Chemical)及び2−ビニルピリジン(Aldrich Chemical)を真空下で蒸留及び精製してモノマーとして用いて、アセトンで再結晶させた2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を重合開始剤として用いた。溶媒として乾燥トルエン(75mL)をフラスコに入れ、精製されたスチレン(15.7mL)(又は9.2mL)及び2−ビニルピリジン(5.3mL)(又は11.8mL)に溶解させた。次いで、各フラスコからガスを除去し、60℃に加熱した後、トルエンに溶解したAIBNをモノマー100重量部に対して、0.25重量部(0.04785gm)の量で添加した。約10%の転換が生じるように、反応を約16時間持続した。その後、ヒドロキノンを添加して重合反応を終了し、製造した共重合体をヘキサン内で沈澱及びろ過した後、真空下、40℃で乾燥した。合成された共重合体の特性を下記表1に示した。
【0049】
【表1】

【0050】
製造例2.ランダム共重合体の製造
疎水性モノマーとしてスチレン、親水性モノマーとして2−ビニルピリジン、及び官能基含有モノマーとしてグリシジルメタクリレート(GMA)を用いて、通常のラジカル重合法で2−ビニルピリジンの含有量がそれぞれ22重量%〜25重量%であり、グリシジルメタクリレートの含有量が4重量%〜12重量%のランダム共重合体を製造した。具体的には、スチレン(Aldrich Chemical)、2−ビニルピリジン(Aldrich Chemical)及びグリシジルメタクリレートを真空下で蒸留及び精製してモノマーとして用いて、アセトンで再結晶させた2,2−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)を重合開始剤として用いた。溶媒として乾燥トルエン(75mL)をフラスコに入れ、精製されたスチレン、2−ビニルピリジン及びグリシジルメタクリレートを溶解させた。次いで、各フラスコからガスを除去し、60℃に加熱した後、各フラスコにトルエンに溶解したAIBNをモノマー100重量部に対して、約0.25重量部の量で添加し、約30%〜40%の転換が生じるように、反応を約24時間持続した。その後、ヒドロキノンを添加して重合反応を終了し、製造した共重合体をヘキサン内で沈澱及びろ過した後、真空下、40℃で乾燥した。合成されたそれぞれの共重合体の特性を下記表2に示した。
【0051】
【表2】

【0052】
実施例1及び2
ナノ複合体は、天然粘土(montmorillonite MMT、Southern Clay Products)及び有機粘土(Cloisite 30B、Southern Clay Products)を使用して製造した。有機粘土の表面に存在する界面活性剤(MT2EtOH)の化学構造を下記一般式(1)に示す。
【0053】
【化1】

【0054】
式中、Nイオンは4級アンモニウム塩を表し、TはC18 65%、C16 30%及びC1 45%からなる獣脂(tallow)を表す。
【0055】
有機粘土(Cloisite 30B)の表面に存在する界面活性剤の量は26重量%(90meq/100g)であり、天然粘土(montmorillonite MMT)内のNaイオンは100%交換された。粘土及び製造例1で製造されたランダム共重合体[ポリ(S−ran−2VP)−25(実施例1)及びポリ(S−ran−2VP)−56(実施例2)]を使用して、溶液混合によりナノ複合体を製造した。具体的には、ランダム共重合体をTHF及び水の混合溶媒(90:10 v:v)内に溶かし、前記溶液を速く撹拌しながら粘土をゆっくり添加した。この工程を室温で30分間行った後、溶液を一定の速度で撹拌しながら2日間、混合物内の溶媒をゆっくり蒸発させた。次いで、ナノ複合体を溶媒の融点より高い温度の真空オーブン内で完全に乾燥した後、共重合体のガラス転移温度(T)より約20℃高い温度で重量変化が検出されなくなるまで乾燥した。
【0056】
実施例3〜5
実施例1及び2で使用したものと同じ層状無機材料及び製造例2で製造したランダム共重合体(ポリ(S−ran−2VP)−24−GMA−4(実施例3)、ポリ(S−ran−2VP)−23−GMA−8(実施例4)及びポリ(S−ran−2VP)−22−GMA−12(実施例5))を使用して、ナノ複合体を製造した。
【0057】
溶液混合により粘土及び製造例1で製造したランダム共重合体を混合してナノ複合体を製造した。具体的には、それぞれのランダム共重合体をTHF及び水の混合溶媒(90:10 v:v)内に溶かし、次いで、前記溶液を速く撹拌しながら粘土をゆっくり添加した。この工程を室温で30分間行った後、溶液を一定の速度で撹拌しながら2日間、混合物内の溶媒をゆっくり蒸発させた。次いで、製造されたナノ複合体を溶媒の融点より高い温度の真空オーブン内で完全に乾燥した後、共重合体のガラス転移温度(T)より約20℃高い温度で重量変化が検出されなくなるまで乾燥した。
【0058】
試験例1.ナノ複合体のTEM(Transmission Electron Microscopy)分析
実施例1〜3で製造されたナノ複合体をヨウ素蒸気(Iodine vapor)で着色し、TEMイメージを室温で撮影した。具体的には、Reichert Ultracut S低温切削システム(Reichert Ultracut S low-temperature sectioning system)のダイヤモンドナイフを使用して、室温でナノ複合体サンプルに対し、極低温ウルトラ−ミクロトーム(cryogenic ultramicrotomy)で超薄切(ultrathin sectioning)(50−70nm)した。次いで、120kVで作動する透過電子顕微鏡(JEM1200EX II、JEOL)を使用してTEMイメージを記録した。
【0059】
図1は実施例1及び2のナノ複合体のTEMイメージを示し、図2は実施例3のナノ複合体のTEMイメージを示す。図1から、ポリ(S−ran−2VP)/Cloisite 30Bナノ複合体は優れた分散特性(高い剥離度)を示すことが分かり、特に2−ビニルピリジンの含有量が増加するほど分散特性が顕著に改善されることが分かった。親水性モノマーの含有量増加による剥離度の向上は、従来のブロック共重合体に基づいたナノ複合体とは反対の現象である。このような現象は、(1)ランダムコポリマーにおいて、ピリジン環がP2VP鎖に沿って規則的に位置するブロック共重合体の状況と比較して、ポリマー鎖内に無作為的に分布されたピリジン環が内部分子間相互作用(intramolecular interaction)(自己会合)が起こる確率がより小さく、(2)ランダム共重合体内の2−ビニルピリジンの量が増加するにつれて、ポリマー鎖内のより多くのピリジン環が有機粘土(Cloisite 30B)の界面活性剤の正に帯電したNイオンと相互作用できるため、より強いイオン−双極子相互作用(ion-dipole interaction)を引き起こし、有機粘土(Cloisite 30B)に、有機粘土凝集のさらに高い剥離度を誘発したからであると考えられる。
【0060】
試験例2.ナノ複合体に対するX線回折分析(XRD)
40kV及び40mAで作動するRigaku X線生成器(Rigaku X-ray generator)を使用して、XRDパターンを測定し、これを通じて実施例で製造されたナノ複合体の(001)plane(d001)の平均層間空間(mean interlayer spacing)値を測定した。0.1542nm波長のX線は黒鉛結晶(graphite crystal)によりCuKαに単色化(monochromatized)した。用いたX線強度の2θスキャニングの範囲は、1.5〜10°であった。
【0061】
図3は、実施例1及び2に基づいたナノ複合体のXRDパターンを示す。図3はいずれも特徴のないXRDパターン(featureless XRD pattern)を示した。したがって、図3に示したXRDパターンは、実施例1及び2で測定したナノ複合体のTEMイメージの結果と一致すると結論付けた。
【図1a】

【図1b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
層状無機材料、
疎水性モノマー及び親水性モノマーを含むランダム共重合体、
を含むナノ複合体。
【請求項2】
前記層状無機材料は、厚さが0.5nm〜5nmであり、縦長さが25nm〜2,000nmであり、アスペクト比が50〜2,000である小板を含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項3】
前記層状無機材料に含まれる前記小板の間の間隔が1nm以上であることを特徴とする、請求項2に記載のナノ複合体。
【請求項4】
前記層状無機材料は、天然層状シリケート及び合成層状シリケートよりなる群から選択された、少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項5】
前記層状無機材料は、有機粘土を含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項6】
前記有機粘土は、中性有機化合物及びイオン性有機化合物よりなる群から選択された少なくとも1つのインターカラントにより改質されていることを特徴とする、請求項5に記載のナノ複合体。
【請求項7】
前記中性有機化合物は、アミド、エステル、ラクタム、ニトリル、ウレア、カーボネート、ホスフェート、ホスホネート、スルフェート、スルホネート及びニトロ化合物よりなる群から選択された一つ以上のモノマー性、オリゴマー性又はポリマー性化合物を含み、前記イオン性有機化合物はカチオン界面活性剤であることを特徴とする、請求項6に記載のナノ複合体。
【請求項8】
前記ランダム共重合体は、下記式(1)で示される親水性モノマーの反応性比(r)及び下記式(2)で示される疎水性モノマーの反応性比(r)が、下記式(3)及び(4)の関係を満たすことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体:
式(1):r=k11/k12
式(2):r=k22/k21
式(3):r−r≧0.5。
式(4):「r>1及びr<1」又は「r<1及びr>1」
[式中、k11は親水性ラジカル(M・)と親水性モノマー(M)の反応速度定数を意味し、k12は親水性ラジカル(M・)と疎水性モノマー(M)の反応速度定数を意味し、k21は疎水性ラジカル(M・)と親水性モノマー(M)の反応速度定数を意味し、k22は疎水性ラジカル(M・)と疎水性モノマー(M)の反応速度定数を意味する]
【請求項9】
前記疎水性モノマーが、エチレン性不飽和炭化水素、シロキサン、ハロゲン化オレフィン及びアルキル(メタ)アクリレートよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項10】
前記疎水性モノマーが、エチレン性不飽和炭化水素であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項11】
前記親水性モノマーが、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、親水性官能基含有(メタ)アクリレート、エチレン性不飽和結合含有アミド、エチレン性不飽和結合含有アミン、脂肪族アミン及びヘテロ環化合物よりなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項12】
前記親水性モノマーが、エチレン性不飽和結合を有する窒素含有ヘテロ環化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項13】
前記ランダム共重合体は、10重量部以上の親水性モノマー及び90重量部以下の疎水性モノマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項14】
前記ランダム共重合体は、さらに、0.1重量部〜15重量部の官能基含有モノマーを含むことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項15】
前記官能基含有モノマーが、ヒドロキシ基含有モノマー、カルボキシ基含有モノマー及びグリシジル基含有モノマーよりなる群から選択される少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項14に記載のナノ複合体。
【請求項16】
前記層状無機材料は、ナノ複合体の全重量に対して0.1重量部〜80重量部の量で含まれることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項17】
ポリマー樹脂;及び
前記樹脂内に分散された請求項1〜16のいずれか一項に記載のナノ複合体
を含むポリマー組成物。
【請求項18】
前記ポリマー樹脂は、熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂よりなる群から選択された少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項19】
前記ナノ複合体は、前記ポリマー樹脂100重量部に対して、1重量部〜40重量部の量で含まれることを特徴とする、請求項17に記載のポリマー組成物。
【請求項20】
層状無機材料と、親水性モノマー及び疎水性モノマーを含むランダム共重合体とを混合してナノ複合体を製造する工程、
前記ナノ複合体をポリマー樹脂と混合する工程、
を含むポリマー組成物の製造方法。
【請求項21】
前記ランダム共重合体が、さらに、官能基含有モノマーを含むことを特徴とする、請求項20に記載の製造方法。

【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−504201(P2011−504201A)
【公表日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−534887(P2010−534887)
【出願日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006848
【国際公開番号】WO2009/066942
【国際公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【出願人】(500239823)エルジー・ケム・リミテッド (1,221)
【Fターム(参考)】