説明

ナノ複合体とその製造方法、ナノ複合電解質膜及びそれを用いた燃料電池

【課題】粘土を導入しながら、分子量の高い高分子を得て機械的強度、耐熱性及びイオン伝導性が向上したナノ複合体とその製造方法、ナノ複合電解質膜及びそれを用いた燃料電池を提供する。
【解決手段】スルホン化ポリスルホンと、スルホン化ポリスルホン内に分散されている非変性粘土とを含み、非変性粘土は、複数の層が積層された層状構造を有し、前記複数の層の間にスルホン化ポリスルホンがインターカレーションされているか、層が剥離されることを特徴とするナノ複合体である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ複合体とその製造方法、ナノ複合電解質膜及びそれを用いた燃料電池に係り、より詳細には、耐熱性及びイオン伝導性に優れたスルホン化ポリスルホン/粘土ナノ複合体、これを含むナノ複合電解質膜及びそれを用いた燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、公知の燃料電池は、使われる電解質の種類によって、高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane:PEM)、リン酸方式、溶融炭酸塩方式、固体酸化物方式などに分類されうる。そして、使われる電解質によって、燃料電池の作動温度及び構成部品の材質が変わる。
【0003】
粘土(clay)は、ナノスケールで高分子と分散する場合、寸法安定性、耐熱性、機械的強度及びバリアー特性のような既存の複合体で具現できないような優れた物性を示す。このような物性を利用した技術として、粘土を高分子を用いて複合体を形成する技術が開示されている(例えば、特許文献1及び特許文献2を参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2000−290505号公報
【特許文献2】特開2003−277610号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、粘土を導入して複合体を形成する場合、縮合重合の高いモノマー純度、モノマー反応性の制御、水分除去、温度制御が要求されるため、分子量の高い高分子を得るのが非常に困難であるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、前述した問題点に鑑みて、粘土を導入しながら、分子量の高い高分子を得て機械的強度、耐熱性及びイオン伝導性が向上したナノ複合体とその製造方法及びそれを用いたナノ複合電解質膜を提供することにある。
【0007】
本発明が達成しようとする他の技術的課題は、前記ナノ複合電解質膜を採用して燃料の効率、エネルギー密度などが向上した燃料電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するために、本発明の第1の観点によれば、スルホン化ポリスルホンと、前記スルホン化ポリスルホン内に分散されている非変性粘土とを含み、前記非変性粘土は、層状構造を有し、前記層の間にスルホン化ポリスルホンがインターカレーションされているか、前記層が剥離されることを特徴とするナノ複合体が提供される。
【0009】
前記非変性粘土は、複数の層が積層された層状構造を有し、前記複数の層の間にスルホン化ポリスルホンがインターカレーションされているか、前記層が剥離される。
【0010】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2の観点によれば、非変性粘土と、スルホン化ポリスルホン形成用の第1重合性モノマーと、スルホン化ポリスルホン形成用の第2重合性モノマーと、ジオール化合物とを混合し、これらを熱処理して重合反応を実施して、前述したナノ複合体を製造する方法が提供される。
【0011】
また、上記課題を解決するために、本発明の第3の観点によれば、スルホン化ポリスルホン形成用の第1重合性モノマーと、スルホン化ポリスルホン形成用の第2重合性モノマーと、ジオール化合物とを混合し、これらを熱処理して縮重合反応を実施する段階と、前記縮重合反応の結果物に非変性粘土を付加して混合する段階とを含み、上述したナノ複合体を得ることを特徴とするナノ複合体の製造方法が提供される。
【0012】
また、上記課題を解決するために、本発明の第4の観点によれば、スルホン化ポリスルホンを溶媒に溶解してスルホン化ポリスルホン溶液を準備する段階と、粘土を分散媒に分散して粘土分散液を得る段階と、前記スルホン化ポリスルホン溶液と前記粘土分散液とを混合する段階と、を含むことを特徴とするナノ複合体の製造方法が提供される。
【0013】
また、上記課題を解決するために、本発明の第5の観点によれば、前述したナノ複合体を含むナノ複合電解質膜が提供される。
【0014】
また、上記課題を解決するために、本発明の第6の観点によれば、カソード、アノード及びこれら間に位置する電解質膜を含む燃料電池において、前記電解質膜は、前述したナノ複合体を含むナノ複合電解質膜であることを特徴とする燃料電池が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のナノ複合体は、イオン伝導性に優れたスルホン化ポリスルホンに層状構造を有する非変性粘土がナノスケールで分散されて、イオン伝導度及び機械的物性が優秀である。このようなナノ複合体を用いて形成されたナノ複合電解質膜は、メタノールのような極性有機燃料の侵入を抑制する非常に向上した性能を有するだけでなく、優れたイオン伝導度を有する。本発明のナノ複合電解質膜を採用した燃料電池において、メタノール水溶液を燃料として使用する場合、メタノールのクロスオーバーがさらに抑制され、それにより、前記燃料電池の作動効率及び寿命が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
本発明のナノ複合体は、スルホン化ポリスルホンと、該スルホン化ポリスルホン内で分散されている非変性粘土とを含む。
【0018】
前記非変性粘土は、層間隔が極性溶媒(例えば、水)または挿入物(intercalant)によって膨脹する特性を有しているシリケートを包括する用語であって、有機ホスホニウム基などに改質された変性粘土に比べて、工程が単純なので、製造効率が高くて価格が安く、また、粘土は、メタノールに比べて親水性に優れた特性を保有しているため、膜内に剥離形態または挿入型で高ナノスケールで分散されている場合、少量の粘土を使用してもメタノールクロスオーバーを抑制し、粘土の吸収特性によって無機物質の追加による膜の伝導性減少を最小化する構造を有するため、さらに有利である。
【0019】
前記粘土の含量は、ナノ複合体100質量部を基準として0.1〜50質量部である。もし、粘土の含量が0.1質量部未満であれば、粘土効果のバリアー特性を期待できず、50質量部を超えれば、粘度が高く、もろい(brittle)ため望ましくない。
【0020】
本発明で使われる非変性粘土の具体的な例としては、スメクタイト系粘土を使用する。スメクタイト系粘土の具体的な例としては、モンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト、ステベンサイトなどがある。
【0021】
本発明のナノ複合体は、層状構造を有する粘土がスルホン化ポリスルホン内に均一に分散されているだけでなく、前記層状構造を有する粘土の層間に前記スルホン化ポリスルホンがインターカレーションされている。ある場合には、前記各層の層間距離が大きくなって、前記各層が剥離された状態で存在することもある。
【0022】
層状構造を有する粘土の各層がイオン化伝導性に優れたスルホン化ポリスルホンによって挿入された状態で前記高分子内に分散されているか、または前記各層が剥離された状態で前記高分子内に分散されている本発明のナノ複合体は、機械的強度、耐熱性及びイオン伝導度特性が非常に優れている。また、一度水に含湿された後には、メタノール、エタノールのような極性有機燃料がその中へ侵入することを抑制する。したがって、このようなナノ複合体は、極性有機燃料のクロスオーバーを抑制できるので、極性有機燃料を直接アノードに供給する方式の燃料電池の電解質膜形成材料として非常に有用である。
【0023】
前記スルホン化ポリスルホンとして、下記化学式1で表示される化合物が挙げられる。
【0024】
【化1】

【0025】
前記式中、Rは、互いに同一または異なり、C1−C10のアルキル基、C2−C10のアルケニル基、フェニル基、またはニトロ基であり、pは、0〜4の整数であり、Xは、−C(CF−、−C(CH−または−P(=O)Y’−(Y’は、HまたはCである)であり、Mは、Na、K、またはHであり、mは、0.1〜10で、nは、0.1〜10であり、kは、5〜500の数である。
【0026】
前記化学式1で、mとnとの比は、それぞれSOM基を有していないスルホン化スルホン反復単位及びSOM基を有しているスルホン化スルホン反復単位の混合比を示し、この混合比によって、化学式1のスルホン化ポリスルホンのイオン伝導度のような特性が大きく変化する。望ましくは、mは、0.1〜4であり、nは、0.1〜4である場合にイオン伝導性に優れる。
【0027】
前記化学式1において、pが0である場合は、水素である場合を意味する。
【0028】
前記化学式1で表示される化合物の例として、下記化学式2で表示される化合物がある。
【0029】
【化2】

【0030】
前記式中、mは、0.1〜4であり、nは、0.1〜4であり、kは、5〜500の数である。
【0031】
前記化合物は、粘土と強い引力を形成するS=O、S−O基を有し、粘土層と高分子間の相互作用は十分であり、分子の末端に官能基が存在して、付加的に高分子末端に粘土との相互作用が増大する。
【0032】
粘土の層間に含まれる陽イオン(Na、Kなど、ここでは、Na陽イオン)と交換反応(陽イオン交換反応)して、粘土と強い引力を形成するアミノ基と、粘土層の表面とファン・デル・ワールス(Van der Waals)力、極性及びイオン相互作用を形成できる官能基(例えば、ベンジル基、メチル基、サルフェート、カルボニル基、アミド基)のうち選択された一つ以上を有する化合物で前記化学式1のスルホン化ポリスルホンの両末端がエンドキャップして粘土と強く相互作用(置換性含み)する構造を有しうる。すなわち、本発明の一実施形態における「粘土との置換性が付与される」とは、粘土との相互作用が強く起こることを意味する。
【0033】
前記粘土改質剤の具体的な例として、2−アセトアミドフェノール、3−アセトアミドフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、3−エチルフェノール、2−アミノ−4−クロロフェノール、6−アミノ−2,4−ジクロロ−3−メチルフェノール、4−アミノ−3−メチルフェノール、2−アミノ−3−ニトロフェノール、2−アミノフェノール、2−sec−ブチルフェノール、3−アミノフェノール、3−ジエチルアミノフェノール、4、4’−スルホニルジフェノール、2−メチル−3−ニトロフェニル、3−tert−ブチルフェノール、2,3−ジメトキシフェノール、4−アミノ−2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチル−4−ニトロフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−アミノ−4−tert−ブチルフェノール、2−tertブチル−4−メチルフェノール、4−tert−ブチル−2−メチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、5−イソプロピル3−メチルフェノール、4−(メチルアミノ)フェノールサルフェート、4−sec−ブチルフェノール、3−メトキシフェノール、3,5−ジメチルチオフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、3−(N,N’−ジエチルアミノ)−フェノール、2,6−ジメトキシフェノール、4−アセトアミノフェノール、2−アミノ−4−メチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、またはその混合物が挙げられる。
【0034】
本発明のナノ複合体は、後述する3つの方法によって製造可能である。
【0035】
第1に、水分を除去した非変性粘土をスルホン化ポリスルホン形成用の第1重合性モノマー(以下、“第1重合性モノマー”と称する)、スルホン化ポリスルホン形成用の第2重合性モノマー(以下、“第2重合性モノマー”と称する)及びジオール化合物(第3モノマー)と混合してインシチュ(in−situ)重合反応を実施する方法がある。
【0036】
第2に、まず、第1重合性モノマー、第2重合性モノマー、ジオール化合物を混合して重合反応を実施した後、重合末期に水分を除去した非変性粘土を付加する方法がある。
【0037】
第3に、第1重合性モノマー、第2重合性モノマー、ジオール化合物を混合して重合反応を実施してスルホン化ポリスルホンを得た後、これを溶媒に溶解して得たスルホン化ポリスルホン溶液と非変性粘土を溶媒に分散した粘土分散液とを攪拌する方法がある。
【0038】
以下、図1〜図3を参照して、前記3つの製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0039】
前述した第1の製造方法は、図1に示したように非変性粘土の水分を除去した後、これを分散媒に分散して粘土分散液を得て、この粘土分散液と化学式3の第1重合性モノマー、化学式4の第2重合性モノマー、化学式5のジオール化合物、溶媒及び塩基とを混合する。ここで、分散媒としては、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを使用し、分散媒の含量は、粘土100質量部を基準として50〜1000質量部を使用することが粘土が均一に分散されていて望ましい。
【0040】
前記第1重合性モノマーとしては、図1に示していないが、化学式3の化合物以外に4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、1,3−ジクロロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼンのような化合物を使用することも可能である。このような化合物を使用しても化学式4の重合性モノマーと混合して反応すれば、目的とするポリスルホンが得られる。
【0041】
前記溶媒としては、トルエン、ベンゼン、キシレンなどを使用し、その含量は、第1重合性モノマー(ハロゲン化アシル)、第2重合性モノマー(サルフェートハロゲン化アシル)と第3重合成モノマー(ジオール化合物)総質量100質量部に対して50〜500質量部を使用することが望ましい。
【0042】
前記塩基としては、炭酸カリウム(KCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)などを使用し、その含量は、第3重合成モノマー1モルを基準として0.5〜3モルを使用する。
【0043】
粘土は、下記過程によって洗浄する。
【0044】
粘土に含まれた不純物を除去するために蒸溜水を粘土と共に容器に入れて、100rpmでボールミリングを3日以上実施する。その後、粘土を遠心分離して3次蒸溜水で洗浄した後に再分散し、遠心分離して洗浄する。(3回以上)洗浄した粘土を加熱するか、または凍結乾燥して乾燥した後、乾燥されたものを粉砕して粉末形態で保管する。
【0045】
前記非変性粘土の水分除去時、最初の常圧(760mmHg)で5時間以上100℃で加熱する方法と、2番目の減圧で60℃以上で4時間以上加熱する方法を使用し、粘土の含量は、ナノ複合体100質量部またはモノマー総質量100質量部を基準として、0.1〜50質量部である。ここで、モノマーの総質量は、化学式3の第1重合性モノマー、化学式4の第2重合性モノマー、化学式5のジオール化合物の総質量を意味する。もし、粘土の含量が0.1質量部未満であれば、粘土効果のバリアー特性を期待できず、50質量部を超えれば、粘度が高く、もろくて望ましくない。
【0046】
【化3】

【0047】
前記式中、R及びpは、前記化学式1で定義した通りであり、Yは、Cl、Br、またはIである。
【0048】
【化4】

【0049】
前記式中、Mは、前記化学式1で定義した通りであり、Yは、Cl、F、Br、またはIである。
【0050】
【化5】

【0051】
前記式中、R、X及びpは、前記化学式1で定義した通りである。
【0052】
前記第1重合性モノマーの具体的な例として、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホンなどがあり、前記第2重合性モノマーの具体的な例として、サルフェート4,4’−ジクロロジフェニルスルホン(sulfated−4,4’dichlorodiphenyl sulfone:S−DCDPS)などがある。
【0053】
前記ジオール化合物の具体的な例として、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール(hexafluoroisopropylidene)diphenol :HFIPDP)、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−チオジフェノール、3、3’−(エチレンジオキシ)ジフェノール、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、4,4’−(1,3−アダマンタンジイル)ジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、3、4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−(9−フルオレニリデン)ジフェノール、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフェノール、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、4,4’−スルホニルジフェノール、4,4’−チオジフェノール、ビスフェノール−A、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンなどがある。
【0054】
前記重合温度は、望ましくは求核反応(nucleophilic reaction)過程で発生する水をトルエンと還流しながら除去できる温度であり、100〜180℃、望ましくは、120〜160℃で加熱する第1段階と、140〜195℃、望ましくは、160〜180℃で加熱する第2段階とを順次実施する。または、140℃で還流後(4時間)に160℃に昇温してから4時間以上維持し、180℃に昇温してから4時間維持して重合を実施する。
【0055】
前記第1段階は、生成された水を除去してポリスルホン形成用の前駆体が形成される工程であり、前記第2段階は、重合が本格的に進行する工程であって、重合の進行によって粘度が上昇する。
【0056】
次に、前記混合物を熱処理して重合反応を実施し、その結果物を冷却後、エタノール、蒸溜水などに沈殿する過程のようなワークアップ過程を経て、ナノ複合体を得ることができる。
【0057】
前記第2重合性モノマー(sulfonated dihalide)の含量は、第1重合性モノマー(dihalide)1モルを基準として0.1〜3モルであることが望ましい。もし、第2重合性モノマーの含量が0.1モル未満であれば、イオン伝導性が低く、3モルを超えれば、高分子の水による膨潤が過度に発生して、膜を形成するのが難しいため望ましくない。
【0058】
前記ジオール化合物の含量は、前記第1重合性モノマーと第2重合性モノマーの総モル数1モルを基準として0.7〜1.3モルであることが望ましい。もしジオール化合物の含量が前記範囲を逸脱する場合、重合反応の反応性面で望ましくない。
【0059】
前記製造過程において、スルホン化ポリスルホンの両末端に非変性粘土と、第1重合性モノマー、第2重合性モノマーの混合物にアミノ基及びメチル基のうち選択された一つ以上の群を有する粘土改質剤を付加してもよい。
【0060】
前記アミノ基及びメチル基のうち選択された一つ以上の群を有する化合物の含量は、化学式3の第1重合性モノマー、化学式4の第2重合性モノマー及び化学式5のジオール化合物の総モル数1モルを基準として0.001〜0.5モルであることが望ましい。もし、前記アミノ基及びメチル基のうち選択された一つ以上の群を有する化合物の含量が0.001モル未満であれば、粘土と接触できる数が少ないので効果がなく、0.5モルを超えれば、分子量が増加しないため望ましくない。
【0061】
第2の製造方法を説明すると、まず、前記化学式3の第1重合性モノマー、化学式4の第2重合性モノマー、化学式5のジオール化合物と溶媒とを混合し、これを加熱して重合反応を実施する。ここで、加熱条件、溶媒、第1重合性モノマー、2重合性モノマー及び第3重合性モノマー、ジオール化合物の含量及びその種類は、第1の製造方法で記載した通りである。
【0062】
前記重合反応の末期に必要によって粘土改質剤を付加し、これを50〜195℃で重合して高分子末端に存在するようにする。もし、熱処理温度が195℃を超えれば、逆重合反応が起きて所望の分子量を有するナノ複合体を得難く、50℃未満であれば、反応性が低下するため望ましくない。
【0063】
前記結果物を20〜150℃で冷却した後、ここに非変性粘土を分散媒に分散して得た粘土分散液を付加し、これを70℃で6〜48時間、特に約24時間攪拌する。次に、前記結果物を蒸溜水に沈殿するワークアップ過程を経て、本発明のナノ複合体を得ることができる。
【0064】
粘土改質剤、非変性粘土、分散媒の種類及び含量は、前記第1の方法で記載した通りである。
【0065】
第3の製造方法は、次の通りである。
【0066】
まず、化学式3の第1重合性モノマー、化学式4の第2重合性モノマー、化学式5のジオール化合物と溶媒とを混合し、これを熱処理して重合反応を実施して化学式1のスルホン化ポリスルホンを製造する。ここで、重合温度は、例えば、室温(20℃)〜50℃の範囲である。
【0067】
前記化学式1のスルホン化ポリスルホンを溶媒に溶解した後、ここに非変性粘土を分散媒に分散して得た粘土分散液を付加し、これを室温(20℃)〜100℃で6〜48時間、特に約24時間強く攪拌する。ここで、溶媒としては、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどを使用し、その含量は、化学式1のスルホン化ポリスルホン100質量部を基準として100〜600質量部である。
【0068】
次に、前記結果物を蒸溜水に沈殿するワークアップ過程を経て、本発明のナノ複合体を得ることができる。
【0069】
第3の製造方法によってナノ複合体を製造する場合、粘土改質剤を付加する場合、高分子重合が終了する時点で添加して製造する。この時、粘土改質剤の種類及び含量は、前述した通りである。
【0070】
前記過程によって得た本発明のスルホン化ポリスルホンの質量平均分子量は、20000〜500000であり、数平均分子量は10000〜300000であって、高分子量の高分子である。もし、質量平均分子量または数平均分子量が前記範囲未満である場合には、成膜性が低下して電解質膜を得難く、前記範囲を超過する場合には、溶液粘度が高くて移送またはコーティング関連の作業性が悪くなって望ましくない。
【0071】
本発明のナノ複合体は、X線回折分析結果を通じて構造確認が可能である。
【0072】
非変性粘土の乾燥状態で回折パターンは、2θ値で7.8゜(層間隔は、1.14Åである)で現れ、層間隔が広くなる場合にX線回折パターンが2θ値が1.2(機械の下限値)範囲まで移動し、最終的には回折パターンがなくなる(剥離された構造)。X線試料は、粉末または薄膜状態でCuK−α特性X線波長(1.541Å)を室温(20℃)及び空気中で測定する。
【0073】
X線回折分析結果を見ると、粘土の001面のピークがなくなるか(剥離型)または消却に移動した場合(挿入型構造)を確認することができる。
【0074】
本発明のナノ複合体を利用すれば、燃料電池のナノ複合電解質膜を形成できるが、その製造方法を説明すれば、次の通りである。
【0075】
前記過程によって得たナノ複合体及び溶媒を混合して得たナノ複合電解質膜形成用の組成物をキャスティングまたはコーティング方法によって、ナノ複合電解質膜を形成する。ここで、溶媒としては、ジメチルアセトアミドを使用し、その含量は、ナノ複合体100質量部を基準として100〜600質量部である。もし溶媒の含量が前記範囲を逸脱すれば、キャスティングまたはコーティング時に作業性が不良であるだけでなく、ナノ複合電解質膜の機械的物性などの特性が低下して望ましくない。
【0076】
場合によっては、スルホン化ポリスルホンの末端にOH基が存在するように調節したナノ複合体を溶媒に溶解した後、これをジイソシアネート及びポリアルコールを添加し、これをキャスティングまたはコーティングする過程を経て、ナノ複合電解質膜を形成できる。このように、ジイソシアネート及びポリアルコールを利用すれば、成膜性に優れて作業が便利であるというメリットがあり、特に、スルホン化ポリスルホンの分子量が10000以下である場合に適用すれば、膜形成が非常に容易になり、膜の機械的強度が改善される。
【0077】
前記ジイソシアネートの具体的な例として、p−フェニレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、シクロメタンジイソシアネートなどがあり、その含量は、スルホン化ポリスルホン100質量部を基準として0.1〜10質量部である。そして、前記ポリアルコールの具体的な例として、ポリ(2−メタクリル酸ヒドロキシエチル)などを使用し、ポリアルコールの含量は、スルホン化ポリスルホン100質量部を基準として0.1〜10質量部である。
【0078】
本発明のナノ複合電解質膜の厚さは、特別な制限はないが、前記厚さが薄過ぎると、ナノ複合電解質膜の強度が過度に低下し、前記厚さが厚過ぎると、燃料電池の内部抵抗が過度に増加しうる。このような点を考慮して前記ナノ複合電解質膜の厚さは、約30〜約200μm程度にしうる。
【0079】
以下では、本発明のナノ複合電解質膜を採用した燃料電池の具体例について説明する。
【0080】
本発明のナノ複合電解質膜は、ポリマー電解質を含む電解質膜を使用する全ての種類の燃料電池、例えば、水素を燃料として使用するPEMFC(polymer electrolyte membrane fuel cell)に適用され、PEMFCの特殊な形態として、メタノールと水の混合蒸気、またはメタノール水溶液を燃料として使用する直接メタノール燃料電池にも適用されうる。特に、メタノール水溶液を燃料として使用する直接メタノール燃料電池にさらに有用である。
【0081】
本発明では、酸素の還元反応が起きるカソード、燃料の酸化反応が起きるアノード及び前記カソードと前記アノードとの間に位置する電解質膜を含む燃料電池において、前記電解質膜として前述した本発明によるナノ複合電解質膜を使用する燃料電池を提供する。
【0082】
前記カソードは、酸素の還元反応を促進させる触媒層を含む。前記触媒層は、触媒粒子と陽イオン交換基を有するポリマーを含む。前記触媒としては、例えば、炭素担持白金触媒(Pt/C触媒)が使われうる。
【0083】
前記アノードは、水素、天然ガス、メタノール、エタノールのような燃料の酸化反応を促進させる触媒層を含む。前記触媒層は、触媒粒子と陽イオン交換基を有するポリマーを含む。前記触媒の具体的な例としては、炭素担持白金触媒、炭素担持白金−ルテニウム触媒などがある。特に、炭素担持白金−ルテニウム触媒は、水素以外の有機燃料をアノードに直接供給する場合に有用である。
【0084】
前記カソードとアノードに使われる触媒は、触媒金属粒子と触媒担体とを含む。前記触媒担体としては、例えば、炭素粉末のように、伝導性を有し、触媒金属粒子を担持できる微細気孔(micropore)を有する固体粒子が使われうる。炭素粉末の例としては、カーボンブラック、ケチェンブラック、アセチレンブラック、活性炭素粉末、炭素ナノ繊維粉末、またはこれらの混合物などがある。陽イオン交換基を有するポリマーとしては、前述したポリマーが使われうる。
【0085】
前記カソードとアノードの触媒層は、前記ナノ複合電解質膜と接触している。
【0086】
前記カソードとアノードとは、触媒層以外にガス拡散層をさらに含むことができる。ガス拡散層は、電気伝導性を有する多孔性材料を含む。ガス拡散層は、集電体の役割と反応物及び生成物の出入通路の役割を行う。ガス拡散層としては、例えば、カーボンペーパー、さらに望ましくは、撥水処理されたカーボンペーパー、さらに望ましくは、撥水処理されたカーボンブラック層が塗布された撥水処理されたカーボンペーパーでありうる。撥水処理されたカーボンペーパーは、PTFE(polytetrafluoroethylene)のような疏水性高分子を含んでおり、前記疏水性高分子は、焼結されている。ガス拡散層の撥水処理は、極性液体反応物と気体反応物とに対する出入通路を同時に確保するためのものである。撥水処理されたカーボンブラック層を有する撥水処理されたカーボンペーパーにおいて、撥水処理されたカーボンブラック層は、カーボンブラックと、疏水性バインダとしてPTFEのような疏水性高分子を含んでおり、前述したような撥水処理されたカーボンペーパーの一面に付着されている。撥水処理されたカーボンブラック層の前記疏水性高分子は焼結されている。
【0087】
前記カソードとアノードの製造は、いろいろな文献に公知された多様な方法によってなされうるので、その詳細な説明は省略する。
【0088】
本発明の燃料電池のアノードに供給されうる燃料は、水素、天然ガス、メタノール、エタノールなどを含むことができる。
【0089】
さらに望ましくは、極性有機燃料及び水を含む液状燃料を前記アノードに供給できる。前記極性有機燃料としては、例えば、メタノール、エタノールなどが使われうる。
【0090】
さらに望ましくは、前記液状燃料は、メタノール水溶液である。本発明の燃料電池は、前記ナノ複合電解質膜によって極性有機燃料のクロスオーバー現象が大いに抑制されるので、一層高濃度のメタノール水溶液を使用できる。このような点は、従来の直接メタノール燃料電池では、メタノールクロスオーバー現象のため、一般的に6〜16質量%の低濃度メタノール水溶液を使用することと明確に対照的である。また、低濃度のメタノール水溶液を使用する場合でも、前記ナノ複合電解質膜によって極性有機燃料のクロスオーバー現象がさらに抑制されるので、本発明の燃料電池は、さらに向上した寿命及び効率を有する。
【実施例】
【0091】
以下では、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、本発明の技術的思想が下記の実施例に限定されるものではない。
【0092】
(実施例1−1:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
S−DCDPS(0.1mole)、DCDPS(0.35mole)、HFIPDP(0.459mole)、非変性粘土であるモンモリロナイト(モノマー総質量100質量部に対して3質量部)、炭酸カリウム(0.55mole)を用いて、NMP(120ml)及びトルエン(100ml)を溶媒として使用して160℃で12時間還流して形成された水を除去した後、それ以上水がディーンストック(dean stock)を通じて出ないことを確認し、トルエンをバルブを通じて除去した。次に、2時間にわたって反応混合物の温度を180℃に昇温させた後に4時間重合反応を実施した。
【0093】
重合の進行につれて溶液の粘度が上昇した。重合が終わった後、重合物を室温(20℃)に冷却させた後、3次蒸留水(1000ml)に注ぎ込んで沈殿を得て、これを3回洗浄して乾燥した。
【0094】
前記過程によって得るナノ複合体70質量部をジメチルアセトアミド30質量部に溶解した後、100メッシュで溶解されていない部分を除去した。次に、前記結果物を濾過した後、濾過された溶液を40質量%で加熱濃縮して粘度を調節した後、ここにフェニルイソシアネート2質量部を付加してナノ複合電解質膜形成用の組成物を得た。
【0095】
このように得られた組成物をガラス板上にメイヤーバー(mayor bar)を用いてコーティングした後、これを60℃、80℃、120℃、150℃及び170℃に順次に加熱して乾燥することによって、約50μm厚さのナノ複合電解質膜を完成した。
【0096】
(実施例1−2:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
粘土の含量が5質量部であることを除いては、実施例1−1と同じ方法によって実施してナノ複合電解質膜を形成した。
【0097】
(実施例1−3:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
DCDPSの含量が0.407モルであり、HFIPDPの含量が0.56モルであり、炭酸カリウムの含量が0.672モルであり、4−アミノフェノール(AP)の含量が0.00357モルを付加したことを除いては、実施例1−1と同じ方法によって実施してナノ複合電解質膜を形成した。
【0098】
(実施例1−4:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
粘土含量が10質量部であることを除いては、実施例1−1と同じ方法によって実施してナノ複合電解質膜を形成した。
【0099】
(実施例1−5:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
DCDPSの含量が0.25モルであり、HFIPDPの含量が0.357モルであり、炭酸カリウムの含量が0.428モルであり、4−アミノフェノール0.00357モルを付加したことを除いては、実施例1−1と同じ方法によって実施してナノ複合電解質膜を形成した。
【0100】
(実施例1−6:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
DCDPSの含量が0.25モルであり、HFIPDPの含量が0.357モルであり、粘土含量が5質量部であることを除いては、実施例1−1と同じ方法によって実施してナノ複合電解質膜を形成した。
【0101】
(実施例1−7:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
DCDPSの含量が0.19モルであり、HFIPDPの含量が0.305モルであることを除いては、実施例1−1と同じ方法によって実施してナノ複合電解質膜を形成した。
【0102】
(実施例2−1:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
S−DCDPS(0.1mole)、DCDPS(0.35mole)、HFIPDP(0.459mole)、炭酸カリウム(0.55mole)を用いて、NMP(120ml)及びトルエン(100ml)を溶媒として使用して160℃で12時間還流して形成された水を除去した後、それ以上水がディーンストックを通じて出ないことを確認し、トルエンをバルブを通じて除去した。次に、2時間にわたって反応混合物の温度を180℃に昇温させた後、4時間重合反応を実施した。
【0103】
その後、重合基の温度を70℃に冷却させてから、非変性粘土のモンモリロナイト(モノマー総質量100質量部に対して3質量部)を重合器に注入し、同じ温度で24時間追加的に反応した。高分子の回収及び処理は、実施例1−1と同じである。
【0104】
(実施例2−2:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
DCDPSの含量が0.25モルであり、HFIPDPの含量が0.357モルであり、4−アミノフェノール(AP)0.00357モルを付加したことを除いては、実施例2−1と同じ方法によって実施してナノ複合電解質膜を形成した。
【0105】
(実施例2−3:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
4−アミノフェノールを付加しないことを除いては、実施例2−2と同じ方法によって実施してナノ複合電解質膜を形成した。
【0106】
(実施例3:ナノ複合体及びナノ複合電解質膜の製造)
第3の製造方法によってナノ複合体を製造する場合、粘土改質剤を付加する場合、高分子重合が終了する時点に添加して製造する。この時、粘土改質剤の種類及び含量は前述した通りである。
【0107】
S−DCDPS(0.1mole)、DCDPS(0.35mole)、HFIPDP(0.459mole)、炭酸カリウム(0.55mole)を用いて、NMP(120ml)及びトルエン(100ml)を溶媒として使用して160℃で12時間還流して形成された水を除去した後、それ以上水がディーンストックを通じて出ないことを確認し、トルエンをバルブを通じて除去した。次に、2時間にわたって反応混合物の温度を180℃に昇温させた後、4時間重合反応を実施した。
【0108】
重合の進行につれて溶液の粘度が上昇した。重合が終わった後、重合物を室温(20℃)に冷却させた後、3次蒸留水(1000ml)に注ぎ込んで沈殿を得て、これを3回洗浄して乾燥してポリスルホンを合成した。
【0109】
前記ポリスルホン70質量部をジメチルアセトアミド30質量部に溶解した。
【0110】
次に、前記ポリスルホン溶液に非変性粘土のモンモリロナイト(モノマー総質量100質量部に対して3質量部)をジメチルアセトアミドに分散した粘土分散液を添加し、これを約70℃で24時間以上強く攪拌した後、これを100メッシュで溶解されていない部分を除去した。
【0111】
次に前記結果物を濾過した後、濾過された溶液を40質量%で加熱濃縮して粘度を調節した後、ここにフェニルイソシアネート2質量部を付加してナノ複合電解質膜形成用の組成物を得た。
【0112】
このように得られた組成物をガラス板上にメイヤーバーを用いてコーティングした後、これを60℃、80℃、120℃、150℃及び170℃に順次に加熱して乾燥することによって、約50μm厚さのナノ複合電解質膜を完成した。
【0113】
(比較例1)
比較例1は、粘土を添加しないことを除いては、実施例1−1と同じ過程によって実施した。
【0114】
S−DCDPS(0.1mole)、DCDPS(0.35mole)、HFIPDP(0.459mole)、炭酸カリウム(0.55mole)を用いて、NMP(120ml)及びトルエン(100ml)を溶媒として使用して160℃で12時間還流して形成された水を除去した後、それ以上水がディーンストックを通じて出ないことを確認し、トルエンをバルブを通じて除去した。次に、2時間にわたって反応混合物の温度を180℃に昇温させた後、4時間重合反応を実施した。
【0115】
【化6】

【0116】
(比較例2)
S−DCDPS(0.1mole)、DCDPS(0.1mole)、HFIPDP(0.204mole)、炭酸カリウム(0.2448mole)を使用して、比較例1と同じ条件で重合した。
【0117】
(比較例3)
DCDPS(0.25mole)、HFIPDP(0.357mole)、炭酸カリウム(0.4284mole)であることを除いては、比較例1と同じ条件で重合した。
前記実施例1−1によって得たナノ複合体の核磁気共鳴スペクトル(NMR)分析を実施してその構造を確認し、その分析結果は、図4〜図6に示した。
【0118】
図4を参照すれば、2,3,4−ピーク面積を用いて、高分子内に存在する各モノマーの比率を確認し、図4を参照して8.3ppm(sulfonated DCDPS proton)、8.0ppm(DCDPS proton)、7.43ppm(HFIPDP proton)で各ピークの面積比で合成された高分子の比率を確認することができた。
【0119】
図6には、前記実施例1によって得たナノ複合体のDOSY−NMR分析結果を示した図面である。これを参照すれば、DOSYを用いて合成された実施例で合成された高分子は、粘土が存在しても共重合体で存在することを確認し、分子量分布もゲル透過クロマトグラフィーを通して確認することができた。
【0120】
一方、S−DCDPS、DCDPS及びHFIPDP(0.459mole)の含量が下記表1の組成によって使用したことを除いては、実施例1−1と同じ方法によってナノ複合体を製造し、これらのナノ複合体のX線回折分析を実施し、その結果を図7に表した。
【0121】
【表1】

【0122】
前記実施例2−2〜3によって製造されたナノ複合体のX線回折分析を実施し、その結果を図8に示した。
【0123】
図7及び図8に示されているように、粘土の(001)面の規則性によるピークが現れずに剥離構造を表している。
【0124】
前記実施例1−1及び比較例1のナノ複合体の熱重量分析を実施し、その結果を図9に示した。
【0125】
前記実施例及び比較例によって製造されたナノ複合体の分子量及び多分散性指数(Mw/Mn)を調べて、下記表2に示した。
【0126】
【表2】

【0127】
前記表1から粘土が存在するにもかかわらず高分子が得られることを確認することができた。
【0128】
前記実施例1−7、2−1、2−3及び比較例1によって得たナノ複合電解質膜のイオン伝導度を、4点探針法を用いて、25℃、50℃及び75℃の温度で測定した。その結果を下記表3に示す。
【0129】
【表3】

【0130】
前記表3から、実施例が粘土が含まれるにもかかわらず、伝導度が高いことを確認することができた。
【0131】
(実施例3−ナノ複合電解質膜を採用した燃料電池)
前記実施例1−1で得たナノ複合電解質膜、白金−ルテニムム触媒を有するアノード、白金触媒を有するカソードを接合して燃料電池を構成した。
【0132】
前記燃料電池について電流密度による電池電圧の変化を測定し、その結果を図1に示した。この時、作動温度は、約50℃であり、燃料は、2M濃度のメタノール水溶液であり、酸化剤としては、空気を使用した。
【0133】
(比較例4)
ナノ複合電解質膜の代りにデュポン社のナフィオン115を使用したことを除いては、実施例2と同じ燃料電池を製造し、実施例2と同じ条件下で電流密度による電池電圧の変化を測定した、
【0134】
(評価結果1−メタノール侵入抑制性能評価)
ナノ複合電解質膜にメタノールが侵入すれば、ナノ複合電解質膜の体積が増加して膨潤現象が発生する。ナノ複合電解質膜のメタノール侵入抑制性能は、ナノ複合電解質膜をメタノール水溶液に浸して膨潤の程度を測定することによって評価できる。
【0135】
実施例1−1及び比較例1で得たナノ複合電解質膜を4M濃度のメタノール水溶液と、メタノールと水とのモル比が1:1であるメタノール水溶液とにそれぞれ2時間浸した後、ナノ複合電解質膜の体積増加量を測定した。ここで、体積増加量は、メタノール水溶液に浸す前の電解質膜の体積を基準とした、電解質膜の体積増加分の百分率である。
【0136】
その結果、実施例1−1のナノ複合電解質膜の体積増加量が比較例1の体積増加量よりはるかに小さいことが分かる。これは、本発明のナノ複合電解質膜が向上したメタノール侵入抑制性能を有することを示す。当業者ならば、このような効果は、エタノールのような極性有機燃料に対しても発揮できるということを理解できるであろう。したがって、本発明のナノ複合電解質膜を採用した燃料電池にメタノール水溶液を燃料として供給する場合に、メタノールのクロスオーバーが抑制でき、それによって、前記燃料電池の作動効率及び寿命が向上する。
【0137】
(評価結果2−燃料電池性能比較)
調査の結果、同じ電流密度で実施例2の電圧が比較例1の電圧よりはるかに高いということがわかった。電圧がさらに高いということは、作動効率がさらに高いということを意味する。これは、本発明のナノ複合電解質膜がメタノールのクロスオーバーを非常に抑制するだけでなく、優れたイオン伝導度を有していることを示す。
【0138】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0139】
本発明は、燃料電池関連の技術分野に好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】本発明の第1の製造方法によるナノ複合体製造過程を説明するための図面である。
【図2】本発明の第2の製造方法によるナノ複合体製造過程を説明するための図面である。
【図3】本発明の第3の製造方法によるナノ複合体製造過程を説明するための図面である。
【図4】本発明の実施例1−1によって得たナノ複合体の核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す図面である。
【図5】本発明の実施例1−1によって得たナノ複合体の核磁気共鳴(NMR)スペクトルを示す図面である。
【図6】本発明の実施例1−1によって得たナノ複合体のDOSY−NMRスペクトルを示す図面である。
【図7】本発明の一実施例によって得たナノ複合体のX線回折分析の結果を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施例によって得たナノ複合体のX線回折分析の結果を示すグラフである。
【図9】本発明の実施例1−1及び比較例1によって得たナノ複合体の熱重量分析の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スルホン化ポリスルホンと、
前記スルホン化ポリスルホン内に分散されている非変性粘土と、
を含み、
前記非変性粘土は、複数の層が積層された層状構造を有し、前記複数の層の間にスルホン化ポリスルホンがインターカレーションされているか、前記層が剥離されることを特徴とする、ナノ複合体。
【請求項2】
前記スルホン化ポリスルホンは、下記化学式1で表示されることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【化1】

前記式中、Rは、互いに同一または異なり、C1−C10のアルキル基、C2−C10のアルケニル基、フェニル基、またはニトロ基であり、
pは、0〜4の整数であり、
Xは、−C(CF−、−C(CH−または−P(=O)Y’−(Y’は、HまたはCである)であり、
Mは、Na、K、またはHであり、
mは、0.1〜10であり、nは、0.1〜10であり、kは、5〜500の数である。
【請求項3】
前記スルホン化ポリスルホンは、下記化学式2で表示されることを特徴とする、請求項2に記載のナノ複合体。
【化2】

前記式中、mは、0.1〜4であり、nは、0.1〜4であり、
kは、5〜500の数である。
【請求項4】
前記スルホン化ポリスルホンの両末端が粘土改質剤でエンドキャップされて、前記非変性粘土との置換性が付与されたことを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項5】
前記粘土改質剤は、2−アセトアミドフェノール、3−アセトアミドフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、3−エチルフェノール、2−アミノ−4−クロロフェノール、6−アミノ−2,4−ジクロロ−3−メチルフェノール、4−アミノ−3−メチルフェノール、2−アミノ−3−ニトロフェノール、2−アミノフェノール、2−sec−ブチルフェノール、3−アミノフェノール、3−ジエチルアミノフェノール、4、4’−スルホニルジフェノール、2−メチル−3−ニトロフェニル、3−tert−ブチルフェノール、2,3−ジメトキシフェノール、4−アミノ−2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチル−4−ニトロフェノール、4−sec−ブチルフェノール、4−イソプロピルフェノール、2−アミノ−4−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチル−4−メチルフェノール、4−tert−ブチル−2−メチルフェノール、4−tert−ブチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2−アミノ−5−ニトロフェノール、5−イソプロピル−3−メチルフェノール、4−(メチルアミノ)フェノールサルフェート、4−sec−ブチルフェノール、3−メトキシフェノール、3,5−ジメチルチオフェノール、3,5−ジメチルフェノール、2−アミノフェノール、3−アミノフェノール、4−アミノフェノール、3−(N,N’−ジエチルアミノ)−フェノール、2,6−ジメトキシフェノール、4−アセトアミノフェノール、2−アミノ−4−メチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、またはそれらの混合物であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項6】
前記非変性粘土は、スメクタイト系粘土であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項7】
前記スメクタイト系粘土は、モンモリロナイト、ベントナイト、サポナイト、バイデライト、ノントロナイト、ヘクトライト及びステベンサイトからなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする、請求項6に記載のナノ複合体。
【請求項8】
数平均分子量が10000〜300000であり、質量平均分子量が20000〜500000であることを特徴とする、請求項1に記載のナノ複合体。
【請求項9】
非変性粘土と、スルホン化ポリスルホン形成用の第1重合性モノマーと、スルホン化ポリスルホン形成用の第2重合性モノマーと、ジオール化合物とを混合し、これらを熱処理して重合反応を実施して請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のナノ複合体を得ることを特徴とする、ナノ複合体の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理は、
100〜160℃で還流して生成された水を除去する第1段階と、
140〜195℃で加熱して重合反応を実施する第2段階と、
を含むことを特徴とする、請求項9に記載のナノ複合体の製造方法。
【請求項11】
非変性粘土と、スルホン化ポリスルホン形成用の第1重合性モノマーと、スルホン化ポリスルホン形成用の第2重合性モノマーとの混合物に粘土改質剤を付加することを特徴とする、請求項9に記載のナノ複合体の製造方法。
【請求項12】
スルホン化ポリスルホン形成用の第1重合性モノマーと、スルホン化ポリスルホン形成用の第2重合性モノマーと、ジオール化合物とを混合し、これらを熱処理して縮重合反応を実施する段階と、
前記縮重合反応の結果物に非変性粘土を付加して混合する段階と、
を含み、
請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のナノ複合体を得ることを特徴とする、ナノ複合体の製造方法。
【請求項13】
前記縮重合反応結果物に非変性粘土を付加する前に粘土改質剤を付加することを特徴とする、請求項12に記載のナノ複合体の製造方法。
【請求項14】
前記熱処理は、
100〜160℃で還流して生成された水を除去する第1段階と、
140〜195℃で加熱して重合する第2段階と、
を含むことを特徴とする、請求項12に記載のナノ複合体の製造方法。
【請求項15】
前記第1重合性モノマーは、下記化学式3で表示されるハロゲン化化合物であることを特徴とする、請求項9または12に記載のナノ複合体の製造方法。
【化3】

前記式中、Rは、互いに同一または異なり、C1−C10のアルキル基、C2−C10のアルケニル基、フェニル基、またはニトロ基であり、
pは、0〜4の整数であり、
Yは、Cl、Br、またはIである。
【請求項16】
前記第2重合性モノマーは、下記化学式4で表示されるハロゲン化化合物であることを特徴とする、請求項9または12に記載のナノ複合体の製造方法。
【化4】

前記式中、Mは、Na、K、またはHであり、
Yは、Cl、F、Br、またはIである。
【請求項17】
前記ジオール化合物は、下記化学式5で表示されることを特徴とする、請求項9または12に記載のナノ複合体の製造方法。
【化5】

前記式中、Rは、互いに同一または異なり、C1−C10のアルキル基、C2−C10のアルケニル基、フェニル基、またはニトロ基であり、
pは、0〜4の整数であり、
Xは、−C(CF−、−C(CH−または−P(=O)Y’−(Y’は、HまたはCである)である。
【請求項18】
スルホン化ポリスルホンを溶媒に溶解してスルホン化ポリスルホン溶液を準備する段階と、
粘土を分散媒に分散して粘土分散液を得る段階と、
前記スルホン化ポリスルホン溶液と前記粘土分散液とを混合する段階と、
を含むことを特徴とする、ナノ複合体の製造方法。
【請求項19】
前記粘土分散液の製造時、40〜90℃で加熱することを特徴とする、請求項18に記載のナノ複合体の製造方法
【請求項20】
前記スルホン化ポリスルホンは、下記化学式1で表示される化合物であることを特徴とする、請求項18に記載のナノ複合体の製造方法。
【化1】

前記式中、Rは、互いに同一または異なり、C1−C10のアルキル基、C2−C10のアルケニル基、フェニル基、またはニトロ基であり、
pは、0〜4の整数であり、
Xは、−C(CF−、−C(CH−または−P(=O)Y’−(Y’は、HまたはCである)であり、
Mは、Na、K、またはHであり、
mは、0.1〜10で、nは、0.1〜10であり、kは、5〜500の数である。
【請求項21】
前記化学式1の化合物は、、
スルホン化ポリスルホン形成用の第1重合性モノマー、スルホン化ポリスルホン形成用の第2重合性モノマー及びジオール化合物の重合反応により得られたものであることを特徴とする、請求項20に記載のナノ複合体の製造方法。
【請求項22】
前記重合反応時、粘土改質剤を付加することを特徴とする、請求項18に記載のナノ複合体の製造方法。
【請求項23】
請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のナノ複合体を含むナノ複合電解質膜。
【請求項24】
カソード、アノード及びこれらの間に位置する電解質膜を含む燃料電池において、
前記電解質膜は、請求項1〜8のうちいずれか1項に記載のナノ複合体を含むナノ複合電解質膜であることを特徴とする、燃料電池。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−84786(P2007−84786A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−155441(P2006−155441)
【出願日】平成18年6月2日(2006.6.2)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】