説明

ナフサ水素化脱硫用の高温アルミナ担体を有する選択的触媒

本発明は、ナフサを水素化脱硫するための触媒および方法に関する。より具体的には、Co/Mo金属水素添加成分が分散助剤の存在下に高温アルミナ担体に充填されて、その後ナフサを水素化脱硫するために使用される触媒を生成する。高温アルミナ担体は、オレフィン飽和を最小限にする画定された表面積を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナフサを水素化脱硫するための触媒および方法に関する。より具体的には、CoMo金属水素化脱硫成分が有機添加剤の存在下に高温アルミナ担体に充填されて、硫化後に、その後ナフサを水素化脱硫するために使用される触媒を生成する。高温アルミナ担体は、オレフィン飽和を最小限にする画定された特性を有する。
【背景技術】
【0002】
環境規制は、モーターガソリン(モーガス)中の硫黄レベルの低下を義務づけている。例えば、規制は2006年までに30ppm以下のモーガス硫黄レベルを要求するであろうと予期される。多くの場合、これらの硫黄レベルは、モーガスプール中の硫黄への最大の一因である、流動接触分解(Fluid Catalytic Cracking)から製造されたナフサ(FCC接触分解ナフサ)を水素化処理することによって達成されるであろう。モーガス中の硫黄はまた、触媒コンバータの低下した性能につながり得るので、30ppm硫黄の目標は、規制がより高レベルを許容するであろう場合でさえも望ましい。結果として、同時にオクタン価などの有益な特性の低下を最小限にしながら接触分解ナフサ中の硫黄を減らす技術が必要とされる。
【0003】
従来の固定床水素化処理は、分解ナフサの硫黄レベルを非常に低いレベルに下げることができる。しかしながら、かかる水素化処理はまた、水素の過度の消費だけでなくオレフィン含有率の過度の低下による厳しいオクタン価ロスをもたらす。選択的な水素化処理プロセスが最近、かなりのオレフィン飽和およびオクタン価ロスを回避するために開発されてきた。残念ながら、かかるプロセスでは、遊離したHSが残存オレフィンと反応して戻りによるメルカプタン硫黄を形成する。かかるプロセスは、硫黄規制内の製品を生成する過酷度で実施することができる。しかしながら、かなりのオクタン価ロスもまた起こる。
【0004】
硫黄除去中にオクタンを保持するための提案された一手法は、オレフィン変性触媒、引き続き水素化脱硫(HDS)触媒との接触を用いて供給原料のオレフィン含有率を変更することである(特許文献1)。オレフィン変性触媒は、オレフィンをオリゴマー化させる。
【0005】
HDSの最近開発された一方法は、エクソン・モービル・コーポレーション(Exxon Mobil Corporation)によって開発されたプロセスであるスキャン精製(SCANfining)である。スキャン精製は、「最小限オクタンロスでの選択的な接触分解ナフサ水素精製(Selective Cat Naphtha Hydrofining with Minimal Octane Loss)」という表題の全米石油精製業者協会(National Petroleum Refiners Association)研究論文#AM−99−31並びに特許文献2および特許文献3に記載されている。典型的なスキャン精製条件には、ナフサ原料油を水素化脱硫するための1および2段階プロセスが含まれる。原料油は、約1〜約10重量%MoOと約0.1〜約5重量%CoOとを含んでなり、そして約0.1〜約1.0のCo/Mo原子比、および約60Å〜約200Åの中央細孔径の水素化脱硫触媒と接触させられる。
【0006】
スキャン精製は高度のHDSを達成しながらオレフィン飽和の程度を制御するが、触媒系の選択性を向上させてオレフィン飽和の程度を更に下げ、それによってオクタン価ロスを更に最小限にする必要性は依然としてある。
【0007】
【特許文献1】米国特許第6,602,405号明細書
【特許文献2】米国特許第5,985,136号明細書
【特許文献3】米国特許第6,013,598号明細書
【非特許文献1】メルクインデックス(Merck Index)、第12版、Merck & Co.,Inc.、1996年
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、(i)高温アルミナが、アルミナの総重量を基準として、約50重量%未満のガンマ、エータ(eta)およびカイ(chi)アルミナ含有率、約100Å〜約1000Åの範囲の中央細孔径、および約40m/g〜約200m/gの表面積を有するという条件で、アルミナ前駆体を少なくとも約800℃より高い温度に加熱して高温アルミナを形成し、高温アルミナに(a)コバルト塩、(b)モリブデン塩、および(c)少なくとも1つの有機添加剤の水溶液を含浸させて含浸高温アルミナを形成する工程と、(ii)含浸高温アルミナを約200℃未満の温度で乾燥させて乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を形成する工程と、(iii)HDS触媒または触媒前駆体が硫化またはHDSのための使用の前にカ焼されないという条件で、乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を硫化してHDS触媒を形成する工程と含むプロセスによって調製されるナフサの水素化脱硫(HDS)に好適な触媒に関する。
【0009】
好ましい実施形態では、HDS触媒前駆体は、触媒担体を基準として、約1重量%〜約8重量%コバルトと、触媒担体を基準として、約6重量%〜約20重量%モリブデンとを含有する。HDS触媒は、デルタ、シータおよびカッパなどの他の高温アルミナに加えてアルファアルミナを更に含有してもよい。
【0010】
別の実施形態は、触媒が、(i)アルミナ前駆体を少なくとも約800℃より高い温度に加熱して高温アルミナを形成する工程と、(ii)該高温アルミナが、アルミナの総重量を基準として、約50重量%未満のガンマ、エータおよびカイアルミナ含有率、約100Å〜約1000Åの範囲の中央細孔径、および約40m/g〜約200m/gの表面積を有するという条件で、高温アルミナに(a)コバルト塩、(b)モリブデン塩、および(c)少なくとも1つの有機添加剤の水溶液を含浸させて含浸高温アルミナを形成する工程と、(iii)含浸高温アルミナを約200℃未満の温度で乾燥させて乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を形成する工程と、(iv)HDS触媒または触媒前駆体が硫化またはHDSのための使用の前にカ焼されないという条件で、乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を硫化してHDS触媒を形成する工程とによって調製される状態での、HDS触媒の製造方法に関する。
【0011】
別の実施形態は、ナフサを水素化脱硫条件下にHDS触媒と接触させることを含む、ナフサの重量を基準として、少なくとも約5重量%のオレフィン含有率を有するナフサのHDS方法であって、この触媒が(i)高温アルミナが、アルミナの総重量を基準として、約50重量%未満のガンマ、エータおよびカイアルミナ含有率、約100Å〜約1000Åの範囲の中央細孔径、および約40m/g〜約200m/gの表面積を有するという条件で、アルミナ前駆体を少なくとも約800℃より高い温度に加熱して高温アルミナを形成し、高温アルミナに(a)コバルト塩、(b)モリブデン塩、および(c)少なくとも1つの有機添加剤の水溶液を含浸させて含浸高温アルミナを形成する工程と、(ii)含浸高温アルミナを約200℃未満の温度で乾燥させて乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を形成する工程と、(iii)HDS触媒または触媒前駆体が硫化またはHDSのための使用の前にカ焼されないという条件で、乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を硫化してHDS触媒を形成する工程とによって調製される方法に関する。
【0012】
このHDS触媒は、ナフサのHDSのために使用されるとき、ナフサ供給原料の高レベルのHDSを維持しながらオレフィン飽和に関して向上した選択性を示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
用語「ナフサ」は、中間沸点範囲炭化水素留分またはガソリンの主成分である留分を意味するために用いられるが、用語「FCCナフサ」は、流動接触分解の周知のプロセスで製造された好ましいナフサを意味する。中間沸点範囲を有するナフサは、大気圧で約10℃(即ち、約C)〜約232℃(50〜450°F)、好ましくは約21℃〜約221℃(70〜430°F)の沸点を有するものである。添加水素なしのFCCプロセスで生成するナフサは、オレフィンおよび芳香族化合物が比較的高いナフサをもたらす。水蒸気分解ナフサおよびコーカーナフサなどの他のナフサもまた、比較的高い濃度のオレフィンを含有してもよい。典型的なオレフィン系ナフサは、ナフサの重量を基準として、少なくとも約5重量%〜約60重量%以下、好ましくは約5重量%〜約40重量%のオレフィン含有率、ナフサの重量を基準として、約300ppmw〜約7000ppmwの硫黄含有率、およびナフサの重量を基準として、約5ppmw〜約500ppmwの窒素含有率を有する。オレフィンには、開鎖オレフィン、環状オレフィン、ジエンおよびオレフィン系側鎖付き環式炭化水素が含まれる。オレフィンおよび芳香族化合物は高いオクタン価成分であるので、オレフィン系ナフサは一般に、水素化分解ナフサが示すより高いリサーチ法およびモーター法オクタン価を示す。オレフィン系ナフサは典型的にはオレフィン含有率が高いが、それらはまた、他の化合物、特に硫黄含有化合物および窒素含有化合物を含有してもよい。
【0014】
選択的触媒
オレフィン系ナフサからの最小限オレフィン飽和での硫黄の選択的除去のための触媒は、高温アルミナを担体として使用して調製される。高温アルミナは、中程度〜高い表面積(約40m/g〜約200m/g)の大きい孔のアルミナである。アルファアルミナは、他のアルミナ相が約1000℃〜約1200℃若しくはそれ以上の範囲の温度など十分に高い温度に加熱されるときにそれが形成されるので、最も安定な高温アルミナ相である。このように、ベーマイトまたは擬ベーマイト(AlO(OH))およびバイヤライトまたはギブサイト(Al(OH))などのアルミナ前駆体は、段々と高い温度に加熱されたときに様々なアルミナ相を通ってアルファ相へ転化される。ベーマイトに始まる温度上昇に関連した一般に受け入れられる相遷移は次の通りである:ベーマイト→ガンマアルミナ→カイアルミナ→デルタアルミナ/シータアルミナ→アルファアルミナ。ギブサイトに始まる温度上昇に関連した相遷移は次の通りである:ギブサイト→カイアルミナ→カッパアルミナ→アルファアルミナ。バイヤライトに始まる温度上昇に関連した相遷移は次の通りである:バイヤライト→エータアルミナ→シータアルミナ→アルファアルミナ。上述したように、アルファアルミナは、ガンマ、カイ、エータ、デルタ、カッパおよびシータなどの他のアルミナ相の加熱の最終相である。本明細書で用いるところでは、高温アルミナは、シータ、デルタ、カッパおよびアルファアルミナ、並びにほんの少量のガンマ、カイ、またはエータ相アルミナとのそれらの混合物を含有するアルミナを意味する。ガンマ、カイ、およびエータアルミナの合計は、アルミナの重量を基準として、約50重量%未満、好ましくは約30重量%未満、より好ましくは約20重量%未満である。ある実施形態では、高温アルミナは、アルミナの総重量を基準として、約50重量%より大きい、好ましくは約70重量%より大きい、より好ましくは約80重量%より大きいシータ、カッパ、デルタおよびアルファアルミナの少なくとも1つを含有する。
【0015】
本発明による高温アルミナは、ガンマアルミナ、バイヤライト、ギブサイトおよび/またはベーマイトなどの前駆体を約800℃より高い温度に加熱することによって調製することができる。用いられる温度はまた、加熱時間、所望の相を達成するために制御されている時間だけでなく出発相の性質の関数である。このように調製された高温アルミナは好ましくは主に、シータ、カッパおよびアルファアルミナの混合物、より好ましくは主にシータおよびアルファアルミナの混合物である。主にとは、指定成分の重量が混合物の重量の約50%より多くを占めることを意味する。水蒸気処理での熱が高温アルミナを生成するために用いられ得ることもまた注目される。例えば、アルミナ前駆体を約95%湿度で、約1000℃で1時間水蒸気処理すると、純粋なシータ相物質をもたらす。高温アルミナが所望の特性を有するという条件で、従来法をはじめとする、高温アルミナの他の調製方法を用いることができる。
【0016】
アルミナ相はX線回折技法によって測定される。異なる相はそれぞれ、必須ピーク強度およびd−間隔によって測定されるような、特徴的なX線回折パターンを有する。従って、X線回折は、高温アルミナが製造されたことを検証するために用いることができる。
【0017】
高温アルミナ担体は次に、(a)コバルト塩、(b)モリブデン塩、および(c)有機配位子などの、1つ以上の有機添加剤の混合物を含浸させられる。アルミナ担体に含浸させるために使用されるコバルトおよびモリブデン塩は、任意の水溶性塩であってもよい。好ましい塩には、炭酸塩、硝酸塩、七モリブデン酸塩などが含まれる。塩の量は、アルミナ担体が、担体の重量を基準として、約2重量%〜約8重量%、好ましくは約3重量%〜約6重量%の酸化コバルト(CoO)と、約8量%〜約30重量%、好ましくは約10重量%〜約25重量%の酸化モリブデン(MoO)とを含有するような量である。
【0018】
有機配位子は、CoおよびMo成分をシリカ担体上に分配させるのに役立つと仮定される有機添加剤である。有機添加剤は、酸素および/または窒素原子を含有し、そして一座、二座および多座配位子を含む。有機添加剤(配位子)はまた、キレート剤であってもよい。有機配位子には、カルボン酸、ポリオール、アミノ酸、アミン、アミノアルコール、ケトン、エステルなどの少なくとも1つが含まれる。有機配位子の例には、フェナントロリン、キノリノール、サリチル酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CYDTA)、アラニン、アルギニン、トリエタノールアミン(TEA)、グリセロール、ヒスチジン、アセチルアセトナート、グアニジン、およびニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸および尿素が挙げられる。
【0019】
高温アルミナ担体は、約140度の接触角を用いるASTM(米国材料試験協会)方法番号D4284を用いる水銀ポロシメトリーによって測定されるように大きい細孔容積を有する。細孔容積は、約0.3cc/g〜約1.5cc/g、好ましくは約0.5cc/g〜約1.5cc/gの範囲にある。水銀の侵入容量によって測定されるような中央細孔径は、約100Å〜約1000Å、好ましくは約150Å〜約1000Åの範囲にある。窒素を用いるBET法によって測定されるような、表面積は、約40m/g〜約200m/g、好ましくは約40m/g〜約150m/gの範囲にある。
【0020】
いかなる特定の理論にも束縛されることを望むものではないが、大きい細孔径の本高温アルミナ担体は、アルギニン、クエン酸および尿素などの有機配位子と組み合わせられたときに、低い過酷度の乾燥で、ナフサ供給原料を脱硫するためのHDS触媒の活性を維持しながらオレフィン飽和に関して所望の選択性を有するHDS触媒につながると仮定される。有機配位子は、アルミナ担体の全体にわたって金属の効果的な分散を生成するのに役立つと仮定され、それは、この触媒によって示される増加した選択性の一因である。
【0021】
高温アルミナ担体はまた、第1〜18族を有するIUPAC形式に基づく周期表の第2〜4族からの、好ましくは第2族および4族からの金属でドープされてもよい。かかる金属の例には、Zr、Mg、Tiが挙げられる。例えば、非特許文献1を参照されたい。
【0022】
触媒調製および使用
高温アルミナ担体は、従来の技法、即ち、水素処理触媒デザイン、合成、製造および/または使用の当業者に公知の技法を用いてCoおよびMo塩の水溶液を含浸させられる。有機配位子は、アルミナ担体との接触の前に塩の水溶液に加えられてもよい。アルミナ担体に金属塩を含浸させるための一実施形態は、初期湿潤方法(incipient wetness)による。この方法では、金属塩および有機添加剤を含有する水溶液は、従来の技法を用いて初期湿潤点まで担体と混合される。
【0023】
金属塩によるアルミナ担体の含浸の方法は、初期湿潤を用いてアルミナ担体にコバルト塩と有機配位子との混合物を含浸させ、含浸担体を乾燥させ、そして次に乾燥担体に初期湿潤点までモリブデン塩溶液または有機配位子を含有するモリブデン塩溶液を含浸させることによってもよい。別の実施形態では、コバルト塩、引き続くモリブデン塩による含浸の順番は、逆にされてもよい。更に別の実施形態では、担体は、コバルト塩とモリブデン塩プラス有機配位子との混合物を初期湿潤まで共含浸させられてもよい。共含浸担体は乾燥させられてもよく、共含浸プロセスが繰り返されてもよい。更に別の実施形態では、押し出されたアルミナ担体は、コバルト塩、モリブデン塩および有機配位子の混合物を含浸させられてもよく、含浸担体は乾燥させられる。この処理は必要に応じて繰り返されてもよい。上記全ての実施形態で、有機配位子は単一の配位子であってもよく、または配位子の混合物であってもよい。反応混合物から分離された含浸アルミナ担体は、約50℃〜約200℃の範囲の温度で加熱され、乾燥させられて触媒前駆体を形成する。乾燥は真空下で、または空気、若しくは窒素などの不活性ガス中であってもよい。
【0024】
乾燥触媒前駆体は、存在するガスの総容量を基準として約0.1容量%〜約10容量%の濃度の硫化水素で、HDS触媒を形成するために金属酸化物、金属塩または金属錯体を相当する硫化物に転化するのに十分な時間および温度で処理される。硫化水素は、触媒前駆体中にまたは上に組み込まれた硫化剤によって発生させられてもよい。ある実施形態では、硫化剤は希釈剤と組み合わせられる。例えば、ジメチルジスルフィドはナフサ希釈剤と組み合わせることができる。より少量の硫化水素が使用されてもよいが、これは活性化に要する時間を延ばすかもしれない。不活性キャリアが存在してもよく、活性化は液相か気相かのどちらで行われてもよい。不活性キャリアの例には、窒素とメタンなどの軽質炭化水素とが挙げられる。存在するとき、不活性ガスは、全ガス容量の一部として含まれる。温度は、約150℃〜約700℃、好ましくは約160℃〜約343℃の範囲にある。温度は一定に保持されてもよく、またはより低い温度からスタートし、そして活性化中に温度を上げることによって昇温されてもよい。全圧は約5000psig(34576kPa)以下、好ましくは約0psig〜約5000psig(101〜34576kPa)、より好ましくは約50psig〜約2500psig(446〜17338kPa)の範囲にある。液体キャリアが存在する場合、液空間速度(LHSV)は約0.1時間−1〜約12時間−1、好ましくは約0.1時間−1〜約5時間−1である。LHSVは連続モードに関連する。しかしながら、活性化はまたバッチモードで行われてもよい。全ガス比は、約89m/m〜約890m/m(500〜5000scf/B)であってもよい。
【0025】
触媒硫化は、現場または現場外のどちらで起こってもよい。硫化は、触媒を硫化剤と接触させることによって起こってもよく、液相硫化剤か気相硫化剤かのどちらで行うこともできる。或いはまた、触媒は、HSが硫化中に発生するように予硫化されてもよい。液相硫化剤では、硫化されるべき触媒は、硫化剤を含有するキャリア液体と接触させられる。硫化剤がキャリア液体に加えられてもよく、またはキャリア液体それ自体が硫化剤であってもよい。キャリア液体は好ましくはバージン炭化水素ストリームであり、水素処理触媒と接触させられるべき原料油であってもよいが、鉱物(石油)源または合成源に由来する留出物などの任意の炭化水素ストリームであってもよい。硫化剤がキャリア液体に加えられる場合、硫化剤それ自体は、活性化条件下に硫化水素を発生させることができるガスまたは液体であってもよい。例には、硫化水素、硫化カルボニル、二硫化炭素、ジメチルスルフィドなどのスルフィド、ジメチルジスルフィドなどのジスルフィド、およびジ−t−ノニルポリスルフィドなどのポリスルフィドが挙げられる。ある種の供給原料、例えば、石油供給原料中に存在するスルフィドは、硫化剤としての機能を果たすかもしれず、脂肪族、芳香族および複素環化合物をはじめとする、硫化水素を発生させることができる多種多様な硫黄含有化学種を含む。
【0026】
乾燥触媒は、硫化かHDSのために使用かのどちらの前にもカ焼されない。カ焼しないことは、乾燥触媒が約300℃、好ましくは約200℃より高い温度に加熱されないことを意味する。触媒をカ焼しないことによって、分散助剤の約60%〜約100%が硫化またはHDSのための使用の前に触媒上に残っている。
【0027】
硫化後に、触媒は水素化脱硫条件下にナフサと接触させられてもよい。水素化脱硫条件には、約150℃〜400℃の温度、約445kPa〜約13890kPa(50〜2000psig)の圧力、約0.1〜約12の液空間速度、および約89m/m〜約890m/m(500〜5000scf/B)の処理ガス比が含まれる。水素化脱硫後に、脱硫ナフサは、貯蔵のためにまたは、硫化水素を除去するためのストリッピングなどの、更なる処理のために導き出されることができる。脱硫ナフサは、他のナフサ沸点範囲炭化水素とブレンドしてモーガスを製造するのに有用である。
【実施例】
【0028】
好ましい実施形態を含む実施形態は、以下の実施例に例示される。
【0029】
実施例1〜5
担体として有用なアルミナ押出物を、バーサル(Versal)−300(UOP)を有機フィラーとしての30%アビセル(Avicel)(FMC)および2%HNOと混合し、引き続き1/20インチ四葉形ダイを通しての押出によって調製した。生じた押出物を、温度、時間、および部分水蒸気の様々な条件を用いてカ焼して実施例1〜実施例5のアルミナ担体を製造した。具体的なカ焼条件、アルミナ相特定、NによるBET表面積、およびHgによる細孔容積/直径を表1にリストする。これらのカ焼アルミナ担体のXRDパターンを図1に示す。銅陽極を使用した。強度結果を散乱角(2シータ)に対してプロットする。図2〜5は、実施例2、3、4、および5についてHg侵入による細孔径分布を示す。
【0030】
【表1】

【0031】
実施例6
混合シータおよびアルファアルミナ相を含有する市販アルミナ担体(ノルプロ(Norpro)SA31132)を、実施例1〜5でのようにX線回折技法によって調べた。図6は、担体についてのX線回折パターンのプロットである。図7は、細孔径分布のlog−logプロットである。図7は、Hg侵入容量に基づく細孔径分布を示す。水銀侵入容量に基づいて測定される中央細孔径は672Åであるが、細孔面積に基づいて測定される中央細孔径は209Åである。担体は、NBET法によって測定されるように62m/gの表面積、およびHg(ASTM−D4284法)によって測定されるように0.77cc/gの細孔容積を有する。含浸液は、8.34gの尿素および4.20gのクエン酸一水和物を10mlの水に溶解させ、引き続き2.13gの炭酸コバルト水和物(46.2%Co)および6.13gの七モリブデン酸アンモニウムを溶解させることによって調製した。含浸液を、初期湿潤含浸技法を用いてアルミナ担体に加えた。含浸触媒を110℃で乾燥させ、カ焼なしに硫化およびHDS評価に使用した。含浸固体は、乾燥基準で3.9重量%のCoOおよび15.5重量%のMoOを含有した。
【0032】
実施例7〜11
実施例1〜5のアルミナ担体に、クエン酸および尿素を有機添加剤として使用してCoおよびMo塩を含浸させた。含浸および乾燥は実施例6に記載したように実施した。表2は乾燥触媒前駆体の金属含有率をリストする。
【0033】
【表2】

【0034】
実施例12
実施例6〜11からの触媒前駆体を硫化し、接触分解ナフサ水素化脱硫における選択性について、商業的に入手可能な対照CoMo/Al触媒(RT−225)と平行して試験した。触媒前駆体を、Hおよびバージンナフサ中の3%HSを使用して硫化した。触媒評価のための供給原料は、1408ppmのSおよび46.3%オレフィンを含有するC−177℃(350°F)FCCナフサ供給原料であった。触媒は、Hを使用して220psigで、274℃(525°F)でMCFB−48装置(マルチ−チャネル固定床−48反応器(Multi−Channel Fixed Bed−48 Reactor))にて評価した。供給原料流量を、65%〜95%の2−メチルチオフェン脱硫の範囲を得るように調節した。生成物ストリームを、オンラインGCおよびSCDを用いて分析した。生成物中のCオレフィン含有率を供給原料中のCオレフィン含有率と比較してオレフィン飽和の百分率(%OSAT)を計算した。%HDSおよび%OSATの結果は、約30時間の触媒通油後に安定であり、様々なHDS転化率(%HDS)でのオレフィン飽和(%OSAT)を評価するために用いられた。
【0035】
図8は、90%HDS転化率でのCオレフィン飽和の百分率対実施例12の触媒を調製するために使用したアルミナ担体の中央細孔径(Hg侵入細孔面積に基づく)をプロットする。90Åの中央細孔径を有する市販触媒は、同一条件下で試験され、90%HDS転化率で14重量%のCオレフィン飽和を示した。市販触媒およびより低温アルミナ(実施例7および8からの前駆体)上に形成された触媒と比較して、高温アルミナに担持された本発明触媒は、より低いオレフィン飽和を有する。
【0036】
図9は、90%HDS転化率でのCオレフィン飽和の百分率対実施例12の触媒を調製するために使用したアルミナ担体の(1/中央細孔径)をプロットする。
【0037】
図10は、90%HDS転化率でのCオレフィン飽和の百分率対実施例12の触媒を調製するために使用したアルミナ担体について150Åより大きい表面積(Hgポロシメトリーによって測定された)の百分率をプロットする。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施例1〜5のカ焼担体についてのX線回折パターンのプロットである。
【図2】実施例2についてのHgポロシメトリーによる細孔径分布を示すプロットである。
【図3】実施例3についてのHgポロシメトリーによる細孔径分布を示すプロットである。
【図4】実施例4についてのHgポロシメトリーによる細孔径分布を示すプロットである。
【図5】実施例5についてのHgポロシメトリーによる細孔径分布を示すプロットである。
【図6】実施例6用の担体についてのX線回折パターンのプロットである。
【図7】672ÅのHgポロシメトリーによる中央細孔径の実施例6の担体についての細孔径分布を示すプロットである。
【図8】90%HDS転化率でのCオレフィン飽和の百分率対実施例12の触媒を調製するために使用されたアルミナ担体の中央細孔径(Hg侵入細孔面積に基づく)を示すプロットである。
【図9】90%HDS転化率でのCオレフィン飽和の百分率対実施例12の触媒を調製するために使用されたアルミナ担体の(1/中央細孔径)を示すプロットである。
【図10】90%HDS転化率でのCオレフィン飽和の百分率対実施例12の触媒を調製するために使用されたアルミナ担体について150Åより大きい表面積(Hgポロシメトリーによって測定された)の百分率を示すプロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナフサの水素化脱硫(HDS)に好適な触媒であって、
(i)アルミナ前駆体を少なくとも800℃より高い温度に加熱して高温アルミナを形成し、前記高温アルミナに(a)コバルト塩、(b)モリブデン塩および(c)少なくとも1つの有機添加剤の水溶液を含浸させて、含浸高温アルミナを形成する工程であって、
前記高温アルミナは、アルミナの総重量を基準として、50重量%未満のガンマ、エータおよびカイアルミナ含有率、100Å〜1000Åの範囲の中央細孔径および40m/g〜200m/gの表面積を有する工程;
(ii)前記含浸高温アルミナを200℃未満の温度で乾燥させて、乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を形成する工程;および
(iii)前記乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を硫化して、HDS触媒を形成する工程(ただし、硫化またはHDSのための使用の前に、HDS触媒または触媒前駆体をカ焼しない)
を含む方法によって調製されることを特徴とする触媒。
【請求項2】
HDS触媒の製造方法であって、前記触媒は、
(i)アルミナ前駆体を少なくとも800℃より高い温度に加熱して、高温アルミナを形成する工程;
(ii)前記高温アルミナに(a)コバルト塩、(b)モリブデン塩および(c)少なくとも1つの有機添加剤の水溶液を含浸させて含浸高温アルミナを形成する工程であって、
前記高温アルミナは、アルミナの総重量を基準として、50重量%未満のガンマ、エータおよびカイアルミナ含有率、100Å〜1000Åの範囲の中央細孔径および40m/g〜200m/gの表面積を有する工程;
(iii)前記含浸高温アルミナを200℃未満の温度で乾燥させて、乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を形成する工程;および
(iv)前記乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を硫化して、HDS触媒を形成する工程(ただし、硫化またはHDSのための使用の前に、HDS触媒または触媒前駆体をカ焼しない)
によって調製されることを特徴とする方法。
【請求項3】
ナフサを水素化脱硫条件下にHDS触媒と接触させる工程を含む、ナフサの重量を基準として、少なくとも5重量%のオレフィン含有率を有するナフサのHDS方法であって、
前記触媒は、
(i)アルミナ前駆体を少なくとも800℃より高い温度に加熱して高温アルミナを形成し、前記高温アルミナに(a)コバルト塩、(b)モリブデン塩および(c)少なくとも1つの有機添加剤の水溶液を含浸させて含浸高温アルミナを形成する工程であって、
高温前記アルミナは、アルミナの総重量を基準として、50重量%未満のガンマ、エータおよびカイアルミナ含有率、100Å〜1000Åの範囲の中央細孔径、および40m/g〜200m/gの表面積を有する工程;
(ii)前記含浸高温アルミナを200℃未満の温度で乾燥させて、乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を形成する工程;および
(iii)前記乾燥含浸高温アルミナ触媒前駆体を硫化して、HDS触媒を形成する工程(ただし、硫化またはHDSのための使用の前に、HDS触媒または触媒前駆体をカ焼しない)
によって調製されることを特徴とする方法。
【請求項4】
前記高温アルミナは、シータ、デルタ、カッパおよびアルファアルミナの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
高温アルミナの量は、全アルミナを基準として70重量%より大きいことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
高温アルミナの量は、全アルミナを基準として80重量%より大きいことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記中央細孔径は、150Å〜1000Åであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記細孔容積は、0.3cc/g〜1.5cc/gの範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記表面積は、40m/g〜150m/gであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記ナフサは、FCCナフサ、水蒸気分解ナフサまたはコーカーナフサの少なくとも1つであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記ナフサは、ナフサを基準として、5重量%〜60重量%のオレフィン含有率、5ppmw〜500ppmwの窒素含有率および300ppmw〜7000ppmwの硫黄含有率を有することを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項12】
コバルト塩およびモリブデン塩の量は、アルミナ担体を基準として1重量%〜8重量%コバルトおよび6重量%〜20重量%モリブデンを含有する触媒担体を提供するのに十分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記有機添加剤は、有機配位子であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記有機配位子は、一座、二座または多座配位子であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記有機配位子は、カルボン酸、ポリオール、アミノ酸、アミン、アミド、アミノアルコール、ケトンおよびエステルよりなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記有機配位子は、フェナントロリン、キノリノール、サリチル酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、シクロヘキサンジアミン四酢酸(CYDTA)、アラニン、アルギニン、トリエタノールアミン(TEA)、グリセロール、ヒスチジン、アセチルアセトナート、グアニジン、ニトリロ三酢酸(NTA)、クエン酸および尿素よりなる群から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒前駆体を50℃〜200℃の温度で乾燥することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
触媒前駆体の硫化を、少なくとも1つの硫化剤の存在下に現場または現場外で行いうることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記硫化剤は、存在するガスの総容量を基準として0.1容量%〜10容量%の濃度の硫化水素であることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
水素化脱硫条件は、150℃〜400℃の温度、445kPa〜13890kPa(50〜2000psig)の圧力、0.1〜12の液空間速度および89m/m〜890m/m(500〜5000scf/B)の水素処理ガス比を含むことを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥触媒前駆体または硫化触媒を、硫化またはHDSのための使用の前に300℃より高い温度に加熱しないことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2009−523607(P2009−523607A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551304(P2008−551304)
【出願日】平成19年1月12日(2007.1.12)
【国際出願番号】PCT/US2007/001000
【国際公開番号】WO2007/084437
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(390023630)エクソンモービル リサーチ アンド エンジニアリング カンパニー (442)
【氏名又は名称原語表記】EXXON RESEARCH AND ENGINEERING COMPANY
【Fターム(参考)】