説明

ナースコールシステム

【課題】 ナースコールシステムを使用して移動可能な医療機器の警報をナースステーションにおいて発報可能であって、且つ医療機器の信号形態を自動検知したり医療機器の接続不良を検知可能としたナースコールシステムを提供する。
【解決手段】 人工呼吸器6がナースコールアダプタ5を介してナースコール子機1に接続され、ナースコールアダプタ5は接続された人工呼吸器5の出力信号がメイク接点かブレイク接点か判定する接点判定回路13、人工呼吸器6の出力信号を受けてナースコール親機3が受信可能な信号に変換して出力する呼出回路4、人工呼吸器6接続部の脱落や断線を検出する脱落断線検出回路16を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナースコールシステムに関し、特に人工呼吸器等の医療機器の発報信号を受けてナースステーションに設置されているナースコール親機に報知或いは表示させることが可能なナースコールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
人工呼吸器や点滴装置等の医療機器には使用する患者の位置に合わせて移動可能としたものがある。そのような移動可能な医療機器のうち、例えば人工呼吸器では、患者に装着して器具が脱落したり装着不良や故障等の異常が発生したら警報を発するよう構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
また点滴装置では、ナースコールシステムに接続されて、点滴中に点滴数が異常値になったり、点滴が終了したらナースステーションに自動連絡を行うものがある(例えば、特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−299736号公報
【特許文献2】特開2001−259026号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された人工呼吸器は、装着不良等の異常が発生した場合、ナースコールを行ったり携帯端末に通報することが可能となっているが、専用の配線を設けたり無線通報するための装置が必要であり、専用の装置を設けなければならない。そのため、容易に実施できる構成ではなかった。
また、上記特許文献2に開示された点滴装置は、ナースコールシステムに接続する構成であるため、容易に警報信号等をナースステーションに伝送することができるが、警報信号の形態はメイク接点信号かブレイク接点信号か確認して信号に応じた信号中継ボックスを配設する必要があるし、ナースコールシステムに接続して使用する場合、接続が外れても分からず、警報が発せられてもその信号が伝送されない場合がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点に鑑み、ナースコールシステムを使用して移動可能な医療機器の警報をナースステーションにおいて発報可能であって、且つ医療機器の信号形態を自動検知したり医療機器の接続不良を検知可能としたナースコールシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する為に、請求項1に記載の発明は、病室に設置されて看護師を呼び出すためのナースコール子機と、廊下に設置されてナースコール子機からの呼び出しを表示する集合廊下灯と、ナースステーションに設置されてナースコール子機から呼び出しを受けたら、関係する患者情報を表示すると共に呼び出しを報知するナースコール親機とを有するナースコールシステムにおいて、ナースコール子機は、移動可能な医療機器を接続するためのナースコールアダプタが接続されて成り、ナースコールアダプタは、接続した医療機器の出力信号がメイク接点或いはブレイク接点による信号かの判定を自動的に行う接点判定回路と、医療機器の出力信号を受けてナースコール親機が受信可能な信号に変換してナースコール子機に出力する呼出回路とを備えたことを特徴とする。
この構成により、医療機器から発せられた例えば警報信号を別途信号伝送ラインを設けることなくナースステーションに伝送できるので、専用線や無線設備を設けること無くナースステーションに常在している看護師に知らせることが可能となる。そして、医療機器が出力する信号形態がメイク接点であってもブレイク接点であっても良好に受信して出力するので、何れの接点であるか確認する必要がなく、看護師の負担を軽減できる。
【0007】
請求項2の発明は、病室に設置されて看護師を呼び出すためのナースコール子機と、廊下に設置されてナースコール子機からの呼び出しを表示する集合廊下灯と、ナースステーションに設置されてナースコール子機から呼び出しを受けたら、関係する患者情報を表示すると共に呼び出しを報知するナースコール親機とを有するナースコールシステムにおいて、ナースコール子機は、移動可能な医療機器を接続するためのナースコールアダプタが接続されて成り、ナースコールアダプタは、医療機器の出力信号を受けてナースコール親機が受信可能な信号に変換してナースコール子機に出力する呼出回路と共に、医療機器の接続状態を判断し、脱落断線を検出したらナースコール子機に断線信号を出力する脱落断線検出回路とを備えたことを特徴とする。
この構成により、医療機器から発せられた例えば警報信号を別途信号伝送ラインを設けることなくナースステーションに伝送できるので、専用線や無線設備を設けること無くナースステーションに常在している看護師に知らせることが可能となる。更に、医療機器接続部の脱落或いは断線が発生したらナースステーションにそれを知らせることができ、接続された医療機器が発する信号がナースステーションに伝送されない事態を防ぐことができる。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2に記載の発明において、医療機器から信号出力に対するリセット信号が出力されたら、ナースコールアダプタはナースコール親機が受信可能なリセット信号に変換してナースコール子機に出力するリセット回路を備えたことを特徴とする。
この構成により、医療機器の例えば警報信号出力が復旧操作によりリセットされたら、ナースコール親機の警報出力動作も連動して停止させることが可能であり、医療機器とナースコール親機が異なる警報動作をすることがない。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、医療機器から発せられた例えば警報信号を別途信号伝送ラインを設けることなくナースステーションに伝送できるので、専用線や無線設備を設けること無くナースステーションに常在している看護師に知らせることが可能となる。そして、接点判定回路を備えることで医療機器が出力する信号形態がメイク接点であってもブレイク接点であっても良好に受信して出力するので、何れの接点であるか確認する必要がなくなるし、脱落断線検出回路を備えることで、医療機器接続部の脱落或いは断線が発生したらナースステーションにそれを知らせることができ、接続された医療機器が発する信号がナースステーションに伝送されない事態を防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した実施の形態を、図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係るナースコールシステムの構成図を示し、1は看護師を呼び出すためのナースコール子機、2は廊下に設置されてナースコール子機1による呼び出しを表示する集合廊下灯、3はナースステーションに設置されてナースコール子機1からの呼び出しを報知すると共に関係する患者情報を表示するナースコール親機、4はシステムを制御するナースコール制御機、5は医療機器をナースコールシステムに接続可能とするナースコールアダプタ、6は移動可能な医療機器としての人工呼吸器を示している。
【0011】
尚、ナースコール子機1は病室のベッド毎に壁面に設置されて看護師と通話するための通話手段を備えた埋込型子機1aと、埋込型子機1aに接続して看護師を呼出操作するための握りボタン1bとで構成され、ナースコール親機3は患者と通話するための通話手段を備えた卓上親機3aと、患者情報等を表示するディスプレイを備えたパーソナルコンピュータからなるデスクトップ型親機3bとで構成されている。
【0012】
上記ナースコールシステムのナースコール子機1からの呼び出しによるナースコール親機3の応答動作は、公知のナースコール動作と同様であり、握りボタン1bを押すことにより集合廊下灯2、ナースコール制御機4を介して、ナースステーション内に設置されたナースコール親機3に呼出信号が送信され、ナースコール親機3にて呼び出しを報知すると共に関連する患者情報が表示される。この患者情報は、デスクトップ型親機3bに予め記憶されている患者情報から選択して表示される。
この呼び出しに対して応対した看護師が卓上親機3aのハンドセット等で応答することにより、ナースコール子機1を介して呼出操作した患者と通話が実施される。
【0013】
ナースコールアダプタ5は、埋込型子機1aにナースコール子機1の握りボタン1bを接続する為の接続端子10に接続する差込プラグ11と、医療機器の信号線を接続する医療機器接続部12を有し、接続された医療機器から出力される信号の種類を判定する接点判定回路13、医療機器からの出力信号を検出する呼出回路14、医療機器のリセット操作を検出するリセット検出回路15、医療機器接続部12に接続された医療機器プラグの脱落及び接続線の断線を検出する脱落断線検出回路16、インターフェイス回路(I/F回路)17をケース内に備えている。
【0014】
このナースコールアダプタ5は次のような動作をする。始めに、人工呼吸器6の出力信号(発報信号)の種類を判定する。医療機器の出力信号の種類は機器によって異なり、メイク接点の場合もあればブレイク接点の場合もある。そのため、埋込型子機1aにナースコールアダプタ5を接続後、電源を供給すると接続された人工呼吸器6の定常状態を接点判定回路13にて一定時間判定する。定常状態がメイク接点であれば、発報状態はブレイク接点、定常状態がブレイク接点であれば、発報状態はメイク接点となる。
【0015】
接点判定回路13にて出力信号の判定が行われた後、人工呼吸器6から発報信号が出力されると、I/F回路17、接点判定回路13を介して呼出回路14で発報信号が検出される。この呼出回路14で、人工呼吸器6からの発報信号をナースコール信号(握りボタン1bを操作した場合と同様の信号)に準じた信号に変換が成され、ナースコール子機1に出力される。この変換信号により、ナースコール子機1を介して、集合廊下灯2、ナースコール制御機4はあたかも呼出操作が成された場合と同様の動作を実施し、ナースコール親機3で呼出報知と同様の報知動作を実施し、デスクトップ型親機3bには関連する患者情報が表示される。こうして、ナースコールシステムを使用してナースステーションに人工呼吸器の異常発生等を報知が成される。
【0016】
その後、発報動作を実施した人工呼吸器6が復旧操作を受けて正常な状態に戻りリセット操作が成されたら、リセット検出回路15が人工呼吸器6が出力したリセット信号を検出する。そして、ナースコール親機3が受信可能なリセット信号に変換して埋込型子機1aに出力する。この場合、ナースコールシステムの握りボタン1bによる呼出操作のリセット信号に準じた信号に変換される。
こうして出力されたリセット信号は、ナースコール子機1、集合廊下灯2、ナースコール制御機4を経てナースコール親機3に伝送され、ナースコール親器3はリセット信号を受けて発報動作を停止する。
【0017】
一方、ナースコールアダプタ5の医療機器接続部12には、プラグの挿脱に連動するプラグ検知スイッチ(図示せず)が設けられている。このプラグ検知スイッチのオン/オフ動作を受けて脱落断線検出回路16は脱落発生を判断する。尚、他の例として、脱落断線検出回路16に医療機器接続部12の抵抗値を検出させて、プラグ検知スイッチがプラグの脱落を検知せずに抵抗値が所定値以上の値となったら断線発生と判断するようにしても良い。
【0018】
ナースコールアダプタ5が稼働時に、ナースコールアダプタ5に接続されている人工呼吸器6のプラグが抜けた場合は、プラグ検知スイッチが例えばオンとなり、脱落断線検出回路16が断線状態と認識する。そして、プラグの抜けを検知した脱落断線検出回路16は、脱落断線信号を出力し、ナースコール子機1、集合廊下灯2、ナースコール制御機4を経てナースコール親機3に伝送される。その結果、ナースコール親機3は脱落断線信号を受けて報知動作する。また、デスクトップ型親機3bはディスプレイに、脱落断線発生ヶ所(ナースコール子機設置場所)を表示する。断線を検知した場合も同様に動作してナースコール親機3は報知動作する。
【0019】
尚、埋込型子機1aに接続した握りボタン1bの脱落断線を検知してナースコール親機にて報知動作するナースコールシステムの場合は、握りボタン1bの脱落断線報知信号と同様な信号を生成して出力すれば良い。
【0020】
そして、抜けた人工呼吸器6のプラグが差し込まれたら、プラグ検知スイッチがオフして脱落断線検出回路16が接続状態にあると認識して復旧信号を出力するし、断線状態が復旧したらそれを検知して復旧信号を出力する。ナースコール親機3はこの復旧信号を受けて報知動作を停止し、警報動作は復旧する。
【0021】
このように、医療機器から発せられた例えば警報信号を別途信号伝送ラインを設けることなくナースステーションに伝送できるので、専用線や無線設備を設けること無くナースステーションに常在している看護師に知らせることができる。また、医療機器が出力する信号形態がメイク接点であってもブレイク接点であっても良好に受信して出力するので、何れの接点であるか確認する必要がなく、看護師の負担を軽減できる。
更に、医療機器接続部の脱落或いは断線が発生したらナースステーションにそれを知らせるので、接続された医療機器が発する信号がナースステーションに伝送されない事態を防ぐことができる。
また、医療機器の警報信号出力等が復旧操作によりリセットされたら、ナースコール親機の警報出力動作も連動して停止させることが可能であり、医療機器とナースコール親機が異なる警報動作をすることがない。
【0022】
尚、上記実施形態は人工呼吸器を例に説明しているが、ナースコールアダプタに接続する医療機器は、点滴装置、心電図装置、更には陣痛検知装置であっても良い。点滴装置を接続すれば、点滴終了等をナースステーションに常在の看護師が知ることが可能となるし、心電図装置の場合は心停止等の異常をナースステーションに報知することができる。
また、図1では握りボタン16を取り外してナースコールアダプタ5を取り付けているが、埋込型子機1aに予め握りボタン用の接続端子10を2つ用意すれば、握りボタン1bとナースコールアダプタ5を同時に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の実施形態の一例を示し、ナースコールアダプタを回路ブロック図で表したナースコールシステムの構成図である。
【符号の説明】
【0024】
1・・ナースコール子機、1a・・埋込型子機、1b・・握りボタン、2・・集合廊下灯、3・・ナースコール親機、5・・ナースコールアダプタ、6・・人工呼吸器(移動可能な医療機器)、13・・接続判定回路、14・・呼出回路、15・・リセット検出回路、16・・脱落断線検出回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
病室に設置されて看護師を呼び出すためのナースコール子機と、廊下に設置されて前記ナースコール子機からの呼び出しを表示する集合廊下灯と、ナースステーションに設置されてナースコール子機から呼び出しを受けたら、関係する患者情報を表示すると共に呼び出しを報知するナースコール親機とを有するナースコールシステムにおいて、
前記ナースコール子機は、移動可能な医療機器を接続するためのナースコールアダプタが接続されて成り、
前記ナースコールアダプタは、接続した前記医療機器の出力信号がメイク接点或いはブレイク接点による信号かの判定を自動的に行う接点判定回路と、前記医療機器の出力信号を受けて前記ナースコール親機が受信可能な信号に変換してナースコール子機に出力する呼出回路とを備えたことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項2】
病室に設置されて看護師を呼び出すためのナースコール子機と、廊下に設置されて前記ナースコール子機からの呼び出しを表示する集合廊下灯と、ナースステーションに設置されてナースコール子機から呼び出しを受けたら、関係する患者情報を表示すると共に呼び出しを報知するナースコール親機とを有するナースコールシステムにおいて、
前記ナースコール子機は、移動可能な医療機器を接続するためのナースコールアダプタが接続されて成り、
前記ナースコールアダプタは、前記医療機器の出力信号を受けて前記ナースコール親機が受信可能な信号に変換してナースコール子機に出力する呼出回路と共に、前記医療機器の接続状態を判断し、脱落断線を検出したら前記ナースコール子機に断線信号を出力する脱落断線検出回路とを備えたことを特徴とするナースコールシステム。
【請求項3】
前記医療機器から信号出力に対するリセット信号が出力されたら、前記ナースコールアダプタは前記ナースコール親機が受信可能なリセット信号に変換して前記ナースコール子機に出力するリセット回路を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載のナースコールシステム。

【図1】
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【公開番号】特開2007−117491(P2007−117491A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315141(P2005−315141)
【出願日】平成17年10月28日(2005.10.28)
【出願人】(000100908)アイホン株式会社 (777)
【Fターム(参考)】