説明

ナースコール装置

【課題】従来のナースコール装置は、患者の要求が通話に拠って伝えられることが主体であるが、隣接する患者に会話の内容を聞かれたくない場合もある。 通話せずに呼出要求が分る呼出の種類を多数備えると共に患者毎に呼び出し種類を設定出来ることを課題とする。
【解決手段】ナースコール子機1が読み取った特定の図形を呼出種類と関連付けて廊下灯2の記憶部12に登録し、廊下灯2はナースコール子機1から送られてきた図形と記憶部12に登録されている特定図形を比較して内容が一致していると判断すると該当する図形と関連付けて登録されている呼出種類に拠りナースコール親機へ呼出を行う手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、病院や福祉介護施設で使用されるナースコール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知の様に、病院や介護施設では医療従事者(主に看護師、介護施設では介護士など)と患者が通話する為のナースコール装置が設置されている。このナースコール装置では、患者が呼び出しに使用する握り押しボタンまたは通話機能と呼び出しボタンを備えたハンド形子機などのナースコール子機が各ベッドに備えられている。ベッドの頭部側壁面には、壁取り付け子機が有り、握り押しボタンまたはハンド形子機と接続され、患者が呼び出しのボタンを押すと、壁取り付け子機から各病室の入り口近傍に設置されている廊下灯を経由して、ナースステーション(介護施設ではスタッフステーション)に設置されているナースコール親機に通知される。ナースコール親機では、呼び出しがある部屋番号・ベッド番号が表示され、呼び出し音が鳴動して看護師に知らせ、看護師が送受話器を取り上げると患者と通話ができる。(特許文献1を参照)
【特許文献1】特許第2887552号公報
【特許文献2】特開平11−73849号公報
【特許文献3】特開2003−234836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のナースコール装置は、患者の要求が通話に拠って伝えられることが主体であった。しかし、周辺や隣接する患者に会話の内容を聞かれたくない場合もある。例えば、トイレの介助など、特に若い女性患者などは遠慮してしまう。また、声が出せない(または、声が小さい)患者や聴覚が不自由な患者などは会話に拠って要求を伝えられない場合もある。
【0004】
上述の問題を解決する手段として呼出の種類に応じて呼び出しボタンを備え、各ボタンが押されると声を発しなくともそれに該当した呼出の内容がナースコール親機へ伝えられる提案が成されている。(特許文献2を参照)
【0005】
特許文献2の提案では、患者が呼び出しに使用する握り押しボタンまたはハンド形子機は、患者が持てる程度のサイズであり物理的に呼出種類を多く設けることができない。呼出種類が少ないと患者の意思表示が看護師に充分伝わらない。また、呼出種類が少ないと患者毎に特有の呼出種類を設けることが困難であり、呼出種類が全ての患者に共通にならざるを得ない。
【0006】
本発明は、上述の問題点を解決するために成されたものであり、呼出の種類を増やせると共に患者毎に呼び出し種類を設定出来ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ナースコール子機は文字、記号、図形(図形には指紋、バーコードを含む)を読み取る手段と、ナースコール子機が読み取った特定の文字、記号、図形を呼出種類と関連付けて廊下灯の記憶部に登録する手段と、廊下灯はナースコール子機から送られてきた文字、記号、図形と記憶部に登録されている特定の文字、記号、図形を比較する手段と、廊下灯は比較した結果内容が一致していると判断すると該当する文字、記号、図形と関連付けて登録されている呼出種類に拠りナースコール親機へ呼出を行う手段を備える。
【0008】
ナースコール子機が文字、記号、図形を読み取る手段は、指紋読み取り手段、バーコード読み取り手段、ICタグ読み取り手段、図形読み取り手段の内少なくとも1つが備えられている。
【0009】
ナースコール親機は、廊下灯から送信される呼出種類を判定して患者情報(部屋やベッドや患者名など)と共に呼出種類に応じた表示及び呼出音を発報する手段を備える。これによって、発報を受けた看護師は患者と通話しなくても患者の要求を判断できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、隣接する患者に会話内容を聞かれることなく看護師へ患者の要求が伝わるので、患者のプライバシーが守れる。また、声が出せない患者でも要求を伝えることが出来る等の効果がある。看護師にとっては、患者と会話せずに要求が分るのでより迅速な対応が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、図形入力部(3)を備えるナースコール子機(1)と図形読込部(6)等を備える廊下灯(2)の内部構成を示す。図1においては、ナースコール親機側の構成は省略してある。
患者は、ナースコール子機(1)の図形入力部(3)に特定の図形が記入または記録されているカードをセットした後、操作部(5)と表示部(4)を利用して呼出種類を特定の図形と関連付けて廊下灯(2)の記憶部(12)に登録する。図形入力部(3)は光を電気信号に変換するCCD素子(Charge Coupled Devices)等を用いて図形を読み込む。
【0012】
ナースコール子機(1)から送られてきた図形データは、廊下灯(2)の図形読込部(6)に入力され、操作インタフェース部(11)から得られた呼出種類の登録操作で、呼出種類と関連付けて記憶部(12)に登録される。制御部(13)は、廊下灯(2)全体の動作を制御する部位でマイクロコンピュータなど制御/処理機能をそなえた電気素子で構成する。
【0013】
患者が登録した内容を確認したい時は、ナースコール子機(1)の操作部(5)と表示部(4)を利用して確認操作を行うと、制御部(13)は登録された図形を記憶部(12)から読み出して図形判定部(7)へ送り、図形判定部(7)は入力図形と登録図形を比較判定して呼出種類検出部(8)へ送り、制御部(13)は呼出種類検出部(8)で得られた呼出種類を表示出力部(10)を経由してナースコール子機(1)の表示部(4)へ送信して、確認内容を表示する。図形判定部(7)及び呼出種類検出部(8)はソフトウェアの処理として記憶部(12)内にプログラムとして保存されていても良い。
【0014】
患者がナースコール呼出を行う場合は、呼出種類に応じた図形が記入されているカードを図形入力部(3)にセットすると、その図形データは図形読込部(6)を経由して図形判定部(7)へ送られる。記憶部(12)に登録されている図形と比較されて一致していれば呼出種類検出部(8)はそれと関連付けて登録した呼出種類を記憶部(12)から読み出し、得られた呼出種類を親機通信部(9)へ送る。 親機通信部(9)は制御部(13)の制御に従って、得られた呼出種類をナースコール親機へ送信する。
【0015】
呼出を受けたナースコール親機では、呼出を行った患者情報(患者名や部屋番号、ベッド番号等)と共に呼出種類を表示する。看護師は、呼出種類によっては患者の要求内容が分るので必ずしも患者と通話して確認しなくても良い。
【0016】
図1では、操作部(5)と表示部(4)をナースコール子機(1)に含めて表示しているが、ナースコール子機(1)とは独立したベッドサイド端末やPDA(Personal Digital Assistants)端末などに設けても良い。
【0017】
図1を具体的に実現した提案を図2〜図5に示す。
図2は、指紋による呼出を実施するナースコール子機と廊下灯の内部構成を示したものであり、請求項1に該当する。図1の図形入力部(3)、図形読込部(6)、図形判定部(7)に相当する部位がそれぞれ図2では指紋読み取り部(15)、指紋入力部(16)、指紋判定部(17)に相当する。指紋の登録、判定は、図1と同等に図形を指紋に置き換えて実施される。
【0018】
呼出の種類は、各指の指紋の違いを利用して呼出の種類と関連付けて登録された指の指紋で判断する。図6に呼出の種類と対応する指と呼出の内容を示す。実際の記憶部(12)には対応する指の記憶領域にはそれぞれ該当する指の指紋データが登録される。
【0019】
図6において、呼出のとき入力された指紋データが例えば右手の薬指の指紋と一致すると、呼出種類検出部(8)は呼出の種類が「トイレ介助」であることを検出し、ナースコール親機へトイレ介助の呼出を行う。
【0020】
従来は、ナースコール呼出において指紋で患者を識別する提案(特許文献3を参照)は成されているが、各指の指紋の相違を利用して呼出の種類に対応したものは無い。また、患者個別に登録できるため、それぞれの患者に必要な呼出種類を設定出来る。
【0021】
図3は、バーコードが記入されたカード(18)や名札などをナースコール子機から読み込ませて、記入された呼出の種類に従って呼出を行うことが出来るナースコール子機と廊下灯の内部構成を示し、請求項2に該当する。カード毎に呼出の種類が記入されている固定な呼出方法と、カードに対応させて呼出種類を登録して、登録と一致する呼出種類で呼び出す方法がある。固定な呼出方法では、呼出の種類を登録する手間が不要となるが、患者特有の呼出は設定できない。図1の図形入力部(3)、図形読込部(6)、図形判定部(7)に相当する部位がそれぞれ図3ではバーコード入力部(19)、バーコード読込部(20)、バーコード判定部(21)に相当する。
【0022】
図4は、ICタグを貼付したカード(22)をナースコール子機から読み込ませて、記入された呼出の種類に従って呼出を行うことが出来るナースコール子機と廊下灯の内部構成を示し、請求項3に該当する。カード毎に呼出の種類が記入されている固定な呼出方法と、カードに対応させて呼出種類を登録して、登録と一致する呼出種類で呼び出す方法がある。図1の図形入力部(3)、図形読込部(6)、図形判定部(7)に相当する部位がそれぞれ図4ではICタグ入力部(23)、ICタグ読込部(24)、ICタグ判定部(25)に相当する。
【0023】
ICタグは、RFID(Radio Frequency IDentification)や無線タグなどとも呼ばれ、図形入力のCCD素子ではなく微弱電波の相互誘導によって読み取られる。読み込まれた情報の処理は図1の構成と同様である。
【0024】
図5は、文字や記号や図形が記入されているカード(26)をナースコール子機から図形として読み込ませて、記入された呼出の種類、または登録された呼出種類に従って呼出を行うことが出来るナースコール子機と廊下灯の内部構成を示し、請求項4に該当する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】ナースコール子機と廊下灯の内部構成
【図2】指紋による呼出のナースコール子機と廊下灯の内部構成
【図3】バーコードによる呼出のナースコール子機と廊下灯の内部構成
【図4】ICタグによる呼出のナースコール子機と廊下灯の内部構成
【図5】文字・記号・図形による呼出のナースコール子機と廊下灯の内部構成
【図6】指紋による呼出種類と呼出内容の一例
【符号の説明】
【0026】
1 ナースコール子機
2 廊下灯
3 図形入力部
4 表示部
5 操作部
6 図形読込部
7 図形判定部
8 呼出種類検出部
9 親機通信部
10 表示出力部
11 操作インタフェース部
12 記憶部
13 制御部
14 呼出表示部
15 指紋読取部
16 指紋入力部
17 指紋判定部
18 バーコードカード
19 バーコード入力部
20 バーコード読込部
21 バーコード判定部
22 ICタグカード
23 ICタグ入力部
24 ICタグ読込機部
25 ICタグ判定部
26 文字・記号・図形記入カード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通話機能を有する複数のナースコール子機と、前記複数のナースコール子機が通話するために接続されたナースコール親機と、前記複数のナースコール子機からの呼び出しを看護師に知らせるために病室の入り口近傍に設けられた廊下灯と、から構成されるナースコール装置において、
ナースコール呼出の種類と共に予め患者の指紋を前記廊下灯に登録し、前記ナースコール子機から送られてくる指紋データが予め登録された前記指紋と同一であると検出した前記廊下灯は前記指紋と共に登録されている呼出種類で前記ナースコール親機へ呼出を行うことを特徴とするナースコール装置。
【請求項2】
通話機能を有する複数のナースコール子機と、前記複数のナースコール子機が通話するために接続されたナースコール親機と、前記複数のナースコール子機からの呼び出しを看護師に知らせるために病室の入り口近傍に設けられた廊下灯と、から構成されるナースコール装置において、
前記ナースコール子機がナースコール呼出の種類が記入されているバーコードを読み取り、前記廊下灯へ送り、前記廊下灯は前記バーコードに記入されている呼出種類で前記ナースコール親機へ呼出を行うことを特徴とするナースコール装置。
【請求項3】
通話機能を有する複数のナースコール子機と、前記複数のナースコール子機が通話するために接続されたナースコール親機と、前記複数のナースコール子機からの呼び出しを看護師に知らせるために病室の入り口近傍に設けられた廊下灯と、から構成されるナースコール装置において、
前記ナースコール子機がナースコール呼出の種類が予め書き込まれているICタグを読み取り、読み取ったデータを前記廊下灯へ送り、前記廊下灯は前記ICタグに記録されている呼出種類で前記ナースコール親機へ呼出を行うことを特徴とするナースコール装置。
【請求項4】
通話機能を有する複数のナースコール子機と、前記複数のナースコール子機が通話するために接続されたナースコール親機と、前記複数のナースコール子機からの呼び出しを看護師に知らせるために病室の入り口近傍に設けられた廊下灯と、から構成されるナースコール装置において、
ナースコール呼出の種類と共に特定の記号や文字や図形を前記廊下灯に登録し、前記ナースコール子機から送られてくる記号や文字や図形データが予め登録された前記特定の記号や文字や図形と同一であると検出した前記廊下灯は前記特定の記号や文字や図形と共に登録されている呼出種類で前記ナースコール親機へ呼出を行うことを特徴とするナースコール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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