説明

ニオブ系酸化物微粒子の製造方法

【課題】 透明性、安定性、単分散性、紫外線遮蔽性(特に紫外線B:290〜320nm)等に優れたニオブ系酸化物微粒子の分散液を製造する。
【解決手段】 ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液を、必要に応じてニオブ以外の元素(Fe、Ce、Si、Zr、Al、Ti、Sn、Sb、W、Zn)の化合物の共存下で水熱処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液を、必要に応じてニオブ化合物以外の化合物の共存下で水熱処理することを特徴とする透明性、安定性、単分散性、紫外線遮蔽性(特に紫外線B:290〜320nm)等に優れたニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ニオブ酸化物ゾルあるいはニオブ酸化物コロイドが触媒、触媒担体、さらには機能性セラミックスとして圧電体、半導体、センサー、オプトエレクトロニクス材、誘電体等に用いられている。このときのニオブ酸化物ゾルあるいはニオブ酸化物コロイドとしては均一で微細な粒子径を有すると共に安定性にも優れたものが要求されている。
【0003】
例えば、特公平8−701号公報(特許文献1)には、ニオブ化合物に強酸を添加して溶解し、これに過酸化水素を加えてペルオキシニオブ酸水溶液とし、5〜50℃で加熱処理することによってペルオキシニオブ酸ゾル(H+[Nb02(O)2]-)を得ることが開示されている。また、安定性が不充分なために安定剤を添加して加熱処理してペルオキシニオブ酸ゾルを得ることが記載されている。
しかしながら、この方法では酸に由来するアニオンや安定剤などを含んでいるために用途が制限されることがあった。また、そのためにペルオキシニオブ酸ゾルを限外濾過膜等で除去・精製する必要があった。
【0004】
特開平6−321543号公報(特許文献2)および特開平8−143314号公報(特許文献3)には、活性な水酸化ニオブ、例えば酸化ニオブをフッ酸で溶解処理し、ついでアンモニアを添加し、濾過洗浄して得た水酸化ニオブスラリーに特定範囲のモル比のシュウ酸、クエン酸を加えて加熱処理する酸化ニオブゾルの製造方法が開示されている。
しかしながら、これらの方法で得られる酸化ニオブゾルは均一かつ微細な粒径で安定性に優れているものの、シュウ酸やクエン酸などの有機質を含有しているために、あるいはフッ素が残留することがあり用途に制限があった。
【0005】
特開平5−222652号公報(特許文献4)には、ニオブ化合物などの金属塩水溶液を安定化剤を加えることなく電気分解して金属酸化物ゾルを製造する方法が開示されている。この方法で得られる金属酸化物ゾルは透明性が高いために、化粧品調整物用や艶だし上薬などのセラミックス産業に好適に用いられることが記載されている。また、この方法で得られるTiO2ゾルは紫外線防止として化粧品に、あるいは、高屈折率を利用してセラミックスに使用されることが記載されていている。
【0006】
【特許文献1】特公平8−701号公報
【特許文献2】特開平6−321543号公報
【特許文献3】特開平8−143314号公報
【特許文献4】特開平5−222652号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来技術における問題点を解決するものであり、均一で微細な粒子径を有するとともに安定性にも優れ、特にアニオンや安定剤などの成分を含まないか、含んでいても少ないので除去する必要が無く、このため広範囲な用途に使用できるニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るニオブ系酸化物微粒子分散液の第1の製造方法は、ニオブ酸分散液またはニオブ酸とニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠し、得られた溶液を80〜300℃で水熱処理することを特徴としている。
本発明に係るニオブ系酸化物微粒子分散液の第2の製造方法は、ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液と、ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液とを混合し、80〜300℃で水熱処理することを特徴としている。
本発明に係るニオブ系酸化物微粒子分散液の第3の製造方法は、ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液に、ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理することを特徴としている。
【0009】
前記水熱処理を粒子成長調整剤の存在下で行うことが好ましい。
前記ニオブ以外の元素がFe、Ce、Si、Zr、Al、Ti、Sn、Sb、W、Znから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
前記水熱処理を種粒子の存在下で行うことが好ましい。
前記水熱処理を核粒子の存在下で行うことができる。
【0010】
前記した製造方法で得られたニオブ系酸化物微粒子分散液には、(1)ニオブ酸分散液、(2)ニオブ酸とニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液、(3)ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液、のいずれかに過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理することができる。
また、前記製造方法で得られたニオブ系酸化物微粒子分散液には、ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理することができる。
前記ニオブ以外の元素がFe、Ce、Si、Zr、Al、Ti、Sn、Sb、W、Znから選ばれる1種または2種以上であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、均一で微細な粒子径を有するとともに安定性にも優れ、特にアニオンや安定剤などの成分を含まないか、含んでいても少ないので除去する必要が無く、このため広範囲な用途に使用できるニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明のニオブ酸化物微粒子分散ゾルの製造方法について具体的に説明する。
本発明に係るニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法は、ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液を、必要に応じてニオブ化合物以外の化合物の共存下、80〜300℃で水熱処理することを特徴としている。
本発明に用いるニオブ酸は、過酸化水素に溶解および/または解膠することが出来れば特に制限はなく、従来公知のニオブ酸を用いることができる。ここでニオブ酸とはニオブの水酸化物(またはニオブ酸化物の水和物)をいい、Nb25・nH2Oで表すことができ、nが概ね1〜5の範囲のものをいう。
【0013】
このようなニオブ酸は例えば以下のような方法によって得ることができる。
(1)五塩化ニオブおよび/またはオキシ塩化ニオブを出発原料とし、加水分解した後、洗浄する。
(2)ニオブ金属あるいは酸化ニオブなどを酸で溶解した溶液、または五フッ化ニオブの水溶液を中和および/または加水分解した後、洗浄する。
(3)オルトニオブ酸塩あるいはメタニオブ酸塩の溶液を中和および/または加水分解した後、洗浄する。
【0014】
上記において、中和あるいは加水分解には、必要に応じて酸またはアルカリを添加することができる。アルカリとしてはアンモニア水が好適である。
また、洗浄はイオン交換樹脂法、フィルター法、限外濾過法などの方法によって行うことができ、洗浄後のニオブ酸中のアルカリおよび酸根はニオブ酸のNb25に対して0.5重量%以下であることが好ましい。0.5重量%を越えると、最終的に得られるニオブ酸化物微粒子分散ゾル中のアルカリおよび/または酸根が多過ぎてゾルの安定性や透明性が低下したり、また安定性がないなどのために用途が制限される問題がある。
【0015】
前記ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液において、ニオブ以外の元素としてはFe、Ce、Si、Zr、Al、Ti、Sn、Sb、W、Znから選ばれる1種または2種以上が好適に用いられ、化合物としてはこれら元素の硝酸塩、硫酸塩、塩化物、有機酸塩、酸化物等が用いられる。具体的には、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硝酸第二鉄、硝酸セリウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、四塩化チタン、硫酸チタニル、硝酸錫、五塩化アンチモン、タングステン酸アンモニウム、硝酸亜鉛、酸化鉄、酸化セリウム、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化錫、酸化アンチモン、酸化タングステン、酸化亜鉛等が挙げられる。ここで、酸化物には水酸化物、水和物を含み、これらのゾルを用いることが好ましい。
【0016】
本発明方法では、ニオブ酸分散液またはニオブ酸とニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液、あるいはニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液(以下、ニオブ酸等という。)に過酸化水素を加える。過酸化水素の使用量は、ニオブ酸等を酸化物に換算し、合計酸化物1重量部に対して濃度が概ね5〜40重量%の過酸化水素をH22に換算して1.5〜6重量部、好ましくは2〜4重量部加える。
このときのニオブ酸等の濃度は酸化物に換算した濃度で0.5〜10重量%、好ましくは1〜5重量%となるように調整する。
【0017】
ニオブ酸等に対するH22の使用量が1.5重量部未満の場合は、ニオブ酸および/またはH22に可溶性のニオブ以外の元素の化合物が完全に溶解および/または解膠せず、未反応のニオブ酸等が残存するので好ましくない。
ニオブ酸等に対するH22のモル数が6重量部を越えると、溶解および/または解膠する速度は大きく、反応は低温であるいは短時間で終了するが、過剰の過酸化水素が系内に残存することになり、経済的でなく、また水熱処理の際に酸素ガスが発生したり、圧力の上昇を伴う危険がある。
ニオブ酸等に対するH22の使用量が上記範囲にあれば、加熱溶解温度にもよるが、ニオブ酸は0.5〜5時間で完全に溶解および/または解膠することができる。
【0018】
また、ニオブ酸等の濃度が酸化物として0.5重量%未満の場合は濃度が低過ぎて生産効率が低く、ニオブ酸等の濃度が酸化物として10重量%を越えると得られるニオブ系酸化物微粒子分散液の粘度が高くなり過ぎたり、安定性に欠けることがある。
【0019】
なお、溶解および/または解膠する際に、必要に応じて加熱することができる。加熱温度としては概ね30〜100℃の範囲にあることが好ましい。加熱温度が30℃未満では溶解、解膠が不充分となることがあり、ついで水熱処理して得られるニオブ系酸化物微粒子分散液中の微粒子の粒子径分布が不均一になり易い。また、溶解および/または解膠時間が長くなり過ぎて生産効率が低下する。一方、加熱温度が100℃を越えた場合、溶解および/または解膠時間が短くなるものの、ついで水熱処理して得られるニオブ系酸化物微粒子分散液の微粒子の粒子径分布が不均一になる傾向がある。
【0020】
本発明の第1の製造方法は、前記したように、ニオブ酸分散液またはニオブ酸とニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液を80〜300℃で水熱処理する。
第2の製造方法は、ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液と、ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液とを混合し、80〜300℃で水熱処理する。
第3の製造方法は、ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液に、ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理する。
【0021】
上記において、ニオブ酸とニオブ以外の元素の化合物とを用いる場合、最終的に得られるニオブ系酸化物微粒子中のNb25の含有量が50重量%以上、さらには70重量%以上であることが好ましい。ニオブ系酸化物微粒子中のNb25の含有量が50重量%未満の場合は得られるニオブ系酸化物微粒子の半導体、光学特性、誘電体特性、紫外線遮蔽特性、耐光性、耐候性等が不充分となることがある。
【0022】
水熱処理温度が80℃未満の場合はニオブ酸の脱水による酸化物化が充分進行せず、得られるニオブ系酸化物微粒子分散液は安定性に欠けることがあり、水熱処理温度が80〜300℃の範囲にあれば、粒子径が均一で、安定性に優れたニオブ系酸化物微粒子分散液が得られる。好ましい水熱処理温度は100〜250℃の範囲である。
【0023】
前記した水熱処理は粒子成長調整剤の存在下で行うことが好ましい。
本発明に用いる粒子成長調整剤としては、カルボン酸またはカルボン酸塩、ヒドロキシカルボン酸(1分子内にカルボキシル基とアルコール性水酸基とを有する)、ヒドロキシカルボン酸塩が用いられる。
【0024】
具体的には、蟻酸、酢酸、蓚酸、アクリル酸(不飽和カルボン酸)、グルコン酸等のモノカルボン酸およびモノカルボン酸塩、リンゴ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、などの多価カルボン酸および多価カルボン酸塩等が挙げられる。
また、α−乳酸、β−乳酸、γ−ヒドロキシ吉草酸、グリセリン酸、酒石酸、クエン酸、トロパ酸、ベンジル酸のヒドロキシカルボン酸およびヒドロキシカルボン酸塩が挙げられる。
【0025】
このような粒子成長調整剤は、ニオブ酸を調製する際にニオブ化合物に加えて加水分解してもよく、調製したニオブ酸等に加えてもよく、また過酸化水素を加えて溶解、解膠した後に加えてもよい。
粒子成長調整剤の使用量は、ニオブ化合物、ニオブ酸、ニオブ以外の元素の化合物の合計モル数(Nm)と粒子成長調整剤のモル数(Pm)とのモル比(Pm)/(Nm)が0.01〜1、さらには0.1〜0.5の範囲にあることが好ましい。
【0026】
前記モル比が0.01未満の場合は粒子成長調整剤が不足し、水熱処理して得られるニオブ系酸化物微粒子の粒子径が不均一であったり、粗大な粒子が生成することがある。
前記モル比が1を越えてもさらに粒子径を均一にしたり、粗大粒子の生成を抑制する効果が向上することもなく、加えて粒子成長調整剤が多いことおよび収率が低下することがあり、経済性が低下する問題がある。
【0027】
本発明では、前記水熱処理を種粒子の存在下で行うことが好ましい。
種粒子としてはAlなどの周期律表第III族、Ti、Zr、Si、Snなどの第IV族、V、Nb、Sbなどの第V族、Wなどの第VI族、およびFeなどの第VIII族から選ばれた1種または2種以上の元素の無機化合物が用いられる。
【0028】
無機化合物の形態としては、塩、酸化物、水酸化物またはオキシ酸あるいはオキシ酸塩等が用いられ、好ましくは、酸化物、水酸化物またはオキシ酸等のゲルまたはゾルを用いる。なかでもゾルは分散性、安定性、粒子径の均一性が高く、均一な粒子径のニオブ系酸化物微粒子を得ることができる。
種粒子の平均粒径は5nm未満であることが好ましいが、特に0.5〜3nmの範囲にあることが好ましい。
【0029】
また、種粒子の使用量はニオブ化合物、ニオブ酸、ニオブ以外の元素の化合物の酸化物としての合計重量の1〜30重量%、さらには2〜20重量%の範囲にあることが好ましい。
種粒子の使用量が1重量%未満の場合は粒子径を均一にする効果が不充分となることがあり、種粒子の使用量が30重量%を超えると種粒子がニオブ化合物以外の場合にニオブ系酸化物の含有量が不充分となり、得られるニオブ系酸化物微粒子の半導体、光学特性、誘電体特性、紫外線遮蔽特性、耐光性、耐候性等が低下し用途が制限されることがある。
【0030】
さらに、本発明では、水熱処理を前記種粒子に代えて核粒子の存在下で行うことができる。
核粒子としては、前記種粒子と同種の粒子であって、平均粒子径が5〜50nm、好ましくは10〜30nmの範囲にある酸化物または水酸化物の粒子が用いられる。
【0031】
核粒子の使用量はニオブ化合物、ニオブ酸、ニオブ以外の元素の化合物の酸化物としての合計重量の5〜50重量%、さらには10〜30重量%の範囲にあることが好ましい。 特に、最終的に得られるニオブ系酸化物微粒子中のNb25の含有量が50重量%以上であることが好ましい。ニオブ系酸化物微粒子中のNb25の含有量が50重量%未満の場合は得られるニオブ系酸化物微粒子の半導体、光学特性、誘電体特性、紫外線遮蔽特性、耐光性、耐候性等が不充分となることがある。
【0032】
さらに、本発明では、前記のようにして得られたニオブ系酸化物微粒子分散液に、(1)ニオブ酸分散液、(2)ニオブ酸とニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液、(3)ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液、のいずれかに過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理してニオブ系酸化物微粒子分散液を調製することもできる。
さらに、ニオブ系酸化物微粒子分散液に、(4)ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理してニオブ系酸化物微粒子分散液を調製することもできる。
【0033】
これらの製造方法により、ニオブ系酸化物微粒子がコアで、ニオブ酸等を溶解および/または解膠した溶液に由来する酸化物でコア粒子を被覆してシェルを形成したコア−シェル構造を有するニオブ系酸化物微粒子の分散液が得られる。
例えば、(1)の場合はコア粒子としてのニオブ系酸化物微粒子をニオブ酸化物で被覆したニオブ系酸化物微粒子が得られ、(2)の場合はコア粒子としてのニオブ系酸化物微粒子をニオブ酸とニオブ以外の元素の複合酸化物で被覆したニオブ系酸化物微粒子が得られ、(3)および(4)の場合はコア粒子としてのニオブ系酸化物微粒子を、ニオブ酸化物を含まない酸化物、複合酸化物で被覆したニオブ系酸化物微粒子が得られる。
【0034】
上記におけるニオブ以外の元素がFe、Ce、Si、Zr、Al、Ti、Sn、Sb、W、Znから選ばれる1種または2種以上であることが好ましく、ニオブ以外の元素の化合物としては前記と同様の化合物が用いられる。
【0035】
水熱処理温度は、前記と同様80〜300℃、さらには100〜250℃の範囲にあることが好ましい。
水熱処理温度が80℃未満の場合はニオブ酸等の酸化物の緻密な被覆層(シェル)の形成ができない場合があり、水熱処理温度が300℃を超えると得られるニオブ系酸化物微粒子が凝集することがある。
【0036】
上記のようにして得られたニオブ系酸化物微粒子分散液は、必要に応じてイオン交換樹脂などにより残存するイオンを除去して用いることもできる。しかしながら、本発明で得られるニオブ酸化物微粒子分散液には不純物やイオンが洗浄工程で予め低減されているので必ずしもその必要はない。
前記の方法で得られたニオブ酸化物微粒子分散液は、ロータリーエバポレーターなどでメタノール、エタノールなどのアルコール、1,3-ブチレングリコールなどのグルコール類やグリセリンなど所望の溶媒に置換して用いることもできる。また、得られたニオブ酸化物微粒子分散液は分散媒が有機溶媒であっても非常に安定であり、凝集したり、ゲル化したり、沈殿が生ずることはない。
【0037】
本発明の製造方法によって得られるニオブ系酸化物微粒子分散液の微粒子の平均粒子径は概ね1〜100nm、好ましくは2〜60nmの範囲にある。
平均粒子径が1nm未満の場合は、安定性が不充分となり濃度の高い微粒子分散ゾルを得ることができないことがあり、平均粒子径が100nmを越えると、粒子が大き過ぎて沈降したり、透明性が不充分となることがある。
また、上記のようにして得られたニオブ酸化物微粒子分散液は、そのまま各種用途に用いることもできるし、必要に応じて希釈したり濃縮して用いることもできる。
【0038】
このようなニオブ系酸化物微粒子分散液の濃度は、酸化物として5〜40重量%、さらには10〜30重量%の範囲にあることが好ましい。
ニオブ系酸化物微粒子分散液の濃度が酸化物として5重量%未満の場合は実用性に劣り、ニオブ系酸化物微粒子分散液の濃度が酸化物として40重量%を越えると分散媒によっても異なるが安定性が不充分となることがある。
【0039】
本発明では、得られたニオブ系酸化物微粒子分散液を乾燥し、必要に応じて焼成してニオブ系酸化物微粒子として用いることができる。
乾燥温度は、ニオブ酸化物微粒子粉体が得られれば特に制限はなく、通常室温〜120℃で乾燥する。
ついで、必要に応じて焼成することができるが、このときの温度は概ね300〜700℃の範囲である。このような温度範囲で焼成すると酸化物化あるいは成分によっては結晶化が充分進行し、光学特性、紫外線遮蔽性、耐候性等に優れたニオブ系酸化物微粒子を得ることができる。700℃を越える高温で焼成すると、粒子径にもよるが粒子が凝集したり互いに融着することがある。
【0040】
さらに、ニオブ系酸化物微粒子はシランカップリング剤等の加水分解性有機ケイ素化合物で表面処理したり表面被覆して用いることもできる。表面処理方法あるいは表面被覆方法としては特に制限はなく、例えば、分散液中に加水分解性有機ケイ素化合物を添加し、所定温度、所定時間反応させることによって、表面が有機シラン化合物で被覆される。
ここで用いられる加水分解性有機ケイ素化合物の種類は、用途に応じて適宜選定される。
【0041】
表面改質用加水分解性有機ケイ素化合としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリ工トキシシランなどのトリアルコキシまたはトリアシルオキシシラン類、およびジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロビルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなどのジアルコキシシランまたはジアシルオキシシラン類またはトリメチルクロロシランなどが挙げられ、単独または2種以上組合せることも可能である。
【0042】
ニオブ系酸化物微粒子の表面をより良く改質するには、上記加水分解性有機ケイ素化合物のアルコール溶液とニオブ系酸化物微粒子分散液とを混合し、必要に応じて加水分解触媒として酸またはアルカリを加え、一定温度、一定時間反応させた後、混合液中の水を分離することによって有機溶剤に分散したニオブ系酸化物微粒子ができる。この表面改質により、ニオブ系酸化物微粒子は有機溶媒中での分散安定性が向上する。
【0043】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0044】
ニオブ系酸化物微粒子(A1)分散液の調製
濃度35.3重量%のKNbO3溶液1917gと水23083gを混合し、濃度2.71重量%のKNbO3溶液とし、これに1mol/Lの酢酸を添加し、中和した。この時のpHは5.5であった。これを濾過し、蒸留水で洗浄してニオブ酸のゲル1990gを得た。このゲルの固形分濃度は、Nb25換算で24.01重量%であった。
得られたニオブ酸のゲル1460gに水33540gを添加し、充分撹拌した後、濃度35重量%の過酸化水素水4000gを加え、80℃で2時間加熱溶解した。得られた溶液に水を加え、Nb25換算で濃度0.5重量%とした後、オートクレーブにて150℃で18時間水熱処理を行った。
【0045】
ついで、これを濃縮し、Nb25換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(A1)水分散液3500gを得た。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(A1)分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%のニオブ系酸化物微粒子(A1)メタノール分散液を得た。
【0046】
前記各粒子について平均粒子径をレーザー法(PARTICLE SIZING SYSTEM社製:NICOMP380)にて測定し、粒子径の均一性を観察し、さらに粒子中の酸根を測定し、結果を表1に示した。また、各分散液について安定性、透明性、粒子の屈折率を評価し、結果1を表に示した。
測定方法と評価基準を以下に示すが、後述する実施例2以下の実施例と比較例においても、これらの測定方法と評価基準により各粒子の測定、評価を行った。
【0047】
粒子径の均一性
ニオブ系酸化物微粒子(A1)メタノール分散液から採取したニオブ系酸化物微粒子(A1)の透過型電子顕微鏡写真を撮影し、以下の基準で評価した。
平均粒子径の1/2以下の粒子または2倍以上の粒子が殆ど認められない : ○
平均粒子径の1/2以下の粒子または2倍以上の粒子が僅かに認められる : △
平均粒子径の1/2以下の粒子または2倍以上の粒子が明らかに認められる : X
【0048】
水分散液安定性の測定
Nb25換算で濃度10重量%に希釈して調整した直後のニオブ酸化物微粒子分散液の粘度と、これを50℃で10日間加熱した後の粘度とを測定し、以下の基準で評価した。
粘度上昇率10%未満 : ○
粘度上昇率10〜50%未満: △
粘度上昇率50%以上 : ×
【0049】
メタノール分散液安定性の測定
Nb25換算で濃度20重量%に調整した直後のニオブ酸化物微粒子分散液の粘度と、これを50℃で10日間加熱した後の粘度とを測定し、以下の基準で評価した。
粘度上昇率10%未満 : ◎
粘度上昇率10〜20%未満 : ○
粘度上昇率20〜50%未満 : △
粘度上昇率50%以上 : ×
【0050】
透明性の測定
Nb25換算で濃度0.1重量%に調整したニオブ酸化物微粒子分散液を、厚さ10mmの石英セルに入れ、透過率測定装置(日本分光(株)製:V−550、波長550nm)で透過率を測定し、以下の基準で評価した。
透過率90%以上 : ○
透過率90%未満 : ×
【実施例2】
【0051】
ニオブ系酸化物微粒子(A2)分散液の調製
実施例1の1mol/Lの酢酸溶液を1mol/Lのシュウ酸に代えた以外は実施例1と同様にして、ニオブ系酸化物微粒子(A2)水分散液およびニオブ系酸化物微粒子(A2) メタノール分散液を得た。
【実施例3】
【0052】
ニオブ系酸化物微粒子(A3)分散液の調製
実施例1の1mol/Lの酢酸溶液を1mol/Lの塩酸に代えた以外は実施例1と同様にして、ニオブ系酸化物微粒子(A3)水分散液およびニオブ系酸化物微粒子(A3)メタノール分散液を得た。
【実施例4】
【0053】
ニオブ系酸化物微粒子(A4)分散液の調製
実施例1で得たニオブ酸化物微粒子(A1) メタノール分散液1000gと純水1000gを反応容器にとり、63℃に加熱した後、撹拌しながらテトラエトキシシランとメタノール(重量比153/1000)の混合液2リットルを除々に添加した。添加終了後、さらに溶液の温度を63℃に維持して熟成し、ついでメタノールで溶媒置換するとともに濃縮し、固形分濃度30.5重量%のテトラエトキシシランで表面改質されたニオブ系酸化物微粒子(A4) メタノール分散液を得た。
【実施例5】
【0054】
ニオブ系酸化物微粒子(A5)分散液の調製
実施例4のテトラエキトキシシランをメチルトリメトキシシランに代えた以外は実施例4と同様にして、メチルトリメトキシシランで表面改質されたニオブ系酸化物微粒子(A5) メタノール分散液を得た。
【実施例6】
【0055】
ニオブ系酸化物微粒子(A6)分散液の調製
実施例4のテトラエキトキシシランをγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランに代えた以外は実施例4と同様にして、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシランで表面改質されたニオブ系酸化物微粒子(A6) メタノール分散液を得た。
【実施例7】
【0056】
ニオブ系酸化物微粒子(A7)分散液の調製
五フッ化ニオブ706.91gを水に溶解し、これに濃度15重量%のアンモニア水4.69Lを40分間で添加した。これを濾過、洗浄し、2000gのニオブ酸のゲルを得た。このゲルの固形分濃度は、Nb25換算で25.0重量%であった。
得られたニオブ酸のゲル1300gに水33540gを添加し、充分撹拌した後、濃度35重量%の過酸化水素水3000gを加え、80℃で2時間加熱溶解した。得られた溶液に水を加え、Nb25換算で濃度0.5重量%とした後、オートクレーブにて200℃で18時間水熱処理を行った。
【0057】
ついで、これを濃縮し、Nb25換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(A7)水分散液3500gを得た。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(A7)水分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%のニオブ系酸化物微粒子(A7) メタノール分散液を得た。
【実施例8】
【0058】
ニオブ系酸化物微粒子(A8)分散液の調製
実施例7で得たメタノール分散ニオブ酸化物微粒子(A7)分散液を用いた以外は実施例4と同様にして、テトラエトキシシランで表面改質されたニオブ系酸化物微粒子(A8) メタノール分散液を得た。
【実施例9】
【0059】
ニオブ系酸化物微粒子(A9)分散液の調製
五塩化ニオブを水にて加水分解し、濾過洗浄して、2780gのニオブ酸のゲルを得た。このゲルの固形分濃度は、Nb25換算で22.7重量%であった。このニオブ酸のゲルをNb25換算で500gとなるように計り取り、10Lのビーカーに入れ、更に濃度35重量%の過酸化水素水1800gを入れ、撹拌しながら加熱し、70℃で2時間溶解した。ついで、これに水2000gを加えて70℃で1時間加熱し再び水を加えNb25換算濃度で1重量%の溶液とし、これをオートクレーブに入れ、220℃で15時間水熱処理を行った。
【0060】
ついで、これを濃縮し、Nb25換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(A9)水分散液500gを得た。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(A9)水分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%のニオブ系酸化物微粒子(A9) メタノール分散液を得た。
【実施例10】
【0061】
ニオブ系酸化物微粒子(A10)分散液の調製
五塩化ニオブを水にて加水分解し、濾過洗浄して、2780gのニオブ酸のゲルを得た。
このゲルの固形分濃度は、Nb25換算で22.7重量%であった。このニオブ酸のゲルをNb25換算で500gとなるように計り取り、水22797gの入った50L容器に入れ、更に濃度35重量%の過酸化水素水5714gを入れ、撹拌しながら加熱し、70℃で2時間溶解した。
ついで、これに水19286gを加えNb25換算濃度で1重量%の溶液とした。ついで、これにコア粒子として平均粒子径7nmでありSiO2濃度が15重量%のシリカゾル333gと水4662gとを混合し、オートクレーブに入れ、220℃で15時間水熱処理を行った。
【0062】
ついで、これを濃縮し、(Nb25+SiO2)換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(A10)水分散液5500gを得た。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(A10)水分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%の複合酸化物微粒子(A10) メタノール分散液を得た。
【実施例11】
【0063】
ニオブ系酸化物微粒子(A11)分散液の調製
五塩化ニオブと塩化第二鉄を水にて加水分解し、濾過洗浄して、2780gのニオブ酸と鉄の水酸化物の混合ゲルを得た。このゲルの固形分濃度は、(Nb25+Fe23)換算で23.5重量%であった。このニオブ酸と鉄の水酸化物の混合ゲルを(Nb25+Fe23)換算で500gとなるように計り取り、水22872gの入った50L容器に入れ、更に濃度35重量%の過酸化水素水5714gを入れ、撹拌しながら加熱し、70℃で2時間溶解した後、これに水19286gを加え(Nb25+Fe23)換算濃度で1重量%の溶液とした。 ついで、これに、コア粒子として平均粒子径7nmでありSiO2濃度が15重量%のシリカゾル333gと水4662gとを混合し、これをオートクレーブに入れ、220℃で15時間水熱処理を行った。
【0064】
ついで、これを濃縮し、(Nb25+Fe23+SiO2)換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(A11)水分散液5238gを得た。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(A11)水分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%のニオブ系酸化物微粒子(A11) メタノール分散液を得た。
【実施例12】
【0065】
ニオブ系酸化物微粒子(A12)分散液の調製
(コア粒子の調製)
実施例3と同様にして、コア粒子用のニオブ系酸化物微粒子(A3)水分散液を得た。ニオブ系酸化物微粒子の平均粒径は20nmであった。
(ジルコニウム化合物溶解液の調製)
オキシ塩化ジルコニウム171gを水128gに加えたZrO2濃度2重量%の水溶液に15%アンモニア水を添加し、pH8.5のスラリーを得た。このスラリーを濾過して洗浄し、ZrO2として10重量%のケーキを得た。このケーキ60gに水3.08kgを加え、さらにKOH水溶液を加えてアルカリ性にした後、これに過酸化水素120gを加えて加熱し、ZrO2として2重量%のジルコニウムの過酸化水素溶解水溶液299gを調製した。
(ケイ酸液の調製)
市販の水ガラスを水で希釈したのち、陽イオン交換樹脂で脱アルカリし、SiO2濃度2重量%のケイ酸液926gを調製した。
【0066】
上記で調製したコア粒子用のニオブ系酸化物微粒子(A3)分散液3500gに水14kgを加えて固形分濃度2重量%にした後90℃に加熱し、ジルコニウムの過酸化水素溶解水溶液299gとケイ酸液926gを混合した。ついで、この混合液をオートクレーブ中で200℃で18時間水熱処理を行った後、濃縮して固形分濃度10重量%の淡乳白色をした透明な酸化ニオブ粒子を酸化ケイ素、酸化ジルコニウムからなる複合酸化物で被覆したニオブ系酸化物微粒子(A12)水分散液を得た。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(A12)水分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%のニオブ系酸化物微粒子(A12) メタノール分散液を得た。
【実施例13】
【0067】
ニオブ系酸化物微粒子(A13)分散液の調製
(コア粒子の調製)
四塩化チタンを水にて加水分解し、濾過洗浄して、2780gのチタン酸のゲルを得た。このゲルの固形分濃度は、TiO2換算で9.4重量%であった。このチタン酸のゲルをTiO2換算で500gとなるように計り取り、水22872gの入った50L容器に入れ、更に濃度35重量%の過酸化水素水5714gを入れ、撹拌しながら加熱し、90℃で2時間溶解した。ついで、これに水19286gを加えTiO2換算濃度で0.5重量%の溶液とした。これをオートクレーブに入れ、150℃で15時間水熱処理を行った。ついで、これを濃縮し、TiO2換算で濃度1.5重量%、平均粒径12nmの酸化チタン微粒子分散液5238gを得た。
【0068】
(ニオブ化合物溶解液の調製)
五塩化ニオブを水にて加水分解し、濾過洗浄して、2780gのニオブ酸のゲルを得た。このゲルの固形分濃度は、Nb25換算で22.7重量%であった。このニオブ酸のゲルをNb25換算で500gとなるように計り取り、水22797gの入った50L容器に入れ、更に濃度35重量%の過酸化水素水5714gを入れ、撹拌しながら加熱し、70℃で2時間溶解した。ついで、これに水19286gを加えNb25換算濃度で1重量%のニオブの過酸化水素溶解水溶液とした。
【0069】
(ジルコニウム化合物溶解液の調製)
オキシ塩化ジルコニウム1710gを水1280gに加えたZrO2濃度2重量%の水溶液に15%アンモニア水を添加し、pH8.5のスラリーを得た。このスラリーを濾過して洗浄し、ZrO2として10重量%のケーキを得た。このケーキ600gに水30.8kgを加え、さらにKOH水溶液を加えてアルカリ性にしたのち、これに過酸化水素1200gを加えて加熱し、ZrO2として2重量%のジルコニウムの過酸化水素溶解水溶液2990gを調製した。
【0070】
上記で調製したコア粒子用の酸化チタン微粒子分散液5238gを90℃に加熱し、ニオブの過酸化水素溶解水溶液とジルコニウムの過酸化水素溶解水溶液2990gを混合し、ついで、この混合液をオートクレーブ中で180℃で18時間水熱処理を行った後、濃縮して固形分濃度10重量%の淡乳白色をした透明な酸化チタン微粒子をニオブ酸化物と酸化ジルコニウムとからなる複合酸化物で被覆したニオブ系酸化物微粒子(A13)水分散液を得た。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(A13)水分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%のニオブ系酸化物微粒子(A13) メタノール分散液を得た。
【実施例14】
【0071】
ニオブ系酸化物微粒子(A14)分散液の調製
濃度35.3重量%のKNbO3溶液1917gと水23083gを混合し、濃度2.71重量%のKNbO3溶液とし、これに1mol/Lの酢酸を添加し、中和した。この時のpHは5.5であった。これを濾過し、蒸留水で洗浄してニオブ酸のゲル1990gを得た。このゲルの固形分濃度は、Nb25換算で24.01重量%であった。
【0072】
(種粒子分散液の調製)
ニオブ酸のゲルの一部498gに水を加えてNb25換算で濃度2重量%のニオブ酸のゲル分散液とし、これに20分間超音波を照射してニオブ酸の種粒子分散液5978gを調製した。種粒子の平均粒子径は約1nmであった。
残りのニオブ酸のゲル1492gに水35823gを添加し、充分撹拌した後、濃度35重量%の過酸化水素水6000gを加え、80℃で2時間加熱溶解した。得られた溶液に水を加え、Nb25換算で濃度0.5重量%とした後、これに種粒子分散液5978gを加え、オートクレーブにて180℃で18時間水熱処理を行った。
【0073】
ついで、これを濃縮し、Nb25換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(A14)水分散液3500gを得た。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(A14)水分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%のニオブ系酸化物微粒子(A14) メタノール分散液を得た。
【比較例1】
【0074】
ニオブ系酸化物微粒子(R1)分散液の調製
濃度35.3重量%のKNbO3溶液1917gと水23083gを混合し、濃度2.71重量%のKNbO3溶液とし、これに1mol/Lの酢酸を添加し、中和した。この時のpHは5.5であった。これを濾過し、蒸留水で洗浄してニオブ酸のゲル1990gを得た。このゲルの固形分濃度は、Nb25換算で24.01重量%であった。
得られたニオブ酸のゲル1460gに水33540gを添加し、超音波を照射しながら充分撹拌した後、80℃で2時間熟成し、これに水を加え、Nb25換算で濃度0.5重量%とした後、オートクレーブにて150℃で18時間水熱処理を行った。
【0075】
ついで、これを濃縮し、Nb25換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(R1)水分散液としたが、該微粒子が短時間に沈降し比較的安定な分散液は得られなかった。凝集した粗大な粒子が認められた。
【比較例2】
【0076】
ニオブ系酸化物微粒子(R2)分散液の調製
五塩化ニオブと塩化第二鉄を水にて加水分解し、濾過洗浄して、2780gのニオブ酸と鉄の水酸化物の混合ゲルを得た。このゲルの固形分濃度は、(Nb25+Fe23)換算で23.5重量%であった。このニオブ酸と鉄の水酸化物の混合ゲルを(Nb25+Fe23)換算で500gとなるように計り取り、水22872gの入った50L容器に入れ、超音波を照射しながら充分撹拌した後、70℃で2時間熟成し、これに水19286gを加え(Nb25+Fe23)換算濃度で1重量%の溶液とした。ついで、これに、平均粒子径7nmでありSiO2濃度が15重量%のシリカゾル333gと水4662gとを混合し、これをオートクレーブに入れ、220℃で15時間水熱処理を行った。
【0077】
ついで、これを濃縮し、Nb25換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(R2)水分散液としたが、該微粒子が短時間に沈降し比較的安定な分散液は得られなかった。溶液中には粗大な粒子が生成していた。また、シリカ粒子に微細なニオブ酸と鉄の水酸化物の混合ゲルが付着した粒子、ニオブ酸と鉄の水酸化物とからなる凝集した粒子が認められた。
【比較例3】
【0078】
ニオブ系酸化物微粒子(R3)分散液の調製
特許文献1(特公平8−701号公報)の実施例1に準拠して、ニオブ系酸化物微粒子(R3)分散液を調製した。
濃度35.3重量%のKNbO3溶液1917gと水23083gを混合し、濃度2.71重量%のKNbO3溶液とし、これに1mol/Lの酢酸を添加し、中和した。この時のpHは5.5であった。これを濾過し、蒸留水で洗浄してニオブ酸のゲル1990gを得た。このゲルの固形分濃度は、Nb25換算で24.01重量%であった。このニオブ酸のゲルを乾燥して水酸化ニオブを調製した。
【0079】
このようにして調製した水酸化ニオブ148.2gを純水187.5mlに分散させ、これに濃度35重量%の塩酸104.3gを加えた後、撹拌しながら濃度35重量%の過酸化水素水77.7gを徐々に加え、純水672.9gを追加して水酸化ニオブをペルオキシニオブ錯体に変化させペルオキシニオブの錯体水溶液を調製した。この水溶液を45℃の温度に、48時間保持してペルオキシニオブ酸ゾルを調製した。
【0080】
ついで、生成したペルオキシニオブ酸ゾルに6Nアンモニア水を滴下してそのpHを1.5に調整し、限外濾過膜法で精製して塩素イオン等の不純イオンを除去するとともに濃縮し、Nb25換算で濃度10重量%のニオブ系酸化物微粒子(R3)水分散液を調製した。
ついで、ニオブ系酸化物微粒子(R3)水分散液の一部について、分散媒の水をメタノールで置換するとともに濃縮して、固形分濃度20重量%のニオブ系酸化物微粒子(R3) メタノール分散液を得た。
【0081】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明の製造方法により得られるニオブ酸化物微粒子分散ゾルは、触媒、触媒担体、さらには機能性セラミックスとして圧電体、半導体、センサー、オプトエレクトロニクス材、誘電体等の他、化粧料成分としても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニオブ酸分散液またはニオブ酸とニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠し、得られた溶液を80〜300℃で水熱処理することを特徴とするニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項2】
ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液と、ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液とを混合し、80〜300℃で水熱処理することを特徴とするニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項3】
ニオブ酸分散液に過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液に、ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理することを特徴とするニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項4】
前記水熱処理を粒子成長調整剤の存在下で行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項5】
前記ニオブ以外の元素がFe、Ce、Si、Zr、Al、Ti、Sn、Sb、W、Znから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項6】
前記水熱処理を種粒子の存在下で行うことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項7】
前記水熱処理を核粒子の存在下で行うことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜請求項7で得られたニオブ系酸化物微粒子分散液に、(1)ニオブ酸分散液、(2)ニオブ酸とニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液、(3)ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液、のいずれかに過酸化水素を加えて溶解および/または解膠して得られた溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理することを特徴とするニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜請求項7で得られたニオブ系酸化物微粒子分散液に、ニオブ以外の元素の化合物の分散液または溶液を混合し、80〜300℃で水熱処理することを特徴とするニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。
【請求項10】
前記ニオブ以外の元素がFe、Ce、Si、Zr、Al、Ti、Sn、Sb、W、Znから選ばれる1種または2種以上であることを特徴とする請求項8または9記載のニオブ系酸化物微粒子分散液の製造方法。

【公開番号】特開2008−81378(P2008−81378A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−265748(P2006−265748)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(000190024)触媒化成工業株式会社 (458)
【Fターム(参考)】