説明

ニット衣料

【課題】生産性を向上させ、ニット衣料の縁取り部が反り返ることがなく、また、分厚くならないニット衣料を提供する。
【解決手段】タック目編み、片畦編み、両畦編み、袋編み、振り柄編みのいずれか、あるいは、これらの組み合わせにより、ニット衣料の縁取り部22を編成し、上記縁取り部22のウェールa〜g・・・の編み目を、本体部分23の編み組織の折り返しコース1〜5・・・ごとに、または複数飛びの折り返しコースごとに本体部分23の編み糸でもって編み込んでなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ショーツ、シュミーズあるいはブラジャー等のニット衣料であって、本体部分に縁取りを設けたニット衣料に関する。
【背景技術】
【0002】
ショーツ、シュミーズあるいはブラジャー等は本体部分と縁取り部とからなり、その編成技術に関する先行技術として特許文献1および特許文献2がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004-137636号公報(段落[0009]図1、図2)
【特許文献2】特公昭60−35441号公報(特許請求の範囲および図面)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、「この縁部10,11は前後に分岐し前側では10a,11a、後側では10b,11bとなる。編出しに続いて縁部10a,11aをリブ編み組織で形成しつつ、適宜コース編成するごとに縁部10a,11aを内側に移動させ、最内側のループを足挿通用開口5,6の上縁のループと重ねる編成を繰り返して縁部10a,11aを形成するとともに足挿通用開口5,6の上縁のループを伏し目処理する。」ことを技術内容とするものである。
【0005】
また、特許文献2は、「伸縮性糸により編成される本体編地にウェール方向の可視切断線を形成しつつ、該切断線に沿った周縁編地とこれにつづく本体編地の両方にわたる内側のあるコースでは多数条のウェールをコース方向にわたって長寸にフロートさせ、これに1ないし若干のコースを隔てたコースでは前記長寸のフロートの長さの中間において少数条のウェールをコースの方向にわたって短寸にフロートさせる組合せを、ウェール方向にくり返し分布して編成した後、上記切断線に沿って切断し、上記長寸のフロートとその伸縮性糸の収縮による編地の引寄せ作用で上記周縁編地を本体編地に二つ折りに折り曲げ状態に保持し、また短寸のフロートとその伸縮性糸の収縮により二つ折りの縁部を扁平に形成する」ものである。
【0006】
上記特許文献1の先行技術では、前後の編地を編成しながら縁部を形成するものであるから生産性が低く、縁取り部の先端部分の先でギザギザになり、特許文献2の技術では、縁取り部が分厚くなる問題点があり、一般的に編み組織の縁(特にコース側)に反り返りが現われ、長くフロートした編み糸が着衣の際に爪・指に引っ掛かる等の問題があった。
【0007】
上記問題に鑑みこの発明は、生産性を向上させ、ニット衣料の縁取り部が反り返ることがなく、また、分厚くならないニット衣料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためにこの発明は、タック目編み、片畦編み、両畦編み、袋編み、振り柄編みのいずれか、あるいは、これらの組み合わせにより、ニット衣料の縁取り部を編成し、上記縁取り部のウェールの編み目を、本体部分の編み組織の折り返しコースごとに、または複数飛びの折り返しコースごとに本体部分の編み糸でもって編み込んでなる構成を採用したもので、この構成はショーツ、ブラジャーあるいは靴下の爪先部分に適用することができる。
【発明の効果】
【0009】
上記の如く構成するこの発明によれば、縁取り部が別途編成され、本体部分を編成するときに縁取り部のウェールを編み込むので生産性が高くなり、縁周り部分が反り返ることがなく分厚くなることもない。また、縁取り部のウェールを編み込む本体部分のコースの折り返し間隔を適宜変えることによって本体部分の膨らみ具合を調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
次にこの発明の実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図1はショーツを編成する場合の説明図で、同図(a)に示すように、予め股部21と大腿部挿入部27の縁取り部22a、22bとをタック目編み(ニット目編み、片畦編み、両畦編み、袋編み、振り柄編みのいずれか、あるいは、これらの組合せでもよい)によって横向きH形で、その端が繋がった状態に編成する。
【0012】
こうして編成した縁取り部22a、22bに対し、その縁取り部を針床の編針から外さず引き続いて、例えばゴム編みで同図(b)に示すように、本体部分23の前身頃23fと後身頃23bを交互(交互とはキャリッジの往復ごと、複数往復ごとを意味する)に編み進めていくが、コース方向に編み進む編み糸が折り返すとき、図2に示すように縁取り部のウェールd,e,f,g・・・(・・・a,b,cは股部に相当)に編み針が進入して編み込んで行くこととなる。なお、前身頃と後身頃は、別々の編み糸が、別々の糸道を経て供給されて交互に編成される。
【0013】
本体部分23の前身頃23f側の編み組織は、編み進む内に徐々に目増やしが進み大腿部挿入部27の曲線が画かれ、同じく後身頃23b側の編み組織は、急に目増やしが進みヒップ部分の曲線が画かれ、前身頃・後身頃の縁取り部22f,22bが繋がったところで大腿部挿入部27が形成される。
【0014】
また、本体部分23の前身頃23fを編み進むときは、コースの折り返しごとにウェールの編み目を編み込み本体部分23の前身頃23fの編み組織に緩みがない(着用者のお腹にフィットする)ようにし、後身頃23bを編み進むときは、複数、あるいはそれ以上の間隔をあけたコースの折り返しごとにウェールの編み目を編み込み本体部分23の後身頃23bの編み組織に膨らみができるようにしてヒップの収まりをよくする。
【0015】
縁取り部22がなくなると胴回り(本体部分23)の編成になるが、胴周りの編成では、編み糸を1個の糸道から供給して前後の針床を周回するように編成する。また、二個の糸道から編み糸を交互に供給してキャリッジが折り返すときに前後の編み糸が交絡するように編成することもできる。
【0016】
さらに、胴回りの編成では、腰回りの部分でウェールの数を段階的に減らし(目減らし)をするならば、腰回りによくフィットするようになる。
【0017】
図2は、本体部分(前・後身頃23f,23b)の目増やし25をしながら縁取り部22のウェールe,f,gを編み込んで行く状態を説明するものである。この図では本体部分の編み進むコース2、4、6の目増やし25と、縁取り部のウェールe,f,gとの編み込み状況を分かり易くするために、縁取り部を横に延したままにして編み糸を長く表しているが、実際には編み込んだ部分は針床から下方に移動するので、縁取り部22は編み込みのつど本体部分23に沿うようになっている。なお、この説明では一コースおきにひと目を増やしているが、それ以上増やすときも同様の手法で行う。また、逆に数コース飛びに目を増やすときも同様の手法で行う。
【0018】
図3は本体部分23を目減らし26をしながら縁取り部22のウェールa、b、cを編み込んだ状態を示す。この図では編み込み状況を分かり易くするために、縁取り部22を本体部分のコース側に沿わせ、ウェールの編み糸を長く延して編み組織を表しているが、実際には編み込んだ部分は針床から下方に移動するので、縁取り部22は編み込みのつど本体部分23に沿い、編み糸も短くなっている。
【0019】
図4はこの発明をブラジャー24に適用したもので、この場合、本体部分を目増やし25から目減らし26(図2、図3を参照)へと連続して編成しながら縁取り部24rを編み込むこととなる。
【0020】
ブラジャー24の編成では、左右のカップ24cの繋ぎ部分24jと周囲の縁取り部24rを予めウェール24wとして編成し、次に本体部であるカップ24cを編成するとき、その周囲に予め編成しておいたウェール24wを編み込んで縁取り部24rとするものである。なお、吊り紐28の部分は一般的な手法で別途編成する。
【0021】
図5は、靴下30の爪先に適用した例を示すもので、この靴下30の外観は親指部分31と他の指部分32(人差し指から小指まで)とを二分した状態になっているが、他の指部分32は内部で仕切り33が設けられて各指が分かれるようになっている。
【0022】
図面上のハッチングを施した親指31と他の指部分32をウェール35として編成し、次に靴下本体部分34を順次編成し、このとき前もって編成したウェール35を上記手法で編み込んで行くことになる。
【0023】
上記実施例は、足の指が内部で分かれるようになった特殊な靴下について説明したが親指から小指まで一つになった従来からある一般的な靴下の爪先の編成にも適用できることは言うまでもない。
【0024】
以上ショーツ、ブラジャーおよび靴下について説明したが、シュミーズその他のニット衣料の本体部分に縁取り部の編み込むのに適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
以上説明した通り、本体部分を編成するときに縁取り部の縁のウェールを編み込むので生産性が高くなり、縁周り部分が反り返えらず、分厚くなることもないので着心地がよくなって需要家からの期待が広がり、また、縁取り部の1ウェールに対する本体部分のコースの数を適宜選択することにより本体部分の膨らみやヒップラインを形成する効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】(a)縁取り部を本体部分に編み込む状態の説明図、(b)本発明に係るショーツの正面図
【図2】目増やし部にウェールを編み込んだ編み組織説明図
【図3】目減らし部にウェールを編み込んだ編み組織説明図
【図4】本発明を適用したブラジャーの編成説明図
【図5】本発明を適用した靴下爪先部の(a)平面図、(b)断面図
【符号の説明】
【0027】
1〜15 編み組織のコース番号
21 股部
22 縁取り部
22f 縁取り部(前身頃に対応)
22b 縁取り部(後身頃に対応)
23 本体部分
23f 本体部分の前身頃
23b 本体部分の後身頃
24 ブラジャー
24c カップ
24j 繋ぎ部分(ブラジャーの)
24r 縁取り部(ブラジャーの)
24w ウェール
25 目増やし
26 目減らし
27 大腿部挿入部
28 吊り紐
30 靴下
31 親指部分
32 他の指部分
33 仕切り
34 靴下の本体部分
35 ウェール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タック目編み、片畦編み、両畦編み、袋編み、振り柄編みのいずれか、あるいは、これらの組み合わせにより、ニット衣料の縁取り部を編成し、上記縁取り部のウェールの編み目を、本体部分の編み組織の折り返しコースごとに、または複数飛びの折り返しコースごとに本体部分の編み糸でもって編み込んでなることを特徴とするニット衣料。
【請求項2】
股部と大腿部挿入部の縁取り部とを予め編成し、これら縁取り部分の最終編み糸を針床の編針に掛けた状態で、引き続き前身頃と後身頃とを交互に、上記縁取り部の編み糸を拾いながら編み込んでなるショーツ。
【請求項3】
ブラジャーの本体・カップ部分の縁取り部を予め編成し、これら縁取り部分の最終編み糸を針床の編針に掛けた状態で、引き続きブラジャーの本体部分からカップ部分に、上記縁取り部の最終編み糸を拾いながら編み込んでなるブラジャー。
【請求項4】
爪先部分のウェールを編成し、これらウェール編成の最終編み糸を針床の編針に掛けた状態で、引き続き靴下の本体部分に、上記ウェール部分の最終編み糸を拾いながら編み込んでなる靴下。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−197856(P2007−197856A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−16095(P2006−16095)
【出願日】平成18年1月25日(2006.1.25)
【出願人】(506002443)
【Fターム(参考)】