ニット製品
【課題】 肩に繋ぎ目による不快感を利用者に感じさせることなく、かつ編み地片同士の繋ぎ合わせにも手間が掛からず容易に仕上げることができるニット製品を提供すること。
【解決手段】 前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品であって、前記左右袖部は後身頃部と繋ぎ目なしに一体的に編成して平らな編み地片３を構成し、他方の平らな編み地片２として編成された前身頃部と繋ぎ合わせた。
【解決手段】 前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品であって、前記左右袖部は後身頃部と繋ぎ目なしに一体的に編成して平らな編み地片３を構成し、他方の平らな編み地片２として編成された前身頃部と繋ぎ合わせた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【０００１】
本発明は、前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品は、各々が平面的に編成された前身頃部、後身頃部、左袖部及び右袖部の４つのピースから成り、左右の袖部を前後の身頃部と繋ぎ合わせると共に、前身頃部と後身頃部とを繋ぎ合わせて仕上げられていた。（例えば、特許文献１、２参照。）。
【０００３】
【特許文献１】特開平１０−３７０１４号公報（第１図）
【特許文献２】特開平１０−１１０３１３号公報（段落０００２の従来技術の項参照）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、従来のニット製品は、左右の袖部を前身頃部と後身頃部に繋ぎ合わされているため、繋ぎ目が編み地よりも若干盛り上がり、着用時に肌に不快感を感じることがあった。特に、寝たきり患者においては、袖部と後身頃部との繋ぎ目が肩に当たり、肌荒れや湿疹、床擦れの原因となり、ウエアーとして敬遠されがちであった。
【０００５】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、肩に繋ぎ目による不快感を利用者に感じさせることなく、かつ繋ぎ合わせにも手間が掛からず容易に仕上げることができるニット製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記課題を解決するために、本発明の請求項１に記載のニット製品は、
前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品であって、前記左右袖部は前身頃部あるいは後身頃部の一方と繋ぎ目なしに一体的に編成して平らな編み地を構成し、他方の平らな編み地として編成された後身頃部あるいは前身頃部と繋ぎ合わされていることを特徴としている。
この特徴によれば、左右袖部は前身頃部あるいは後身頃部の一方と一体的に編成されているため、左右の袖部と前後の身頃部との繋ぎ合わせにより生じる繋ぎ目の不快感を肩から背中にかけて感じることがなく、特に寝たきり患者においては、繋ぎ目が原因して起きる床擦れの心配をしなくてすむ。また、ニット製品が２つの編み地で構成されているため繋ぎ合わせも手間が掛からず容易に仕上げることができる。
【０００７】
本発明の請求項２に記載のニット製品は、請求項１に記載のニット製品であって、
前記一体的に編成した編み地及び他方の編み地とも、その編み目のウエールが首側と胴側とをつなぐ上下の方向に向いていることを特徴としている。
この特徴によれば、両編み地ともニットループが同じ方向なので製作が容易であり、しかもウエールが上下方向に向いているのでニット製品が上下方向に延びてしまうことが避けられる。
【０００８】
本発明の請求項３に記載のニット製品は、請求項２に記載のニット製品であって、
少なくとも前記左右袖部は高伸縮性の糸で構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、左右袖部を高伸縮性を有する糸で構成してあるので、編み目のウエールが上下方向に向いていても、左右の袖部が伸びて型くずれすることが抑えられる。
【０００９】
本発明の請求項４に記載のニット製品は、請求項１〜３のいずれかに記載のニット製品であって、
前記編み地は形状記憶機能を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、編み地が形状記憶機能を有しているので、着用や洗濯の繰返しでも組織安定性が確保され、インナーウエアおよびアウターウエアとしても回復性が優れたニット製品を提供できる。
【００１０】
本発明の請求項５に記載のニット製品は、請求項１〜４のいずれかに記載のニット製品であって、
前記編み地は抗菌防臭機能を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、編み地が抗菌防臭機能を有しているので、清潔感を保て、特に患者用ウエアーとして最適なニット製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【００１２】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例としてのニット服を平面状に展開した際の編み地片パターンを示す展開図であり、図２は、図１における各編み地パターンの編み目を示す要部拡大図であり、図３は、編み地の編成に使用する糸の撚り方向を示す要部拡大図であり、図４（ａ）（ｂ）は、図１における各編み地パターンにより編成されたニット服を着用した状態を示す斜視図である。
【００１３】
本発明の実施例としてのニット服１｛本実施例では長袖セーター（図４参照）｝は、図１に示されるように、前身頃部からなる前身頃パターン２と、左右の袖部及び後身頃部が繋ぎ目なしに一体的に編成された平面視略逆Ｔ字状の後身頃袖パターン３と、の２つの平らな編み地片からなり、これら前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３を互いに繋ぎ合わせる（例えばリンキングする）ことにより編成されている。
【００１４】
これら前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３は、襟刳り部４が前後に２分割され、かつ、互いの襟刳り部４にかかる左右の繋ぎ目５Ｌ、５Ｒ（リンキングライン）が、襟刳り部４の左右位置から、前身頃部の下端の裾６に向かって外向きに傾斜するラインにて形成されている。
【００１５】
前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３の編み目は、特に図２の拡大図に示されるように、横編みにて構成されており、特にその編み目のウエールが襟刳り部４と裾６とをつなぐ上下方向を向き、コースが左右方向を向くように編成されている（図１参照）。
【００１６】
よって、これらループ群の連結からなる丸編み地片である前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３は、特に左右方向に引っ張り負荷が加わったときにループにほつれが生じたり、左右方向に延びやすくなるが、本実施例においては、これら編み地片に使用する糸７として、高伸縮性及び形状記憶機能を有する糸を使用している。
【００１７】
前記高伸縮性及び形状記憶機能を有する糸は、例えば図３に示されるように、芯糸７ａ（地糸）と、該芯糸７ａの周囲に巻き付けられた下巻糸７ｂ及び上巻糸７ｃ（カバリング糸）と、からなる複合糸７（撚糸）とされており、詳しくは、芯糸７ａは、例えば形状記憶機能を有するポリエステル系糸等からなり、該芯糸７ａの周囲に巻き付けられた下巻糸７ｂ及び上巻糸７ｃは、例えば天然繊維を主体とする糸等から構成されている。
【００１８】
これにより、繰り返しの伸縮にも元に戻り易く形状が安定すると共に、洗濯にも型くずれしないばかりか、形状記憶機能を有するポリエステル系糸が芯糸７ａとして含まれているので、着用や洗濯の繰返しでも組織安定性が確保され、インナーウエアおよびアウターウエアとしても回復性が優れたニット服１を提供できる。
【００１９】
より詳しくは、後身頃袖パターン３は、左右の袖部が後身頃部と一体化されてなるものであり、該後身頃袖パターン３の編み目は、前述したように横編みにて構成されていることから、特に左右袖部は、その長手方向に向けて延びやすくなるが、これら後身頃袖パターン３は上記のように高伸縮性及び形状記憶機能を有する複合糸７にて編成されているため、左右袖部の長手方向の延びを防止できる。つまり、後身頃袖パターン３の編み目を後身頃部の上下方向の延びを考慮して横編みとする場合、少なくとも左右の袖部の編成に使用する糸を、前身頃部や後身頃部を編成する糸よりも高い伸縮性を有する糸を使用すれば、袖部の長手方向に対する延びを効果的に防止することができる。
【００２０】
また、例えば芯糸７ａに、繊維に有機薬品系の抗菌防臭剤や、金属や金属酸化物を微粉末化してポリマー中に混練すること等により得られる金属繊維を含有させること等により、抗菌防臭機能をもたせた糸とすれば、清潔感を保て、例えば患者用ウエアーとして最適なニット服１を提供できる。
【００２１】
このように構成された前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３の編み地片を、前述したように、それぞれの繋ぎ目５Ｌ、５Ｒ及び他の繋ぎ目同士を互いに整合させて繋ぎ合わせることにより、図４に示されるようなニット服１が編成されることになる。
【００２２】
このニット服１を着用した際においては、図４（ａ）に示されるように、繋ぎ目５Ｌ、５Ｒが、襟刳り部４から胴体前部の脇下にかけて形成されるものの、図４（ｂ）に示されるように、襟刳り部４から胴体後部の脇下にかけて繋ぎ目が形成されないことになる。
【００２３】
以上説明したように、本実施例におけるニット服１にあっては、編成時における展開パターンが、前身頃部からなる前身頃パターン２と、左右袖部と後身頃部とが一体的に編成されてなる後身頃袖パターン３と、の２つの編み地片にて構成されるため、着用時において、左右の袖部と後身頃部とのリンキング等により生じる繋ぎ目５Ｌ、５Ｒの不快感を肩から背中にかけて感じることがなく、特に寝たきり患者においては、繋ぎ目が原因して起きる床擦れの心配をしなくて済む。
【００２４】
また、ニット服１が２つの編み地片で構成されているため、繋ぎ合わせも手間が掛からず容易に仕上げることができるばかりか、繋ぎ目を極力少なくすることができるため、外観体裁が向上するとともに、左右袖部と後身頃部とが一体的に編成されてなる広面積の後身頃袖パターン３を、横編みで一度に編成することができる。
【００２５】
さらに、特に前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３の編み地片は、その編み目のウエールが首側と胴側とをつなぐ上下の方向に向いていることで、両編み地片ともループが同じ方向なので編成が容易であり、しかもウエールが上下方向に向いているので、ニット製品が上下方向に延びてしまうことが避けられるばかりか、芯糸７ａが高伸縮性を有するとともに、形状記憶機能を有しているポリエステル系糸を用いているので、特に袖部のコース方向の繰り返しの伸縮にも元に戻り易く形状が安定すると共に、洗濯にも型くずれしない。
【００２６】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【００２７】
例えば、上記実施例では、編成時における展開パターンが、前身頃部からなる前身頃パターン２と、左右袖部と後身頃部とが一体的に編成されてなる後身頃袖パターン３と、の２つの編み地片にて構成されていたが、特に図示はしないが、後身頃部からなる後身頃パターンと、左右袖部と前身頃部とが一体的に編成されてなる前身頃袖パターンと、の２つの編み地片にて構成し、これら後身頃パターン及び前身頃袖パターン同士を繋ぎ合わせることによりニット服を編成してもよい。
【００２８】
このように後身頃パターン及び前身頃袖パターンにて編成されたニット服（例えば乳幼児向けの肌着等）にあっては、着用時において、左右の袖部と前身頃部との繋ぎ目の不快感を肩から胸にかけて感じることがなく、例えば乳幼児がうつぶせ寝となる場合にあっては、繋ぎ目が原因して起きる床擦れの心配をしなくてすむ。
【００２９】
また、前記実施例では、左右の袖部と前身頃部との繋ぎ目５Ｌ、５Ｒが、襟刳り部４の左右位置から、前身頃部の下端の裾６に向かって外向きに傾斜する略直線状のラインにて形成されていたが、前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３における繋ぎ目の位置や形状は前記実施例のものに限定されるものではなく、肩から背中もしくは肩から胸にかけて繋ぎ目が形成されないようになっていれば、襟刳り部４の左右位置から左右袖部の端部（裾）に向けて延びる左右ラインと、該左右ラインから前身頃に向けて屈曲される上下ラインと、からなる略Ｌ字状の繋ぎ目にて形成されていてもよい。
【００３０】
また、前記実施例では、編み地片を構成する糸が、芯糸と、その外周に巻き付けられたカバリング糸と、からなる複合糸にて構成されていたが、特にこのような複合糸でなくてもよい。
【００３１】
また、前記実施例では、編み地片を構成する糸が、高伸縮性及び形状記憶機能を有する芯糸７ａを備えていたが、本発明にあっては、高伸縮性、形状記憶機能、抗菌防臭機能のうちいずれか１つの機能のみ有する糸であってもよい。
【００３２】
また、各編み地片における少なくとも左右の袖部に高伸縮性を形成する場合、前記実施例のように複合糸７を構成する少なくとも１本の糸７ａを高伸縮性を有する糸とすることにより形成してもよいし、あるいは編み地片を構成する各糸の一部を高伸縮性を有する糸とすることにより形成してもよい。
【００３３】
また、各編み地片に形状記憶機能を形成する場合、前記実施例のように形状記憶機能を有する複合糸７を使用することにより形成してもよいし、あるいは、一般的な糸にて編み地片を編成した後、例えば該編み地片に予め付与しておいた加工剤を熱処理して分子間を架橋結合させること等により形状安定性を形成するようにしてもよい。
【００３４】
また、各編み地片に抗菌防臭機能を形成する場合、前記実施例のように抗菌防臭機能を有する複合糸７を使用することにより形成してもよいし、あるいは、一般的な糸にて編み地片を編成した後、例えば該編み地片を構成する糸の表面、あるいは繊維間に、例えば銀ゼオライト系抗菌剤等を固着させること等により抗菌防臭機能を形成するようにしてもよい。
【００３５】
また、前記実施例では、ニット製品として長袖セーターであるニット服１が示されていたが、ニット製品であれば、セーターやコート等の外衣に限定されるものではなく、肌着、下着、寝衣等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【００３６】
【図１】本発明の実施例としてのニット服を平面状に展開した際の編み地片パターンを示すニット服の展開図である。
【図２】図１における各編み地パターンの編み目を示す要部拡大図である。
【図３】編み地の編成に使用する糸の撚り方向を示す要部拡大図である。
【図４】（ａ）（ｂ）は、図１における各編み地パターンにより編成されたニット服を着用した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００３７】
１ ニット服（ニット製品）
２ 前身頃パターン（前身頃部）
３ 後身頃袖パターン（後身頃部、左右の袖部）
４ 襟刳り部
５Ｌ、５Ｒ 繋ぎ目
６ 裾
７ 複合糸
【技術分野】
【０００１】
本発明は、前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品に関する。
【背景技術】
【０００２】
従来、前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品は、各々が平面的に編成された前身頃部、後身頃部、左袖部及び右袖部の４つのピースから成り、左右の袖部を前後の身頃部と繋ぎ合わせると共に、前身頃部と後身頃部とを繋ぎ合わせて仕上げられていた。（例えば、特許文献１、２参照。）。
【０００３】
【特許文献１】特開平１０−３７０１４号公報（第１図）
【特許文献２】特開平１０−１１０３１３号公報（段落０００２の従来技術の項参照）
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【０００４】
しかしながら、従来のニット製品は、左右の袖部を前身頃部と後身頃部に繋ぎ合わされているため、繋ぎ目が編み地よりも若干盛り上がり、着用時に肌に不快感を感じることがあった。特に、寝たきり患者においては、袖部と後身頃部との繋ぎ目が肩に当たり、肌荒れや湿疹、床擦れの原因となり、ウエアーとして敬遠されがちであった。
【０００５】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、肩に繋ぎ目による不快感を利用者に感じさせることなく、かつ繋ぎ合わせにも手間が掛からず容易に仕上げることができるニット製品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【０００６】
上記課題を解決するために、本発明の請求項１に記載のニット製品は、
前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品であって、前記左右袖部は前身頃部あるいは後身頃部の一方と繋ぎ目なしに一体的に編成して平らな編み地を構成し、他方の平らな編み地として編成された後身頃部あるいは前身頃部と繋ぎ合わされていることを特徴としている。
この特徴によれば、左右袖部は前身頃部あるいは後身頃部の一方と一体的に編成されているため、左右の袖部と前後の身頃部との繋ぎ合わせにより生じる繋ぎ目の不快感を肩から背中にかけて感じることがなく、特に寝たきり患者においては、繋ぎ目が原因して起きる床擦れの心配をしなくてすむ。また、ニット製品が２つの編み地で構成されているため繋ぎ合わせも手間が掛からず容易に仕上げることができる。
【０００７】
本発明の請求項２に記載のニット製品は、請求項１に記載のニット製品であって、
前記一体的に編成した編み地及び他方の編み地とも、その編み目のウエールが首側と胴側とをつなぐ上下の方向に向いていることを特徴としている。
この特徴によれば、両編み地ともニットループが同じ方向なので製作が容易であり、しかもウエールが上下方向に向いているのでニット製品が上下方向に延びてしまうことが避けられる。
【０００８】
本発明の請求項３に記載のニット製品は、請求項２に記載のニット製品であって、
少なくとも前記左右袖部は高伸縮性の糸で構成されていることを特徴としている。
この特徴によれば、左右袖部を高伸縮性を有する糸で構成してあるので、編み目のウエールが上下方向に向いていても、左右の袖部が伸びて型くずれすることが抑えられる。
【０００９】
本発明の請求項４に記載のニット製品は、請求項１〜３のいずれかに記載のニット製品であって、
前記編み地は形状記憶機能を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、編み地が形状記憶機能を有しているので、着用や洗濯の繰返しでも組織安定性が確保され、インナーウエアおよびアウターウエアとしても回復性が優れたニット製品を提供できる。
【００１０】
本発明の請求項５に記載のニット製品は、請求項１〜４のいずれかに記載のニット製品であって、
前記編み地は抗菌防臭機能を有していることを特徴としている。
この特徴によれば、編み地が抗菌防臭機能を有しているので、清潔感を保て、特に患者用ウエアーとして最適なニット製品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【００１１】
本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【００１２】
本発明の実施例を図面に基づいて説明すると、先ず図1は、本発明の実施例としてのニット服を平面状に展開した際の編み地片パターンを示す展開図であり、図２は、図１における各編み地パターンの編み目を示す要部拡大図であり、図３は、編み地の編成に使用する糸の撚り方向を示す要部拡大図であり、図４（ａ）（ｂ）は、図１における各編み地パターンにより編成されたニット服を着用した状態を示す斜視図である。
【００１３】
本発明の実施例としてのニット服１｛本実施例では長袖セーター（図４参照）｝は、図１に示されるように、前身頃部からなる前身頃パターン２と、左右の袖部及び後身頃部が繋ぎ目なしに一体的に編成された平面視略逆Ｔ字状の後身頃袖パターン３と、の２つの平らな編み地片からなり、これら前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３を互いに繋ぎ合わせる（例えばリンキングする）ことにより編成されている。
【００１４】
これら前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３は、襟刳り部４が前後に２分割され、かつ、互いの襟刳り部４にかかる左右の繋ぎ目５Ｌ、５Ｒ（リンキングライン）が、襟刳り部４の左右位置から、前身頃部の下端の裾６に向かって外向きに傾斜するラインにて形成されている。
【００１５】
前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３の編み目は、特に図２の拡大図に示されるように、横編みにて構成されており、特にその編み目のウエールが襟刳り部４と裾６とをつなぐ上下方向を向き、コースが左右方向を向くように編成されている（図１参照）。
【００１６】
よって、これらループ群の連結からなる丸編み地片である前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３は、特に左右方向に引っ張り負荷が加わったときにループにほつれが生じたり、左右方向に延びやすくなるが、本実施例においては、これら編み地片に使用する糸７として、高伸縮性及び形状記憶機能を有する糸を使用している。
【００１７】
前記高伸縮性及び形状記憶機能を有する糸は、例えば図３に示されるように、芯糸７ａ（地糸）と、該芯糸７ａの周囲に巻き付けられた下巻糸７ｂ及び上巻糸７ｃ（カバリング糸）と、からなる複合糸７（撚糸）とされており、詳しくは、芯糸７ａは、例えば形状記憶機能を有するポリエステル系糸等からなり、該芯糸７ａの周囲に巻き付けられた下巻糸７ｂ及び上巻糸７ｃは、例えば天然繊維を主体とする糸等から構成されている。
【００１８】
これにより、繰り返しの伸縮にも元に戻り易く形状が安定すると共に、洗濯にも型くずれしないばかりか、形状記憶機能を有するポリエステル系糸が芯糸７ａとして含まれているので、着用や洗濯の繰返しでも組織安定性が確保され、インナーウエアおよびアウターウエアとしても回復性が優れたニット服１を提供できる。
【００１９】
より詳しくは、後身頃袖パターン３は、左右の袖部が後身頃部と一体化されてなるものであり、該後身頃袖パターン３の編み目は、前述したように横編みにて構成されていることから、特に左右袖部は、その長手方向に向けて延びやすくなるが、これら後身頃袖パターン３は上記のように高伸縮性及び形状記憶機能を有する複合糸７にて編成されているため、左右袖部の長手方向の延びを防止できる。つまり、後身頃袖パターン３の編み目を後身頃部の上下方向の延びを考慮して横編みとする場合、少なくとも左右の袖部の編成に使用する糸を、前身頃部や後身頃部を編成する糸よりも高い伸縮性を有する糸を使用すれば、袖部の長手方向に対する延びを効果的に防止することができる。
【００２０】
また、例えば芯糸７ａに、繊維に有機薬品系の抗菌防臭剤や、金属や金属酸化物を微粉末化してポリマー中に混練すること等により得られる金属繊維を含有させること等により、抗菌防臭機能をもたせた糸とすれば、清潔感を保て、例えば患者用ウエアーとして最適なニット服１を提供できる。
【００２１】
このように構成された前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３の編み地片を、前述したように、それぞれの繋ぎ目５Ｌ、５Ｒ及び他の繋ぎ目同士を互いに整合させて繋ぎ合わせることにより、図４に示されるようなニット服１が編成されることになる。
【００２２】
このニット服１を着用した際においては、図４（ａ）に示されるように、繋ぎ目５Ｌ、５Ｒが、襟刳り部４から胴体前部の脇下にかけて形成されるものの、図４（ｂ）に示されるように、襟刳り部４から胴体後部の脇下にかけて繋ぎ目が形成されないことになる。
【００２３】
以上説明したように、本実施例におけるニット服１にあっては、編成時における展開パターンが、前身頃部からなる前身頃パターン２と、左右袖部と後身頃部とが一体的に編成されてなる後身頃袖パターン３と、の２つの編み地片にて構成されるため、着用時において、左右の袖部と後身頃部とのリンキング等により生じる繋ぎ目５Ｌ、５Ｒの不快感を肩から背中にかけて感じることがなく、特に寝たきり患者においては、繋ぎ目が原因して起きる床擦れの心配をしなくて済む。
【００２４】
また、ニット服１が２つの編み地片で構成されているため、繋ぎ合わせも手間が掛からず容易に仕上げることができるばかりか、繋ぎ目を極力少なくすることができるため、外観体裁が向上するとともに、左右袖部と後身頃部とが一体的に編成されてなる広面積の後身頃袖パターン３を、横編みで一度に編成することができる。
【００２５】
さらに、特に前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３の編み地片は、その編み目のウエールが首側と胴側とをつなぐ上下の方向に向いていることで、両編み地片ともループが同じ方向なので編成が容易であり、しかもウエールが上下方向に向いているので、ニット製品が上下方向に延びてしまうことが避けられるばかりか、芯糸７ａが高伸縮性を有するとともに、形状記憶機能を有しているポリエステル系糸を用いているので、特に袖部のコース方向の繰り返しの伸縮にも元に戻り易く形状が安定すると共に、洗濯にも型くずれしない。
【００２６】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【００２７】
例えば、上記実施例では、編成時における展開パターンが、前身頃部からなる前身頃パターン２と、左右袖部と後身頃部とが一体的に編成されてなる後身頃袖パターン３と、の２つの編み地片にて構成されていたが、特に図示はしないが、後身頃部からなる後身頃パターンと、左右袖部と前身頃部とが一体的に編成されてなる前身頃袖パターンと、の２つの編み地片にて構成し、これら後身頃パターン及び前身頃袖パターン同士を繋ぎ合わせることによりニット服を編成してもよい。
【００２８】
このように後身頃パターン及び前身頃袖パターンにて編成されたニット服（例えば乳幼児向けの肌着等）にあっては、着用時において、左右の袖部と前身頃部との繋ぎ目の不快感を肩から胸にかけて感じることがなく、例えば乳幼児がうつぶせ寝となる場合にあっては、繋ぎ目が原因して起きる床擦れの心配をしなくてすむ。
【００２９】
また、前記実施例では、左右の袖部と前身頃部との繋ぎ目５Ｌ、５Ｒが、襟刳り部４の左右位置から、前身頃部の下端の裾６に向かって外向きに傾斜する略直線状のラインにて形成されていたが、前身頃パターン２及び後身頃袖パターン３における繋ぎ目の位置や形状は前記実施例のものに限定されるものではなく、肩から背中もしくは肩から胸にかけて繋ぎ目が形成されないようになっていれば、襟刳り部４の左右位置から左右袖部の端部（裾）に向けて延びる左右ラインと、該左右ラインから前身頃に向けて屈曲される上下ラインと、からなる略Ｌ字状の繋ぎ目にて形成されていてもよい。
【００３０】
また、前記実施例では、編み地片を構成する糸が、芯糸と、その外周に巻き付けられたカバリング糸と、からなる複合糸にて構成されていたが、特にこのような複合糸でなくてもよい。
【００３１】
また、前記実施例では、編み地片を構成する糸が、高伸縮性及び形状記憶機能を有する芯糸７ａを備えていたが、本発明にあっては、高伸縮性、形状記憶機能、抗菌防臭機能のうちいずれか１つの機能のみ有する糸であってもよい。
【００３２】
また、各編み地片における少なくとも左右の袖部に高伸縮性を形成する場合、前記実施例のように複合糸７を構成する少なくとも１本の糸７ａを高伸縮性を有する糸とすることにより形成してもよいし、あるいは編み地片を構成する各糸の一部を高伸縮性を有する糸とすることにより形成してもよい。
【００３３】
また、各編み地片に形状記憶機能を形成する場合、前記実施例のように形状記憶機能を有する複合糸７を使用することにより形成してもよいし、あるいは、一般的な糸にて編み地片を編成した後、例えば該編み地片に予め付与しておいた加工剤を熱処理して分子間を架橋結合させること等により形状安定性を形成するようにしてもよい。
【００３４】
また、各編み地片に抗菌防臭機能を形成する場合、前記実施例のように抗菌防臭機能を有する複合糸７を使用することにより形成してもよいし、あるいは、一般的な糸にて編み地片を編成した後、例えば該編み地片を構成する糸の表面、あるいは繊維間に、例えば銀ゼオライト系抗菌剤等を固着させること等により抗菌防臭機能を形成するようにしてもよい。
【００３５】
また、前記実施例では、ニット製品として長袖セーターであるニット服１が示されていたが、ニット製品であれば、セーターやコート等の外衣に限定されるものではなく、肌着、下着、寝衣等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【００３６】
【図１】本発明の実施例としてのニット服を平面状に展開した際の編み地片パターンを示すニット服の展開図である。
【図２】図１における各編み地パターンの編み目を示す要部拡大図である。
【図３】編み地の編成に使用する糸の撚り方向を示す要部拡大図である。
【図４】（ａ）（ｂ）は、図１における各編み地パターンにより編成されたニット服を着用した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【００３７】
１ ニット服（ニット製品）
２ 前身頃パターン（前身頃部）
３ 後身頃袖パターン（後身頃部、左右の袖部）
４ 襟刳り部
５Ｌ、５Ｒ 繋ぎ目
６ 裾
７ 複合糸
【特許請求の範囲】
【請求項１】
前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品であって、前記左右袖部は前身頃部あるいは後身頃部の一方と繋ぎ目なしに一体的に編成して平らな編み地を構成し、他方の平らな編み地として編成された後身頃部あるいは前身頃部と繋ぎ合わされていることを特徴とするニット製品。
【請求項２】
前記一体的に編成した編み地及び他方の編み地とも、その編み目のウエールが首側と胴側とをつなぐ上下の方向に向いている請求項１に記載のニット製品。
【請求項３】
少なくとも前記左右袖部は高伸縮性の糸で構成されている請求項２に記載のニット製品。
【請求項４】
前記編み地は形状記憶機能を有している請求項１〜３のいずれかに記載のニット製品。
【請求項５】
前記編み地は抗菌防臭機能を有している請求項１〜４のいずれかに記載のニット製品。
【請求項１】
前身頃部と後身頃部と左右袖部とを備えたニット製品であって、前記左右袖部は前身頃部あるいは後身頃部の一方と繋ぎ目なしに一体的に編成して平らな編み地を構成し、他方の平らな編み地として編成された後身頃部あるいは前身頃部と繋ぎ合わされていることを特徴とするニット製品。
【請求項２】
前記一体的に編成した編み地及び他方の編み地とも、その編み目のウエールが首側と胴側とをつなぐ上下の方向に向いている請求項１に記載のニット製品。
【請求項３】
少なくとも前記左右袖部は高伸縮性の糸で構成されている請求項２に記載のニット製品。
【請求項４】
前記編み地は形状記憶機能を有している請求項１〜３のいずれかに記載のニット製品。
【請求項５】
前記編み地は抗菌防臭機能を有している請求項１〜４のいずれかに記載のニット製品。
【図１】
【図２】
【図３】
【図４】
【図２】
【図３】
【図４】
【公開番号】特開２００６−２１９７９０（Ｐ２００６−２１９７９０Ａ）
【公開日】平成１８年８月２４日（２００６．８．２４）
【国際特許分類】
【出願番号】特願２００５−３４７１３（Ｐ２００５−３４７１３）
【出願日】平成１７年２月１０日（２００５．２．１０）
【出願人】（５０４２６６３５９）
【Ｆターム（参考）】
【公開日】平成１８年８月２４日（２００６．８．２４）
【国際特許分類】
【出願日】平成１７年２月１０日（２００５．２．１０）
【出願人】（５０４２６６３５９）
【Ｆターム（参考）】
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