説明

ニロチニブまたはその塩を含む医薬組成物

ニロチニブまたはその塩を、少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤と共に含む顆粒を含む医薬組成物、とりわけカプセル。該顆粒は、湿式造粒法により製造され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、式Iの治療化合物(以下参照)、例えばニロチニブを含む医薬組成物に関する。かかる医薬組成物は、後にカプセル中に充填される顆粒を製造するための湿式造粒法により製造され得る。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ニロチニブは、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミドである。特に、ニロチニブの有用な塩は、ニロチニブ塩酸塩一水和物である。これらの治療化合物は、Bcr−Ablのタンパク質チロシンキナーゼ(TK)活性の阻害剤として有用である。かかる治療化合物により処置され得る状態の例には、慢性骨髄性白血病および消化管間質腫瘍が含まれるが、これらに限定されない。
【0003】
ニロチニブおよび以下に記載の他の治療化合物を、該化合物の治療的利益がそれを必要とする患者にもたらされ得るような医薬組成物、とりわけ固体経口投与量形態に製剤する必要性がある。この必要性を解決する挑戦を提起するのは、かかる治療化合物の物理化学的性質である。ニロチニブおよびその塩は、水難溶性化合物であり、製剤および送達が(すなわち、経口的に摂取したとき、生物学的に利用されるのが)難しい。本発明の目的は、患者に摂取され得る固体経口投与量形態の医薬組成物を製造することによる模範的解決を提供することである。
【発明の概要】
【0004】
発明の概要
本発明は、式Iの治療化合物、例えばニロチニブまたはその塩を含む新規の医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、固体経口投与量形態、とりわけカプセル形態である。該カプセルは、治療化合物を少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤を含む外相と混合した顆粒で充填される。該顆粒の製造に特に有用な方法は、湿式造粒法である。治療化合物および何れかの薬学的に許容される賦形剤、例えば界面活性剤を、精製水(または、有機溶媒)で湿らせ、次いで乾燥させて顆粒を形成する。特に有用な界面活性剤の例は、ポロキサマー188のようなポロキサマーである。界面活性剤の使用は、他の賦形剤(滑剤のような)の濃度の低減を可能にすることが見出されている。
【0005】
本発明の別の例示的態様において、顆粒を製造するための湿式造粒法は、以下の工程:a)治療化合物(例えば、ニロチニブまたはその塩)および少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤の粉末混合物を形成し;b)該粉末混合物に撹拌下で造粒液を添加し、湿潤塊を形成し;c)該湿潤塊を造粒して、湿式顆粒を形成し、そしてd)該湿式顆粒を乾燥させる工程を含む。
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は、治療化合物を含む医薬組成物に関する。かかる医薬組成物は、治療化合物を造粒液と共に湿式造粒して、顆粒または顆粒混合物を形成することにより製造され得る。その後、該顆粒または顆粒混合物は、硬ゼラチンカプセルにカプセル封入されるか、錠剤に圧縮されるか、またはサシェ剤に充填されて、固体経口投与量形態を形成し得る。
【0007】
本明細書で用いる用語“治療化合物”は、式I:
【化1】


[式中、
は、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、またはフェニル−低級アルキルを示し;
は、水素、所望により1個以上の同一もしくは異なるラジカルRにより置換されていてよい低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2もしくは3個の環窒素原子、および0もしくは1個の酸素原子、および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環もしくは二環式ヘテロアリール基(それぞれの場合に、該基は、非置換か、または一もしくは複数置換される。)を示し;
【0008】
そして、Rは、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2もしくは3個の環窒素原子、および0もしくは1個の酸素原子、および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環もしくは二環式ヘテロアリール基(それぞれの場合に、該基は、非置換か、または一置換もしくは多置換される。)を示すか;
または、RおよびRは一体となって、所望により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルにより一もしくは二置換されていてよい、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキレン;4個もしくは5個の炭素原子を有するベンズアルキレン;1個の酸素および3個もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン;または、1個の窒素および3個もしくは4個の炭素原子を有するアザアルキレン(ここで、窒素は、非置換か、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルまたはピラジニルにより置換されていてよい。)を示し;
は、水素、低級アルキルまたはハロゲンを示す。]
で示されるピリミジルアミノベンズアミド化合物、またはそのN−オキシドもしくは薬学的に許容される塩を意味する。
【0009】
かかる治療化合物は、キナーゼ依存性疾患、とりわけBcr−AblおよびTie−2キナーゼ依存性疾患の処置のための医薬組成物の製造に、例えば、1種以上の増殖性疾患を処置するための薬剤として適する。
【0010】
“治療化合物”の定義内において、接頭語“低級”は、最大7個まで(7個を含む)、とりわけ最大4個まで(4個を含む)の炭素原子を有するラジカルを示し、当該ラジカルは、直鎖であるか、または単一もしくは複数分枝の分枝鎖である。
【0011】
本明細書中、複数形が、化合物、塩などに用いられるとき、これは、単一の化合物、塩なども意味する。
【0012】
全ての不斉炭素原子は、(R)−、(S)−または(R,S)−配置で存在していてよく、例えば(R)−または(S)−配置である。故に、該化合物は、異性体の混合物または純粋な異性体として、例えばエナンチオマー−純粋なジアステレオマーとして存在していてよい。式Iの化合物の全ての可能性のある互変異性体の使用もまた、本発明に包含される。
【0013】
低級アルキルは、例えば、1個(1個を含む)ないし7個まで(7個を含む)、例えば1個(1個を含む)ないし4個まで(4個を含む)の炭素原子を有し、直鎖または分枝鎖のアルキルである。例えば、低級アルキルは、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチルのようなブチル、n−プロピルまたはイソプロピルのようなプロピル、エチルまたはメチルである。例えば、低級アルキルは、メチル、プロピルまたはtert−ブチルである。
【0014】
低級アシルは、例えばホルミルまたは低級アルキルカルボニル、特にアセチルである。
【0015】
アリール基は、該ラジカルの芳香環炭素原子に存在する結合を介して該分子に結合する芳香族性ラジカルである。例示的態様において、アリールは、6個ないし14個の炭素原子を有する芳香族性ラジカル、とりわけフェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、フルオレニルまたはフェナントレニルであり、非置換か、またはとりわけアミノ、一もしくは二置換アミノ、ハロゲン、低級アルキル、置換低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、フェニル、ヒドロキシ、エーテル化もしくはエステル化ヒドロキシ、ニトロ、シアノ、カルボキシ、エステル化カルボキシ、アルカノイル、ベンゾイル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミジノ、グアニジノ、ウレイド、メルカプト、スルホ、低級アルキルチオ、フェニルチオ、フェニル−低級アルキルチオ、低級アルキルフェニルチオ、低級アルキルスルフィニル、フェニルスルフィニル、フェニル−低級アルキルスルフィニル、低級アルキルフェニルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、フェニル−低級アルキルスルホニル、低級アルキルフェニルスルホニル、ハロゲン−低級アルキルメルカプト、ハロゲン−低級アルキルスルホニル、例えばとりわけトリフルオロメタンスルホニル、ジヒドロキシボラ(−B(OH)2)、ヘテロシクリル、該環の隣接C原子に結合する単環もしくは二環式ヘテロアリール基および低級アルキレンジオキシ、例えばメチレンジオキシから選択される、1個以上、例えば3個まで、とりわけ1個または2個の置換基により置換される。アリールは、例えば、フェニル、ナフチルまたはテトラヒドロナフチル(それぞれの場合に、それらは、非置換か、またはハロゲン、とりわけフッ素、塩素もしくは臭素を含む基;ヒドロキシ;低級アルキル、例えばメチルにより、ハロゲン−低級アルキル、例えばトリフルオロメチルにより、またはフェニルによりエーテル化されたヒドロキシ;2個の隣接C原子に結合した低級アルキレンジオキシ、例えばメチレンジオキシ;低級アルキル、例えばメチルまたはプロピル;ハロゲン−低級アルキル、例えばトリフルオロメチル;ヒドロキシ−低級アルキル、例えばヒドロキシメチルまたは2−ヒドロキシ−2−プロピル;低級アルコキシ−低級アルキル;例えば、メトキシメチルまたは2−メトキシエチル;低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、例えばメトキシカルボニルメチル;低級アルキニル、例えば1−プロピニル;エステル化カルボキシ、とりわけ低級アルコキシカルボニル、例えばメトキシカルボニル、n−プロポキシカルボニルまたはイソ−プロポキシカルボニル;N−一置換カルバモイル、特に低級アルキル、例えばメチル、n−プロピルもしくはイソ−プロピルにより一置換されたカルバモイル;アミノ;低級アルキルアミノ、例えばメチルアミノ;ジ−低級アルキルアミノ、例えばジメチルアミノまたはジエチルアミノ;低級アルキレン−アミノ、例えばピロリジノまたはピペリジノ;低級オキサアルキレン−アミノ、例えばモルホリノ、低級アザアルキレン−アミノ、例えばピペラジノ、アシルアミノ、例えばアセチルアミノまたはベンゾイルアミノ;低級アルキルスルホニル、例えばメチルスルホニル;スルファモイル;または、フェニルスルホニル、から選択される1個もしくは2個の置換基により独立して置換される。)である。
【0016】
シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルであり、非置換か、または1個以上の、とりわけ1個または2個の、アリールの置換基として上記に定義の基から選択される置換基により、例えばメチルのような低級アルキル、メトキシもしくはエトキシのような低級アルコキシ、またはヒドロキシにより、およびさらにオキソにより置換されていてよいか、またはベンズシクロペンチルまたはベンズシクロヘキシルのようなベンゾ環と縮合していてよい。
【0017】
置換アルキルは、直ぐ上記に定義されたアルキル、とりわけ低級アルキル、例えばメチルであり;ここで、1個以上、とりわけ3個までの置換基、主としてハロゲン、とりわけフッ素、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−低級アルカノイルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニルおよびフェニル−低級アルコキシカルボニルから選択される基が存在していてよい。トリフルオロメチルは、とりわけ好ましい。
【0018】
一もしくは二置換アミノは、とりわけメチルのような低級アルキル;2−ヒドロキシエチルのようなヒドロキシ−低級アルキル;メトキシエチルのような低級アルコキシ低級アルキル;ベンジルもしくは2−フェニルエチルのようなフェニル−低級アルキル;アセチルのような低級アルカノイル;ベンゾイル;置換ベンゾイル(ここで、該フェニルラジカルは、とりわけニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルおよびカルバモイルから選択される、1個以上の、例えば1個または2個の置換基により置換される。);および、フェニル−低級アルコキシカルボニル(ここで、該フェニルラジカルは、非置換か、またはとりわけニトロ、アミノ、ハロゲン、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイルおよびカルバモイルから選択される、1個以上、例えば1個もしくは2個の置換基により置換される。)から互いに独立して選択される1個もしくは2個のラジカルにより置換されるアミノであり;例えば、N−メチルアミノのようなN−低級アルキルアミノ、2−ヒドロキシエチルアミノもしくは2−ヒドロキシプロピルのようなヒドロキシ−低級アルキルアミノ、メトキシエチルのような低級アルコキシ低級アルキル、ベンジルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、N−フェニル−低級アルキル−N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルフェニルアミノのようなフェニル−低級アルキルアミノ、アセチルアミノのような低級アルカノイルアミノ、またはベンゾイルアミノおよびフェニル−低級アルコキシカルボニルアミノを含む基から選択される置換基(ここで、それぞれの場合に、該フェニルラジカルは、非置換か、またはとりわけニトロまたはアミノにより、もしくはハロゲン、アミノ、N−低級アルキルアミノ、N,N−ジ−低級アルキルアミノ、ヒドロキシ、シアノ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、低級アルカノイル、カルバモイルもしくはアミノカルボニルアミノにより置換される。)である。二置換アミノはまた、低級アルキレン−アミノ、例えばピロリジノ、2−オキソピロリジノまたはピペリジノ;低級オキサアルキレン−アミノ、例えばモルホリノ、または低級アザアルキレン−アミノ、例えばピペラジノまたはN−置換ピペラジノ、例えばN−メチルピペラジノもしくはN−メトキシカルボニルピペラジノである。
【0019】
ハロゲンは、とりわけフッ素、塩素、臭素またはヨウ素、とりわけフッ素、塩素または臭素である。
【0020】
エーテル化ヒドロキシは、とりわけn−デシルオキシのようなC−C20アルキルオキシ、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシもしくはtert−ブチルオキシのような低級アルコキシ、ベンジルオキシ、フェニルオキシのようなフェニル−低級アルコキシ、トリフルオロメトキシ、2,2,2−トリフルオロエトキシもしくは1,1,2,2−テトラフルオロエトキシのようなハロゲン−低級アルコキシ、または1個もしくは2個の窒素原子を含む単環もしくは二環式ヘテロアリールにより置換される低級アルコキシ、例えば、1H−イミダゾール−1−イルのようなイミダゾリル、ピロリル、1−ベンゾイミダゾリル、ピリジル、とりわけ2−、3−もしくは4−ピリジル、ピリミジニル、とりわけ2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、とりわけ3−イソキノリニル、キノリニル、インドリルもしくはチアゾリルのようなベンゾイミダゾリルにより置換される低級アルコキシである。
【0021】
エステル化ヒドロキシは、とりわけ低級アルカノイルオキシ、ベンゾイルオキシ、tert−ブトキシカルボニルオキシのような低級アルコキシカルボニルオキシ、またはベンジルオキシカルボニルオキシのようなフェニル−低級アルコキシカルボニルオキシである。
【0022】
エステル化カルボキシは、とりわけtert−ブトキシカルボニル、イソ−プロポキシカルボニル、メトキシカルボニルもしくはエトキシカルボニルのような低級アルコキシカルボニル、フェニル−低級アルコキシカルボニル、またはフェニルオキシカルボニルである。
【0023】
アルカノイルは、主にアルキルカルボニル、とりわけ低級アルカノイル、例えばアセチルである。
【0024】
N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイルは、とりわけ低級アルキル、フェニル−低級アルキルおよびヒドロキシ−低級アルキル、または低級アルキレン、オキサ−低級アルキレンもしくは所望により末端窒素原子で置換されていてよいアザ−低級アルキレンから独立して選択される1個または2個の置換基により置換される。
【0025】
0、1、2もしくは3個の環窒素原子、および0もしくは1個の酸素原子、および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環または二環式ヘテロアリール基(それぞれの場合に、該基は、非置換か、または一置換もしくは多置換される。)は、式Iの分子の残りの部分にヘテロアリールラジカルを結合する不飽和環であるヘテロ環式部分を意味し、例えば、結合環の、また所望により全てのアニール化された環の、少なくとも1個の炭素原子が、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択されるヘテロ原子により置換される環であり;ここで、結合環は、例えば、5ないし12個の、例えば5個または6個の環原子を有し;それらは、非置換か、または1個以上の、とりわけ1個または2個の、アリールの置換基として上記に定義の基から選択される置換基、メチルのような低級アルキル、メトキシもしくはエトキシ、またはヒドロキシのような低級アルコキシにより置換されていてよい。例えば、単環または二環式ヘテロアリール基は、2H−ピロリル、ピロリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、ピラゾリル、インダゾリル、プリニル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、4H−キノリジニル、イソキノリル、キノリル、フタラジニル、ナフチリジニル、キノキサリル、キナゾリニル、キノリニル、プテリジニル、インドリジニル、3H−インドリル、インドリル、イソインドリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、フラザニル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルから選択される。より好ましくは、単環または二環式ヘテロアリール基は、ピロリル、イミダゾリル、例えば1H−イミダゾール−1−イル、ベンゾイミダゾリル、例えば1−ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、とりわけ5−インダゾリル、ピリジル、とりわけ2−、3−または4−ピリジル、ピリミジニル、とりわけ2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、とりわけ3−イソキノリニル、キノリニル、とりわけ4−または8−キノリニル、インドリル、とりわけ3−インドリル、チアゾリル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニル、およびフラニルから選択される。例えば、単環もしくは二環式ヘテロアリール基は、ピロリル、1H−イミダゾール−1−イルのようなイミダゾリル、1−ベンゾイミダゾリルのようなベンゾイミダゾリル、インダゾリル、とりわけ5−インダゾリル、ピリジル、とりわけ2−、3−もしくは4−ピリジル、ピリミジニル、とりわけ2−ピリミジニル、ピラジニル、イソキノリニル、とりわけ3−イソキノリニル、キノリニル、とりわけ4−もしくは8−キノリニル、インドリル、とりわけ3−インドリル、チアゾリル、ベンゾ[d]ピラゾリル、チエニルおよびフラニルからなる群から選択される。本発明の一例示的態様において、ピリジルラジカルは、オルト位で窒素原子をヒドロキシにより置換され、故に、少なくとも部分的に対応する互変異性体の形態で存在し、それはピリジン−(1H)2−オンである。別の例示的態様において、ピリミジニルラジカルは、2位および4位の両方でヒドロキシにより置換され、故に、いくつかの互変異性体形態で存在し、例えばピリミジン−(1H,3H)2,4−ジオンである。
【0026】
ヘテロシクリルは、とりわけ、窒素、酸素および硫黄を含む群から選択される1個または2個のヘテロ原子を有する5員、6員または7員のヘテロ環式系であり、それは、不飽和であるか、または完全もしくは部分的に飽和であってよく、非置換か、またはとりわけメチルのような低級アルキル、ベンジルのようなフェニル−低級アルキル、オキソ、または2−ピペラジニルのようなヘテロアリールにより置換される;ヘテロシクリルは、とりわけ2−もしくは3−ピロリジニル、2−オキソ−5−ピロリジニル、ピペリジニル、N−ベンジル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−4−ピペリジニル、N−低級アルキル−ピペラジニル、モルホリニル、例えば2−もしくは3−モルホリニル、2−オキソ−1H−アゼピン−3−イル、2−テトラヒドロフラニル、または2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イルである。
【0027】
塩は、とりわけ式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0028】
かかる塩は、例えば、塩基性窒素原子を有する式Iの化合物から、有機もしくは無機酸と、例えば酸付加塩として形成され、とりわけ薬学的に許容される塩類である。適当な無機酸は、塩酸、硫酸またはリン酸のようなハロゲン酸であるが、これらに限定されない。適当な有機酸は、例えばカルボキシル酸、ホスホン酸、スルホン酸またはスルファミン酸、例えば酢酸、プロピオン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、グリコール酸、乳酸、フマル酸、コハク酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アミノ酸、例えばグルタミン酸またはアスパラギン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、メチルマレイン酸、シクロヘキサンカルボン酸、アダマンタンカルボン酸、安息香酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、フタル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、ケイ皮酸、メタン−もしくはエタン−スルホン酸、2−ヒドロキシエタンスルホン酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレン−ジスルホン酸、2−、3−もしくは4−メチルベンゼンスルホン酸、メチル硫酸、エチル硫酸、ドデシル硫酸、N−シクロヘキシルスルファミン酸、N−メチル−、N−エチル−もしくはN−プロピル−スルファミン酸、または他の有機プロトン酸、例えばアスコルビン酸である。
【0029】
負電荷ラジカルの、例えばカルボキシまたはスルホの存在下で、塩は塩基と形成されてもよく、例えば金属もしくはアンモニウム塩、例えばアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属塩、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウムもしくはカルシウム塩、またはアンモニアまたは適当な有機アミン、例えば3級アミン、例えばトリエチルアミンもしくはトリ(2−ヒドロキシエチル)アミンとのアンモニウム塩、またはヘテロ環式塩基、例えば、N−エチル−ピペリジンもしくはN,N’−ジメチルピペラジンと形成され得る。
【0030】
塩基性基および酸性基が同一分子内に存在するとき、式Iの化合物はまた、分子内塩を形成し得る。
【0031】
分離または精製目的に関しては、薬学的に許容されない塩、例えばピクリン酸塩または過塩素酸塩を用いることもできる。治療的使用を目的として、薬学的に許容される塩または遊離化合物のみが用いられ(医薬的製剤の形態で適用可能)、故に、これらが特に有用である。
【0032】
遊離形の新規化合物と、例えば新規化合物の精製または同定において中間体として用いられ得る塩を含むそれらの塩形態の新規化合物との密接な関係を考慮して、本明細書中上記および下記の遊離化合物についての全ての言及は、適当にかつ便宜上、対応する塩についても言及すると理解される。
【0033】
式Iの範囲内の化合物およびそれらの製造方法は、2004年1月15日発行のWO04/005281に開示され、それは、参照によりその全内容を本明細書中に包含される。特に有用な本発明の治療化合物は、4−メチル−3−[[4−(3−ピリジニル)−2−ピリミジニル]アミノ]−N−[5−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−3−(トリフルオロメチル)フェニル]ベンズアミド(ニロチニブとしても公知)であり、以下の構造:
【化2】


を有する。
【0034】
ニロチニブの特に有用な塩は、ニロチニブ塩酸塩一水和物、または4−メチル−N−[3−(4−メチル−1H−イミダゾール−1−イル)−5−(トリフルオロメチル)フェニル]−3−[(4−ピリジン−3−イルピリミジン−2−イル)アミノ]ベンズアミド塩酸塩水和物である。ニロチニブの適当な塩およびその多形は、WO2007/015870およびWO2007/015871により一般的に記載される。
【0035】
本明細書で用いる用語“医薬組成物”は、例えば、キナーゼ依存性疾患を処置するために、哺乳動物、例えばヒトに投与されるべき、薬学的に許容される担体中に一定量の治療化合物、例えば治療的有効量の治療化合物を含む混合物を意味する。
【0036】
本明細書で用いる用語“薬学的に許容される”は、医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー応答および妥当な利益/リスク比に見合った合併症の問題がなく、哺乳動物、とりわけヒトの組織との接触に用いるのに適する化合物、物質、組成物および/または投与形態を意味する。
【0037】
医薬組成物中の治療化合物の濃度は、一定量、例えば治療的有効量で存在し、それは、薬剤の吸収、不活性化および排出速度、ならびに当業者に公知の他の因子によって変わり得る。さらに、投与量は、軽減すべき状態の重篤度によっても変化し得ることが特記されるべきである。全ての特定のレシピエントに関して、特定の投与量レジメンが、個々の必要性ならびに医薬組成物の投与および投与を管理する人の専門的な判断に従い、時間をかけて調節されるべきであることがさらに理解されるべきである。治療化合物を一回で投与することができるか、または種々の間隔で、低用量を複数回に分けて投与することができる。故に、適当な量、例えば適当な治療的有効量は、当業者に公知である。
【0038】
例えば、治療化合物の用量は、1日当たりレシピエントの体重1kg当たり約0.1mgないし約100mgの範囲であり得る。あるいは、より低用量、例えば1日当たり体重1kg当たり0.5ないし100mg、0.5ないし50mgまたは0.5ないし20mgの用量を提供し得る。薬学的に許容される塩の有効投与量範囲は、送達されるべき活性物質の重量に基づき計算され得る。塩が、それ自体活性を示すならば、有効投与量を、該塩の重量を用いて上記の通り、または当業者に公知の他の手段により概算することができる。
【0039】
本明細書で用いる用語“即放性”は、経口摂取後、比較的短い時間内の、例えば1時間以内、40分以内、30分以内または20分以内の、治療化合物の大部分の、例えば約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約75%以上、約80%以上または約90%以上の迅速な放出を意味する。即放性に特に有用な条件は、経口摂取後30分以内の、治療化合物の少なくとも約80%または約80%の放出である。特定の治療化合物のための特定の即放性条件は、当業者に認識され得るか、または公知であり得る。
【0040】
本明細書で用いる用語“賦形剤”は、顆粒および/または固形の経口投与量剤形を製造するための薬学的技術において通常用いられる薬学的に許容される成分を意味する。賦形剤のカテゴリーの例には、結合剤、崩壊剤、滑剤、流動促進剤、安定化剤、充填剤および希釈剤が含まれるが、これらに限定されない。当業者は、何らかの過度の負担を強いられることなく常套的な実験により、顆粒および/または固形の経口投与量形態の特定の所望の特性に関して、1個以上の上記の賦形剤を選択することができる。用いる各々の賦形剤の量は、当技術分野で慣用の範囲内で変化し得る。参照によりその全体を本明細書中に包含される下記の引用文献は、経口投与量形態を剤形化するのに用いられる技術および賦形剤を開示する。The Handbook of Pharmaceutical Excipients, 4th edition, Rowe et al., Eds., American Pharmaceuticals Association (2003); and Remington: the Science and Practice of Pharmacy, 20th edition, Gennaro, Ed., Lippincott Williams & Wilkins (2000)を参照。
【0041】
本明細書で用いる用語“湿式造粒法”は、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition (2000), Chapter 45(参照により本明細書中に包含される)に記載の通り、造粒法にて造粒液を用い、次いで顆粒を形成する一般的方法を意味する。
【0042】
本発明の一例示的態様において、湿式造粒法には、混合工程;湿潤工程および練合工程、すなわち湿潤塊形成工程;造粒工程(すなわち、高せん断混合物の場合の練合工程);乾燥工程;および、篩い分け工程が含まれる。これらの工程は、以下により詳しく記載される。
【0043】
湿式造粒法は、混合物を形成するために、例えば薬学的造粒装置を用いて、適当な容器内で上記の成分を混合する(すなわち、緻密(intimate)な接近状態にする)ことによる、治療化合物および少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤、とりわけ界面活性剤の粉末混合物の剤形化で開始する。薬学的造粒装置の例には、オシレーティング・グラニュレータと組み合わせたシヤー・グラニュレータ(例えば、Hobart, Collette, Beken);高速ミキサー/グラニュレータ(例えば、Diosna, Fielder, Collette-Gral);および、その後の篩い分け装置を備える流動層グラニュレータ(例えば、Aeromatic, Glatt)が含まれるが、これらに限定されない。治療化合物との最初の混合に有用な賦形剤には、例えば、結合剤、充填剤、崩壊剤、希釈剤および何れかの上記の組み合わせが含まれる。該粉末混合物に特に有用なのは界面活性剤である。
【0044】
薬学的に許容される界面活性剤の例は、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン・ブロック・コポリマー(ポロキサマーとしても公知)、アルキル硫酸塩(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、オレイル硫酸ナトリウムおよびセチル硫酸ナトリウム)、スルホン酸アルキルアリール(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびジアルキルスルホコハク酸ナトリウム)、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートであるが、これらに限定されない。本明細書で用いる用語“ポロキサマー”は、式:HO(C(CO)(CO)H(式中、“a”および“b”は、それぞれポリオキシエチレンおよびポリオキシプロピレン単位の数を示す。)を有する少なくとも1個のポリマーを意味する。aおよびb値がそれぞれ75および30であるポロキサマー188は特に有用である。界面活性剤は、組成物の0ないし約1重量%濃度(例えば、カプセル充填量の重量)であり得る。
【0045】
薬学的に許容される崩壊剤の例は、デンプン;粘土;セルロース;アルギネート;ゴム;架橋ポリマー、例えば架橋ポリビニルピロリドンもしくはクロスポビドン、例えば、International Specialty Products(Wayne, NJ)からのPOLYPLASDONE XL;架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムもしくはクロスカルメロースナトリウム、例えば、FMCからのAC−DI−SOL;および、架橋カルボキシメチルセルロースカルシウム;大豆多糖類;ならびに、グアーガムであるが、これらに限定されない。崩壊剤は、例えば、組成物の約0重量%ないし約50重量%の濃度(例えば、カプセル充填量)であり得る。
【0046】
薬学的に許容される結合剤の例は、デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えば、微結晶セルロース、例えば、FMC(Philadelphia, PA)からのAVICEL PH、ヒドロキシプロピルセルロースヒドロキシルエチルセルロースおよびヒドロキシルプロピルメチルセルロース、Dow Chemical Corp.(Midland, MI)からのMETHOCEL;スクロース;デキストロース;コーンシロップ;多糖類;ポビドン、ならびにゼラチンであるが、これらに限定されない。結合剤は、例えば、組成物の約0重量%ないし約50重量%の濃度(例えば、カプセル充填量)であり得る。
【0047】
薬学的に許容される充填剤および薬学的に許容される希釈剤の例は、粉砂糖、圧縮糖、デキストレート(dextrate)、デキストリン、デキストロース、ラクトース、マンニトール、微結晶セルロース、粉末セルロース、ソルビトール、およびスクロースであるが、これらに限定されない。充填剤は、例えば、組成物の約0重量%ないし約80重量%の濃度(例えば、カプセル充填量)であり得る。
【0048】
固着の問題が、自動カプセル充填中に本発明のカプセルで観察された。驚くことに、組成物の約40重量%未満の量でラクトース一水和物を含むカプセルは、かかる固着の問題を有さないことが見出された。故に、一態様において、本発明は、カプセルの全量の約40w/w%未満の量、より具体的には、カプセルの外相の約25w/w%未満の量、より好ましくはカプセルの外相の約20w/w%未満の量でラクトース一水和物を含む、本明細書に記載のカプセルに関する。
【0049】
次工程は、粉末混合物を造粒液で湿らせて湿潤塊が形成するまで、該粉末混合物を撹拌しながら造粒液を添加することによる、粉末混合物の湿潤塊形成工程である。例えば、10−30%(w/w)の造粒液を、該粉末混合物に添加する。あるいは、10−15%(w/w)の造粒液を、該粉末混合物に添加し得る。造粒液は、例えば、薬学的に許容されかつ揮発性である。適する造粒液の例には、単独または組み合わせのどちらかで、水(例えば、精製水)、有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン)が含まれるが、これらに限定されない。造粒液の組み合わせの例には、水、エタノールおよびイソプロパノールの混合物が含まれる。
【0050】
あるいは、湿式造粒法は、単独で粉末の治療化合物を用いて開始することができる。
【0051】
湿潤塊形成中、該粉末に添加される造粒液は、1種または数種の溶解した賦形剤、例えば結合剤および/または界面活性剤を含むか、または含まない溶媒である。どのように湿潤塊が形成されるかに関係なく、湿潤塊形成後、粉末混合物を造粒液で湿らせる。一例示的態様において、精製水を造粒液として用いる。
【0052】
次いで、造粒液での処理後に、湿潤塊は、所望により形成した湿性の(moist)または湿った(damp)顆粒を篩い分けされてよい。湿潤塊は、例えば、5ないし10mm、例えば6−または8−メッシュスクリーンのような網目を通して篩い分けされ得る。当業者は、最も適当な顆粒サイズを得るために、適当なサイズのスクリーンを選択できる。
【0053】
別の態様において、粉砕ミルを、スクリーンまたは篩いの代わりに用いることができる。粉砕ミルの例は、ストークス発振器、コルトンロータリー式造粒器、フィッツパトリック粉砕ミル、ストークストルネードミルであるが、これらに限定されない。
【0054】
さらなる別の態様において、例えばチョッパーブレイドを備えた高速ミキサーを、スクリーンまたは粉砕ミルの何れかに代えて用いることができる。このことは、例えば、湿潤塊形成および造粒工程を一工程に併合するのを可能にする。
【0055】
湿潤顆粒を、例えばその後に乾燥させる。例えば、湿潤顆粒をトレーに集め、乾燥オーブンに移してよい。あるいは、湿潤顆粒を、気流を循環させかつサーモスタット熱制御を備える乾燥キャビネットに入れてよい。さらに別のオプションは、流動床乾燥機中で湿潤顆粒を乾燥させることである。この例示的態様において、該湿潤顆粒を、それが機械作動中に維持されるように暖気流中に浮遊させ、かき混ぜる。例えば、気流温度は、およそ室温ないし約90℃、例えば70℃であり得る。湿潤顆粒を、組成物の約5重量%未満の、例えば2重量%未満の、例えば、0.5ないし2重量%の乾燥減量(“LOD”)値まで乾燥させる。
【0056】
さらに別のオプションは、同じ装置内(例えば、Zanchetta Roto PまたはTurbosphere Moritzのような乾燥用の二重壁を備えた高せん断混合機)での造粒および乾燥の単一(single pot)処理である。
【0057】
乾燥を、薬学的造粒装置内でまたは別個に行うことができる。
【0058】
乾燥後、該顆粒を、単独でまたは少なくとも1個の賦形剤と組み合わせて、さらに篩い分けすること、すなわち乾燥篩過することができる。これは典型的に、より均一な粒子サイズの顆粒をもたらし、製造された顆粒は、固形の経口投与量形態にさらに加工される。
【0059】
該顆粒を、経口形態、例えば固形の経口投与量形態、例えば錠剤、丸剤、ロゼンジ、カプレットまたはサシェ剤に、さらなる薬学的に許容される賦形剤と共に剤形化することができる。本明細書で用いる用語“外相”は、最終の投与量形態を形成する前に顆粒に添加されるさらなる賦形剤を意味する。用いられる全ての付加的賦形剤を、上記の乾燥篩い分け工程に記載の通り、顆粒とは別にまたは顆粒の篩い分けと同時に篩い分けすることができる。当業者は、剤形化される特定の医薬組成物に必要な、各成分の必要な粒子サイズを理解し得る。例えば、適当な粒子サイズは、1,000μm以下、750μm以下、500μm以下または250μm以下のサイズである。外相を有する顆粒の、緻密な混合物の構築は、当業者に公知の何らかの常套的製剤方法、例えば混合、圧縮、共ミル加工、成形または共微粉化、を用いて達成され得る。
【0060】
混合した混合物を、その後、例えば錠剤に圧縮するか(例えば、錠剤圧縮機を用いて)、またはカプセル剤もしくはサシェ剤に充填する(例えば、充填機を用いて)ことができる。当技術分野で公知の全てのカプセル剤が、混合した混合物を充填するために用いられ得る。かかるカプセルの例は、硬ゼラチンカプセル、例えば、Capsugel of Morris Plains, New Jerseyにより製造されるCONI−SNAPである。かかるカプセルに適するサイズは、サイズナンバー00から5であるが、これらに限定されない。カプセル形態の医薬組成物は、例えば、1カプセル当たり、5mgないし500mgの治療化合物;例えば,1カプセル当たり、25mg、50mg、100mgまたは200mgの治療化合物を含み得る。
【0061】
外相に添加するのに通常使用される薬学的に許容される賦形剤は、流動促進剤である。かかる賦形剤は、処理装置内での混合した混合物の流動を促進する。
【0062】
薬学的に許容される流動促進剤の例は、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、デンプン、タルク、三塩基性リン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウムおよび粉末セルロースであるが、これらに限定されない。流動促進剤は、該医薬組成物の約0ないし10重量%、例えば0ないし10重量%、あるいは約1重量%、例えば1重量%の濃度であり得る。
【0063】
外相に添加するのに通常使用される別の薬学的に許容される賦形剤は、滑剤である。かかる賦形剤は、処理装置内での何らかの固着を防止し得る。滑剤は加工性を増大するが、投与量形態からの治療化合物の放出に影響し得る。しばしば、滑剤は、疎水性であり、その結果、即時放出性投与量形態の治療化合物の放出を遅延または低下する。驚くことに、湿式造粒中の界面活性剤の包含は、より良好な加工性の顆粒をもたらし、滑剤の減少を可能にすることが見出されている。この滑剤濃度の低下は、界面活性剤を用いないときよりも、より良好な溶解プロフィールを有する医薬組成物をもたらす。特定の理論にとらわれることなく、滑剤の使用は、その疎水性のために他の賦形剤への水の到達を阻止し、その結果、可溶化の低下をもたらし得る。例えば、本発明の例示的態様において、滑剤の濃度は、医薬組成物の1重量%未満、例えば0.5%である。
【0064】
滑剤、例えば薬学的に許容される滑剤の例は、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸、硬化ヒマシ油、モノステアリン酸グリセリン、およびステアリルフマル酸ナトリウムであるが、これらに限定されない。滑剤は、医薬組成物の約0ないし10重量%、例えば0ないし10重量%、あるいは約2重量%、例えば2重量%の濃度であり得る。
【0065】
下記の実施例は、説明を目的とし、本明細書に記載の本発明の範囲を限定することを意図しない。実施例は、本発明を実行するひとつの方法を提案することのみを意味する。
【0066】
各実施例に用いた医薬組成物の重量%で示される成分の量を、それぞれの記載の後にあるそれぞれの表に記載する。カプセルに関して、医薬組成物の重量を概算するとき(すなわち、カプセル充填量)、該カプセル殻の重量自体は、該概算から除かれる。
【実施例】
【0067】
実施例1
本実施例1の治療化合物は、ニロチニブ塩酸塩一水和物である。この治療化合物は、水性媒体に低溶解性である。さらに、この治療化合物は、わずかに吸湿性である。
【0068】
表1は、実施例1の製剤を示す。
【表1】

【0069】
ニロチニブ塩酸塩一水和物、ラクトース一水和物およびポリビニルピロリドンを、高せん断混合機を用いて共に混合し、粉末混合物を形成する。ポロキサマー188を精製水で溶解し、次いで該粉末混合物を湿らすためにそれに添加する。次いで、該混合物を流動層乾燥機中で練合し、かつ乾燥させて、顆粒を形成させる。ラクトース一水和物およびコロイド状二酸化ケイ素(外相の一部として)を、0.8mmスクリーンを備える振動造粒機を用いて該顆粒と共に篩過する。ビン製混合機を用いてさらに混合する。ステアリン酸マグネシウムを0.9mmスクリーンの篩いで分離し、最終的な混合のために混合物に添加する。該混合した混合物をカプセルに充填する。
【0070】
わずかに吸湿性のニロチニブ塩酸塩一水和物のため、充填した硬ゼラチンカプセル殻は、経年経過により変形し得ることが予期され得る。驚くことに、該充填した硬ゼラチンカプセルの物理的安定性は、加速的経年経過(すなわち、より高温かつ相対湿度条件(40℃/75%RH)に該カプセルを付す)の目視検査において実質的変形はなかった。この安定性を達成するためには、好ましくは、10分間、80℃でカプセルを乾燥させたときの重量損失が3.0%より低くなるように、該カプセルの水分含量を低下させるべきである。
【0071】
固着の問題が、自動カプセル充填中の本発明のカプセルで観察された。驚くことに、カプセルの全量の約40%w/w以下の量でラクトース一水和物を含むカプセルが、かかる固着の問題を有さないことが見出されている。
【0072】
実施例2−溶解プロフィール
溶解試験を、Ph. Eur. 2.9.3‘固体投与量形態の溶解試験’およびUSP <711>‘溶解’のバスケット方式を用いて、溶解物質として1000mlの0.1N HCL中、100rpmで行う。薬剤物質の溶解量(%)の決定を、UV検出方法を用いて行う。該方法は、選択性、正確度、精度、および直線性について確認されている。
【0073】
表2:実施例1のカプセルの溶解結果
【表2】

【0074】
本発明は、上記の説明が、本発明の説明を意図し、本発明の範囲を限定することを意図しない本発明の詳細な記載と併せて記載されるが、添付の特許請求の範囲により定義されることが理解される。他の局面の利点および変形は、本発明の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療化合物と少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤との緻密な(intimate)混合物を含む顆粒を含むカプセル形態の医薬組成物であって、該治療化合物が、式I:
【化1】


[式中、
は、水素、低級アルキル、低級アルコキシ−低級アルキル、アシルオキシ−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、またはフェニル−低級アルキルを示し;
は、水素、所望により1個以上の同一または異なるラジカルRにより置換されていてよい低級アルキル、シクロアルキル、ベンズシクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2もしくは3個の環窒素原子、および0もしくは1個の酸素原子、および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環もしくは二環式ヘテロアリール基(それぞれの場合に、該基は、非置換か、または一もしくは複数置換される。)を示し;
そして、Rは、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アシルオキシ、カルボキシ、低級アルコキシカルボニル、カルバモイル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル、アミノ、一もしくは二置換アミノ、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール基、または0、1、2もしくは3個の環窒素原子、および0もしくは1個の酸素原子、および0もしくは1個の硫黄原子を含む単環もしくは二環式ヘテロアリール基(それぞれの場合に、該基は、非置換か、または一もしくは複数置換される。)を示すか;
または、RおよびRは一体となって、所望により低級アルキル、シクロアルキル、ヘテロシクリル、フェニル、ヒドロキシ、低級アルコキシ、アミノ、一もしくは二置換アミノ、オキソ、ピリジル、ピラジニルまたはピリミジニルにより一もしくは二置換されていてよい、4個、5個または6個の炭素原子を有するアルキレン;4個もしくは5個の炭素原子を有するベンズアルキレン;1個の酸素および3個もしくは4個の炭素原子を有するオキサアルキレン;または、1個の窒素および3個もしくは4個の炭素原子を有するアザアルキレン(ここで、窒素は、非置換か、または低級アルキル、フェニル−低級アルキル、低級アルコキシカルボニル−低級アルキル、カルボキシ−低級アルキル、カルバモイル−低級アルキル、N−一置換もしくはN,N−二置換カルバモイル−低級アルキル、シクロアルキル、低級アルコキシカルボニル、カルボキシ、フェニル、置換フェニル、ピリジニル、ピリミジニルまたはピラジニルにより置換される。)を示し;
は、水素、低級アルキルまたはハロゲンを示し;
ここで、接頭語“低級”は、最大7個までの(7個を含む)炭素原子を有するラジカルを示し、当該ラジカルは、直鎖であるか、または単一もしくは複数分枝の分枝鎖である。]
で示されるピリミジルアミノベンズアミド化合物、またはそのN−オキシドもしくは薬学的に許容される塩。
【請求項2】
該治療化合物が、ニロチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
該治療化合物が、ニロチニブ塩酸塩一水和物である、請求項2記載の医薬組成物。
【請求項4】
該顆粒が、界面活性剤をさらに含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項5】
該界面活性剤が、該医薬組成物の0ないし1重量%濃度である、請求項4記載の医薬組成物。
【請求項6】
該医薬組成物が滑剤を含み、該滑剤の濃度が、該医薬組成物の1重量%を超えない、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項7】
該滑剤がステアリン酸マグネシウムである、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
該界面活性剤がポロキサマーである、請求項5記載の医薬組成物。
【請求項9】
該組成物の約40重量%未満の量でラクトース一水和物を含む、請求項1ないし8のいずれか一項記載の医薬組成物。
【請求項10】
請求項1記載の治療化合物またはその薬学的に許容される塩および少なくとも1個の薬学的に許容される賦形剤の粉末混合物を形成する工程;
該粉末を造粒液と混合して湿潤塊を形成し、練合して湿式顆粒を形成する工程;および
該湿式顆粒を乾燥させて顆粒を形成する工程
を含む、医薬組成物の製造方法。
【請求項11】
該顆粒をカプセル剤に加工する工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
該治療化合物が、ニロチニブまたはその薬学的に許容される塩である、請求項10記載の方法。
【請求項13】
該治療化合物が、ニロチニブ塩酸塩一水和物である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
該造粒液が水を含む、請求項10記載の方法。
【請求項15】
該造粒液が、該粉末混合物の約10重量%ないし約25重量%濃度である、請求項14記載の方法。
【請求項16】
該顆粒の篩い分け工程をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項17】
該湿式顆粒を、乾燥前の湿式顆粒の約2重量%未満の乾燥損失値まで乾燥させる、請求項10記載の方法。
【請求項18】
該粉末混合物が界面活性剤を含む、請求項10記載の方法。
【請求項19】
該界面活性剤がポロキサマーである、請求項18記載の方法。
【請求項20】
該ポロキサマーがポロキサマー188である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
請求項10に記載の方法により製造される医薬組成物。

【公表番号】特表2010−504942(P2010−504942A)
【公表日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529688(P2009−529688)
【出願日】平成19年9月25日(2007.9.25)
【国際出願番号】PCT/EP2007/060165
【国際公開番号】WO2008/037716
【国際公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】