ニンニク抽出水溶液の利用法
【課題】ニンニク食品加工時に発生する廃水等のニンニク抽出水溶液を有効に利用する方法を提供する。
【解決手段】ニンニクを食品加工利用する上で発生した廃水、または廃水が発生する工程とほぼ同じような方法で得られるニンニク水溶液など、のニンニク抽出水溶液から油溶性成分と水溶性成分または高分子成分と低分子成分を分離し、それぞれの溶液の適性に合わせて更に抽出や濃縮を行う。
【解決手段】ニンニクを食品加工利用する上で発生した廃水、または廃水が発生する工程とほぼ同じような方法で得られるニンニク水溶液など、のニンニク抽出水溶液から油溶性成分と水溶性成分または高分子成分と低分子成分を分離し、それぞれの溶液の適性に合わせて更に抽出や濃縮を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンニクを食品加工利用する上で発生した廃水、または廃水が発生する工程とほぼ同じような方法で得られるニンニク水溶液などのニンニク抽出水溶液から油溶性成分と水溶性成分または高分子成分と低分子成分を分離し、それぞれの溶液の適性に合わせて更に抽出や濃縮を行うことを特徴とする、ニンニク抽出水溶液からのニンニク成分を有効利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクは香辛料などの食材として広く用いられており、その成分は様々な病気の予防効果や治療効果が報告されており、健康食品としても注目されている。
【0003】
代表的な成分として含硫化合物があり、アリインと、アリインから変化したアリシンがある。アリシンは優れた抗菌作用など多彩な生理作用を有することが知られており、図1(非特許文献1より引用)に示されているようにアリシンが更に変化して、様々な含硫化合物(スルフィド類)に変化する事は多くの報告がある。有賀等によると、ニンニクの粉砕物を水蒸気蒸留することにより得られるガーリックオイルの主要成分であるスルフィド類は、抗血小板作用、抗血栓作用、血清脂質低下作用、抗腫瘍作用など様々な生体調整機能を有すると報告されている。その中でも特許文献1で、ニンニク由来のジアリルトリスルフィド(以下DATSと略す)を癌細胞増殖抑制剤として提供する事が報告されている。
【0004】
特許文献2ではアリシンを植物油中で反応させアホエン(血小板凝集抑制作用や癌細胞に対する殺菌作用、抗真菌・抗カビ作用、抗ウイルス作用、抗エイズ作用などの報告がある)を高濃度に生成する方法を報告している。
【0005】
特許文献3ではニンニクオリゴ糖が抗腫瘍活性を有する事、特許文献4ではニンニクレクチンが癌予防および治療効果のある事、について報告している。
【0006】
また、ニンニクの健康食品の一つとして、古来から伝統的にニンニク卵黄という形で利用されている。これはニンニクの成分を単独で利用するものではなく、製造する工程で加熱、乾燥させ成分変化や保存性を高めたもので、ニンニク自体(成分全体)が卵黄と共に含まれている。或いは特許文献5ではニンニクをそのままの状態で高温高湿度の条件下で保存し熟成してニンニク成分を変化させる方法もある。そして、特許文献6では、ニンニクの搾汁液をメッシュ0.4μm以下の濾過膜を用いて膜分離し、極めて清澄で無菌状態とし、これを真空凍結乾燥により粉末化する方法がある。
【0007】
このようにニンニクには様々な有効成分の利用法がある。これらニンニク成分の利用法としては、成分を特定して単離または高濃度化しているか、ニンニク自体(成分全体)を伝統的な加工または醗酵、熟成、乾燥などにより利用するものであり、ニンニクを食材として加工する際に発生する廃水などの水溶液を、再利用しようとしたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−342170
【特許文献2】特許 第2608252号
【特許文献3】特開2006−206572
【特許文献4】特開2006−206573
【特許文献5】特許 第4003217号
【特許文献6】特開平11−123062
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Planta Med.57(1991)Page363-370:Identification and HPLC Quantitation of the Sulfides and Dialk(en)yl Thiosulfinates in Commercial Garic Products
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ニンニクを調理加工する段階で除去された廃液は、アリシンなどの抗菌成分が含まれる為に廃水処理場の活性汚泥に負荷が掛かり廃水処理する上で困難となる。これを処理して利用する事は資源の有効活用の観点からも価値があり、活性汚泥法による廃水処理設備への負荷軽減も可能となる。よってこのニンニク廃水などのニンニク水溶液中に含まれる成分の有効利用を目的に利用し易い形にする事が課題である。
【0011】
そこで、このようなニンニク廃液などのニンニク水溶液について、単に加熱処理や加熱減圧処理によって濃縮をしようとすると、ニンニクの特徴成分であるアリシンを含むスルフィド類が過剰な熱により分解したり、揮発などにより失われてしまったりする、という問題点がある。もちろんこれらの成分が少なくなった低臭のエキスを作成する上では問題ないかもしれないが、一方でこれらの成分に期待する場合には不利で、これではニンニクの特徴が失われたものになってしまい限られた有効活用に過ぎない。
【0012】
膜を利用して各成分を分離したり濃縮する方法は、食品について広く行われている。この技術を使用すれば成分に熱ダメージを与える事なく加工処理する事ができる。本発明は、ニンニク廃液などのニンニク水溶液を有効に利用すると共に、食用油抽出、膜分離、あるいは加熱処理や加熱減圧処理等の技術を加工工程の一部分として利用してこれらを適宜組み合わせ、できるだけ有効な成分が維持された状態で加工され、既知のニンニク由来成分を豊富に含んだ状態にする事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ニンニクを調理加工する時に、そのまま全てを利用する事もあるが、水で処理する場合もある。その目的は洗浄もあるが、ニンニクの臭みやえぐ味を軽減する事もある。また、塩蔵されたニンニクの場合は脱塩目的である。特に球根の状態のままではなく、カット処理された後の水処理の場合には、多くの水溶性成分が水中へ溶出され廃水中に含まれる事となる。
【0014】
このように本発明で用いるニンニク抽出水溶液は、乾燥ニンニクを水戻した時の廃液、塩蔵ニンニクを水で脱塩した廃液、生ニンニクの洗浄または脱水廃液、などのニンニクに加水して固形分を取り除いたニンニク水溶液を利用する事を特徴とする。
【0015】
本発明において、これらの水溶液から食用油を用いて油溶成分を抽出分離しておき、残った水溶液についてのみ加熱処理や加熱減圧処理によって濃縮すれば、油溶成分にはダメージを与える事なくそれぞれ別々に有効活用が可能となる。また、この操作を繰り返すことによってそれぞれ高濃度の溶液を得る事もできる。
【0016】
また、食用油による抽出分離とは別の方法としては、膜による成分分離技術が一般的に知られている。本発明において、膜を用いて高分子画分(約0.001〜0.01μmの膜使用で分離した分子量約1,000以上)と低分子画分(約0.001〜0.01μmの膜使用で分離した分子量約1,000未満)に分離する事ができる。膜は図2のように孔の大きい順にMF膜→UF膜→NF膜→RO膜があり、本発明においてこの違いを適宜使い分けて処理する事が特徴となる。
【0017】
高分子画分に蛋白質や多糖類などが含まれ、低分子画分に遊離アミノ酸やニンニクの特徴成分であるアリシンを含むスルフィド類が含まれ、これらについても同様にそれぞれに適した別々の処理を行えば有効活用が可能となる。この時のスルフィド類は水溶液の状態で得る事ができるが、これについて更に食用油によって抽出する事もできる。
【0018】
更に、生ニンニク由来廃液などの水溶液だけでなく、乾燥ニンニク由来廃液などの水溶液を利用する事には次のような利点がある。一般的にニンニクをすり潰す時には細胞が傷つき、その中に含まれている酵素(アリイナーゼ)がニンニク中のアリインと反応してアリシンを生成させると言われている。乾燥状態に於いてはニンニク中に含まれるアリインがアリシンに変化する事なく残った量がそのまま保持され、長期間の保存が可能になる(アリインと酵素(アリイナーゼ)は両方共に保持されている)。これらの点から生ニンニクを使用する場合は新鮮な状態の時に加工処理してしまう必要があるが、乾燥ニンニクを使用する場合はある程度の期間保存しておき、必要に応じてこれらの加工処理を行っても出てくる水溶成分はほとんど変化しておらず一定の状態である、という利点がある。そして乾燥ニンニクの場合はすり潰さなくても乾燥により細胞壁がダメージを受けているので、この酵素が水で簡単に溶出する状態になっており、水を加えただけでも即反応しアリインがアリシンに変化する。
【0019】
以上より、これらの操作により、ニンニク廃水などのニンニク水溶液からニンニク由来成分(スルフィド化合物、遊離アミノ酸、多糖類、タンパク質、等)を複合的に含んだもの、またはそれを所望程度に濃縮した状態のもの、などを得る事ができ、有効利用が可能となる。
【0020】
従って、本発明は、請求項1〜16に記載され、また、後記(1)〜(16)に記載される構成を要旨とするニンニク廃液等のニンニク抽出水溶液の有効利用法に関するものである。また、別の観点において、本発明は、上記ニンニク抽出水溶液からのニンニク成分の分離・濃縮法に関するものでもある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、ニンニク廃液などのニンニク水溶液を処理したものは、容易に所望のの濃度に調整し濃縮する事が可能であり、大まかに水溶性、油溶性を利用したり、分子量の違いなどを利用し分離した後に、それぞれを別々に処理する事によって、ニンニク成分(例えばスルフィド化合物、遊離アミノ酸、多糖類、タンパク質、等)を複合的に有効に利用する事が可能となる。本発明においては、種々のニンニク成分を所望程度に濃縮することができ、例えば実施例7ではニンニク抽出水溶液中のアリシンについては、処理前濃度の3倍程度に濃縮することができる。そして、本発明において、このニンニク廃水などのニンニク水溶液中に含まれる成分の有効利用を目的に利用し易い形にすることができる。また、廃水量も減少し廃水処理場への負荷も軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】アリシン関連化合物の相互変化を示す反応経路図。
【図2】膜の種類を示す説明図。
【図3】ニンニク水溶液からの油溶成分および水溶性成分の分離・濃縮工程を示す説明図(発明を実施する為の形態に於ける説明用の図、実施例1、図6にも対応)。
【図4】膜処理、食用油抽出、加熱処理を組み合わせたニンニク水溶液からのニンニク成分の分離・濃縮工程を含む説明図(発明を実施する為の形態に於ける一連の処理を総合的に連結して示した説明用の図、実施例1、4、6〜8にも部分的に対応)。
【図5】膜処理によりニンニク水溶液から高分子化合物と低分子量画分を分離、濃縮する工程を含む説明図(図4の内、一例として乾燥ニンニクを用い膜処理する部分の詳しい説明用の図、実施例7,8にも対応)。
【図6】実施例1に対応し油性成分と水溶性成分の分離・濃縮工程を含む説明図。
【図7】実施例2に対応する粉末化工程を示す説明図。
【図8】実施例3に対応するカプセル化工程を示す説明図。
【図9】実施例4に対応する乾燥粉末化工程を含む説明図。
【図10】実施例5に対応し、乾燥ニンニクの状態で長期間保存した時にニンニク中に含まれるアリインとアリイナーゼの保存性を示す説明図。
【図11】実施例6に対応し、ニンニク廃水からのアリインの抽出・濃縮工程を示す説明図。
【図12】実施例7に対応し、乾燥ニンニク廃水について膜を用いてニンニク成分を分離濃縮する工程を含む説明図(図5の具体例)。
【図13】実施例8に対応し、熱水にて抽出された乾燥ニンニク廃水について膜を用いてニンニク成分を分離濃縮する工程を含む説明図(図5の具体例)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明は、下記(1)〜(16)に記載された構成を特徴とするニンニク廃液等のニンニク抽出水溶液の有効利用法に関するものであり、また、別の観点において、本発明は、上記ニンニク抽出水溶液からのニンニク成分の分離・濃縮法に関するものでもある。
【0024】
本発明は、下記の構成(1)を特徴とするものである。
(1)ニンニク抽出水溶液からニンニクの成分を分離濃縮することを特徴とする、ニンニク抽出水溶液の利用法。
本発明において、ニンニク原料およびニンニク成分の分離濃縮手段を含む方法は、特に食用油抽出、膜分離、あるいは加熱処理や加熱減圧処理等の技術を加工工程の一部分として利用してこれらを適宜組み合わせたものである。本発明の態様は以下に記載される通りであり、具体的に図3〜13および後記実施例を参照することができる。
【0025】
本発明の好ましい具体的な態様は、以下の(2)〜(16)の構成を特徴とするものである。
(2)ニンニク抽出水溶液として、ニンニクに加水して固形分を取り除いたニンニク抽出水溶液であって乾燥ニンニクを水戻した時の廃液、塩蔵ニンニクを水で脱塩した廃液、生ニンニクの水洗浄もしくは脱水廃液であるニンニク抽出水溶液またはこれらと同じ操作で得られる抽出液を利用することを特徴とする、上記(1)に記載の方法。
この態様は、具体的に図3〜6、9、11〜13および後記実施例1、4、6〜8を参照することができる。この態様において、同じ操作で得られる抽出液とは、ニンニク(通常地下茎部)に加水して固形分を取り除いたニンニク抽出水溶液、すなわち乾燥ニンニクを水戻した時の廃液、塩蔵ニンニクを水で脱塩した廃液、生ニンニクの水洗浄廃液もしくは脱水廃液が生ずる操作と同じ操作によって得られるニンニク抽出水溶液をいう。なお、生ニンニクの脱水廃液は、生ニンニクに水を添加してそのまま圧搾、遠心分離等により排出されるニンニク水溶液である。従って、ニンニク原料として乾燥ニンニク、塩蔵ニンニク、生ニンニクを使用することができるが、乾燥ニンニクを使用することにより、ニンニク成分をより高い濃度で効率よく得ることができる。ニンニク(全体またはカットされたもの)に対する水の使用割合は、通常ニンニク1重量部に対して3〜10重量部程度であり、生ニンニクの場合は、通常ニンニク1重量部に対して1〜3重量部程度である。また、使用する水の温度は通常10〜40℃程度で、ニンニクが抽出される時間は通常5〜60分程度である。上記のような条件により、ニンニク廃液もしくはニンニク抽出水溶液が得られる。
【0026】
(3)ニンニク抽出水溶液の内、ニンニク原料を加熱処理した後に加水するか、または熱水処理によって得られるニンニク水溶液からアリインを分離濃縮することを特徴とする、上記(2)に記載の方法。
この態様において、ニンニク原料を加熱処理した後に加水して得られるニンニク水溶液は、通常上記のようなニンニクの原料を60〜100℃で5分〜4時間程度、好ましくは80〜100℃で30〜60分程度の条件で加熱した後に水を加えたものである。また、熱水処理によって得られるニンニク水溶液は、ニンニク原料に通常80〜100℃程度の熱水を加えて5分以上、好ましくは30〜60分程度経過したものである。このようなニンニク水溶液を使用することにより、アリイナーゼが失活した状態でアリインがアリシンに変化せずに残っている水溶液から有効にアリインを分離濃縮することができる。このようにして得たニンニク水溶液を、膜処理により非透過水を循環させることにより、あるいは加熱処理や加熱減圧処理等によりアリインを高濃度で含む水溶液を得ることができる。膜処理、加熱処理や加熱減圧処理等の処理は、下記の(5)、(8)等に記載された条件を用いることができる。この態様は、具体的には、例えば図4、5および後記の実施例6等を参照することができる。
【0027】
(4)上記(2)に記載されたニンニク抽出水溶液から食用油を溶媒として用いて油溶成分を含む油性画分を分離し、この油性画分を溶媒として用いてニンニク抽出水溶液に対して同じ操作を繰り返し行うことによって、油溶成分の濃度を高めることを特徴とする方法。
この態様は、基本的に、ニンニク抽出水溶液(好ましくは乾燥ニンニク抽出水溶液)について食用油を用いて抽出処理して油溶性画分を分離し、この操作を繰り返すことにより主としてアリシン由来のスルフィド化合物を高濃度で含む画分を得ることができる。具体的には、例えば図3、6および後記の実施例1に例示されている。この態様において、食用油としては、大豆油、菜種サラダ油、コーンサラダ油、ゴマ油、オリーブ油等を使用することができる。食用油の使用割合は、通常ニンニク抽出水溶液1重量部に対して0.5〜2重量部使用する。食用油による抽出温度は0℃を超えて加熱なしで可能であるが、好ましくは加熱処理(例えば55℃<〜100℃、より好ましくは80℃<〜100℃)する。加熱する場合、ニンニク抽出水溶液をあらかじめ加熱処理(例えば上記の温度)してから食用油を使用して抽出することもできる。また、抽出時間は、通常5〜60分程度である。このような条件で抽出操作を繰り返すことにより、油性画分中の油溶成分(スルフィド化合物等)の濃度をさらに高めることができる。
【0028】
(5)上記(4)で得られた油溶成分を含む油性画分を分離した後に残った水溶液について、加熱処理または加熱減圧処理、または膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
加熱処理または加熱減圧処理を用いる態様は、具体的には、例えば図3、6および後記実施例1に例示されている。この態様において、油溶成分を分離した後に残った水溶液の加熱処理は、通常90〜100℃、1〜2時間程度(目的のBrixになるまで)の条件で行う。水溶液の加熱減圧処理は、通常40〜60℃の温度、−50〜−90kPaの減圧度、1〜2時間程度(装置に設定した密度(Brix)になるまで)の条件で行う。また、水溶液の膜処理は、通常約0<〜0.1μm程度の孔径を有するUF膜、NF膜、RO膜等を使用して濃縮を行うことができる。上記の膜は一般に市販されており、それらを使用することができる。膜処理の好ましい方法は、MF膜使用後にUFまたはNF膜とRO膜を図4、5のように組み合わせて使用する方法である。膜処理による方法は、例えば図12、13および後記実施例7、8に例示されている。上記のような操作によりニンニク成分(多糖類、タンパク質、遊離アミノ酸等が含まれる)の濃縮物を得ることができる。
【0029】
(6)上記(2)または(3)に記載されたニンニク抽出水溶液について、膜処理によってニンニクの成分を分離することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および5を参照することができる。この態様において、膜処理のさらに具体的な態様は下記の(7)、(8)等に記載されている。
【0030】
(7)上記(6)において分子量約1,000以上(好ましくは約1,500以上、例えば1,500〜2000)の高分子画分を分離し、得られた高分子画分について加熱処理または加熱減圧処理、または膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および5および実施例7、8に例示されている。この態様において、通常MF膜を使用した濾過による膜処理後に(粗濾過後に)分子量約1,000以上の高分子画分を得るために約0.001以上〜0.01μmの孔径を有する膜(UF膜又はNF膜等)を使用することができる。分子量約1,000以上の高分子画分には多糖類、タンパク質等のニンニク成分が含まれる。該高分子画分についての加熱処理、加熱減圧処理、または膜処理は、上記(5)に記載された方法を使用することができる。このような操作により、上記ニンニク成分を高濃度で含む高分子画分を得ることができる。
【0031】
(8)上記(6)で分子量約1,000未満の低分子画分を分離し、得られた低分子画分について更に膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および5および実施例7、8に例示されている。この態様において、分子量約1,000未満(好ましくは100〜500)の低分子画分を得るために約0.001以上〜0.01μmの孔径を有する膜(UF膜又はNF膜等)を使用することができる。分子量約1,000未満の低分子画分としてはアリインやアリシン等のスルフィド化合物、遊離アミノ酸等の成分が含まれる。該低分子画分についての膜処理による濃縮は、RO膜を使用する事ができる。このような操作により、上記ニンニク成分を高濃度に含む低分子画分を得ることができる。
【0032】
(9)上記(8)で濃縮した水溶液について、加熱処理または水蒸気蒸留処理によって各スルフィド化合物の混合液へ変化させる工程を更に組み合わせることを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および実施例1を参照することができる。この態様において、濃縮した水溶液の加熱処理は、通常90〜100℃、5〜60分程度の条件で行うことができる。また、濃縮水溶液の水蒸気蒸留処理は、100℃程度(通常100〜105℃)の水蒸気を吹き込み、蒸発した気体を冷却管の中へ導いて液化させ、集液する等の条件で通常の方法に従って行うことができる。この処理により生じたスルフィドの化合物混合液は、ジアリルジスルフィド、ジアリルトリスルフィド、ジメチルトリスルフィド等のスルフィド化合物を高濃度に含む。
【0033】
(10)上記(8)または(9)で得られた水溶液について、食用油抽出によってスルフィド化合物を含む成分を抽出する工程を更に組み合わせることを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および実施例1を参照することができる。この態様において、抽出に使用する食用油、食用油の使用割合、抽出時間等の条件は、前記(4)に記載された条件と同様でよい。
【0034】
(11)上記(10)で残った水溶液を単独でまたは上記(7)で最終的に得られた高分子画分と混合してニンニク成分濃縮物とすることを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4(実施例としては連続した一つの例としては示していないが、実施例7または8で得られたRO濃縮液を実施例1で使用する廃液の代わりに用いて、油抽出分離した後に得られる水槽の加熱減圧濃縮液を実施例7、8の高分子画分NF膜濃縮液に混合しても良い)に例示されている。この態様において、上記(10)で残った水溶液を上記(7)の高分子画分と混合してニンニク成分濃縮物とする場合、スルフィド化合物の少ない低臭ニンニクエキスにする事を目的とする。なお、水溶液と高分子画分の混合割合は特に限定されないが、好ましくは等量ずつである。
【0035】
(12)上記(7)で最終的に得られた高分子画分について、乾燥植物または乾燥海草類と混合して同時に乾燥し粉末化することを特徴とする方法。
この態様は、乾燥途中段階の高粘度の状態になった場合に、真空凍結乾燥や熱風乾燥による乾燥が途中で難しくなる為、これを解決して容易に乾燥させる事と、合わせて他植物の特徴も付与できる事を目的とするものであり、具体的には、例えば図9および後記実施例4を参照することができる。この態様において、通常、液体の高分子画分を乾燥植物または乾燥海草類と混合した状態で、薄膜ドラム乾燥機等を使用して通常ドラム温度120〜160℃、1〜12rpm、例えば120℃、3〜4rpm等の条件で乾燥し、更に、微粉砕可能な水分にする為に熱風乾燥機により追加乾燥した後に、微粉砕機等により粉末化することができる。高分子画分と乾燥植物または乾燥海草類との混合割合は特に限定されないが、通常高分子画分の液量の約1/5重量が乾燥植物又は乾燥海草類である。乾燥植物としては、ほうれん草、大麦若葉、ケール等の植物を乾燥させたものがあげられる。また、乾燥海草類としては、ワカメ、コンブ、青海苔、黒海苔等を乾燥させたものがあげられる。
【0036】
(13)上記(2)に記載されたニンニク抽出水溶液から遠心分離により得た沈殿物について、乾燥し粉末化することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図9および後記実施例4に例示されている。この態様において、遠心分離は通常8000rpm以上、例えば8,000〜10,000rpmの条件で行い、沈殿物を得ることができる。沈殿物の乾燥、粉末化は、一般的な凍結乾燥機等を使用して通常の方法で行うことができる。
【0037】
(14)上記(10)で得られたスルフィド化合物含有油をカプセル化または錠剤化することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図8および後記実施例3を参照することができる。この態様において、スルフィド化合物含有油のカプセルおよび錠剤は、公知の方法により製造することができる。
【0038】
(15)上記(12)または(13)で得られた粉末を単独、または混合してカプセル化または錠剤化することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図7〜9および後記実施例3、4を参照することができる。この態様において、上記(12)および(13)で得られた粉末を混合する場合、主に多糖類とタンパク質等を複合的に配合する事を目的とするものであり、両者の割合は特に限定されないが、好ましくは(13)は(12)の約1/5重量である。カプセル化または錠剤化は、上記のようにカプセルまたは錠剤を製造する公知の方法に従って行うことができる。
【0039】
(16)ニンニク抽出水溶液のニンニク原料として乾燥ニンニクを使用することを特徴とする、上記(2)〜(15)のいずれかに記載の方法。
この態様は、例えば図5、6および後記実施例1に例示されている。この態様において、原料ニンニクとして乾燥ニンニクを使用することにより、ニンニク中に含まれるアリインと、アリインをアリシンへ変化させる酵素アリイナーゼを長期間保存可能とし、必要に応じて取り出し加工処理しても、固形物の品質が一定というだけでなく、得られるニンニク廃液などのニンニク水溶液中成分がほぼ一定であるという特徴を有する。
【0040】
以下、本発明の好ましい実施形態の概要を図示例と共に説明する。
図3に示したように、ニンニク廃水などのニンニク水溶液(ニンニク抽出水溶液)から食用油を用いて油溶成分を抽出分離し、残った水溶液中の水溶性成分については加熱処理や加熱減圧処理によって濃縮できる。
【0041】
この操作を繰り返す事で高濃度な状態に調整する事が可能であり、ニンニクの特徴成分であるスルフィド類もダメージを受けることなく利用できる。
【0042】
次に、本発明の他の形態の例として、図4に示したように、まずニンニク廃水などのニンニク水溶液を布や金属メッシュ網などを用いて粗く濾過するか、または無処理のままで、MF膜(精密濾過膜)で清澄化と除菌処理などの目的で前処理を行う。この前処理用MF膜については、スパイラル型、中空糸型、管状型、などの種類が一般に市販されているが、例えば管状型が不溶物を多く含む食品の濾過処理に適している。これを使用する事により、その後の膜処理をスムーズに行う事が可能にもなる。その後の膜処理で使用する膜の種類にも、スパイラル型、中空糸型、管状型、などの種類があり、このMF膜処理を施した後の液であれば、各種処理効率は異なるがどの膜型を使用しても分離は可能となる。
【0043】
そしてMF膜処理の後は、UF膜(限外濾過膜)またはNF膜(ナノ濾過膜)によって高分子画分と低分子画分に分離する。この時のUF膜またはNF膜の分離方法としてはダイアフィルトレーション(diafiltration)を採用する事もできる。これは使用原液の循環液に対して希釈液を注水し透過液と非透過液に分離する一般的方法である。この注液操作により成分は薄まるが分離し易くなるという特徴がある。この分離操作後の最後の膜処理としては、それぞれ一段階小さい目の膜であるRO膜(逆浸透膜)やNF膜を用いて、主に水を除去し濃縮する事を目的として循環濃縮を行う事ができる。膜は孔の大きい順にMF膜→UF膜→NF膜→RO膜となっており、本発明においては、この違いを使い分けて分離と濃縮を行い、最終的におよそ分子量約1,000以上(高分子画分)と1,000未満(低分子画分)に分けて利用する事が特徴となる。この部分については、例えば図5に示したように高分子画分と低分子分子画分をそれぞれ濃縮する事ができる。
【0044】
このようにして得られた各濃縮液は、そのまま、あるいはそれぞれに適した別々の処理(例えば加熱減圧処理や膜処理等)を施して利用する事ができ、単独成分として限定した利用ではなく、低分子画分と高分子画分とに分けてから濃縮して得られるニンニクエキスである。低分子画分(図5−内液2)はアリシンなどのスルフィド化合物や遊離アミノ酸などを主に含むエキスとなり、高分子画分(図5−内液3)はニンニクの多糖類や蛋白質を主に含む。低分子画分に含まれるスルフィド類の場合は食用油で繰り返し抽出する事により更に濃度を高める事も可能である。
【0045】
また、この最初の調理用食材として利用している固形物については、水溶液中に成分が溶出しているが完全に溶出し抜けてしまった訳ではなく、水溶性成分については固形中にも水溶液中とほぼ同じ濃度以上の成分を含有しており、食材として適した状態で利用されているものである。
【0046】
[実施例]
以下、実施例により本発明の形態をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
本発明の具体的な実施例(実験)について図6に基づいて説明する。
ニンニクの廃液について、膜を利用して高分子成分と低分子成分を分離しそれぞれを濃縮した液を用いる事もできるが、ここでは廃液を直接使用し図6の方法に従って実験を行った。
【0048】
市販の乾燥ニンニクを供試材としたニンニク廃液について、ニンニクの代表的な成分のアリシンと処理段階でアリシンが変化して生成したスルフィド類をHPLC法にて分析し、スルフィド類の代表としては抗癌活性の高いDATSについて示した。また、ニンニク多糖類の指標としては糖度計の値(Brix)と全糖(フェノール硫酸法)を指標とし、遊離アミノ酸はHPLC法(蛍光検出器使用)にて分析し、検出された各遊離アミノ酸の総量で示した。
これによりアリシンから変化し生成したスルフィド類含有油を得る事ができた。
【0049】
また、油を除去した水層の加熱減圧濃縮液中にはニンニク由来の遊離アミノ酸や多糖類が含まれており、ニンニク臭が低減したニンニクエキスとしての利用ができる。
なお、実施例1〜6において、加熱減圧濃縮に使用した装置は、株式会社日阪製作所製 QUICKEVA REV-40/10-1-2である。
【実施例2】
【0050】
実施例1の加熱減圧濃縮液について、これは主にニンニク由来の多糖類を含んでいると考えられる。これを有効利用する一つの方法として粉末化する場合、加熱乾燥や真空凍結乾燥によると、乾燥の途中段階で粘度が増しそれ以上乾燥する事が難しくなってしまうという問題点がある。
【0051】
簡単に粉末化する方法として次の図7に示したような乾燥処理実験を行った。
出来上がった粉末は、ニンニク由来の多糖類と海藻を含む良好な粉末が得られた。
【実施例3】
【0052】
実施例1で得られたスルフィド類含有油と実施例2で得られた粉末化多糖類を使用してカプセル化食品を作成した。カプセル化は、通常のカプセル化手法(カプセル製造装置を含む)を適用した。
【0053】
図8に示したような実験を行った。このようにして得られたソフトカプセルは、スルフィド類含有油の量や種類を調整する事が可能であり、スルフィド類の濃度設定が容易であり、健康食品としての利用価値も高い。
【実施例4】
【0054】
塩蔵ニンニクについて次の図9に示したような加工処理実験を行った。
・塩分はモール法で分析した。
・電気透析は、電気透析膜(分画分子量110)を使用した。
・粗蛋白質はケルダール法にて分析し、窒素係数として6.25を乗じて求めた。
【0055】
塩蔵ニンニクの脱塩工程に於いて、内液1(加熱減圧濃縮脱塩液)については主にニンニク多糖類含有エキスとして利用できる。
【0056】
FD粉末は主にニンニクタンパクを含む粉末として利用でき、実施例3で使用する事もできる。
【実施例5】
【0057】
乾燥ニンニクの状態で長期間保存した時にニンニク中に含まれるアリインとアリイナーゼが保持されているかどうかを確認、水を加えてニンニク水溶液を得る事で、必要に応じてニンニク水溶液の加工処理に使用できるかどうかを図10のように確認した。
【0058】
生ニンニクのアリシン分析はすり潰した搾り汁について、乾燥ニンニクのアリシン分析は、固形100gに水400mlを加えて30分放置し固形を分離した液についてHPLC法で測定し4倍した値を用いた。
【0059】
この結果から、乾燥ニンニクを処理して得られる水溶液から発生するアリシン量は、ほぼ一定で変化が見られなかったので、この条件で乾燥ニンニク中にアリインとアリイナーゼは保持されている事が推察される。よって乾燥ニンニクを使用する事は、先に述べたニンニク水溶液の有効活用を行う上で、鮮度が悪くなり易い生ニンニクを使用する場合と異なり加工処理する時期に限定される事なく必要に応じて行う事が可能となる。
【実施例6】
【0060】
ニンニク廃水(水溶液)の内、ニンニクから熱水抽出した場合に、ニンニク中に保持されているアリインがアリシンに変化する事なく水溶液中に抽出され、更に加熱減圧処理により濃縮できる事を図11のように確認した。
アリインはHPLC法にて分析し示した。
【0061】
この結果から、アリインとその他各種ニンニク成分を含むニンニクエキスが得られた。
ここで濃縮処理は加熱減圧処理ではなく図4、5のように処理すれば、アリインを含む低分子画分と多糖類を含む高分子画分とに分けてから濃縮して使用する事もできる。
【実施例7】
【0062】
乾燥ニンニク廃水について膜を用いて分離濃縮できるかどうかを図12のように確認した。膜を傷付けないようにする為と、膜へ固形物が詰まらないようにする為に、粗濾過(300メッシュ以上の布)によりニンニク破片を除去した。次にNF膜、RO膜処理を行う為に、これらの膜への負荷を低減させる事を主な目的として、MF膜処理(中空糸型、分画分子量150,000)を用いて前処理を行った。この分画範囲はUF膜とMF膜で重なる部分であり、販売されている膜はUF膜として販売されている場合もMF膜として販売されている場合もある。ここではUF膜(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製FBO2-VC-FUS1582)として販売されているものを使用したが、前記[0042]の記載と統一する為にMF膜処理と記した。
【0063】
そしてこの通過した外液についてNF膜(スパイラル型、阻止率55%,ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製SWO2300-DRA451S)を用いて、低分子と高分子に分離した。その低分子画分については、更にRO膜(スパイラル型、阻止率99%,日東電工株式会社製NTR-759HG-S2F)処理により濃縮を行った。この時、分離効率を良くする為にdiafiltrationを行った。これにより、アリシンが濃縮された透明なエキスが得られた。
【0064】
また、高分子画分については同じNF膜を用いて濃縮を行った。これにより主にニンニクの糖類を含む低臭なエキスが得られた。
【実施例8】
【0065】
熱水にて抽出された廃水について実施例7と同様に、図13のように確認した。アリインを分解する酵素が熱水により失活する為、アリインがアリシンに分解されることなく残る割合が多くなる。しかし、この実施例によると膜処理に関して、アリインはアリシンより分子量がやや大きい為に、ニンニクオリゴ糖や遊離アミノ酸類と同じような挙動を示す結果であった。Brixが減少している事から、主にMF膜(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製FBO2-VC-FUS1582)により高分子が除去されていると考えられるが、NF膜(スパイラル型、阻止率55%,ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製SWO2300-DRA451S)によりアリインと糖や遊離アミノ酸を分離することが出来なかったので、これを省略して直接NF膜で濃縮しても良い。これによりアリイン、ニンニクオリゴ糖、遊離アミノ酸糖を含む濃縮エキスを得ることが出来る。また、この結果より、MF膜処理した後に図11のように加熱濃縮減圧処理を実施する方法でも良いと考えられた。
【0066】
上記実施例7、8中で示した膜の阻止率は、NaClの阻止率を示す。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、ニンニクを食品加工利用する上で発生した廃水、または廃水が発生する工程とほぼ同じような方法で得られるニンニク水溶液など、のニンニク抽出水溶液から油溶性成分と水溶性成分または高分子成分と低分子成分を分離し、それぞれの溶液の適性に合わせて更に抽出や濃縮を行うことにより、ニンニク加工廃液等のニンニク抽出水溶液中のニンニク成分を食品、健康食品、エキス、香料等に有効に利用する事ができる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニンニクを食品加工利用する上で発生した廃水、または廃水が発生する工程とほぼ同じような方法で得られるニンニク水溶液などのニンニク抽出水溶液から油溶性成分と水溶性成分または高分子成分と低分子成分を分離し、それぞれの溶液の適性に合わせて更に抽出や濃縮を行うことを特徴とする、ニンニク抽出水溶液からのニンニク成分を有効利用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニンニクは香辛料などの食材として広く用いられており、その成分は様々な病気の予防効果や治療効果が報告されており、健康食品としても注目されている。
【0003】
代表的な成分として含硫化合物があり、アリインと、アリインから変化したアリシンがある。アリシンは優れた抗菌作用など多彩な生理作用を有することが知られており、図1(非特許文献1より引用)に示されているようにアリシンが更に変化して、様々な含硫化合物(スルフィド類)に変化する事は多くの報告がある。有賀等によると、ニンニクの粉砕物を水蒸気蒸留することにより得られるガーリックオイルの主要成分であるスルフィド類は、抗血小板作用、抗血栓作用、血清脂質低下作用、抗腫瘍作用など様々な生体調整機能を有すると報告されている。その中でも特許文献1で、ニンニク由来のジアリルトリスルフィド(以下DATSと略す)を癌細胞増殖抑制剤として提供する事が報告されている。
【0004】
特許文献2ではアリシンを植物油中で反応させアホエン(血小板凝集抑制作用や癌細胞に対する殺菌作用、抗真菌・抗カビ作用、抗ウイルス作用、抗エイズ作用などの報告がある)を高濃度に生成する方法を報告している。
【0005】
特許文献3ではニンニクオリゴ糖が抗腫瘍活性を有する事、特許文献4ではニンニクレクチンが癌予防および治療効果のある事、について報告している。
【0006】
また、ニンニクの健康食品の一つとして、古来から伝統的にニンニク卵黄という形で利用されている。これはニンニクの成分を単独で利用するものではなく、製造する工程で加熱、乾燥させ成分変化や保存性を高めたもので、ニンニク自体(成分全体)が卵黄と共に含まれている。或いは特許文献5ではニンニクをそのままの状態で高温高湿度の条件下で保存し熟成してニンニク成分を変化させる方法もある。そして、特許文献6では、ニンニクの搾汁液をメッシュ0.4μm以下の濾過膜を用いて膜分離し、極めて清澄で無菌状態とし、これを真空凍結乾燥により粉末化する方法がある。
【0007】
このようにニンニクには様々な有効成分の利用法がある。これらニンニク成分の利用法としては、成分を特定して単離または高濃度化しているか、ニンニク自体(成分全体)を伝統的な加工または醗酵、熟成、乾燥などにより利用するものであり、ニンニクを食材として加工する際に発生する廃水などの水溶液を、再利用しようとしたものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−342170
【特許文献2】特許 第2608252号
【特許文献3】特開2006−206572
【特許文献4】特開2006−206573
【特許文献5】特許 第4003217号
【特許文献6】特開平11−123062
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Planta Med.57(1991)Page363-370:Identification and HPLC Quantitation of the Sulfides and Dialk(en)yl Thiosulfinates in Commercial Garic Products
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ニンニクを調理加工する段階で除去された廃液は、アリシンなどの抗菌成分が含まれる為に廃水処理場の活性汚泥に負荷が掛かり廃水処理する上で困難となる。これを処理して利用する事は資源の有効活用の観点からも価値があり、活性汚泥法による廃水処理設備への負荷軽減も可能となる。よってこのニンニク廃水などのニンニク水溶液中に含まれる成分の有効利用を目的に利用し易い形にする事が課題である。
【0011】
そこで、このようなニンニク廃液などのニンニク水溶液について、単に加熱処理や加熱減圧処理によって濃縮をしようとすると、ニンニクの特徴成分であるアリシンを含むスルフィド類が過剰な熱により分解したり、揮発などにより失われてしまったりする、という問題点がある。もちろんこれらの成分が少なくなった低臭のエキスを作成する上では問題ないかもしれないが、一方でこれらの成分に期待する場合には不利で、これではニンニクの特徴が失われたものになってしまい限られた有効活用に過ぎない。
【0012】
膜を利用して各成分を分離したり濃縮する方法は、食品について広く行われている。この技術を使用すれば成分に熱ダメージを与える事なく加工処理する事ができる。本発明は、ニンニク廃液などのニンニク水溶液を有効に利用すると共に、食用油抽出、膜分離、あるいは加熱処理や加熱減圧処理等の技術を加工工程の一部分として利用してこれらを適宜組み合わせ、できるだけ有効な成分が維持された状態で加工され、既知のニンニク由来成分を豊富に含んだ状態にする事を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
ニンニクを調理加工する時に、そのまま全てを利用する事もあるが、水で処理する場合もある。その目的は洗浄もあるが、ニンニクの臭みやえぐ味を軽減する事もある。また、塩蔵されたニンニクの場合は脱塩目的である。特に球根の状態のままではなく、カット処理された後の水処理の場合には、多くの水溶性成分が水中へ溶出され廃水中に含まれる事となる。
【0014】
このように本発明で用いるニンニク抽出水溶液は、乾燥ニンニクを水戻した時の廃液、塩蔵ニンニクを水で脱塩した廃液、生ニンニクの洗浄または脱水廃液、などのニンニクに加水して固形分を取り除いたニンニク水溶液を利用する事を特徴とする。
【0015】
本発明において、これらの水溶液から食用油を用いて油溶成分を抽出分離しておき、残った水溶液についてのみ加熱処理や加熱減圧処理によって濃縮すれば、油溶成分にはダメージを与える事なくそれぞれ別々に有効活用が可能となる。また、この操作を繰り返すことによってそれぞれ高濃度の溶液を得る事もできる。
【0016】
また、食用油による抽出分離とは別の方法としては、膜による成分分離技術が一般的に知られている。本発明において、膜を用いて高分子画分(約0.001〜0.01μmの膜使用で分離した分子量約1,000以上)と低分子画分(約0.001〜0.01μmの膜使用で分離した分子量約1,000未満)に分離する事ができる。膜は図2のように孔の大きい順にMF膜→UF膜→NF膜→RO膜があり、本発明においてこの違いを適宜使い分けて処理する事が特徴となる。
【0017】
高分子画分に蛋白質や多糖類などが含まれ、低分子画分に遊離アミノ酸やニンニクの特徴成分であるアリシンを含むスルフィド類が含まれ、これらについても同様にそれぞれに適した別々の処理を行えば有効活用が可能となる。この時のスルフィド類は水溶液の状態で得る事ができるが、これについて更に食用油によって抽出する事もできる。
【0018】
更に、生ニンニク由来廃液などの水溶液だけでなく、乾燥ニンニク由来廃液などの水溶液を利用する事には次のような利点がある。一般的にニンニクをすり潰す時には細胞が傷つき、その中に含まれている酵素(アリイナーゼ)がニンニク中のアリインと反応してアリシンを生成させると言われている。乾燥状態に於いてはニンニク中に含まれるアリインがアリシンに変化する事なく残った量がそのまま保持され、長期間の保存が可能になる(アリインと酵素(アリイナーゼ)は両方共に保持されている)。これらの点から生ニンニクを使用する場合は新鮮な状態の時に加工処理してしまう必要があるが、乾燥ニンニクを使用する場合はある程度の期間保存しておき、必要に応じてこれらの加工処理を行っても出てくる水溶成分はほとんど変化しておらず一定の状態である、という利点がある。そして乾燥ニンニクの場合はすり潰さなくても乾燥により細胞壁がダメージを受けているので、この酵素が水で簡単に溶出する状態になっており、水を加えただけでも即反応しアリインがアリシンに変化する。
【0019】
以上より、これらの操作により、ニンニク廃水などのニンニク水溶液からニンニク由来成分(スルフィド化合物、遊離アミノ酸、多糖類、タンパク質、等)を複合的に含んだもの、またはそれを所望程度に濃縮した状態のもの、などを得る事ができ、有効利用が可能となる。
【0020】
従って、本発明は、請求項1〜16に記載され、また、後記(1)〜(16)に記載される構成を要旨とするニンニク廃液等のニンニク抽出水溶液の有効利用法に関するものである。また、別の観点において、本発明は、上記ニンニク抽出水溶液からのニンニク成分の分離・濃縮法に関するものでもある。
【発明の効果】
【0021】
本発明によると、ニンニク廃液などのニンニク水溶液を処理したものは、容易に所望のの濃度に調整し濃縮する事が可能であり、大まかに水溶性、油溶性を利用したり、分子量の違いなどを利用し分離した後に、それぞれを別々に処理する事によって、ニンニク成分(例えばスルフィド化合物、遊離アミノ酸、多糖類、タンパク質、等)を複合的に有効に利用する事が可能となる。本発明においては、種々のニンニク成分を所望程度に濃縮することができ、例えば実施例7ではニンニク抽出水溶液中のアリシンについては、処理前濃度の3倍程度に濃縮することができる。そして、本発明において、このニンニク廃水などのニンニク水溶液中に含まれる成分の有効利用を目的に利用し易い形にすることができる。また、廃水量も減少し廃水処理場への負荷も軽減する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】アリシン関連化合物の相互変化を示す反応経路図。
【図2】膜の種類を示す説明図。
【図3】ニンニク水溶液からの油溶成分および水溶性成分の分離・濃縮工程を示す説明図(発明を実施する為の形態に於ける説明用の図、実施例1、図6にも対応)。
【図4】膜処理、食用油抽出、加熱処理を組み合わせたニンニク水溶液からのニンニク成分の分離・濃縮工程を含む説明図(発明を実施する為の形態に於ける一連の処理を総合的に連結して示した説明用の図、実施例1、4、6〜8にも部分的に対応)。
【図5】膜処理によりニンニク水溶液から高分子化合物と低分子量画分を分離、濃縮する工程を含む説明図(図4の内、一例として乾燥ニンニクを用い膜処理する部分の詳しい説明用の図、実施例7,8にも対応)。
【図6】実施例1に対応し油性成分と水溶性成分の分離・濃縮工程を含む説明図。
【図7】実施例2に対応する粉末化工程を示す説明図。
【図8】実施例3に対応するカプセル化工程を示す説明図。
【図9】実施例4に対応する乾燥粉末化工程を含む説明図。
【図10】実施例5に対応し、乾燥ニンニクの状態で長期間保存した時にニンニク中に含まれるアリインとアリイナーゼの保存性を示す説明図。
【図11】実施例6に対応し、ニンニク廃水からのアリインの抽出・濃縮工程を示す説明図。
【図12】実施例7に対応し、乾燥ニンニク廃水について膜を用いてニンニク成分を分離濃縮する工程を含む説明図(図5の具体例)。
【図13】実施例8に対応し、熱水にて抽出された乾燥ニンニク廃水について膜を用いてニンニク成分を分離濃縮する工程を含む説明図(図5の具体例)。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明は、下記(1)〜(16)に記載された構成を特徴とするニンニク廃液等のニンニク抽出水溶液の有効利用法に関するものであり、また、別の観点において、本発明は、上記ニンニク抽出水溶液からのニンニク成分の分離・濃縮法に関するものでもある。
【0024】
本発明は、下記の構成(1)を特徴とするものである。
(1)ニンニク抽出水溶液からニンニクの成分を分離濃縮することを特徴とする、ニンニク抽出水溶液の利用法。
本発明において、ニンニク原料およびニンニク成分の分離濃縮手段を含む方法は、特に食用油抽出、膜分離、あるいは加熱処理や加熱減圧処理等の技術を加工工程の一部分として利用してこれらを適宜組み合わせたものである。本発明の態様は以下に記載される通りであり、具体的に図3〜13および後記実施例を参照することができる。
【0025】
本発明の好ましい具体的な態様は、以下の(2)〜(16)の構成を特徴とするものである。
(2)ニンニク抽出水溶液として、ニンニクに加水して固形分を取り除いたニンニク抽出水溶液であって乾燥ニンニクを水戻した時の廃液、塩蔵ニンニクを水で脱塩した廃液、生ニンニクの水洗浄もしくは脱水廃液であるニンニク抽出水溶液またはこれらと同じ操作で得られる抽出液を利用することを特徴とする、上記(1)に記載の方法。
この態様は、具体的に図3〜6、9、11〜13および後記実施例1、4、6〜8を参照することができる。この態様において、同じ操作で得られる抽出液とは、ニンニク(通常地下茎部)に加水して固形分を取り除いたニンニク抽出水溶液、すなわち乾燥ニンニクを水戻した時の廃液、塩蔵ニンニクを水で脱塩した廃液、生ニンニクの水洗浄廃液もしくは脱水廃液が生ずる操作と同じ操作によって得られるニンニク抽出水溶液をいう。なお、生ニンニクの脱水廃液は、生ニンニクに水を添加してそのまま圧搾、遠心分離等により排出されるニンニク水溶液である。従って、ニンニク原料として乾燥ニンニク、塩蔵ニンニク、生ニンニクを使用することができるが、乾燥ニンニクを使用することにより、ニンニク成分をより高い濃度で効率よく得ることができる。ニンニク(全体またはカットされたもの)に対する水の使用割合は、通常ニンニク1重量部に対して3〜10重量部程度であり、生ニンニクの場合は、通常ニンニク1重量部に対して1〜3重量部程度である。また、使用する水の温度は通常10〜40℃程度で、ニンニクが抽出される時間は通常5〜60分程度である。上記のような条件により、ニンニク廃液もしくはニンニク抽出水溶液が得られる。
【0026】
(3)ニンニク抽出水溶液の内、ニンニク原料を加熱処理した後に加水するか、または熱水処理によって得られるニンニク水溶液からアリインを分離濃縮することを特徴とする、上記(2)に記載の方法。
この態様において、ニンニク原料を加熱処理した後に加水して得られるニンニク水溶液は、通常上記のようなニンニクの原料を60〜100℃で5分〜4時間程度、好ましくは80〜100℃で30〜60分程度の条件で加熱した後に水を加えたものである。また、熱水処理によって得られるニンニク水溶液は、ニンニク原料に通常80〜100℃程度の熱水を加えて5分以上、好ましくは30〜60分程度経過したものである。このようなニンニク水溶液を使用することにより、アリイナーゼが失活した状態でアリインがアリシンに変化せずに残っている水溶液から有効にアリインを分離濃縮することができる。このようにして得たニンニク水溶液を、膜処理により非透過水を循環させることにより、あるいは加熱処理や加熱減圧処理等によりアリインを高濃度で含む水溶液を得ることができる。膜処理、加熱処理や加熱減圧処理等の処理は、下記の(5)、(8)等に記載された条件を用いることができる。この態様は、具体的には、例えば図4、5および後記の実施例6等を参照することができる。
【0027】
(4)上記(2)に記載されたニンニク抽出水溶液から食用油を溶媒として用いて油溶成分を含む油性画分を分離し、この油性画分を溶媒として用いてニンニク抽出水溶液に対して同じ操作を繰り返し行うことによって、油溶成分の濃度を高めることを特徴とする方法。
この態様は、基本的に、ニンニク抽出水溶液(好ましくは乾燥ニンニク抽出水溶液)について食用油を用いて抽出処理して油溶性画分を分離し、この操作を繰り返すことにより主としてアリシン由来のスルフィド化合物を高濃度で含む画分を得ることができる。具体的には、例えば図3、6および後記の実施例1に例示されている。この態様において、食用油としては、大豆油、菜種サラダ油、コーンサラダ油、ゴマ油、オリーブ油等を使用することができる。食用油の使用割合は、通常ニンニク抽出水溶液1重量部に対して0.5〜2重量部使用する。食用油による抽出温度は0℃を超えて加熱なしで可能であるが、好ましくは加熱処理(例えば55℃<〜100℃、より好ましくは80℃<〜100℃)する。加熱する場合、ニンニク抽出水溶液をあらかじめ加熱処理(例えば上記の温度)してから食用油を使用して抽出することもできる。また、抽出時間は、通常5〜60分程度である。このような条件で抽出操作を繰り返すことにより、油性画分中の油溶成分(スルフィド化合物等)の濃度をさらに高めることができる。
【0028】
(5)上記(4)で得られた油溶成分を含む油性画分を分離した後に残った水溶液について、加熱処理または加熱減圧処理、または膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
加熱処理または加熱減圧処理を用いる態様は、具体的には、例えば図3、6および後記実施例1に例示されている。この態様において、油溶成分を分離した後に残った水溶液の加熱処理は、通常90〜100℃、1〜2時間程度(目的のBrixになるまで)の条件で行う。水溶液の加熱減圧処理は、通常40〜60℃の温度、−50〜−90kPaの減圧度、1〜2時間程度(装置に設定した密度(Brix)になるまで)の条件で行う。また、水溶液の膜処理は、通常約0<〜0.1μm程度の孔径を有するUF膜、NF膜、RO膜等を使用して濃縮を行うことができる。上記の膜は一般に市販されており、それらを使用することができる。膜処理の好ましい方法は、MF膜使用後にUFまたはNF膜とRO膜を図4、5のように組み合わせて使用する方法である。膜処理による方法は、例えば図12、13および後記実施例7、8に例示されている。上記のような操作によりニンニク成分(多糖類、タンパク質、遊離アミノ酸等が含まれる)の濃縮物を得ることができる。
【0029】
(6)上記(2)または(3)に記載されたニンニク抽出水溶液について、膜処理によってニンニクの成分を分離することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および5を参照することができる。この態様において、膜処理のさらに具体的な態様は下記の(7)、(8)等に記載されている。
【0030】
(7)上記(6)において分子量約1,000以上(好ましくは約1,500以上、例えば1,500〜2000)の高分子画分を分離し、得られた高分子画分について加熱処理または加熱減圧処理、または膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および5および実施例7、8に例示されている。この態様において、通常MF膜を使用した濾過による膜処理後に(粗濾過後に)分子量約1,000以上の高分子画分を得るために約0.001以上〜0.01μmの孔径を有する膜(UF膜又はNF膜等)を使用することができる。分子量約1,000以上の高分子画分には多糖類、タンパク質等のニンニク成分が含まれる。該高分子画分についての加熱処理、加熱減圧処理、または膜処理は、上記(5)に記載された方法を使用することができる。このような操作により、上記ニンニク成分を高濃度で含む高分子画分を得ることができる。
【0031】
(8)上記(6)で分子量約1,000未満の低分子画分を分離し、得られた低分子画分について更に膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および5および実施例7、8に例示されている。この態様において、分子量約1,000未満(好ましくは100〜500)の低分子画分を得るために約0.001以上〜0.01μmの孔径を有する膜(UF膜又はNF膜等)を使用することができる。分子量約1,000未満の低分子画分としてはアリインやアリシン等のスルフィド化合物、遊離アミノ酸等の成分が含まれる。該低分子画分についての膜処理による濃縮は、RO膜を使用する事ができる。このような操作により、上記ニンニク成分を高濃度に含む低分子画分を得ることができる。
【0032】
(9)上記(8)で濃縮した水溶液について、加熱処理または水蒸気蒸留処理によって各スルフィド化合物の混合液へ変化させる工程を更に組み合わせることを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および実施例1を参照することができる。この態様において、濃縮した水溶液の加熱処理は、通常90〜100℃、5〜60分程度の条件で行うことができる。また、濃縮水溶液の水蒸気蒸留処理は、100℃程度(通常100〜105℃)の水蒸気を吹き込み、蒸発した気体を冷却管の中へ導いて液化させ、集液する等の条件で通常の方法に従って行うことができる。この処理により生じたスルフィドの化合物混合液は、ジアリルジスルフィド、ジアリルトリスルフィド、ジメチルトリスルフィド等のスルフィド化合物を高濃度に含む。
【0033】
(10)上記(8)または(9)で得られた水溶液について、食用油抽出によってスルフィド化合物を含む成分を抽出する工程を更に組み合わせることを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4および実施例1を参照することができる。この態様において、抽出に使用する食用油、食用油の使用割合、抽出時間等の条件は、前記(4)に記載された条件と同様でよい。
【0034】
(11)上記(10)で残った水溶液を単独でまたは上記(7)で最終的に得られた高分子画分と混合してニンニク成分濃縮物とすることを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図4(実施例としては連続した一つの例としては示していないが、実施例7または8で得られたRO濃縮液を実施例1で使用する廃液の代わりに用いて、油抽出分離した後に得られる水槽の加熱減圧濃縮液を実施例7、8の高分子画分NF膜濃縮液に混合しても良い)に例示されている。この態様において、上記(10)で残った水溶液を上記(7)の高分子画分と混合してニンニク成分濃縮物とする場合、スルフィド化合物の少ない低臭ニンニクエキスにする事を目的とする。なお、水溶液と高分子画分の混合割合は特に限定されないが、好ましくは等量ずつである。
【0035】
(12)上記(7)で最終的に得られた高分子画分について、乾燥植物または乾燥海草類と混合して同時に乾燥し粉末化することを特徴とする方法。
この態様は、乾燥途中段階の高粘度の状態になった場合に、真空凍結乾燥や熱風乾燥による乾燥が途中で難しくなる為、これを解決して容易に乾燥させる事と、合わせて他植物の特徴も付与できる事を目的とするものであり、具体的には、例えば図9および後記実施例4を参照することができる。この態様において、通常、液体の高分子画分を乾燥植物または乾燥海草類と混合した状態で、薄膜ドラム乾燥機等を使用して通常ドラム温度120〜160℃、1〜12rpm、例えば120℃、3〜4rpm等の条件で乾燥し、更に、微粉砕可能な水分にする為に熱風乾燥機により追加乾燥した後に、微粉砕機等により粉末化することができる。高分子画分と乾燥植物または乾燥海草類との混合割合は特に限定されないが、通常高分子画分の液量の約1/5重量が乾燥植物又は乾燥海草類である。乾燥植物としては、ほうれん草、大麦若葉、ケール等の植物を乾燥させたものがあげられる。また、乾燥海草類としては、ワカメ、コンブ、青海苔、黒海苔等を乾燥させたものがあげられる。
【0036】
(13)上記(2)に記載されたニンニク抽出水溶液から遠心分離により得た沈殿物について、乾燥し粉末化することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図9および後記実施例4に例示されている。この態様において、遠心分離は通常8000rpm以上、例えば8,000〜10,000rpmの条件で行い、沈殿物を得ることができる。沈殿物の乾燥、粉末化は、一般的な凍結乾燥機等を使用して通常の方法で行うことができる。
【0037】
(14)上記(10)で得られたスルフィド化合物含有油をカプセル化または錠剤化することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図8および後記実施例3を参照することができる。この態様において、スルフィド化合物含有油のカプセルおよび錠剤は、公知の方法により製造することができる。
【0038】
(15)上記(12)または(13)で得られた粉末を単独、または混合してカプセル化または錠剤化することを特徴とする方法。
この態様は、具体的には、例えば図7〜9および後記実施例3、4を参照することができる。この態様において、上記(12)および(13)で得られた粉末を混合する場合、主に多糖類とタンパク質等を複合的に配合する事を目的とするものであり、両者の割合は特に限定されないが、好ましくは(13)は(12)の約1/5重量である。カプセル化または錠剤化は、上記のようにカプセルまたは錠剤を製造する公知の方法に従って行うことができる。
【0039】
(16)ニンニク抽出水溶液のニンニク原料として乾燥ニンニクを使用することを特徴とする、上記(2)〜(15)のいずれかに記載の方法。
この態様は、例えば図5、6および後記実施例1に例示されている。この態様において、原料ニンニクとして乾燥ニンニクを使用することにより、ニンニク中に含まれるアリインと、アリインをアリシンへ変化させる酵素アリイナーゼを長期間保存可能とし、必要に応じて取り出し加工処理しても、固形物の品質が一定というだけでなく、得られるニンニク廃液などのニンニク水溶液中成分がほぼ一定であるという特徴を有する。
【0040】
以下、本発明の好ましい実施形態の概要を図示例と共に説明する。
図3に示したように、ニンニク廃水などのニンニク水溶液(ニンニク抽出水溶液)から食用油を用いて油溶成分を抽出分離し、残った水溶液中の水溶性成分については加熱処理や加熱減圧処理によって濃縮できる。
【0041】
この操作を繰り返す事で高濃度な状態に調整する事が可能であり、ニンニクの特徴成分であるスルフィド類もダメージを受けることなく利用できる。
【0042】
次に、本発明の他の形態の例として、図4に示したように、まずニンニク廃水などのニンニク水溶液を布や金属メッシュ網などを用いて粗く濾過するか、または無処理のままで、MF膜(精密濾過膜)で清澄化と除菌処理などの目的で前処理を行う。この前処理用MF膜については、スパイラル型、中空糸型、管状型、などの種類が一般に市販されているが、例えば管状型が不溶物を多く含む食品の濾過処理に適している。これを使用する事により、その後の膜処理をスムーズに行う事が可能にもなる。その後の膜処理で使用する膜の種類にも、スパイラル型、中空糸型、管状型、などの種類があり、このMF膜処理を施した後の液であれば、各種処理効率は異なるがどの膜型を使用しても分離は可能となる。
【0043】
そしてMF膜処理の後は、UF膜(限外濾過膜)またはNF膜(ナノ濾過膜)によって高分子画分と低分子画分に分離する。この時のUF膜またはNF膜の分離方法としてはダイアフィルトレーション(diafiltration)を採用する事もできる。これは使用原液の循環液に対して希釈液を注水し透過液と非透過液に分離する一般的方法である。この注液操作により成分は薄まるが分離し易くなるという特徴がある。この分離操作後の最後の膜処理としては、それぞれ一段階小さい目の膜であるRO膜(逆浸透膜)やNF膜を用いて、主に水を除去し濃縮する事を目的として循環濃縮を行う事ができる。膜は孔の大きい順にMF膜→UF膜→NF膜→RO膜となっており、本発明においては、この違いを使い分けて分離と濃縮を行い、最終的におよそ分子量約1,000以上(高分子画分)と1,000未満(低分子画分)に分けて利用する事が特徴となる。この部分については、例えば図5に示したように高分子画分と低分子分子画分をそれぞれ濃縮する事ができる。
【0044】
このようにして得られた各濃縮液は、そのまま、あるいはそれぞれに適した別々の処理(例えば加熱減圧処理や膜処理等)を施して利用する事ができ、単独成分として限定した利用ではなく、低分子画分と高分子画分とに分けてから濃縮して得られるニンニクエキスである。低分子画分(図5−内液2)はアリシンなどのスルフィド化合物や遊離アミノ酸などを主に含むエキスとなり、高分子画分(図5−内液3)はニンニクの多糖類や蛋白質を主に含む。低分子画分に含まれるスルフィド類の場合は食用油で繰り返し抽出する事により更に濃度を高める事も可能である。
【0045】
また、この最初の調理用食材として利用している固形物については、水溶液中に成分が溶出しているが完全に溶出し抜けてしまった訳ではなく、水溶性成分については固形中にも水溶液中とほぼ同じ濃度以上の成分を含有しており、食材として適した状態で利用されているものである。
【0046】
[実施例]
以下、実施例により本発明の形態をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0047】
本発明の具体的な実施例(実験)について図6に基づいて説明する。
ニンニクの廃液について、膜を利用して高分子成分と低分子成分を分離しそれぞれを濃縮した液を用いる事もできるが、ここでは廃液を直接使用し図6の方法に従って実験を行った。
【0048】
市販の乾燥ニンニクを供試材としたニンニク廃液について、ニンニクの代表的な成分のアリシンと処理段階でアリシンが変化して生成したスルフィド類をHPLC法にて分析し、スルフィド類の代表としては抗癌活性の高いDATSについて示した。また、ニンニク多糖類の指標としては糖度計の値(Brix)と全糖(フェノール硫酸法)を指標とし、遊離アミノ酸はHPLC法(蛍光検出器使用)にて分析し、検出された各遊離アミノ酸の総量で示した。
これによりアリシンから変化し生成したスルフィド類含有油を得る事ができた。
【0049】
また、油を除去した水層の加熱減圧濃縮液中にはニンニク由来の遊離アミノ酸や多糖類が含まれており、ニンニク臭が低減したニンニクエキスとしての利用ができる。
なお、実施例1〜6において、加熱減圧濃縮に使用した装置は、株式会社日阪製作所製 QUICKEVA REV-40/10-1-2である。
【実施例2】
【0050】
実施例1の加熱減圧濃縮液について、これは主にニンニク由来の多糖類を含んでいると考えられる。これを有効利用する一つの方法として粉末化する場合、加熱乾燥や真空凍結乾燥によると、乾燥の途中段階で粘度が増しそれ以上乾燥する事が難しくなってしまうという問題点がある。
【0051】
簡単に粉末化する方法として次の図7に示したような乾燥処理実験を行った。
出来上がった粉末は、ニンニク由来の多糖類と海藻を含む良好な粉末が得られた。
【実施例3】
【0052】
実施例1で得られたスルフィド類含有油と実施例2で得られた粉末化多糖類を使用してカプセル化食品を作成した。カプセル化は、通常のカプセル化手法(カプセル製造装置を含む)を適用した。
【0053】
図8に示したような実験を行った。このようにして得られたソフトカプセルは、スルフィド類含有油の量や種類を調整する事が可能であり、スルフィド類の濃度設定が容易であり、健康食品としての利用価値も高い。
【実施例4】
【0054】
塩蔵ニンニクについて次の図9に示したような加工処理実験を行った。
・塩分はモール法で分析した。
・電気透析は、電気透析膜(分画分子量110)を使用した。
・粗蛋白質はケルダール法にて分析し、窒素係数として6.25を乗じて求めた。
【0055】
塩蔵ニンニクの脱塩工程に於いて、内液1(加熱減圧濃縮脱塩液)については主にニンニク多糖類含有エキスとして利用できる。
【0056】
FD粉末は主にニンニクタンパクを含む粉末として利用でき、実施例3で使用する事もできる。
【実施例5】
【0057】
乾燥ニンニクの状態で長期間保存した時にニンニク中に含まれるアリインとアリイナーゼが保持されているかどうかを確認、水を加えてニンニク水溶液を得る事で、必要に応じてニンニク水溶液の加工処理に使用できるかどうかを図10のように確認した。
【0058】
生ニンニクのアリシン分析はすり潰した搾り汁について、乾燥ニンニクのアリシン分析は、固形100gに水400mlを加えて30分放置し固形を分離した液についてHPLC法で測定し4倍した値を用いた。
【0059】
この結果から、乾燥ニンニクを処理して得られる水溶液から発生するアリシン量は、ほぼ一定で変化が見られなかったので、この条件で乾燥ニンニク中にアリインとアリイナーゼは保持されている事が推察される。よって乾燥ニンニクを使用する事は、先に述べたニンニク水溶液の有効活用を行う上で、鮮度が悪くなり易い生ニンニクを使用する場合と異なり加工処理する時期に限定される事なく必要に応じて行う事が可能となる。
【実施例6】
【0060】
ニンニク廃水(水溶液)の内、ニンニクから熱水抽出した場合に、ニンニク中に保持されているアリインがアリシンに変化する事なく水溶液中に抽出され、更に加熱減圧処理により濃縮できる事を図11のように確認した。
アリインはHPLC法にて分析し示した。
【0061】
この結果から、アリインとその他各種ニンニク成分を含むニンニクエキスが得られた。
ここで濃縮処理は加熱減圧処理ではなく図4、5のように処理すれば、アリインを含む低分子画分と多糖類を含む高分子画分とに分けてから濃縮して使用する事もできる。
【実施例7】
【0062】
乾燥ニンニク廃水について膜を用いて分離濃縮できるかどうかを図12のように確認した。膜を傷付けないようにする為と、膜へ固形物が詰まらないようにする為に、粗濾過(300メッシュ以上の布)によりニンニク破片を除去した。次にNF膜、RO膜処理を行う為に、これらの膜への負荷を低減させる事を主な目的として、MF膜処理(中空糸型、分画分子量150,000)を用いて前処理を行った。この分画範囲はUF膜とMF膜で重なる部分であり、販売されている膜はUF膜として販売されている場合もMF膜として販売されている場合もある。ここではUF膜(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製FBO2-VC-FUS1582)として販売されているものを使用したが、前記[0042]の記載と統一する為にMF膜処理と記した。
【0063】
そしてこの通過した外液についてNF膜(スパイラル型、阻止率55%,ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製SWO2300-DRA451S)を用いて、低分子と高分子に分離した。その低分子画分については、更にRO膜(スパイラル型、阻止率99%,日東電工株式会社製NTR-759HG-S2F)処理により濃縮を行った。この時、分離効率を良くする為にdiafiltrationを行った。これにより、アリシンが濃縮された透明なエキスが得られた。
【0064】
また、高分子画分については同じNF膜を用いて濃縮を行った。これにより主にニンニクの糖類を含む低臭なエキスが得られた。
【実施例8】
【0065】
熱水にて抽出された廃水について実施例7と同様に、図13のように確認した。アリインを分解する酵素が熱水により失活する為、アリインがアリシンに分解されることなく残る割合が多くなる。しかし、この実施例によると膜処理に関して、アリインはアリシンより分子量がやや大きい為に、ニンニクオリゴ糖や遊離アミノ酸類と同じような挙動を示す結果であった。Brixが減少している事から、主にMF膜(ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製FBO2-VC-FUS1582)により高分子が除去されていると考えられるが、NF膜(スパイラル型、阻止率55%,ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社製SWO2300-DRA451S)によりアリインと糖や遊離アミノ酸を分離することが出来なかったので、これを省略して直接NF膜で濃縮しても良い。これによりアリイン、ニンニクオリゴ糖、遊離アミノ酸糖を含む濃縮エキスを得ることが出来る。また、この結果より、MF膜処理した後に図11のように加熱濃縮減圧処理を実施する方法でも良いと考えられた。
【0066】
上記実施例7、8中で示した膜の阻止率は、NaClの阻止率を示す。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、ニンニクを食品加工利用する上で発生した廃水、または廃水が発生する工程とほぼ同じような方法で得られるニンニク水溶液など、のニンニク抽出水溶液から油溶性成分と水溶性成分または高分子成分と低分子成分を分離し、それぞれの溶液の適性に合わせて更に抽出や濃縮を行うことにより、ニンニク加工廃液等のニンニク抽出水溶液中のニンニク成分を食品、健康食品、エキス、香料等に有効に利用する事ができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニンニク抽出水溶液からニンニクの成分を分離濃縮することを特徴とする、ニンニク抽出水溶液の利用法。
【請求項2】
ニンニク抽出水溶液として、ニンニクに加水して固形分を取り除いたニンニク抽出水溶液であって乾燥ニンニクを水戻した時の廃液、塩蔵ニンニクを水で脱塩した廃液、生ニンニクの水洗浄もしくは脱水廃液であるニンニク抽出水溶液またはこれらと同じ操作で得られるニンニク抽出液を利用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニンニク抽出水溶液の内、ニンニク原料を加熱処理した後に加水するか、または熱水処理によって得られるニンニク抽出水溶液からアリインを分離濃縮することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項2に記載されたニンニク抽出水溶液から食用油を溶媒として用いて油溶成分を含む油性画分を分離し、この油性画分を溶媒として用いてニンニク抽出水溶液に対して同じ操作を繰り返し行うことによって、油溶成分の濃度を高めることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4で得られた油溶成分を含む油性画分を分離した後に残った水溶液について、加熱処理または加熱減圧処理、または膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載されたニンニク抽出水溶液について、膜処理によってニンニク成分を分離することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6において分子量約1,000以上の高分子画分を分離し、得られた高分子画分について加熱処理または加熱減圧処理、または膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6で分子量約1,000未満の低分子画分を分離し、得られた低分子画分について更に膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8で濃縮した水溶液について、加熱処理または水蒸気蒸留処理によって各スルフィド化合物の混合液へ変化させる工程を更に組み合わせることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8または9で得られた水溶液について、食用油抽出によってスルフィド化合物を含む成分を抽出する工程を組み合わせることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10で残った水溶液を単独でまたは請求項7で最終的に得られた高分子画分と混合してニンニク成分濃縮物とすることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7で最終的に得られた高分子画分について、乾燥植物または乾燥海草類と混合して同時に乾燥し粉末化することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項2に記載されたニンニク抽出水溶液から遠心分離により得た沈殿物について、乾燥し粉末化することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10で得られたスルフィド化合物含有油をカプセル化または錠剤化することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12または13で得られた粉末を単独、または混合してカプセル化または錠剤化することを特徴とする方法。
【請求項16】
ニンニク抽出水溶液のニンニク原料として乾燥ニンニクを使用することを特徴とする、請求項2〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項1】
ニンニク抽出水溶液からニンニクの成分を分離濃縮することを特徴とする、ニンニク抽出水溶液の利用法。
【請求項2】
ニンニク抽出水溶液として、ニンニクに加水して固形分を取り除いたニンニク抽出水溶液であって乾燥ニンニクを水戻した時の廃液、塩蔵ニンニクを水で脱塩した廃液、生ニンニクの水洗浄もしくは脱水廃液であるニンニク抽出水溶液またはこれらと同じ操作で得られるニンニク抽出液を利用することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ニンニク抽出水溶液の内、ニンニク原料を加熱処理した後に加水するか、または熱水処理によって得られるニンニク抽出水溶液からアリインを分離濃縮することを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
請求項2に記載されたニンニク抽出水溶液から食用油を溶媒として用いて油溶成分を含む油性画分を分離し、この油性画分を溶媒として用いてニンニク抽出水溶液に対して同じ操作を繰り返し行うことによって、油溶成分の濃度を高めることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4で得られた油溶成分を含む油性画分を分離した後に残った水溶液について、加熱処理または加熱減圧処理、または膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項2または3に記載されたニンニク抽出水溶液について、膜処理によってニンニク成分を分離することを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6において分子量約1,000以上の高分子画分を分離し、得られた高分子画分について加熱処理または加熱減圧処理、または膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項6で分子量約1,000未満の低分子画分を分離し、得られた低分子画分について更に膜処理によって濃縮することを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8で濃縮した水溶液について、加熱処理または水蒸気蒸留処理によって各スルフィド化合物の混合液へ変化させる工程を更に組み合わせることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項8または9で得られた水溶液について、食用油抽出によってスルフィド化合物を含む成分を抽出する工程を組み合わせることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10で残った水溶液を単独でまたは請求項7で最終的に得られた高分子画分と混合してニンニク成分濃縮物とすることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7で最終的に得られた高分子画分について、乾燥植物または乾燥海草類と混合して同時に乾燥し粉末化することを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項2に記載されたニンニク抽出水溶液から遠心分離により得た沈殿物について、乾燥し粉末化することを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項10で得られたスルフィド化合物含有油をカプセル化または錠剤化することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項12または13で得られた粉末を単独、または混合してカプセル化または錠剤化することを特徴とする方法。
【請求項16】
ニンニク抽出水溶液のニンニク原料として乾燥ニンニクを使用することを特徴とする、請求項2〜15のいずれかに記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−110320(P2012−110320A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217490(P2011−217490)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591104848)株式会社桃屋 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(591104848)株式会社桃屋 (17)
【Fターム(参考)】
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