説明

ヌクレオシド、ヌクレオシド誘導体、オリゴヌクレオチド、及びオリゴヌクレオチド会合体

【課題】水素結合、スタッキング、疎水性相互作用による結合とは異なる化学結合により非天然のオリゴヌクレオチドを会合させる。
【解決手段】非天然のオリゴヌクレオチドの会合を引き起こす結合の1つとしてハロゲン結合に着目し、ハロゲン結合供与体又はハロゲン結合受容体を含む非天然のヌクレオシド及びこのヌクレオシドの誘導体を合成する。そして、このヌクレオシド誘導体と市販のDNA合成用ホスホロアミダイトユニットからハロゲン結合供与体又はハロゲン結合受容体として機能するヌクレオシド残基を有するオリゴヌクレオチドを合成する。ハロゲン結合供与体又はハロゲン結合受容体として機能するヌクレオシド残基を有するオリゴヌクレオチドがハロゲン結合供与体とハロゲン結合受容体との間でハロゲン結合を介して会合することにより会合体を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン結合供与体及びハロゲン結合受容体を含むヌクレオシド、このヌクレオシドの置換体であるヌクレオシド誘導体、上記ヌクレオシドを含んで合成されるオリゴヌクレオチド、また、これらのオリゴヌクレオチドにおけるハロゲン結合供与体とハロゲン結合受容体との間でハロゲン結合により会合してできる非天然のオリゴヌクレオチド会合体に関する。
【背景技術】
【0002】
非天然のオリゴヌクレオチド(以下、必要に応じて人工オリゴヌクレオチドという。)化合物を会合させる技術は、新素材開発等のための重要な基盤技術である。従来の会合技術では、人工オリゴヌクレオチドを構成するヌクレオチドとして、互いに水素結合を形成し得るヘテロ環化合物を塩基部位に有するヌクレオシドが使用されている。これらのヌクレオチド間では、水素結合により塩基対が形成され、この塩基対形成により人工オリゴヌクレオチドが会合して二本鎖構造が構築される。
【0003】
ところが、水素結合によって非天然のオリゴヌクレオチドを会合させる手法は、オリゴヌクレオチド鎖の塩基部位にNH、OH等の水素原子供与部位が、またオリゴヌクレオチド鎖内に電子供与性の高い非共有電子対を有する酸素原子や窒素原子が、バランスよく配合されている必要がある。そのため、オリゴヌクレオチド鎖に導入できる塩基部位の化学構造が制限されていた。
【0004】
オリゴヌクレオチドの会合に水素結合を用いない手法としては、オリゴヌクレオチド鎖にスタッキング、疎水性相互作用等により互いに化学結合し得る残基を導入する手法等があげられる。しかし、これらの相互作用を利用したオリゴヌクレオチドの会合は、水素結合を利用して会合する場合に比べて特異的に結合できる塩基部位の組合せが限定されていた。
【0005】
そのため、NH、OH等の水素原子供与部位と電子供与性の高い非共有電子対を有する酸素原子や窒素原子とがバランスよく配合できる非天然のオリゴヌクレオチドの合成方法、若しくは対合可能な塩基部位が特定の組合せに限定されない非天然のオリゴヌクレオチドの合成方法、更には水素結合、スタッキング、疎水性相互作用等による結合と異なる結合で会合体を構成可能な非天然のオリゴヌクレオチドの合成方法が期待されている。
【0006】
ところで、水素結合、スタッキング、疎水性相互作用等をはじめとする化学結合のなかでハロゲン結合は、C−X結合(ただし、Xはハロゲン原子)のσ*軌道と窒素原子又は酸素原子の非共有電子対との重なりに起因する非共有結合であり、量子化学計算の結果からハロゲン結合の結合エネルギーは、2〜50kcal/mol程度であると見積もられている(例えば、非特許文献1参照)。この結合エネルギーは、水素結合に匹敵するかそれ以上の結合力に相当する。
【0007】
そこで、本発明者らはハロゲン結合に着目した。一方の非天然のオリゴヌクレオチド鎖中にハロゲン結合供与体を含む非天然のヌクレオシドを導入し、また他方の非天然のオリゴヌクレオチド鎖中にハロゲン結合受容体を含むヌクレオシドを導入すれば、一対のオリゴヌクレオチドがハロゲン結合により会合体を形成し得ることを見出した。
【0008】
【非特許文献1】Uhlman.E.;Peyman,A,;Breipohl,G.;Will,D.W.Angrew.Chem.Int.Ed.1998,37,2796
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、水素結合、スタッキング、疎水性相互作用による結合とは異なる化学結合により互いに会合されてできる非天然のオリゴヌクレオチド会合体、またこの会合体を形成するハロゲン結合受容体又はハロゲン結合供与体として機能するヌクレオシド誘導体を含む非天然のオリゴヌクレオチドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、まず、下記の一般式(1)、一般式(2)で表されるヌクレオシドを合成する。
【0011】
【化1】

【0012】
式中、R1は、ハロゲン結合供与体としてC−X結合(但し、Xはハロゲン元素である。)を含む芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。
【0013】
【化2】

【0014】
式中、R2は、ハロゲン結合受容体として非共有電子対を有する芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。
【0015】
一般式(1)で表されるヌクレオシドから3’位の水酸基又は5’位の水酸基の何れか又は全てが保護基で保護された下記一般式(3)で表されるヌクレオシド誘導体を合成する。また、一般式(2)で表されるヌクレオシドから3’位の水酸基又は5’位の水酸基の何れか又は全てが保護基で保護された下記一般式(4)で表されるヌクレオシド誘導体を合成する。
【0016】
【化3】

【0017】
【化4】

【0018】
特にここでは、式中R1の化合物として、ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうち同一原子又は異なる複数の各原子が少なくとも1つ導入された芳香環又はヘテロ芳香環が適用可能である。また、式中R2の化合物としては、窒素原子又は酸素原子を含む芳香環又はヘテロ芳香環が適用可能である。更に、上述したヌクレオシド誘導体では、R3がH原子でありR4がH原子を除く置換基の場合と、R3がH原子を除く置換基でありR4がH原子の場合とがあり、目的に応じた置換基をR3又はR4に適宜導入することができる。
【0019】
更に本発明では、上記一般式(3)、一般式(4)に示すヌクレオチド誘導体を用いて、下記の一般式(5)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合されたオリゴヌクレオチドを合成する。また、下記の一般式(6)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合されたオリゴヌクレオチドを合成する。
【0020】
【化5】

【0021】
式中、R1は、ハロゲン結合供与体としてC−X結合(但し、Xはハロゲン元素である。)を含む芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。
【0022】
【化6】

【0023】
式中、R2は、ハロゲン結合受容体として非共有電子対を有する芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。
【0024】
また、本発明に係るヌクレオチドは、一般式(5)で表されるヌクレオシドと、核酸塩基が結合したヌクレオシドとから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合されたもの、一般式(6)で表されるヌクレオシドと、核酸塩基が結合したヌクレオシドとから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合されたもののほか、一般式(5)で表されるヌクレオシドと一般式(6)で表されるヌクレオシドと核酸塩基とが混在し、これらが3’位の酸素と5’位の酸素でリン酸ジエステル結合されたオリゴヌクレオチドであってもよい。
【0025】
そして、本発明では、上述したハロゲン結合供与体として機能するヌクレオシド残基を有するオリゴヌクレオチドと、ハロゲン結合受容体として機能するヌクレオシド残基を有するオリゴヌクレオチドとをハロゲン結合により会合させる。
【0026】
本発明に係るオリゴヌクレオチド会合体は、一般式(5)で表されるヌクレオシドと核酸塩基が結合したヌクレオシドとから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチドと、一般式(6)で表されるヌクレオシドと核酸塩基が結合したヌクレオシドとから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチドとが、ハロゲン結合供与体とハロゲン結合受容体との間に少なくとも1つのハロゲン結合が形成されてなるオリゴヌクレオチド会合体である。
【0027】
また、一般式(5)で表されるヌクレオシド、一般式(6)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチド間におけるハロゲン結合供与体とハロゲン結合受容体との間に少なくとも1つのハロゲン結合が形成されてなるオリゴヌクレオチド会合体であってもよい。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、ハロゲン結合による非天然のオリゴヌクレオチド会合体の形成が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明は、水素結合、スタッキング、疎水性相互作用による結合とは異なる化学結合により互いに会合されてできる非天然のオリゴヌクレオチド会合体、またこの会合体形成に寄与するヌクレオシド誘導体を含むオリゴヌクレオチドを提供するものであり、本発明者らは非天然のオリゴヌクレオチドの会合を引き起こす結合の1つとしてハロゲン結合に着目した。
【0030】
本発明では、まず、ハロゲン結合供与体又はハロゲン結合受容体を含む非天然のヌクレオシド及びこのヌクレオシドの誘導体が合成される。そして、このヌクレオシド誘導体と市販のDNA合成用ホスホロアミダイトユニットからハロゲン結合供与体又はハロゲン結合受容体として機能するヌクレオシド残基を有するオリゴヌクレオチドが合成される。ハロゲン結合供与体又はハロゲン結合受容体として機能するヌクレオシド残基を有するオリゴヌクレオチドは、ハロゲン結合供与体とハロゲン結合受容体との間でハロゲン結合により会合し会合体を形成することができる。なお、以下の説明では、必要に応じて、非天然のオリゴヌクレオチドを人工オリゴヌクレオチド、非天然のヌクレオシド誘導体を人工ヌクレオシド誘導体と記す。
【0031】
本発明において、ハロゲン結合供与体を含む人工ヌクレオシド誘導体とは、C−X結合(ただしXは、ハロゲン元素)を含む人工ヌクレオシド誘導体であって、ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうち同一原子又は異なる複数の各原子が少なくとも1つ導入された芳香環又はヘテロ芳香環がリボース−1−イル部位に結合した化合物とその誘導体を指す。若しくは、ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうち同一原子又は異なる複数の各原子が少なくとも1つ導入された芳香環又はヘテロ芳香環が、2位がH又は水酸基を除く置換基で置換された2−デオキシリボース−1−イル部位に結合した化合物とその誘導体を指す。
【0032】
核酸の二重螺旋構造に対して3次元的に組み込み可能な芳香環又はヘテロ芳香環としては、イミダゾール等のように五員環を有するもの、ベンゼンのように6員環を有するもの、ピレン、アントラセン等のようにベンゼン環を3つ有するもの、若しくはナフタセンのようにベンゼン環を4つ有する基が適切であり、これらの芳香環又はヘテロ芳香環に対して可能なだけハロゲン原子を導入することができる。芳香環又はヘテロ芳香環に対して導入可能なハロゲン原子の数は、例えば、イミダゾールで最大3個、ベンゼンで5個であり、アントラセンで最大9個、ナフタセンで11個になる。
【0033】
また、この芳香環又はヘテロ芳香環における2位に結合可能な水素原子又は水酸基以外の置換基としては、例えば、置換基を有してもよいアルコキシ基、好適にはメトキシ、2−シアノエトキシ等があげられる。
【0034】
ここで、リボース−1−イル部位又は2−デオキシリボース−1−イル部位に結合する一部の水酸基、又は全ての水酸基が適切な保護基で保護されていてもよい。
【0035】
ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうち同一原子又は異なる複数の各原子が1個以上導入された芳香環又はヘテロ芳香環の一例としては、3−ヨードフェニル、3−ブロモフェニル、3−クロロフェニル、2,4−ジフルオロ−3−ヨードフェニル、2,4,5−トリフルオロフェニル、2,4,5,6−テトラフルオロフェニル、4−ニトロ−3−ヨードフェニル、3−ヨードピロール−1−イル、4−ヨードイミダゾール−1−イル、2−フルオロ−4−ヨードイミダゾール−1−イル、4,5−ジヨードイミダゾール−1−イル等があげられるが、芳香環又はヘテロ芳香環にハロゲン元素が1個以上導入された芳香環又はヘテロ芳香環であれば、上述の例に限定されることなく使用可能である。ヨウ素が最も結合エネルギーが大きいという観点から、本発明の実施例では、ハロゲン元素としてヨウ素を使用している。
【0036】
また、本発明において、ハロゲン結合受容体を含む人工ヌクレオシド誘導体とは、非共有電子対を有する窒素原子、酸素原子等ハロゲン結合受容体となりうる芳香環又はヘテロ芳香環がリボース−1−イル部位に結合した化合物及びその誘導体を指す。若しくは、2位がH又は水酸基以外の置換基で置換された2−デオキシリボース−1−イル部位に結合した化合物及びその誘導体を指す。ハロゲン結合受容体となりうる芳香環又はヘテロ芳香環としては、例えば、イミダゾール−1−イル、ピリジン−3−イル、ピリミジン−5−イル、2−ピリミドン−1−イル、2−アミノピリジン−5−イル、4−ヨードイミダゾール−1−イル等があげられる。
【0037】
本発明の具体例で合成される人工オリゴヌクレオチドは、上述の人工ヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドが3’位の酸素と5’位の酸素でリン酸ジエステル結合した分子である。また、オリゴヌクレオチド1分子中に上記ハロゲン結合供与体を含む人工ヌクレオシド、ハロゲン結合受容体を含む人工ヌクレオシド及びこれら以外の任意のヌクレオシドが混合されていてもよい。
【0038】
また、人工オリゴヌクレオチドの会合体とは、上記ハロゲン結合供与体を含む人工オリゴヌクレオチドとハロゲン結合受容体を含む人工オリゴヌクレオチドとが会合してできる複合体のうち、複合体中のハロゲン結合供与体とハロゲン結合受容体との間に少なくとも1つのハロゲン結合が形成されているものを指す。
【0039】
以下では、ハロゲン元素としてヨウ素を使用した例について、ハロゲン結合供与体又はハロゲン結合受容体を含む人工ヌクレオシドの合成スキーム、この人工ヌクレオシドの誘導体の合成スキームについて図面を用いて説明する。図1に人工オリゴヌクレオチドを合成する前段階としてハロゲン結合受容体としての人工ヌクレオシド誘導体を合成する合成スキームを示し、図2に人工オリゴヌクレオチドを合成する前段階としてハロゲン結合供与体としての人工ヌクレオシド誘導体を合成する合成スキームを示す。また以下では、図1、図2の合成スキームを用いて説明したヌクレオシド、中間体、ヌクレオシド誘導体を合成する合成方法の具体例について説明する。標題にある括弧内の数字は、図1及び図2における化合物番号に対応している。
【0040】
ハロゲン結合受容体として機能する人工ヌクレオシド誘導体の合成について、図1を用いて説明する。まず、ハロゲン元素の各原子が少なくとも1つ導入された芳香環又はヘテロ芳香環の一例として4,5−ジヨードイミダゾールを用いて、構造式(13)に示す1−(2−デオキシ−3,5−ジ−0−p−トリオイル−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールを合成し、続いてこのヌクレオシド誘導体から構造式(14)に示す1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールを合成する。続いて、1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールから構造式(15)に示す1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールを合成し、更にこの構造式(15)に示す化合物から構造式(16)に示す1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾールを得る。そして、構造式(16)のヌクレオシド誘導体を脱保護し、構造式(17)の1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾールを得る。また、構造式(16)から構造式(18)に示す1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾール−3’−(シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト)を誘導する。
【0041】
同様に図2に示すように、ハロゲン結合供与体として機能する人工ヌクレオシド誘導体を合成する。ハロゲン元素の各原子が1個以上導入された芳香環又はヘテロ芳香環の一例として1,3−ジヨードベンゼンと3’,5’−O−((1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシロキサンジイル)−2’−デオキシ−D−リボノ−1’,4’−ラクトンを用いて、構造式(19)に示す3’,5’−O−((1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシロキサンジイル)−1’,2’−ジデオキシ−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのα、β混合物を合成し、構造式(19)の化合物から構造式(20)に示す1’,2’−ジデオキシ−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのα,β混合物を合成する。
【0042】
そして、β体から合成された構造式(21)に示す5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−β−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースα体から合成された構造式(22)に示す5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−α−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのうちβ体を使用して、構造式(23)に示す5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−β−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノース3’−(シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト)を得る。
【0043】
構造式(18)に示す化合物及び構造式(23)に示す化合物と、市販のDNA合成用ホスホロアミダイトユニットとからDNA自動合成機を用いてハロゲン結合供与体として機能するヌクレオシド残基を有する人工オリゴヌクレオチドと、ハロゲン結合受容体として機能するヌクレオシド残基を有する人工オリゴヌクレオチドとをそれぞれ合成する。
【実施例】
【0044】
(13):1−(2−デオキシ−3,5−ジ−0−p−トリオイル−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールの合成
4,5−ジヨードイミダゾール(2.22mg、6.95mmol)を脱水アセトニトリル(70ml)に溶解させ、水素化ナトリウム(166.9mg、6.95mmol)を加えて室温で30分間攪拌した。更に、1−クロロ−2−デオキシ−3,5−ジ−O−パラ−トリオイル−α−D−エリスロ−ペントフラノース(500mg、6.32mmol)を15分毎に4回加えた。反応系を室温で2時間攪拌した後、反応残渣を酢酸エチルと水で抽出し、有機層を無水硫酸水素ナトリウムで乾燥させた。有機層を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィ(C−200)を用いて、ヘキサン−クロロホルム 0→12%で単離精製を行ったところ、化合物(3.80g、収率89%)を得た。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、13C−NMR(CDCl 126MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(13)に示す1−(2−デオキシ−3,5−ジ−0−p−トリオイル−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールであることが同定できた。
【0045】
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.95−7.85(5H,m,Tol,imi 2H)、7.29−7.23(4H,m,Tol)、6.78(1H,dd,1’H,J=5.62、7.81)、5.64(1H,m,4’H)、4.67(2H,t,5’H×2,J=2.69、3.42)、4.61(1H,m,3’H)、2.81−2.80(1H,m,2’H)、2.58−2.53(1H,m,2’H)、2.44(3H,s,Tol CH)、2.41(3H,s,Tol CH
【0046】
13C−NMR (CDCl 126MHz)
δ:166.28、166.02、144.83、144.54、139.05、129.95、129.73、129.59、129.49、126.56、126.37、97.26、89.57、83.27、79.83、74.74、63.89、39.91、21.91、21.86
【0047】
【化7】

【0048】
(14):1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールの合成
次に、合成された1−(2−デオキシ−3,5−ジ−0−p−トルイル−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾール(3.79g,5.64mmol)をメタノール(56ml)に溶解し、ナトリウムメトキシド(305mg、5.64mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。残渣をドライシリカゲルクロマトグラフィ(C−200)を用いてクロロホルム−メタノール 0→3%で単離精製を行ったところ化合物(2.21g、収率90%)を得た。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、13C−NMR(CDCl 126MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(14)に示す1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−イル)であることが同定できた。
【0049】
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:8.08(1H,s,imi 2H)、5.60(1H,t,1’H,J=6.10)、4.65−4.64(1H,m,4’H)、4.05−4.03(1H,m,3’H)、3.89(2H,dd,5’H×2,J=12.24、56.03)、3.05(1H,br,OH)、2.61(1H,br,OH)、2.53−2,43(2H,m,2’H×2)
【0050】
13C−NMR (CDCl 126MHz)
δ:139.53,88.93、86.95、80,12、70.69、61.55、41.70、29.60
【0051】
【化8】

【0052】
(15):1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールの合成
1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾール(2.18g、5.00mmol)を無水ピリジンで3回程度脱水共沸し、無水ピリジン(50ml)に溶解させ、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(1.86g、5.50mmol)を加えて、室温で6時間攪拌した。そこにメタノール(5ml)を加え、反応を停止させ、溶媒を濃縮した。反応残渣を酢酸エチル−水で抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮しシリカゲルクロマトグラフィ(C−200)を用いて、クロロホルム−メタノール 0→2%で単離精製を行ったところ下記の化合物(3.17g、収率86%)を得た。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、13C−NMR(CDCl 126MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(15)に示す1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾールであると同定できた。
【0053】
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.77(1H,s,imi 2H)、7.42−7.20(9H,m,DMTr)、6.84−6.82(4H,m,DMTr)、5.97(1H,t,1’H,J=6.35)、4.50(1H,m,4’H)、3.79(6H,s,DMTr)、3.41−3.30(2H,m,5’H×2)、2.53−2.48(1H,m,2’H)、2.39−2.34(1H,m,2’H)、2.09(1H,br,OH)
【0054】
13C−NMR (CDCl 126MHz)
δ:158.76、144.44、139.28、135.63、135.55、130.14、130.10、128.18、128.15、127.20、113.44、96.93、89.15、86.90、86.12、79.90、72.17、63.59、55.41、41.67
【0055】
【化9】

【0056】
(16):1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾールの合成
1−(2−デオキシ−5−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ヨードイミダゾール(738mg、1.0mmol)を脱水テトラヒドロフラン(10ml)に溶解させ、反応系をアルゴン置換し、−78℃に冷却した。そこにエチルマグネシウムブロミド(1M in THF,1.0mL、1.0mmol)を加え、−78℃で5分間攪拌し、その後0℃で5分間攪拌した。そこにエチルマグネシウムブロミド(1M in THF,1.0mL、1.0mmol)を再度加え、0℃で15分間攪拌した。続いて、反応系に水(3mL)を加えて反応を停止後、酢酸エチル−飽和重曹水で抽出操作を行い、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下で留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(C−200)を用いてクロロホルム−メタノール 0→1%で単離精製を行ったところ化合物を得た(334mg、収率56%)。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、13C−NMR(CDCl 126MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(16)に示す1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾールであると同定できた。
【0057】
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.50(1H,s,imi 2H)、7.40−7.22(9H,m,DMTr)、7.11(1H,s,imi 5H)、6.85−6.83(4H,m,DMTr)、5.97(1H,t,J=6.59,1’H)、4.50(1H,m,3’H)、4.05(1H,dd,J=4.40,8.06,4’H)、3.80(6H,s,DMTr)、3.39−3.26(2H,m,5’H,5”H)、2.41(2H,dd,2’H,2”H)、2.18(1H,br,OH)
【0058】
13C−NMR (CDCl 126MHz)
δ:158.78、144.48、137.47、135.70、135.59、130.17、130.14、128.24、128.17、127.20、122.44、133.44、86.89、86.13、82.76、72.53、63.87、55.44、41.66
【0059】
【化10】

【0060】
(17):1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾールの合成
1−(2−デオキシ−5−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ジヨードイミダゾール(200mg、0.327mmol)に80%酢酸(3.3mL)を加え、室温で4時間攪拌した。反応溶液を濃縮し、水−クロロホルムで抽出した。水層をクロロホルムで3回洗い、有機層を回収して無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧濃縮し、反応残渣をリサイクル分取HPLCを用いて、クロロホルム−メタノール(4:1 v/v)で単離精製を行ったところ化合物を得た(84mg、収率83%)。得られた化合物の構造をH−NMR(acetone-d 500MHz)、13C−NMR(CDCl 126MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(17)に示す1−(2−デオキシ−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾールであると同定できた。
【0061】
H−NMR (acetone-d 500MHz)
δ:7.77(1H,s,imi 2H)、7.52(1H,s,imi 5H)、6.11(1H,dd,J=6.10,7.08Hz, 1’H)、4.55−4.51(2H,m,OH,3’H)、4.18(1H,br,OH)、3.98(1H,dd,J=3.91,6.84,4’H)、3.75−3.69(2H,m,5’H,5”H)、2.50−2.45(1H,m,2”H)、2.42−2.37(1H,m,2”H)
【0062】
13C−NMR (CDCl 126MHz)
δ:18.ESIMS calcd.C12IN[M+N] 310.9893,found 310.9898
【0063】
【化11】

【0064】
(18):1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾール−3’−(シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト)の合成
1−(2−デオキシ−5−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4,5−ヨードイミダゾールを脱水ジクロロメタン(5mL)に溶解させた。ここにジイソプロピルエチルエミン(327μL、1.96mmol)、クロロ(2−シアノエトキシ)(N,N−ジイソプロピルアミノ)ホスフィン(131μL、0.588mmol)を加えて室温で2時間攪拌した。反応系を酢酸エチル−飽和重曹水で抽出操作し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を濃縮し、反応残渣をカラムクロマトグラフィを用いてヘキサン−酢酸エチル−トリエチルアミン(10:10:1)で単離精製を行ったところ化合物を得た(59mg、収率15%)。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、31P−NMR(CDCl 202MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(18)に示す1−(2−デオキシ−5−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−β−D−リボフラノース−1−イル)−4−ヨードイミダゾール−3’−(シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト)であると同定できた。
【0065】
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.57(1H,m)、7.43−7.24(9H,m)、7.18(1H,m)、6.88−6.85(4H,m)、6.01(1H,m)、4.61(1H,m)、4.28−4.24(1H,m)、3.89−3.58(10H,m)、3.35−3.27(2H,m)、2.64(1H,m)、2.61−2.44(2H,m)、1.22−1.12(12H,m)
【0066】
31P−NMR (CDCl 202MHz)
δ:149.51、149.48
【0067】
【化12】

【0068】
(19):3’,5’−O−((1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシロキサンジイル)−1’,2’−ジデオキシ−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのα、β混合物の合成
1,3−ヨードベンゼン(4.95mg、15.0mmol)を脱水テトラヒドロフラン(30mL)に溶解し、アルゴン気流下、−78℃で攪拌し、n−ブチルリチウム(1.54M inヘキサン、9.74mL、15.0mmol)をゆっくりと加えた。−78℃で30分間攪拌した後、脱水テトラヒドロフラン(30mL)に溶解させた3’,5’−O−((1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシロキサンジイル)−2’−デオキシ−D−リボノ−1’,4’−ラクトン(3.74mg、10.0mmol)をシリンジを使って反応系に加えた。1時間後に−78℃で飽和塩化アンモニウム水溶液(20mL)を加えて反応を停止させ、室温まで上げた。反応系を酢酸エチル−飽和アンモニウム水溶液で抽出後、有機層を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗った。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を減圧下留去した。残渣に脱水ジクロロメタン(35mL)を加えて、アルゴン気流下、−78℃で攪拌し、トリフルオロボラン・ジエチルエーテルコンプレックス(3.80mL、30.0mmol)、トリエチルシラン(4.79mL、30.0mmol)を加えた。6時間後、飽和重曹水で抽出操作し、有機層を水及び飽和塩化ナトリウム水溶液で洗った。有機層を回収し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(C−200)を用いて、ヘキサン−酢酸エチル 0→1%で単離精製を行ったところ化合物を得た(1.80g、収率32%、α:β=1:5.6)。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、13C−NMR(CDCl 126MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(19)に示す3’,5’−O−((1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシロキサンジイル)−1’,2’−ジデオキシ−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのα、β混合物であると同定できた。
【0069】
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.73(0.15H,s,α−Ph 2H)、7.68(0.85H,s,β−Ph 2H)、7.60−7.58(1H,m,αβ−Ph 4H)、7.30−7.29(1H,m,αβ−Ph 6H)、7.07−7.04(1H,m,αβ−Ph 5H)、5.02(0.85H,t,J=7.33Hz,β−1’H)、4.96(0.15H,dd,J=6.10,9.77Hz,α−1’H)、4.59−4.54(0.15H,m,α−3’H)、4.52−4.48(0.85H,m,β−3’H)、4.14−4.10(0.85H,m,β−4’H)、4.07−4.03(0.15H,m,α−4’H)、3.93−3.86(2H,m,αβ−5’H,5”H)、2.67−2.62(0.15H,m,α−2’H)、2.39−2.34(0.85H,m,β−2’H)、2.12−2.00(1H,m,αβ−2’H)、1.12−0.95(28H,m,αβ−i−PrSi)
【0070】
13C−NMR (CDCl 126MHz,βisomer)
δ:144.84、136.74、134.93、130.33、125.32、94.65、86.66、78.31、73.17、63.67、43.29、17.82、17.73、17.67、17.48、17.33、17.30、17.20、13.73、13.61、13.23、12.78 ESIMS calcd.C2343INOSi[M+NH 580.1770,found 580.2539
【0071】
【化13】

【0072】
(20):1’,2’−ジデオキシ−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのα,β混合物の合成
3’,5’−O−((1,1,3,3−テトライソプロピル)ジシロキサンジイル)−1’,2’−ジデオキシ−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのα、β混合物(1.68mg、3.18mmol)をテトラヒドロフラン(16mL)に溶解させ、トリエチルアミン(1.81mL、5.73mmol)、トリエチルアミン・3ハイドロフルオリン(1.81mL、11.2mmol)を加え、室温で1時間攪拌した。反応系をクロロホルム−水で抽出し、水層をクロロホルムで洗い、有機層を回収し無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(C−200)を用いて、クロロホルム−メタノール 0→3%で単離精製を行ったところ化合物を得た(収量951mg、α:β=1:5.6)。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、13C−NMR(CDCl 126MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(20)に示す1’,2’−ジデオキシ−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのα,β混合物であると同定できた。
【0073】
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.74(0.15H,s,α−Ph 2H)、7.70(0.85H,s,β−Ph 2H)、7.63−7.60(1H,m,αβ−Ph 4H)、7.33−7.29(1H,m,αβ−Ph 6H)、7.10−7.05(1H,m,αβ−Ph 5H)、5.10(0.85H,dd,J=5.62,10.26Hz,β−1’H)、5.38(0.15H,t,J=7.81Hz,α−1’H)、4.47−4.42(1H,m,αβ−3’H)、4.07(0.15H,dd,J=4.88,9.28Hz,α−4’H)、4.02−4.00(0.85H,m,β−4’H)、3.85−3.81(1H,m,αβ−5’H)、3.78−3.71(1H,m,αβ−5”H)、2.70−2.65(0.15H,m,α−2’H)、2.28−2.65(0.85H,m,β−2’H)、2.04−1.94(3H,m,αβ−2”H,OH×2)
【0074】
13C−NMR (CDCl 126MHz,βisomer)
δ:143.73、136.94、135.01、130.37、125.40、94.62、87.50、79.34、73.64、63.42、43.92
【0075】
【化14】

【0076】
(21):5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−β−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースと、(22):5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−α−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースの合成
1,2−ジデオキシ−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースのα,β混合物(421mg、1.32mmol)を脱水ピリジンで3回程度脱水共沸し、脱水ピリジン(13mL)に溶解させ、4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(490mg、1.45mmol)を加えた。室温で1時間攪拌し、メタノール(3.0mL)を加えて反応を停止させた。反応系をある程度濃縮し、残渣を酢酸エチル−飽和重曹水で抽出し、有機層を飽和重曹水、飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層を回収し無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。溶媒を減圧下にて留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィ(C−200)を用いて、ヘキサン−酢酸エチル 0→40%で単離精製を行ったところ化合物を得た(βisomer:467mg、収率57%、αisomer:71mg、収率9%)。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、13C−NMR(CDCl 126MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、13C−NMR測定の結果、下記の構造式(21)に示す5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−β−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノース、また構造式(22)に示す5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−α−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノースであると同定できた。
【0077】
・βisomer
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.92(1H,s,Ph 2H)、7.61(1H,s,Ph 4H)、7.47−7.26(9H,m,DMTr)、7.23−7.20(1H,m,Ph 6H)、7.06(1H,t,J=7.81Hz Ph 5H)、6.86−6.83(4H,m,DMTr)、5.11(1H,dd,J=5.62,10.25Hz,1’H)、4.41−4.40(1H,m,3’H)、4.07−4.05(1H,m,4’H)、3.79(6H,s,DMTr)、3.36−3.28(2H,m,5’H,5”H)、2.26−2.22(1H,m,2’H)、2.06−2.00(1H,m,2”H)、1.94(1H,br,OH)
13C−NMR (CDCl 126MHz,βisomer)
δ:158.61、144.92、144.50、136.24、136.09、134.97、130.23、130.20、128.30、128.01、126.94、125.38、113.32、94.55、86.61、86.43、79.21、74.67、64.51、55.37、44.01
【0078】
・αisomer
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.76(1H,s,Ph 2H)、7.65−7.59(1H,m,Ph 4H)、7.45−7.21(10H,m,DMTr,6H)、7.08(1H,t,J=7.81Hz Ph 5H)、6.86−6.83(4H,m,DMTr)、5.06(1H,t,J=7.33Hz,1’H)、4.42(1H,m,3’H)、4.17−4.14(1H,dd,J=4.64,10.50Hz,4’H)、3.80(6H,s,DMTr)、3.38−3.35(1H,m,5’H)、3.24−3.21(1H,m,5”H)、2.72−2.66(1H,m,2’H)、2.00−1.95(1H,m,2”H)、1.86(1H,br,OH)
13C−NMR (CDCl 126MHz,βisomer)
δ:158.69、145.67、144.89、136.59、136.07、136.02、134.87、130.35、130.20、128.26、128.07、127.03、125.09、113.35、94.67、86.58、84.71、79.054、75.21、64.80、55.38、43.24
【0079】
【化15】

【0080】
【化16】

【0081】
(23)5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−β−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノース3’−(シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト)の合成
5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−β−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノース(300mg、0.482mmol)を脱水ジクロロメタン(5mL)に溶解させた。ここにジイソプロピルエチルアミン(322μL、1.93mmol)、クロロ(2−シアノエトキシ)(N,N−ジイソプロピルアミノ)ホスフィン(129μL、0.578mmol)を加えて、室温で2時間攪拌した。反応系を酢酸エチル−飽和重曹水で抽出し、有機層を回収し無水硫酸ナトリウムで乾燥させた。有機層を凝集し、残渣をカラムクロマトグラフィを用いて、ヘキサン−酢酸エチル−トリエチルアミン(10:10:1)で単離精製を行ったところ化合物を得た(316mg、収率81%)。得られた化合物の構造をH−NMR(CDCl 500MHz)、31P−NMR(CDCl 202MHz)で測定した。結果を以下に示す。H−NMR測定、31P−NMR測定の結果、下記の構造式(23)に示す5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)−1’,2’−ジデオキシ−β−1’−(3−ヨードフェニル)−D−リボフラノース3’−(シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト)であることが同定できた。
【0082】
H−NMR (CDCl 500MHz)
δ:7.83(1H,m)、7.61(1H,m)、7.36−7.27(9H,m)、7.21(1H,m)、7.06(1H,m)、6.85−6.81(4H,m)、5.10(1H,m)、4.49(1H,m)、4.22(1H,m)、3.86−3.54(10H,m)、3.35−3.21(2H,m)、2.61(1H,m)、2.46−2.31(2H,m)、2.01(1H,m)、1.18−1.07(12H,m)
【0083】
31P−NMR (CDCl 202MHz)
δ:148.70、148.51
【0084】
【化17】

【0085】
ハロゲン結合供与体及びハロゲン結合受容体を含むオリゴヌクレオチドの合成
上記ホスホロアミダイト(18),(23)及び市販のDNA合成法用ホスホロアミダイトユニットとDNA自動合成機を用いてオリゴヌクレオチドの合成を行った。脱保護及び切り出しは、アンモニア水による標準的な手法で行った。ホスホロアミダイト(18)により導入されるヌクレオシド残基をiimi、(23)により導入されるヌクレオシド残基をiphと記載する。合成して得られたオリゴヌクレオチドの配列は、
A:5’−CGCAGTXTAGTCC−3’ (X=iimi、iph)
B:5’−GGACTAYACTGCG−3’ (Y=A,T,G,C,iimi)
であった。A,Bの構造は、MALDI TOF Massスペクトルにて確認した。
A(X=iimi):計算値 3990.5、実測値 3990.1
A(X=iph):計算値 4000.6、実測値 3997.8
B(Y=iimi):計算値 4039.6、実測値 4038.8
【0086】
ハロゲン結合による会合の確認
上記A(X=iph)、及びB(X=A,T,G,C,iimi)で表されるオリゴDNAを各々10mMリン酸緩衝液(100mM 塩化ナトリウム、0.1mM EDTA pH7.0)に溶解し2μMの溶液を調製し、それらを混合した。混合液の温度変化に対する260nmにおける吸光度変化を測定し、その微分曲線が最大となる温度をTmとした。その結果を図3に示す。XとYがハロゲン結合供与体であるiphと受容体であるiimiの組合せのときに、ほかの結合に比べてTmが高くなった。これにより、オリゴヌクレオチド鎖Aとオリゴヌクレオチド鎖Bは、ヌクレオシド誘導体iph(構造式(23))がハロゲン結合供与体として機能し、iimi(構造式(18))がハロゲン結合受容体として機能することにより、iphとiimiとがハロゲン結合を介して特異的に対合し、会合体を形成しているといえる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】本発明の具体例として示す人工オリゴヌクレオチドを合成する前段階としてハロゲン結合受容体としての人工ヌクレオシド誘導体を合成する合成スキームを示す図である。
【図2】本発明の具体例として示す人工オリゴヌクレオチドを合成する前段階としてハロゲン結合供与体としての非天然のヌクレオシド誘導体を合成する合成スキームを示す図である。
【図3】A(X=iph)及びB(X=A,T,G,C,iimi)で表されるオリゴDNA溶液を混合し、混合液の温度変化に対する260nmにおける吸光度変化を測定した測定結果を表す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式(1)で表されるヌクレオシド。
【化1】

(式中、R1は、ハロゲン結合供与体としてC−X結合(但し、Xはハロゲン元素である。)を含む芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【請求項2】
上記式中R1は、ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうち同一原子又は異なる複数の各原子が少なくとも1つ導入された芳香環又はヘテロ芳香環であることを特徴とする請求項1記載のヌクレオシド。
【請求項3】
下記の一般式(2)で表されるヌクレオシド。
【化2】

(式中、R2は、ハロゲン結合受容体として非共有電子対を有する芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【請求項4】
上記式中R2は、窒素原子又は酸素原子を含む芳香環又はヘテロ芳香環であることを特徴とする請求項3記載のヌクレオシド。
【請求項5】
下記の一般式(3)で表され、3’位の水酸基又は5’位の水酸基の何れか又は全てが保護基で保護されたヌクレオシド誘導体。
【化3】

(式中、R1は、ハロゲン結合供与体としてC−X結合(但し、Xはハロゲン元素である。)を含む芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。また、R3がH原子でありR4がH原子を除く置換基であるか、又はR3がH原子を除く置換基でありR4がH原子である。)
【請求項6】
上記式中R1は、ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうち同一原子又は異なる複数の各原子が少なくとも1つ導入された芳香環又はヘテロ芳香環であることを特徴とする請求項5記載のヌクレオシド誘導体。
【請求項7】
下記の一般式(4)で表され3’位の水酸基又は5’位の水酸基の何れか又は全てが保護基で保護されたヌクレオシド誘導体。
【化4】

(式中、R2は、ハロゲン結合受容体として非共有電子対を有する芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。また、R3がH原子でありR4がH原子を除く置換基であるか、又はR3がH原子を除く置換基でありR4がH原子である。)
【請求項8】
上記式中R2は、窒素原子又は酸素原子を含む芳香環又はヘテロ芳香環であることを特徴とする請求項7記載のヌクレオシド誘導体。
【請求項9】
下記の一般式(5)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチド。
【化5】

(式中、R1は、ハロゲン結合供与体としてC−X結合(但し、Xはハロゲン元素である。)を含む芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【請求項10】
上記式中R1は、ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうち同一原子又は異なる複数の各原子が少なくとも1つ導入された芳香環又はヘテロ芳香環であることを特徴とする請求項9記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項11】
下記の一般式(6)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチド。
【化6】

(式中、R2は、ハロゲン結合受容体として非共有電子対を有する芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【請求項12】
上記式中R2は、窒素原子又は酸素原子を含む芳香環又はヘテロ芳香環であることを特徴とする請求項11記載のオリゴヌクレオチド。
【請求項13】
下記の一般式(7)で表されるヌクレオシド、下記の一般式(8)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチド。
【化7】

(式中、R1は、ハロゲン結合供与体としてC−X結合(但し、Xはハロゲン元素である。)を含む芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【化8】

(式中、R2は、ハロゲン結合受容体として非共有電子対を有する芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【請求項14】
下記の一般式(9)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチドと、
下記の一般式(10)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチドとが、
ハロゲン結合供与体とハロゲン結合受容体との間に少なくとも1つのハロゲン結合が形成されてなるオリゴヌクレオチド会合体。
【化9】

(式中、R1は、ハロゲン結合供与体としてC−X結合(但し、Xはハロゲン元素である。)を含む芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【化10】

(式中、R2は、ハロゲン結合受容体として非共有電子対を有する芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【請求項15】
上記式中R1は、ハロゲン元素であるフッ素、塩素、臭素、ヨウ素のうち同一原子又は異なる複数の各原子が少なくとも1つ導入された芳香環又はヘテロ芳香環であり、上記式中R2は、窒素原子又は酸素原子を含む芳香環又はヘテロ芳香環であることを特徴とする請求項14記載のオリゴヌクレオチド会合体。
【請求項16】
下記の一般式(11)で表されるヌクレオシド、下記の一般式(12)で表されるヌクレオシド及び核酸塩基が結合したヌクレオシドから選ばれる複数のヌクレオシドの3’位の酸素と5’位の酸素がリン酸ジエステル結合してなるオリゴヌクレオチド間におけるハロゲン結合供与体とハロゲン結合受容体との間に少なくとも1つのハロゲン結合が形成されてなるオリゴヌクレオチド会合体。
【化11】

(式中、R1は、ハロゲン結合供与体としてC−X結合(但し、Xはハロゲン元素である。)を含む芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)
【化12】

(式中、R2は、ハロゲン結合受容体として非共有電子対を有する芳香環又はヘテロ芳香環であり、Yは、水素原子、水酸基又はアルコキシ基である。)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−248987(P2006−248987A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−67805(P2005−67805)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】