説明

ヌメリ防除剤

【課題】塩素臭や腐臭がなく、安全性や取扱い性に優れ、適度な溶解性を保持している上に、抗菌剤の延命と薬剤の汚れ防止ヌメリ防除効果を有するヌメリ防除剤を提供する。
【解決手段】(a)非さらし粉系抗菌剤、(b)ヒドロキシプロピルセルロース及び(c)融点が50℃以上である界面活性剤及び/又はタルクを含有し、加圧成形されてなることを特徴とするヌメリ防除剤である。非さらし粉系抗菌剤には、多分子系ホスト化合物と抗菌剤との包接化合物も包含される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所流し台や風呂場の排水口等のように雑菌やカビ等の代謝物によりヌメリが発生する箇所に設け、ヌメリを取り、ヌメリの発生を防止するヌメリ防除剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願出願人によって、安全性や取扱い性に優れ、適度な溶解性を保持したヌメリ防除剤が提供されている(特許文献1参照)。当該文献記載のヌメリ防除剤はヌメリを十分防除できる上に安全性に優れたものであったが、使用条件によっては薬剤自体が汚れる例があることが問題点となっていた。また、上記ヌメリ防除剤は抗菌剤の除放性に優れるため、適度な溶解性を有しているが、これも使用条件によっては溶解が早く、効果が早く消失してしまう例があることが問題となっていた。
【0003】
【特許文献1】特開2000−327509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記ヌメリ防除剤において、薬剤の汚れの付着を防止し、既存のものよりも徐放性に優れたヌメリ防除剤の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意研究した結果、従来のヌメリ防除剤に融点が50℃以上である界面活性剤及び/又はタルクを含有させ、ヒドロキシプロピルセルロースの含量を調整することによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、
(1)(a)非さらし粉系抗菌剤、(b)ヒドロキシプロピルセルロース及び(c)融点が50℃以上である界面活性剤及び/又はタルクを含有し、加圧成形されてなることを特徴とするヌメリ防除剤、
(2)融点が50℃以上である界面活性剤が、脂肪酸カルバノールアミド類又はソルビタン脂肪酸エステル類の界面活性剤である請求項1のヌメリ防除剤、
(3)非さらし粉系抗菌剤が、抗菌剤と多分子系ホスト化合物とからなる包接化合物であることを特徴とする(1)または(2)記載のヌメリ防除剤、
(4)多分子系ホスト化合物が1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンであり、抗菌剤が5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンであることを特徴とする(3)記載のヌメリ防除剤、
(5)ヒドロキシプロピルセルロースの配合割合が、ヌメリ防除剤全重量に対して5重量%より少ないことを特徴とする(1)ないし(4)のいずれかに記載のヌメリ防除剤、
(6)さらに硫酸カルシウム0.5水和物、乳糖及びC10−24飽和脂肪酸を含有することを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載のヌメリ防除剤、及び
(7)さらに抗菌性無機金属又はその化合物を含有することを特徴とする(1)ないし(5)のいずれかに記載のヌメリ防除剤
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のヌメリ防除剤は、本願出願によって開発された塩素臭や腐臭がなく、安全性や取扱い性に優れ、適度な溶解性を保持しているヌメリ防除剤の性能の上に、薬剤の汚れ防止ヌメリ防除効果とさらなる除放性をも有している。そのため、従来のヌメリ防除剤に比して、効果的にも、見た目にも優れたヌメリ防除剤を提供することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
(非さらし粉系抗菌剤)
本発明における非さらし粉系抗菌剤としては、その使用時に酸性物質等と反応して塩素ガスを発生しないものであればどのようなものでも使用することができ、例えば、一般的な防黴剤又は抗細菌剤として知られている化合物及び抗菌作用を有することが知られている天然製油類等を例示することができる。
防黴剤又は抗細菌剤としては、例えば、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、4,5−ジクロロ−3−n−オクチル−イソチアゾリン−3−オン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、2−メトキシカルボニルベンズイミダゾール、2,3,5,6−テトラクロロ−4−メタンスルホニルピリジン、2−チオシアノメチルベンゾチアゾール、2,2−ジチオ−ビス−(ピリジン−1−オキサイド)、3,3,4,4−テトラハイドロチオフェン−1,1−ジオキサイド、4,5−ジクロロ−1,2−ジチオラン−3−オン、5−クロロ−4−フェニル−1,2−ジチオラン−3−オン、N−メチルピロリドン、フェニル−(2−シアノ−2−クロロビニル)スルホン、メチレンビスチオシアネート、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、2,2−ジブロモ−2−エタノール、2−ブロモ−4′−ヒドロキシアセトフェノン、ジブロモニトリルプロピオンアミド、2−ブロモ−2−ブロモメチルグルタルニトリル、過炭酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過ほう酸ナトリウム、オルトフェニルフェノール、ジフェニル、2−イソプロピル−5−メチルフェノール、パラクロロメタキシレノール、パラヒドロキシ安息香酸n−ブチル、パラヒドロキシ安息香酸エチル、パラヒドロキシ安息香酸メチル、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩酸クロロへキシジン、グルコン酸クロロヘキシジン、2−ピリジンチオール−1−オキサイド、2−ピリジンチオール−1−オキシド亜鉛塩、2−ピリジンチオール−1−オキシドナトリウム、N,N′−ヘキサメチレンビス(4−カルバモイル−1−デシルピリジニウムブロマイド)、4,4′−(テトラメチレンジアミノ)ビス(1−デシルピリジニウムブロマイド)等を具体的に挙げることができる。
【0009】
また、天然製油類としては、例えば、シネオール、ヒノキチオール、メントール、テルピネオール、ボルネオール、ノポール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、ゲラニオール、リナロール、ジメチルオクタノール、チモール等を例示することができる。
さらに、本発明における非さらし粉系抗菌剤として、ヨード系抗菌剤も例示することができ、その中でも特に固体のものが望ましい。ヨード系抗菌剤としては、例えば、2,3,3−トリヨードアリルアルコール類、2,3,3−トリヨードアリルエーテル類、2,3,3−トリヨードアリルアゾール類、3−ヨード−2−プロパギルブチルカルバミン酸、4−クロロフェニル(3−ヨードプロパギル)ホルマール、ヨードプロパギルアゾール類、ジヨード−パラ−トリスルホン、ポピドンヨード、ベンジルヨード酢酸エステル及びパラニトロベンジルヨード酢酸エステルを挙げることができる。
【0010】
これら非さらし粉系抗菌剤は、単独又は2種以上混合して使用することができる。また、これら非さらし粉系抗菌剤は、多分子系ホスト化合物のゲスト化合物とすることができ、例えば、2−ブロモ−2−ニトロプロパン−1,3−ジオール、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン等をゲスト化合物として包接化合物を形成させ、これらを非さらし粉系抗菌剤として使用することができる。
【0011】
本発明において多分子系ホスト化合物とは、ゲストとなる抗菌剤と水素結合等の分子間力により相互作用を持ち、規則的配列を有する、結晶性錯体(包接化合物)を形成する化合物をいい、上記の性質を有する化合物であれば特に制限されないが、例えば以下の化合物を例示することができる。
(1)テトラキスフェノ−ル類
(2)1,1,6,6−テトラフェニル−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
(3)1,6−ビス(2−クロロフェニル)−1,6−ジフェニルヘキサン−2,4−ジイン−1,6−ジオール
(4)1,1,4,4−テトラフェニル−2−ブチン−1,4−ジオール
(5)2,5−ビス(2,4,ジメチルフェニル)ハイドロキノン
(6)1,1−ビス(2,4,ジメチルフェニル)−2−プロピン−1−オール
(7)1,1,2,2−テトラフェニルエタン−1,2−ジオール
(8)1,1′−ビ−2−ナフトール
(9)9,10−ジフェニル−9,10−ジヒドロキシアントラセン
(10)1,1,6,6−テトラ(2,4−ジメチルフェニル)−2,4−ヘキサジイン−1,6−ジオール
(11)9,10−ビス(4−メチルフェニル)−9,10−ジヒドロキシアントラセン(12)1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン
(13)N,N,N′,N′−テトラキス(シクロヘキシル)−(1,1′−ビフェニル)−2−2’−ジカルボキシアミド
(14)4,4′−スルホニルビスフェノール
(15)4,4′−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
(16)2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)
(17)4,4′−チオビス(4−クロロフェノール)
(18)2,2′−メチレンビス(4−クロロフェノール)
(19)デオキシコール酸
(20)コール酸
(21)α,α,α′,α′−テトラフェニル−1,1′−ビフェニル−2,2′−ジメタノール
(22)t−ブチルヒドロキノン
(23)2,5−ジ−tert−ブチルヒドロキノン
(24)顆粒状コーンスターチ
(25)1,4−ジアザビシクロ−(2,2,2)−オクタン
【0012】
上記多分子系ホスト化合物におけるテトラキスフェノ−ル類としては、例えば、1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,3,3−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,3,3−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,4,4−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,4,4−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1,5,5−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1,5,5−テトラキス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン等テトラキス(ヒドロキシフェニル)アルカン類を具体的に例示することができる。
【0013】
本発明に使用される包接化合物は、通常、ゲストとなる非さらし粉系抗菌剤とホスト化合物とを、場合によっては水あるいは有機溶媒存在下に、常温〜100℃で数分間〜数時間攪拌して反応させることにより容易に得られる。
【0014】
(ヒドロキシプロピルセルロース)
本発明で使用するヒドロキシプロピルセルロース は、セルロースの水酸基の一部又は全部が2−(CHCH(CH)−O)H(式中、mは1以上の整数)で置換されたものであり、重合度、置換度などについては特に限定されない。ヒドロキシプロピルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース HPC−SL,HPC−L(以上商品名、日本曹達(株)社製)等が挙げられる。本発明において使用するヒドロキシプロピルセルロースの量は、ヌメリ防除剤全重量に対して、好ましくは5重量%より少なく、より好ましくは、1〜4重量%である。
【0015】
(界面活性剤)
本発明において使用される界面活性剤は抗菌剤成分と反応せず、融点が50℃以上のものであれば特に制限はない。融点が50℃以下の界面活性剤を用いると、台所や風呂場で使用した場合に温水などにより錠剤が溶解しやすくなり、また、夏場においては気温の上昇により錠剤から界面活性剤がブリードしやすくなるなどの問題がある。融点が50℃以上の界面活性剤としては、例えば、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ラウリン酸モノイソプロパノールアミドなどの脂肪酸カルバノールアミド類、ソルビタンステアレート、ソルビタンパルミテートなどのソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーなどが挙げられる。その中でも、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドとソルビタンステアレートを好ましい界面活性剤として挙げることができる。
これらのうち、市販されているものは、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドとしては、トーホールN−120(東邦化学工業株式会社製)、アミゾールCME(登録商標、川研ファインケミカル株式会社製)など、ラウリン酸モノイソプロパノールアミドとしてはアミゾールPLME(登録商標、川研ファインケミカル株式会社製)、ソルビタンステアレートとしてはレオドールSP−S10V、S20V、S30V(登録商標、花王株式会社製)、ソルボンS−60(東邦化学工業株式会社製)など、ソルビタンパルミテートとしてはソルボンS−40(東邦化学工業株式会社製)など、ポリオキシエチレンステアリルエーテルとしてはエマルゲン350(登録商標、花王株式会社製)など、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーとしてはニューポールPE−68(登録商標、三洋化成工業株式会社製)などがある。
これらは、単独で使用することも、あるいは2種以上混合して使用することもできるが、加圧成形した時の打錠性、水に対する溶解性、崩壊性、抗菌剤の安定性への影響を考慮して決定することが望ましい。
界面活性剤の含有量としては、ヌメリ防除剤全重量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0016】
(タルク)
マグネシウムの含水ケイ酸塩鉱物であり、MgSi10(OH)の組成を有する。本発明においては、上記界面活性剤の代わりに用いたり、上記界面活性剤と併用して用いられる。 タルクの含有量としては、ヌメリ防除剤全重量に対して、0.1〜10重量%、好ましくは0.5〜3重量%である。
【0017】
(抗菌性無機金属又はその化合物)
本発明のヌメリ防除剤には抗菌性無機金属又はその化合物を添加することができる。抗菌性を有する無機金属を含有する成分であれば特に限定されないが、好ましくは固体状であり、抗菌性無機金属そのもの又はその酸化物、塩化物、硝酸塩、硫酸塩を担体に担持した粒子状のもの等が好ましく選ばれる。
ここで、担体の具体例としては、リン酸塩類(リン酸ジルコニウム、リン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化ジリコニウム等)、無機化合物(ゼオライト、粘土鉱物、シリカゲル等)等が挙げられる。これらの担体は、単独または2種以上を用いてもよい。
なかでも、金属酸化物の担体に抗菌性無機金属酸化物を担持したものが、担持強度の点から、より好ましく選ばれる。
【0018】
抗菌性無機金属又はその化合物中の抗菌性無機金属としては、抗菌性を有する金属であれば特に限定されないが、銀、亜鉛、銅等が好ましく選ばれる。さらに好ましいものとして、抗菌性の効果の点から、銀が選ばれる。これら抗菌性無機金属は、単独または2種以上を用いてもよい。
また、抗菌性無機金属又はその化合物の実際の商品としては、商業的に入手可能なものであれば特に限定されるものではなく、例えば、ATOMYBALL−S、ATOMYBALL−L、ATOMYBALL−UA(登録商標、触媒化成工業(株))の商品名で販売されているナノ粒子銀系無機抗菌剤などを使用することができる。
抗菌性無機金属含有成分は、一種または2種以上を混合して用いることができる。
【0019】
抗菌性無機金属又はその化合物の配合量としては、例えば銀を含む成分の場合、銀元素濃度に換算して、0.0002重量%以上が好ましい。より好ましくは、0.0002〜0.005重量%である。0.0002重量%以上で抗菌能が向上し、また、0.005重量%以下であっても、抗菌能は充分であり、経済的にも許容される上限量である。
抗菌性無機金属又はその化合物が粒子状である場合の組成物中における分散粒子の平均粒子径は、1〜500nmであることが好ましく、さらには、1〜100nmであることが好ましい。
ここで、平均粒子径とは、数平均粒子径であり、光散乱法により測定されるものである。500nm以下であれば粒子の分散状態は安定になり、100nm以下であれば粒子の分散状態はより安定なものとなる。また、粒子径が小さいほど、菌との接触の観点から有利に作用する。
【0020】
(他の成分)
本発明においては、その他、硫酸カルシウム、乳糖、C10−24飽和脂肪酸などを含有させることができる。
硫酸カルシウムを用いる場合、成形性や溶解性を容易にコントロールすることができる点からして硫酸カルシウム0.5水和物が好ましく、硫酸カルシウム0.5水和物の中でも、常圧焼成により製造されるβ型のものが、加圧焼成することにより製造されるα型のものよりも、吸水による成形体の型崩れを起こしにくい点で好ましく、このβ型の硫酸カルシウム0.5水和物を用いる場合は、乳糖と併用することが上記成形性や溶解性のコントロールの点でより好ましい。
10−24飽和脂肪酸としては、ステアリン酸、ラウリン酸などが挙げられる。
これら飽和脂肪酸は、成形時の滑沢性を付与するのと同時に剤の水中での安定性(膨潤、崩壊防止性)を向上させる目的で使用され、全ヌメリ防除剤に対して1〜10重量%の割合で用いられる
また、必要に応じてステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、オルトほう酸等の滑沢剤を、全ヌメリ防除剤に対して0.1〜5重量%の割合で使用できる。
さらに、目的に応じてアルキルチオ尿素系やトリアゾール系等の腐食防止剤を添加し配管などの金属部分の腐食を抑制することもできる。また、ケイソウ土、硫酸白土などを加えることにより、成形の際、帯電防止効果を付与することもできる。また、各種界面活性剤を添加することにより有効成分を広くヌメリ発生面に拡散させることができる。その他、苦味付与成分を添加することにより乳幼児の誤食を防止したり、消臭剤や芳香剤を添加することにより台所生ゴミや排水口の悪臭を防止することもできる。
【0021】
(配合)
本発明のヌメリ防除剤は、非さらし粉系抗菌剤とそれ以外の成分とを加圧成形することにより得られる。本発明において非さらし粉系抗菌剤とそれ以外の成分との混合割合は、使用状況が様々であることから非さらし粉系抗菌剤1〜99重量部、それ以外の成分99〜1重量部の間で任意に混合比率を変化させることができるが、好ましくは非さらし粉系抗菌剤5〜20重量部、それ以外の成分95〜80重量部である。また、非さらし粉系抗菌剤として包接化合物を用いる場合、該包接化合物2〜30重量部、それ以外の成分98〜70重量部の混合割合が好ましい。
【0022】
(形状など)
本発明のヌメリ防除剤の一態様として、加圧成形により最大長が30mm以下である錠剤とした小型のヌメリ防除剤を例示することができる。かかる小型ヌメリ防除剤は各種公知の形状をとることが可能であるが、加圧成形が容易であることや狭い場所への設置の容易さの面から円板形状、角落し四角形状、楕円形状、偏平球形、球状等の形状が好ましく選択される。またその大きさは、各種排水管や台所のゴミ受け容器等狭い容器内に設置可能なように、最長部分で30mm以下、好ましくは20mm以下、特に好ましくは15mm以下である。
【0023】
本発明の小型ヌメリ防除剤は溶解によりさらに小型化した際の流出を防止するために、通水性の容器に収納した形態で使用することができる。通水性の容器としては、各種公知の通水性を有する材質で形成された容器や、非通水性の材質で形成された容器であっても小型化した錠剤の流出を防止可能で適当な通水性を有する開口部の設置された容器であれば使用可能であり、不織布や細孔を有する樹脂フィルム等が好ましく使用される。
【0024】
上記通水性の容器は、排水管内や台所のゴミ受け容器等のヌメリ防除目的部に容器を設置するために、糸や紐、金属線、樹脂製止め具、粘着材等の各種公知の係止具、好ましくは粘着テープ部等の係止具を備えたものが好ましい。また、2つの錠剤収納部の間に、錠剤が存在しない載置部を設けた通水性の容器とし、かかる載置部を台所のゴミ受け容器(通称三角コーナー)の周縁上端に載置することによりヌメリを防除することができる形態とすることもできる。
【実施例】
【0025】
以下に、本発明を実施例及び比較例により、さらに具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの例示に何ら限定されるものではない。
実施例及び比較例
(試料の調製)
表1に示される配合割合の各混合物から加圧成形により直径10mmの錠剤からなる試料を調製した。混合は株式会社マゼラー製型式PT−60の混合機により、造粒はターボ工業株式会社製型式WP−160造粒機により、打錠は株式会社菊水製作所製型式HER2ロータリー打錠機により行った。表1中、「トップビット」(登録商標)は抗菌剤として2モルの5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン(CMI)と、多分子系ホスト化合物として、1モルの1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンとの反応により得られた包接化合物を、「HPC」はヒドロキシプロピルセルロースを、「トーホールN−120」は東邦化学工業株式会社製界面活性剤ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミドを、「レオドールSP−S20」(登録商標)は花王株式会社製界面活性剤ソルビタンステアレートを示す。また、「タルク」は、富士タルク社製MS−100を用いた。なお、表中、各成分の数値は重量部を示す。
【0026】
【表1】

【0027】
(溶解試験)
直径10mmの成形物10錠(0.7g/錠)を市販のヌメリ取り用収納容器に入れ、
直径18cm、高さ58cmの市販ピペット洗浄器(洗浄水量:14.75L、洗浄水温:37〜42℃、温水入替時間:15〜17回/時間)の水深25〜29cmの位置に吊して設置し、連続的に洗浄した後測定を行った。CMI濃度の測定は、分析基準に従い、液体クロマトグラフィーにより行った。
なお、表1中、「元錠剤」とは、溶解試験を行う前の錠剤を、「溶解錠剤」とは、溶解試験を行った後の錠剤を意味する。
比較例は、実施例に比してHPC含量が多く、界面活性剤及びタルクのいづれも添加していない例である。試験の結果、比較例に比して、実施例はいづれも溶解錠剤中のCMI含有濃度が高いこと、即ち残留CMIが多いことが分かった。このことから、HPC含量が比較的に少なくても、これらの界面活性剤単独、タルク単独あるいはこれらの両方を添加することによりCMIの溶解が遅くなることが分かった。
【0028】
(汚れ度テスト)
上記溶解試験に伴って、実施例2、3及び比較例について、錠剤の汚れ度をモニター試験により実施した。モニターには、目視により、「かなり汚れている」、「きれいな物」、「のいずれに該当するかを評価してもらった。評価の結果、表2に示すとおり、比較例に比して、実施例はいずれも、少し汚れていると感じた割合、かなり汚れていると感じた割合がいずれも低いことが分かった。
【0029】
【表2】





【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)非さらし粉系抗菌剤、(b)ヒドロキシプロピルセルロース及び(c)融点が50℃以上である界面活性剤及び/又はタルクを含有し、加圧成形されてなることを特徴とするヌメリ防除剤。
【請求項2】
融点が50℃以上である界面活性剤が、脂肪酸カルバノールアミド類又はソルビタン脂肪酸エステル類の界面活性剤である請求項1のヌメリ防除剤。
【請求項3】
非さらし粉系抗菌剤が、抗菌剤と多分子系ホスト化合物とからなる包接化合物であることを特徴とする請求項1または2記載のヌメリ防除剤。
【請求項4】
多分子系ホスト化合物が1,1,2,2−テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)エタンであり、抗菌剤が5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンであることを特徴とする請求項3記載のヌメリ防除剤。
【請求項5】
ヒドロキシプロピルセルロースの配合割合が、ヌメリ防除剤全重量に対して5重量%より少ないことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のヌメリ防除剤。
【請求項6】
さらに硫酸カルシウム0.5水和物、乳糖及びC10−24飽和脂肪酸を含有することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のヌメリ防除剤。
【請求項7】
さらに抗菌性無機金属又はその化合物を含有することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のヌメリ防除剤。

【公開番号】特開2008−7494(P2008−7494A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−341660(P2006−341660)
【出願日】平成18年12月19日(2006.12.19)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】