説明

ネガレジスト組成物

【課題】 露光装置の露光ステージ表面からの反射光の影響を受けることなくネガ型の露光領域を形成することができるネガレジスト組成物を提供する。
【解決手段】 樹脂、重合開始剤又はモノマーの少なくとも一つに、露光時に露光光の照射による現象に伴って光透過率が高くなる光透過率変化物質を添加して生成されることから、露光装置の露光ステージ1表面からの反射光の影響を受けることがなくなり、フォトマスクパターン3と一致する正確なネガ型の露光領域を形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リソグラフィに用いられる感光性材料のレジスト組成物に関し、特に露光領域を溶解しないで残存させるネガレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下「PDP」という。)や液晶表示パネル等のフラットディスプレイパネルの表示電極形成工程におけるポジレジスト組成物は、ジアゾナフトキノン(以下「DNQ」という。)−ノボラック樹脂系高分子から生成される。このDNQ−ノボラック樹脂系のポジレジスト組成物の場合には、スパッタリング法又は蒸着法で成膜されたITO膜(Indium Tiu Oxide;インジウムとスズの合金酸化膜)等の透明導電膜上に塗布されて加熱され、この加熱による乾燥状態で露光装置により露光光が照射され現像される。又は、アクリル樹脂系のネガレジスト組成物の場合には、前記透明導電膜上にドライフィルムレジストとしてラミネートした後に、露光装置により光が照射されて露光され、三次元的に硬化される。この露光装置による露光処理は、透明導電膜上にドライフィルムレジスト等のネガレジスト膜4が形成されたガラス基板2を露光ステージ1上に載置して実行される(図3,図4を参照)。
【0003】
前記露光されて三次元的に硬化したネガレジスト組成物に対して現像液で現像されてレジストパターンが形成され、このレジストパターンで特定される領域の透明導電膜をエッチングする。この透明導電膜のエッチングの後に、ネガレジスト組成物を剥離することにより下層の透明導電膜から表示電極を形成することとなる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のネガレジスト組成物は以上のように構成されていたことから、透明基板表面に透明導電膜を介して塗布又はラミネートされて露光装置の露光ステージ1上に載置された場合に、露光光が透明なガラス基板2、透明導電膜及びネガレジスト膜4を透過して露光ステージ1表面に照射され、この露光ステージ1表面形状に対応する反射光も露光装置からの露光光と共に前記ネガレジスト膜4を露光することとなる。この露光ステージ1の表面形状及び断面図を図3に示すように、露光ステージ1の表面にはガラス基板2を真空吸着する吸着用孔11及びガラス基板2とフォトマスク3とのギャップを測定する測定用切欠きエリア12が複数形成されている。このように複数の吸着用孔11及び測定用切欠きエリア12を有する露光ステージ1にフォトマスク3の電極パターンに対応した開口部32を介して露光光が照射されるとガラス基板2上のネガレジスト膜4が露光されると共に、ガラス基板2、このガラス基板2上に形成される透明導電膜及びネガレジスト膜4がいずれも透明であることから、図4に示すように前記露光ステージ1の表面で反射した露光光が再度ネガレジスト膜4を露光することとなる。
【0005】
前記露光ステージ1の表面で反射した露光光によるネガレジスト膜4の露光は、この露光光が露光ステージ1表面に対応したパターンを含んでいることから、このパターンを反映してなされるという課題を有する。即ち、ネガレジスト組成物は、露光に際して露光光の波長に対するネガレジスト膜4の光透過率がほとんど変動せず、又は低下する傾向にあり、露光開始時点から露光装置における露光ステージ1からの光反射の影響をネガレジスト組成物が受けて露光されることとなる。
【0006】
また、前記露光ステージ1は、その表面を反射が均一となるように各種加工を施すという対応策を採っていたが、複数の吸着用孔11及び測定用切欠きエリア12等が多数配設されていることから、表面からの反射光を十分均一化できない。さらに、ネガレジスト膜4に対する露光量、現像等の各工程において、このプロセス条件を調整して対応したが十分な反射光の低減又は均一化ができず、露光ステージ1表面からの反射光の影響をネガレジスト膜4の露光が受けるという課題を有していた。
【0007】
本発明は前記課題を解消するためになされたもので、露光装置の露光ステージ表面からの反射光の影響を受けることなくネガ型の露光領域を形成することができるネガレジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るネガレジスト組成物は、樹脂、重合開始剤又はモノマーの少なくとも一つに、露光時に露光光の照射による現象に伴って光透過率が高くなる光透過率変化物質を添加して生成されるものである。このように本発明のネガレジスト組成物においては、樹脂、重合開始剤又はモノマーの少なくとも一つに、露光時に露光光の照射による現象に伴って光透過率が高くなる光透過率変化物質を添加して生成されることから、露光装置の露光ステージ表面からの反射光の影響を受けることがなくなり、フォトマスクパターンと一致する正確なネガ型の露光領域を形成することができるという効果を奏する。
【0009】
また、本発明に係るネガレジスト組成物は必要に応じて、前記光透過率変化物質が、0−ナフトキノンジアジストスルホニル基を少なくとも有する化合物からなるものである。このように本発明においては、0−ナフトキノンジアジストスルホニル基を少なくとも有する化合物を光透過率変化物質としていることから、レジスト厚み方向(深さ方向)に対して常に露光光を非透過状態とできることとなり、露光装置の露光ステージ表面による反射を確実に防止できる効果を有する。
【0010】
また、本発明に係るネガレジスト組成物は必要に応じて、前記光透過率変化物質の添加量が、ネガレジストの膜厚に対して反比例して増加又は減少させるように生成されるものである。このように本発明においては、ネガレジストの膜厚に対して反比例して光透過率変化物質の添加量を増加又は減少させるように生成しているので、露光装置の露光ステージ表面からの反射光の影響を受けることがなくなり、フォトマスクパターンと一致する正確なネガ型の露光領域を形成することができるという効果を有する。
【0011】
また、本発明に係るネガレジスト組成物は必要に応じて、重合開始剤の重合完了より遅く透過率の変化が完了するように生成されるものである。このように本発明においては、重合開始剤の重合完了より遅く透過率の変化が完了するように生成しているので、露光装置の露光ステージ表面からの反射光の影響を受けることがなくなり、フォトマスクパターンと一致する正確なネガ型の露光領域を形成することができるという効果を有する。
【0012】
本発明に係るフラットディスプレイパネルの表示電極形成方法は、ネガレジスト組成物を予め表示電極用の透明導電膜が形成された透明ガラス基板の透明導電膜上に所定の膜厚で形成し、当該透明ガラス基板を露光装置の基板上に載置した状態で電極パターンに対応した開口部を有するマスクを介して前記透明導電膜を露光光により露光するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(本発明の第1の実施形態)
以下本発明の第1の実施形態に係るネガレジスト組成物をPDPの表示電極を形成する場合について図1及び図2に基づいて説明する。この図1は本実施形態に係るネガレジスト組成物によるリソグラフィプロセスの露光及び現象動作説明図、図2は本実施形態に係るネガレジスト組成物の露光光量に対する透過率の特性図を示す。
本実施形態に係るネガレジスト組成物は、アクリル系樹脂と、重合開始剤と、モノマーとからなるレジスト組成物に、0−ナフトキノンジアジストスルホニル基を有する化合物を添加する構成である。この0−ナフトキノンジアジストスルホニル基は、具体的にトリヒドロキシベンゾフェノンにエステル化したもの、テトラヒドロキシベンゾフェノンにエステル化したもの等として添加され、露光光の波長λ1に対してのみ露光感度が高い特性を有することが望ましい。
【0014】
次に、前記構成に基づく本実施形態に係るネガレジスト組成物によるリソグラフィプロセスの露光及び現象動作について説明する。まず、前提として0−ナフトキノンジアジストスルホニル基がアクリル系樹脂、重合開始剤及びモノマーとに混合添加されて不透明(透過率5%未満)なレジスト組成物が生成され、この不透明なレジスト組成物をITO等の透明導電膜が形成された透明なガラス基板2上に所定の厚みに塗布してネガレジスト膜4を形成する。なお、この不透明なレジスト組成物をドライフィルムレジストとして形成し、これをガラス基板2上に貼着することもできる。
【0015】
前記不透明なネガレジスト膜4が形成されたガラス基板2を露光ステージ1上に載置し、この露光ステージ1の吸着用孔11により露光ステージ1表面にガラス基板2を真空吸着する。この露光ステージ1に対するガラス基板2の真空吸着状態は、露光ステージ1の測定用切欠きエリア12により測定され、このガラス基板2がリソグラフィプロセスにおいて常に正常な状態で露光ステージ1に載置状態として維持される。
【0016】
この正常にガラス基板2が載置された状態で、露光工程は、水銀灯を点灯して、露光光がi線の波長を中心としたUV光としてガラス基板2の不透明なネガレジスト膜4上にフォトマスク3を介して照射される。このフォトマスク3は照射されるUV光を遮断する遮蔽部31と、このUV光をネガレジスト膜4上に透過して照射する開口部32とで構成される。この開口部32を介して露光光のUV光が照射されると、図2に示すようにこの露光光量(J/m2)の増加に伴ってネガレジスト膜4の透過率が当初の透過率5%から95%程度まで変化することとなる。このように露光光の照射に伴って図1(A)〜(C)に示すように、ネガレジスト膜4の透過率が増大する。同図(A)の露光光が0[J/m2]であることから、露光光はガラス基板2の透過及び露光ステージ1表面への照射を確実に遮蔽される状態にある。
【0017】
前記露光光の照射を継続して露光光量が増加して1000[J/m2]に達するとネガレジスト膜4の表面から順次透過率が95%程度まで上昇し、このガラス基板2の厚みの中間における状態を同図(B)に示す。この中間状態においても、前記同図(A)に示す照射当初の不透明状態と同様に、ガラス基板2の厚みにおける中間以下が未だ不透明状態を維持しているため、露光光はガラス基板2の透過及び露光ステージ1表面への照射を確実に遮蔽される状態にある。
【0018】
さらに、前記ガラス基板2の厚みにおける中間まで透過率が95%程度に上昇した後、さらに露光光を照射すると同図(C)に示すようにガラス基板2の照射領域における厚み方向に総て透過率が95%以上となる。この状態で露光光の照射を終了すると、露光ステージ1表面からの反射光による露光ステージ1の露光を確実に抑制でき、フォトマスク3のパターンに対応したネガレジスト膜4の露光を正確に実行できることとなる。
【0019】
(本発明の他の実施形態)
本発明の他の実施形態に係るネガレジスト組成物は0−ナフトキノンジアジストスルホニル基等の光透過率変化物質を樹脂、重合開始剤及びモノマーからなるレジスト組成物への添加量がネガレジスト膜4の厚みに反比例して増加又は減少するように構成することができる。このように光透過率変化物質の添加物をレジスト膜の膜厚に反比例して増加又は減少するように生成しているので露光装置の露光ステージ1表面からの反射光の影響を受けることなくネガ型の露光領域を形成することができることなる。
【0020】
本発明の他の実施形態に係るネガレジスト組成物は、重合開始剤による重合完了より光透過率変化物質による透過率変化完了が遅くなるように構成することができる。このようにネガレジスト組成物の透過変化完了が重合完了より遅くなることから、ネガレジスト組成物の照射領域における厚み方向に総て透過率が変化しても露光ステージ1表面からの反射光の影響を極力抑制できることとなる。即ち、前記ネガレジスト組成物の重合が完了した後に露光光の照射を直ちに終了することにより、未だネガレジスト組成物の露光領域が不透明な状態であることから、この不透明なネガレジスト組成物により露光光の露光ステージ1表面からの反射光をより減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るネガレジスト組成物によるリソグラフィプロセスの露光及び現象動作説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るネガレジスト組成物の露光光量に対する透過率の特性図である。
【図3】従来のネガレジスト組成物によるリソグラフィプロセスの露光及び現象動作説明図ある。
【図4】従来のネガレジスト組成物によるリソグラフィプロセスの露光及び現象動作説明図である。
【符号の説明】
【0022】
1 露光ステージ
2 ガラス基板
3 フォトマスク
4 ネガレジスト膜
31 遮蔽部
32 開口部
11 吸着用孔
12 測定用切欠きエリア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂、重合開始剤又はモノマーの少なくとも一つに、露光時に露光光の照射による現象に伴って光透過率が高くなる光透過率変化物質を添加してなることを特徴とするネガレジスト組成物。
【請求項2】
前記請求項1に記載のネガレジスト組成物において、
前記光透過率変化物質が、0−ナフトキノンジアジストスルホニル基を少なくとも有する化合物からなることを
特徴とするネガレジスト組成物。
【請求項3】
前記請求項1又は2に記載のネガレジスト組成物において、
前記光透過率変化物質の添加量が、ネガレジストの膜厚に対して反比例して増加又は減少させるように生成されることを
特徴とするネガレジスト組成物。
【請求項4】
前記請求項1ないし3のいずれかに記載のネガレジスト組成物において、
前記光透過率変化物質が、前記重合開始剤の重合完了より遅く透過率の変化が完了するように生成されることを
特徴とするネガレジスト組成物。
【請求項5】
前記請求項1又は4に記載のネガレジスト組成物を予め表示電極用の透明導電膜が形成された透明ガラス基板の透明導電膜上に所定の膜厚で形成し、当該透明ガラス基板を露光装置の基板上に載置した状態で電極パターンに対応した開口部を有するマスクを介して前記透明導電膜を露光光により露光することを
特徴とするフラットディスプレイパネルの表示電極形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−276791(P2006−276791A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100010(P2005−100010)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(599132708)富士通日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】