説明

ネットワークにわたって位置を定めるためのシステム

位置が知られている1つまたは複数の送信機によって送信された機会信号を用いて、ネットワークにわたって位置、周波数およびクロックオフセットを定めるためのシステムであって、当該システムは以下のものを含んでおり:すなわち、基地受信機を有しており、当該基地受信機はクロックおよび既知の位置を有しており、前記送信機までのレンジを定め、機会信号の一連のサンプルを採取し、当該一連のサンプルに受信時間、計算されたレンジに基づいて計算された送信時間、またはその両方でタイムタグを付ける。基地受信機は、一連のタイムタグが付されたサンプルと、必要に応じて、計算されたレンジを遠隔受信機に伝送する。所与の遠隔受信機は、機会信号のサンプルを格納し、タイムタグを付け、タイムタグが付された一連のサンプルを、格納されたサンプルと相関させ、タイムオフセットを、遠隔受信機での受信時間と、基地受信機での受信時間または基地受信機で計算された送信時間の1つまたは両方との差として計算する。遠隔受信機は位置を、当該タイムオフセットと、必要に応じて、基地受信機によって提供されたレンジに基づいて計算する。遠隔受信機の高さが、位置計算の一部として計算されてもよい。これは、Z座標を平均的な高さに強制することに基づいて反復して定められる、または、基地受信機と遠隔受信機での気圧センサ示度における差から定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願とのクロスレファレンス
本出願は、2007年11月13日に出願された、米国特許仮出願第60/987523号明細書および2007年12月21日に出願された、米国特許仮出願第61/016182号明細書の優先権を主張する。これらの文献は、共通の代理人に割り当てられており、本願に参考としてその全体が組み込まれている。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
技術分野
本発明は一般的に、ラジオまたはテレビ信号等の放射された「機会信号(signals of opportunity)」を使用して、位置およびクロックオフセットを定めるためのシステムおよび方法に関する。
【0003】
背景情報
位置を定めることは、最も近いセルに向かって、または他のネットワークデバイスに対してハンドオフを提供する高速ワイヤレスネットワークにおいてクリチカルである。さらに、位置は、ネットワークにわたった正確な時間伝達にとってクリチカルである。GNSS受信機は、遠隔場所でのアンテナが充分にクリアーな見晴らしを有している限りは、位置情報を提供することができる。しかし、そのような見晴らしを有していない遠隔場所、殊に、ビル街内の、またはGNSSソリューションに対して別の苛酷な環境に位置している遠隔場所での位置情報が必要とされる。
【0004】
機会信号を用いて位置を定める1つの方法が、Counselmanに対する米国特許第6492945号に記載されている。移動ラジオ受信機のその時の位置を定めるこのCounselman方法は、二重の異なるキャリヤ位相測定を使用している。しかし正確な位置特定のためにCounselman方法が克服しなければならない障害は、キャリヤサイクルのあいまいさである。
【0005】
発明の要約
位置情報を提供するための方法およびシステムは、現在する放射された機会信号を使用する。これは例えば、AMまたはFMラジオ信号、テレビ信号、静止通信衛星からの信号等であり、より詳細にはこの機会信号の変調である。この方法およびシステムは、あいまいさ無く、機会信号の到達時間を形成するために、変調された信号の基本的な擬似ランダム特性を使用する。複数の機会信号送信機からの信号を使用することによって、遠隔受信機は正確に、それらの位置を定めることができる。
【0006】
複数の機会信号送信機(以降で「SOP」送信機と称する)の位置は既知である、または遠隔受信機および、クロックと少なくとも2つのディメンションでの既知の位置を有している基地局受信機に容易に提供される。基地局受信機は、既知の位置を用いて、各SOP送信機へのレンジを計算し、このレンジを遠隔受信機へ提供する。基地局受信機は、各SOP送信機によって送信されて機会信号のサンプル収集もし、この信号サンプルに受信時間でタイムタグを付け、このタイムタグが付けられた信号をコミュニケーションネットワークにわたって遠隔受信機へ提供する。
【0007】
遠隔受信機はオーバーラップしている時間期間にわたって、複数の機会信号のサンプルにタイムタグを付け、格納する。遠隔受信機は、受信した、タイムタグが付けられた信号サンプルを、この格納されている信号と相関させ、各タイムタグが付されている信号に対するタイムオフセットを定める。所与の機会信号に対するタイムオフセットは、基地局受信機と各遠隔受信機におけるSOP送信機に相対する差に基づいている。並びに、基地受信機と各遠隔受信機でのクロックの差に基づいている。これは、遠隔受信機でのクロックオフセットである。所与の遠隔受信機は、擬似レンジを用いて自身の2つのディメンショナルな位置と自身のクロックオフセットを定める。これは基地受信機と遠隔受信機での、少なくとも3つのSOP送信機によって放送された機会信号到達時間から計算される。
【0008】
必要に応じて、このシステムは、基地受信機の3つのディメンショナルな位置と、SOP送信機の3つのディメンショナルな位置を使用し、4つまたはそれより多くのSOP送信機によって送信された機会信号を使用して遠隔受信機に対する3つのディメンショナルな位置と割り当てられたクロックオフセットとを定める。
【0009】
付加的に、またはその代わりに、基地受信機と遠隔受信機が気圧センサを含んでいてもよく、遠隔受信機の高さは基地受信機に対して相対的に定められ、これは2つの受信機の間の気圧差に基づく。基地受信機の高さは既知であるので、所与の遠隔受信機の実際の高さが、このような方法で1または2メートル内で定められる。
【0010】
以下で本発明の説明を、添付図面を参照して行う。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成されたシステムの機能ブロックダイヤグラム
【図2】一連の信号サンプルの図
【図3】レンジ、擬似レンジ、レンジオフセットおよびレンジバイアスを示すダイヤグラム
【図4】受信機がさらに圧力センサを含んでいる形式の図1のシステムの機能ブロックダイヤグラム
【実施例】
【0012】
図示された実施例の詳細な説明
図1では、基準または基地局受信機20(以降では「基地受信機」と称される)と遠隔受信機22、22...22がコミュニケーションネットワーク24、例えば、インターネットまたはプライベートネットワーク等に接続されている。各受信機は、複数の高出力送信アンテナ26、26、・・・26から放送された信号を受信する。これらの送信アンテナは既知の位置を有しており、換言すれば、AM/FMラジオ送信機、ビーコン送信機、テレビ局送信機、静止通信衛星等であり、ネットワークの全てまたは一部をカバーする各サービス領域を有している。
【0013】
その信号の質、既知の伝送位置および継続的な放送のために選択された放送信号は、「機会信号」である。「機会信号」は種々の周波数で放送され、ランダムな会話または対話の伝送等を目的に放送される。これらは、既存の信号であり、特別に設計され、位置および/または時間またはクロックオフセットを定めるために動作するものではない。この信号は、例えば、地球上の無線受信機にして位置、速度および時間を提供するために特別に設計されているGNSS信号とは異なる。同じ周波数で、GNSS衛星によって放送されたGNSS信号はこの目的のために特定のコードを搬送する。さらに、位置および/または時間またはクロックオフセットを定める既知のシステムとは異なり、現在のシステムは、放送信号に変調された情報のデータまたはコンテンツを使用しない。むしろ、このシステムは、変調信号の周波数含有物を使用する。この送信アンテナを以降では「SOP送信機」と称する。
【0014】
SOP送信機26、26、・・・26の位置は通常は既知である、または登録当局によって提供された情報から容易に定められる。これは例えばアメリカ合衆国連邦通信委員会である。この情報は、例えばインターネットを経由して得られる。ネットワーク24は、使用可能な機会信号のリストを基地受信機と遠隔受信機に提供する、および/またはシステムは、その搬送周波数、その変調された周波数含有、その特別なダイバーシティの安定のため、および各受信機での信号の場の強度に基づいて、特定の機会信号を選択する。
【0015】
特に、充分に低い周波数の放送機会信号は優良な建物侵入力を有している。従って遠隔受信機は特に良好な見晴らしを有する必要はなく、その代わりに、比較的良好な、選択された放送機会の受信を有していなければならない。さらに、このような低い周波数の信号を使用することによって、受信機は、設定可能なフロントエンドフィルタでスキャンすることができる。これは例えばチャージされるキャパシタフィルタまたはデジタルFIRフィルタであり、最良の機会信号候補を見出すことができる。
【0016】
このシステムは、各アースベースのSOP送信機26のXSOPi、YSOPi、ZSOPi位置座標を利用可能に有しており、これは、規制エージェンシーおよび/またはエリアトポロジカルマップ、測量等から得られた情報を通じて得られる。基地受信機20の位置は少なくとも2つのディメンジョン、すなわち、Xbase、Ybaseにおいて知られており、3つのディメンジョン、すなわちZbaseにおいて知られていてもよい。さらに、基地受信機は基地受信機クロック21によって提供された時間を有している。しかしこれは、GNSS時間またはUTC時間等の基準源に同期している必要はない。遠隔受信機22、22・・・22の位置は知られておらず、それらのクロック23、23・・・23は基地受信機クロックからの知られていないクロックオフセットを有している。
【0017】
有利には、基地受信機は、GNSS衛星信号を用いて、自身の3つのディメンジョナルな位置を定めるのに充分にクリアーな見晴らしも有している。そうでない場合には、基地受信機の位置座標が、例えば、手持ち式GPS受信機から、基地受信機の取り付け時に得られたGNSS衛星情報によって既知になっていなければならない。これは測量によって、および/またはトポロジカルマップを使用して得られる。
【0018】
既知の位置座標を使用する場合、基地受信機20は各選択されたSOP送信機26へのレンジを以下のように計算する:すなわち、2次元ソリューションの場合には、
【数1】

または、
三次元ソリューションの場合には、
【数2】

である。
【0019】
基地受信機と遠隔受信機との間の距離に関して離れているSOP送信機26の場合には、基地受信機からのレンジは方向ベクトルを用いて定められる。例えば、何千マイルも離れている静止通信衛星、ビーコン送信機等のようなSOP送信機とともに方向ベクトルが使用される。基地受信機は、計算されたレンジを、コミュニケーションネットワーク24を介して遠隔受信機に提供する。
【0020】
図2を参照すると、所与のSOP送信機26に対して、基地受信機20は、放送された機会信号の一連のサンプル200を受信し、この一連のサンプルに、基地受信機での受信時間でタイムタグを付ける。この一連のサンプルは、1秒の長さの分数またはそれよりも長く、1/4秒の長さである。基地受信機は、必要に応じてこのサンプルを継続的にまたは所定の時間で受信する。基地受信機は一連のサンプル内の各サンプルにタイムタグを付けても、最初のサンプルまたは特定のサンプルにタイムタグを付けてもよい。基地受信機は次に、このタイムタグが付けられた一連のサンプルを、コミュニケーションネットワーク24を介して遠隔受信機22に送信する。基地受信機が、ネットワークを介した伝送を容易にするために一連のサンプルを含んでいてもよい。
【0021】
遠隔受信機22は同様に、放送された機会信号のサンプルを格納し、遠隔受信機のローカルクロック23に基づく受信時間でタイムタグを付ける。必要に応じて遠隔受信機が、一連のサンプルと同じ長さを有するまたは一連のサンプルよりも僅かに長い信号セグメントのサンプルを格納してもよい。これによって相応する信号サンプルの捕獲が保証される。遠隔受信機は、基地受信機20から受信された一連のサンプルを、格納されているタイムタグが付されたデータと相関させ、これによって信号サンプルがアライメントされ、タイムオフセットTOを定める:
TO=Tbase−i−Tremote−i
ここでTbase−iは、SOP送信機26によって送信された一連のサンプルを基地受信機で受信した時間であり、Tremote−iは、遠隔受信機で一連のサンプルを基地受信機で受信した時間である。タイムオフセットは基地受信機と遠隔受信機の位置における、SOP送信機26に相対する差、並びに遠隔受信機のクロックオフセット基づいている。遠隔受信機のクロックオフセットは、遠隔受信機のクロックと基地受信機のクロックとの間の時間差である。
【0022】
遠隔受信機22は、受信された一連のサンプル200を用いてタイムオフセットを定める。この一連のサンプルは多様な周波数含有物を有しており、例えば、放送信号における変化に一致するシリーズを含んでおり、これは、例えば背景信号とは異なり、定期的に繰り返されず、例えば会話の特定の小部分である。従ってこの変調された信号は擬似ランダム特性を有しており、これはシステムによって採取される。この一連は、「変調イベント」をあらわし、格納され、受信された変調イベントのアライメントが相関関数を生成する。これは実質的に三角形であり、すなわち単独の相関ピークを有する相関関数である。例えば特定の音楽的なセグメントである、繰り返し音に一致するシリーズは、タイムオフセットを定めるのに使用されない。なぜなら、この割り当てられている相関関数は多数のピークを有しており、従ってタイムオフセットが充分な精度で定められないからである。
【0023】
遠隔受信機22は連続的に、受信された一連のサンプル200または変調イベントを、格納されている、タイムタグが付されている信号サンプルデータと相関させ、最も高い相関値を生成する、格納されたデータを選択する。次に、遠隔受信機は上述のようにタイムオフセットを定める。タイムオフセット値は、基地受信機20によって提供された、後続の変調イベントでプロセスを繰り返すことによって変わる。
【0024】
相関の精度を高めるために、遠隔受信機22は、復調サンプル収集プロセスの位相を微調整する。基地受信機20および遠隔受信機22で受信されたサンプルは僅かに異なる時間で受信される。なぜなら、サンプルは受信機のクロックに関連して受信されるからである。従って、最適な適合、すなわち最高の相関値の選択を当てにする相関プロセスによる時間アライメントの精度は、実質的にサンプリングレートによって制限されてしまう。精度を高めるために、遠隔受信機によって、遠隔受信機でのサンプリング時間を、基地受信機でのサンプリング時間により近づける微調整が行われる。
【0025】
従って遠隔受信機22は、相関関数ピークの両側での相関値、すなわち早い方の相関値および遅い方の相関値が実質的に対称であるかを定める。対称的でない場合、遠隔受信機はサンプル収集プロセスの位相、すなわちサンプルクロックを、より早い方またはより遅い方の相関値のうちのより大きい方の方向にシフトさせる。遠隔受信機が位相を、分析を行う予め定められた各時間の合計によってこの位相をシフトさせてもよい。択一的に、遠隔受信機がこの位相を、より早い方の相関値とより遅い方の相関値における差の大きさに相当する総計によってシフトさせてもよい。早い方の相関出力値と遅い方の相関出力値とが実質的に対称であるか否かを定める前に、遠隔受信機22が相関出力値を、比較前に、例えば連続的なシリーズにわたってそれらを平均化することによってフィルタリングしてもよい。遠隔受信機におけるサンプリング収集プロセスの位相が、基地受信機におけるサンプリング収集プロセスに対して機会信号の1波長内でアライメントされる場合、基地受信機と遠隔受信機におけるトラッキングチャンルの間のキャリヤサイクルのあいまいさが解決され、位置より正確に定められる。
【0026】
基地受信機20は、選択された複数のSOP送信機26へのレンジを計算し、遠隔受信機22は2次元ソリューションの場合には機会信号の少なくとも3つの信号に対する相応するタイムオフセットを計算し、3次元ソリューションの場合には少なくとも4つの機会信号に対する相応するタイムオフセットを計算する。有利には、各機会信号が選択され、これらは特別な多様性を有し、SOP送信機の位置が各遠隔受信機の位置に相応して異なる方向で拡がる。
【0027】
次に図3を参照されたい。遠隔受信機22はタイムオフセットをレンジオフセットROに変換する。このレンジオフセットはメートルで、光速によってタイムオフセットTOを乗算したものである。所与のレンジオフセットROはレンジバイアス成分Rbも、距離成分も含む。ここでこのレンジバイアス成分は遠隔受信機での知られていないクロックオフセットをベースにしており、距離コンポーネントは、SOP送信機26に相対する基地受信機20および遠隔受信機の位置における差をベースにしている。レンジバイアス成分は各機会信号に対して同じであり、遠隔受信機によって解決されるべき未知のものである。距離成分は遠隔受信機の未知の位置座標内に含まれており、Xremote、YremoteおよびZremoteであり、同じように遠隔受信機によって解決される。
【0028】
SOP送信機26からの遠隔受信機への擬似レンジは:
【数3】

である。
【0029】
上述のように、レンジオフセットROはレンジバイアスRbと距離成分を含む。従って、遠隔受信機の位置およびクロックオフセットは、計算された擬似レンジおよびSOP送信機26の既知のXSOPi、YSOPおよびZSOPi座標を次のように置換することによって計算される:すなわち2次元ソリューションの場合には
【数4】

または、三次元ソリューションの場合には
【数5】

であり、ここで二次元ソリューションの場合にはN≧3であり、三次元ソリューションの場合にはN≧4である。
基地受信機からのクロックオフセットは以下のようにレンジバイアスから定められる:すなわち、
【数6】

であり、ここでCは光速である。
【0030】
このソリューションは選択されたSOP送信機の各々に対して擬似レンジの方程式を形成し、この方程式のセットを同時に既知の方法で解き、未知のXremote、Yremote、Rb、および三次元ソリューションの場合にはZremoteを定めることによって計算される。従って、二次元ソリューションの場合には少なくとも3の式が形成されなければならない。三次元の場合には、少なくとも4つの式が必要である。
【0031】
遠隔受信機22の位置は、遠隔受信機が、基地からのタイムタグが付されたサンプリングされたデータに対して予期される最大待ち時間を補償するための充分なサンプルを緩衝記憶することができる限り、定められる。スタートアップ時に、このシステムは、ネットワーク24の最大データ伝送待ち時間に基づいて、遠隔受信機での時間をセットする。例えば、インターネットがコミュニケーションネットワークとして使用されている場合には、最大データ伝送待ち時間は1秒よりも格段に短く、遠隔受信機は自身のクロックを、この待ち時間に対して調整された基地受信機からのメッセージにおける受信時間である時間にセットする。遠隔受信機は2または3秒の信号サンプルを格納する。従って、遠隔受信機は、基地受信機から受信された、タイムタグが付されているサンプルを、格納されている、タイムタグが付されたサンプルとアライメントするために3秒の待ち時間まで許容できる。
【0032】
3つのディメンジョナルな位置が必要な場合には、このシステムは、少なくとも4つのSOP送信機26からの機会信号を使用することができる。各SOP送信機と基地受信機と遠隔受信機の高さにおいて充分な相違があることが想定されている。択一的に、このシステムは、基地受信機の既知の2または3次元位置から3つのディメンジョナルな位置を定めるために領域のデジタルモデルおよび反復プロセスを使用する。モデルが使用される場合には、このシステムは最初に、割り当てられているトポロジカルマップから基地受信機の高さを定める。ここではこの高さが、例えばGNSS信号またはそのほかの既知のものから定められないことを想定している。このシステムはマップから平均高さも定め、平均値にZremote座標をセットする。
【0033】
基地受信機は、各SOP送信機に対する自身の3次元レンジを定め、このレンジを遠隔受信機に提供する。遠隔受信機は自身の3つのディメンジョナルな位置を上述のように定める。しかし、平均的な高さ座標へそのZremoteを強制する。次に遠隔受信機は、より正確なZremoteをデジタル高さマップから、その計算されたXremoteおよびYremote座標を用いて補間する。このプロセスはソリューションが収束するまで繰り返される。すなわち、次にこのシステムは結果を補間し、遠隔受信機に新たな高さを割り当て、遠隔受信機のXremoteおよびYremote座標を定め、より正確なZremote値を強要する。これは計算され、補間された位置座標が繰り返しにおいて、以前の繰り返しから顕著に変化しなくなるまで行われる。
【0034】
遠隔受信機の位置およびクロックオフセットが定められると、システムは遠隔受信機クロックを基地受信機クロックに同期させ、この位置を、システムを介した正確な時間伝送を提供するために用いる。
【0035】
基地受信機は基準時間(例えばGNSS時間またはUTC時間)と時間同期されるので、遠隔受信機で定められたクロックエラーは基準時間に関するクロックエラーである。
【0036】
基地受信機が、レンジ情報を提供する代わりに、またはレンジ情報に対して付加的に、一連のサンプルの伝送時間を計算し、この伝送時間をサンプルとともに遠隔受信機22に提供してもよい。この場合には遠隔受信機は計算された伝送時間からのタイムオフセット、すなわち、受信された、計算された伝送時間と遠隔受信機での一連の受信時間との時間差に基づいて自身の擬似レンジを定める。従ってメートルで、この擬似レンジは、光速によって乗算されたタイムオフセットである。次に遠隔受信機は、複数のSOP送信機に対して上述の方法で計算された擬似レンジに基づいて自身の位置を計算する。
【0037】
より厳格な周波数同期要求を伴うアプリケーションに対して、基地受信機20が、その代わりに、または付加的に、放送機会信号に関連付けされた位相情報を伴う遠隔受信機22を提供してもよい。従って、遠隔受信機は基地基準周波数に位相をロックすることができる。これを行うために、既知の方法で作動する基地受信機は、実際のクロック周波数を定めるために、その選択された基準周波数源、例えばGPS衛星情報を使用する。基地受信機はその後、放送機会信号に位相ロックし、継続的に、SOPキャリヤの出現周波数を積分する。周期的に、例えば1秒毎に、基地受信機は累計周波数積分値を測定し、SOP位相測定値を提供する。これは整数および分数のキャリヤサイクル成分を含む。位相測定値は予め定められた間隔で作成される。これは例えば、基準時間および周波数に関連した秒間隔である。
【0038】
分数(fractional)サイクル成分は正確に測定される。しかし、整数(integer)サイクル成分は、基地受信機によって割り当てられなければならない任意の開始値を有する。基地受信機20は、位相測定のタイミングを定めるために自身のクロック21を使用する。これは、GNSSと結び付けられた周波数コントロールである。従って、位相測定は、分配される基準周波数に基づいている。基地受信機は遠隔受信機22...22に位相情報を提供する。これは整数および分数キャリヤサイクル成分、測定時間およびSOP送信機を識別する情報、例えば局識別子、公称の局周波数等を含んでいる。これに加えて、基地受信機は、信号の質に関する情報および/または基地受信機トラッキング動作に関する情報、例えば信号ノイズ比、取得からの秒数、最後のロックブレークまたはサイクルスリップ等を送信する。
【0039】
所与の遠隔受信機22は、同様に、放送機会信号へフェーズロックし、同様に継続的に、その認知されたSOPキャリヤ周波数を積分し、同様に周期的にSOP周波数積分プロセスを、遠隔受信機の基準周波数から導出されたサンプリングレートでサンプリングする。遠隔受信機は自身のSOP位相測定値を、基地受信機のそれと比較し、基地受信機と遠隔受信機との間の周波数差を形成する。基地受信機から受信した最初のカウントを基にして、遠隔受信機は自身の積分周期カウントを、基地受信機によってセットされたカウントにセットし、自身のクロックの周波数を調整する。これによって遠隔受信機での位相測定が基地受信機でのそれと同じになる。遠隔受信機は周波数エラーを、基地受信機と遠隔受信機で行われた、位相測定間の変化率として定める。これは、基地受信機から受信した後続の位相測定をベースにする。遠隔受信機はその後、自身のクロック周波数を、計算された周波数エラーを用いて、基地受信機のクロックの周波数、すなわち、基準周波数に同期させる。遠隔受信機も、その位置を定めるために、必要に応じて、同期化されたクロックを使用する。
【0040】
図4に示されているような択一的なアレンジでは、基地受信機20および遠隔受信機22は、気圧センサ41および43を含んでいる。基地受信機は既知の高さを有しており、自身の圧力センサ示度を遠隔受信機に提供する。所与の遠隔受信機は次に、基地受信機に関する自身の高さを、2つの受信機での気圧センサ示度の間の差および標準的な空気密度勾配曲線に基づいて定める。これは例えば航空機気圧高度計において使用される。従って遠隔受信機は自身の実際の高度を1または2メートル以内で定めることができる。これは、例えば、ビルのどのフロアーに遠隔受信機が位置しているのかを定めるのには充分である。従って遠隔受信機の高さを、比較的低いコストのセンサを用いて、緊急の個人的な使用またはセルラーフォンのネットワーク混雑分析に必要とされている精度で定めることができる。
【0041】
本明細書に記載されているシステムは、キャリヤサイクルのあいまいさを解決することなく、放送された機会信号を用いて、遠隔受信機の正確な位置を定めることができるという利点を有している。コミュニケーションネットワークは有線または無線である。SOP送信機の既知の位置は、固定位置より軌道的であり得る。例えばSOP送信機は、自動車、航空機、船または衛星等の移動プラットフォームから伝送し、送信機の位置および速度ベクトルがこのシステムによって定められる。衛星送信の場合には、例えば軌道位置換算表パラメータが容易に得られなくてはならない。遠隔受信機はモバイルまたは位置固定式受信機である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置が知られている少なくとも3つの送信機によって送信された機会信号を用いて位置を定めるためのシステムであって、当該システムは以下のものを含んでおり:すなわち、
基地受信機を有しており、当該基地受信機はクロックおよび既知の位置を有しており、少なくとも3つの前記送信機に対するレンジを計算し、機会信号をサンプリングし、当該サンプルに受信時間、送信時間またはその両方でタイムタグを付し、各一連のタイムタグが付されたサンプルをコミュニケーションネットワークを介して送信し;
1つまたは複数の遠隔受信機を有しており、当該遠隔受信機は前記コミュニケーションネットワークを介して情報を受信し、各遠隔受信機は、
前記機会信号のサンプルを格納し、タイムタグを付し、
前記コミュニケーションネットワークを介して受信された、前記タイムタグが付された一連のサンプルを、前記格納されたタイムタグが付されたサンプルと相関させ、
少なくとも3つの送信機の各々に対して、割り当てられているタイムオフセットを、遠隔受信機での受信時間と、送信機による送信時間または基地受信機での受信時間の1つまたは両方との差として定め、
当該タイムオフセットに基づいて、前記少なくとも3つの送信機に対する擬似レンジを定めることによって位置を定める、
ことを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記基地受信機は、前記計算されたレンジを、前記1つまたは複数の遠隔受信機へ送信し、当該遠隔受信機は擬似レンジの決定において当該レンジを使用する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
所与の遠隔受信機は、レンジオフセットを減算した、送信機への基地受信機のレンジとして所与の送信機への擬似レンジを計算し、前記レンジオフセットは光速によって乗算された前記タイムオフセットである、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
前記所与の遠隔受信機はさらに、前記少なくとも3つの送信機から計算された前記擬似レンジからクロックオフセットを定める、請求項2記載のシステム。
【請求項5】
前記遠隔受信機は、前記基地受信機で計算された送信時間からの、前記遠隔受信機での前記一連のサンプルの受信時間のタイムオフセットに基づいて擬似レンジを計算する、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
前記基地受信機および遠隔受信機の1つまたは両方は設定可能なフロントエンドフィルタを含んでおり、当該フロントエンドフィルタは放送信号をスキャンして、使用のために1つまたは複数の機会信号を選択する、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
前記コミュニケーションネットワークは使用可能な機会信号のリストを提供し、前記基地受信機および遠隔受信機の1つまたは両方は、当該使用リストから使用のために1つまたは複数の機会信号を選択する、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
前記遠隔受信機はサンプル収集位相を調整し、当該位相を、前記基地受信機でのサンプル収集位相により近似するようにアライメントする、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
前記遠隔受信機は、早い相関測定値および遅い相関測定値が対称的であるかを定め、対称的でない場合には、より大きい測定値の方向へ当該位相をシフトさせる、請求項8記載のシステム。
【請求項10】
前記基地受信機および遠隔受信機は圧力センサを含んでおり、前記遠隔受信機は自身の高さを、前記基地受信機と遠隔受信機との間の前記圧力センサ示度の間の差に基づいて定める、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
前記遠隔受信機の高さは、反復プロセスを用いて定められ、最初の反復において位置計算の間、前記高さは平均的な高さに強制される、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記遠隔受信機はさらに、サンプル収集位相のアライメントをベースにした、前記遠隔受信機と基地受信機のトラッキングチャネルの間のキャリヤサイクルの整数のあいまいさを解決する、請求項8記載のシステム。
【請求項13】
位置が知られている少なくとも3つの送信機によって送信された機会信号を用いて、位置を定める方法であって、当該方法は、
既知の位置から少なくとも3つの前記送信機までのレンジを計算するステップと;
前記既知の位置での前記機会信号をサンプリングし、受信時間、送信時間またはその両方で、一連のサンプルにタイムタグを付けるステップと;
当該タイムタグが付けられた各一連のサンプルをコミュニケーションネットワークを介して送信するステップと;
1つまたは複数の未知の位置で、
前記機会信号のサンプルを格納し、タイムタグを付け、
コミュニケーションネットワークを介して受信された、前記タイムタグが付された一連のサンプルを、前記格納されている、タイムタグが付されたサンプルと相関させ、
少なくとも3つの送信機の各々に対して、前記未知の位置での受信時間と、前記既知の位置での受信時間または前記送信機による送信時間のうちの1つまたは両方との差として、割り当てられているタイムオフセットを定め、
当該タイムオフセットに基づいて、前記少なくとも3つの送信機に対する擬似レンジを定めることによって位置を定める、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記計算されたレンジは、前記未知の位置に対して提供され、当該レンジを擬似レンジの決定において使用する、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記擬似レンジを定めるステップはさらに、レンジオフセットを引いた、前記送信機までの前記既知の位置のレンジとして、所与の送信機に対する擬似レンジを計算することを含み、前記レンジオフセットは光速によって乗算された前記タイムオフセットである、請求項14記載の方法。
【請求項16】
前記基地受信機で計算された送信時間と、前記遠隔受信機での前記一連のサンプルの受信時間との間の差であるタイムオフセットに基づいて前記擬似レンジを計算する、請求項13記載の方法。
【請求項17】
さらに、前記少なくとも3つの送信機から計算された前記擬似レンジからクロックオフセットを定めることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項18】
さらに、位置決定において、使用のために1つまたは複数の機会信号を選択することを含む、請求項13記載の方法。
【請求項19】
前記選択ステップにおいてさらに、最適な機会信号候補を選択するために前記放送信号をスキャンすることを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記選択ステップにおいてさらに、使用可能な機会信号のリストを提供することを含み、当該リストから前記1つまたは複数の機会信号が選択される、請求項18記載の方法。
【請求項21】
前記相関ステップはさらに、サンプル収集位相を調整することを含み、当該位相を、前記基地受信機でのサンプル収集位相により近似するようにアライメントする、請求項13記載の方法。
【請求項22】
前記調整ステップはさらに、早い相関測定値および遅い相関測定値が対称的であるかを定め、対称的でない場合には、より大きい測定値の方向へ当該位相をシフトさせることを含む、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記位置決定ステップはさらに、前記既知の位置と未知の位置とでの圧力センサ示度間の差に基づいて高さを定めることを含む、請求項13記載の方法。
【請求項24】
前記位置決定ステップはさらに、高さを、反復プロセスを用いて定めることを含み、最初の反復において位置計算の間、前記高さを平均的な高さに強制する、請求項13記載の方法。
【請求項25】
前記相関ステップはさらに、サンプル収集位相のアライメントに基づく、前記既知の位置および未知の位置での受信機のトラッキングチャネル間のキャリヤサイクルの整数のあいまいさを解決することを含む、請求項21記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−503582(P2011−503582A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533399(P2010−533399)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/CA2008/002003
【国際公開番号】WO2009/062305
【国際公開日】平成21年5月22日(2009.5.22)
【出願人】(510124261)ノヴァテル インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】NOVATEL Inc.
【住所又は居所原語表記】1120 68th Avenue NE, Calgary, Alberta T2E 8S5, Canada
【Fターム(参考)】