説明

ネットワークシステム、子局通信装置、親局通信装置、及び帯域制御方法

【課題】 ネットワークの帯域を効率的に利用しつつ、より柔軟な帯域制御を実現するネットワークシステムを提供する。
【解決手段】 本発明は、配下に複数の下位ネットワークが収容されている複数の子局通信装置と、一つの伝送路を用いて子局通信装置と接続している親局通信装置とを備えるネットワークシステムに関する。そして、それぞれの子局通信装置は、当該子局通信装置の下位ネットワークで必要とする要求帯域幅を算出して親局通信装置に送信し、親局通信装置から割当帯域幅の情報を受信し、当該子局通信装置からの上り方向の通信の通信に使用する帯域が、割当帯域幅以下となるように制御することを特徴とする。また、親局通信装置は、子局通信装置から要求帯域幅を受信し、受信した要求帯域幅と、伝送路の上り方向の通信に通信可能な最大帯域幅とを利用して、それぞれの子局通信装置に割り当てる割当帯域幅を算出して通知することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ネットワークシステム、子局通信装置、親局通信装置、及び帯域制御方法に関し、例えば、FTTH(Fiber To The Home)サービスを提供するためのアクセスネットワークに適用し得る。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTHサービスが普及しているが、IP電話サービスや、コンテンツ(動画像等)配信サービス等の普及と共に、各ユーザが通信に使用する帯域は増加している。
【0003】
そのため、FTTHサービスを提供するためのアクセスネットワークにおいて、各ユーザの通信で使用される帯域をどのように制御するかは、ネットワーク事業者にとって重要な課題である。
【0004】
従来、FTTHサービス用のアクセスネットワークでは、基幹ネットワーク上に複数の集線装置を配置し、さらに、それぞれの集線装置では、PON(Passive Optical Network)等のアクセス手段を用いて、複数のユーザ(ユーザネットワーク)を収容する構成が多く採用されている。
【0005】
しかし、従来のFTTHサービス用のアクセスネットワークでは、集線装置の配下のユーザ間での帯域利用(特に上り方向の通信)の公平性を保つ等、より柔軟な帯域制御を行うことが難しかった。
【0006】
また、従来存在するFTTHサービス用のアクセスネットワークの多くで、基幹ネットワークにSONET/SDH(Synchronous Optical NETworks/Synchronous Digital Hierarchy)等の規格に対応したリングネットワークが採用されている。この場合、上述のリングネットワーク上では、各集線装置が上位のネットワーク装置と接続するための論理パスに予め固定の帯域を割り当てる必要がある。しかし、従来のSONET/SDH等を利用した基幹ネットワークでは、予め固定の帯域を割り当てるため、実際のトラフィック量が少ない場合やトラフィック量が増加した場合でも柔軟に帯域割当を変更できないので、ネットワークの帯域利用が非効率的となる場合があった。
【0007】
そして、従来、アクセスネットワークにおいて、帯域制御を行う技術については非特許文献1、特許文献1、及び特許文献2の記載技術がある。
【0008】
非特許文献1では小規模集線装置(SW)を多段接続した状態でエッジルータ(ER)を接続する構成が提案されており、当該構成は、多段接続構成において伝送品質のユーザ間公平性を担保できる方式となっている。
【0009】
特許文献1の記載技術は、LANに複数のノードが接続されたネットワークシステムにおいて、複数のデータ転送において帯域の競合が発生し、データ損失等が発生するという問題に対処するものである。また、特許文献1の記載技術では、ネットワーク上に、ネットワークの帯域を管理する帯域制御マネージャを設け、さらに、ネットワークに接続された各ノードに帯域制御マネージャと連携する帯域制御エージェントを設けている。さらに、特許文献1では、帯域制御マネージャが通信データに付与された帯域予測用情報を用いて、帯域の増減を即座に検知することにより、効率の良い帯域制御を行うとともに、競合によるデータ損失を減らすことが可能となるとの記載がされている。
【0010】
特許文献2では、PONにおいて、OLT−ONU(Optical Line Terminal−Optical Network Unit)間で、各加入者宅側終端装置のサービスレベル間の公平性が保証された帯域制御を実現する帯域割当制御装置を提供することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2001−230784号公報
【特許文献2】特開2007−129429号公報
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】NTTアクセスサービスシステム研究所 中山悠、太田憲行、大高明浩 著、「アクセス系集線における多段接続方式の研究」、2010年 電子情報通信学会総合大会 通信講演論文集2、pp.188
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、非特許文献1では、ユーザ毎の流量観測が必要となるため処理量が多いとの課題提議はされているが具体的な実現方法について記載されていない。
【0014】
また、特許文献1には、複数の端末やユーザを集線する場合の帯域処理や公平性制御等の帯域制御を実現することについては記載されていない。
【0015】
さらに、特許文献2の記載技術では、PONの中での帯域制御については記載されているが、それより上位(OLTよりも上位側)の集線装置やスイッチにおける帯域制御については記載されていない。
【0016】
したがって、非特許文献1、特許文献1、2の記載技術を、上述のFTTHサービス用のアクセスネットワークに適用したとしても、ネットワーク全体として、集線装置の配下のユーザ間で制限される内容の公平性を保つ等、柔軟な帯域制御を実現することができない。
【0017】
また、非特許文献1、特許文献1、及び特許文献2では、上述の基幹ネットワーク(SONET/SDH等を採用した場合)の帯域利用が非効率的になってしまうという課題を解決することについては記載されていない。
【0018】
上述のような問題点を鑑み、ネットワークの帯域を効率的に利用しつつ、より柔軟な帯域制御を実現することができるネットワークシステム、子局通信装置、親局通信装置、及び帯域制御方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
第1の本発明は、配下に複数の下位ネットワークが収容されている複数の子局通信装置と、一つの伝送路を用いて上記子局通信装置と接続している親局通信装置とを備えるネットワークシステムにおいて、(1)それぞれの上記子局通信装置は、(1−1)当該子局通信装置で、上り方向の通信に必要とする帯域の合計に係る要求帯域幅を算出する要求帯域幅算出手段と、(1−2)上記要求帯域幅算出手段が算出した要求帯域幅の情報を、上記親局通信装置に送信する要求帯域幅送信手段と、(1−3)上記親局通信装置から当該子局通信装置に割り当てられた、上り方向の通信の帯域に係る割当帯域幅の情報を受信する割当帯域幅受信手段と、(1−4)当該子局通信装置で、上り方向の通信で使用する帯域幅が、割当帯域幅以下となるように制御する帯域制御手段とを有し、(2)上記親局通信装置は、(2−1)それぞれの上記子局通信装置から、要求帯域幅の情報を受信する要求帯域幅受信手段と、(2−2)受信した要求帯域幅と、上記伝送路で上り方向に通信可能な最大帯域幅とを利用して、それぞれの上記子局通信装置に割り当てる割当帯域幅を算出する割当帯域幅算出手段と、(2−3)算出した割当帯域幅を、それぞれの子局通信装置に送信する割当帯域幅送信手段とを有することを特徴とする。
【0020】
第2の本発明は、配下に複数の下位ネットワークが収容されており、他の子局通信装置と共通の一つの伝送路を用いて親局通信装置と接続している子局通信装置において、(1)当該子局通信装置で、上り方向の通信に必要とする帯域の合計に係る要求帯域幅を算出する要求帯域幅算出手段と、(2)上記要求帯域幅算出手段が算出した要求帯域幅の情報を、上記親局通信装置に送信する要求帯域幅送信手段と、(3)上記親局通信装置から当該子局通信装置に割り当てられた、上り方向の通信の帯域に係る割当帯域幅の情報を受信する割当帯域幅受信手段と、(4)当該子局通信装置で、上り方向の通信で使用する帯域幅が、割当帯域幅以下となるように制御する帯域制御手段とを有することを特徴とする。
【0021】
第3の本発明は、配下に複数の下位ネットワークが収容されている複数の子局通信装置と、一つの伝送路を用いて上記子局通信装置と接続している親局通信装置において、(1)それぞれの上記子局通信装置から、当該子局通信装置で上り方向の通信に必要とする帯域の合計に係る要求帯域幅の情報を受信する要求帯域幅受信手段と、(2)受信した要求帯域幅と、上記伝送路で上り方向に通信可能な最大帯域幅とを利用して、それぞれの上記子局通信装置に割り当てる割当帯域幅を算出する割当帯域幅算出手段と、(3)算出した割当帯域幅を、それぞれの子局通信装置に送信する割当帯域幅送信手段とを有することを特徴とする。
【0022】
第4の本発明は、配下に複数の下位ネットワークが収容されている複数の子局通信装置と、一つの伝送路を用いて上記子局通信装置と接続している親局通信装置とを備えるネットワークシステムの帯域制御方法において、(1)それぞれの上記子局通信装置が、上り方向の通信に必要とする帯域の合計に係る要求帯域幅を算出する要求帯域幅算出工程と、(2)それぞれの上記子局通信装置で、算出した要求帯域幅の情報を、上記親局通信装置に送信する要求帯域幅送信工程と、(3)上記親局通信装置が、それぞれの上記子局通信装置から、要求帯域幅の情報を受信する要求帯域幅受信工程と、(4)上記親局通信装置が、受信した要求帯域幅と、上記伝送路で上り方向に通信可能な最大帯域幅とを利用して、それぞれの上記子局通信装置に割り当てる、上り方向の通信の帯域に係る割当帯域幅を算出する割当帯域幅算出工程と、(5)上記親局通信装置が、算出した割当帯域幅を、それぞれの子局通信装置に送信する割当帯域幅送信工程と、(6)それぞれの上記子局通信装置が、上記親局通信装置から当該子局通信装置に割り当てられた割当帯域幅の情報を受信する割当帯域幅受信工程と、(7)それぞれの上記子局通信装置が、上り方向の通信で使用する帯域幅を、割当帯域幅以下となるように制御する帯域制御工程とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ネットワークの帯域を効率的に利用しつつ、より柔軟な帯域制御を実現するネットワークシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施形態に係るネットワークシステムの動作について示したシーケンス図である。
【図2】実施形態に係るネットワークシステムの全体構成について示したブロック図である。
【図3】実施形態に係る子局集線装置の接続構成の例について示したブロック図である。
【図4】実施形態に係る子局集線装置が制御する帯域の例について示した説明図である。
【図5】実施形態に係る子局集線装置の機能的構成の例について示したブロック図である。
【図6】実施形態に係る子局集線装置内のVLAN処理部の構成について示した説明図である。
【図7】実施形態に係る親局集線装置の機能的構成の例について示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(A)主たる実施形態
以下、本発明によるネットワークシステム、子局通信装置、親局通信装置、及び帯域制御方法の一実施形態を、図面を参照しながら詳述する。なお、この実施形態では、本発明の子局通信装置及び親局通信装置を、子局集線装置及び親局集線装置に適用した例について説明する。
【0026】
(A−1)実施形態の構成
図2は、この実施形態のネットワークシステム1の全体構成を示すブロック図である。
【0027】
ここでは、例として、ネットワークシステム1は、ネットワーク接続事業者が各ユーザ宅をインターネット等のネットワークに接続させるアクセスネットワークとして構築されたものであるものとする。
【0028】
ネットワークシステム1では、アクセスネットワークの事業者側の設備を配置する拠点として親局S1及び子局S2−1〜S2−3が存在している。ここでは、親局S1を中心として配下に子局S2−1〜S2−3が存在しており、各子局の配下に複数のユーザ宅(ユーザネットワーク)が存在するものとする。
【0029】
また、親局S1及び子局S2−1〜S2−3の間は、リング型の光ファイバ(複数本の光ファイバを用いて構成するようにしても良い)により結ばれているものとする。そして、親局S1、子局S2−1〜2−3には、それぞれADM10(10−1〜10−4)が配置され、各ADM10は、上述の光ファイバに挿入(接続)されている。
【0030】
このように、ネットワークシステム1では、上述の光ファイバと、ADM10−1〜10−4により、リング型のネットワーク(以下、「リングネットワークRN」という)が基幹の伝送路として形成されている。リングネットワークRNは、例えば、SONET/SDH等の規格に対応したものを用いて構築することができる。
【0031】
親局S1では、ADM10−1に親局集線装置20が接続されている。そして、その親局集線装置20には、エッジルータ40が接続されているものとする。
【0032】
また、子局S2−1〜S2−3には、それぞれ、子局集線装置30−1〜30−3が配置されている。そして、子局集線装置30−1〜30−3は、それぞれ、ADM10−2〜10−3に接続されている。
【0033】
図2では、親局集線装置20、及び子局集線装置30−1〜30−3の間は、論理的には、親局集線装置20を中心としたスター型のトポロジーでパス接続されているものとする。すなわち、ネットワークシステム1では、各子局の配下のユーザ宅のユーザ端末は、いずれかの子局の子局集線装置30、リングネットワークRN、親局集線装置20、及びエッジルータ40を経由して、図示しない接続先のネットワーク(例えば、インターネット等)に接続するものとする。
【0034】
なお、以下では、ユーザ宅又は各子局から見て親局S1の方向への通信を「上り方向」の通信と呼び、逆方向の通信を「下り方向」の通信と呼ぶものとする。
【0035】
また、ここでは、例として、ADM10−1〜10−4は2.5Gbpsに対応したADM(OC−48)であるものとして説明する。すなわち、リングネットワークRN上で、主信号(ユーザ用のトラフィック)に対して許容する最大の帯域幅は2.5Gbps以下(ここでは、上り方向も下り方向も同様の帯域幅であるものとする)に設定されているものとする。
【0036】
そして、親局集線装置20と、子局集線装置30−1〜30−3との論理パスのそれぞれについて、帯域幅は1Gbに設定されているものとする。この場合、親局集線装置20と、子局集線装置30−1〜30−3とのそれぞれの論理パスの帯域幅の合計は、3Gbpsとなり、10Gbpsに対応したADMが必要になる。
【0037】
子局集線装置30−1〜30−3のそれぞれの配下では、既存のFTTH等で用いられている1GbpsのGEPON(Gigabit Ethernet(登録商標)−Passive Optical Network)のネットワークが形成されており、このGEPONのネットワークを用いて、子局集線装置30−1〜30−3は各ユーザを収容しているものとする。ここでは、例として、子局集線装置30−1〜30−3の配下には、それぞれ2つのGEPONのネットワークが形成されているものとする。
【0038】
なお、子局集線装置30−1〜30−3でユーザを収容する手段は、GEPONに限定されず、その他のPON(例えば、EPON等)や、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)等の他のアクセス方式を用いるようにしても良い。
【0039】
具体的には、子局集線装置30−1〜30−3の配下には、それぞれ、2つのOLT50が配置されているものとする。そして、それぞれのOLT50の配下には、32個のONU60がPONにより接続されているものとする。図2においては、図示を省略しているが、ONU60は、各ユーザ宅に設置される設備であり、ONU60の配下にユーザネットワークが形成されている。すなわち、各ユーザ宅のユーザネットワークに属するユーザ端末は、ONU60を介してネットワークシステム1に接続している。
【0040】
なお、OLT50及びONU60については、既存のものを適用することができる。
【0041】
また、ネットワークシステム1では、各ONU60には、それぞれ、タグVLAN(IEEE 802.1q)におけるVLAN ID(ONU60ごとにIDはユニークなものであるものとする)が付与されているものとする。そして、それぞれのONU60からの上り方向のパケット、及びそれぞれのONU60への下り方向パケットには、当該ONU60のVLAN IDを有するタグが付与されているものとする。
【0042】
ここでは、ONU60からの上り方向のパケットについては、ONU60においてVLANタグが付与され、そのVLANタグはエッジルータ40においてはずされるものとする。また、ONU60への下り方向のパケットについては、エッジルータ40においてVLANタグが付与され、そのVLANタグは、ONU60においてはずされるものとする。
【0043】
すなわち、子局集線装置30及び親局集線装置20では、各パケットのVLANタグに付与されたVLAN IDを参照することにより、各パケットがいずれのユーザ(ONU60)に係るものであるかを識別するものとする。
【0044】
また、上述のVLANタグには、IEEE 802.1pで規定されているクラス分けをするための識別子(CoS(Class of Service)値)が付与されおり、子局集線装置30において、同じユーザに係るトラフィックであってもCoS値に応じて優先的に上り方向の帯域を割り当てる等の帯域制御が行われるものとする。ここでは、例えば、音声やストリーミング等のリアルタイム性の高いプロトコル(例えば、RTP(Real−time Transport Protocol)等)については、高い優先度を示すCoS値が付与されているものとする。なお、子局集線装置30において、CoS値を用いた帯域制御処理の必要がない場合は、CoS値の付与等の処理は省略するようにしても良い。
【0045】
また、エッジルータ40と親局集線装置20との間のインタフェースや、各集線装置(親局集線装置20及び子局集線装置30)とADM10との間のインタフェースについては限定されないものであり、例えば、Ethernet(登録商標)等の既存のインタフェースを適用することができる。
【0046】
次に、子局集線装置30の配下の具体的構成について、子局S2−1の子局集線装置30−1を例として説明する。
【0047】
図3は、子局集線装置30−1の接続構成の例について示したブロック図である。
【0048】
子局集線装置30−1の配下には、上述のように2つのOLT50−11、50−12が配置されている。そして、OLT50−11の配下には、32のONU60−1101〜60−1132がPON接続されている。また、OLT50−12の配下にも、32のONU60−1201〜60−1232が配置されている。
【0049】
そして、ここでは、説明を簡易にするために、OLT50−11の配下ではONU60−1101、60−1102のみが使用されているものとする。また、同様に、OLT50−12の配下では、ONU60−1201、60−1202のみが使用されているものとする。すなわち、ここでは、子局S2−1において、上述の使用されているONU60についてのみトラフィックが発生するものとして説明する。
【0050】
具体的には、ONU60−1101の配下には、IP電話端末T11、及びPC端末T12が接続されており、ONU60−1102の配下にはPC端末T13が接続されているものとする。また、ONU60−1201の配下には、IP電話端末T21、及びPC端末T22が接続されており、ONU60−1202の配下にはIP電話端末T23、及びPC端末T24が接続されているものとする。また、図3においては、説明を簡易にするため、ONU60の配下に直接端末が接続されているように図示しているが、実際には、図示しないルータやハブ等(ONU60に内蔵されるようにしても良い)を介して接続される。
【0051】
そして、IP電話端末T11、PC端末T12及びPC端末T13のそれぞれについて、上り方向に必要な帯域幅(平均的に使用する帯域であるものとする)を帯域B11、B12、B13とする。また、IP電話端末T21、PC端末T22、IP電話端末T23、及びPC端末T24について、それぞれ、上り方向に必要な帯域を帯域B21、B22、B23、B24とする。
【0052】
図4は、図3に示す子局集線装置30−1が制御する帯域について示した説明図である。
【0053】
図4(a)は、OLT50−11から子局集線装置30−1へのトラフィックにおける帯域の利用状況である。図4(a)に示すように、OLT50−11から子局集線装置30−1へのトラフィックには、ONU60−1101からのトラフィック(帯域B11、B12)と、ONU60−1102からのトラフィック(帯域B13)が含まれている。
【0054】
図4(b)は、OLT50−12から子局集線装置30−1へのトラフィックにおける帯域の利用状況である。図4(b)に示すように、OLT50−12から子局集線装置30−1へのトラフィックには、ONU60−1201からのトラフィック(帯域B21、B22)と、ONU60−1202からのトラフィック(帯域B23、B24)が含まれている。
【0055】
図4(c)は、子局集線装置30−1から親局集線装置20へのトラフィックにおける帯域の利用状況について示している。
【0056】
図4(c)に示すように、子局集線装置30−1から親局集線装置20へのトラフィックには、上述の図4(a)及び図4(b)に示す全てのトラフィック(帯域B11〜13、及び帯域21〜24)が含まれている。
【0057】
また、図4(c)では、ONU60−1101、60−1102、60−1201、60−1202には、それぞれ1〜4のVLAN IDが付与されているものとして説明している。そうすると、図4(c)に示すように、帯域B11、B12のトラフィックに係るVLAN IDは1となる。また、帯域B13のトラフィックに係るVLAN IDは2となる。さらにまた、帯域B21、B22のトラフィックに係るVLAN IDは3となる。また、帯域B23、B24のトラフィックに係るVLAN IDは4となる。
【0058】
次に、子局集線装置30の内部構成について説明する。
【0059】
図5は、子局集線装置30(30−1〜30−3)の機能的構成の例について示したブロック図である。ここでは、子局集線装置30−1〜30−3は、全て同じ構成であるものとして説明するが、インタフェースの種類や数等、接続する環境に応じた構成とするようにしても良い。
【0060】
子局集線装置30は、ネットワークに接続するための6つのポート31(31−1〜31−6)、2つのVLAN振分処理部32(32−1、32−2)、所定数のVLAN処理部33、ユーザ間スケジューリング処理部34、スイッチ35、4つのシェーピング処理部36(36−1〜36−4)、DBAマスタ37、及びDBAエージェント38を有している。
【0061】
子局集線装置30において、VLAN処理部33は、最大で配下のONU60の数だけ配置される。言い換えると、子局集線装置30では、配下のONU60に付与されたVLAN IDごとに、VLAN処理部33が配置される。例えば、子局集線装置30−1では、配下にONU60が合計で64個配置されているため最大で64個のVLAN処理部33が配置されることになる。したがって、VLAN処理部33がハードウェア的に構成されている場合には、配下に接続される可能性のあるONU60の数だけVLAN処理部33を配置しておく必要がある。
【0062】
子局集線装置30では、ポート31−1、31−2は、それぞれ、OLT50と接続するためのインタフェースとして使用されているものとする。また、ポート31−3は、ADM10と接続するためのインタフェースとして使用されているものとする。ここでは、その他のポート31−4〜31−6については使用されていないものとする。なお、子局集線装置30において配置されるポートの数は限定されないものである。
【0063】
そして、ポート31−1、31−2は、接続されたOLT50から受信したパケットを、VLAN振分処理部32−1、32−2に引き渡す。
【0064】
VLAN振分処理部31では、受信したパケットがいずれのONU60から送信されたものであるかをVLAN IDで確認する
そして、VLAN振分処理部32は、パケットを、VLAN IDに応じたVLAN処理部33に与える。
【0065】
それぞれのVLAN処理部33の詳細構成については後述するが、VLAN処理部33は、VLAN振分処理部32から与えられたパケットについてさらに所定の帯域制御を行い、当該パケットをユーザ間スケジューリング処理部34に引き渡す。
【0066】
ユーザ間スケジューリング処理部34は、それぞれのVLAN処理部33から受信したパケットについて、DBAマスタ37の制御に応じてVLAN毎(ユーザ毎)の帯域制御を行い、当該パケットをスイッチ35に与える。
【0067】
スイッチ35は、ポート31間でパケットの交換処理を行うものである。ここでは、スイッチ35は、ユーザ間スケジューリング処理部34から受信したパケットを、送信先のポート(ポート31−3)に係るシェーピング処理部36−1に与える。
【0068】
それぞれのシェーピング処理部36は、スイッチ35から与えられたパケットをシェーピングによって平滑化して対応するポートに与えるものである。ここでは、シェーピング処理部36−1は、スイッチ35から与えられたパケットをシェーピングし、ポート31−3に与える。そして、当該パケットは、ポート31−3からリングネットワークRNを介して親局集線装置20へ向けて送出されることになる。
【0069】
次に、VLAN処理部33の詳細について説明する。
【0070】
図6は、VLAN処理部33内部の機能的構成について示したブロック図である。
【0071】
VLAN処理部33は、クラス分け処理部331、4つのキュー332(332−1〜332−4)、クラス別スケジューリング処理部333、及びDBAスレーブ334を有している。
【0072】
クラス分け処理部331は、VLAN振分処理部32から与えられたパケットを、当該パケットのVLANタグに付与されたCoS値に対応するキュー332に与える。
【0073】
それぞれのキュー332は、クラス分け処理部331から与えられたパケットを保持するキューであり、クラス別スケジューリング処理部333の制御に応じて、保持しているパケットを、クラス別スケジューリング処理部333に引き渡す。
【0074】
ここでは、VLAN処理部33には、4つのキュー332を配置しているが、これは、CoS値によるクラス分けを4段階にした場合の例であり、クラス分けの段階数に応じてキュー332の数を変更するようにしても良い。ここでは、キュー332−1が最も優先順位の高いクラスのパケットを保持するものであり、キュー332−4が最も優先順位の低いパケットを保持するものであるものとする。
【0075】
そして、クラス別スケジューリング処理部333は、優先順位に応じた順序でキュー332−1〜332−4に保持されているパケットを取り出してユーザ間スケジューリング処理部34に与える。クラス別スケジューリング処理部333が、キュー332−1〜332−4から、パケットを取り出す順序については、例えば、既存のCoS値に応じた帯域制御を行うネットワーク装置と同様の処理やポリシーを適用することができる。
【0076】
なお、クラス別スケジューリング処理部333が、ユーザ間スケジューリング処理部34へ、パケットのデータ送信をする際の送信速度の上限については、DBAマスタ37からの制御に応じて設定されるものとする。
【0077】
次に、DBAスレーブ334について説明する。
【0078】
DBAスレーブ334は、トラフィック量カウンタ334a、トラフィック量送信部334b、及びクラス内帯域制御部334cを有している。
【0079】
トラフィック量カウンタ334aは、クラス分け処理部331からキュー332−1〜332−4へ送信されるパケットを監視して、当該VLAN処理部33のトラフィック量(データ量)をカウントし、そのカウントした結果を、トラフィック量送信部334bに与えるものである。トラフィック量カウンタ334aは、例えば、所定の間隔ごと(例えば、1ミリ秒ごと等)のトラフィック量の累積値をカウントするようにしても良い。
【0080】
トラフィック量送信部334bは、トラフィック量カウンタ334aから与えられたトラフィック量の情報を、DBAマスタ37に送信する。
【0081】
クラス内帯域制御部334cは、CoS値に応じた優先処理にさらに、同一のクラス内での帯域制御を行う機能を担っている。例えば、クラス内帯域制御部334cは、各キュー332から、クラス別スケジューリング処理部333に送信されるパケットのトラフィック量を制御することによりクラス内帯域制御を行うようにしても良い。なお、VLAN処理部33において、クラス内帯域制御を行う必要がない場合には、クラス内帯域制御部334cは省略するようにしても良い。
【0082】
次に、DBAマスタ37の構成について説明する。
【0083】
DBAマスタ37は、ユーザ間帯域制御部371、送信許可帯域送信部372、トラフィック量収集部373、及び帯域算出部374を有している。
【0084】
トラフィック量収集部373は、当該子局用集線装置30内のVLAN振分処理部32(DBAスレーブ334のトラフィック量送信部334b)でカウントされたトラフィック量の情報を収集するものである。そして、トラフィック量収集部373は、収集したトラフィック量の情報を、帯域算出部374に与える。
【0085】
帯域算出部374は、トラフィック量収集部373から与えられたトラフィック量の情報に基づいて、当該子局用集線装置30が、親局集線装置20に対して要求する上り方向の帯域幅(以下、「送信要求帯域幅」という)を算出する。
【0086】
帯域算出部374が送信要求帯域幅を算出する処理としては、例えば、各VLAN処理部33のDBAスレーブ334から送られてきたトラフィック量の情報から、各VLAN処理部33で必要とする上り方向の帯域幅(以下、「VLAN単位送信要求許可帯域幅」という)を算出し、その帯域幅を合計した値を、送信要求帯域幅とするようにしても良い。
【0087】
各VLAN処理部33のVLAN単位送信要求帯域幅を算出する処理は、例えば、送られてきたトラフィック量をカウントした時間で割って算出するようにしても良い。例えば、各VLAN処理部33のDBAスレーブ334で、1ミリ秒間隔で、トラフィック量をカウントしている場合には、帯域算出部374は、送られてきたトラフィック量(単位はビット)を、1ミリ秒で割った値を、各VLAN処理部33のVLAN単位送信要求帯域幅(単位はbps)として算出するようにしても良い。
【0088】
なお、帯域算出部374が送信要求帯域幅を求める際には、上述のように、各VLAN処理部33のVLAN単位送信要求帯域幅を算出して合計する処理ではなく、各VLAN処理部33のDBAスレーブ334から送られてきたトラフィック量を合計して、カウントした時間で割って求めるようにしても良い。また、VLAN単位送信要求許可帯域幅の算出処理は、各VLAN振分処理部32で行うようにしても良い。
【0089】
帯域算出部374は、親局集線装置20から許可された上り方向の帯域幅(以下、「送信許可帯域幅」という)を、DBAエージェント38を介して受信し、受信した送信許可帯域幅に応じて、各VLAN処理部33に対して割り当てる上り方向の帯域幅(以下、「VLAN単位許可帯域幅」という)を算出する。この場合、帯域算出部374は、各VLAN処理部33に対して割り当てるVLAN単位許可帯域幅の合計が、送信許可帯域幅以下となるようにする。
【0090】
帯域算出部374は、送信許可帯域幅が、送信要求帯域幅以上だった場合には、各VLAN処理部33に対して、VLAN単位送信要求帯域幅をそのままVLAN単位許可帯域幅として割り当てるようにしても良い。
【0091】
ただし、送信許可帯域幅が、送信要求帯域幅未満だった場合には、送信許可帯域幅の中から、各VLAN処理部33にVLAN単位許可帯域幅を割り当てる。この場合の割当方式については限定されないものであるが、例えば、送信許可帯域幅を各VLAN処理部33に等分して割り当てるようにしても良いし、各VLAN処理部33が必要とする上り方向の帯域幅の大きさに応じて按分するようにしても良い。また、例えば、各ユーザとの契約等により最低限保証する帯域が定められている場合には、対応するVLAN IDに係るVLAN処理部33については、保証すべき帯域幅をVLAN単位許可帯域幅として優先的に割当て、あまった帯域幅を他のVLAN処理部33に割当てるようにしても良い。
【0092】
送信許可帯域送信部372は、帯域算出部374で、それぞれのVLAN処理部33に割り当てられたVLAN単位要求帯域幅を、それぞれのVLAN処理部33(クラス別スケジューリング処理部333)に送信する処理を行うものである。そして、クラス別スケジューリング処理部333では、ユーザ間スケジューリング処理部34へ、パケットのデータ送信をする際の送信速度の上限が、送信許可帯域送信部372から供給されたVLAN単位要求帯域幅に設定される。
【0093】
ユーザ間帯域制御部371は、ユーザ間スケジューリング処理部34へ、ユーザ間(VLAN間)の帯域制御を指示するものである。そして、ユーザ間スケジューリング処理部34では、ユーザ間帯域制御部371の制御に応じた帯域制御が行われる。ユーザ間スケジューリング処理部34では、例えば、ユーザとの契約等により、送信処理を優先すべきユーザ(VLAN)のトラフィックについては、優先的に帯域を確保する等の帯域処理を行うようにしても良い。なお、このようなユーザ間の帯域制御を行う必要が無い場合には、ユーザ間スケジューリング処理部34及びユーザ間帯域制御部371は省略するようにしても良い。
【0094】
次に、DBAエージェント38の構成について説明する、
DBAエージェント38は、要求帯域幅送信部381及び送信許可帯域幅受信部382を有している。
【0095】
要求帯域幅送信部381は、帯域算出部374で算出された送信要求帯域幅を、親局集線装置20(後述するDBAマネージャ23)に送信するものである。
【0096】
送信許可帯域幅受信部382は、親局集線装置20(後述するDBAマネージャ23)から送信された送信許可帯域幅を受信して、帯域算出部374に与えるものである。
【0097】
なお、要求帯域幅送信部381及び送信許可帯域幅受信部382が行う、親局集線装置20との制御信号の通信には、例えば、ITU−T Y.1731に規定されるような保守管理用のOAM(Operations Administration Maintenance)フレームをしようするようにしても良い。また、制御信号用のVLAN IDを付与して送受信するようにしても良い。
【0098】
なお、図5では、子局集線装置30における上り方向のパケットを処理する構成について示しているが、下り方向のパケットについては、ポート31−3から受信したパケットについて、VLAN IDに対応するONU60へ向けてポート31−1又はポート31−2から出力されることになる。下り方向のパケットについては、特に帯域制御等を行わなくても良い。
【0099】
次に、親局集線装置20の構成について説明する。
【0100】
図7は、親局集線装置20の機能的構成について示した説明図である。
【0101】
親局集線装置20は、ネットワークに接続するための6つのポート21(21−1〜21−6)、スイッチ22、及びDBAマネージャ23を有している。
【0102】
親局集線装置20では、ポート21−1は、ADM10−1と接続するためのインタフェースとして使用されているものとする。また、ポート21−3は、エッジルータ40と接続するためのインタフェースとして使用されているものとする。ここでは、その他のポート21−2、21−4〜21−6については使用されていないものとする。なお、親局集線装置20において配置されるポートの数は限定されないものである。
【0103】
スイッチ22は、ポート21間のパケットを交換するものである。
【0104】
親局集線装置20では、ADM10−1からの上り方向のパケットについては、ポート21−1に入力され、スイッチ22を介して、ポート21−3からエッジルータ40へ出力される。下り方向のパケットについては逆の経路を辿る。
【0105】
また、図7では、図示を省略しているが、親局集線装置20では、上り方向及び下り方向のパケットについてVLANに係る処理も行うものとする。
【0106】
ここでは、親局集線装置20で、上り方向の通信については、特に帯域制御されないものとするが、子局集線装置30と同様の帯域制御を行うようにしても良い。
【0107】
次に、DBAマネージャ23の構成について説明する。
【0108】
DBAマネージャ23は、送信許可帯域送信部231、帯域要求値受信部232、及び距離差調整バッファ233を有している。
【0109】
帯域要求値受信部232は、各子局用集線装置30からの送信要求帯域幅の情報を、距離差調整バッファ233を介して受信し、受信した送信要求帯域幅の情報を送信許可帯域送信部231に与える。
【0110】
DBAマネージャ23は、各子局用集線装置30(DBAエージェント38)から、送信要求帯域幅の情報を受信するが、親局集線装置20から見て、それぞれの子局用集線装置30との距離(到達するまでの光ファイバの長さ)が異なるため、DBAマネージャ23に子局用集線装置30から送信された送信要求帯域幅の情報が到達するタイミングも異なる。
【0111】
そのため、DBAマネージャ23では、距離差調整バッファ233を設けて、必要に応じ、親局集線装置20内でこの距離差(信号伝達に要する時間の遅延差)を調整している。距離差調整バッファ233は、例えば、それぞれの子局集線装置30から受信した送信要求帯域幅の情報を、それぞれの子局用集線装置30との距離に応じた所定の時間保持してから、ユーザ帯域要求値受信部232に与えるようにしても良い。これにより、各子局用集線装置30のDBAエージェント38から、DBAマネージャ23のユーザ帯域要求値受信部232に送信要求帯域幅の情報が到達するタイミングを調整することができる。
【0112】
なお、DBAマネージャ23の処理において、各子局用集線装置30のDBAエージェント38から、DBAマネージャ23に送信要求帯域幅が到達するタイミングの差が無視できる程度の時間であれば、距離差調整バッファ233は省略するようにしても良い。
【0113】
送信許可帯域送信部231は、ユーザ帯域要求値受信部232から与えられた、各子局用集線装置30からの送信要求帯域幅に応じて、各子局用集線装置30に対して割り当てる送信許可帯域幅を算出する。そして、送信許可帯域送信部231は、算出した送信許可帯域幅を各子局用集線装置30に送信する。
【0114】
親局集線装置20では、上り方向の通信について、リングネットワークRN上で許容する帯域幅を越えないように、各子局用集線装置30に送信許可帯域幅を割り当てる必要がある。例えば、各子局集線装置30からの送信要求帯域幅の合計値が、リングネットワークRN上で許容する帯域幅を超える場合には、リングネットワークRN上で許容する帯域幅の中から、各子局用集線装置30に送信許可帯域幅を割り当てる必要がある。その場合、例えば、リングネットワークRN上で許容する帯域幅を、各子局集線装置30へ等分して、送信許可帯域幅として割り当てるようにしても良いし、配下のユーザ数(ONU60の数)に応じて按分して割り当てるようにしても良い。
【0115】
一方、各子局集線装置30からの送信要求帯域幅の合計値が、リングネットワークRN上で許容する帯域幅を超えない場合には、各子局集線装置30からの送信要求帯域幅を、そのまま送信許可帯域幅として割り当てるようにしても良い。
【0116】
(A−2)実施形態の動作
次に、以上のような構成を有する実施形態のネットワークシステム1の動作(実施形態の帯域制御方法)を説明する。
【0117】
図1は、ネットワークシステム1の動作について示したシーケンス図である。
【0118】
まず、各子局集線装置30−1〜30−3において、DBAマスタ37により、各DBAスレーブ334でカウントされたトラフィック量(前回の収集から今回の収集までにカウントされたトラフィック量)のデータが収集される(S101)。
【0119】
次に、各子局集線装置30−1〜30−3において、DBAマスタ37により、収集したトラフィック量の情報を利用して、送信要求帯域幅が算出され(S102)、算出された送信要求帯域幅の情報が、DBAエージェント38に与えられる(S103)。
【0120】
次に、各子局集線装置30−1〜30−3のDBAエージェント38から、送信要求帯域幅の情報が、親局集線装置20のDBAマネージャ23へ送信される(S104)。
【0121】
ステップS104における、各子局集線装置30−1〜30−3から親局集線装置20への送信要求帯域幅の情報送信は、同じタイミングで行われることが望ましい。このタイミングの同期方法については限定されないものであるが、例えば、親局集線装置20からの要求を契機に各子局集線装置30が送信するようにしても良いし、親局集線装置20からのクロック同期等により同期されたタイミングで、各子局集線装置30が送信するようにしても良い。
【0122】
次に、DBAマネージャ23では、各子局集線装置30−1〜30−3に対して割り当てる送信許可帯域幅が算出される(S105)。
【0123】
次に、DBAマネージャ23で算出された送信許可帯域幅の情報が、各子局集線装置30−1〜30−3のDBAエージェント38へ送信される(S106)。
【0124】
次に、各子局集線装置30−1〜30−3において、DBAエージェント38からDBAマスタ37へ、送信許可帯域幅の情報が与えられる(S107)。
【0125】
次に、各子局集線装置30−1〜30−3において、DBAマスタ37により、それぞれのVLAN処理部33に対して割り当てるVLAN単位送信許可帯域幅が算出される(S108)。
【0126】
次に、各子局集線装置30−1〜30−3において、DBAマスタ37で算出されたVLAN単位送信許可帯域幅の情報が、それぞれのVLAN処理部33に与えられる(S109)。
【0127】
そして、各子局集線装置30−1〜30−3のVLAN処理部33では、新たに通知されたVLAN単位送信許可帯域幅に基づいて、帯域制御が行われることになる。また、各子局集線装置30−1〜30−3は、所定のタイミングで、再度上述のステップS101の処理から動作を再開する。
【0128】
(A−3)実施形態の効果
この実施形態によれば、以下のような効果を奏することができる。
【0129】
(A−3−1)親局集線装置20では、各子局集線装置30から通知された送信要求帯域幅に基づいて、各子局用集線装置30に対して割り当てる送信許可帯域幅を決定している。
【0130】
これにより、親局集線装置20では、各子局用集線装置30に必要なパスの帯域幅を実際に配下のユーザが使用する帯域幅に応じて、効率的に割り振ることが可能になるため、経済的な集線ネットワークを効率化することができる。
【0131】
(A−3−2)次に、図2における子局集線装置30及び親局集線装置20を従来のアクセスネットワークにおける集線装置に置き換えた場合を想定する。この場合、親局集線装置と3つの子局集線装置のそれぞれとの間に、それぞれ1Gbpsの帯域幅のパスを張ると、本発明のネットワークシステム1のように、子局集線装置間の上り信号の帯域幅の調整は行われないため、各子局集線装置が実際に使用する帯域幅に関わらず、リングネットワークRNが許容する帯域幅を3Gbps(1Gbps×N)以上にする必要があった。
【0132】
例えば、上り信号の実際の使用帯域幅が、第1の子局集線装置で100Mbps、第2の子局集線装置で50Mbps、第3の子局集線装置で150Mbpsの状態の場合を想定する。この場合でも、それぞれの子局集線装置は、親局集線装置との間で、1Gbpsの帯域のパスを既に確保しているので、各子局集線装置へ過剰な帯域幅を占有させなければならなかった。
【0133】
すなわち、上述の場合、リングネットワークRNにおけるADMには、3Gbps以上を多重するための装置を採用する必要があった。一般的にSONET/SDHを採用したリングネットワークにおいて、ADMは2.5Gbps、10Gbpsに対応した多重化装置が多い。そのため、上述の構成の場合は2.5Gbpsに対応したADMは使うことができず、10Gbpsに対応したADMを設置しなければならないため、装置コストが高くなるという問題があった。
【0134】
一方、本発明のネットワークシステム1では、各子局集線装置30から親局集線装置20への上り信号の帯域幅が、リングネットワークRNが許容する帯域幅を超えないように調整されている。これにより、各子局集線装置30に過剰な帯域幅を占有させずに共用させることができる。本発明のネットワークシステム1では、親局集線装置20と各子局用集線装置30との間に合計3Gbps(1Gbps×3)の論理パスを設定しているため、従来であれば、リングネットワークRNに使用されるADM10は10Gbpsに対応するものを採用するしかないが、実際のユーザの使用状況を鑑みて、2.5Gbpsに対応したADMを採用することができ、装置コストを低減させることができる。
【0135】
(A−3−3)次に、図2における子局集線装置30及び親局集線装置20を従来のアクセスネットワークにおける集線装置に置き換え、さらに、リングネットワークRNに、IEEE 802.17で規定されるRPR(Resilient Packet Ring)が採用された場合を想定する。この構成の場合は、上述の(A−3−2)におけるSONET/SDHの場合の想定とは異なり、全ての子局集線装置で、1Gbpsの論理パスを共用することが可能になる。しかし、この構成の場合、IEEE802.17の規定から、子局集線装置単位でのトラフィックの公平性は保証することができることになっているが、子局集線装置の配下のネットワーク単位(ユーザ・ONU単位)のトラフィックの公平性は保証することができない(非特許文献1参照)。
【0136】
一方、本発明のネットワークシステム1では、各子局集線装置30により、各ユーザ(各ONU60)の上り方向の通信について、送信許可帯域幅の中から割り当てている。これにより、各子局集線装置30では、上り方向の帯域幅について、ユーザ間の必要帯域幅を考慮した上で割当を行うこと等ができ、ユーザ間の公平性を確保することができる。
【0137】
(B)他の実施形態
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に例示するような変形実施形態も挙げることができる。
【0138】
(B−1)上記の実施形態では、リングネットワークRNは、SONET/SDHの規格に対応したものを用いて構築しても良いと説明しているが、その他の技術(例えば、RPR等)を利用するようにしても良い。SONET/SDHを利用した場合には、親局集線装置20と子局集線装置30との間の論理パスの上限となる帯域幅が、リングネットワークRNで予め設定されるが、RPRの場合も同様の設定をしておくことが望ましい。
【0139】
(B−2)リングネットワークRNを、他の型のトポロジー(例えば、バス型、スター型等のトポロジー)のネットワークに置き換えても良い。
【符号の説明】
【0140】
1…ネットワークシステム、RN…リングネットワーク、S1…親局、S2−1〜S2−3…子局、50…OLT、60…ONU、10、10−1〜10−4…ADM、20…親局集線装置、30−1〜30−3…子局集線装置、33…VLAN処理部、331…クラス分け処理部、332−1〜332−4…キュー、333…クラス別スケジューリング処理部、334…DBAスレーブ、334a…トラフィック量カウンタ、334b…トラフィック量送信部、334c…クラス内帯域制御部、37…DBAマスタ、371…ユーザ間帯域制御部、372…送信許可帯域送信部、373…トラフィック量収集部、374…帯域算出部、38…DBAエージェント、381…帯域要求幅送信部、382…送信許可帯域幅受信部、23…DBAマネージャ、231…送信許可帯域幅送信部、232…帯域要求値受信部、233…距離差調整バッファ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配下に複数の下位ネットワークが収容されている複数の子局通信装置と、一つの伝送路を用いて上記子局通信装置と接続している親局通信装置とを備えるネットワークシステムにおいて、
それぞれの上記子局通信装置は、
当該子局通信装置で、上り方向の通信に必要とする帯域の合計に係る要求帯域幅を算出する要求帯域幅算出手段と、
上記要求帯域幅算出手段が算出した要求帯域幅の情報を、上記親局通信装置に送信する要求帯域幅送信手段と、
上記親局通信装置から当該子局通信装置に割り当てられた、上り方向の通信の帯域に係る割当帯域幅の情報を受信する割当帯域幅受信手段と、
当該子局通信装置で、上り方向の通信で使用する帯域幅が、割当帯域幅以下となるように制御する帯域制御手段とを有し、
上記親局通信装置は、
それぞれの上記子局通信装置から、要求帯域幅の情報を受信する要求帯域幅受信手段と、
受信した要求帯域幅と、上記伝送路で上り方向に通信可能な最大帯域幅とを利用して、それぞれの上記子局通信装置に割り当てる割当帯域幅を算出する割当帯域幅算出手段と、
算出した割当帯域幅を、それぞれの子局通信装置に送信する割当帯域幅送信手段とを有する
ことを特徴とするネットワークシステム。
【請求項2】
上記割当帯域幅算出手段は、受信した要求帯域幅の合計値が、上記最大帯域幅を超える場合には、上記子局通信装置に割り当てる割当帯域幅の合計値が、上記最大帯域幅を超えないようにすることを特徴とする請求項1に記載のネットワークシステム。
【請求項3】
上記要求帯域幅算出手段は、当該子局通信装置の下位ネットワークのそれぞれから送出された上り方向の通信の通信量を測定し、その測定結果を利用して要求帯域幅を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載のネットワークシステム。
【請求項4】
配下に複数の下位ネットワークが収容されており、他の子局通信装置と共通の一つの伝送路を用いて親局通信装置と接続している子局通信装置において、
当該子局通信装置で、上り方向の通信に必要とする帯域の合計に係る要求帯域幅を算出する要求帯域幅算出手段と、
上記要求帯域幅算出手段が算出した要求帯域幅の情報を、上記親局通信装置に送信する要求帯域幅送信手段と、
上記親局通信装置から当該子局通信装置に割り当てられた、上り方向の通信の帯域に係る割当帯域幅の情報を受信する割当帯域幅受信手段と、
当該子局通信装置で、上り方向の通信で使用する帯域幅が、割当帯域幅以下となるように制御する帯域制御手段と
を有することを特徴とする子局通信装置。
【請求項5】
配下に複数の下位ネットワークが収容されている複数の子局通信装置と、一つの伝送路を用いて上記子局通信装置と接続している親局通信装置において、
それぞれの上記子局通信装置から、当該子局通信装置で上り方向の通信に必要とする帯域の合計に係る要求帯域幅の情報を受信する要求帯域幅受信手段と、
受信した要求帯域幅と、上記伝送路で上り方向に通信可能な最大帯域幅とを利用して、それぞれの上記子局通信装置に割り当てる割当帯域幅を算出する割当帯域幅算出手段と、
算出した割当帯域幅を、それぞれの子局通信装置に送信する割当帯域幅送信手段と
を有することを特徴とする親局通信装置。
【請求項6】
配下に複数の下位ネットワークが収容されている複数の子局通信装置と、一つの伝送路を用いて上記子局通信装置と接続している親局通信装置とを備えるネットワークシステムの帯域制御方法において、
それぞれの上記子局通信装置が、上り方向の通信に必要とする帯域の合計に係る要求帯域幅を算出する要求帯域幅算出工程と、
それぞれの上記子局通信装置が、算出した要求帯域幅の情報を、上記親局通信装置に送信する要求帯域幅送信工程と、
上記親局通信装置が、それぞれの上記子局通信装置から、要求帯域幅の情報を受信する要求帯域幅受信工程と、
上記親局通信装置が、受信した要求帯域幅と、上記伝送路で上り方向に通信可能な最大帯域幅とを利用して、それぞれの上記子局通信装置に割り当てる上り方向の通信の帯域に係る割当帯域幅を算出する割当帯域幅算出工程と、
上記親局通信装置が、算出した割当帯域幅を、それぞれの子局通信装置に送信する割当帯域幅送信工程と、
それぞれの上記子局通信装置が、上記親局通信装置から当該子局通信装置に割り当てられた割当帯域幅の情報を受信する割当帯域幅受信工程と、
それぞれの上記子局通信装置が、上り方向の通信で使用する帯域幅を、割当帯域幅以下となるように制御する帯域制御工程と
を有することを特徴とする帯域制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−95043(P2012−95043A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239823(P2010−239823)
【出願日】平成22年10月26日(2010.10.26)
【出願人】(503262509)株式会社オー・エフ・ネットワークス (62)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】