説明

ネットワークシステム

【課題】 冗長化された複数のレイヤ2ネットワーク網を持つネットワークシステムにおいて、フレームデータの同報転送処理を行う伝送経路に障害があると、フラッディングによる不要なトラフィックが発生し、ネットワークの通信回線の品質が悪化するという問題があった。
【解決手段】 ネットワーク監視装置を設けて、ネットワーク上の伝送経路の障害状況を監視するとともに、障害発生時に同報スイッチ装置の接続動作を制御することによって、不必要なフラッディング動作を抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複数のネットワーク網において、OSI(Open Systems Interconnection)参照モデルの第2層のデータリンク層を介したフレームデータの同報転送処理を制御する、ネットワークシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
OSI参照モデルのデータリンク層(接続されている通信機器間の信号の授受を行う層)である第2層(以下、レイヤ2)を接続するネットワークシステムにおいて、ネットワークに障害が発生しても、経路の切替動作を要せずに無瞬断で通信を継続するために、複数のレイヤ2スイッチ装置を設けたシステムが知られている。このネットワークシステムは、複数のネットワーク網を接続した冗長構成を取ることで、同一のフレームデータを複数のネットワーク網に送信するとともに、複数のネットワーク網から転送されてきた同一のフレームデータを選択して受信することで、信頼性を高めた伝送技術が用いられている。このとき、複数のネットワーク網に同一フレームデータを送受信するレイヤ2スイッチ装置を同報スイッチ装置という。
【0003】
IEEE802.3で規定されるレイヤ2ネットワークの同報スイッチ装置では、MAC(Media Access Control)アドレスと表記されるレイヤ2ネットワークのアドレスによってフレームデータを転送する経路を選択している。この経路選択の方法は、受信したポートと受信したフレームデータに格納されている送信元ノードを示すMACアドレスであるSA(Souce Address)を組にして記憶し、その後受信したフレームデータの送信先ノードを示すMACアドレスであるDA(Destination Address)が、既に記憶されているMACアドレスと同一の場合には、組として記憶した受信ポートにのみ送信する方法を用いている。但し、受信したフレームデータのDAと同一のMACアドレスが記憶されていない場合には、受信したポート以外のすべてのポートへ受信したフレームデータを送信するフラッディングと表記される動作を行う。
【0004】
このフラッディングを行うことで、MACアドレスが記憶されていない場合にもフレームデータのDAで指定されている送信先ノードまで転送できるようになるが、DAで指定されている送信先ノードがない経路にまでフレームデータが送信されるため、送信先ノードがない経路に対して、フラッディングにより不必要な伝送帯域を消費することになる。受信したフレームデータのSAは、受信したポートの先に接続されているノードのMACアドレスであるため、記憶したSAのMACアドレスと同一のMACアドレスを送信先ノードとしたフレームデータは、組で記憶した受信ポートにのみ転送すればよく、前記した経路選択方法は、SAのMACアドレスと受信ポートを記憶した後に効率的な転送を行うことができることになる。この経路選択方法で行われる受信したフレームデータのSAのMACアドレスと受信ポートを組で記憶する方法は、アドレス学習と一般的に表記されるので、以下の説明ではアドレス学習と記す。
【0005】
レイヤ2ネットワークの接続が変更され、アドレス学習で記憶したMACアドレスと受信ポートの組が変更された場合、当該MACアドレスをSAとするフレームデータを記憶した組のポートとは異なるポートで受信されることなる。レイヤ2スイッチ装置では、記憶したMACアドレスと受信ポートの組とは異なるポートで同じMACアドレスをSAとするフレームデータを受信した場合、新たに受信したポートに情報を書き換える動作を行う。また、アドレス学習で記憶したMACアドレスと受信ポートの組は、一定時間当該MACアドレスをSAとしたフレームデータを受信しない場合には記憶した情報を削除する。この動作により、レイヤ2ネットワークの接続が変わった場合にも、一定時間後に新たな接続を記憶することできるようになる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−324792
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ここで、ネットワークシステムの課題を説明するために、冗長構成されたレイヤ2ネットワークシステムの一例について、参考例を用いて説明する。
図4は、冗長構成されたレイヤ2ネットワークシステムの一例を示した参考図である。レイヤ2ネットワークでは、同報スイッチ装置が複数のレイヤ2ネットワーク網に接続され、同一フレームデータを複数のレイヤ2ネットワーク網へ転送すると共に、複数のレイヤ2ネットワーク網から転送されてくるフレームデータを端末に転送する。この動作を行う中で、受信したフレームデータのSAのMACアドレスと受信ポートの組みを学習する。このとき、レイヤ2ネットワーク網から同報ポートに転送されてきたフレームデータは、複数の同報ポートを1つのポートとして記憶するアドレス学習を行うことで同報転送を実現する。
【0008】
図4において、同報転送を行う複数のレイヤ2ネットワーク網のうちの一つのネットワーク網1を、A系レイヤ2ネットワーク網とする。また、もう一つのレイヤ6ネットワーク網2を、B系レイヤ2ネットワーク網とする。同報スイッチ装置10は、A系、B系二つのネットワークに接続される。同報スイッチ装置10は、端末接続ポート11と、A系レイヤ2ネットワーク網に接続する同報ポートAである接続ポート12と、B系レイヤ2ネットワーク網に接続する同報ポートBである接続ポート13を備えている。同様に、もう一つの同報スイッチ装置20は、A系、B系二つのネットワークに接続される。同報スイッチ装置20は、端末接続ポート21と、同報ポートAである接続ポート22と、同報ポートBである接続ポート23を備えている。また、同様に、もう一つの同報スイッチ装置30は、A系、B系二つのネットワークに接続される。同報スイッチ装置30は、端末接続ポート31と、同報ポートAである接続ポート32と、同報ポートBである接続ポート33を備えている。端末40及び50は、ネットワークシステムに加入している端末であり、端末40は同報スイッチ装置10に接続しており、端末50は同報スイッチ装置30に接続しているものとする。
【0009】
次に、図4を用いて、ネットワークシステムに障害がない場合の動作を、端末40から端末50へと中継されるフレームデータの転送を例に説明する。
端末40から端末50宛に送信されたフレームデータは、同報スイッチ装置10の端末接続ポート11に入力されることにより、同報スイッチ装置10は端末40のMACアドレスと端末接続ポート11を組みにしてアドレス学習を行う。同時に宛先アドレスである端末50のMACアドレスを記憶しているポートがある場合、そのポートにフレームデータを転送する。端末50のMACアドレスが記憶されていない場合は、同報スイッチ装置10はこのフレームデータをフラッディングすることになる。
【0010】
なお、同報スイッチ装置は同報ポートにフレームデータを中継する場合は同一のフレームデータをすべての同報ポートに転送する。A系レイヤ2ネットワーク網1及びB系レイヤ2ネットワーク網2では、同様にフレームデータの中継を行うとともに端末40のMACアドレスを学習する。こうして転送されてきた端末50あてのフレームデータは、やがてA系レイヤ2ネットワーク網1及びB系レイヤ2ネットワーク網2から同報スイッチ装置30の同報ポートA32及び同報ポートB33へと中継されてくる。ここで、同報スイッチ装置30は、異なる複数のレイヤ2ネットワーク網から転送されてくる同一のフレームデータは、先に到着したフレームデータを転送し、後から到着したフレームデータはその時点で棄却する。これにより、複数のレイヤ2ネットワーク網を流れる同一のフレームデータは、唯一つのフレームデータのみが宛先の端末へと転送されることになる。このようにして端末40が送信した端末50宛のフレームデータが端末50に到着する間に経路上の同報スイッチ装置及び各レイヤ2ネットワーク網は、端末40のMACアドレスを学習することになる。同様な手順で他の端末もフレームデータを送信すれば経路上の同報スイッチ装置や各レイヤ2ネットワーク網が他の端末のMACアドレスを学習することになる。このようにしてネットワークシステムは、接続する端末のMACアドレスと接続ポートを自立的に学習しあい、不必要なフラッディング動作を自然に回避して効率的なフレームデータの中継を行うことになる。ここでレイヤ2ネットワーク網が複数存在しているのは、ネットワークの冗長経路を確保するのが目的であり、ネットワークシステムを高信頼化させるためである。
【0011】
前記したように、冗長構成されたレイヤ2ネットワークシステムでは、ネットワーク経路上の同報スイッチやレイヤ2ネットワーク網が自立的にアドレス学習を行うことで、効率的なデータ中継を実現している。これはネットワークシステムが正常に動作している場合であり、ネットワーク経路上に障害などが発生し、信号伝送経路が分断された場合などはこの限りではなく、次の図5で説明する課題を生じる。
【0012】
図5は、冗長構成されたレイヤ2ネットワークシステムの障害発生時の動作を説明するための参考図である。図5では図4と同一のものは同じ番号で示している。ここでは、A系レイヤ2ネットワーク網1と同報スイッチ装置30間との間で信号伝送経路が分断する障害が発生し、この間の通信が途絶えた場合の例を示している。
【0013】
健全なレイヤ2ネットワークシステムでは、図4を用いて説明したとおり、同報スイッチ装置群及び複数のレイヤ2ネットワーク網は、自立的に端末のMACアドレス学習を行い、効率的なフレームデータの中継をしていた。ここで、図5のようにA系レイヤ2ネットワーク網1と同報スイッチ30との間でケーブル切断による接続障害が発生し、通信が途絶えた状態を考えてみる。
【0014】
このとき、A系レイヤ2ネットワーク網1では、同報スイッチ装置30の端末接続ポートに接続されている端末50からのフレームデータが転送されなくなる。同報スイッチ装置では、一定時間転送されてこない送信元MACアドレスと同一のアドレス学習の情報は削除する。このため、A系レイヤ2ネットワーク網1では端末50が送信するフレームデータが障害のために転送されてこないため、ある時間を経過したら端末50のMACアドレスの情報はクリアされてしまう。
一方、B系ネットワーク網2では、正常に端末50からのフレームデータが転送されるため、端末50のアドレス学習情報は削除されることはない。
【0015】
このように、ネットワーク上に障害が発生した場合、複数のレイヤ2ネットワーク網間でアドレス学習情報が異なることになる。
ここで、端末40から端末50に対してフレームデータが送信された場合を考えてみる。端末40から送信された宛先MACアドレスが端末50のフレームデータは、同報スイッチ装置10の端末接続ポート11から入力され、同報スイッチ装置はアドレス学習情報により当該フレームデータを同報ポートA12及び同報ポートBへ同報転送を行う。このとき、端末50のアドレス情報が学習されているB系レイヤ2ネットワーク網2は、正常に同報スイッチ30の同報ポートB33に向けてフレームデータが転送されることになる。
【0016】
ところが、端末50のアドレス情報が消去されたA系ネットワーク網1では、宛先MACアドレスが学習されていないため、すべての接続ポートにフラッディングしてしまうことになる。図5では、同報スイッチ装置20へ転送されるフラッディングの様子を表している。このようなフラッディングは、他の端末やネットワーク機器に不必要な負荷をかけ、動作に悪影響を及ぼす恐れがあるという問題を生じる。
【0017】
この発明は、係る課題を解決するためになされたものであり、冗長構成されたレイヤ2ネットワークシステムにおいて、障害時におけるフラッディング動作を抑制し、障害時でも効率的なフレームデータの中継ができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この発明によるネットワークシステムは、複数のネットワーク網と、異なる前記ネットワーク網の間をそれぞれのネットワーク網に対応した同報ポートにより接続し、接続されるネットワーク網の間でフレームデータの同報転送処理を行う複数の同報スイッチ装置と、前記ネットワーク網と同報スイッチ装置との物理的リンクの切断による障害の発生を監視し、障害の発生を検出した時に、障害の発生した前記ネットワーク網と同報スイッチ装置とを接続する同報ポートに接続されたネットワーク網に対する、フレームデータの同報転送を禁止する制御を行うネットワーク監視装置と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明によれば、冗長構成により複数のネットワーク網を接続してフレームデータの同報転送処理を行うネットワークシステムにおいて、ネットワーク網へ接続している同報スイッチ装置の物理的リンクが切断する障害が発生したときに、フラッディング動作が生じて他の同報スイッチ装置の不要なトラフィックが増加することを抑制し、より信頼性の高いネットワークシステムを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1によるネットワークシステムの構成を示す図である。
【図2】この発明の実施の形態1による障害発生時のネットワークシステムの動作を説明するための図である。
【図3】この発明の実施の形態2による障害発生時のネットワークシステムの動作を説明するための図である。
【図4】冗長構成をなすレイヤ2ネットワークシステムの構成例を示す参考図である。
【図5】冗長構成をなすレイヤ2ネットワークシステムの障害発生時の動作例を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施の形態1.
以下、図を用いてこの発明に係る実施の形態1によるネットワークシステムについて説明する。実施の形態1によるネットワークシステムは、レイヤ2ネットワークシステムの障害監視を行うネットワーク監視装置を設けることで、信号伝送経路の分断による接続障害の発生時に、同報スイッチ装置に対してフラッディング動作を抑止させる指示を行う。
【0022】
図1は、実施の形態1によるネットワークシステムの構成例を示す図である。図1において、実施の形態1のネットワークシステムは、ネットワーク網1と、ネットワーク網2と、ネットワーク監視装置100と、同報スイッチ装置10と、同報スイッチ装置20と、同報スイッチ装置30とを、少なくとも備えて構成される。なお、ネットワーク網や同報スイッチ装置は、図1に示す数に限るものではなく、さらに多数のネットワーク網や同報スイッチ装置が設けられていてもよい。
【0023】
ここで、同報転送を行う複数のレイヤ2ネットワーク網のうちの一つのネットワーク網1を、A系レイヤ2ネットワーク網とする。また、もう一つのレイヤ6ネットワーク網2を、B系レイヤ2ネットワーク網とする。同報スイッチ装置10は、A系、B系二つのネットワークに接続される。同報スイッチ装置10は、端末接続ポート11と、A系レイヤ2ネットワーク網に接続する同報ポートAである接続ポート12と、B系レイヤ2ネットワーク網に接続する同報ポートBである接続ポート13を備えている。同様に、もう一つの同報スイッチ装置20は、A系、B系二つのレイヤ2ネットワークに接続される。同報スイッチ装置20は、端末接続ポート21と、同報ポートAである接続ポート22と、同報ポートBである接続ポート23を備えている。また、同様に、もう一つの同報スイッチ装置30は、A系、B系二つのレイヤ2ネットワークに接続される。同報スイッチ装置30は、端末接続ポート31と、同報ポートAである接続ポート32と、同報ポートBである接続ポート33を備えている。端末40及び50は、ネットワークシステムに加入している端末であり、端末40は同報スイッチ装置10に接続しており、端末50は同報スイッチ装置30に接続しているものとする。
【0024】
また、ネットワーク監視装置100は、同報スイッチ10、同報スイッチ装置20、同報スイッチ装置30のほか、A系レイヤ2ネットワーク網1のレイヤ2スイッチ装置、B系レイヤ2ネットワーク網2のレイヤ2スイッチ装置などネットワークシステム全体の状態の稼動状態や接続状態を監視している。ネットワーク監視装置100は、SNMP(Simple Network Management Protocol)と呼ばれる標準化された通信プロトコルによる通信装置(図示せず)を用いて、各々の同報スイッチ装置10、20、30の管理情報を収集し、収集した管理情報に基づいて障害の発生状況を判断する監視制御を行う。また、ネットワーク監視装置100は、ネットワークシステム全体において、フレームデータの伝送状況(例えば所定時間内での伝送有無)をモニタすることで、ケーブル切断や伝送回路故障等の信号伝送経路の分断による接続障害を検知し、障害箇所を特定することができるように構成される。
【0025】
次に、実施の形態1による接続障害の発生時のネットワークシステムの動作について説明する。
図2は、実施の形態1のネットワークシステムにおける、接続障害の発生時の動作を説明するための図である。ここでは、B系レイヤ2ネットワーク網2と同報スイッチ装置30間において、ケーブル切断によって信号伝送経路が分断する接続障害が発生した場合を例に動作を説明する。B系レイヤ2ネットワーク網2と同報スイッチ装置30との間で接続障害が発生した場合、同報スイッチ装置30の同報ポートBの物理リンクが切れて、フレームデータが伝送されなくなるといった状態の変化が生じる。
【0026】
同報スイッチ装置30は、同報ポートBの物理リンクが切れると、その状態変化を内部の検知部(図示せず)が検出し、SNMPの通信装置を用いてネットワーク監視装置100へ通知する。また、B系レイヤ2ネットワーク網2においても、同報スイッチ装置30と接続する物理ポートにおいて、同報スイッチ装置30との物理リンクが切断されて状態の変化が生じたことを、内部の検知部(図示せず)が検出すると、同じようにSNMPの通信装置を用いてその状態変化がネットワーク監視装置100へ通知されることになる。このようにして、ネットワーク監視装置100では、B系レイヤ2ネットワーク網2に何らかの障害が発生していることを検知することができる。
【0027】
ここで、B系レイヤ2ネットワーク網2からのフラッディングを回避するために、ネットワーク監視装置100はすべての同報スイッチ装置に対して、B系レイヤ2ネットワーク網2へのフレームデータの転送を中止するように指示するための中止指令を送る。同報スイッチ装置10、20は、ネットワーク監視装置100からの中止指令を受けると、同報ポートBへのフレームデータの中継を実施しないように動作する。
【0028】
これにより、図5で説明したような、レイヤ2ネットワークにおける接続障害の発生時に、不必要なフラッディング動作を回避することができる。この実施の形態1による回避動作によれば、ネットワークの信頼性を高めるために冗長化した複数のレイヤ2ネットワーク網において、障害が発生した場合に、そのレイヤ2ネットワーク網を破棄することによって、フラッディング動作を回避することができる。
【0029】
以上説明したとおり、実施の形態1によるネットワークシステムは、冗長化された複数のレイヤ2ネットワーク網と、異なるレイヤ2ネットワーク網の間をそれぞれのレイヤ2ネットワーク網に対応した同報ポートにより接続し、接続されるレイヤ2ネットワーク網の間でフレームデータの同報転送処理を行う複数の同報スイッチ装置と、前記レイヤ2ネットワーク網と同報スイッチ装置との物理的リンクの切断による障害の発生を監視し、障害の発生を検出した時に、障害の発生した前記ネットワーク網と同報スイッチ装置とを接続する同報ポートに接続されたネットワーク網に対する、フレームデータの同報転送を禁止し、当該ネットワーク網をネットワークシステムから切り離す制御を行うネットワーク監視装置と、を備えることで、当該障害の発生に伴うネットワーク全系へのフラッディング動作の発生を防止することを特徴とする。
【0030】
これによって、複数のレイヤ2ネットワーク網を持つ冗長化したレイヤ2ネットワークシステムにおいて、レイヤ2ネットワーク網へ接続している同報スイッチ装置の物理的リンクの切断による障害が発生した時に、フラッディング動作が生じて他の同報スイッチ装置の不要なトラフィック(負荷)が増加し、ネットワークシステム全体が悪影響を受けることを抑制することができるので、より信頼性の高いネットワークシステムを維持することができる。
【0031】
実施の形態2.
次に、実施の形態2による接続障害の発生時のネットワークシステムの動作について説明する。図3は、実施の形態2による接続障害の発生時のネットワークシステムの動作を説明するための図であり、図中の図1と同一符号のものは同一相当のものを示す。図において、端末60は同報スイッチ20の端末接続ポート21に接続されている。
【0032】
実施の形態1では、接続障害が発生したレイヤ2ネットワーク網を冗長構成から切り離すことで、フラッディングを回避していた。このような回避方法の場合、仮に同報スイッチ装置30とB系レイヤ2スイッチ網2間で接続障害が発生した場合においても、B系レイヤ2スイッチ網2はすべて破棄しなくてはならなくなる。この実施の形態2では、障害が発生したB系レイヤ2ネットワーク網2において、障害のない箇所を生かして冗長構成を確保し、ネットワークの信頼性を可能な限り維持できるようにしている。
【0033】
図3において、B系レイヤ2ネットワーク網2と同報スイッチ装置30との間で接続障害が発生した場合の動作を説明する。B系レイヤ2ネットワーク網2と同報スイッチ装置30との間で接続障害が発生した場合、同報スイッチ装置30の同報ポートBの物理リンクが切れるなどの状態の変化が生じる。同報スイッチ装置30では、同報ポートBの物理リンクが切れると、その状態変化をSNMPの通信装置を用いて、ネットワーク監視装置100へ通知する。また、B系レイヤ2ネットワーク網2においても、同報スイッチ装置30と接続する物理ポートにおいて状態の変化が生じて同報スイッチ装置30との物理リンクが切れるので、同じようにその状態変化がネットワーク監視装置100へ通知されることになる。ここまでの動作は、実施の形態1と同じである。
【0034】
次に、ネットワーク監視装置100は、接続障害の発生状況が通知されたことによって、同報スイッチ装置30とB系レイヤ2スイッチ網2との間で物理リンクが切断している接続障害があり、フレームデータの通信ができないことを把握すると、同報スイッチ装置30に格納されたアドレスデータを参照し、端末接続ポート31に学習されているMACアドレスを取得する。
【0035】
図3の場合は、端末50のMACアドレスとなる。そして、同報スイッチ装置30以外の全ての同報スイッチ装置(10、20)に対して、同報スイッチ装置30から取得した同報スイッチ装置30に接続した端末50のMACアドレスを送信し、端末50のMACアドレスを宛先としたフレームデータはB系ネットワーク網2へ転送しないように指示するための非転送指令を送る。
【0036】
同報スイッチ装置30以外の同報スイッチ装置(10、20)は、ネットワーク監視装置100からの非転送指令により、宛先が端末50のフレームデータはB系レイヤ2ネットワーク網へは転送しないように制御する。
但し、端末50のMACアドレス以外は、A系、B系の二つのレイヤ2ネットワーク網へ同報転送を続けることになる。
【0037】
図3において、端末40から端末50へ転送されるフレームデータは、B系レイヤ2ネットワーク網2と同報スイッチ装置30間の接続障害のため、A系レイヤ2ネットワーク網1のみを使用して転送されている。すなわち、同報ポートBの接続ポート33を用いることなく、他の同報スイッチ装置10、20や同報スイッチ装置30の同報ポートAを介した経路を使用して、端末50にフレームデータの転送が行われることとなる。
【0038】
一方、端末40から端末60へ転送されるフレームデータは、A系、B系の二つのレイヤ2ネットワーク網を使用して、冗長構成による信頼の高い同報転送により、データ中継されている。これにより、接続障害の発生箇所に応じて、同報転送を可能な限り維持した状態で、冗長構成のレイヤ2ネットワークシステムを維持することができる。
【0039】
このようにすることで、例えば接続障害の発生したB系レイヤ2ネットワーク網2と同報ポートBの接続ポート33と、端末接続ポート31とを介して、端末50にフレームデータを転送するためのMACアドレスに対しては、ネットワーク監視装置100からの非転送指令によって、ネットワーク全系からの同報転送が行われなくなる。かくして、接続障害が発生してから所定時間経過した後、接続ポート33及び端末接続ポート31を介した端末50を宛先とするMACアドレスが、各レイヤ2ネットワーク網や同報スイッチ装置の記憶ポートから削除されても、当該MACアドレスを宛先としたフレームデータの転送自体が抑止されるので、当該MACアドレスに起因したフラッディング動作の発生は防止されることとなる。
【0040】
以上説明したとおり、実施の形態2によるネットワークシステムは、冗長化された複数のレイヤ2ネットワーク網と、異なる前記レイヤ2ネットワーク網の間をそれぞれのレイヤ2ネットワーク網に対応した同報ポートにより接続するとともに、端末への接続ポートを有し、接続されるレイヤ2ネットワーク網の間と端末との間でフレームデータの同報転送処理を行う複数の同報スイッチ装置と、前記レイヤ2ネットワーク網と同報スイッチ装置との物理的リンクの切断による障害の発生を監視し、障害の発生を検出した時に、障害の発生したレイヤ2ネットワーク網と同報スイッチ装置とを接続する同報ポートを介したフレームデータの同報転送を禁止するとともに、当該障害の発生した同報ポート及び接続ポートを介して同報スイッチ装置に接続される端末を宛先としたフレームデータの送信を禁止し、障害が発生していない前記同報スイッチ装置とネットワーク網を接続する同報ポートを介したフレームデータの転送処理を継続することで、前記端末へのフレームデータの転送が停止することによるフラデッィング動作の発生を抑止する制御を行うネットワーク監視装置と、を備えることによって、当該障害の発生に伴うネットワーク全系へのフラッディング動作を防止することを特徴とする。
【0041】
これによって、複数のレイヤ2ネットワークを持つ冗長化したレイヤ2ネットワークシステムにおいて、レイヤ2ネットワーク網へ接続している同報スイッチ装置の物理的リンクの切断による障害発生時のフラッディング動作によってネットワークシステム全体が悪影響を受けることを抑制しつつ、障害の発生時でも障害発生箇所以外のネットワークリソースを最大限に利用することが可能な、信頼性の高いネットワークシステムを維持することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 A系レイヤ2ネットワーク網、2 B系レイヤ2ネットワーク網、10 同報スイッチ装置、20 同報スイッチ装置、30 同報スイッチ装置、11 端末接続ポート、12 同報ポートA、13 同報ポートB、21 端末接続ポート、22 同報ポートA、23 同報ポートB、31 端末接続ポート、32 同報ポートA、33 同報ポートB、40 端末、50 端末、60 端末、100 ネットワーク監視装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のネットワーク網と、
異なる前記ネットワーク網の間をそれぞれのネットワーク網に対応した同報ポートにより接続し、接続されるネットワーク網の間でフレームデータの同報転送処理を行う複数の同報スイッチ装置と、
前記ネットワーク網と同報スイッチ装置との物理的リンクの切断による障害の発生を監視し、障害の発生を検出した時に、障害の発生した前記ネットワーク網と同報スイッチ装置とを接続する同報ポートに接続されたネットワーク網に対する、フレームデータの同報転送を禁止し、当該ネットワーク網をネットワークシステムから切り離す制御を行うネットワーク監視装置と、
を備えたネットワークシステム。
【請求項2】
複数のネットワーク網と、
異なる前記ネットワーク網の間をそれぞれのネットワーク網に対応した同報ポートにより接続するとともに、端末への接続ポートを有し、接続されるネットワーク網の間と端末との間でフレームデータの同報転送処理を行う複数の同報スイッチ装置と、
前記ネットワーク網と同報スイッチ装置との物理的リンクの切断による障害の発生を監視し、障害の発生を検出した時に、障害の発生した前記ネットワーク網と同報スイッチ装置とを接続する同報ポートを介したフレームデータの同報転送を禁止するとともに、当該障害の発生した同報ポート及び接続ポートを介して同報スイッチ装置に接続される端末を宛先としたフレームデータの送信を禁止し、障害が発生していない前記同報スイッチ装置とネットワーク網を接続する同報ポートを介したフレームデータの転送処理を継続することで、前記端末へのフレームデータの転送が停止することによるフラデッィング動作の発生を抑制する制御を行うネットワーク監視装置と、
を備えたネットワークシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−165109(P2012−165109A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22722(P2011−22722)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】