説明

ネットワークデコーダ装置

【課題】 受信するパケット数が増えたときにも内部のCPUに接続されるバスの使用率を圧迫することなく受信した映像情報または音声情報をデコードして出力することが可能なネットワークデコーダ装置を提供する。
【解決手段】 監視カメラ群40から送信されたパケット化された圧縮コンテンツデータを受信するデータ送受信部13aと、受信されたパケット化された圧縮コンテンツデータから圧縮コンテンツデータを抽出するデータ抽出部16bと、抽出された圧縮コンテンツデータを入力してデコード処理し、得られたコンテンツデータを出力するデコード手段17の入力側とがそれぞれ接続される低速バス21と、前記デコード手段17の出力側と、デコード手段17の出力側から出力されたコンテンツデータを記憶するフレームメモリ19と、記憶されたコンテンツデータを読み出して出力する読み出し部20とがそれぞれ接続される高速バス22とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネットワークを介して受信した映像情報または音声情報をデコードして出力するためのネットワークデコーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワーク技術の普及により、IPネットワークを介した映像または音声の送受信が広く行われている。
【0003】
この技術を利用したシステムとして、複数台の監視カメラで撮影された映像データをIPネットワークを介して接続された表示装置で表示する監視システムがある。
【0004】
従来の監視システムの構成を図6に示す。
【0005】
従来の監視システム100は、第1監視カメラ40−1〜第n監視カメラ40−nを有する監視カメラ群40と、これらの監視カメラで撮影された映像データを記録するレコーダ50と、監視カメラ群40中の監視カメラで撮影されたリアルタイムの映像データまたはレコーダ50に記録された映像データを表示する表示装置110とがIPネットワーク30を介して接続されている。
【0006】
表示装置110は、表示制御部111と、表示制御部111で制御された映像データを表示する表示部112とを有する。
【0007】
表示制御部111は、IPネットワーク30とのIPパケットの送受信を行うネットワークインタフェース部113と、制御プログラムを格納するROM114と、ROM114に格納された制御プログラムを実行する際に一時的にIPパケットのデータや制御プログラムを記憶するRAM115と、RAM115に記憶された制御プログラムを実行するCPU116と、ネットワークインタフェース部113から受信された映像データを構成する画像データのIPパケットをデコードするデコード部117と、デコード部117でデコードされた画像データのサイズや画質を調整する画像処理部118と、画像処理部118で処理された画像データを記憶するフレームメモリ119と、フレームメモリ119に記憶された画像データを読み出して表示部112に出力する読み出し部120と、ネットワークインタフェース113〜読み出し部120間でデータを伝送するバス121とを有する。
【0008】
この監視システム100では、監視カメラ群40の第1監視カメラ40−1〜第n監視カメラ40−nで撮影が行われると、撮影された映像データがIPネットワーク30を介してレコーダ50に記録されるとともに、表示装置110に表示されることによりユーザに映像が提供される。
【0009】
表示装置110では、監視カメラ群40の第1監視カメラ40−1〜第n監視カメラ40−nで撮影された映像データ、またはレコーダ50に記録された映像データを構成する画像データのIPパケットがIPネットワーク30を介して受信されると、表示制御部111のネットワークインタフェース部113で取得される。
【0010】
表示制御部111では、ROM114に格納されている制御プログラムがRAM115に展開され、CPU116の制御によりこの制御プログラムが実行されることによりネットワークインタフェース部113で取得されたIPパケットからヘッダ部が分離され、ペイロード部の画像データが取得される。
【0011】
取得された画像データはデコード部117でデコードされ、画像処理部118で画像サイズや画質の調整が行われた後、フレームメモリ119に記憶される。
【0012】
フレームメモリ119に記憶された画像データは、読み出し部120により読み出されることにより表示部112に表示される。
【0013】
以上の表示制御部111の処理は、すべてバス121を介して情報が伝送されることにより行われる。
【0014】
また、この表示装置110では、第1監視カメラ40−1〜第nカメラ40−nで撮影された映像データをリアルタイムで表示するのみではなく、ユーザの要求によりレコーダ50に記録された映像データをタイムラプスで再生することなどが行われる。
【0015】
そのため表示装置110は、n台の監視カメラで撮影された映像データをリアルタイムで受信する能力に加え、レコーダ50に記録された映像データを受信する能力も有することが要求される。
【0016】
さらに、近年の監視システムでは監視映像のクオリティの向上が要求されている。
【0017】
これらの要求に対応すると表示装置110内に設けられた表示制御部111の内部バス121の帯域消費量が多くなるため、表示装置110は高ビットレートでの受信を可能にする必要がある。
【0018】
しかし、安定した受信処理を行うために余裕を持って高ビットレートでの受信を可能にしようとすると表示装置110が高価になり、ユーザにとって負担が大きいという問題があった。
【0019】
この問題を解決するため、特許文献1または特許文献2に記載の技術がある。
【0020】
特許文献1に記載の技術は、IPネットワークを通じて映像音声信号を送受信するIPパケットの送受信装置に関するものである。
【0021】
この特許文献1に記載のIPパケット送受信装置では、受信したIPパケットがデュアルポートメモリ上の予めCPUにより指定されたアドレスまたはFIFO(First-In First-Out)方式のメモリに書き込まれる。
【0022】
これらのメモリに書き込まれたIPパケットは、CPUにより映像・音声情報のIPパケットであるか否かが判定され、映像・音声情報のIPパケットでなければCPUで処理が行われ、映像・音声情報のIPパケットであればメモリのCPU側とは異なるポートから読み出されてデコード処理が行われる。
【0023】
このIPパケット処理装置により、メモリのCPU側のバス使用率を低減させることができる。
【0024】
また、特許文献2に記載のパケット送受信装置では、ネットワークインタフェースのパケット受信部にパケット解析部が設けられ、このパケット解析部でパケットが映像・音声情報であると判断されたときには切替スイッチによりデコーダに出力され、映像・音声情報がCPUに全く流れないように構成されている。
【0025】
このIPパケット処理装置により、CPUに必要なIPパケットのみがバスに流れ、映像・音声情報のIPパケットはCPUに流れないため、バスの使用帯域を大きく低減させることができる。
【特許文献1】特開2004−112192号公報
【特許文献2】特開2005−341107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかし、特許文献1のIPパケット送受信装置を監視システムで使用する場合、接続される監視カメラの台数やレコーダの台数が増えると、それに比例してIPパケットを書き込むメモリの容量も大きくしなければならず、システム全体の規模を制限しなければならない可能性があるという問題があった。
【0027】
また、IPパケットを受信してメモリへ書き込むごとにCPUへ通知が行われるため、ネットワークインタフェースが高速化するに連れてCPUへ通知する頻度も多くなり、CPUの処理能力を高くする必要があるという問題があった。
【0028】
また、特許文献2のIPパケット送受信装置を監視システムで使用する場合は、接続される複数の監視カメラがそれぞれ異なる製造メーカ品であるようなときに受信するIPパケットのペイロードに含まれるヘッダ内容が必ずしも同一ではないため、それぞれのヘッダに応じたIPパケット解析処理が必要になり、パケット受信部に設けられたパケット解析部の処理が煩雑になるという問題があった。
【0029】
また、IPパケットが例えばIPsec(Security Architecture for Internet Protocol)などにより暗号化されていたり、RFC(Request For Comment)で規定されたIPトンネル技術が用いられていたりするときには、映像・音声情報のパケットか否かを判定するための処理が非常に複雑になり、パケット解析部で対応できなくなるおそれがあるという問題があった。
【0030】
仮にパケット解析部で対応できなかった場合、映像・音声情報のIPパケットもすべてCPU側に流れてしまい、バスの使用帯域を低減させる効果を得ることができないという問題があった。
【0031】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ネットワークを介して接続されるコンテンツ供給装置の台数が増えたときやネットワークインタフェースが高速化されたとき、または、パケットごとのヘッダ情報が異なるときやパケットが暗号化されていたりトンネル技術が用いられたりしているときでも、内部のCPUに接続されるバスの使用率を圧迫することなく受信した映像情報または音声情報をデコードして出力することが可能なネットワークデコーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するための本発明のネットワークデコーダ装置は、ネットワーク(30)を介してコンテンツ供給装置(40)と接続され、前記コンテンツ供給装置(40)から送信されたパケット化された圧縮コンテンツデータを受信してデコード処理した後、得られたコンテンツデータを出力するネットワークデコーダ装置(11)において、第1の内部バス(21)とこの第1の内部バス(21)よりもデータ転送レートの高い第2の内部バス(22)とをそれぞれ有し、前記第1の内部バス(21)には、前記コンテンツ供給装置(40)から送信されたパケット化された圧縮コンテンツデータを受信するデータ受信手段(13)と、前記受信されたパケット化された圧縮コンテンツデータから圧縮コンテンツデータを抽出するデータ抽出手段(16b)と、前記抽出された圧縮コンテンツデータを入力してデコード処理し、得られたコンテンツデータを出力するデコード手段(17)の入力側とがそれぞれ接続されると共に、前記第2の内部バス(22)には、前記デコード手段(17)の出力側と、前記デコード手段(17)の出力側から出力されたコンテンツデータを記憶する記憶手段(19)と、前記記憶されたコンテンツデータを読み出して出力する読み出し手段(20)とがそれぞれ接続されて構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明のネットワークデコーダ装置によれば、ネットワークを介して接続されるコンテンツ供給装置の台数が増えたときやネットワークインタフェースが高速化したとき、または、パケットごとのヘッダ情報が異なるときやパケットが暗号化されていたりトンネル技術が用いられたりしているときでも、内部のCPUに接続されるバスの使用率を圧迫することなく受信した映像情報または音声情報をデコードして出力することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
〈一実施形態による監視システムの構成〉
本発明の一実施形態によるネットワークデコーダ装置としての表示制御部11を有する表示装置10を用いた監視システム1を、図1を参照して説明する。
【0035】
本実施形態による監視システム1は、表示装置10と、この表示装置10にIPネットワーク30を介して接続されているコンテンツ供給装置としての複数の監視カメラ40−1〜40−nを有する監視カメラ群40と、レコーダ50と、携帯端末60とを備えている。
【0036】
表示装置10は、表示制御部11と、表示制御部11で制御されたコンテンツデータである画像データを表示する表示部12とを有する。
【0037】
表示制御部11は、ネットワークインタフェース13と、ROM14と、RAM15と、CPU16と、デコード部17と、画像処理部18と、記憶手段としてのフレームメモリ19と、読み出し部20と、ネットワークインタフェース13〜画像処理部18間でデータを伝送する第1バスとしての低速バス21と、デコード部17〜読み出し部20の間でデータを伝送する低速バス21よりも高速データ転送可能な第2バスとしての高速バス22とを有する。
【0038】
ネットワークインタフェース13は、IPネットワーク30を介して監視カメラ群40、レコーダ50、および携帯端末60とIPパケットを送受信する送受信部13aと、受信されたIPパケットをフィルタリングにより通過させるか否か判断するパケットフィルタリング部13bを有する。
【0039】
このネットワークインタフェース13は、例えばIEEE802.3で規定されている有線または無線を用いたPHY(physical layer)およびMAC(Media Access Control)を搭載している。
【0040】
ROM14は、IPネットワークプロトコル制御や機器制御を行うための制御プログラムを保持する。
【0041】
RAM15は、SRAM(Static Random Access Memory)、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)、またはDDR(Double Data Rate)メモリなどの揮発性メモリであり、ROM14で保持されている制御プログラムの実行用に使用する。
【0042】
CPU16は、ROM14に保持されている制御プログラムに基づいて、ネットワークインタフェース13のパケットフィルタリング部13bにIPネットワーク30から受信されたIPパケットの通過を許可する送信元IPアドレスまたは送信元MACアドレスを設定する通過パケット設定部16aと、パケットフィルタリング部13bで通過が許可されたIPパケットから映像データを抽出するデータ抽出部16bと、映像データを構成する画像データの画像処理部18における処理を制御する画像処理制御部16cと、IPネットワーク30に送出するデータをパケット化するパケット化処理部16dと、パケット化処理部16dでパケット化されたデータを携帯端末60に転送する画像転送部16eとを有する。
【0043】
これらのROM14、RAM15、およびCPU16は一般的に利用されている構成要素であり、例えばLINUXやUNIX(登録商標)ベースのOS上で動作するときには、ROM14に保持されている制御プログラムがRAM15に展開され、このRAM15に展開された制御プログラムを基にCPU16により制御が実行される。
【0044】
デコード部17は、CPU16のデータ抽出部16bで抽出された映像データをデコードする。
【0045】
画像処理部18は、デコード部17でデコードされた映像データを構成する各画像データを、CPU16の画像処理制御部16cの制御に基づいて、画像サイズの縮小や白黒調整、γ補正等の画質調整などの画像処理を行う。
【0046】
フレームメモリ19は、画像処理部18で処理された画像データを記憶する。
【0047】
読み出し部20は、フレームメモリ19に記憶された画像データを水平・垂直同期信号に応じて読み出し、表示部12に送出する。
【0048】
低速バス21は、IPネットワーク30から受信した圧縮された画像データ、およびデコード部17でデコードされた後画像処理部18で縮小処理された画像データを伝送するために必要な通信速度を有し、例えば動作周波数58MHz、データ幅32ビットである。
【0049】
高速バス22は、デコード部17でデコードされデータ量の多い画像データを伝送するために必要な通信速度を有し、例えば動作周波数108MHz、データ幅32ビットである。
【0050】
レコーダ50は、監視カメラ群40の各監視カメラで撮影された映像データをIPネットワーク30を介して受信し記録するとともに、表示装置10からの再生指示を受信したときに表示装置10に出力する。
【0051】
携帯端末60は、表示装置10でデコードされ縮小された映像データを必要に応じて取得して表示する。
【0052】
〈一実施形態による監視システムの動作〉
本実施形態による監視システム1の動作について説明する。
【0053】
図5は、監視システム1内の表示装置10に設けられたCPU16の制御処理を示すフローチャートである。
【0054】
表示装置10のCPU16では、予め、通過パケット設定部16aにより後述するパケットフィルタリング部13bでのフィルタリングに用いる送信元IPアドレスおよび送信元MACアドレスの設定が行われ、さらに、画像処理制御部16cにより画像処理部18での画像サイズの調整に用いる画像サイズの設定が行われる(S1、S2)。
【0055】
フィルタリングの際に通過を許可するIPパケットの送信元IPアドレスおよび送信元MACアドレスは、送信元IPアドレステーブルおよび送信元MACアドレステーブルとしてネットワークインタフェース13のパケットフィルタリング部13bに設定される。
【0056】
送信元IPアドレステーブルおよび送信元MACアドレステーブルの設定について図2(a)および(b)のテーブルを参照して説明する。
【0057】
通過を許可するIPパケットの送信元IPアドレステーブルおよび送信元MACアドレステーブルの値は、初期値はすべて「0」とする。このとき、すべてのIPパケットは通過が禁止される。
【0058】
通過を許可する1番目の送信元IPアドレスとして例えばIPアドレス「192.168.0.1」が設定されるときは、CPU16の通過パケット設定部16aにより送信元IPアドレステーブル内の「番号1」の値としてこのIPアドレスが格納されることにより設定される。
【0059】
また、通過を許可する2番目の送信元IPアドレスとして例えばIPアドレス「192.168.0.46」が設定されるとき、さらに3番目の送信元IPアドレスとして例えばIPアドレス「192.168.0.100」が設定されるときは、CPU16の通過パケット設定部16aにより送信元IPアドレステーブル内の「番号2」または「番号3」の値としてこれらのIPアドレスがそれぞれ図2(a)のように格納されることにより設定される。
【0060】
これらの設定は、送信元IPアドレステーブル内の所望の番号の値を「0」にすることにより、通過許可の設定が解除される。
【0061】
また、通過を許可するIPパケットの送信元MACアドレステーブルの設定についても同様の処理で設定が行われ、例えば図2(b)に示すように送信元MACアドレステーブル内の「番号1」の値としてMACアドレス「00.23.45.67.89.AB」が格納されることにより設定される。
【0062】
送信元MACアドレスの設定の解除も、送信元IPアドレスの設定の解除と同様に、テーブル内の所望の番号の値を「0」にすることにより、通過許可の設定が解除される。
【0063】
これらの設定において、「*」を用いて例えばIPアドレス「192.168.0.*」と格納することにより、「192.168.0.1」〜「192.168.0.255」の送信元IPアドレスの通過を許可するように設定することも可能である。
【0064】
また、例外として、送信元アドレスがブロードキャストアドレス(IPアドレスのときは「255.255.255.255」、MACアドレスのときは「FF.FF.FF.FF」)のときは、テーブルの設定内容にかかわらず通過が許可される。
【0065】
さらに、図2(a)および(b)の送信元IPアドレステーブルおよび送信元MACアドレステーブルとは別に、図3(a)および(b)に示すようにマルチキャストによるIPパケットのフィルタリングを行うためのマルチキャストアドレステーブルを設定しておいてもよい。
【0066】
マルチキャストアドレステーブルは、IPアドレス「224.0.0.0」〜「239.255.255.255」の範囲で通過を許可するIPアドレスを設定することが可能である。図3(a)に示すマルチキャストIPアドレステーブルにおいては「番号1」の値として「224.0.0.101」が設定され、「番号2」の値として「224.0.0.23」が設定されており、マルチキャストアドレスがこれらのIPアドレスのときには通過が許可される。
【0067】
また、図3(b)に示すマルチキャストMACアドレステーブルにおいては、IPパケットの通過に関する設定は行われていない。
【0068】
これらのアドレステーブルの設定が行われた状態で、まず、監視カメラ群40に含まれる第1監視カメラ40−1〜第n監視カメラ40−nで撮影が行われると、撮影された映像データのIPパケットがIPネットワーク30を介してレコーダ50および表示装置10に送信される。
【0069】
レコーダ50では、受信されたIPパケットが記録される。
【0070】
表示装置10では、表示制御部11のネットワークインタフェース13で監視カメラ群40から送信された映像データのIPパケットが受信される。
【0071】
ネットワークインタフェース13で受信された映像データのIPパケットは、上述したアドレステーブルの設定に基づいて、パケットフィルタリング部13bで通過させるか否かが判断されフィルタリングが行われる。
【0072】
パケットフィルタリング部13bで通過が許可された映像データのIPパケットは、低速バス21を経由してCPU16のデータ抽出部16bに送出される。
【0073】
データ抽出部16bでは、IPパケットが取得されたか否かが監視されており(S3)、IPパケットが取得されると、IPトンネル技術によりカプセル化されているときにはデカプセル化が行われ、また、IPsecによりによる暗号化が施されているときには暗号化を解除する処理が行われる。
【0074】
このとき、暗号化を解除する処理は複雑であるため、IPsec用のコプロセッサ(図示なし)を搭載して高速に処理できるようにしてもよい。
【0075】
次にデータ抽出部16bでは、これらの処理が行われたIPパケットに映像データの圧縮データが含まれるか否かが判断され(S4)、含まれると判断されたとき(S4の「YES」)はIPパケットからヘッダ部が除去され映像データの圧縮データが抽出される。
【0076】
このとき、第1監視カメラ40−1〜第n監視カメラ40−nのカメラがそれぞれ異なるメーカ品であるときには制御プロトコルやIPパケット構成などが異なることがある。そのため、予め図4に示すように監視カメラごとのIPアドレスや制御プロトコルが格納されたプロトコルテーブルが予めROM14またはRAM15に記憶され、このプロトコルテーブルの設定内容に基づいてデータ抽出部16bでIPパケットからヘッダ部が除去され、ペイロード部である圧縮データが抽出される。
【0077】
図4においては、IPアドレスが「192.168.0.1」の第1監視カメラ40−1は、ヘッダ数が4バイトのA仕様であることが示されている。同様に、IPアドレスが「192.168.0.46」の第2監視カメラ40−2は、ヘッダ数が12バイトのB仕様であることが示され、IPアドレスが「192.168.0.100」の第3監視カメラ40−3は、ヘッダがないC仕様であることが示されている。
【0078】
これらの仕様に基づいて抽出される圧縮データはJPEG方式やMPEG方式により圧縮されたものなどがあるが、ここではJPEG方式の場合について説明する。
【0079】
抽出されたJPEG方式により圧縮された画像データは、低速バス21を経由してデコード部17に送出される(S5)。
【0080】
デコード部17では、JPEG方式で圧縮された画像データがデコードされ、YCbCr形式のピクセルデータが画像処理部18に送出される。
【0081】
このときデコード部17では、必要に応じて、監視カメラの撮影画像で主に用いられているサンプリング比Y:Cb:Cr=4:2:0または4:2:1の画像データをより高画質のY:Cb:Cr=4:2:2の画像データで表示するための変換が施されるようにしてもよい。
【0082】
画像処理部18では、CPU16の画像処理制御部16cの制御により、取得した画像データの、ステップS2で予め設定された画像サイズへのサイズ変更や画質調整などが行われる。このとき、特定の監視カメラの画像データのみが縮小されるように設定されていてもよい。
【0083】
画像データのサイズ変更では、ステップS2の設定に基づいて、例えば原画像の1/2、1/4、1/8、または1/16などへの縮小が行われることにより、VGAサイズからQVGAサイズへの変更や、SXGAサイズからVGAサイズへの変更が行われる。
【0084】
また、画質調整では、白黒調整、γ補正などが行われる。このとき、JPEGエンコードを利用してもよい。
【0085】
画像処理部18でサイズ変更や画質調整などの画像処理が行われた画像データは、高速バス22を経由してフレームメモリ19に送出されて記憶される。
【0086】
フレームメモリ19に記憶された画像データは、水平・垂直同期信号に応じて読み出し部20により読み出されて表示部12に送出される。
【0087】
表示部12では、取得されたYCbCr形式の画像データがRGB形式に変換され、ビデオエンコードバッファにより液晶パネルなどの表示装置に表示させる。または、NTSC方式等のテレビ信号に変換してテレビ装置に表示させてもよい。
【0088】
また、ステップS4においてIPパケットに映像データの圧縮データが含まれないと判断されたときは(S4の「NO」)制御コマンドであると判断され、コマンドに応じた制御が行われる(S6)。
【0089】
コマンドに応じた制御が行われた後、表示処理が終了していなければ(S7の「NO」)ステップS3に戻り処理が繰り返される。
【0090】
ステップS5において画像データがデコード部17に送出されデコードされると、CPU16の画像転送部16eにおいて、画像処理された画像データの転送先が指定されているか否かが判断される(S8)。
【0091】
本実施形態においては、画像処理された画像データの転送先として携帯端末60が指定されており(S8の「YES」)、画像処理部18で縮小された画像データがCPU16の画像転送部16eの制御によりネットワークインタフェース13からIPネットワーク30を介して携帯端末60に転送される(S9)。
【0092】
このとき、転送先である携帯端末60のIPアドレスはROM14に予め設定されており、画像転送部16eによりこのROM14に設定されている転送先のIPアドレスが取得されて転送の処理が行われる。
【0093】
転送される縮小された画像データはビットレートが低いため、低速バス21で伝送可能である。
【0094】
ステップS8において画像データの転送先が指定されてなく(S8の「NO」)、且つ表示処理が終了していなければ(S7の「NO」)、ステップS3に戻り処理が繰り返される。
【0095】
携帯端末60に画像データが転送されることにより、ユーザは監視カメラで撮影された画像を携帯端末60で確認することが可能になる。
【0096】
上記の処理は、表示装置10で表示処理終了の指示を受信するまで繰り返される(S7)。
【0097】
また、ユーザの操作によりレコーダ50に記録された映像データがタイムラプスで再生される際も、表示装置10において上記と同様の処理が行われる。
【0098】
以上の実施形態によれば、表示制御部は、CPUには接続されずデコード後の画像サイズの大きいデータを伝送する高速バスと、CPUに接続され且つ画像サイズの小さい圧縮されたデータを伝送する低速バスとが設けられているため、ネットワークを介して接続されるカメラ装置の台数が増えたときやネットワークインタフェースが高速化されたときにもCPUに接続されるバスの使用率を圧迫することなく、受信したIPパケットの表示制御処理を行うことができる。
【0099】
また、このように高速バスと低速バスとを設けることで、CPUに接続されるバスの使用率を圧迫することなく、暗号化されたIPパケットの復号、トンネル技術を用いる際のカプセル化解除、またはIPパケットのヘッダ情報の判定などの複雑な処理をCPUで行うことが可能になる。
【0100】
本実施形態においては、ネットワークデコーダ装置として表示装置に設けられた表示制御部に適用した場合について説明したが、これには限定されず、コンテンツデータとして音声データを用いるスピーカなどに設けられる再生制御部に適用することも可能である。
【0101】
また、縮小された画像データの転送先として携帯端末を用いた場合について説明したが、これには限定されず、パーソナルコンピュータなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明の一実施形態によるネットワークデコーダ装置としての表示制御部を有する監視システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態によるネットワークデコーダ装置としての表示制御部に設定される(a)送信元IPアドレステーブルおよび(b)送信元MACアドレステーブルの設定例である。
【図3】本発明の一実施形態によるネットワークデコーダ装置としての表示制御部に設定される(a)マルチキャストIPアドレステーブルおよび(b)マルチキャストMACアドレステーブルの設定例である。
【図4】本発明の一実施形態によるネットワークデコーダ装置としての表示制御部に設定されるプロトコルテーブルの設定例である。
【図5】本発明の一実施形態によるネットワークデコーダ装置としての表示制御部のCPUの動作を示すフローチャートである。
【図6】従来の監視システムの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0103】
1…監視システム
10…表示装置
11…表示制御部
12…表示部
13…ネットワークインタフェース
13a…送受信部
13b…パケットフィルタリング部
14…ROM
15…RAM
16…CPU
16a…通過パケット設定部
16b…データ抽出部
16c…画像処理制御部
16d…パケット化処理部
16e…画像転送部
17…デコード部
18…画像処理部
19…フレームメモリ
20…読み出し部
21…低速バス
22…高速バス
30…IPネットワーク
40…監視カメラ群
40−1…第1監視カメラ
40−2…第2監視カメラ
40−3…第3監視カメラ
40−n…第n監視カメラ
50…レコーダ
60…携帯端末


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネットワークを介してコンテンツ供給装置と接続され、前記コンテンツ供給装置から送信されたパケット化された圧縮コンテンツデータを受信してデコード処理した後、得られたコンテンツデータを出力するネットワークデコーダ装置において、
第1の内部バスとこの第1の内部バスよりもデータ転送レートの高い第2の内部バスとをそれぞれ有し、
前記第1の内部バスには、
前記コンテンツ供給装置から送信されたパケット化された圧縮コンテンツデータを受信するデータ受信手段と、
前記受信されたパケット化された圧縮コンテンツデータから圧縮コンテンツデータを抽出するデータ抽出手段と、
前記抽出された圧縮コンテンツデータを入力してデコード処理し、得られたコンテンツデータを出力するデコード手段の入力側とがそれぞれ接続されると共に、
前記第2の内部バスには、
前記デコード手段の出力側と、
前記デコード手段の出力側から出力されたコンテンツデータを記憶する記憶手段と、
前記記憶されたコンテンツデータを読み出して出力する読み出し手段とがそれぞれ接続されて構成されたことを特徴とするネットワークデコーダ装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−300386(P2007−300386A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−126566(P2006−126566)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Linux
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】