説明

ネットワーク複合機

【課題】複雑な操作を必要とすることなく、簡単にファイル形式変換を行うことができるネットワーク複合機を提供する。
【解決手段】外部のパソコンからプリント実行指示があった場合、そのプリント実行指示でファイル形式変換の指示があったか否かを判定し(ステップ102)、ファイル形式変換指示があった場合には、パソコンから受信したPDLデータをラスタライズ処理してイメージデータを作成し、MMR符号化した後、画像メモリに蓄積する(ステップ106、107)。次に、画像メモリに蓄積されたデータを指定されたファイル形式に変換した後、パソコンの指定されたフォルダに転送する(ステップ108、109)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーソナルコンピュータ(以下、パソコンという)などの外部装置とLANなどの通信ネットワークを介して接続されるとともに、画像情報のファイル形式を変換する機能を備えたネットワーク複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
ネットワーク複合機は、本来のコピー機能、ファクシミリ機能に加えて、通信ネットワークを介して接続されたパソコン等から送られる画像情報を他のファクシミリ装置へ送信する機能、その画像情報をプリントアウトするプリンタ機能及びメール送信機能を備えている。
【0003】
このようなネットワーク複合機において、他のファクシミリ装置へパソコンからの画像情報を伝送する場合、パソコンからプリンタに送られるページ記述言語(PDL)で表された画像データと宛先情報(送信相手先のファクシミリ番号)などが盛り込まれたPJLデータとを通信データとしてパソコンから入力し、そのPDLデータを送信相手先のファクシミリ装置の能力に応じたイメージデータに変換し、変換したイメージデータを送信することが一般的である。
【0004】
また、メール送信する場合は、パソコンから受け取った画像データを電子メールに添付可能なファイル形式(例えば、TIFF形式ファイル)に変換して電子メール用の添付ファイルを作成し、作成した添付ファイルを電子メールに添付してインターネット上の宛先(ホスト装置)に送信している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、パソコンで処理するデータとしては、様々なファイル形式の文書や画像が多数あり、あるデータをこのような様々なファイル形式に変換する場合には、それぞれのファイル形式に対応するアプリケーションソフトウェアが必要である。しかしながら、ファイル形式は多様であり、全てのフォーマットに対応できるように、アプリケーションソフトウェアを用意することは困難である。
【0006】
また、アプリケーションソフトウェアのバージョンアップ等も頻繁に行われており、このバージョンアップでファイル形式が変更されることも多くあり、ユーザが個々のパソコンで対応することが困難である。
さらに、ユーザがアプリケーションソフトを使用してファイル形式変換を行う場合、ユーザはそれぞれのアプリケーションソフトウェアの操作に習熟しなければ、簡単なファイル形式変換も行うことができなかった。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたもので、パソコン上に多くのアプリケーションソフトウェアをインストールすることなく、また、ユーザが複雑な操作を必要とすることなく、簡単にファイル形式変換を行うことができるネットワーク複合機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記のように、ネットワーク複合機は、スキャンした画像データあるいは外部から入力されたPDFデータ等を特定のアプリケーション・ファイルの形式にファイル変換する機能を備えており、本発明はネットワーク複合機のこの高機能、高品位のデータ処理を利用してファイル形式変換を行うものである。
【0009】
すなわち、請求項1に係る発明のネットワーク複合機は、転送先、ファイル形式が登録されるファイル変換情報記憶手段と、画像送信手段と、画像蓄積手段と、画像記録手段と、上記各部を制御する制御手段とを備えた通信ネットワークに接続可能なネットワーク複合機であって、上記通信ネットワークに接続された外部装置からファイル変換を指示したプリント実行の指示があったとき、上記制御手段がプリント情報の符号化画像を上記画像蓄積手段に蓄積し、符号化画像を上記ファイル変換情報記憶手段に登録されたファイル形式に変換した後、上記ファイル変換情報記憶手段に記憶された転送先に転送することを特徴とする。
【0010】
また、請求項2に係る発明のネットワーク複合機は、請求項1に記載のネットワーク複合機において、上記制御手段が、上記外部装置がファイル変換情報記憶手段に転送先として登録されているか否かを判別し、登録されている場合のみ、上記ファイル形式変換及び転送を行うことを特徴とする。
【0011】
さらに、請求項3に係る発明のネットワーク複合機は、請求項1または請求項2に記載されたネットワーク複合機において、上記ファイル変換情報記憶手段にプリントの可否の設定が可能であり、プリント可のとき、上記制御手段が上記画像記録手段により上記プリント情報を記録することを特徴とする。
【0012】
また、請求項4に係る発明のネットワーク複合機は、請求項1または請求項2に記載されたネットワーク複合機において、上記ファイル変換情報記憶手段に送信先を登録することが可能であり、上記ファイル変換情報記憶手段に送信先が登録されているとき、上記制御手段が上記画像蓄積手段に蓄積されたプリント情報を上記画像送信手段により送信先に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1、請求項2に係る発明のネットワーク複合機によれば、通信ネットワークに接続されたパソコン等からファイル変換を指示したプリント実行の指示を行えば、プリント情報が所望のファイル形式に変換されて自機パソコンの所定フォルダに転送されるので、パソコン上に特にアプリケーションソフトウェアをインストールすることなく、また、複雑な操作を必要とすることなく、簡単にファイル形式変換を行うことが可能となる。
【0014】
また、請求項3に係る発明のネットワーク複合機によれば、ファイル変換情報記憶手段のプリント設定を可にしておけば、プリント情報が記録されるので、ファイル形式変換とともに、プリント出力も行うことができる。
【0015】
さらに、請求項4に係る発明のネットワーク複合機によれば、ファイル変換情報記憶手段にFAX番号やメールアドレス等の送信先を記録しておけば、プリント情報がファクシミリ送信あるいはメール送信されるので、ファイル形式変換とともに、外部への送信も行うことができる。
【実施例】
【0016】
以下、本発明のネットワーク複合機の実施例について、図面を用いて説明する。図1はネットワーク複合機を備えたシステムのネットワーク構成例を示す図であり、図2はネットワーク複合機のハードウェア構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すネットワーク構成図において、1はネットワーク複合機、2、3、4・・・はパソコン、5は公衆交換電話網(PSTN)、6はLAN(Local Area Network)、7はインターネット網である。ネットワーク複合機1はコピーモード、プリンタモード、ファクスモードの各機能を備えるとともに、メール送信機能も備え、PSTN5及びLAN6に接続されており、このLAN6に複数のパソコン2、3、4・・・が接続されている。また、このLAN6はインターネット網7にも接続されており、ネットワーク複合機1はこのインターネット網7を介してメールの送受信を行うことが可能である。
【0018】
図2はネットワーク複合機1の制御系の構成を示す概略ブロック図であり、図に示すように、ネットワーク複合機1はCPU11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、表示・操作部14、読取部15、画像メモリ16、記録部17、コーデック18、モデム19、ネットワーク制御ユニットNCU20及びLANインターフェース(I/F)21から構成され、各部がバス22を介して接続されている。
【0019】
CPU11はバス22を介してネットワーク複合機1のハードウェア各部を制御するとともに、ROM12に記憶されたプログラムに基づいて各種のプログラムを実行し、ROM12はネットワーク複合機の動作に必要な種々のプログラムや操作メッセージ等を予め記憶している。また、RAM3はSRAM等で構成され、プログラムの実行時に発生する一時的なデータを記憶するとともに、変換ファイル転送先、変換ファイル形式等が登録されるファイル変換情報記憶手段としての、プライベートボックス記憶領域23を有している。
【0020】
表示・操作部14は、ネットワーク複合機の動作状態を表示したり、種々の機能の操作画面の表示を行う表示部と、ネットワーク複合機を操作するための多数の操作キーとから構成されている。読取部15はオートドキュメントフィーダー(ADF)やフラットベッドスキャナ(FBS)等の読取り用原稿載置台を備え、CCD等を利用したスキャナで原稿を読み取り、白黒2値に変換したドットイメージデータを出力する。
【0021】
また、画像メモリ16は、DRAM等を用いて構成され、送信すべきイメージデータまたは受信したイメージデータあるいは読取部15で読み取ったイメージデータを記憶し、記録部17は電子写真方式等のプリンタ装置を備え、受信したデータ、コピー原稿データあるいは外部のパソコンから送信されたプリントデータをプリントアウトする。
【0022】
コーデック18は所定のプロトコルに対応して符号化・復号するものであり、読み取った原稿の画像データを送信するためにMH、MRまたはMMR方式により符号化し、外部から受信した画像データを復号するとともに、電子メールに添付可能なファイルとして一般的に利用される画像フォーマットであるTIFF方式等にも対応して符号化、復号する。
【0023】
モデム19はバス22に接続されており、ファクシミリ通信が可能なファクスモデムとしての機能を有し、このモデム19は同様にバス22に接続されたNCU20と接続されている。NCU20はアナログ回線の閉結及び開放の動作を行うハードウェアであり、必要に応じてモデム19をPSTN5に接続する。
【0024】
また、LANインターフェース21はLAN6に接続され、外部のパソコンからのデータあるいはインターネット網7からの信号をLAN6を介して受信する一方、LAN6に対して信号やデータを送信するものであり、信号変換やプロトコル変換などのインターフェース処理を実行する。
【0025】
ネットワーク複合機1は上記のような構成を備えており、ファクシミリ送信時には、原稿の画像データが読取部15で読み取られ、コーデック18で圧縮されて画像メモリ16に蓄積される。この圧縮された画像データが画像メモリ16から読み出されてモデム19で変調され、NCU20からPSTN5を通して通信相手先に送信される。また、ファクシミリ受信時には、受信した画像データがモデム19で復調され、画像メモリ16に蓄積された後、コーデック18で復号されて記録部17により印刷される。
【0026】
一方、上記のプライベートボックス記憶領域23のプライベートボックスには、図3に示すように、転送先としてのホスト名及びフォルダ名、変換ファイル形式、FAX番号やメールアドレス等の送信先、プリントのオン、オフ設定を記憶する領域が設けられており、表示・操作部14の表示部に表示されるプライベートボックス登録画面からユーザが入力することにより、それぞれの設定をRAM13に登録することができる。
【0027】
そして、パソコン2等からファイル形式変換を指示してPCプリントを実行すると、プリント指示された画像データがネットワーク複合機1によりファイル形式変換処理され、自機のパソコンの設定したフォルダへの転送を受けることが可能である。
以下、ファイル形式変換を指示してPCプリントを実行した場合のネットワーク複合機1の作用を図4のフローチャートにより説明する。
【0028】
ネットワーク複合機1のCPU11は、常時、LAN I/F21を介してパソコン2等からプリント実行指示があったか否かを判定しており(ステップ101)、例えば、パソコン3からプリント実行指示があった場合には、CPU11はプリント実行指示でファイル形式変換指示があったか否かの判定を行う(ステップ102)。
なお、上記のファイル変換を指示したPCプリントの実行は、例えば、図5に示すような、印刷指示画面でオプションをクリックし、表示されたオプション画面でファイル変換を指定することにより行うことが可能である。
【0029】
ステップ102において、ファイル形式変換指示がないと判定した場合には、CPU11は通常のプリント処理を行う(ステップ103)。一方、ステップ102において、ファイル形式変換指示があったと判定した場合には、CPU11は、プリント実行を指示したパソコン3のホスト名がプライベートボックスに登録されているか否かを判定する(ステップ104)。そして、プリント実行を指示したパソコンのホスト名がプライベートボックスに登録されていないと判定した場合には、CPU11は「ホスト名がプライベートボックスに登録されていません。」等のエラーメッセージをパソコン3に返送する等のエラー処理を行う(ステップ105)。
【0030】
一方、ステップ104において、プリント実行を指示したパソコン3のホスト名がプライベートボックスに登録されていると判定した場合には、パソコン3から受信したページ記述言語で表された画像情報(PDLデータ)をラスタライズ処理してイメージデータを作成し、作成したイメージデータをコーデック18によりMMR符号化した(ステップ106)後、画像メモリ16に記憶する(ステップ107)。
【0031】
次に、CPU11は画像メモリ16に記憶された符号化データをコーデック18により該当するホスト名のプライベートボックスの「形式」欄に登録されているファイル形式、例えば、PDF形式に変換した(ステップ108)後、該当するホスト名のプライベートボックスの「フォルダ名」欄に登録されているフォルダ、例えば、「\\PC3\document」に転送する(ステップ109)。
【0032】
ファイルの転送が完了すると、次に、CPU11は該当するホスト名のプライベートボックスの「プリント」欄がオンになっているか否かを判定し(ステップ110)、「プリント」欄がオンになっている場合には、画像メモリ16に蓄積されている2値符号化データをコーデック18により復号し、記録部17に供給することにより、プリント処理を行う(ステップ111)。
【0033】
ステップ110において、プライベートボックスの「プリント」欄がオフになっていると判定した場合、あるいは、ステップ111でのプリント処理が完了した場合には、CPU11は、該当するホスト名のプライベートボックスの「送信先」欄に送信先が登録されているか否かを判定し(ステップ112)、送信先が登録されている場合には、登録された送信先にプリント情報を送信する(ステップ113)。
【0034】
例えば、送信先としてFAX番号が登録されている場合には、CPU11は登録されているFAX番号をモデム19、NCU20を制御してPSTN5に送出させ、通信が確立すると、画像メモリ16から2値符号化データを読み出し、必要に応じて相手機の符号化方式に合わせて符号化し直し、モデム19で変調した後、NCU20からPSTN5を通して通信相手先にFAX送信する。
【0035】
また、送信先としてメールアドレスが登録されている場合には、CPU11は画像メモリ16に記憶されている画像データをコーデック18によりプライベートボックスの形式欄に登録されているファイル形式、例えばPDFファイルまたはTIFFファイルに変換して電子メール用の添付ファイルを作成し、作成した添付ファイルを電子メールに添付してLAN I/F21を介してLAN6に送信する。
【0036】
以上のように、LAN6に接続されたパソコン2、3、4・・・等からファイル変換を指示したプリント実行の指示を行えば、プリント情報が所望のファイル形式に変換されて自機パソコンの所定フォルダに転送されるので、ユーザはパソコン上に特にアプリケーションソフトウェアをインストールすることなく、また、複雑な操作を必要とすることなく、簡単にファイル形式変換を行うことができる。
【0037】
また、プライベートボックスのプリント設定をオンにしておけば、プリント情報が記録されるので、ファイル形式変換とともに、プリント出力も同時に行うことができ、さらに、プライベートボックスにFAX番号やメールアドレス等の送信先を登録しておけば、プリント情報がファクシミリ送信あるいはメール送信されるので、ファイル形式変換と同時に外部への送信も可能となる。
【0038】
なお、上記の実施例では、プリント情報を変換する画像ファイル形式として、TIFF、PDF、JPEGを例として挙げたが、その他の様々なファイル形式をネットワーク複合機に登録し、プリント情報をそれらのファイル形式に変換することも可能である。
また、上記の実施例ではプリント情報をMMR方式により符号化して画像メモリ16に記憶したが、その他の符号化方式、例えばMHまたはMR方式により符号化することもできる。
【0039】
さらに、上記の実施例では、プライベートボックスに「送信先」欄や「プリント」欄を設け、ファイル形式変換と同時に、プリントやプリント情報の送信を行えるようにしたが、これらの欄を省略し、ファイル形式変換のみを行うようにすることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】ネットワーク複合機を備えたシステムのネットワーク構成例を示す図である。
【図2】本発明のネットワーク複合機のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】プライベートボックス記憶領域に記憶されるプライベートボックスの登録情報を示す図である。
【図4】ファイル変換処理を指示したPCプリント実行指示があった場合の作用を示すフローチャートである。
【図5】パソコンの表示画面に表示される印刷指示画面を示す図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ネットワーク複合機
2、3、4 パソコン
5 PSTN
6 LAN
7 インターネット網
11 CPU
12 ROM
13 RAM
14 表示・操作部
15 読取部
16 画像メモリ
17 記録部
18 コーデック
19 モデム
20 NCU
21 LAN I/F
22 バス
23 プライベートボックス記憶領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転送先、ファイル形式が登録されるファイル変換情報記憶手段と、画像送信手段と、画像蓄積手段と、画像記録手段と、上記各部を制御する制御手段とを備えた通信ネットワークに接続可能なネットワーク複合機であって、上記通信ネットワークに接続された外部装置からファイル変換を指示したプリント実行の指示があったとき、上記制御手段がプリント情報の符号化画像を上記画像蓄積手段に蓄積し、符号化画像を上記ファイル変換情報記憶手段に登録されたファイル形式に変換した後、上記ファイル変換情報記憶手段に記憶された転送先に転送することを特徴とするネットワーク複合機。
【請求項2】
請求項1に記載されたネットワーク複合機において、上記制御手段が、上記外部装置がファイル変換情報記憶手段に転送先として登録されているか否かを判別し、登録されている場合のみ、上記ファイル形式変換及び転送を行うことを特徴とするネットワーク複合機。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載されたネットワーク複合機において、上記ファイル変換情報記憶手段にプリントの可否の設定が可能であり、プリント可のとき、上記制御手段が上記画像記録手段により上記プリント情報を記録することを特徴とするネットワーク複合機。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載されたネットワーク複合機において、上記ファイル変換情報記憶手段に送信先を登録することが可能であり、上記ファイル変換情報記憶手段に送信先が登録されているとき、上記制御手段が上記画像蓄積手段に蓄積されたプリント情報を上記画像送信手段により送信先に送信することを特徴とするネットワーク複合機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−20025(P2006−20025A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−195311(P2004−195311)
【出願日】平成16年7月1日(2004.7.1)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】