説明

ノイズ除去回路

【課題】 電源系の異なる2つの回路間で信号の授受を行う装置において外乱により発生するノイズが後段の回路に取り込まれないように効果的に除去することができるノイズ除去回路を提供する。
【解決手段】 ANDゲート241および242は、ゲート信号Gに応じて、前段の回路から出力される相互に逆相関係のタイミング信号を通過させ、または遮断する。XORゲート230は、タイミング信号φa1およびφb1のレベルが一致していないとき、これらを通過させるゲート信号Gを出力し、レベルが一致しているとき、これらを遮断させるゲート信号Gを出力する。双安定回路250は、ANDゲート241および242を通過したタイミング信号φa2およびφb2を保持し、保持状態を示すタイミング信号φcを後段の回路に出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、別系統の電源が供給される2つの回路間に設けられるノイズ除去回路に関する。
【背景技術】
【0002】
オーディオ装置に用いられる信号処理装置において波形歪の少ない高品質のオーディオ再生を行うためには、波形再生処理のタイミング制御に用いるタイミング信号として、ジッタの少ないものを発生することが求められる。オーディオ装置以外の装置においても、同期用のタイミング信号に従って動作する装置が多々あるが、それらの中にもジッタの少ないタイミング信号を必要とするものが少なくない。この種の装置においてタイミング信号のジッタを劣化させる要因として電源電圧の変動がある。図7は、オーディオ装置に用いられる信号処理装置の構成例を示すものであるが、この例では、タイミング信号を発生するPLL(Phase Locked Loop;位相同期ループ)101と、このPLL101からのタイミング信号に従って動作する信号処理回路102とに共通の電源電圧VDD1およびVSS1が供給されている。このような構成においては、信号処理回路102のスイッチング動作によって電源電圧VDD1およびVSS1に変動が発生し、この電源電圧変動によりPLL101におけるタイミング信号のジッタが劣化する。なお、この電源電圧変動に伴うPLLのジッタの劣化に関しては例えば特許文献1に開示されている。この問題を解決するために、図8に示す回路構成が採用される場合がある。この構成では、PLL101には第1の電源から電源電圧VDD1およびVSS1が供給され、信号処理回路102には第1の電源とは異なる第2の電源から電源電圧VDD2およびVSS2が供給される。この構成によれば、信号処理回路102の動作によって電源電圧VDD2およびVSS2に変動が発生する状況下においても、PLL101は信号処理回路102とは別系統の電源から安定した電源電圧VDD1およびVSS1の供給を受けるので、ジッタの少ないタイミング信号を信号処理回路102に供給することができる。
【特許文献1】特開2001−24485号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、図8に示すように、PLL101と信号処理回路102とで電源を別系統にすると、静電ノイズ等の大きな外乱が装置に与えられた場合に、この外乱の影響によって、PLL101の電源電圧と信号処理回路102の電源電圧と間にレベル差が生じ、これによりPLL101から信号処理回路102に供給されるタイミング信号に偽信号が発生し、あるいは信号処理回路102がPLL101から入力されるタイミング信号のレベルを誤認識し、信号処理回路102内に取り込まれたタイミング信号に偽信号が発生することがある。このような偽信号は、タイミング信号と同期していない不規則なタイミングにおいて発生する。従って、規則的な周期でタイミング信号が供給されることを前提として設計された信号処理回路102にこのような不規則な偽信号が入力されると、これにより信号処理回路102が誤動作する可能性がある。また、この種の偽信号として、極めて幅の狭いパルスが発生し、信号処理回路102に入力されることがある。このようなパルス幅の狭い偽信号が入力されると、これが信号処理回路102内部の複数の回路に伝播する過程において、ある回路には幅を持ったパルスとして入力されるが、別のある回路には入力される前に消失するということが起こりうる。従って、信号処理回路102では、タイミング信号として取り込んだ信号(偽信号を含む)に同期して動作することが困難になり、最悪の場合、強制的なリセットなどの手段によらないと正常な動作に復帰することができなくなる場合がある。このような問題に対処するために、図9に示すように、PLL101と信号処理回路102との間のタイミング信号の伝送経路にLPF(ローパスフィルタ)301を介挿し、タイミング信号中に含まれるパルス幅の狭い偽信号を除去する構成を採用することが考えられる。しかし、偽信号の周波数特性とLPF301の周波数特性のそれぞれにばらつきがあるため、この構成は、正常なタイミング信号を損なうことなく効果的に偽信号を除去することが困難であるという問題がある。すなわち、LPF301のカットオフ周波数が高いと偽信号の高域成分を除去することができず、逆にLPF301のカットオフ周波数が低いと偽信号のみならず正常なタイミング信号まで減衰させてしまうのである。また、図10に示すように、LPF301の代わりに、分周回路302を用いて、偽信号を分周し、そのパルス幅を拡大することが考えられる。しかし、偽信号の周波数帯域によっては、分周による拡大後においても依然として偽信号のパルス幅が狭く、信号処理回路102の動作が不安定になる場合があるという問題がある。また、この構成は、偽信号自体を消失させるものではないので、信号処理回路102の動作を安定化させる手段としては好ましいものではない。
【0004】
この発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、電源系の異なる2つの回路間で信号の授受を行う装置において外乱により発生するノイズが後段の回路に取り込まれないように効果的に除去することができるノイズ除去回路を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、第1および第2の回路間に介挿され、前記第1の回路から前記第2の回路に供給される信号のノイズを除去するノイズ除去回路において、ゲート信号に応じて、前記第1の回路から出力される相互に逆相関係の第1および第2の入力信号を通過させ、または遮断する第1および第2のゲート回路と、前記第1および第2の入力信号のレベルが一致していないとき、前記第1および第2の入力信号を通過させるゲート信号を前記第1および第2のゲート回路に出力し、前記第1および第2の入力信号にレベルが一致しているとき、前記第1および第2の入力信号を遮断させるゲート信号を前記第1および第2のゲート回路に出力するゲート信号発生回路と、前記第1および第2のゲート回路を通過した第1および第2の入力信号を保持し、保持状態を示す信号を前記第2の回路に出力する双安定回路とを具備することを特徴とするノイズ除去回路を提供する。
かかる発明によれば、第1の回路からの第1および第2の入力信号が双安定回路により保持され、保持状態を示す信号が第1の回路に供給される。そして、外来のノイズの影響により、第1および第2の入力信号に同相のノイズが発生した場合には、ゲート信号発生回路により、第1および第2の入力信号の双安定回路への入力が阻止される。従って、外来ノイズの影響が第2の回路に伝播するのを阻止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照して、本発明の最良な実施の形態について説明する。
図1は、この発明の一実施形態であるノイズ除去回路を用いたオーディオ装置に用いられる信号処理装置の構成を示すブロック図である。この装置では、前掲図8のものと同様、PLL101には第1の電源から電源電圧VDD1およびVSS1が供給され、信号処理回路102には第2の電源から電源電圧VDD2およびVSS2が供給される。そして、PLL101と信号処理回路102との間には、PLL101から出力されるタイミング信号φから互いに逆相関係にある2相のタイミング信号φaおよびφbを発生するタイミング信号出力回路10と、この2相のタイミング信号φaおよびφbに基づきノイズを含まないタイミング信号φcを信号処理回路102に出力するノイズ除去回路20とが介挿されている。ここで、タイミング信号出力回路10には第1の電源から電源電圧VDD1およびVSS1が供給され、ノイズ除去回路20には第2の電源から電源電圧VDD2およびVSS2が供給される。
【0007】
図2はノイズ除去回路20の構成例を示す回路図である。このノイズ除去回路20において、タイミング信号φaは、ノンインバーティングバッファ211および212を介してANDゲート241に供給され、タイミング信号φbは、ノンインバーティングバッファ221および222を介してANDゲート242に供給される。また、ノンインバーティングバッファ211および221から各々出力されるタイミング信号φa1およびφb1は、XOR(排他的論理和)ゲート230に入力される。
【0008】
既に説明したように、タイミング信号φaおよびφbは、本来は相互に逆相関係にある2相のタイミング信号であり、第1の電源からの電源電圧VDD1およびVSS1により動作するタイミング信号出力回路10によって出力される。しかし、ノイズ除去回路20は、第1の電源とは異なる第2の電源からの電源電圧VDD2およびVSS2により動作する。このため、外乱の影響により、第1の電源からの電源電圧VDD1およびVSS1と第2の電源からの電源電圧VDD2およびVSS2との間に一時的にレベル差が生じると、ノイズ除去回路20の入力部であるノンインバーティングバッファ211または221が、タイミング信号出力回路10から出力されるタイミング信号φaまたはφbのレベルのH/Lを誤判定し、同相のノイズ成分(幅の狭い同相の正パルスまたは負パルス)を持ったタイミング信号φa1およびφb1を出力する場合がある。XORゲート230は、このタイミング信号φa1およびφb1に同相のノイズ成分が現れているときに、タイミング信号φa1およびφb1がANDゲート241および242を各々通過しないように阻止するために設けられたゲートである。このXORゲート230は、タイミング信号φa1およびφb1の論理値が一致していないとき(すなわち、逆相であるとき)にはHレベルのゲート信号Gを、一致しているとき(すなわち、同相であるとき)にはLレベルのゲート信号GをANDゲート241および242に供給するゲート信号発生回路として機能する。
【0009】
ANDゲート241および242は、Hレベルのゲート信号Gが与えられるときにはノンインバーティングバッファ212および222からの各タイミング信号を各々タイミング信号φa2およびφb2として通過させ、Lレベルのゲート信号Gが与えられるときには、各タイミング信号を遮断する第1および第2のゲート回路として機能する。
【0010】
この第1および第2のゲート回路の後段には、双安定回路250が設けられている。この双安定回路250は、2個のNORゲート251および252と、遅延回路253および254とからなる。ここで、第1のゲート回路たるANDゲート241から出力されるタイミング信号φa2はNORゲート251の一方の入力端子に入力され、第2のゲート回路たるANDゲート242から出力されるタイミング信号φb2はNORゲート252の一方の入力端子に入力される。そして、NORゲート251の出力信号は、遅延回路253を介してNORゲート252の他方の入力端子に入力され、NORゲート252の出力信号は、遅延回路254を介してNORゲート251の他方の入力端子に入力される。また、遅延回路254の出力信号は、ノンインバーティングバッファ255を介し、タイミング信号φcとして図1における信号処理回路102に出力される。
【0011】
遅延回路253および254は、各々、偶数段のインバータからなるものであり、各インバータ間の中間ノードには幅の狭いパルスを減衰させるためのキャパシタが形成されている。既に述べたようにXORゲート230には相互に逆相関係にあるタイミング信号φa1およびφb1が入力されるため、これらの各タイミング信号のレベルが反転するときに、XORゲート230からヒゲ(幅の極めて狭い正パルス)が出力され、このヒゲがANDゲート241およびNORゲート251またはANDゲート242およびNORゲート252を通過する場合がありうる。遅延回路253および254は、このようにしてNORゲート251または252からヒゲが出力された場合に、そのヒゲがNORゲート252またはNORゲート251およびノンインバーティングバッファ255に辿り着く前に消滅させる減衰手段である。XORゲート230の出力信号に発生するヒゲの幅は、タイミング信号φがPLL101から出力されてからタイミング信号φa1としてXORゲート230に至るまでの遅延時間と、同タイミング信号φがタイミング信号φb1としてXORゲート230に至るまでの遅延時間との差に応じた幅となる。遅延回路253および254の遅延時間は、この遅延時間差によって定まるヒゲの幅よりも十分に長い時間とし、また、このようなヒゲを消失させるのに十分な大きさのキャパシタを各遅延回路内に設ければよい。
【0012】
双安定回路250は、NORゲート251および252の出力信号が各々Hレベル、Lレベルである第1の状態と、各々Lレベル、Hレベルである第2の状態を安定状態として持ち、ANDゲート241および242の各出力信号がLレベルのときは前の状態を保持する。既に述べたように、XORゲート230は、タイミング信号φa1およびφb1に同相ノイズが現れれているときは、これらがANDゲート241および242を介して双安定回路250に供給されるのを阻止する。従って、タイミング信号φa1およびφb1に同相ノイズが発生したとしても、各タイミング信号は、ANDゲート241および242を通過して双安定回路250に与えられる過程において、これらの同相ノイズが除去される。そして、双安定回路250は、同相ノイズの除去された2相のタイミング信号を保持し、同相ノイズの影響を含まないタイミング信号φcを出力する。
以上が本実施形態の構成である。
【0013】
次に図3〜図6の波形図を参照し、本実施形態の動作例を説明する。図3に示す動作例では、タイミング信号φaがHレベル、タイミング信号φbがLレベルである期間内の時刻t11において、タイミング信号φaおよびφbの半周期に満たない幅の狭い負のノイズが電源電圧VDD1に発生している。この負のノイズの影響により、タイミング信号φaのレベルが一時的にノンインバーティングバッファ211の閾値レベルを下回り、ノンインバーティングバッファ211の出力信号であるタイミング信号φa1がLレベルとなる。しかしながら、これによりXORゲート230の出力信号であるゲート信号GがLレベルとなるため、誤ったタイミング信号がANDゲート241および242を通過することはなく、双安定回路250は、負のノイズが発生する前のタイミング信号φa2(=H)およびタイミング信号φb2(=L)を保持し、タイミング信号φcは負のノイズの影響を受けない。図3に示す動作例では、時刻t12、t13においても幅の狭い負のノイズが電源電圧VDD1に発生しているが、これらの各時点においても同様な動作が行われる。また、タイミング信号φa1およびφb1のレベルが反転するとき、図示のようにゲート信号Gに負のヒゲが現れる。しかし、この負のヒゲは、遅延回路253および254を伝播する過程において消失する。従って、タイミング信号φcにヒゲは発生しない。
【0014】
また、図3に示す動作例では、時刻t14から時刻t15までの間、タイミング信号φaおよびφbの周期よりも長いパルス幅の負のノイズが電源電圧VDD1に発生している。この負のノイズが発生している期間、その影響により、タイミング信号φaおよびφbのレベルがノンインバーティングバッファ211および221の閾値レベルを下回り、ノンインバーティングバッファ211および221の出力信号であるタイミング信号φa1およびφb1がLレベルとなる。しかし、これによりXORゲート230の出力信号であるゲート信号GがLレベルとなるため、負のノイズが発生している期間、タイミング信号φa2およびφb2はLレベルとされる。従って、この間、双安定回路250は、負のノイズが発生する前のタイミング信号φa2(=H)およびφb2(=L)を保持し、タイミング信号φcは変化しない。
【0015】
図4に示す動作例では、時刻t21、t22、t23において、タイミング信号φaおよびφbの半周期に満たない幅の狭い正のノイズが電源電圧VDD1に発生している。時刻t21では、この正のノイズの影響により、本来Lレベルとなるべきタイミング信号φbのレベルが一時的に上昇してノンインバーティングバッファ221の閾値レベルを上回り、ノンインバーティングバッファ221の出力信号であるタイミング信号φb1に正のパルスが生じる。しかし、このときXORゲート230の出力信号であるゲート信号GがLレベルとなるため、このタイミング信号φb1に生じた正のパルスのANDゲート242の通過が阻止される。従って、双安定回路250は、正のノイズが発生する前のタイミング信号φa2(=H)およびφb2(=L)を保持し、タイミング信号φcは正のノイズの影響を受けない。時刻t22、t23においても同様な動作が行われる。
【0016】
また、図4に示す動作例では、時刻t24から時刻t25までの間、タイミング信号φaおよびφbの周期よりも長いパルス幅の正のノイズが電源電圧VDD1に発生している。この正のノイズが発生している期間、その影響によりタイミング信号φaおよびφbのLレベルが持ち上がり、ノンインバーティングバッファ211および221は、タイミング信号φaおよびφbがHレベルであると誤認識する。従って、この間、ノンインバーティングバッファ211および221から出力されるタイミング信号φa1およびφb1はLレベルとなる。しかし、これによりゲート信号GがLレベルとなるため、誤ったタイミング信号φa1およびφb1のANDゲート241よび242の通過が阻止される。従って、この間、双安定回路250は、正のノイズが発生する前のタイミング信号φa2(=H)およびφb2(=L)を保持し、タイミング信号φcは変化しない。なお、ゲート信号Gにおけるヒゲの発生およびこのヒゲに関連した動作は図3の動作例と同様である。
【0017】
図5に示す動作例では、時刻t31、t32、t33において、タイミング信号φaおよびφbの半周期に満たない幅の狭い負のノイズが電源電圧VDD2に発生している。時刻t31では、この負のノイズの影響により、ノンインバーティングバッファ211および221の閾値レベルが一時的に低下し、タイミング信号φbのレベル(Lレベル)がこのノンインバーティングバッファ221の閾値レベルを上回り、ノンインバーティングバッファ221の出力信号であるタイミング信号φb1に正のパルスが生じる。しかし、このときXORゲート230の出力信号であるゲート信号GがLレベルとなるため、このタイミング信号φb1に生じた正のパルスのANDゲート242の通過が阻止される。従って、双安定回路250は、正のノイズが発生する前のタイミング信号φa2(=H)およびφb2(=L)を保持し、タイミング信号φcは正のノイズの影響を受けない。時刻t32、t33においても同様な動作が行われる。
【0018】
また、図5に示す動作例では、時刻t34から時刻t35までの間、タイミング信号φaおよびφbの周期よりも長いパルス幅の負のノイズが電源電圧VDD2に発生している。この正のノイズが発生している期間、ノンインバーティングバッファ211および221の閾値レベルが低下するため、ノンインバーティングバッファ211および221は、タイミング信号φaおよびφbがHレベルであると誤認識する。従って、この間、ノンインバーティングバッファ211および221から出力されるタイミング信号φa1およびφb1はLレベルとなる。しかし、これによりゲート信号GがLレベルとなるため、誤ったタイミング信号φa1およびφb1のANDゲート241よび242の通過が阻止される。従って、この間、双安定回路250は、負のノイズが発生する前のタイミング信号φa2(=H)およびφb2(=L)を保持し、タイミング信号φcは変化しない。なお、ゲート信号Gにおけるヒゲの発生およびこのヒゲに関連した動作は図3の動作例と同様である。
【0019】
図6に示す動作例では、時刻t41、t42、t43において、タイミング信号φaおよびφbの半周期に満たない幅の狭い正のノイズが電源電圧VDD2に発生している。また、時刻t44から時刻t45までの間、タイミング信号φaおよびφbの周期よりも長いパルス幅の負のノイズが電源電圧VDD2に発生している。前掲図5の動作例では、負のノイズの影響によりノンインバーティングバッファ211および221の閾値レベルが低下し、Lレベルであるタイミング信号φaおよびφbがHレベルであると誤認識された。これに対し、図6の動作例では、正のノイズの影響によりノンインバーティングバッファ211および221の閾値レベルが上昇し、Hレベルであるタイミング信号φaおよびφbがLレベルであると誤認識される。この場合においても、前掲図5の動作例と基本的に同様な動作が行われ、ノイズの影響によりタイミング信号φaおよびφbの誤認識が行われる期間は、ゲート信号GがLレベルとされ、ノイズの影響の双安定回路250への伝播が阻止される。
【0020】
以上説明したように、本実施形態によれば、タイミング信号として逆相関係にある2相のタイミング信号φaおよびφbを用い、ノイズ除去回路20では、タイミング信号φaおよびφbのレベルが一致していないと認識される場合のみそれらを双安定回路250に送って保持させ、タイミング信号φaおよびφbのレベルが一致していると認識される場合にはそれらの双安定回路250への供給を阻止するようにしたので、電源ノイズの影響によりタイミング信号φaおよびφbに同相ノイズが生じる場合であっても、その影響を受けることなく、PLL101から出力されるタイミング信号に同期したタイミング信号φcを双安定回路250により生成し、後段の回路に供給することができる。また、本実施形態によれば、タイミング信号φaおよびφbのレベル反転により、幅の狭いパルスであるヒゲが双安定回路250内に入力される可能性があるが、このヒゲは、双安定回路250内に設けられた減衰手段たる遅延回路253および254において減衰され、消失する。従って、タイミング信号φcにヒゲが発生することはない。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の一実施形態であるノイズ除去回路を用いたオーディオ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】同実施形態におけるノイズ除去回路の構成を示す回路図である。
【図3】同実施形態の動作例を示す波形図である。
【図4】同実施形態の動作例を示す波形図である。
【図5】同実施形態の動作例を示す波形図である。
【図6】同実施形態の動作例を示す波形図である。
【図7】従来技術によるオーディオ装置の構成例を示すブロック図である。
【図8】従来技術によるオーディオ装置の構成例を示すブロック図である。
【図9】従来技術によるオーディオ装置の構成例を示すブロック図である。
【図10】従来技術によるオーディオ装置の構成例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0022】
20…ノイズ除去回路、230…XORゲート(ゲート信号発生回路)、241…ANDゲート(第1のゲート回路)、242…ANDゲート(第2のゲート回路)、250…双安定回路、253,254…遅延回路(減衰手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の回路間に介挿され、前記第1の回路から前記第2の回路に供給される信号のノイズを除去するノイズ除去回路において、
ゲート信号に応じて、前記第1の回路から出力される相互に逆相関係の第1および第2の入力信号を通過させ、または遮断する第1および第2のゲート回路と、
前記第1および第2の入力信号のレベルが一致していないとき、前記第1および第2の入力信号を通過させるゲート信号を前記第1および第2のゲート回路に出力し、前記第1および第2の入力信号にレベルが一致しているとき、前記第1および第2の入力信号を遮断させるゲート信号を前記第1および第2のゲート回路に出力するゲート信号発生回路と、
前記第1および第2のゲート回路を通過した第1および第2の入力信号を保持し、保持状態を示す信号を前記第2の回路に出力する双安定回路と
を具備することを特徴とするノイズ除去回路。
【請求項2】
前記双安定回路は、前記第1および第2のゲート回路を通過した第1および第2の入力信号に現れる所定パルス幅以内のパルスを消失させる減衰手段を具備することを特徴とする請求項1に記載のノイズ除去回路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2007−36820(P2007−36820A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218854(P2005−218854)
【出願日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】