説明

ノズルキャップ、及びこれを有する噴射装置

【課題】キャップ本体の外面に付着する液だれを低減することができるノズルキャップ、及びこれを有する噴射装置を提供する。
【解決手段】容器本体20に取り付けられて前記容器本体20の内容物を噴射するためのノズルキャップにおいて、前記内容物の流路、一端部、及び他端部を有するノズル部であって、前記一端部が前記流路と連通する噴射口11dを有し、前記他端部が前記容器本体20のバルブ手段に取り付けられた、ノズル部と、前記バルブ手段を作動するためのアクチュエーターと、前記一端部を収容するための貫通孔が設けられたキャップ本体とを備え、前記ノズル部に付着した前記内容物を毛細管現象により前記キャップ本体の内方へ引き込むための溝11jを前記噴射口11dの近傍に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に取り付けられて容器本体の内容物を噴射するためのノズルキャップ、及びこれを有する噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の従来技術として、加圧容器に取り付けられたノズルキャップであって、ノズルキャップのボタンを押して加圧容器のバルブステムを押し下げることによりノズルの噴射口から加圧容器の内容物を噴射するノズルキャップが知られている(例えば、特許文献1(段落0002,0007、図1等)参照)。
【0003】
従来のノズルキャップの場合、ボタンの押し下げを終えた後にノズルの流路内に残留した内容物が噴射口から漏れ出たり、バルブステムが完全に押し下げられずに半押し下げ状態となって内容物が噴射されずに漏れ出ることで、この漏れ出た内容物がノズルキャップの貫通孔の周辺に付着する(以下、「液だれ」という。)ことがある。液だれは、ノズルキャップや加圧容器の表面を汚損する問題や、ノズルキャップ(加圧容器)を把持する操作者の手に内容物が付着して手が滑りやすくなるため操作性が悪化する問題等を生じさせる。
【0004】
このような液だれの問題の解決を図るために、以下のような手法が試みられている。
すなわち、(1)ノズルの流路の内径を狭くすることでノズルの流路内に残留する内容物を減少させ、噴射口から漏れ出る量を低減させる手法。(2)噴射口から漏れ出た内容物がノズルキャップの内方へ入りやすくするために、ノズルの先端部を収容するためにノズルキャップに設けられた貫通孔の内径を大きくする手法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4431115号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記手法には次の問題がある。
すなわち、(1)ノズルの流路を狭くしても残留する内容物が完全になくなるわけではない。また、内容物が狭い流路内に詰まりやすくなる。狭い流路を形成するために製造時に用いる金型の強度が弱くなる。
【0007】
(2)貫通孔の内径を大きくすると、貫通孔の内面(周縁)とノズルとの間隙が大きくなり、ノズルキャップの内方へ埃等の異物が入り込み、操作性が悪化するおそれがある。また、貫通孔の内面(周縁)とノズルとの間隙が大きいので、外部からノズルキャップの内部が見えるため、美観を損ねる。
【0008】
本発明は、ノズルキャップ本来の機能を損なうことなく上記問題を解決するためのノズルキャップ、及びこれを有する噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る容器本体に取り付けられて前記容器本体の内容物を噴射するためのノズルキャップは、前記内容物の流路、一端部、及び他端部を有するノズル部であって、前記一端部が前記流路と連通する噴射口を有し、前記他端部が前記容器本体のバルブ手段に取り付けられた、ノズル部と、前記バルブ手段を作動するためのアクチュエーターと、前記一端部を収容するための貫通孔が設けられたキャップ本体とを備え、前記ノズル部に付着した前記内容物を毛細管現象により前記キャップ本体の内方へ引き込むための溝が前記噴射口の近傍に設けられることを特徴とする。
【0010】
好ましくは、前記噴射口の近傍の溝が、前記ノズル部の前記一端部の端面に設けられ、前記噴射口を中心にして放射状にのびる溝を備える。
また好ましくは、前記噴射口の近傍の溝が、前記ノズル部の前記一端部の周面に設けられ、前記ノズル部の軸線に沿ってのびる溝を備える。
【0011】
また好ましくは、前記ノズル部を支持するためのノズル支持部が前記キャップ本体に設けられ、前記噴射口の近傍の溝が、前記ノズル支持部の表面に設けられ、前記キャップ本体の軸線に沿ってのびる溝を備える。
【0012】
また好ましくは、前記噴射口の近傍の溝が、前記ノズル本体の前記貫通孔の内面に設けられ、前記貫通孔の軸線に沿ってのびる溝及び/又は、前記貫通孔の溝の配設位置に対応する前記キャップ本体の内面の所定箇所に設けられ、前記キャップ本体の軸線に沿ってのびる溝を備える。
【0013】
また好ましくは、前記キャップ本体の内方へ引き込まれた前記内容物が溜まるための溜まり部が設けられる。
また好ましくは、前記ノズル部の前記一端部の端面と前記一端部の周面とが形成する角部が、丸面形状に加工されている。
【0014】
上記課題を解決するための本発明に係る噴射装置は、上述した構成の何れかを備えるノズルキャップを有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】容器本体に取り付けられたノズルキャップの斜視図である。
【図2】図1中A−A線に沿う断面図である。
【図3】図1中キャップ本体の上部を取り外した状態の斜視図である。
【図4】図1中キャップ本体の上部を取り外した状態の斜視図である。
【図5】ノズル部の斜視図である。
【図6】キャップ本体の上部を取り外した状態の上面図である。
【図7】貫通孔近傍のキャップ本体の内面の部分拡大図である。
【実施例】
【0016】
[構成]
図1中、ノズルキャップ10は、ノズル部11と押圧部12とキャップ本体13とを備え、容器本体20に取り付けられて噴射装置30を構成し、容器本体20の内容物23(図示せず)を噴射する。内容物23は、例えば、液体であるが、毛細管現象が作用するものであれば他の形態のものでもよい。エアゾールの場合、容器本体20内に内容物23及び液化ガス若しくは圧縮ガス(図示せず)が封入され、気化した液化ガス又は圧縮ガスの圧力により霧状又は泡状の内容物23が容器本体20の外部に噴射される。
【0017】
図2中、ノズル部11は、内容物23の流路11a、一端部としての先端部11b、及び、他端部としての末端部11cを有する。先端部11bは、流路11aと連通する噴射口11dを有する。末端部11cは、容器本体20のバルブ手段としてのバルブステム21に取り付けられる。先端部11bは、流路11aと連通するように設けられた座ぐり孔11eと、座ぐり孔11e内に取り付けられたチップ11gとを有してもよい。噴射口11dは、本実施例のようにノズル部11とは別体のチップ11gに形成されてもよく、座ぐり孔11eおよびチップ11gを有さずに先端部11bと一体に形成されてもよい。そして、噴射口11dの近傍には、後述するように溝が設けられている。なお、チップ11gは、内容物23を噴射する際、渦巻き回転力を作用させて内容物23の噴霧を微細化する既知の技術であるメカニカルブレークアップ用であってもよい。バルブステム21の先端部21aは、末端部11c近傍の流路11a内に嵌合してもよい。
【0018】
押圧部12は、キャップ本体13の内部に設けられた台座部13fに取り付けられる枢軸12bと、ノズル部11を押し下げ可能に設けられた下部12cとを有し、バルブ手段(バルブステム21)のバルブを作動するアクチュエーターとなる。アクチュエーターとしての押圧部12は、使用者(図示せず)がボタン部12aを押圧すると枢軸12bを中心に同図中時計回りに回動しノズル部11及びバルブステム21を押し下げてバルブステム21のバルブ(図示せず)を開き、内容物23を流路11aを経由して噴射口11dから容器本体20の外部へ噴射する。ボタン部12aの上記押圧を解除すると、バルブステム21が付勢力により元の位置に復帰しバルブが閉じて、上記噴射は停止する。なお、台座部13fへの枢軸12bの取り付け位置は、本実施例のようにバルブステム21よりも前方(噴射口側)でもよく、また、バルブステム21よりも後方(噴射口と反対側)でもよい。この場合、アクチュエーターとしての押圧部12は、反時計回りに回動してノズル部11及びバルブステム21を押し下げることとなる。なお、本実施例ではアクチュエータとして押圧部12を用いて説明したが、特許文献1のようなトリガータイプや他の形態のものであってもよい。
【0019】
キャップ本体13は、脱着自在な上部13a及び下部13bからなってもよい。ノズル部11の先端部11bを収容するための貫通孔13cは、キャップ本体13の所定箇所に設けられる。押圧部12を収容するための貫通孔13dは、キャップ本体13の所定箇所に設けられる。ノズル部11を支持するための支持部13eは、台座部13f上に設けられる。台座部13fが押圧部12の枢軸12bを直接的又は間接的に枢支してもよい。キャップ本体13は、台座部13fの外周面13g及びキャップ本体13の内面13hによって囲繞された溜まり部13iを備えてもよい。支持部13eが外周面13gと連続するように形成されてもよい。容器本体20のマウンテンカップ22の下部22aに係着するための爪部13jが内面13hの所定箇所に設けられてもよい。
【0020】
次に、噴射口11d近傍に設けられる溝について説明する。図3中、噴射口11d近傍に設けられる溝は、ノズル部11の先端部11bに設けられた溝11jである。斯かる溝11jを設けることで、内容物23が液体の場合、先端部11bに付着した内容物23は、毛細管現象により溝11j内を通ってキャップ本体13の内方へ引き込まれる。内容物23が液体以外の場合であっても毛細管現象が作用するものであれば、先端部11bに付着した内容物23は、溝11jによりキャップ本体13の内方へ引き込まれる。図5を参照しながら溝11jの構成を詳細に説明すると、先端部11bの周壁部11fの先端面11h’に噴射口11dを中心にして放射状にのびる溝11j’が形成される。好ましくは、チップ11gの先端面11h”にも、噴射口11dを中心にして放射状にのびる溝11j”が形成される。同図に示すように、溝11j’と、対応する溝11j”とが接続してもよい。溝11j”が形成されることによりチップ11gの先端面11h”に付着した内容物23が周壁部11fの先端面11h’へ広がりやすくなるから、より多くの内容物23が、キャップ本体13の内方へ引き込まれる。ノズル部11がチップ11gを有さない場合、先端部11bの先端面11hに噴射口11dを中心にして放射状にのびる溝が設けられる。先端部11bの軸線mに沿ってのびる溝11j”’が先端部11bの周面11iに設けられてもよい。同図に示すように、溝11j’と、対応する溝11j”’とが接続してもよい。ノズル部11の先端面11hと周面11iとが形成する角部が、丸面形状に加工されるなどして面取りされてもよい。これによって、より多くの内容物23が、キャップ本体13の内方へ引き込まれることになる。
【0021】
次に、噴射口11d近傍に設けられる溝の他の形態について説明する。図4中、噴射口11d近傍に設けられる溝は、キャップ本体13の内面13hと対向する支持部13eの表面13kに設けられた溝13mである。溝13mは、キャップ本体13の軸線lに沿ってのびる。図6に示すように、溝13m’が支持部13eの先端面13lに設けられてもよい。溝13mと、対応する溝13m’ とが接続してもよい。斯かる溝13m(溝13m’)を設けることで、ノズル部11に付着した液体の内容物23は、毛細管現象により溜まり部13iまで引き込まれる。内容物23が液体以外の場合であっても毛細管現象が作用するものであれば、溝13m(溝13m’)は、内容物23を溜まり部13iまで引き込む。なお、溝13m(溝13m’)と共に溝11jが設けられると、ノズル部11に付着した内容物23がキャップ本体13の内方へより引き込まれるので好ましい。
【0022】
続いて、噴射口11d近傍に設けられる溝の更に他の形態について説明する。図7中、噴射口11d近傍に設けられる溝は、キャップ本体13の貫通孔13cの内周面13nに設けられた溝13pである。同図に示すように、溝13pの内、貫通孔13cの内周面の下部13n’に設けられた溝13p’が、貫通孔13cの軸線(図5に示すノズル部11の先端部11bの軸線mに概ね一致する)に沿ってのびるように構成され、貫通孔13cの内周面の側部13n”に設けられた溝13p”が、下方へ傾斜するように構成されてもよい。キャップ本体13の軸線lに沿ってのびる溝13qが、溝13pの配設位置に対応するキャップ本体13の内面13hの所定箇所に設けられてもよい。同図に示すように、溝13pと、対応する溝13qとが接続してもよい。溝13p(溝13q)は、ノズル部11の先端部11bに付着した液体の内容物23を毛細管現象により溜まり部13iまで引き込むように作用する。内容物23が液体以外の場合であっても毛細管現象が作用するものであれば、溝13p(溝13q)は、内容物23を溜まり部13iまで引き込む。なお、溝13p(溝13q)と共に溝11j及び/または溝13m(溝13m’)が設けられると、ノズル部11に付着した内容物23がキャップ本体13の内方へより引き込まれるので好ましい。
【0023】
[作用等]
上述した溝11j(11j’,11j”,11j”’),溝13m,溝13m’,溝13p(13p’,13p”)はいずれも、噴射口11dの近傍に設けられ、ノズル部11の先端部11bに付着した液体の内容物23を毛細管現象によりキャップ本体13の内方へ引き込むように作用する。内容物23は本来重力の作用により降下するから、いずれかの溝が設けられていれば所望の効果が得られる。キャップ本体13に溜まり部13iが設けられる場合、内容物23は、溜まり部13iに導かれ、最終的に揮発する。なお、溜まり部13iが設けられない場合、内容物23は、マウンテンカップ22等に溜まり、最終的に揮発する。
【0024】
以上説明したように、溝11j(11j’,11j”,11j”’),13m,13m’,13p(13p’,13p”)がノズル部11に付着した液体の内容物23を毛細管現象によりキャップ本体13の内方へ引き込むことにより、キャップ本体13の外面に付着する液だれを低減することができる。これによって、[背景技術]の欄で述べたノズルキャップ10及び容器本体20の表面汚損の問題、操作性悪化の問題等を解決することができる。さらに、ノズル部11の流路11aを狭くする必要がないから、[発明が解決しようとする課題]の欄で述べた(1)内容物の詰まりの問題や金型強度の問題が解消される。また、先端部11bの周面11iと貫通孔13cの内面13nとの間の間隙は、内容物23がキャップ本体13の内方へ引き込まれることを阻害しない程度の大きさでよいから、同欄で述べた(2)異物が入り込む問題及び美観の問題が解消される。
【0025】
なお、上記溝に代えて、貫通孔を採用することができる。
【符号の説明】
【0026】
10 ノズルキャップ
11 ノズル部
11j 溝
12 押圧部
13 キャップ本体
13m 溝
13p 溝
13q 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体に取り付けられて前記容器本体の内容物を噴射するためのノズルキャップにおいて、
前記内容物の流路、一端部、及び他端部を有するノズル部であって、前記一端部が前記流路と連通する噴射口を有し、前記他端部が前記容器本体のバルブ手段に取り付けられた、ノズル部と、
前記バルブ手段を作動するためのアクチュエーターと、
前記一端部を収容するための貫通孔が設けられたキャップ本体とを備え、
前記ノズル部に付着した前記内容物を毛細管現象により前記キャップ本体の内方へ引き込むための溝が前記噴射口の近傍に設けられることを特徴とする、ノズルキャップ。
【請求項2】
前記噴射口の近傍の溝が、前記ノズル部の前記一端部の端面に設けられ、前記噴射口を中心にして放射状にのびる溝を備えることを特徴とする、請求項1に記載のノズルキャップ。
【請求項3】
前記噴射口の近傍の溝が、前記ノズル部の前記一端部の周面に設けられ、前記ノズル部の軸線に沿ってのびる溝を備えることを特徴とする、請求項1又は2に記載のノズルキャップ。
【請求項4】
前記ノズル部を支持するためのノズル支持部が前記キャップ本体に設けられ、前記噴射口の近傍の溝が、前記ノズル支持部の表面に設けられ、前記キャップ本体の軸線に沿ってのびる溝を備えることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のノズルキャップ。
【請求項5】
前記噴射口の近傍の溝が、前記ノズル本体の前記貫通孔の内面に設けられ、前記貫通孔の軸線に沿ってのびる溝及び/又は、前記貫通孔の溝の配設位置に対応する前記キャップ本体の内面の所定箇所に設けられ、前記キャップ本体の軸線に沿ってのびる溝を備えることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載のノズルキャップ。
【請求項6】
前記キャップ本体の内方へ引き込まれた前記内容物が溜まるための溜まり部が設けられたことを特徴とする、請求項1乃至5の何れか1項に記載のノズルキャップ。
【請求項7】
前記ノズル部の前記一端部の端面と前記一端部の周面とが形成する角部が、丸面形状に加工されていることを特徴とする、請求項2又は3に記載のノズルキャップ。
【請求項8】
請求項1乃至7の何れか1項に記載のノズルキャップを有することを特徴とする、噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−166795(P2012−166795A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−27188(P2011−27188)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】