説明

ノズル装置および該ノズル装置が設置されたバーナー装置

【課題】未燃粒子が発生せずに完全燃焼させることができ、カーボンの付着のおそれもない装置を提供する。
【解決手段】液体噴射部および気体噴射部を有する2流体噴霧ノズルと、液体噴射部の噴射口の側に、周壁によって円筒形の形状に形成されたキャップと、キャップの2流体噴霧ノズルの位置する側と反対側に、所定間隔へだてて配置されたフレームホルダとを備え、キャップには、2流体噴霧ノズルの位置する側と反対側に、中央に開口が設けられ、2流体噴霧ノズルから離れるに従って径が拡大する円錐形状又は多角錐形状をなすように形成された隔壁が設けられ、キャップの周壁に1又は複数の空気流入口が設けられており、フレームホルダが、円錐状又はドーム状或いは平板状に形成され、中央に開口が設けられており、フレームホルダに、複数の小孔が設けられていることを特徴とするノズル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル装置および該ノズル装置が設置されたバーナー装置に関する。本発明のノズル装置は、燃焼用としてのみならず、オゾン霧の生成、塗料の塗布、水噴霧冷却などの液体を霧にして用いる広範な分野において利用することができる。
【背景技術】
【0002】
液体を気体と混合させることによって微細な霧状にして噴射する2流体噴霧ノズルが知られている(例えば、特許文献1参照)。2流体噴霧ノズルは、1流体ノズルと比較して、液体を微細な粒子径にして噴射できる等の種々の特徴を有している。
【0003】
【特許文献1】特開2005−313049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の2流体噴霧ノズルは、下記のような課題を有している。
(1)ノズルから噴出した液体燃料を燃焼させるために、液霧に向けて外部から燃焼に必要な空気を供給すると、 液霧の外周は混合燃焼するが、液霧円錐の中央付近は、空気不足の燃焼となり、完全燃焼しない。
(2)ノズルからの燃料噴出速度が速いため、ノズル近傍に火炎を保持することが困難である。
(3)ノズルの噴霧に空気ではなく水酸素ガスを使用しようとする場合、水酸素ガスの供給圧力が噴霧に必要な圧力以上であれば、油脂の霧化をすることはできるが、燃焼させることができない。
(4)ノズルの噴霧に空気ではなく水酸素ガスを使用しようとする場合、水酸素ガスの供給圧力が噴霧に必要な圧力以下であれば、ノズルに供給しても油脂の霧化をすることはできない。
(5)火炎保持のためノズルに隣接してフレームホルダを設置した場合、フレームホルダにカーボンが付着するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みて開発されたものであって、未燃粒子が発生せずに完全燃焼させることができ、カーボンの付着のおそれもないノズル装置および該ノズル装置が設置されたバーナー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願請求項1に記載のノズル装置は、中心軸線上に配置され先端に噴射口が設けられた液体噴射部および液体噴射部の周囲に配置された気体噴射部を有する2流体噴霧ノズルと、前記噴射口の側に、前記中心軸線上に配置され、周壁によって円筒形の形状に形成されたキャップと、前記キャップの前記2流体噴霧ノズルの位置する側と反対側に、所定間隔へだてて中心軸線上に配置されたフレームホルダとを備え、前記キャップには、前記2流体噴霧ノズルの位置する側と反対側に、中央に開口が設けられ、前記2流体噴霧ノズルから離れるに従って径が徐々に拡大する円錐形状又は多角錐形状をなすように形成された隔壁が設けられ、前記キャップの周壁に1又は複数の空気流入口が設けられており、前記フレームホルダが、キャップから遠ざかる側に向かって径が拡大するようになった円錐状又はドーム状或いは平板状に形成され、中央に開口が設けられており、前記フレームホルダに、複数の小孔が設けられていることを特徴とするものである。
【0007】
本願請求項2に記載のノズル装置は、請求項1に記載されたノズル装置が、燃焼炉に向かって開放した空気ガイドチューブ内に設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のノズル装置では、キャップを取り付けたことにより、キャップを介して空気が供給されるので、燃焼に必要な空気を補充することができるとともに、液霧の流速を遅くすることができるので、液霧と空気の混合を容易にすることができ、これにより未燃粒子を発生させず完全燃焼させることができる。また、本発明のノズル装置では、フレームホルダを配置したことにより、燃焼時に火炎を保持し、吹き消えを防止することができる。また、フレームホルダに小孔を設けたことにより、フレームホルダへのカーボンの付着を回避することができる。さらに、二次空気の代わりに、或いは噴霧用空気の代わりに、水酸素ガスを使用することにより、燃料消費量を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態に係るノズル装置について詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい実施の形態に係るノズル装置を模式的に示した断面図、図2は、図1のノズル装置の分解断面図である。図1において全体として参照符号10で表される本発明の好ましい実施の形態に係るノズル装置は、2流体噴霧ノズル12を備えている。
【0010】
2流体噴霧ノズル12は、中心軸線X−X上に配置された液体噴射部14と、液体噴射部14の周囲に配置された気体噴射部16とを有している。
【0011】
液体噴射部14は、全体として中空のダクト状に形成されており、一方の端部に液体噴射口14aが設けられ、他方の端部に液体供給口14bが設けられている。気体噴射部16は、液体噴射部14の周囲を被覆するように中空のダクト状に形成されており、液体噴射口14aが設けられている側の端部に気体噴射口16aが設けられ、所望の箇所に気体供給口16bが設けられている。
【0012】
液体噴射部14の液体供給口14bは、導管(図示せず)を介して液体供給源(図示せず)に連結されている。また、気体噴射部16の気体供給口16bは、導管(図示せず)を介して気体供給源(図示せず)に連結されている。なお、図1では、1個の気体供給口16bが示されているが、複数個の気体供給口16bを設けてもよい。
【0013】
本発明のノズル装置10はまた、2流体噴霧ノズル12の液体噴射口14aおよび気体噴射口16aの側に、中心軸線X−X上に配置されたキャップ18を備えている。
【0014】
キャップ18は、周壁18aによって全体として円筒形の形状に形成されている。キャップ18には、周壁18aに1個又は複数個(図1では1個のみ図示)の二次空気流入口18bが設けられており、二次空気流入口18bは、導管(図示せず)を介して二次空気供給源(図示せず)に連結されている。また、キャップ18には、2流体噴霧ノズル12の位置する側と反対側に、中央に開口18c1をもつ隔壁18cが設けられている。隔壁18cは、2流体噴霧ノズル12の側が中心軸線X−Xに対してほぼ直交するように形成され、2流体噴霧ノズル12と反対の側が開口18c1から離れるに従って徐々に径が拡大する円錐形状又は多角錐形状をなすように形成されている。なお、2流体噴霧ノズル12の先端と隔壁18cの開口18c1との距離D1 (図1参照)は、約2mm〜約15mmとすることが好ましい。
【0015】
本発明のノズル装置10はさらに、キャップ18の先端の側に、キャップ18から所定間隔D2 へだてて中心軸線X−X上に配置されたフレームホルダ20を備えている。間隔D2 は、約5mm〜約10mmとすることが好ましい。
【0016】
フレームホルダ20は、キャップ18に隣接する側からキャップ18から遠ざかる側に向かって径が拡大するようになった円錐状に形成されており、中央に開口20aが設けられている。開口20aは、キャップ18の外径よりも大きくなるように形成するのが好ましい。
【0017】
また、円錐状のフレームホルダ20には、複数の小孔20bが形成されている。灯油や重油用のフレームホルダを使用すると、火炎中に多量の未燃粒子が発生し、未燃粒子が燃焼炉の炉壁に蓄積して異常燃焼を起こすことがある。これは、このようなフレームホルダの使用により燃焼空気による油滴温度の低下と火炎密度の低下が生ずることが原因と考えられる。本発明では、フレームホルダ20に複数の小孔20bを設けたことにより、カーボンの発生を回避している。すなわち、小孔20bからは、送風機から供給される燃焼用空気が直進状に吹き出し、隣接する小孔20bとの間に負圧領域が形成される。そして、負圧領域に油霧が引き込まれて火炎が形成されるが、隣接する小孔20bからも燃焼用空気が噴出しており、かつ、当該負圧領域には高温の火炎が存在するため、油霧が蒸発してしまい、その結果、フレームホルダ20に油霧が直接衝突する可能性が小さくなり、これにより、フレームホルダ20へのカーボンの発生が回避されるものと推測される。
【0018】
図4は、ノズル装置10が設置されたバーナー装置30を概略的に示した模式図である。図4に示されるように、燃焼炉に向かって開放した空気ガイドチューブ32の先端部分にノズル装置10が設置されている。そして、2流体噴霧ノズル12の液体噴射部14に燃料油又は燃焼ガスが供給され、2流体噴霧ノズル12の気体噴射部16に噴霧用空気又は酸水素ガスが供給され、キャップ18に二次空気又は酸水素ガスが供給されるようになっている。なお、図4において、参照符号34、36は、ガスバーナー、燃焼空気送風機をそれぞれ示している。
【0019】
次に、以上のように構成されたノズル装置10の作動について説明する。まず、2流体噴霧ノズル12の液体噴射部14の液体噴射口14aから燃料油を噴射するとともに、2流体噴霧ノズル12の気体噴射部16の気体噴射口16aから噴霧用空気を高速で噴射する。すると、燃料油が微細な霧状になって噴射される。このようにして噴射された霧(以下「油霧」という)に含まれる空気は、霧を完全燃焼させるのに必要な量の5〜10%程度である。
【0020】
ノズル装置10には、2流体噴霧ノズル12の先端にキャップ18が配置されているため、油霧が噴射されると、エゼクタ効果により、二次空気流入口18bを介してキャップ18内に二次空気が吸引される。これにより、吸引された二次空気が油霧と混合されるため、油霧の不完全燃焼が防止される。なお、キャップ18の開口18c1は、2流体噴霧ノズル12から噴射される油霧が支障なく通過することができるような寸法を有しているのが好ましい。
【0021】
キャップ18の開口18a1から噴射された油霧/二次空気が、フレームホルダ20の開口20aを通過する際、その気流の流れにより、周囲の空気が開口20aに引き込まれるため、油霧/二次空気の速度が低下するとともに、油霧/二次空気に含まれる空気量が増加することとなる。したがって、この段階で油霧/二次空気に点火すると、フレームホルダ20の中央に向かって高温の気流が発生し、この高温気流が、開口20aを通って吹き込まれてくる油霧/二次空気と混合して燃焼炎が形成される。また、その際、送風機から供給される空気がフレームホルダ20の小孔20bから直進状に吹き出し、隣接する小孔20bとの間の領域に負圧領域が形成され、この負圧領域に油霧が引き込まれて火炎が形成されるが、隣接する小孔20bからの空気の噴出、および、その負圧領域での高温の火炎による油霧の蒸発のため、油霧がフレームホルダ20に直接衝突する可能性が低下する。これにより、フレームホルダ20にカーボンが形成するのが回避される。
【0022】
なお、上記の例において、二次空気の代わりに、水酸素ガスが吸引されるように構成してもよい。すなわち、導管を介して水酸素ガス供給源とキャップ18の二次空気流入口18bとを連結することにより、キャップ18内に水酸素ガスが吸引されることとなる。すると、水酸素ガスが混合された油霧がキャップ18の開口18c1から噴射された直後に、燃焼する。そして、その燃焼熱のため、油霧は高温燃焼して急速に空気と混合され、燃焼温度が高くなるため、燃料消費量を低減することができるという効果も得ることができる。
【0023】
また、上記の例において、二次空気の代わりに水酸素ガスを用いることに加えて更に、噴霧用空気の代わりに、水酸素ガスを使用して燃料油を噴射するようにしてもよい。このようにして噴射された油霧/水酸素ガスは、空気が含まれていないためそれ自体では燃焼しないが、フレームホルダ20の開口20aに引き込まれる空気との混合により、燃焼可能な状態になる。この状態で点火すると、水酸素ガスは燃焼する。そして、その燃焼熱のため、油霧/水酸素ガスは高温燃焼して急速に空気と混合され、燃焼温度がさらに高くなり、燃料消費量を低減することができる。
【0024】
(実施例1)
本発明の有効性を実証するために試験を実施した。試験においては、図5(a)に示されるように、直径3.5mmの小孔を設けたフレームホルダを用い、燃料として廃食油を使用した。この試験においては、フレームホルダの中央の開口から高速の油霧が燃焼炉内に向かっている状態が観察されたが、フレームホルダへのカーボンの発生は見られなかった。
【0025】
(実施例2)
深さが20mmで小孔が設けられていないフレームホルダを用いて、燃焼試験(燃料:ラード、廃食油)を行った。その結果、燃焼炉内側の外周付近にカーボンが発生した。
【0026】
本発明は、以上の発明の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0027】
例えば、前記実施の形態では、フレームホルダ20に設けられる小孔20bが円形であるが、小孔20bの形状を他の形状(例えば、長円形、楕円形、四角形、多角形など)にしてもよい。また、フレームホルダ20の形状をドーム状(図5(b)参照)又は平板状(図5(c)参照)にしてもよい。
【0028】
また、前記実施の形態では、噴射される燃料として油が用いられているが、気体(ガス)燃料を用いてもよい。また、前記実施の形態では、中心軸線上に配置された液体噴射部と液体噴射部の周囲に配置された気体噴射部とを有する型式の2流体噴霧ノズルが示されているが、他の型式の2流体噴霧ノズル(例えば、中央の液体噴出部の外周に複数の気体噴出用スリットを設けたノズル)を使用してもよい。また、キャップを取り付けずに、2流体噴霧ノズルとフレームホルダとを組み合わせたノズル装置を空気ガイドチューブに設置してバーナー装置として用いてもよい。さらに、前記実施の形態では、燃焼に関連してノズル装置が説明されているが、燃焼以外の用途、例えばオゾン霧の生成、塗料の塗布、水噴霧冷却などの液体を霧にして用いる広範な分野において、本発明のノズル装置を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好ましい実施の形態に係るノズル装置を模式的に示した断面図である。
【図2】図1のノズル装置の各構成要素を示した分解断面図である。
【図3】図3(a)は、図1の線3a−3aに沿って見た側面図、図3(b)は、図1の線3b−3bに沿って見た側面図である。
【図4】図1のノズル装置が設置されたバーナー装置を概略的に示した模式図である。
【図5】図5(a)は、試験に使用したフレームホルダを示した図、図5(b)および図5(c)は、フレームホルダの変形形態を示した図である。
【符号の説明】
【0030】
10 ノズル装置
12 2流体噴霧ノズル
14 液体噴射部
14a 液体噴射口
14b 液体供給口
16 気体噴射部
16a 気体噴射口
16b 気体供給口
18 キャップ
18a 周壁
18b 二次空気流入口
18c 隔壁
18c1 開口
20 フレームホルダ
20a 開口
20b 小孔
30 バーナー装置
32 空気ガイドチューブ
34 ガスバーナー
36 燃焼空気送風機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸線上に配置され先端に噴射口が設けられた液体噴射部および液体噴射部の周囲に配置された気体噴射部を有する2流体噴霧ノズルと、
前記噴射口の側に、前記中心軸線上に配置され、周壁によって円筒形の形状に形成されたキャップと、
前記キャップの前記2流体噴霧ノズルの位置する側と反対側に、所定間隔へだてて中心軸線上に配置されたフレームホルダとを備え、
前記キャップには、前記2流体噴霧ノズルの位置する側と反対側に、中央に開口が設けられ、前記2流体噴霧ノズルから離れるに従って径が徐々に拡大する円錐形状又は多角錐形状をなすように形成された隔壁が設けられ、前記キャップの周壁に1又は複数の空気流入口が設けられており、
前記フレームホルダが、キャップから遠ざかる側に向かって径が拡大するようになった円錐状又はドーム状或いは平板状に形成され、中央に開口が設けられており、
前記フレームホルダに、複数の小孔が設けられていることを特徴とするノズル装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載されたノズル装置が、燃焼炉に向かって開放した空気ガイドチューブ内に設置されていることを特徴とするバーナー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−202602(P2012−202602A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67203(P2011−67203)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(599047011)北海道オリンピア株式会社 (11)
【Fターム(参考)】