説明

ノボラック樹脂の製造方法およびノボラック樹脂

【課題】フェノール類とアルデヒド類とを温和な条件下で反応させて、低分子量のノボラック樹脂を効率的に製造する方法を提供する。
【解決手段】式(I) B−(OR)3 (I)
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を示す。)で表されるで表されるホウ素化合物およびpKaが5.0以下の酸を含む触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類とを反応させるノボラック樹脂の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低分子量ノボラック樹脂を高収率で得るための製造方法及び該製造方法により得られるノボラック樹脂に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、耐熱性があり様々な分野に使用されている。
例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れ、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト、塗料、接着剤、複合材料等に用いられている。
近年の技術革新に伴い、エポキシ樹脂組成物の更なる耐熱性、耐湿性、難燃性等の向上が求められている。
その解決手段の一つとして充填剤の使用量増加がある。
充填剤量を多くすることにより成形品の線膨張係数の低減や吸湿率の低減、難燃性の向上が可能となるが、一方で充填量が多くなることにより配合物の流動性が低下し、成形性が悪くなるという問題が生じるため、樹脂成分の低溶融粘度化が必要となる。
ノボラック樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを酸性触媒の存在下に付加縮合して製造される。
通常、フェノール類に対するアルデヒド類のモル比が0.3〜0.9モルの範囲で使用され、モル比を調整することで得られる樹脂の分子量を制御している。
樹脂の溶融粘度を低くするには高分子量成分をできるだけ少なくする必要があるが、分子量の低いノボラック樹脂を得るためにはモル比を小さくしなければならず、その場合未反応のフェノールモノマーが多く残存することになる。
樹脂中の未反応フェノール類モノマーは減圧下で蒸留することにより低減することができるが、モル比の低い樹脂ほど大量のフェノール類モノマーが蒸留により除去されることになるため、収率の低下が避けられない。
一方、樹脂中にフェノール類モノマーが残存した場合、成型物の寸法安定性の低下、ボイドの発生などを引き起こすことから、樹脂中のフェノールモノマーはできるだけ少ない方が好ましい。
このような背景から、ノボラック樹脂の高収率化が検討されてきた(特許文献1、2を参照)。
特許文献1ではフェノール類とパラホルムアルデヒドとをリン酸触媒の存在下で不均一化反応する方法が示されている。
この方法によるとフェノール類の反応率は向上するものの、触媒がリン酸に限定されるため、パラホルムアルデヒドよりも反応性の低いアルデヒド、例えばアセトアルデヒドやブチルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒドやサリチルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドと反応させる場合には十分な反応性が得られない。
特許文献2ではフェノール類とアルデヒド類とを有機ホスホン酸触媒の存在下で反応する方法が示されている。
触媒の存在する水相と樹脂の溶解しやすい有機相を形成することによりモノマー反応率を向上させている。
しかし、この方法でも触媒が有機ホスホン酸に限定されるため、前述のホルムアルデヒドよりも反応性の低いアルデヒドと反応させる場合には十分な反応性が得られない。
また、触媒効率向上には110℃以上の温度が必要であることから、高分子量体の生成は避けられず、低分子量のノボラック樹脂を得るには好ましくない。
アセトアルデヒドやブチルアルデヒドなどの脂肪族アルデヒド、ベンズアルデヒドやサリチルアルデヒドなどの芳香族アルデヒドとフェノール類とを反応する場合は、ハロゲン化水素やスルホン酸系化合物など、リン酸や有機ホスホン酸よりも更に強い酸を大量に使用し、かつ高い反応温度が必要となる。
このような条件下では高分子量成分が生成しやすくなるため、低分子量のノボラック樹脂を得るのは困難である。
このように、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドよりも反応性の低いアルデヒド類を使用して低分子量ノボラック樹脂を高収率で得ようとする場合、これまでに有効な製造手段はなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−339257号公報
【特許文献2】特開2002−194041号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、フェノール類とアルデヒド類、特に炭素数が2以上の脂肪族アルデヒドおよび芳香族アルデヒドとを、温和な条件下で反応させる低分子量のノボラック樹脂の効率的な製造方法及び該製造方法により得られるノボラック樹脂を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ホウ素化合物及びpKaが5.0以下の酸を含む触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類とを反応させることによって、上記課題が達成できることを見出したことに基づくものである。
即ち、本発明は以下を要旨とする。
【0006】
1.式(I)
B−(OR)3 (I)
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表されるホウ素化合物およびpKaが5.0以下の酸を含む触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類とを反応させることを特徴とするノボラック樹脂の製造方法、
2.前記酸のpKaが0.0〜4.0の範囲である上記1に記載のノボラック樹脂の製造方法、
3.式(I)で表されるホウ素化合物が、ホウ酸である上記1に記載のノボラック樹脂の製造方法、
4.フェノール類がフェノールまたはクレゾールで、アルデヒド類がベンズアルデヒドであり、式(I)で表されるホウ素化合物がホウ酸である上記1に記載の製造方法によって得られるノボラック樹脂の数平均分子量が、300〜600であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.3以下で、かつ150℃における溶融粘度が300mPa・s以下であるノボラック樹脂
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フェノール類とアルデヒド類とをホウ素化合物およびpKaが5.0以下の酸を含む触媒の存在下で反応させることにより、低分子量のノボラック樹脂の効率的な製造方法及び該製造方法により得られるノボラック樹脂を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1におけるノボラック樹脂のGPCチャートである。
【図2】比較例4におけるノボラック樹脂のGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明のノボラック樹脂の製造方法においては、pKaが5.0以下の酸の他に、式(I)
B−(OR)3 (I)
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表されるホウ素化合物が必須成分として使用される。
Rである炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
【0010】
式(I)で表されるホウ素化合物の具体例としては、ホウ酸、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチルなどが挙げられ、単独若しくは2種以上混合して使用することができる。
これらのうち、ホウ酸が実用上好ましい。
前記ホウ素化合物の使用量は、フェノール類100質量部に対して0.3〜20質量部、好ましくは1.0〜10重量部の割合で用いるのがよい。
ホウ素化合物の使用量が0.3質量部未満では、フェノール類とアルデヒド類の反応率が低下するため好ましくなく、10質量部を越えると反応率向上の効果が殆ど変わらなくなるため、実用的でない。
【0011】
本発明における触媒の必須成分であるpKaが5.0以下の酸としては、一般的なノボラック樹脂の製造に使用されるものであれば良く、例えば塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などが挙げられ、単独若しくは2種類以上混合して使用することができる。
pKaが5.0を超える酸では触媒としての効果が乏しく実用的でない。
反応設備への腐食およびノボラック樹脂の収率などを考慮すると、pKaが0.0〜4.0である酸が好ましく、例えばシュウ酸、リン酸、サリチル酸、酒石酸などが挙げられる。
前記pKaが5.0以下の酸の使用量は、フェノール類100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.1〜10重量部、更に好ましくは0.2〜5重量部の割合で用いるのが好ましい。
【0012】
本発明のノボラック樹脂の製造方法は、ホウ素化合物およびpKaが5.0以下の酸の存在下、フェノール類とアルデヒド類を反応させるものである。
本発明方法に使用されるフェノール類としては、一般的なフェノール樹脂の製造に使用されるものであれば良く、例えばフェノール、各種クレゾール、各種エチルフェノール、各種キシレノール、各種ブチルフェノール、各種オクチルフェノール、各種ノニルフェノール、各種フェニルフェノール、各種シクロヘキシルフェノール、各種トリメチルフェノール、ビスフェノールA、カテコール、レゾシノール、ハイドロキノン、各種ナフトール、ピロガロールなどを、単独又は2種以上混合して使用することができる。
これらのうち、フェノールや各種クレゾールが実用上好ましい。
【0013】
一方、フェノール類と反応させるアルデヒド類としては、フェノール樹脂の製造に使用可能とされているアルデヒド類であれば使用可能である。
例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、パラホルムアルデヒド、各種プロピルアルデヒド、各種ブチルアルデヒド、各種バレルアルデヒド、各種ヘキシルアルデヒド、グリオキザール、クロトンアルデヒド、グルタルアルデヒド、各種ヒドロキシベンズアルデヒド、各種ジヒドロキシベンズアルデヒド、各種ヒドロキシメチルベンズアルデヒドなどを単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
上記アルデヒド類の使用量は、フェノール類の合計量1モルに対して、0.3〜1.0モル、好ましくは0.4〜0.9モルの割合で用いるのが望ましい。
このアルデヒド類の使用量が0.3モル未満であると、残存するフェノール類モノマーが多くなるため効率的でない。
一方、アルデヒド類が1.0モルを超えると、得られるノボラック樹脂の分子量が高くなるため好ましくない。
【0014】
本発明において、フェノール類としてフェノールまたはクレゾール、アルデヒド類としてベンズアルデヒド、式(I)で表されるホウ素化合物としてホウ酸を使用することによって得られるノボラック樹脂は、数平均分子量が300〜600であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.3以下で、かつ150℃における溶融粘度が300mPa・s以下である。
得られるノボラック樹脂の数平均分子量が上記範囲内であると、ノボラック樹脂の溶融粘度を低くすることができ、エポキシ樹脂の硬化剤として十分な効果を発揮する。
分散度が1.3以下であることは、ノボラック樹脂中の高分子量の多核体が少ないことを意味する。
また、分散度は、好ましくは1.2以下である。
溶融粘度が300mPa・s以下であると、エポキシ樹脂の硬化剤として使用した場合、配合物の流動性が向上するため成形性に優れた配合物が得られる。
更に、150℃における溶融粘度は、好ましくは250mPa・s以下である。
ノボラック樹脂の溶融粘度を低くするためには、多核体の含有量をできるだけ少なくする必要がある。
【0015】
フェノール類とアルデヒド類とを反応させる方法には、特に制限はなく、例えばフェノール類と、アルデヒド類、式(I)で表されるホウ素化合物およびpKa5.0以下の酸を一括で仕込み反応させる方法、またはフェノール類と式(I)で表されるホウ素化合物およびpKa5.0以下の酸を仕込み、所定の反応温度にてアルデヒド類を添加する方法が挙げられる。
このとき、反応温度は30〜120℃の範囲で行うとよい。
30℃未満であると反応の進行が遅く、かつ未反応のフェノール類が残存するため好ましくなく、また120℃を超える温度では高分子量成分の生成が促進されるため好ましくない。
反応時間は特に制限はなく、アルデヒド類および触媒の量、反応温度により調整すればよい。
反応の際、有機溶剤を使用することももちろん可能である。
このような有機溶媒としては、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、1,4−ジオキサン等のエーテル類等が単独で、若しくは二種以上を併用して使用できる。
前記有機溶媒は、フェノール類100質量部に対して、0〜1,000質量部、好ましくは10〜100質量部程度となるように使用することができる。
反応後は蒸留により縮合水を除去したり、また必要に応じて水洗して残存触媒を除去してもよい。
更に、減圧蒸留或いは水蒸気蒸留を行って未反応のフェノール類や未反応アルデヒド類を除去してもよい。
【実施例】
【0016】
以下に、本発明の製造方法によるノボラック樹脂の実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0017】
実施例1
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、ベンズアルデヒド49g、ホウ酸1g、シュウ酸(pKa=1.04)1gを仕込み、100℃で8時間反応させた。
次いで、純水100gで2回洗浄を行い、触媒を除去した。
次いで、180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂A94gを得た。
図1に、樹脂Aのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートを示す。なお、横軸は溶出時間(分)を示す。
図1から樹脂Aは、低分子量の2核体が主生成物であることが分かる。
【0018】
実施例2
フェノール類としてメタクレゾールを使用した以外は実施例1と同様に行い、ノボラック樹脂B98gを得た。
【0019】
実施例3
アルデヒド類としてサリチルアルデヒド56gを使用した以外は実施例1と同様に行い、ノボラック樹脂C92gを得た。
【0020】
実施例4
アルデヒド類としてメタヒドロキシベンズアルデヒド56gを使用した以外は実施例1と同様に行い、ノボラック樹脂D94gを得た。
【0021】
実施例5
ホウ酸の代わりにホウ酸トリメチル1.7gを使用し、反応を50℃で10時間行った以外は実施例1と同様に反応を行い、ノボラック樹脂E97gを得た。
【0022】
実施例6
シュウ酸の代わりにリン酸(pKa=2.12)1gを使用した以外は実施例1と同様に反応を行い、ノボラック樹脂F90gを得た。
【0023】
比較例1
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、ベンズアルデヒド49g、ホウ酸ナトリウム12g、シュウ酸1gを仕込み、100℃で8時間反応させたが、反応が進行せず樹脂は得られなかった。
【0024】
比較例2
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、ベンズアルデヒド49g、シュウ酸1gを仕込み、100℃で8時間反応させたが、反応が進行せず樹脂は得られなかった。
【0025】
比較例3
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、ベンズアルデヒド49g、ホウ酸1g、吉草酸(pKa=5.17)1gを仕込み、100℃で8時間反応させたが、反応が進行せず樹脂は得られなかった。
【0026】
比較例4
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、ベンズアルデヒド49g、パラトルエンスルホン酸10gを仕込み、100℃で8時間反応させた。
次いで、水酸化ナトリウム水溶液で中和した後、純水100gで5回洗浄を行い塩を除去した。
次いで180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂G77gを得た。
図2に樹脂Eのゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)チャートを示す。なお、横軸は溶出時間(分)を示す。
図2から樹脂Eは、2核体以外に相当量の多核体が生成していることが分かる。
【0027】
比較例5
フェノール類としてメタクレゾールを使用した以外は比較例4と同様に行い、ノボラック樹脂H82gを得た。
【0028】
実施例1〜6で得られたノボラック樹脂、比較例4および5で得られたノボラック樹脂について下記分析方法で測定した値を表1に示す。
樹脂の分析方法は以下の通りである。
(1)数平均分子量、重量平均分子量、分散度
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。
カラム構成は昭和電工(株)製のKF−804を2本用い、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、流量1ml/分で測定した。
分子量はポリスチレン換算、含有率は全ピーク面積中の百分率で算出した。
分散度は重量平均分子量/数平均分子量で算出した。
(2)軟化点(℃)
エレックス科学製気相軟化点測定装置EX−719PDを用いて昇温速度2.5℃/分で測定した。
(3)溶融粘度(mPa・s)
リサーチ・イクウィップ社製ICI粘度計を用い、150℃で測定した。
【0029】
【表1】

【0030】
実施例7
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、ベンズアルデヒド49g、サリチルアルデヒド2g、ホウ酸1g及びシュウ酸1gを仕込み、100℃で8時間反応させた。
次いで、純水100gで2回洗浄を行い、ホウ酸及びシュウ酸を除去した。
次いで、180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂I92gを得た。
【0031】
実施例8
フェノール類としてメタクレゾールを使用した以外は実施例7と同様に反応を行い、ノボラック樹脂J97gを得た。
【0032】
実施例9
フェノール類としてオルソクレゾール50g、パラクレゾール50gを使用した以外は実施例7と同様に反応を行い、ノボラック樹脂K94gを得た。
【0033】
実施例10
サリチルアルデヒドの代わりに2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド2gを使用した以外は実施例7と同様に反応を行い、ノボラック樹脂L93gを得た。
【0034】
比較例6
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、ベンズアルデヒド49g、サリチルアルデヒド2g及びシュウ酸1gを仕込み、100℃で8時間反応させたところ、反応が進行せず樹脂は得られなかった。
【0035】
比較例7
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、ベンズアルデヒド49g、サリチルアルデヒド2g及びホウ酸1gを仕込み、100℃で8時間反応させたところ、反応が進行せず樹脂は得られなかった。
【0036】
実施例7〜10で得られたノボラック樹脂について上記分析方法で測定した値を表2に示す。
【0037】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明のノボラック樹脂は、分子量が低いため流動性が高く、エポキシ樹脂の硬化剤として使用した熱硬化性樹脂組成物は、成形時の流動性が著しく向上する。
本発明のノボラック樹脂を半導体封止材用として使用した場合、充填剤量を多くすることにより成形品の線膨張係数の低減や吸湿率の低減、難燃性の向上が可能となる。
また、その硬化物は、良好な耐熱性、耐湿性、機械的特性、電気絶縁性、金属との接着性などを有し、従って、高信頼性を必要とする電子材料用途に非常に有効である。
具体的には、電子部品の封止材用樹脂組成物、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト(導電性充填剤含有)、塗料、接着剤、複合材料等に利用可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
B−(OR)3 (I)
(式中、Rは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基を示す。)
で表されるホウ素化合物およびpKaが5.0以下の酸を含む触媒の存在下、フェノール類とアルデヒド類とを反応させることを特徴とするノボラック樹脂の製造方法。
【請求項2】
前記酸のpKaが0.0〜4.0の範囲である請求項1に記載のノボラック樹脂の製造方法。
【請求項3】
式(I)で表されるホウ素化合物が、ホウ酸である請求項1に記載のノボラック樹脂の製造方法。
【請求項4】
フェノール類がフェノールまたはクレゾールで、アルデヒド類がベンズアルデヒドであり、式(I)で表されるホウ素化合物がホウ酸である上記1に記載の製造方法によって得られるノボラック樹脂の数平均分子量が、300〜600であり、分散度(重量平均分子量/数平均分子量)が1.3以下で、かつ150℃における溶融粘度が300mPa・s以下であるノボッラク樹脂。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−180399(P2010−180399A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282115(P2009−282115)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】