説明

ノボラック樹脂の製造方法

【課題】 本発明はフェノール類またはフェノール誘導体と芳香族アルデヒドとを、温和な条件下で反応させて、効率的にノボラック樹脂を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】オルソヒドロキシベンズアルデヒド類とフェノール性芳香族化合物の少なくとも1種を、ホウ酸の存在下で反応させるノボラック樹脂の製造方法。前記オルソヒドロキシベンズアルデヒド類としては、サリチルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、およびメチルサリチルアルデヒドなどが、また、フェノール性芳香族化合物としては、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、ビスフェノールA、アニソール、パラキシレングリコールジメチルエーテル、ならびにジフェニルエーテルなどが挙げられる。さらにホルムアルデヒド類を共存させてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性、耐湿性が良好で溶融粘度の低いノボラック樹脂の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、耐熱性があり様々な分野に使用されている。例えば、エポキシ樹脂の硬化剤として用いた場合、耐熱性、密着性、電気絶縁性等に優れ、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、電子部品の封止材用樹脂組成物、レジストインキ、導電ペースト(導電性充填剤含有)、塗料、接着剤、複合材料等に用いられている。
さらに近年の技術革新に伴い、エポキシ樹脂組成物において、硬化剤として用いられるフェノール樹脂にも耐熱性、耐湿性、難燃性等の向上が求められている。フェノールは一般的に耐熱性を有する樹脂であるが、樹脂中の水酸基およびメチレン基は酸化の影響を受けやすいため、この点を改良することで更なる耐熱性の向上が期待できる。そのため芳香族アルデヒド類の使用や、フェノール性水酸基のアルコキシル化、アルコキシベンゼン類とフェノール類の共縮合などによる樹脂の耐熱性向上が検討されてきた(特許文献1〜3を参照)。
しかし芳香族アルデヒド類は、ホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドと比較して反応性が乏しく、またアルコキシベンゼン類もフェノール類と比較すると反応性に乏しいため、これらを原料としてノボラック樹脂を製造する場合、反応触媒は硫酸、塩酸、トリフルオロメタンスルホン酸など極めて酸性度の高いものが選択されてきた。
特許文献1では、サリチルアルデヒドとフェノール類を酸触媒の存在下で反応しているが、酸触媒としては、トリフルオロメタンスルホン酸のような超強酸を使用するか、または塩酸のような強酸を大量に使用しなければ十分な反応性を得ることができない。そのため超強酸または大量の強酸による製造設備への腐食や、触媒の除去あるいは処理に多くの廃液が発生することから、工業的に有利な方法であるとはいえない。
特許文献2では、アルコキシベンゼン類で変性したフェノール樹脂が示されている。しかしその製造方法は、レゾール型フェノール樹脂をアルコキシ化した後、酸触媒でノボラック化するものであり、製造工程が非常に長くなることが欠点である。
また特許文献3で示された変性フェノール樹脂の製造方法においても、酸触媒として具体的に記載されている酸は、有機スルホン酸や硫酸などであり、やはり上記の問題があった。
このように芳香族アルデヒド若しくはフェニルエーテル類のような反応性の乏しいモノマーを原料として変性ノボラック樹脂を製造する場合、超強酸を使用するか若しくはハロゲン化水素やスルホン酸系化合物などの強酸を大量に使用する以外に有効な製造方法はなかった。
【0003】
【特許文献1】特開2002−275228号公報
【特許文献2】特開2004−10700号公報
【特許文献3】特開2006−161036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は以上のような事情に基づいてなされたものであり、フェノール類またはフェノール誘導体と芳香族アルデヒドとを、温和な条件下で反応させて、効率的にノボラック樹脂を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題が芳香族アルデヒドとしてオルソヒドロキシベンズアルデヒド類を、酸触媒としてホウ酸を組み合わせることによって、前記目的が達成されることを見出したことに基づくものである。即ち、本発明は以下を要旨とする。
1.式(I)で表されるオルソヒドロキシベンズアルデヒド類と、式(II)で表される芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種とを、ホウ酸の存在下で反応させることを特徴とするノボラック樹脂の製造方法。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシル基を示し、kは0〜3の整数を示す。)
【化2】

(式中、Aは、−OR2、又は−R3を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜10のヒドロキシアラルキル基、(注:ビスフェノールAのため)、炭素数2〜10のアシル基、炭素数6〜12のアリール基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示し、R3は、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基を示し(注:パラキシレングリコールジメチルエーテルのため)、R4は、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシル基、または炭素数1〜10のアルコキシアルキル基を示し、jは0〜3の整数を示す。)
2.前記式(I)で表される化合物が、サリチルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、およびメチルサリチルアルデヒドから選ばれる少なくとも1種である上記1記載のノボラック樹脂の製造方法。
3.前記式(II)で表される化合物が、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、ビスフェノールA、アニソール、パラキシレングリコールジメチルエーテル、ならびにジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種である上記1または2に記載のノボラック樹脂の製造方法。
4.さらにホルムアルデヒド類を共存させる上記1〜3のいずれかに記載のノボラック樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、特定の芳香族アルデヒドとフェノール性芳香族化合物とを、温和な条件下で反応させて、効率的にノボラック樹脂を製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下本発明を詳しく説明する。
本発明のノボラック樹脂の製造方法においては、アルデヒド類として、式(I)で表されるオルソヒドロキシベンズアルデヒド類が使用される。
【化3】

式中、R1は、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシル基を示し、kは0〜3の整数を示す。
このうち、炭素数1〜10のアルキル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、デシル基等が挙げられる。
また、炭素数1〜10のアルコキシル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基等を挙げることができる。
ベンゼン環上の置換基R1の数を示すkは、0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0または1の整数である。kが2または3の場合には、R1は同一であっても、異なっていてもよい。
【0008】
式(I)で表されるオルソヒドロキシベンズアルデヒド類の具体例としては、サリチルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、メチルサリチルアルデヒドなどのオルソヒドロキシベンズアルデヒド類が挙げられ、単独若しくは2種以上混合して使用することができる。
式(I)で表されるオルソヒドロキシベンズアルデヒド類を使用することにより、ノボラック樹脂中に、オルソヒドロキシフェニルメチレン基が形成される。
【0009】
本発明方法においては、前記アルデヒド類として、式(I)で表されるアルデヒド化合物以外に、必要に応じて、ホルムアルデヒド類(以下、両者をあわせてアルデヒド類という)を使用することもできる。このようなホルムアルデヒド類として、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒドなどが例示される。
ホルムアルデヒド類を使用することにより、メチレン基が形成される。
アルデヒド類は、その合計量が、以下に述べる式(II)で表される芳香族化合物の合計量1モルに対して、0.3〜1.5モル、好ましくは0.4〜1,2モルの割合となるように添加される。添加量をこの範囲とすることにより、得られるノボラック樹脂の収率が良好で、かつ、反応に関与しないアルデヒド類の割合が少なくなるので、経済的に好ましい。
【0010】
本発明では、アルデヒド類と反応させる化合物としては、例えば、式(II)で表される芳香族化合物が例示される。
【化4】

(式中、Aは、−OR2、又は−R3を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜10のヒドロキシアルアルキル基、炭素数2〜10のアシル基、炭素数6〜12のアリール基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示し、R3は、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基を示し、R4は、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシル基、または炭素数2〜10のアルコキシアルキル基を示し、jは0〜3の整数を示す。)
【0011】
上記のうち、炭素数1〜10のアルキル基、および炭素数2〜10のアルコキシル基としては、前記で説明したものと同様のものが例示される。
炭素数2〜10のアルケニル基としては、直鎖状でも分岐状でもよく、例としては、ビニル基、アリル基、1−プロペニル基、イソプロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、3−ブテニル基、1−ヘキセニル基、1−ヘプテニル基、1−オクテニル基、1−ノネニル基、1−デセニル基等を挙げることができる。
炭素数2〜10のアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、バレリル基、ピバロイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、デセノイル基等を挙げることができる。
炭素数6〜12のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などが挙げられる。
炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロデシル基等を挙げることができる。
また、炭素数2〜10のアルコキシアルキル基は、メトキシメチル基、エトキシ基メチル、プロポキシエチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシプロピル基、イソブトキシブチル基、ヘキシルオキシブチル基、ヘプチルオキシエチル基、オクチルオキシエチル基、ノニルオキシメチル基などを挙げることができる。
ベンゼン環上の置換基R4の数を示すjは、0〜3の整数であり、好ましくは0〜2の整数、より好ましくは0または1の整数である。jが2または3の場合には、R4は同一であっても、異なっていてもよい。
このような式(II)で表される芳香族化合物としては、具体的には、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、ブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、フェニルフェノール、シクロヘキシルフェノール、トリメチルフェノール、カテコール、メトキシフェノール、エトキシフェノール、アリルフェノール、レゾルシノール、ナフトール、ビスフェノールA、アニソール,パラキシリレングリコールジメチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが挙げられ、これらを単独若しくは2種以上混合して使用することができる。
上記式(II)で表される芳香族化合物は、重合後のノボラック樹脂全体の50〜70モル%となるように添加される。
【0012】
本発明では、式(I)で表されるオルソヒドロキシベンズアルデヒド類と式(II)で表される化合物とを反応させるが、その際使用する酸触媒として、ホウ酸を必須成分として使用する。
ホウ酸の配合量は、フェノール性芳香族化合物100質量部に対して0.1〜20質量部、好ましくは0.5〜10重量部の割合で用いるのが良い。
ホウ酸を用いることにより、従来法のように大量の強酸を用いることなく、温和な条件下で反応させることが可能となるが、必要に応じて、塩酸、硝酸、硫酸、リン酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などを併用してもよい。これらの酸を併用することでホウ酸を単独で使用した場合よりも反応速度を上げる効果が得られるだけでなく、その使用量も、ホウ酸存在下では極めて少量の添加で反応促進の効果が得られる。
【0013】
式(I)で表される芳香族化合物と、アルデヒド類とを反応させるやり方は、特に制限はなく、例えば式(I)で表される化合物と、アルデヒド類、および酸触媒を一括で仕込み反応させる方法、または式(I)で表される化合物と酸触媒を仕込み、所定の反応温度にてアルデヒド類を添加する方法が挙げられる。このとき反応温度は80〜180℃の範囲で行うと良い。80℃未満であると反応の進行が遅く、かつ未反応のフェノール性芳香族化合物や、アルデヒド類が残存するため好ましくない。また、反応時間は特に制限はなく、アルデヒド類および触媒の量、反応温度により調整すればよい。反応の際、有機溶剤を使用することももちろん可能である。
このような有機溶媒としては、プロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、ブチレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸プロピル、酢酸ブチル、乳酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、1,4−ジオキサン等のエーテル類等が単独で、若しくは二種以上を併用して使用できる。
前記有機溶媒は、フェノール性芳香族化合物100質量部に対して、0〜1,000質量部、好ましくは10〜100質量部程度となるように使用することができる。反応後は蒸留により縮合水を除去したり、また必要に応じて水洗して残存触媒を除去しても良い。更に減圧蒸留或いは水蒸気蒸留を行って未反応のフェノール性芳香族化合物や未反応アルデヒド類を除去しても良い。
【0014】
前記アルデヒド類と、フェノール性芳香族化合物とをホウ酸存在下に反応させると、それぞれ式(III)と式(IV)で表される繰返し単位を含むノボラック樹脂が得られる。
【化5】

式(III)中、AおよびBは、OR2、又は−R3を示し、同一でも異なっていてもよい。R1、R2、R3、R4、j、およびkは、上記と同様である。R5は、水素、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシル基、炭素数1〜10のアルコキシアルキル基を示す。mは、0〜3の整数を示し、nは、1〜10の整数を示し、rは、A=B、R4=R5、およびj=mのとき、0を示し、前記以外のとき、1を示す。
【化6】

(式(IV)中、A、B、R4、R5、jおよびmは前記同様である。Sは、A=B、R3=R5、およびj=mのとき、0を示し、前記以外のとき、1を示す。qは、0、または1〜10の整数を示す。)
【実施例】
【0015】
以下に本発明の製造方法によるノボラック樹脂の合成例を示して、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下に限定されるものではない。
実施例1
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、サリチルアルデヒド56g、酸触媒としてホウ酸1gを仕込み、100℃で8時間反応させた。次いで純水100部で2回洗浄を行い、触媒を除去した。次いで180℃、50mmHgの減圧下で出分を除去し、ノボラック樹脂A100gを得た。
〔図1〕に樹脂AのH−NMRスペクトルを示す。δ=5.5〜6.0ppm付近に芳香族アルデヒド由来のメチンのシグナルが見られる。
【0016】
実施例2
フェノール類としてオルソメトキシフェノールを使用し、酸触媒にホウ酸1gとシュウ酸1gを使用し、120℃で6時間反応させた以外は実施例1と同様に行い、ノボラック樹脂B90gを得た。
【0017】
実施例3
フェニルエーテル類としてアニソールを使用し、140℃で6時間反応させた以外は実施例2と同様に行い、変性ノボラック樹脂C85gを得た。
【0018】
比較例1
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、サリチルアルデヒド56g、酸触媒としてシュウ酸5gを仕込み100℃で8時間反応させた。次いで純水100gで2回洗浄を行い、触媒を除去した。次いで180℃、50mmHgの減圧下で溜出分を除去し、ノボラック樹脂Dを得たが、収量はわずか7gであった。
【0019】
比較例2
酸触媒にパラトルエンスルホン酸1gを使用した以外は実施例1と同様に行い、ノボラック樹脂E90gを得た。
【0020】
比較例3
冷却管、攪拌機を備えたフラスコに、オルソクレゾール100g、メタヒドロキシベンズアルデヒド56g、酸触媒としてホウ酸1gを仕込み100℃で8時間反応させたが、反応が進行せず樹脂は得られなかった。
【0021】
比較例4
酸触媒にシュウ酸1gを使用した以外は、実施例3と同様の配合にて、140℃で6時間反応させたが、反応が進行せず樹脂は得られなかった。
【0022】
実施例1〜3で得られたノボラック樹脂、比較例1、および2で得られたノボラック樹脂のそれぞれについて、表1に示す配合で溶融混練して熱硬化性樹脂組成物1〜5を得た。得られた組成物のガラス転移温度、線膨張係数および吸水率を次の方法により評価した。
(1)ガラス転移温度と熱膨張係数の評価
SII社製SSC/5200を使用してTMA法にてガラス転移温度及び線膨張係数を測定した。昇温速度は10℃/分で行った。
(2)吸水率
楠本化成社製プレッシャークッカーを使用して、121℃で20時間保持した後の重量増加率を測定した。
【0023】
【表1】

ここで、
ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂: (商品名NC−3000H:日本化薬社製)
トリフェニルホスフィン: (和光純薬工業社製)
溶融シリカ: (商品名MSR−2212:龍森社製)
【0024】
表1より、本発明の熱硬化性樹脂組成物においては、強酸を多量に使用することなく、温和な条件下にノボラック樹脂を合成することができる。
こうして得られたノブラック樹脂は、耐熱性、耐湿性が良好で、溶融粘度の低いノボラック樹脂であり、従来のノボラック樹脂と同等の性能を示すことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明のノボラック樹脂の合成方法は、温和な条件下で合成することができる。また、本発明方法により得られたノボラック樹脂は、エポキシ樹脂の硬化剤として使用したときに、硬化物に対して良好な耐熱性、耐湿性を与えることができる。従って、本発明によって得られたノボラック樹脂は、特に電子部品の封止材用樹脂組成物、プリント基板用樹脂組成物、プリント基板および樹脂付き銅箔に使用する層間絶縁材料用樹脂組成物、導電ペースト(導電性充填剤含有)、塗料、接着剤、複合材料等に好適に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施例1で得られたノボラック樹脂AのH−NMR測定チャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるオルソヒドロキシベンズアルデヒド類と、式(II)で表される芳香族化合物から選ばれる少なくとも1種とを、ホウ酸の存在下で反応させることを特徴とするノボラック樹脂の製造方法。
【化1】

(式中、R1は、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシル基を示し、kは0〜3の整数を示す。)
【化2】

(式中、Aは、−OR2、又は−R3を示し、R2は、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数7〜10のヒドロキシアラルキル基、、炭素数2〜10のアシル基、炭素数6〜12のアリール基、または炭素数3〜12のシクロアルキル基を示し、R3は、炭素数2〜6のアルコキシアルキル基を示し、R4は、水素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルキル基、または炭素数1〜10のアルコキシル基、または炭素数1〜10のアルコキシアルキル基を示し、jは0〜3の整数を示す。)
【請求項2】
前記式(I)で表される化合物が、サリチルアルデヒド、2,3−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,4−ジヒドロキシベンズアルデヒド、2,5−ジヒドロキシベンズアルデヒド、およびメチルサリチルアルデヒドから選ばれる少なくとも1種である請求項1記載のノボラック樹脂の製造方法。
【請求項3】
前記式(II)で表される化合物が、フェノール、クレゾール、エチルフェノール、キシレノール、ビスフェノールA、アニソール、パラキシレングリコールジメチルエーテル、ならびにジフェニルエーテルから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載のノボラック樹脂の製造方法。
【請求項4】
さらにホルムアルデヒド類を共存させる請求項1〜3のいずれかに記載のノボラック樹脂の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−13600(P2010−13600A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176976(P2008−176976)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(000187068)昭和高分子株式会社 (224)
【Fターム(参考)】