説明

ノルボルネン系重合体の製造方法およびパラジウム錯体

【課題】ノルボルネン系重合体を生産性高く製造する方法および該方法における触媒として好適に用いられる新規なパラジウム錯体を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で示される少なくとも一種の金属化合物成分(A)を触媒として使用するノルボルネン系重合体の製造方法および下記式(IV)で表される化合物。


(上記一般式(I)において、Xは置換基を有さない炭素数1〜20のアルキル基、Rは各々独立に炭素数3〜8の2級アルキル基もしくは炭素数4〜8のシクロアルキル基であり、Xは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン、アセトキシ基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基、カルボニル、トリフルオロメタンスルホニル基、またはトリフルオロアセトキシ基を表し、Mは周期律表第10族の元素を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノルボルネン系重合体の製造方法およびパラジウム錯体に関する。
【背景技術】
【0002】
ノルボルネン系化合物を主鎖に有する重合体(ノルボルネン系重合体)を用いて得られるフィルムは、高い耐熱性、低複屈折、湿度に対する安定性を有することから、光学フィルムとして有望である。そのようなノルボルネン系化合物の重合において、カチオン性アルキルパラジウム錯体が触媒活性種として有効であることが従来知られている。
しかし、このカチオン性アルキルパラジウム錯体は酸素や水分に対して不安定であるため、取り扱いの容易な中性アルキルパラジウム錯体(主触媒)とアニオン性配位子引き抜き剤(助触媒)を反応系で混合させる手法が一般的である。
【0003】
例えば、特許文献1には、(メチル)(トリt−ブチルホスフィン)(クロリド)パラジウムとナトリウムペンタフルオロフェニルボレートを用いることでビニル系モノマーやノルボルネンの重合が進行することが記載されているが、該特許文献1でノルボルネンの重合に用いられているのはt−ブチルホスフィンのみであり、この錯体では重合活性が十分とはいえない(特許文献2、非特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2006−241325号公報
【特許文献2】特開2008−88247号公報
【非特許文献1】Organometallics.2006,25,4588.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって本発明の課題は、ノルボルネン系重合体を生産性高く製造する方法および該方法における触媒として好適に用いられる新規なパラジウム錯体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明者等は、従来の触媒系でホスフィン配位子を2級アルキル基またはシクロアルキル基を有するものとすることで収率が向上することを見出した。更に、有機典型金属化合物を共存させることで、更に収率が向上することを見出した。
【0007】
すなわち下記手段によって上記課題を解決した。
1. 下記一般式(I)で示される少なくとも一種の金属化合物成分(A)を触媒として使用するノルボルネン系重合体の製造方法。
【0008】
【化1】

【0009】
(上記一般式(I)において、Xは置換基を有さない炭素数1〜20のアルキル基、Rは各々独立に炭素数3〜8の2級アルキル基もしくは炭素数4〜8のシクロアルキル基であり、Xは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン、アセトキシ基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基、カルボニル、トリフルオロメタンスルホニル基、またはトリフルオロアセトキシ基を表し、Mは周期律表第10族の元素を表す。)
2. 前記一般式(I)において、全てのRが、シクロヘキシル基またはシクロペンチル基であることを特徴とする上記1に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
3. 前記一般式(I)において、Mがパラジウムであることを特徴とする上記1または2に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
4. 前記一般式(I)において、Xがメチル基であり、全てのRがシクロペンチル基であり、かつMがパラジウムであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
5. 中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩(B)をさらに使用することを特徴とする上記1〜4のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
6. 不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物(C)をさらに使用することを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
7. 前記有機典型金属化合物(C)が下記一般式(II)で表されることを特徴とする上記6に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【0010】
【化2】

【0011】
(一般式(II)中、M’はマグネシウム原子、亜鉛原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、ケイ素原子、またはスズ原子を表し、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Rは有機基、極性基またはハロゲンを表し、nは1〜3の整数を表す。)
8. 前記一般式(II)で表される有機典型金属化合物(C)のM’がスズ原子であり、Rがブチル基であり、nが3であることを特徴とする上記7に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
9. 下記一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物をモノマーとして用いることを特徴とする上記1〜8のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【0012】
【化3】

【0013】
(一般式(III)中、A、A、AおよびAはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基またはノルボルネン環構造への連結基を有していてもよいハロゲン、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、ケイ素のいずれかの原子を少なくとも一種含む極性置換基を表す。A、A、AおよびAのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。ただし、A〜Aの少なくとも1つは水素原子および炭化水素基から選ばれる基以外の基である。mは0または1を表す。)
10. 下記式(IV)で表される化合物。
【0014】
【化4】

【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ノルボルネン系重合体を高収率にて得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明は、下記一般式(I)で示される少なくとも一種の金属化合物成分(A)を触媒として使用するノルボルネン系重合体の製造方法に関する。
【0017】
【化5】

【0018】
(上記一般式(I)において、Xは置換基を有さない炭素数1〜20のアルキル基、Rは各々独立に炭素数3〜8の2級アルキル基もしくは炭素数4〜8のシクロアルキル基であり、Xは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン、アセトキシ基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基、カルボニル、トリフルオロメタンスルホニル基、またはトリフルオロアセトキシ基を表し、Mは周期律表第10族の元素を表す。)
【0019】
なお、本発明でいう2級アルキル基とは、2級炭素原子を有するアルキル基を意味する。
【0020】
は、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基であり、より好ましくはメチル基である。
【0021】
は、好ましくはハロゲン、アセトキシ基、トリフルオロメタンスルホニル基、またはトリフルオロアセトキシ基を表し、より好ましくはハロゲンであり、最も好ましくは塩素原子である。
【0022】
Rは、好ましくは、イソプロピル、シクロヘキシル、シクロペンチル基であり、より好ましくはシクロヘキシル、シクロペンチル基であり、最も好ましくはシクロペンチル基である。
【0023】
Mは、好ましくはニッケル、パラジウムであり、より好ましくはパラジウムである。
本発明では、前記一般式(I)において、Xがメチル基であり、Rがシクロペンチル基であり、かつMがパラジウムであるものが特に好ましい。
【0024】
金属化合物成分(A)として以下のものが挙げられるが本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0025】
【化6】

【0026】
前記成分(A)は既知の手法(Organometallics.2006,25,4588.Macromolecules.1996,29,2755)を用いて合成することができる。
【0027】
本発明においては、中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩(B)をさらに用いることが好ましい。
【0028】
中心原子の非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩(B)において、中心原子に非共有電子対をもたないアニオンの例として、ホウ素やアルミニウムのような13族元素に4つの有機基が配位したものが挙げられる。4つの有機基は、アリール基などのようにかさ高いことが好ましく、さらにこの中にはフッ素のような電子吸引性基が含有されていることが好ましい。具体的には、テトラキス(アリール)ボレートやテトラキス(アリール)アルミネートが挙げられ、扱いやすさの点からテトラキス(アリール)ボレートが好ましい。
【0029】
テトラキス(アリール)ボレートとして、テトラキス(フェニル)ボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、テトラキス(2−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−フルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ジフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ボレート、フェニルトリス(パーフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−トリ−i−プロピルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−ジメチル−t−ブチルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]ボレート、テトラキス[3−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3−[2,2,2−トリフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートを挙げることができるが、これらに限定されるわけではない。
【0030】
これらの中でも、アニオン電荷密度の高いテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレート、テトラキス(2,3,4,5−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,4,5,6−テトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−トリ−i−プロピルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(4−ジメチル−t−ブチルシリルテトラフルオロフェニル)ボレート、テトラキス[3,5−ビス[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]フェニル]ボレート、テトラキス[3−[1−メトキシ−2,2,2−トリフルオロ−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、テトラキス[3−[2,2,2−トリフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)−1−(トリフルオロメチル)エチル]−5−(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートが好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、テトラキス(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ボレートがより好ましく、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートが特に好ましい。
【0031】
カウンターカチオンは、金属カチオン(例えば、Li, Na, K, Ca2+, Mg2+等)もしくは有機カチオン、ブレンステッド酸である。有機カチオンとして、トリチルカチオンがあげられる。ブレンステッド酸として、アンモニウムやホスホニウムが挙げられる。これらのアンモニウムやホスホニウムは、立体的なかさ高さがあることが好ましい。扱いやすさの点では、アンモニウムのほうが好ましい。
ホスホニウムとしては、ホスホニウムの三つの水素が、アルキル基もしくはアリール基もしくはこれらの両方で置換された三置換ホスホニウムが好ましい。具体的には、トリシクロヘキシルホスホニウムなどが好ましい。アンモニウムとしては、アンモニウムの三つの水素が、アルキル基もしくはアリール基もしくはこれらの両方で置換された三置換アンモニウムが好ましい。三置換アミンの中でも、立体的にかさ高いジアルキルアリールアンモニウムなどが好ましく、ジメチルアニリニウムアンモニウムなどがより好ましい。
【0032】
(B)成分の具体例として以下のものが挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0033】
【化7】

【0034】
前記成分(B)は市販されているし、特開2007−517958号公報に記載の方法を用いて合成することもできる。
【0035】
本発明においては有機金属化合物成分(A)とともに不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも一つ有する有機典型金属化合物(C)をさらに使用することが好ましい。
【0036】
不飽和結合を有する有機配位子とは、金属に結合している有機基のことをいうが、具体的には例えば、アルケニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜12のものがより好ましく、炭素原子数2〜8のものが特に好ましく、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(炭素原子数6〜30のものが好ましく、炭素原子数6〜20のものがより好ましく、炭素原子数6〜12のものが特に好ましく、例えばフェニル基、p−メチルフェニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、ピレニル基などが挙げられる。)などが挙げられる。
【0037】
さらに、不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物(C)は下記一般式(II)のようなアリル骨格を有するものであることが好ましい。
【0038】
【化8】

【0039】
一般式(II)中、M’はマグネシウム原子、亜鉛原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、ケイ素原子、またはスズ原子を表し、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Rは有機基、極性基またはハロゲン原子を表し、nは1〜3の整数を表す。
【0040】
M’はマグネシウム原子、ケイ素原子、またはスズ原子であることが好ましくスズ原子であることが特に望ましい。
【0041】
、R、R、RおよびRはそれぞれ水素原子であることが好ましく、Rは有機基であることが好ましく、Rがブチル基であることが特に好ましい。
本発明では、前記一般式(II)において、M’がスズ原子であり、Rがブチル基であり、nが3である有機典型金属化合物(C)が特に好ましい。
【0042】
本発明の有機典型金属化合物(C)の具体例として以下のものが挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0043】
【化9】

【0044】
前記成分(C)は市販されているし、文献公知の方法で合成することも可能である。
【0045】
(ノルボルネン系化合物重合用触媒組成物)
本発明における金属化合物成分(A)を触媒として含むノルボルネン系化合物重合用触媒組成物は、上記成分(A)、(B)および(C)を混合して得た組成物が好ましい。
有機典型金属化合物(C)の混合量は、金属化合物成分(A)中の金属原子(M)に対し0.5〜10モル当量が好ましく、0.5〜5モル当量がより好ましく、1〜3モル当量が特に好ましい。
塩(B)の混合量は、金属化合物成分(A)中の金属原子に対し0.5〜10モル当量が好ましく、1〜5モル当量がより好ましく、2〜4モル当量が特に好ましい。
【0046】
金属化合物成分(A)および/または有機典型金属化合物(C)を溶媒に溶解してから混合する場合、溶媒が金属に配位し、触媒の活性を落とすことがある。したがって、溶媒は無極性もしくは低極性であることが好ましく、例えばトルエンなどが挙げられる。
塩(B)については、塩であるため、無極性もしくは低極性溶媒に溶解しないことがあるが、この場合、塩化メチレンなどのハロゲン系の低極性溶媒に溶かして、混合すればよい。
【0047】
本発明におけるノルボルネン系化合物重合用触媒組成物においては、その触媒量が多すぎると10族金属の凝集によりポリマーに着色が生じ、触媒量が少なすぎると反応に時間がかかるもしくは収率が落ちる。したがって、ノルボルネン系化合物1当量に対し触媒中の10族金属の量が10000000分の1モル当量〜1000分の1モル当量となるようにすることが好ましく、1000000分の1モル当量〜1000分の1モル当量となるようにすることがより好ましく、1000000分の1モル当量〜2000分の1モル当量となるようにすることが特に好ましい。
【0048】
本発明におけるノルボルネン系化合物重合用触媒組成物は、空気、水、ノルボルネン系化合物中の不純物などにより、触媒活性が低下することがあるので、重合用のノルボルネン系化合物は、使用前に蒸留もしくは再結晶で精製することが好ましい。ノルボルネン系化合物の純度は、好ましくは95〜100%、より好ましくは98〜100%、特に好ましくは99〜100%である。
【0049】
(ノルボルネン系化合物)
本発明において、好ましく用いられる反応原料モノマーは下記一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物である。
【0050】
【化10】

【0051】
一般式(III)中、A、A、AおよびAはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基またはノルボルネン環構造への連結基を有していてもよいハロゲン、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、ケイ素のいずれかの原子を少なくとも一種含む極性置換基を表す。A、A、AおよびAのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。ただし、A〜Aの少なくとも1つは水素原子および炭化水素基から選ばれる基以外の基である。mは0または1を表す。
【0052】
極性置換基は、電気陰性度の高い原子である、ハロゲン、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、ケイ素のいずれかの原子を少なくとも一種含み、それによって分極が生じている基であり、有機極性基を含む。具体的には例えば、アミノ基(炭素原子数0〜20のものが好ましく、0〜10のものがより好ましく、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(炭素原子数6〜20のものが好ましく、炭素原子数6〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、ヘテロ環オキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばピリジニルオキシ基、ピリミジニルオキシ基、ピリダジニルオキシ基、ベンズイミダゾリルオキシ基などが挙げられる。)、シリルオキシ基(炭素原子数3〜20のものが好ましく、炭素原子数3〜10のものがより好ましく、例えばトリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜10のものがより好ましく、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(炭素原子数7〜20のものが好ましく、炭素原子数7〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニルアミノ基(炭素原子数2〜20のものが好ましく、炭素原子数2〜10のものがより好ましく、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(炭素原子数7〜20のものが好ましく、炭素原子数7〜15のものがより好ましく、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アルキルもしくはアリールスルホニルアミノ基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(炭素原子数0〜20のものが好ましく、炭素原子数0〜10のものがより好ましく、例えばスルファモイル基、N−メチルスルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばカルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、ウレイド基(炭素原子数1〜20のものが好ましく、炭素原子数1〜10のものがより好ましく、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、ヒドロキシ基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基などが挙げられる。これらの置換基は、ノルボルネン環に直接連結していてもよく、アルキレン基などで連結されていてもよく、更に置換されてもよい。また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。極性基として好ましいものは、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、シリルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、およびアリールオキシカルボニルアミノ基であり、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基およびアルコキシカルボニルアミノ基がより好ましい。
【0053】
一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物の具体例として、以下の化合物が挙げられるが、本発明はこれらにより限定されるものではない。
【0054】
【化11】

【0055】
一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物は市販されているし、特開2006−50468号公報に記載の方法を用いて合成することもできる。
【0056】
(重合反応とその諸条件)
・重合反応
本発明におけるノルボルネン系化合物重合用触媒組成物においては、一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物の二重結合のビニル重合により目的の重合体を得る。そして本発明の触媒は単独重合のみならず2種類以上用いた共重合にも適用できる。重合に用いるノルボルネン系化合物が、2種類以上で、これらの重合速度が大きく異なる場合、分子量分布が4以上となり、フィルム用として適当でなくなる場合がある。このような場合、重合速度の早いノルボルネン系化合物を重合反応進行中のときに、添加することで分子量分布を小さくすることができる。また、ノルボルネン系化合物の重合性が高い場合、分子量が高くなりすぎて、溶媒に不溶となる成分が生じることがある。このような場合、αオレフィンを共存させると、分子量を下げることができる。さらに、ノルボルネン系化合物の他に、オレフィンや一酸化炭素との共重合もできる。オレフィンの場合、β水素脱離しないことが条件となり、一酸化炭素の場合、ノルボルネン系化合物との交互共重合を形成することができる。本発明におけるノルボルネン系化合物重合用触媒組成物は、空気もしくは水によって、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、高純度の不活性ガス雰囲気下で取り扱うことが好ましい。
【0057】
・重合反応の溶媒
ノルボルネン系化合物が液体であり、本発明におけるノルボルネン系化合物重合用触媒組成物を溶解させることが可能であるならば、これらを無溶媒で混合させ、ニートで反応させることもできる。しかし、反応の進行とともに、粘度が上昇し、攪拌が困難となることがあるため、ノルボルネン系化合物を溶媒に溶解しておくことが好ましい。
そのときの溶媒は、触媒に対し、配位しにくい低極性溶媒が好ましい。さらに、反応により生じたノルボルネン系重合体を溶解状態にさせておくことのできるものが好ましい。このような溶媒の例として、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、p−シメン、メシチレンのような芳香族炭化水素類があげられ、好ましくはトルエン、キシレンであり、さらに好ましくはトルエンである。
一方、溶媒の極性が低すぎると、ノルボルネン系化合物もしくはノルボルネン系重合体が溶解しにくくなる。したがって、溶媒は用いるノルボルネン系化合物によって、適当なものを用いる必要がある。このような場合、上記の低極性溶媒に適量の極性溶媒を添加することができる。このような極性溶媒として、塩化メチレン、ジクロロエタン等が挙げられる。
【0058】
ノルボルネン系化合物を溶解する溶媒の量は(上記成分(A)〜(C)の溶解に溶媒を用いた場合はそれを含めた総量は)、ノルボルネン系化合物1質量部に対し0〜50質量部が好ましく、0.3〜20質量部がより好ましく、0.5〜5質量部が特に好ましい。
溶媒に、空気もしくは水が混入していると、触媒が不活性化され、重合性が低下もしくは重合が進行しないことがある。したがって、溶媒を用いる場合、使用前に脱水蒸留および脱気することが好ましい。
【0059】
・重合反応の温度
本発明におけるノルボルネン系化合物重合用触媒組成物において、重合反応は、室温以下の反応でも進行するが、加熱をすることで反応を促進できる。しかし、加熱しすぎると触媒活性種が分解してしまう。したがって、反応の温度は、室温〜150℃が好ましく、50〜130℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。
【0060】
・重合反応の反応時間
本発明におけるノルボルネン系化合物重合用触媒組成物において、その重合反応の反応時間は、反応温度と溶媒の量、ノルボルネン系化合物の種類などに依存するが、数十分から十数時間で終了させることができる。反応の終了は、反応液がパラジウムブラックが生じるところで判定できるが、反応時間が長くなることがあるので、適宜終了させることが好ましい。
【0061】
・重合反応の後処理
反応液の加熱を停止したあと、反応液をそのままもしくは適当な溶媒で希釈した後、貧溶媒(例えば、メタノールなどのアルコール系溶媒)と混合させると、白色〜黄白色の固体が得られる。これをろ取、真空乾燥することでノルボルネン系重合体が得られる。なお、重合体の黄色味が強い場合、適当な還元剤を用いると残存の2価パラジウムをパラジウムブラックとすることができ、これをろ過して取り除けば、白色の重合体が得られる。
【実施例】
【0062】
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0063】
トルエン(溶媒)、ノルボルネン系モノマーはすべて蒸留精製を行い充分に乾燥したものを用いた。重合装置としてはオートクレーブを用い重合を行った。(cod)Pd(Me)Clは文献記載の方法を用いて合成した(Inorg.Chem.1993,32,5769)。ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルは関東化学から購入した。(tBu)PPd(Me)Clは文献記載の方法を用いて合成した(J.Orgnomet.Chem.2006,691,3189)。以下の実施例において、得られたポリマーをH NMRで解析した結果、付加重合体であることが確認された。
【0064】
合成例1
(Cyclopentyl)PPd(Me)Cl(A−2)の合成
アルゴン置換したシュレンクフラスコにトリシクロペンチルホスフィン(Aldrich社製)(614mg,2.58mmol)と(cod)Pd(Me)Cl(685mg,2.59mmol)を投入した。この混合物に室温で塩化メチレン(6.8mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液をヘキサン中に滴下し、生成した沈殿物を濾別、ヘキサン洗浄、乾燥して標記の錯体を得た(収量:560mg,収率:57%)。
H NMR(CDCl,300MHz)2.4−2.1(m,3H),2.03−1.43(m,24H),0.7(s,3H);31P NMR(CDCl,122MHz)44.3ppm.
【0065】
合成例2
(Cyclohexyl)PPd(Me)Cl(A−3)の合成
アルゴン置換したシュレンクフラスコにトリシクロヘキシルホスフィン(Aldrich社製)(1.057g,3.77mmol)と(cod)Pd(Me)Cl(1g,3.77mmol)を投入した。この混合物に室温で塩化メチレン(7mL)を加え、室温で2時間撹拌した。反応溶液をヘキサン中に滴下し、生成した沈殿物を濾別、ヘキサン洗浄、乾燥して標記の錯体を得た(収量:1.02g,収率:62%)。
H NMR(CDCl,300 MHz)2.25−1.48(m,24H),1.40−1.1(m,9H),0.65(s,3H);31P NMR(CDCl,122MHz)44.2ppm.
【0066】
実施例1
(Cyclopentyl)PPd(Me)Cl(A−2)を用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル(M−II−1)の重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(Cyclopentyl)PPd(Me)Cl(0.018mmol)とNaB(3,5−(CF(B−8)(東京化成社製)(0.026mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル(M−II−1)(20g,0.13mol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルを得た(収率:82%)。
【0067】
比較例1
(tBu)PPd(Me)Clを用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルの重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(tBu)PPd(Me)Cl(0.018mmol)とNaB(3,5−(CF)(B−8)(東京化成社製)(0.026mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル(20g,0.13 mol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルを得た(収率:62%)。
【0068】
実施例2
(Cyclopentyl)PPd(Me)Clを用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルの重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(Cyclopentyl)PPd(Me)Cl(0.018mmol)とN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)(B−1)(0.026 mmol)、アリルトリブチルスズ(C−9)(東京化成社製)(0.054 mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル(20g,0.13 mmol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルを得た(収率:88%)。
【0069】
実施例3
(Cyclohexyl)PPd(Me)Clを用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルの重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(Cyclohexyl)PPd(Me)Cl(0.018 mmol)とNaB(3,5−(CF(B−8)(0.026mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル(20g,0.13mol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルを得た(収率:78%)。
【0070】
実施例4
(Cyclohexyl)PPd(Me)Clを用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルの重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(Cyclohexyl)PPd(Me)Cl(0.018 mmol)とN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)(B−1)(0.026mmol)、アリルトリブチルスズ(C−9)(東京化成社製)(0.054mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチル(20g,0.13mmol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボン酸メチルを得た(収率:80%)。
【0071】
実施例5
(Cyclopentyl)PPd(Me)Clを用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメチルアセタート(M−II−5)の重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(Cyclopentyl)PPd(Me)Cl(0.018mmol)とN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)(Strem社製)(0.026mmol)、アリルトリブチルスズ(C−9)(東京化成社製)(0.054 mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメチルアセタート(M−II−5)(0.13mmol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメチルアセタートを得た(収率:92%)。
【0072】
実施例6
(Cyclopentyl)PPd(Me)Clを用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルペンタノアート(M−II−10)の重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(Cyclopentyl)PPd(Me)Cl(0.018mmol)とN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)(Strem社製)(0.026mmol)、アリルトリブチルスズ(C−9)(東京化成社製)(0.054mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルペンタノアート(M−II−10)(0.13mmol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルペンタノアートを得た(収率:89%)。
【0073】
実施例7
(Cyclopentyl)PPd(Me)Clを用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメタノール(M−II−4)の重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(Cyclopentyl)PPd(Me)Cl(0.018mmol)とN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)(0.026mmol)、アリルトリブチルスズ(C−9)(東京化成社製)(0.054 mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメタノール(M−II−4)(0.13mmol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−イルメタノールを得た(収率:84%)。
【0074】
実施例8
(Cyclopentyl)PPd(Me)Clを用いたビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボキサミド(M−II−12)の重合
アルゴン置換した300mlシュレンクフラスコに(Cyclopentyl)PPd(Me)Cl(0.018mmol)とN,N−ジメチルアニリニウム・テトラキス(ペンタフルオロフェニルボレート)(0.026mmol)、アリルトリブチルスズ(C−9)(東京化成社製)(0.054mmol)、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−5−エン−2−カルボキサミド(M−II−12)(0.13mmol)を投入した。この混合物にトルエン20mlを加え、85度で6時間撹拌した。得られた反応溶液をメタノール中に投入し、ポリノルボルネンー2−カルボキサミドを得た(収率:80%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で示される少なくとも一種の金属化合物成分(A)を触媒として使用するノルボルネン系重合体の製造方法。
【化1】


(上記一般式(I)において、Xは置換基を有さない炭素数1〜20のアルキル基、Rは各々独立に炭素数3〜8の2級アルキル基もしくは炭素数4〜8のシクロアルキル基であり、Xは水素原子、置換基を有してもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン、アセトキシ基、アミノ基、アミド基、カルボキシル基、ニトロ基、カルボニル、トリフルオロメタンスルホニル基、またはトリフルオロアセトキシ基を表し、Mは周期律表第10族の元素を表す。)
【請求項2】
前記一般式(I)において、全てのRが、シクロヘキシル基またはシクロペンチル基であることを特徴とする請求項1に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【請求項3】
前記一般式(I)において、Mがパラジウムであることを特徴とする請求項1または2に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【請求項4】
前記一般式(I)において、Xがメチル基であり、全てのRがシクロペンチル基であり、かつMがパラジウムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【請求項5】
中心原子に非共有電子対をもたないアニオンとカウンターカチオンとからなる塩(B)をさらに使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【請求項6】
不飽和結合を有機配位子の中に少なくとも1つ有する有機典型金属化合物(C)をさらに使用することを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【請求項7】
前記有機典型金属化合物(C)が下記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項6に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【化2】


(一般式(II)中、M’はマグネシウム原子、亜鉛原子、ホウ素原子、アルミニウム原子、ジルコニウム原子、ケイ素原子、またはスズ原子を表し、R、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素原子または有機基を表し、Rは有機基、極性基またはハロゲンを表し、nは1〜3の整数を表す。)
【請求項8】
前記一般式(II)で表される有機典型金属化合物(C)のM’がスズ原子であり、Rがブチル基であり、nが3であることを特徴とする請求項7に記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【請求項9】
下記一般式(III)で表されるノルボルネン系化合物をモノマーとして用いることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載のノルボルネン系重合体の製造方法。
【化3】


(一般式(III)中、A、A、AおよびAはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜20の炭化水素基またはノルボルネン環構造への連結基を有していてもよいハロゲン、酸素、窒素、硫黄、リン、ホウ素、ケイ素のいずれかの原子を少なくとも一種含む極性置換基を表す。A、A、AおよびAのうち少なくとも2つは互いに結合して環を形成してもよい。ただし、A〜Aの少なくとも1つは水素原子および炭化水素基から選ばれる基以外の基である。mは0または1を表す。)
【請求項10】
下記式(IV)で表される化合物。
【化4】


【公開番号】特開2010−83928(P2010−83928A)
【公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−251928(P2008−251928)
【出願日】平成20年9月29日(2008.9.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】