説明

ハイブリッドセンサ

【課題】 曲面のある支持体の表面にも良好に適合し、誤検出の発生も防止する。
【解決手段】 ハイブリッドセンサ1は、荷重印加によってオンオフする接触センサ10と、物体の接近を非接触で検出する静電容量式近接センサ20とを備える。これら接触センサ10及び静電容量式近接センサ20は、第1の可撓性シート11上に形成されている。接触センサ10は3層構造体、静電容量式近接センサ20は2相構造体のため、ハイブリッドセンサ1は、静電容量式近接センサの部分で所望の可撓性が確保され、撓みによる接触センサ10での誤接触を防止している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極パターンが形成された複数枚の可撓性シートを重合してなるメンブレン回路に関し、特に物体の近接を静電容量の変化で検出する静電容量式近接センサと荷重印加によってオンオフする接触センサとを含むハイブリッドセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、メンブレンスイッチを使用した接触センサと静電容量式センサとを併用したハイブリッドセンサとしては、本出願人によって、特許文献1に開示されたものが提案されている。図5に、このハイブリッドセンサの概略構成を示す。このハイブリッドセンサ3は、例えば自動車等の着座検出システムに適用されるもので、ポリエステルフィルムのような絶縁樹脂フィルム等からなる一対の可撓性シート31,32を、シート状の絶縁スペーサ33を介して重合することにより構成されている。一対の可撓性シート31,32の対向面31a,32aには、それぞれ銀ペースト等の導電材からなるスイッチ電極パターン34,35がスクリーン印刷等の方法で形成されている。これらスイッチ電極パターン34,35は、接点部36に対応する位置に形成されたランド部34a,35aと、ランド部34a,35aを図示しない回路まで導くリード部34b,35bとからなる。絶縁スペーサ33の接点部36に対応する位置には、ランド部34a,35aが互いに十分に接触できるだけの開口径を有する開口部37が形成され、この開口部37を介して着座部への荷重印加時に上下のランド部34aと35aとが接触してオン状態となる。これらの構成が接触センサを構成している。
【0003】
一方、静電容量式センサは、可撓性シート31の対向面31aにスイッチ電極パターン34とは絶縁状態で形成された一組の検知電極パターン38a,38bからなり、それらの容量変化から人体等の物体の接近を非接触で検出するように構成されている。
【0004】
この構成によれば、接触センサと静電容量式近接センサとを、同一のメンブレンスイッチを含む形態で構成しているので、製造コストの削減を図ることができる。
【特許文献1】特開2002−326554公報(段落0020、図7)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、このようなハイブリッドセンサを自動車のヘッドレストや座席シートのように曲面のある支持体の表面に沿って装着しようとすると、ハイブリッドセンサが3層構造であるため、シートが任意の方向に曲がり難く、人体が感じる感触が悪化するという問題がある。また、シートの撓みによって接触センサの部分に応力が掛かり、圧力をかけていないのに、僅かな振動やウレタンの変形等によって上下の導電パターンが導通して誤検出が発生するという問題がある。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたもので、曲面のある支持体の表面にも良好に適合し、誤検出の発生も防止することができるハイブリッドセンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る第1のハイブリッドセンサは、荷重印加によってオンオフするスイッチからなる接触センサと、物体の接近を非接触で検出する静電容量式近接センサとを含むハイブリッドセンサにおいて、前記接触センサ及び静電容量式近接センサは、共通の第1の可撓性シート上に形成され、前記第1の可撓性シート上には、前記接触センサ用の第1のスイッチ電極パターンと前記静電容量式近接センサ用の検知電極パターンとがそれぞれ形成され、前記接触センサは、前記第1の可撓性シート上に、荷重印加によって前記第1のスイッチ電極パターンと接触する第2のスイッチ電極パターンが形成された第2の可撓性シートを、スペーサを介して重合してなり、前記静電容量式近接センサは、前記検知電極パターン上に保護層を形成してなることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る第2のハイブリッドセンサは、荷重印加によってオンオフするスイッチからなる接触センサと、物体の接近を非接触で検出する静電容量式近接センサとを含むハイブリッドセンサにおいて、第1の可撓性シートと、この第1の可撓性シート上に形成されて前記接触センサのスイッチを構成する第1のスイッチ電極パターンと、前記第1の可撓性シート上の前記第1のスイッチ電極パターンが形成されていない領域に形成されて前記静電容量式近接センサを構成する検知電極パターンと、前記第1のスイッチ電極パターンが形成された領域と対向すると共に前記検知電極パターンが形成された領域を避けて配置された第2の可撓性シートと、この第2の可撓性シートの前記第1のスイッチ電極パターンと対向する面に形成された第2のスイッチ電極パターンと、前記第1及び第2の可撓性シートの間に介装されたスペーサと、前記検知電極パターンの表面を覆う保護層とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のハイブリッドセンサによれば、接触センサと静電容量式近接センサとが共通の第1の可撓性シート上に形成されるものの、3層構造となる接触センサを構成するスペーサ及び第2の可撓性シートは、接触センサが構成される部分にのみ配置され、その他の大部分は、検知電極パターンが形成された第1の可撓性シートの前記検知電極パターンの上に保護層が形成された2層構造体となるので、全てを第1及び第2の可撓性シートとスペーサとで構成する3層構造体とするよりも遙かに可撓性を向上させることができ、これにより、曲面のある支持体の表面にも良好に適合し、誤検出の発生も防止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るハイブリッドセンサの外観斜視図、図2は、同ハイブリッドセンサの図1におけるA−A′断面図、図3は同ハイブリットセンサの分解斜視図である。
【0012】
このハイブリッドセンサ1は、荷重印加によってオンオフするスイッチからなる接触センサ10と、物体の接近を非接触で検出する静電容量式近接センサ20とを備えて構成されている。これら接触センサ10及び静電容量式近接センサ20は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等からなる共通の第1の可撓性シート11上に形成されている。
【0013】
第1の可撓性シート11の上には、接触センサ10を構成する第1のスイッチ電極パターン12が形成されている。このスイッチ電極パターン12は、可撓性シート11の所定の縁部から中央に延びると共に左右に分岐し、更に平行に延びる3本のパターンからなり、各パターンが互いに絶縁された正極パターン12aと接地パターン12bとからなり、特に接触センサ10を形成する部分は櫛歯状パターン12cとなっている。
【0014】
また、第1の可撓性シート11の第1の電極パターン12が形成されていない領域には、この領域のほぼ全体を覆うように静電容量式近接センサ20を構成する検知電極パターン21が形成されている。この検知電極パターン21は、保護シート又は保護用のレジスト等の保護層22によって覆われている。
【0015】
第1のスイッチ電極パターン12が形成された領域のうち接触センサ10を形成する位置、すなわち櫛歯状パターン12cが形成された位置には、絶縁体フィルム等からなる環状のスペーサ13と、PET,PEN等からなる円形の第2の可撓性シート14とがこの順に重合されている。第2の可撓性シート14の櫛歯状パターン12cと対向する側の面には、上部から荷重が加わって撓んだときに櫛歯状パターン12cを短絡させる円形の第2のスイッチ電極パターン15が形成されている。
【0016】
このような構成であると、接触センサ10を構成する3層構造体は、ハイブリッドセンサのごく一部にのみ形成され、殆どの部分が第1の可撓性シート11と保護層22とからなる2層構造体であるため、全体的な可撓性に優れ、曲げに対する自由度を増すことができる。このため、このハイブリッドセンサ1を自動車の座席等に装着した場合、人体が感じる不快感を緩和し、接触センサ10の部分の応力的なつながりを弱めることで、接触センサ10の曲げによる誤検出も防止することができる。
【0017】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るハイブリッドセンサ2の構成を示す分解斜視図である。
【0018】
先の実施形態では、各接触センサ10を分離構造としたが、この実施形態では、スペーサ16と第2の可撓性シート17とをそれぞれ第1のスイッチ電極パターン12に沿った一体のシートで形成するようにしている。
【0019】
この実施形態によれば、シート全体の可撓性は、先の実施形態よりも低下するが、スペーサ16及び第2の可撓性シート17がそれぞれ一体構造であるため、製造工程での取り扱いが容易という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るハイブリッドセンサの外観斜視図である。
【図2】同ハイブリッドセンサの図1におけるA−A′断面図である。
【図3】同ハイブリッドセンサの分解斜視図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るハイブリッドセンサの分解斜視図である。
【図5】従来のハイブリッドセンサの分解斜視図である。
【符号の説明】
【0021】
1,2,3…ハイブリッドセンサ、10…接触センサ、11…第1の可撓性シート、12…第1のスイッチ電極パターン、13,16…スペーサ、14,17…第2の可撓性シート,15…第2のスイッチ電極パターン、20…静電容量式近接センサ、21…検知電極パターン、22…保護層、31,32…可撓性シート、33…絶縁スペーサ、34,35…スイッチ電極パターン、38a,38b…検知電極パターン。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷重印加によってオンオフするスイッチからなる接触センサと、物体の接近を非接触で検出する静電容量式近接センサとを含むハイブリッドセンサにおいて、
前記接触センサ及び静電容量式近接センサは、共通の第1の可撓性シート上に形成され、
前記第1の可撓性シート上には、前記接触センサ用の第1のスイッチ電極パターンと前記静電容量式近接センサ用の検知電極パターンとがそれぞれ形成され、
前記接触センサは、前記第1の可撓性シート上に、荷重印加によって前記第1のスイッチ電極パターンと接触する第2のスイッチ電極パターンが形成された第2の可撓性シートを、スペーサを介して重合してなり、
前記静電容量式近接センサは、前記検知電極パターン上に保護層を形成してなる
ことを特徴とするハイブリッドセンサ。
【請求項2】
荷重印加によってオンオフするスイッチからなる接触センサと、物体の接近を非接触で検出する静電容量式近接センサとを含むハイブリッドセンサにおいて、
第1の可撓性シートと、
この第1の可撓性シート上に形成されて前記接触センサのスイッチを構成する第1のスイッチ電極パターンと、
前記第1の可撓性シート上の前記第1のスイッチ電極パターンが形成されていない領域に形成されて前記静電容量式近接センサを構成する検知電極パターンと、
前記第1のスイッチ電極パターンが形成された領域と対向すると共に前記検知電極パターンが形成された領域を避けて配置された第2の可撓性シートと、
この第2の可撓性シートの前記第1のスイッチ電極パターンと対向する面に形成された第2のスイッチ電極パターンと、
前記第1及び第2の可撓性シートの間に介装されたスペーサと、
前記検知電極パターンの表面を覆う保護層と
を備えたことを特徴とするハイブリッドセンサ。
【請求項3】
前記検知電極パターンは、前記第1のスイッチ電極が形成されていない領域のほぼ全体を覆うように形成されている
ことを特徴とする請求項1又は2記載のハイブリッドセンサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−156274(P2006−156274A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−348166(P2004−348166)
【出願日】平成16年12月1日(2004.12.1)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】