説明

ハイブリッド型作業機械

【課題】本発明は、キャパシタの電力を有効利用して効率よくキャパシタを冷却することのできるハイブリッド型作業機械を提供することを課題とする。
【解決手段】エンジン11が停止された後に、キャパシタ19に充電された電力を利用して冷却装置60を駆動することにより、キャパシタ19を冷却するとともに、キャパシタ19のSOCを所定値(この形態では80%)まで低下させることができる。
これにより、キャパシタ19は、放電によりSOCが低下し、さらに、自らが放電する電力により冷却装置60を駆動し、その冷却装置60によって冷却されるため、電力を有効利用しつつキャパシタ19の長寿命化を図ったハイブリッド型建設機械を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンをアシストするための電動発電機を含むハイブリッド型作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、エンジンをアシストするための電動発電機を含むハイブリッド型作業機械では、電動発電機への電力供給と、回生電力の充電とを行うためのキャパシタを備える。このようなキャパシタは、充放電が繰り返し行われる環境下で使用されるため、長寿命化を図るための種々の工夫がなされている。
【0003】
例えば、キャパシタの電圧値が上昇しすぎるとキャパシタが劣化することに鑑み、キャパシタの電圧値に放電設定値を設け、ハイブリッド型作業機械の作業終了時にキャパシタの充電電圧が放電設定値を超えている場合は、キャパシタの電圧値が放電設定値以下となるように放電を行わせることにより、キャパシタの長寿命化を図ることが提案されている。放電された電力は補助バッテリに蓄積されていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−218285号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、キャパシタは高温環境下での使用が続くと劣化が促進される。
【0006】
ハイブリッド型作業機械では、キャパシタは充放電を繰り返し行う環境下で用いられるため、充放電に伴い内部抵抗によって生じる発熱量は相当な量となり、冷却が必要となる。また、充放電に際しては、過充電を避けるためにキャパシタ電圧を管理する必要がある。特に、作業中の高温になったキャパシタは、作業機械の停止後でも高温状態が持続するため、キャパシタの早期劣化に繋がる。
【0007】
しかしながら、従来のハイブリッド型作業機械では、キャパシタの電圧値を放電設定値以下にするために放電される電力はキャパシタから補助バッテリに移されており、電力の移動に伴って損失が生じるため、電力の有効利用は実現されていなかった。また、キャパシタを保護するための冷却においても電力の有効利用は行われていなかった。
【0008】
そこで、本発明は、キャパシタの電力を有効利用して効率よくキャパシタを冷却することのできるハイブリッド型作業機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一局面のハイブリッド型作業機械は、エンジンをアシストするための電動発電機と、当該電動発電機への電力供給、又は回生電力の充電を行うキャパシタとを含むハイブリッド型作業機械において、前記キャパシタを冷却する冷却装置と、前記冷却装置の駆動制御を行う駆動制御部とを含み、前記駆動制御部は、前記エンジンの停止後に、前記キャパシタから供給される電力で前記冷却装置を駆動する。
【0010】
また、前記キャパシタの電圧値を検出する電圧検出部をさらに含み、前記駆動制御部は、前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの電圧値に基づき、前記冷却装置の駆動制御を行ってもよい。
【0011】
また、この場合に、前記駆動制御部は、前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの電圧値が所定電圧値に下がるまで、前記冷却装置を駆動してもよい。
【0012】
また、前記キャパシタの温度を検出する温度検出部をさらに含み、前記駆動制御部は、前記温度検出部によって検出される温度に基づき、前記冷却装置の駆動制御を行ってもよい。
【0013】
また、この場合に、前記駆動制御部は、前記キャパシタの温度が所定温度以下になるまで、前記冷却装置を駆動してもよい。
【0014】
また、前記冷却装置には二次電池が接続されており、前記駆動制御部は、前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの電圧値が所定電圧値よりも低いときは、前記キャパシタから供給される電力の代わりに、前記二次電池から供給される電力で前記冷却装置を駆動してもよい。
【0015】
また、前記冷却装置の駆動時間を計測するタイマをさらに含み、前記駆動制御部は、前記タイマによって計測される駆動時間が所定時間を経過すると、前記冷却装置の駆動を停止してもよい。
【0016】
また、前記キャパシタの電圧値を検出する電圧検出部と、前記キャパシタの温度を検出する温度検出部と、前記冷却装置の駆動時間を計測するタイマと、をさらに含み、前記駆動制御部は、前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの電圧値と前記温度検出部によって検出されるキャパシタの温度とに基づいて冷却装置の適正駆動時間を設定し、前記タイマによって計測される駆動時間が前記適正駆動時間を経過すると、前記冷却装置の駆動を停止してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、キャパシタの電力を有効利用して効率よくキャパシタを冷却することのできるハイブリッド型作業機械を提供できるという特有の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施の形態1のハイブリッド型建設機械を示す側面図である。
【図2】実施の形態1のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。
【図3】コントローラ70によって実行される冷却装置60の駆動制御の処理手順を示す図である。
【図4】実施の形態2のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。
【図5】コントローラ70によって実行される冷却装置60の駆動制御の処理手順を示す図である。
【図6】実施の形態3のハイブリッド型建設機械のコントローラ70によって実行される冷却装置60の駆動制御の処理手順を示す図である。
【図7】実施の形態4のハイブリッド型建設機械のコントローラ70によって実行される冷却装置60の駆動制御の処理手順を示す図である。
【図8】冷却装置駆動時間を設定するために用いるタイムテーブルの構成例を示す図である。
【図9】冷却装置駆動時間を設定するために用いるタイムテーブルの構成例(一般的表現)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明のハイブリッド型作業機械を適用した実施の形態として、ハイブリッド型建設機械の実施の形態について説明する。
【0020】
「実施の形態1」
図1は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械を示す側面図である。
【0021】
このハイブリッド型建設機械の下部走行体1には、旋回機構2を介して上部旋回体3が搭載されている。また、上部旋回体3には、ブーム4、アーム5、及びバケット6と、これらを油圧駆動するためのブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9に加えて、キャビン10及び動力源が搭載される。
【0022】
「全体構成」
図2は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。この図2では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を一点鎖線でそれぞれ示す。
【0023】
機械式駆動部としてのエンジン11と、アシスト駆動部としての電動発電機12は、ともに増力機としての減速機13の入力軸に接続されている。また、この減速機13の出力軸には、メインポンプ14及びパイロットポンプ15が接続されている。メインポンプ14には、高圧油圧ライン16を介してコントロールバルブ17が接続されている。
【0024】
コントロールバルブ17は、実施の形態1の建設機械における油圧系の制御を行う制御装置であり、このコントロールバルブ17には、下部走行体1用の油圧モータ1A(右用)及び1B(左用)、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9が高圧油圧ラインを介して接続される。
【0025】
また、電動発電機12には、インバータ18及び昇降圧コンバータ30を介して蓄電器としてのキャパシタ19が接続される。このインバータ18と昇降圧コンバータ30との間は、DCバス40によって接続されている。
【0026】
また、DCバス40には、インバータ20を介して旋回用電動機21が接続されている。DCバス40は、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受を行うために配設されている。
【0027】
DCバス40には、DCバス40の電圧値(以下、DCバス電圧値と称す。)を検出するためのDCバス電圧検出部41が配設されている。検出されるDCバス電圧値は、コントローラ50に入力される。
【0028】
キャパシタ19には、キャパシタ電圧値を検出するためのキャパシタ電圧検出部31と、キャパシタ電流値を検出するためのキャパシタ電流検出部32が配設されている。キャパシタ電圧検出部31によって検出されるキャパシタ電圧値は、コントローラ50と、後述するコントローラ70に入力される。また、キャパシタ電流検出部32によって検出されるキャパシタ電流値は、コントローラ50に入力される。
【0029】
また、このキャパシタ19には、キャパシタ19を冷却するための冷却装置60が配設されている。冷却装置60は、キャパシタ19の筐体に取り付けられた冷却用の電動ファンであり、後述するコントローラ70によって駆動制御が行われる。
【0030】
キャパシタ19とコントローラ70には、スイッチ80を介してバッテリ90が接続されている。このバッテリ90は、ハイブリッド型作業機械の作業灯や電装品に電力を供給するための電源であり、エンジン11によって駆動される発電機100によって発電される電力が充電される。
【0031】
旋回用電動機21の回転軸21Aには、レゾルバ22、メカニカルブレーキ23、及び旋回減速機24が接続される。また、パイロットポンプ15には、パイロットライン25を介して操作装置26が接続される。
【0032】
操作装置26には、油圧ライン27及び28を介して、コントロールバルブ17及びレバー操作検出部としての圧力センサ29がそれぞれ接続される。この圧力センサ29には、実施の形態1の建設機械の電気系の駆動制御を行うコントローラ50が接続されている。
【0033】
このような実施の形態1の建設機械は、エンジン11、電動発電機12、及び旋回用電動機21を動力源とするハイブリッド型建設機械である。これらの動力源は、図1に示す上部旋回体3に搭載される。以下、各部について説明する。
【0034】
「各部の構成」
エンジン11は、例えば、ディーゼルエンジンで構成される内燃機関であり、その出力軸は減速機13の一方の入力軸に接続される。このエンジン11は、建設機械の運転中は常時運転される。
【0035】
電動発電機12は、電動(アシスト)運転及び発電運転の双方が可能な電動機であればよい。ここでは、電動発電機12として、インバータ18によって交流駆動される電動発電機を示す。この電動発電機12は、例えば、磁石がロータ内部に埋め込まれたIPM(Interior Permanent Magnetic)モータで構成することができる。電動発電機12の回転軸は減速機13の他方の入力軸に接続される。
【0036】
減速機13は、2つの入力軸と1つの出力軸を有する。2つの入力軸の各々には、エンジン11の駆動軸と電動発電機12の駆動軸が接続される。また、出力軸にはメインポンプ14の駆動軸が接続される。エンジン11の負荷が大きい場合には、電動発電機12が電動(アシスト)運転を行い、電動発電機12の駆動力が減速機13の出力軸を経てメインポンプ14に伝達される。これによりエンジン11の駆動がアシストされる。一方、エンジン11の負荷が小さい場合は、エンジン11の駆動力が減速機13を経て電動発電機12に伝達されることにより、電動発電機12が発電運転による発電を行う。電動発電機12の力行運転と発電運転の切り替えは、コントローラ50により、エンジン11の負荷等に応じて行われる。
【0037】
メインポンプ14は、コントロールバルブ17に供給するための油圧を発生するポンプである。この油圧は、コントロールバルブ17を介して油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々を駆動するために供給される。
【0038】
パイロットポンプ15は、油圧操作系に必要なパイロット圧を発生するポンプである。この油圧操作系の構成については後述する。
【0039】
コントロールバルブ17は、高圧油圧ラインを介して接続される下部走行体1用の油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9の各々に供給する油圧を運転者の操作入力に応じて制御することにより、これらを油圧駆動制御する油圧制御装置である。
【0040】
インバータ18は、上述の如く電動発電機12と昇降圧コンバータ30との間に設けられ、コントローラ50からの指令に基づき、電動発電機12の運転制御を行う。これにより、インバータ18が電動発電機12を電動運転している際には、必要な電力をキャパシタ19と昇降圧コンバータ30からDCバス40を介して電動発電機12に供給する。また、電動発電機12の回生を運転制御している際には、電動発電機12により発電された電力をDCバス40及び昇降圧コンバータ30を介してキャパシタ19に充電する。
【0041】
キャパシタ19は、昇降圧コンバータ30を介してインバータ18及びインバータ20に接続されている。これにより、電動発電機12の電動(アシスト)運転と旋回用電動機21の力行運転との少なくともどちらか一方が行われている際には、電動(アシスト)運転又は力行運転に必要な電力を供給するとともに、また、電動発電機12の発電運転と旋回用電動機21の回生運転の少なくともどちらか一方が行われている際には、発電運転又は回生運転によって発生した電力を電気エネルギとして蓄積するための電源である。このキャパシタ19は、多数のコンデンサを集合させたものである。
【0042】
このキャパシタ19の充放電制御は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づき、昇降圧コンバータ30によって行われる。この昇降圧コンバータ30の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、キャパシタ電圧検出部31によって検出されるキャパシタ電圧値、キャパシタ電流検出部32によって検出されるキャパシタ電流値、及びDCバス電圧検出部41によって検出されるDCバス電圧値に基づき、コントローラ50によって行われる。
【0043】
インバータ20は、上述の如く旋回用電動機21と昇降圧コンバータ30との間に設けられ、コントローラ50からの指令に基づき、旋回用電動機21に対して運転制御を行う。これにより、インバータ20が旋回用電動機21の力行を運転制御している際には、必要な電力をキャパシタ19から昇降圧コンバータ30を介して旋回用電動機21に供給する。また、旋回用電動機21が回生運転をしている際には、旋回用電動機21により発電された電力を昇降圧コンバータ30を介してキャパシタ19へ充電する。図2には、旋回電動機(1台)及びインバータ(1台)を含む実施の形態を示すが、その他マグネット機構や旋回機構部以外の駆動部として備えることで、複数の電動機及び複数のインバータをDCバス40に接続するようにしてもよい。
【0044】
昇降圧コンバータ30は、一側がDCバス40を介して電動発電機12及び旋回用電動機21に接続されるとともに、他側がキャパシタ19に接続されており、DCバス電圧値が一定の範囲内に収まるように昇圧又は降圧を切り替える制御を行う。電動発電機12が電動(アシスト)運転を行う場合には、インバータ18を介して電動発電機12に電力を供給する必要があるため、DCバス電圧値を昇圧する必要がある。一方、電動発電機12が発電運転を行う場合には、発電された電力をインバータ18を介してキャパシタ19に充電する必要があるため、DCバス電圧値を降圧する必要がある。これは、旋回用電動機21の力行運転と回生運転においても同様であり、その上、電動発電機12はエンジン11の負荷状態に応じて運転状態が切り替えられ、旋回用電動機21は上部旋回体3の旋回動作に応じて運転状態が切り替えられるため、電動発電機12と旋回用電動機21には、いずれか一方が電動(アシスト)運転又は力行運転を行い、他方が発電運転又は回生運転を行う状況が生じうる。
【0045】
このため、昇降圧コンバータ30は、電動発電機12と旋回用電動機21の運転状態に応じて、DCバス電圧値を一定の範囲内に収まるように昇圧動作と降圧動作を切り替える制御を行う。
【0046】
キャパシタ電圧検出部31は、キャパシタ19の電圧値を検出するための電圧検出部であり、キャパシタ19の充電状態を検出するために用いられる。検出されるキャパシタ電圧値は、コントローラ50及びコントローラ70に入力され、昇降圧コンバータ30の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0047】
キャパシタ電流検出部32は、キャパシタ19の電流値を検出するための電流検出部である。キャパシタ電流値は、キャパシタ19から昇降圧コンバータ30に流れる電流を正の値として検出される。検出されるキャパシタ電流値は、コントローラ50に入力され、昇降圧コンバータ30の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0048】
DCバス40は、2つのインバータ18及び20と昇降圧コンバータ30との間に配設されており、キャパシタ19、電動発電機12、及び旋回用電動機21の間で電力の授受が可能に構成されている。
【0049】
DCバス電圧検出部41は、DCバス電圧値を検出するための電圧検出部である。検出されるDCバス電圧値はコントローラ50に入力され、このDCバス電圧値を一定の範囲内に収めるための昇圧動作と降圧動作の切替制御を行うために用いられる。
【0050】
冷却装置60は、キャパシタ19の筐体に取り付けられた冷却用の電動ファンであり、キャパシタ19から供給される電力によって駆動され、キャパシタ19を冷却する。
【0051】
なお、冷却装置60は、コントローラ70によって駆動制御が行われ、後述するスイッチ72、及びDC−DCコンバータ73を経てキャパシタ19から電力が供給される。
【0052】
コントローラ70は、CPU(Central Processing Unit)71、スイッチ72、及びDC−DCコンバータ73と、図示しない内部メモリとを含む演算処理装置で構成され、CPU71が内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより冷却装置60の駆動制御を行う制御装置であり、エンジン11が停止された後に、キャパシタ19の電圧値が所定電圧値以上である場合に、キャパシタ19から供給される電力によって駆動され、キャパシタ19を冷却するとともに、キャパシタ19に冷却装置60を駆動するための電力を放出させることにより、電圧値が所定電圧値以下になるまでキャパシタ19を放電させる。
【0053】
なお、コントローラ70は、冷却装置60の駆動時間を計測するタイマを内蔵する。
【0054】
スイッチ72は、キャパシタ19から供給される電力をDC−DCコンバータ73を介して冷却装置60に供給するための切替器であり、CPU71によって駆動制御が行われる。このスイッチ72は、特に記さない限り開放されている。
【0055】
DC−DCコンバータ73は、スイッチ72を経てキャパシタ19から供給される電圧(例えば、360V)を冷却装置60の駆動用電圧値(24V)に変換する変圧器である。
【0056】
スイッチ80は、コントローラ70によって開閉制御が行われる切替器であり、キャパシタ19の充電率が十分でない場合において冷却装置60を駆動する必要があるときに、冷却装置60にバッテリ90から電力を供給する際に閉成される。このため、このスイッチ80は、特に記さない限り開放されている。
【0057】
バッテリ90は、ハイブリッド型作業機械の作業灯や電装品に電力を供給するための電源であり、エンジン11によって駆動される発電機100によって発電される電力が充電される。
【0058】
発電機100は、エンジン11の回転軸11Aに巻回されたファンベルトを介して駆動される発電機であり、バッテリ90の充電に必要な電力を発電できる容量を有するものであればよい。
【0059】
旋回用電動機21は、力行運転及び回生運転の双方が可能な電動機であればよく、上部旋回体3の旋回機構2を駆動するために設けられている。力行運転の際には、旋回用電動機21の回転駆動力の回転力が減速機24にて増幅され、上部旋回体3が加減速制御され回転運動を行う。また、上部旋回体3の慣性回転により、減速機24にて回転数が増加されて旋回用電動機21に伝達され、回生電力を発生させることができる。ここでは、旋回用電動機21として、PWM(Pulse Width Modulation)制御信号によりインバータ20によって交流駆動される電動機を示す。この旋回用電動機21は、例えば、磁石埋込型のIPMモータで構成することができる。これにより、より大きな誘導起電力を発生させることができるので、回生時に旋回用電動機21にて発電される電力を増大させることができる。
【0060】
レゾルバ22は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転位置及び回転角度を検出するセンサであり、旋回用電動機21と機械的に連結することで旋回用電動機21の回転前の回転軸21Aの回転位置と、左回転又は右回転した後の回転位置との差を検出することにより、回転軸21Aの回転角度及び回転方向を検出するように構成されている。旋回用電動機21の回転軸21Aの回転角度を検出することにより、旋回機構2の回転角度及び回転方向が導出される。また、図2にはレゾルバ22を取り付けた形態を示すが、電動機の回転センサを有しないインバータ制御方式を用いてもよい。
【0061】
メカニカルブレーキ23は、機械的な制動力を発生させる制動装置であり、旋回用電動機21の回転軸21Aを機械的に停止させる。このメカニカルブレーキ23は、電磁式スイッチにより制動/解除が切り替えられる。この切り替えは、コントローラ50によって行われる。
【0062】
旋回減速機24は、旋回用電動機21の回転軸21Aの回転速度を減速して旋回機構2に機械的に伝達する減速機である。これにより、力行運転の際には、旋回用電動機21の回転力を増力させ、より大きな回転力として旋回体へ伝達することができる。これとは逆に、回生運転の際には、旋回体で発生した回転数を増加させ、より多くの回転動作を旋回用電動機21に発生させることができる。
【0063】
旋回機構2は、旋回用電動機21のメカニカルブレーキ23が解除された状態で旋回可能となり、これにより、上部旋回体3が左方向又は右方向に旋回される。
【0064】
操作装置26は、旋回用電動機21、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6を操作するための操作装置であり、ハイブリッド型建設機械の運転者によって操作される。
【0065】
この操作装置26は、パイロットライン25を通じて供給される油圧(1次側の油圧)を運転者の操作量に応じた油圧(2次側の油圧)に変換して出力する。操作装置26から出力される2次側の油圧は、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17に供給されるとともに、圧力センサ29によって検出される。
【0066】
操作装置26が操作されると、油圧ライン27を通じてコントロールバルブ17が駆動され、これにより、油圧モータ1A、1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダ9内の油圧が制御されることによって、下部走行体1、ブーム4、アーム5、及びバケット6が駆動される。
【0067】
なお、油圧ライン27は、油圧モータ1A及び1B、ブームシリンダ7、アームシリンダ8、及びバケットシリンダの駆動に必要な油圧をコントロールバルブに供給する。
【0068】
旋回用操作検出部としての圧力センサ29では、操作装置26に対して旋回機構2を旋回させるための操作が入力されると、この操作量を油圧ライン28内の油圧の変化として検出する。圧力センサ29は、油圧ライン28内の油圧を表す電気信号を出力する。これにより、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量を的確に把握することができる。この電気信号は、コントローラ50に入力され、旋回用電動機21の駆動制御に用いられる。また、実施の形態1では、レバー操作検出部としての圧力センサを用いる形態について説明するが、操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量をそのまま電気信号で読み取るセンサを用いてもよい。
【0069】
コントローラ50は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械の駆動制御を行う制御装置であり、CPU及び内部メモリを含む演算処理装置で構成され、CPUが内部メモリに格納される駆動制御用のプログラムを実行することにより実現される装置である。
【0070】
コントローラ50は、エンジン11の運転制御、電動発電機12の運転制御(電動(アシスト)運転又は発電運転の切り替え)、昇降圧コンバータ30を駆動制御することによるキャパシタ19の充放電制御、及び旋回用電動機21の駆動制御を行うための制御装置である。なお、旋回用電動機21の駆動制御は、圧力センサ29から入力される信号(操作装置26に入力される旋回機構2を旋回させるための操作量を表す信号)をコントローラ50が速度指令に変換し、この速度指令を用いて旋回用電動機21の駆動制御を行うことによって実行される。
【0071】
コントローラ50は、キャパシタ19の充電状態、電動発電機12の運転状態(電動(アシスト)運転又は発電運転)、及び旋回用電動機21の運転状態(力行運転又は回生運転)に基づいて、昇降圧コンバータ30の昇圧動作と降圧動作の切替制御を行い、これによりキャパシタ19の充放電制御を行う。
【0072】
この昇降圧コンバータ30の昇圧動作と降圧動作の切替制御は、キャパシタ電圧検出部31によって検出されるキャパシタ電圧値、キャパシタ電流検出部32によって検出されるキャパシタ電流値、及びDCバス電圧検出部41によって検出されるDCバス電圧値に基づいて行われる。
【0073】
なお、エンジン11の運転制御には、エンジン11の負荷状態に応じた燃料噴射量の制御等の他、エンジン11の始動と停止の制御が含まれる。エンジン11の始動と停止を表す信号は、コントローラ70に伝送される。
【0074】
「コントローラ70による冷却装置60の駆動制御」
図3は、コントローラ70によって実行される冷却装置60の駆動制御の処理手順を示す図である。
【0075】
コントローラ70は、コントローラ50からエンジン11が停止されたことを表す信号を受信すると、図3に示す処理を開始する。このとき、内蔵されるタイマによる経過時間の計測が開始される。
【0076】
まず、コントローラ70は、冷却装置60の駆動を開始させる(ステップS11)。具体的には、コントローラ70のCPU71は、スイッチ72を閉成し、キャパシタ19から供給される電力(電圧値は約360V)をDC−DCコンバータ73で(24Vに)降圧して冷却装置60に供給する。これにより、冷却装置60の電動ファンが回転駆動され、キャパシタ19が冷却される。
【0077】
次いで、コントローラ70は、キャパシタ電圧を計測する(ステップS12)。具体的には、コントローラ70は、キャパシタ電圧値を表す信号をキャパシタ電圧検出部31から受け取る。
【0078】
さらに、コントローラ70は、キャパシタ電圧値と所定の閾値を比較することにより、キャパシタ電圧値が所定の閾値以下になったか否かを判定する(ステップS13)。所定の閾値は、例えば、キャパシタ19のSOC(State of charge)で80%に設定される。
【0079】
キャパシタ電圧値が所定の閾値以下である場合(ステップS13のYES)、キャパシタ19を十分に放電したと判定し、コントローラ70は、手順をステップS14に進行させる。
【0080】
コントローラ70は、冷却装置60を停止させる(ステップS14)。これは、CPU71がスイッチ72を開放することによって実現される。
【0081】
ところで、ステップS13において、キャパシタ電圧値が所定の閾値よりも高いと判定した場合(ステップS13のNO)、コントローラ70は、手順をステップS15に進行させ、内蔵タイマの積算時間が所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS15)。
【0082】
内蔵タイマの積算時間が所定時間を経過していた場合(ステップS15のYES)、コントローラ70は、キャパシタ19の放電及び冷却が十分に行われたと判定し、手順をステップS14に進行させて冷却装置60を停止させる。なお、ここでいう所定時間は、例えば、60分であり、これにより、コントローラ70は、キャパシタ電圧検出部31によって検出されるキャパシタ電圧値が異常であっても(例えば、冷却装置60を駆動させているにもかかわらずキャパシタ電圧値が低下しない場合である。)、冷却装置60を適切に停止させることができる。
【0083】
一方、内蔵タイマの積算時間が所定時間(閾値)を経過していないと判定した場合(ステップS15のNO)、コントローラ70は、キャパシタ19の放電及び冷却は不十分であり、かつ、キャパシタ電圧値もまだ高いと判定して手順をステップS12にリターンさせ、ステップS12、S13、及びS15を繰り返させるようにする。
【0084】
以上でコントローラ70による冷却装置60の駆動制御が終了する。
【0085】
従来のハイブリッド型建設機械では、キャパシタの電圧値を放電設定値以下にするために放電される電力は、キャパシタの冷却のために用いることは行われていなかった。このため、放電される電力の効率的な利用と、キャパシタの冷却の両立は実現されていなかった。
【0086】
ところが、本実施の形態のハイブリッド型建設機械によれば、エンジン11が停止された後に、キャパシタ19に充電された電力を利用して冷却装置60を駆動することにより、キャパシタ19を冷却するとともに、キャパシタ19のSOCを所定値(この形態では80%)まで低下させることができる。
【0087】
これにより、キャパシタ19は、放電によりSOCが低下し、さらに、自らが放電する電力により冷却装置60を駆動し、その冷却装置60によって冷却されるため、電力を有効利用しつつキャパシタ19の長寿命化を図ったハイブリッド型建設機械を提供することができる。
【0088】
さらに、作業終了後に、高温状態が持続することを防止することができるので、キャパシタが駆動していない作業終了後の時間におけるキャパシタの劣化を防止することができる。
【0089】
なお、以上では、キャパシタ19のSOCが80%以下であるか否かを判定する形態について説明した。SOCの閾値を80%に設定したのは、ハイブリッド型建設機械が次回運転開始される際に十分な充電量を確保するためと、回生電力を充電するための十分な空き容量を確保するためである。このため、判定に用いるSOCの閾値は、80%に限定されるものではなく、実機の仕様等に応じて適宜設定することが可能である。
【0090】
また、以上では、コントローラ70の内蔵タイマの積算時間の閾値が60分である形態について説明したが、この閾値は60分に限定されるものではなく、キャパシタ19の容量等に応じて適宜設定することが可能である。
【0091】
なお、コントローラ70は、冷却装置60を駆動する際にキャパシタ電圧値が所定値以下である場合は、スイッチ72を開放するとともにスイッチ80を閉成することにより、バッテリ90から供給される電力で冷却装置60を駆動するようにしてもよい。
【0092】
このような場合でもキャパシタ19を冷却することができるため、キャパシタ19の長寿命化を図ることができる。
【0093】
また、以上では、エンジン11をアシストするための電動発電機12と旋回用電動機21とを含むハイブリッド型建設機械に本実施の形態のハイブリッド型作業機械を適用した形態について説明したが、ハイブリッド化により電動化される要素はこれらに限られず、他の作業要素(例えば、下部走行体1、アーム4、ブーム5、又はバケット6)が電動化されたハイブリッド型建設機械に対しても同様に適用可能である。
【0094】
また、以上では、インバータ18及び20が接続されたDCバス40とキャパシタ19との間に昇降圧コンバータ30が配設されたハイブリッド型建設機械に本実施の形態のハイブリッド型作業機械を適用した形態について説明したが、インバータや昇降圧コンバータの配置や数等は一例であり、他の構成においても同様に適用可能である。
【0095】
「実施の形態2」
実施の形態2のハイブリッド型建設機械は、キャパシタ電圧値ではなく、キャパシタ19の温度に基づいて冷却装置60の停止を判定する点が実施の形態1のハイブリッド型建設機械と異なる。その他の構成は、実施の形態1のハイブリッド型建設機械に準ずるため、同一又は同等の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0096】
図4は、実施の形態2のハイブリッド型建設機械の構成を表すブロック図である。この図4では、機械的動力系を二重線、高圧油圧ラインを実線、パイロットラインを破線、電気駆動・制御系を一点鎖線でそれぞれ示す。
【0097】
実施の形態2のハイブリッド型建設機械は、キャパシタ19にキャパシタ温度検出部110が接続されている点が実施の形態1と異なる。
【0098】
このキャパシタ温度検出部110は、キャパシタ19に含まれる複数のコンデンサの各々に設けられた熱電対サーミスタである。キャパシタ温度検出部110によって検出されるキャパシタ温度を表す信号は、コントローラ70に伝送される。
【0099】
また、実施の形態2のハイブリッド型建設機械は、キャパシタ電圧値ではなく、キャパシタ19の温度に基づいて冷却装置60の停止を判定することにより、キャパシタ電圧検出部31によって検出されるキャパシタ電圧を表す信号は、コントローラ50のみに伝送され、コントローラ70には伝送されない。
【0100】
実施の形態2では、コントローラ70は、エンジン11が停止された後に、キャパシタ温度検出部110によって検出されるキャパシタ温度が所定値以上である場合に、キャパシタ19から供給される電力によって駆動され、キャパシタ19を冷却装置60で冷却するために冷却装置60の駆動用の電力をキャパシタ19に放電させ、キャパシタ温度が所定の閾値以下になるまでその放電を継続させる。
【0101】
図5は、コントローラ70によって実行される冷却装置60の駆動制御の処理手順を示す図である。
【0102】
コントローラ70は、コントローラ50からエンジン11が停止されたことを表す信号を受信すると、図5に示す処理を開始する。このとき、内蔵されるタイマによる経過時間の計測が開始される。
【0103】
まず、コントローラ70は、冷却装置60の駆動を開始させる(ステップS21)。具体的には、コントローラ70のCPU71は、スイッチ72を閉成し、キャパシタ19から供給される電力(電圧値は約360V)をDC−DCコンバータ73で(24Vに)降圧して冷却装置60に供給する。これにより、冷却装置60の電動ファンが回転駆動され、キャパシタ19が冷却される。
【0104】
次いで、コントローラ70は、キャパシタ温度を計測する(ステップS22)。具体的には、コントローラ70は、キャパシタ温度を表す信号をキャパシタ温度検出部110から受け取る。
【0105】
さらに、コントローラ70は、キャパシタ温度と所定の閾値を比較することにより、キャパシタ温度が所定の閾値以下になったか否かを判定する(ステップS23)。所定の閾値は、例えば、40度に設定される。
【0106】
キャパシタ温度が所定の閾値以下である場合(ステップS23のYES)、キャパシタ19を十分に放電及び冷却したと判定し、コントローラ70は、手順をステップS24に進行させる。
【0107】
コントローラ70は、冷却装置60を停止させる(ステップS24)。これは、CPU71がスイッチ72を開放することによって実現される。
【0108】
ところで、ステップS23において、キャパシタ温度が所定の閾値よりも高いと判定した場合(ステップS23のNO)、コントローラ70は、手順をステップS25に進行させ、内蔵タイマの積算時間が所定時間を経過したか否かを判定する(ステップS25)。
【0109】
内蔵タイマの積算時間が所定時間を経過していた場合(ステップS25のYES)、コントローラ70は、キャパシタ19の放電及び冷却が十分に行われたと判定し、手順をステップS24に進行させて冷却装置60を停止させる。なお、ここでいう所定時間は、例えば、60分であり、これにより、コントローラ70は、キャパシタ温度検出部110によって検出されるキャパシタ温度が異常であっても(例えば、冷却装置60を駆動させているにもかかわらずキャパシタ温度が低下しない場合である。)、冷却装置60を適切に停止させることができる。
【0110】
一方、内蔵タイマの積算時間が所定時間(閾値)を経過していないと判定した場合(ステップS25のNO)、コントローラ70は、キャパシタ19の放電及び冷却は不十分であり、かつ、キャパシタ温度もまだ高いと判定して手順をステップS22にリターンさせ、ステップS22、S23、及びS25を繰り返させるようにする。
【0111】
以上でコントローラ70による冷却装置60の駆動制御が終了する。
【0112】
このように、実施の形態2のハイブリッド型建設機械によれば、エンジン11が停止された後に、キャパシタ19に充電された電力を利用して冷却装置60を駆動することにより、キャパシタ19を放電させるとともに、キャパシタ19の温度を所定値(この形態では40度)まで低下させることができる。
【0113】
なお、以上では、キャパシタ温度の所定の閾値が40度である場合について説明したが、この閾値は40度に限定されるものではなく、キャパシタ19の容量等に応じて適宜設定することが可能である。
【0114】
また、以上では、コントローラ70の内蔵タイマの積算時間の閾値が60分である形態について説明したが、この閾値は60分に限定されるものではなく、キャパシタ19の容量等に応じて適宜設定することが可能である。
【0115】
「実施の形態3」
実施の形態3のハイブリッド型建設機械は、実施の形態2のハイブリッド型建設機械(図4参照)と同様にキャパシタ温度検出部110を含み、検出されるキャパシタ温度を表す信号はコントローラ70に伝送される。
【0116】
また、キャパシタ電圧検出部31によって検出されるキャパシタ電圧を表す信号もコントローラ70に伝送される。
【0117】
図6は、実施の形態3のハイブリッド型建設機械のコントローラ70によって実行される冷却装置60の駆動制御の処理手順を示す図である。この処理手順におけるステップS31乃至S34は、それぞれ、実施の形態1におけるステップS11乃至S13及びS15に相当する。また、ステップS35乃至S38は、実施の形態2におけるステップS22乃至S25に相当する。
【0118】
コントローラ70は、コントローラ50からエンジン11が停止されたことを表す信号を受信すると、図6に示す処理を開始する。このとき、内蔵されるタイマによる経過時間の計測が開始される。
【0119】
まず、コントローラ70は、冷却装置60の駆動を開始させる(ステップS31)。具体的には、コントローラ70のCPU71は、スイッチ72を閉成し、キャパシタ19から供給される電力(電圧値は約360V)をDC−DCコンバータ73で(24Vに)降圧して冷却装置60に供給する。これにより、冷却装置60の電動ファンが回転駆動され、キャパシタ19が冷却される。
【0120】
次いで、コントローラ70は、キャパシタ電圧を計測する(ステップS32)。具体的には、コントローラ70は、キャパシタ電圧値を表す信号をキャパシタ電圧検出部31から受け取る。
【0121】
さらに、コントローラ70は、キャパシタ電圧値と所定の閾値を比較することにより、キャパシタ電圧値が所定の閾値以下になったか否かを判定する(ステップS33)。所定の閾値は、例えば、キャパシタ19のSOC(State of charge)で80%に設定される。
【0122】
キャパシタ電圧値が所定の閾値以下である場合(ステップS33のYES)、キャパシタ19を十分に放電したと判定し、コントローラ70は、手順をステップS35に進行させる。
【0123】
ここで、ステップS33において、キャパシタ電圧値が所定の閾値よりも高いと判定した場合(ステップS33のNO)、コントローラ70は、手順をステップS34に進行させ、内蔵タイマの積算時間が所定時間T1を経過したか否かを判定する(ステップS34)。
【0124】
内蔵タイマの積算時間が所定時間T1を経過していた場合(ステップS34のYES)コントローラ70は、キャパシタ19の放電が十分に行われたと判定し、手順をステップS35に進行させる。なお、ここでいう所定時間T1は、例えば、60分である。
【0125】
一方、内蔵タイマの積算時間が所定時間T1を経過していないと判定した場合(ステップS34のNO)、コントローラ70は、キャパシタ19の放電は不十分であり、かつ、キャパシタ電圧値もまだ高いと判定して手順をステップS32にリターンさせ、ステップS32〜ステップS34を繰り返させるようにする。
【0126】
次いで、コントローラ70は、キャパシタ温度を計測する(ステップS35)。具体的には、コントローラ70は、キャパシタ温度を表す信号をキャパシタ温度検出部110から受け取る。
【0127】
さらに、コントローラ70は、キャパシタ温度と所定の閾値を比較することにより、キャパシタ温度が所定の閾値以下になったか否かを判定する(ステップS36)。所定の閾値は、例えば、40度に設定される。
【0128】
キャパシタ温度が所定の閾値以下である場合(ステップS36のYES)、コントローラ70は、キャパシタ19を十分に放電及び冷却したと判定して手順をステップS37に進行させる。
【0129】
コントローラ70は、冷却装置60を停止させる(ステップS37)。これは、CPU71がスイッチ72を開放することによって実現される。
【0130】
ところで、ステップS36において、キャパシタ温度が所定の閾値よりも高いと判定した場合(ステップS36のNO)、コントローラ70は、手順をステップS38に進行させ、内蔵タイマの積算時間が所定時間T2を経過したか否かを判定する(ステップS38)。
【0131】
内蔵タイマの積算時間が所定時間T2を経過していた場合(ステップS38のYES)、コントローラ70は、キャパシタ19の放電及び冷却が十分に行われたと判定して手順をステップS37に進行させ、冷却装置60を停止させる。なお、ここでいう所定時間T2は、例えば、60分である。
【0132】
一方、内蔵タイマの積算時間が所定時間(閾値)を経過していないと判定した場合(ステップS38のNO)、コントローラ70は、キャパシタ19の冷却は不十分であり、かつ、キャパシタ温度もまだ高いと判定し、コントローラ70は手順をステップS35にリターンさせ、ステップS35、S36、及びS38を繰り返させるようにする。
【0133】
以上でコントローラ70による冷却装置60の駆動制御が終了する。
【0134】
このように、実施の形態3のハイブリッド型建設機械によれば、エンジン11が停止された後に、キャパシタ19に充電された電力を利用して冷却装置60を駆動することにより、キャパシタ19を冷却するとともに、キャパシタ19のSOCを所定値(この形態では80%)まで低下させることができる。
【0135】
また、これに加えて、キャパシタ19の温度を検出して所定値(この形態では40度)まで低下させることにより、キャパシタ19の電力を用いてキャパシタ19を十分に冷却することができる。
【0136】
これにより、キャパシタ19は、放電によりSOCが低下し、さらに、自らが放電する電力により冷却装置60を駆動し、その冷却装置60によって冷却されるため、電力を有効利用しつつキャパシタ19の長寿命化を図ったハイブリッド型建設機械を提供することができる。
【0137】
なお、SOCの閾値やキャパシタ温度の閾値については、実施の形態1又は2と同様に、キャパシタ19の容量等に応じて適宜設定することが可能である。
【0138】
また、ステップS34とS38における所定時間T1とT2は、60分に限定されるものではなく、キャパシタ19の容量等に応じて適宜設定することが可能である。所定時間T1とT2は独立的に設定可能である。
【0139】
更に、実施の形態3において、コントローラ70は、キャパシタ電圧値と閾値とを比較する処理(ステップS32〜ステップS34)を先に実行した上で、キャパシタ温度と閾値とを比較する処理(ステップS35〜ステップS38)を実行するが、これらの処理は、順不同であり、また、並行して同時に実行されてもよい。
【0140】
「実施の形態4」
実施の形態4のハイブリッド型建設機械は、実施の形態2及び3のハイブリッド型建設機械(図4参照)と同様にキャパシタ温度検出部110を含み、検出されるキャパシタ温度を表す信号はコントローラ70に伝送される。
【0141】
また、キャパシタ電圧検出部31によって検出されるキャパシタ電圧を表す信号もコントローラ70に伝送される。
【0142】
図7は、実施の形態4のハイブリッド型建設機械のコントローラ70によって実行される冷却装置60の駆動制御の処理手順を示す図である。
【0143】
コントローラ70は、コントローラ50からエンジン11が停止されたことを表す信号を受信すると、図7に示す処理を開始する。このとき、内蔵されるタイマによる経過時間の計測が開始される。
【0144】
まず、コントローラ70は、冷却装置60の駆動を開始させる(ステップS41)。具体的には、コントローラ70のCPU71は、スイッチ72を閉成し、キャパシタ19から供給される電力(電圧値は約360V)をDC−DCコンバータ73で(24Vに)降圧して冷却装置60に供給する。これにより、冷却装置60の電動ファンが回転駆動され、キャパシタ19が冷却される。
【0145】
次いで、コントローラ70は、キャパシタ電圧及びキャパシタ温度を計測する(ステップS42)。具体的には、コントローラ70は、キャパシタ電圧値を表す信号をキャパシタ電圧検出部31から受け取り、キャパシタ温度を表す信号をキャパシタ温度検出部110から受け取る。
【0146】
その後、コントローラ70は、計測したキャパシタ電圧及びキャパシタ温度とタイムテーブルとを用いて冷却装置の駆動時間を設定する(ステップS43)。
【0147】
タイムテーブルは、キャパシタ電圧及びキャパシタ温度と冷却装置の適正な駆動時間との間の関係を表す参照テーブルであり、例えば、コントローラ70の内部メモリに予め記憶されており、コントローラ70がエンジン11の停止時点におけるキャパシタ電圧及びキャパシタ温度に基づいてキャパシタ19を十分に放電させ、かつ、冷却するのに必要な冷却装置60の適正な駆動時間(以下、「冷却装置駆動時間」と称す。)を決定できるようにする。
【0148】
図8は、冷却装置駆動時間を設定するために用いるタイムテーブルの構成例を示す図であり、縦方向に6段階のキャパシタ電圧V[V]のレベルを配置し、横方向に6段階のキャパシタ温度T[℃]のレベルを配置する。また、冷却装置駆動時間は、分単位で設定され、キャパシタ電圧V[V]が増大するにつれて増大し、かつ、キャパシタ温度T[℃]が増大するにつれて増大する。
【0149】
図8は、例えば、エンジン11の停止時点におけるキャパシタ電圧及びキャパシタ温度がそれぞれ320[V]、47[℃]であった場合、キャパシタ19を十分に放電させ、かつ、冷却するのに必要な冷却装置駆動時間が30[分]であることを示し、また、エンジン11の停止時点におけるキャパシタ電圧及びキャパシタ温度がそれぞれ370[V]、62[℃]であった場合、キャパシタ19を十分に放電させ、かつ、冷却するのに必要な冷却装置駆動時間が55[分]であることを示す。
【0150】
このようにして冷却装置駆動時間を設定したコントローラ70は、冷却装置60が駆動を開始してからの経過時間を監視しながら、その経過時間と冷却装置駆動時間とを比較する(ステップS44)。
【0151】
その経過時間が冷却装置駆動時間未満の場合(ステップS44のNO)、コントローラ70は、冷却装置60を停止させることなくその経過時間の監視を継続する。
【0152】
一方、その経過時間が冷却装置駆動時間以上となった場合(ステップS44のYES)、コントローラ70は、キャパシタ19を十分に放電させ、かつ、冷却したと判定して冷却装置60を停止させる(ステップS45)。
【0153】
以上でコントローラ70による冷却装置60の駆動制御が終了する。
【0154】
このように、実施の形態4のハイブリッド型建設機械によれば、エンジン11が停止された後に、キャパシタ19に充電された電力を利用して冷却装置60を駆動することにより、キャパシタ19を放電させるとともに、キャパシタ19の温度を所定値(この形態では40度未満)まで低下させることができる。
【0155】
また、実施の形態4において、タイムテーブルは、キャパシタ電圧V[V]及びキャパシタ温度T[℃]のそれぞれに6段階のレベルを準備するが、6段階未満のレベル又は7段階以上のレベルを準備するようにしてもよく、キャパシタ電圧V[V]のレベルの数とキャパシタ温度T[℃]のレベルの数とが異なるようにしてもよい。
【0156】
また、タイムテーブルは、キャパシタ電圧V[V]又はキャパシタ温度T[℃]の何れか一方のレベルの数が1段階であってもよく、それらの双方が共に1段階であってもよい。
【0157】
図9は、図8で示すタイムテーブルを一般化した参照テーブルであり、縦方向にN+1段階(Nは1以上の自然数である。)のキャパシタ電圧V[V]のレベルを配置し、横方向にM+1段階(Mは1以上の自然数である。)のキャパシタ温度T[℃]のレベルを配置する。また、冷却装置駆動時間AN,M[分]は、第Nレベルのキャパシタ電圧V[V]及び第Mレベルのキャパシタ温度T[℃]に対応する冷却装置駆動時間であり、分単位で設定される。なお、冷却装置駆動時間AN,M[分]のそれぞれは、必ずしもキャパシタ電圧V[V]が増大するにつれて増大し、或いは、キャパシタ温度T[℃]が増大するにつれて増大する必要はなく、重複する値であってもよい。
【0158】
また、冷却装置駆動時間AN,M[分]のそれぞれは、ベンチテストに基づいて予め設定される値であるが、環境温度、環境湿度、現在時刻、現在位置等に応じて動的に調節されてもよい。
【0159】
また、実施の形態4のハイブリッド型建設機械において、コントローラ70は、一旦冷却装置駆動時間を設定した後はキャパシタ電圧V[V]及びキャパシタ温度T[℃]を計測することなく経過時間のみを監視するので、キャパシタ電圧検出部31及びキャパシタ温度検出部110への電力供給を停止させることができ、無駄な電力消費を回避することができる。
【0160】
更に、コントローラ70は、冷却装置駆動時間が経過する前にキャパシタ電圧値が所定値以下となった場合は、スイッチ72を開放するとともにスイッチ80を閉成することにより、バッテリ90から供給される電力で冷却装置60の駆動を継続させるようにしてもよい。
【0161】
以上では、ハイブリッド型建設機械について説明したが、ハイブリッド型作業機械は、建設機械以外の形態の作業機械であってもよく、例えば、ハイブリッド型の運搬荷役機械(クレーンやフォークリフト)であってもよい。
【0162】
例えば、図2に示すエンジン11及び電動発電機12をクレーンのエンジン及びアシスト用電動発電機として用い、図2に示す旋回用電動機21をクレーンの荷役作業において部品や貨物等を上昇又は下降させるための動力源に用いればよい。特に、部品や貨物等を上昇又は下降させるための動力源は、ワイヤの巻き取り、又は引き出しに伴って力行運転(巻き取り時)と回生運転(引き出し時)を行うため、ハイブリッド型作業機械として上述のハイブリッド型建設機械と同様に実施することができる。
【0163】
また、フォークリフトの場合も同様に、図2に示すエンジン11及び電動発電機12をフォークリフトのエンジン及びアシスト用電動発電機として用い、図2に示す旋回用電動機21をフォークリフトの荷役作業においてフォークを上昇又は下降させるための動力源に用いればよい。特に、フォークを上昇又は下降させるための動力源は、上下動作に伴って力行運転(上昇時)と回生運転(下降時)を行うため、ハイブリッド型作業機械として上述のハイブリッド型建設機械と同様に実施することができる。
【0164】
以上、本発明の例示的な実施の形態のハイブリッド型作業機械について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0165】
1 下部走行体
1A、1B 油圧モータ
2 旋回機構
3 上部旋回体
4 ブーム
5 アーム
6 バケット
7 ブームシリンダ
8 アームシリンダ
9 バケットシリンダ
10 キャビン
11 エンジン
12 電動発電機
13 減速機
14 メインポンプ
15 パイロットポンプ
16 高圧油圧ライン
17 コントロールバルブ
18 インバータ
19 キャパシタ
20 インバータ
21 旋回用電動機
22 レゾルバ
23 メカニカルブレーキ
24 旋回減速機
25 パイロットライン
26 操作装置
27、28 油圧ライン
29 圧力センサ
30 昇降圧コンバータ
31 キャパシタ電圧検出部
32 キャパシタ電流検出部
40 DCバス
41 DCバス電圧検出部
50 コントローラ
60 冷却装置
70 コントローラ
80 スイッチ
90 バッテリ
100 発電機
110 キャパシタ温度検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンをアシストするための電動発電機と、当該電動発電機への電力供給、又は回生電力の充電を行うキャパシタとを含むハイブリッド型作業機械において、
前記キャパシタを冷却する冷却装置と、
前記冷却装置の駆動制御を行う駆動制御部と
を含み、
前記駆動制御部は、前記エンジンの停止後に、前記キャパシタから供給される電力で前記冷却装置を駆動する、ハイブリッド型作業機械。
【請求項2】
前記キャパシタの電圧値を検出する電圧検出部をさらに含み、
前記駆動制御部は、前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの電圧値に基づき、前記冷却装置の駆動制御を行う、請求項1に記載のハイブリッド型作業機械。
【請求項3】
前記駆動制御部は、前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの電圧値が所定電圧値に下がるまで、前記冷却装置を駆動する、請求項2に記載のハイブリッド型作業機械。
【請求項4】
前記キャパシタの温度を検出する温度検出部をさらに含み、
前記駆動制御部は、前記温度検出部によって検出される温度に基づき、前記冷却装置の駆動制御を行う、請求項1又は2に記載のハイブリッド型作業機械。
【請求項5】
前記駆動制御部は、前記キャパシタの温度が所定温度以下になるまで、前記冷却装置を駆動する、請求項4に記載のハイブリッド型作業機械。
【請求項6】
前記冷却装置には二次電池が接続されており、前記駆動制御部は、前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの電圧値が所定電圧値よりも低いときは、前記キャパシタから供給される電力の代わりに、前記二次電池から供給される電力で前記冷却装置を駆動する、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のハイブリッド型作業機械。
【請求項7】
前記冷却装置の駆動時間を計測するタイマをさらに含み、
前記駆動制御部は、前記タイマによって計測される駆動時間が所定時間を経過すると、前記冷却装置の駆動を停止する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のハイブリッド型作業機械。
【請求項8】
前記キャパシタの電圧値を検出する電圧検出部と、
前記キャパシタの温度を検出する温度検出部と、
前記冷却装置の駆動時間を計測するタイマと、をさらに含み、
前記駆動制御部は、前記電圧検出部によって検出されるキャパシタの電圧値と前記温度検出部によって検出されるキャパシタの温度とに基づいて冷却装置の適正駆動時間を設定し、前記タイマによって計測される駆動時間が前記適正駆動時間を経過すると、前記冷却装置の駆動を停止する、請求項1に記載のハイブリッド型作業機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−261227(P2009−261227A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70987(P2009−70987)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【出願人】(502246528)住友建機株式会社 (346)
【Fターム(参考)】